(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】放射性の白金族金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/18 20060101AFI20220224BHJP
C22B 3/18 20060101ALI20220224BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20220224BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G21F9/18
C22B3/18
C22B11/00 101
C22B3/24
(21)【出願番号】P 2020078453
(22)【出願日】2020-04-27
(62)【分割の表示】P 2015224936の分割
【原出願日】2015-11-17
【審査請求日】2020-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 範三
(72)【発明者】
【氏名】古田 雅一
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/049959(WO,A1)
【文献】特開2009-216508(JP,A)
【文献】特開2013-005794(JP,A)
【文献】特開2012-107294(JP,A)
【文献】特開2014-234551(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099189(WO,A1)
【文献】特表2009-541593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0078707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/18
C22B 11/00
C22B 3/24
C22B 3/18
C12P 3/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、前記白金族金属イオンの還元体である放射性の白金族金属を回収する方法であって、
前記原料溶液と、金属イオン還元細菌および酵母から選択される少なくとも1種の微生物と、を含む反応液中で、前記白金族金属イオンを前記微生物に捕集させる、バイオ処理工程と、
前記バイオ処理工程後の前記微生物を前記反応液から分離する、分離工程と、
前記微生物から前記白金族金属を回収する、回収工程と、
を含み、
前記バイオ処理工程において、前記反応液のpHが4以下である、放射性の白金族金属の回収方法。
【請求項2】
前記反応液中に電子供与体を添加する工程を含まない、請求項1に記載の放射性の白金族金属の回収方法。
【請求項3】
前記白金族金属イオンまたは前記白金族金属から前記微生物に照射される放射線の線量が3kGy以下である、請求項1または2に記載の放射性の白金族金属の回収方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の放射性の白金族金属の回収方法を用いる、白金族金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性の白金族金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、核変換等によって生じる放射性廃棄物を非放射性物質へ変換し、資源化することが検討されている。特に、長寿命核分裂生成物(LLFP)であるセシウム、セレン、ジルコニウムおよびパラジウム(Pd)の4元素の放射性同位体を非放射性同位体に変換して資源化することが望まれている。さらに、Pdは、自動車の排ガス浄化システムの触媒として利用することができ、利用価値が高い。
【0003】
そして、例えば、Pdの放射性同位体であるPd107(半減期650万年)を非放射性物質に変換する方法として、Pd107に中性子を照射することにより、非放射性のPd106に変換することが検討されている。
【0004】
ここで、Pd107を非放射性のPd106に変換する前段階として、LLFPを含む高レベル放射性廃液からLLFPを回収する必要がある。
【0005】
これまでに、プリント基板、自動車の排ガス浄化システムに用いられる三元触媒コンバータ等に対しては、パラジウム(Pd)などの白金族金属を回収する方法が検討されており、微生物を用いた低エネルギー型(低環境負荷型)の回収方法も検討されている。
【0006】
例えば、特許文献1(特許第5090697号公報)、非特許文献1(小西康裕、「金属イオン還元細菌を用いるバイオミネラリゼーションによる貴金属ナノ粒子触媒の創製」、触媒、一般社団法人触媒学会、2013年Vol.55、No.4、p.232-238)などには、鉄イオン還元細菌(Shewanella属細菌)を用いて、原料溶液中のPd(II)イオンを還元して菌体の細胞表面にナノ粒子として捕集する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2(国際公開第2015/099189号)には、酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、廃液中のPd(II)イオンを還元して粒子化し細胞表面に捕集する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5090697号公報
【文献】国際公開第2015/099189号
【非特許文献】
【0009】
【文献】小西康裕、「金属イオン還元細菌を用いるバイオミネラリゼーションによる貴金属ナノ粒子触媒の創製」、触媒、一般社団法人触媒学会、2013年Vol.55、No.4、p.232-238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、放射性廃液などの放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、放射性の白金族金属を回収する具体的な方法は、これまで知られていない。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、白金族金属を回収することのできる回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、前記白金族金属イオンの還元体である放射性の白金族金属を回収する方法であって、
前記原料溶液と、金属イオン還元細菌および酵母から選択される少なくとも1種の微生物と、を含む反応液中で、前記白金族金属イオンまたは前記白金族金属を前記微生物に捕集させる、バイオ処理工程と、
前記バイオ処理工程後の前記微生物を前記反応液から分離する、分離工程と、
前記微生物から前記白金族金属を回収する、回収工程と、
を含むことを特徴とする、放射性の白金族金属の回収方法である。
【0013】
本発明の回収方法においては、前記反応液中に電子供与体を添加する工程を含まないことが好ましい。
【0014】
本発明の回収方法の前記バイオ処理工程において、前記反応液のpHが0~8であることが好ましい。
【0015】
本発明の回収方法の一実施形態においては、前記バイオ処理工程において、前記反応液のpHが5~8であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の回収方法の他の実施形態においては、前記バイオ処理工程において、前記反応液のpHが0~4であることが好ましい。
【0017】
前記放射性の白金族金属イオンから前記微生物に照射される放射線の線量は、3kGy以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記の放射性の白金族金属の回収方法を用いる、白金族金属の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、白金族金属を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1における白金族金属の液相中濃度と処理時間との関係を示すグラフである。(a)は線量が1.0kGyの場合であり、(b)は線量が3.0kGyの場合である。
【
図2】実施例2における白金族金属の液相中濃度と処理時間との関係を示すグラフである。(a)は反応液のpHが6.7の場合であり、(b)は反応液のpHが3.0の場合である。
【
図3】(a)は、実施例2における金属イオン還元細菌(S.algae)細胞とPdナノ粒子の電子顕微鏡写真である。(b)は(a)の一部分Aの拡大図であり、(c)は(a)の一部分Bの拡大図であり、(d)は(c)の一部分Cの拡大図である。
【
図4】実施例2における電子線回折分析の回折パターンを示す図である。
【
図5】実施例3の試験1~5におけるPd回収率を示すグラフである。
【
図6】(a)実施例3におけるバイオ処理工程後のS.cerevisiae細胞の電子顕微鏡写真である。(b)は(a)の一部分Aの拡大図であり、(c)は(b)の一部分Bの拡大図である。
【
図7】実施例3における電子線回折分析の回折パターンを示す図である。
【
図8】本発明の分離回収方法の一例を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の回収方法は、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、放射性の白金族金属を回収する方法である。
【0023】
白金族金属としては、特に限定されないが、Pd、Pt、Ru、Rhなどが挙げられ、好ましくはPdである。放射性の白金族金属は、白金族金属の放射性同位体などであり、例えば、Pd107が挙げられる。
【0024】
本発明の回収方法において、放射性の白金族金属イオンまたは放射性の白金族金属から微生物に照射される放射線の線量は、好ましくは3kGy以下であり、より好ましくは20Gy~3kGyである。線量が3kGyより多い場合は、白金族金属の回収率が低下する場合がある。なお、ここでいう「線量」とは、白金族金属イオンまたは白金族金属から放射される放射線の放射線量率と、本発明の回収方法において微生物が白金族金属イオンまたは白金族金属から放射される放射線に曝される合計時間との積を意味する。
【0025】
図8は、本発明の回収方法の一例を説明するためのフロー図である。
図8を参照して、本発明の放射性の白金族金属の回収方法は、少なくともバイオ処理工程(S10)と、分離工程(S20)と、回収工程(S30)とを含む。以下、本発明の回収方法における各工程について説明する。
【0026】
[バイオ処理工程(S10)]
バイオ処理工程では、金属イオン還元細菌および酵母から選択される少なくとも1種の微生物と、を含む反応液中で、放射性の白金族金属イオンまたは放射性の白金族金属を微生物に捕集させる。
【0027】
(金属イオン還元細菌)
金属イオン還元細菌とは、金属イオンを還元する能力を有する細菌である。金属イオン還元細菌は、電子供与体等から電子の供給を受けて(例えば有機物を酸化して発生する電子を利用して)、金属イオンを金属に還元し、金属を析出させる機能を持つ。例えば、自然界の水環境の底泥などに生息する嫌気性細菌が挙げられる。
【0028】
金属イオン還元細菌としては、例えば、シワネラ属(Shewanella algae:シワネラ アルゲ(以下、「S.algae」と略す):ATCC(American Type Culture Collection)51181株、Shewanella oneidensis:シワネラ オネイデンシス:ATCC700550株など)、ゲオバクター属(代表種:Geobacter metallireducens:ゲオバクター メタリレデューセンス:TCC53774株)、デスルフォモナス属(代表種:Desulfuromonas palmitatis:デスルフォモナス パルミタティス:ATCC51701株)、デスルフォムサ属(代表種:Desulfuromusa kysingii:デスルフォムサ キシンリ:DSM(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen)7343株)、ペロバクター属(代表種:Pelobacter venetianus:ペロバクター ベネティアヌス:ATCC2394株)、フェリモナス属(Ferrimonas balearica:フェリモナス バレアリカ:DSM9799株)、エアロモナス属(Aeromonas hydrophila:エアロモナス ヒドロフィラ:ATCC15467株)、スルフロスピリルム属(代表種:Sulfurospirillum barnesii:スルフロスピリルム バーネシイ:ATCC700032株)、ウォリネラ属(代表種:ウォリネラ スシノゲネス:Wolinella succinogenes:ATCC29543株)、デスルフォビブリオ属(代表種:Desulfovibrio desulfuricans:デスルフォビブリオ デスルフリカンス:ATCC29577株)、ゲオトリクス属(代表種:Geothrix fermentans:ゲオトリクス フェルメンタンス:ATCC700665株)、デフェリバクター属(代表種:Deferribacter thermophilus:デフェリバクター テルモフィルス:DSM14813株)、ゲオビブリオ属(代表種:Geovibrio ferrireducens:ゲオビブリオ フェリレデューセンス:ATCC51996株)、ピロバクルム属(代表種:Pyrobaculum islandicum:テルモプロテウス アイランディカム:DSM4184株)、テルモトガ属(代表種:Thermotoga maritima:テルモトガ マリティマ:DSM3109株)、アルカエグロブス属(代表種:Archaeoglobus fulgidus:アルカエグロブス フルギダス:ATCC49558株)、ピロコックス属(代表種:Pyrococcus furiosus:ピロコックス フリオサス:ATCC43587株)、ピロディクティウム属(代表種:Pyrodictium abyssi:ピロディクティウム アビーシイ:DSM6158株)が挙げられる。好ましくはシワネラ(Shewanella)属であり、特に好ましくはS.algaeである。これらの金属イオン還元細菌は、嫌気性細菌(通性嫌気性細菌)である。また、これらの金属イオン還元細菌の工業的応用では、病原性細菌ではなく安全性が確保できる点、また培養の栄養源コストが低く、増殖が速い点(低コスト・迅速に菌体を供給可能)が、大きなメリットとなる。
【0029】
(酵母)
本発明において、「酵母」とは、出芽酵母、分裂酵母などを意味する。出芽酵母としては、例えば、Saccharomyces属(Saccharomyces cerevisiaeなど)、Zygosaccharomyces属(Zygosaccharomyces rouxiiなど)が挙げられる。分裂酵母としては、例えば、Zygosaccharomyces属(Zygosaccharomyces rouxiiなど)が挙げられる。これらのうちでも特に好ましい酵母は、Saccharomyces cerevisiaeである。酵母(特に、Saccharomyces cerevisiae)は食品分野等での普及品であるため、菌体の入手が容易であり廉価である。このため、酵母を用いる場合、本発明の放射性の白金族金属の回収方法を容易に実施することができ、回収コストも削減することができる。
【0030】
なお、これらの酵母のうち、Saccharomyces cerevisiae(NBRC2044株)、Zygosaccharomyces rouxii(NBRC1130株)、Schizosaccharomyces pombe(ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の保存株FY15985)については、非放射線下においてPdイオンの回収能を有することを本発明者らが確認している。
【0031】
本発明で用いる上記の微生物は、当該微生物に適した培地を用いて、培養および増殖を行うことができる。
【0032】
例えば、S.algaeは、pHが7.0で、電子供与体として乳酸ナトリウム(32mol/m3)、電子受容体としてFe(III)イオン(56mol/m3)を含むクエン酸第二鉄培地(ATCC No.1931)を用いて、嫌気性雰囲気下で回分培養して増殖させることができる。鉄イオンの塩は、この例では、クエン酸塩であるが、使用する培地、使用する金属イオン還元細菌の種類により、適宜選択すればよい。また、S.algaeは、TSB(トリプトソイブロス)液体培地(pH7.2)を用いて、好気培養することもできる。
【0033】
また、S.cerevisiaeは、例えば、YPD培地を用いて、嫌気性雰囲気下で培養し、増殖させることができる。
【0034】
なお、放射性の白金族金属イオンと、上記の微生物(金属イオン還元細菌または酵母)との接触は液体(反応液)中で行われる。このとき、微生物は、生菌でもよく、また還元機能、吸着機能等が発揮される限り死菌であってもよい。
【0035】
本工程で用いる微生物の数は、特に制限されない。一般的に細胞数が多いほど、処理時間が短くなり、回収効率が向上する。反応液中の微生物の細胞濃度は、好ましくは1.0×1014cells/m3~1.0×1016cells/m3、より好ましくは1.0×1015cells/m3~8.0×1015cells/m3である。
【0036】
一例として、微生物の懸濁液の調製は、まず指数増殖末期に達した微生物培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌する。集菌した菌液を、水(蒸留水、イオン交換水、純水などを含む)を用いて所定の濃度に調整する。
【0037】
(反応液)
反応液は、上記の微生物による捕集機能が発揮される環境であれば、特に限定されない。反応液は、例えば、水、または、pH調整剤(リン酸水素カリウムなど)、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む水溶液に、上記原料溶液と、上記微生物の懸濁液とを添加してなる液である。
【0038】
反応液のpHは、好ましくは0~8であり、より好ましくは0.5~8である。本発明の回収方法は、取扱いが困難なアルカリ性溶液ではなく、このような強酸性から中性の溶液中からPdイオンを回収でき、汎用性が高いという利点がある。
【0039】
(1) 中性反応液
本発明の一実施形態において、バイオ処理工程で用いる反応液のpHは5~8、好ましくは6~8(中性領域)である。この場合、白金族金属イオンを還元して白金族金属を析出させると共に、白金族金属を微生物に捕集させることができる(バイオミネラリゼーション)。
【0040】
例えば、バイオ処理工程において、原料溶液、金属イオン還元細菌の懸濁液および電子供与体(例えば、ギ酸塩などの有機酸塩)の混合液(反応液)中において、放射性の白金族金属イオンと上記微生物とを接触させることにより、析出物として粒子状等の白金族金属を直接微生物に捕集させ得ることができる。この場合、分離工程(固液分離工程)後の回収工程等において、白金族金属イオンを焼成等によって金属化するといった処理を簡略化し得る利点がある。また、白金族金属の回収と同時に、10nm程度以下の白金族金属の微小粒子を生成することができるという利点もある。
【0041】
なお、「バイオミネラリゼーション」とは、生物による固体物の生成を意味する。上記微生物は、通常は、電子供与体を酸化し、それによって発生する電子を用いて白金族金属イオンを還元すると考えられる。白金族金属は、上記微生物の菌体表面(細胞壁周辺)、菌体内などに捕集される。
【0042】
反応液に電子供与体を添加する場合、電子供与体の反応液中の初期濃度は、例えば、100mol/m3以下であり、好ましくは1~100mol/m3である。
【0043】
電子供与体としては、使用する微生物の種類によって適宜選択すればよいが、例えば、有機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、炭素数1~7のカルボン酸塩(ギ酸塩、乳酸塩、酢酸塩など)、芳香族カルボン酸塩(脂式カルボン酸塩(脂肪酸塩)、安息香酸塩など)、オキソカルボン酸塩(ピルビン酸塩など)などが挙げられる。また、有機酸塩以外の電子供与体としては、例えば、アルコール(エタノールなど)、不飽和芳香族(トルエンフェノールなど)、水素ガス(分子状水素)などが挙げられる。
【0044】
白金族金属イオンの還元のためには、白金族金属イオンに電子を供与し得る何らかの物質が必要であり、主にこれらの電子供与体が白金族金属イオンに電子を供与する役割を担う。しかし、本発明者らは、本発明の回収方法において、反応液中に人為的に電子供与体を添加しなくとも、放射性の白金族金属イオンを還元できることを見出した。これは、放射性の白金族金属イオンから生じる放射線の作用によって、何らかの電子供与体が反応液中に生成し、還元反応が進行するためであると考えられる。
【0045】
したがって、反応液は、電子供与体を人為的に添加した溶液であってもよく、電子供与体を人為的に加えない溶液であってもよい。電子供与体を添加しない場合、電子供与体を添加する工程を省略できる利点がある。
【0046】
(2) 酸性反応液
本発明の別の実施形態において、バイオ処理工程で用いる反応液のpHは0~4であり、好ましくは0.5~4(酸性領域)である。この場合、放射性の白金族金属イオンがイオンのまま微生物に捕集される(バイオソープション)。「バイオソープション」とは、微生物が金属イオンを吸着する現象を意味する。金属イオンは、例えば、細胞表層を構成するリン脂質やリポ多糖類(官能基としてカルボキシル基やリン酸基等)に捕集される。
【0047】
なお、バイオソープションによってイオンのまま微生物に捕集された放射性の白金族金属イオンは、例えば、後の回収工程(S30)において焼成を行うことで、放射性の白金族金属となるため、最終的に白金族金属を回収することが可能である。
【0048】
(その他の条件)
バイオ処理工程の処理時間は、特に制限されないが、白金族金属イオンまたは白金族金属の菌体による捕集効率が高くなるように調整すればよい。一例として、バイオ還元工程の処理時間は10~120分間程度である。
【0049】
バイオ処理工程は、嫌気的雰囲気中で実施されることが好ましい。嫌気的雰囲気中で本工程を実施することで、上記微生物(金属イオン還元細菌または酵母)によって白金族金属イオンを還元することが容易になる。
【0050】
また、バイオ処理工程を実施する環境の温度は、特に限定されないが、より低エネルギー型の処理を行うために、加熱等のエネルギーを必要としない観点からは、室温(例えば、15~30℃程度)であることが好ましい。
【0051】
[分離工程(S20)]
分離工程では、バイオ処理工程後の微生物を反応液から分離(固液分離)する。具体的には、例えば、反応液に対してろ過や遠心分離等の処理を施すことにより、上記微生物の菌体を反応液中から分離する。これにより、バイオ処理工程によって上記微生物に捕集された白金族金属イオンまたは白金族金属を、反応液から分離することができる。
【0052】
[回収工程(S30)]
回収工程では、微生物から白金族金属を回収する。具体的には、例えば、分離工程で分離した菌体を乾燥させた後、焼成等により菌体等の有機物を除去することで、白金族金属を回収することができる。なお、分離工程で白金族金属イオンが微生物に捕集された場合でも、回収工程で焼成等の処理を行うことで、白金族金属イオンが還元されて白金族金属となるため、回収工程で白金族金属を回収することができる。
【0053】
以上のようにして、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から、白金族金属を回収することができる。回収された白金族金属に対して、必要に応じてさらに精製等の後処理を行ってもよい。このような回収方法によって、放射性の白金族金属イオンを含む原料溶液から放射性の白金族金属を製造することができる。さらに、放射性の白金族金属を非放射性の白金族金属に変換する処理を行うことで、非放射性の白金族金属を製造することもできる。
【0054】
また、上記の微生物を用いた回収方法は、低エネルギー型(低環境負荷型)の回収方法であり、かかる回収方法によれば、簡易な操作で、短時間に高い効率で、白金族金属を原料溶液中から回収することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の回収方法においては、原料溶液中の放射性の白金族金属イオンを反応液中で微生物と接触させてバイオ処理工程を実施する。ただし、放射性の白金族金属イオンに対してバイオ処理工程を実際に実施するためには、放射性物質を取り扱うための特別な設備が必要となる。このため、以下の実施例1および実施例2では、放射線照射施設において微生物(菌体懸濁液のみ)に所定量の放射線を照射した後に、微生物を放射線照射施設から取り出して、通常の実験室においてバイオ処理工程を実施した。また、実施例3では、反応液(非放射性の原料溶液と菌体懸濁液の混合液)に対して放射線を照射しつつ、バイオ処理工程を実施した。
【0057】
このような実験において、放射線照射後の微生物によって(非放射性の)白金族金属が回収可能であれば、本発明の回収方法において、放射性の白金族金属イオンから照射される放射線を受けた状態でも、微生物による白金族金属の回収が可能であると考えられる。
【0058】
[実施例1:酵母による白金族金属の回収実験]
以下では、放射線照射後の酵母を用いて、白金族金属(Pd)イオンを含む原料溶液から白金族金属(Pd)を回収する実験を行った。
【0059】
酵母の菌体懸濁液に対して、線量率3kGy/hの放射線(
60Coガンマ線)を線量(被爆量)1.0kGy(
図1(a))または3.0kGy(
図1(b))となる時間照射した。なお、放射線の線量は、原子力発電による高レベル放射性廃棄物のガラス固化体表面の放射線量を模擬する放射線量率(1.5kGy/h程度)を目安に設定した。また、放射線の照射は、下記の放射線照射施設において行った。
【0060】
<放射線照射施設>
公立大学法人大阪府立大学内の放射線研究センター
線源:60Co(350TBq)
線量率:0.5~17kGy/h
(なお、配置(線源からの距離)を調整することで、非照射体に対する放射線の線量を調整することができる。)
照射温度:室温。
【0061】
酵母としては、S.cerevisia(NBRC2044株)を用いた。なお、酵母の懸濁液は次の操作によって調製した。まず、指数増殖末期に達した酵母の培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌した。次に、集菌した菌液をイオン交換水で再懸濁し所定の細胞濃度(0.7×1015cells/m3)となるように調整した。
【0062】
これとは別に、塩化Pd(PdCl2)を希塩酸溶液に溶解させて、2mol/m3のPd(II)イオン(以下、単に「Pdイオン」と記載する。)を含む原料溶液(溶媒:水)を調製した。
【0063】
(1) 中性反応液、電子供与体添加あり
次に、上記の原料溶液を対象に、バイオ処理工程を回分操作で行った。すなわち、原料溶液、KH2PO4/NaOH緩衝溶液(pH7)、および、50mMの電子供与体(ギ酸ナトリウム)を混合し、放射線照射後の上記菌体懸濁液を添加することで反応液(pH6.7)を調製した。なお、反応液中の細胞濃度が5.0×1014cells/m3となるように、緩衝溶液の添加量を調整した。また、反応液中のPdイオンの初期濃度が1.0mol/m3となるように各溶液の配合量を調整した。バイオ処理工程は、室温下および嫌気環境下で実施した。
【0064】
また、反応液を調製した後(菌体懸濁液を添加した後)から120分経過後までの所定時間毎(10分、30分、60分および120分経過時)に反応液をサンプリングし、反応液中のPdイオンの濃度をICP発光分光法により測定した。
【0065】
液相Pd濃度の測定値と処理時間との関係を、
図1(a)および(b)に黒丸でプロットしたグラフで示す。なお、
図1(a)は、線量1.0kGyの放射線を照射したときの結果であり、このときのPd回収率は約80質量%であった。また、
図1(b)は、線量3.0kGyの放射線を照射したときの結果であり、このときのPd回収率は約50質量%であった。
【0066】
図1(a)および(b)に示される結果から、線量1.0kGyまたは3.0kGyの放射線を照射した後の酵母であっても、十分な白金族金属の回収能を有していることが分かる。
【0067】
なお、このように、反応液のpHを中性範囲に調整し、反応液中に電子供与体を添加した場合、
図1(a)および(b)の「実験開始60分」の写真(黒丸が付された右側の写真)において、反応液が黒色化していることから、Pdイオンの還元およびPdの析出(バイオミネラリゼーション)が起こっていることが分かる。
【0068】
ただし、放射線の線量が3.0kGyであるとき(
図1(b))にPd回収率が低下している。この結果から、酵母によるバイオミネラリゼーションによって白金族金属を回収する場合、酵母に照射される放射線の量が多すぎると、何らかの要因により酵母のバイオミネラリゼーション能力が低下する可能性があると考えられる。また、Pdの回収は約1時間で平衡に達していることから、放射性の白金族金属イオンの放射線量が3kGy以下であることが好ましいと考えられる。
【0069】
(2) 酸性反応液、電子供与体なし
上記(1)とは別に、塩酸を用いて反応液のpHを酸性(pH1.8)となるように調整し、電子供与体(ギ酸ナトリウム)を添加しなかったこと以外は、本実施例の上記(1)と同様にして、バイオ処理工程を実施した。結果を
図1(a)および(b)に黒四角でプロットしたグラフで示す。
【0070】
図1(a)および(b)に示される結果から、反応液が酸性である場合(電子供与体の添加なし)でも、線量1.0kGyまたは3.0kGyの放射線を照射した後の酵母は、十分な白金族金属イオンの回収能(捕集能)を有していることが分かる。
【0071】
また、反応液が酸性の場合、
図1(a)および(b)の「実験開始60分」の写真(黒四角が付された左側の写真)において、反応液が黒色化していないことから、Pdイオンの還元およびPdの析出が起こらず、Pdイオンがイオンのまま菌体に捕集されるバイオソープションが起こっていることが分かる。なお、この場合、回収工程において焼成等を行うことで、Pdイオンを還元し金属Pdを回収することができる。
【0072】
[実施例2:金属イオン還元細菌による白金族金属の回収実験]
以下では、放射線照射後の金属イオン還元細菌を用いて、白金族金属(Pd)イオンを含む原料溶液から白金族金属(Pd)を回収する実験を行った。
【0073】
具体的には、酵母の代わりに金属イオン還元細菌(S.algae)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、(1)中性反応液(電位供与体添加あり)および(2)酸性反応液(ただし、pHは3.0に調整)を用いたPdの回収実験を実施した。なお、菌体懸濁液への放射線の照射線量は、1.0kGy、1.5kGyまたは3.0kGyとした。
【0074】
金属イオン還元細菌としては、S.algae(ATCC51181株)を用いた。なお、金属イオン還元細菌の懸濁液は次の操作によって調製した。まず、指数増殖末期に達した金属イオン還元細菌の培養液を、窒素ガスにより嫌気状態にしたグローブボックス内で採取し、遠心分離機で集菌した。次に、集菌した菌液をイオン交換水で再懸濁し所定の細胞濃度(7×1015cells/m3)となるように調整した。なお、反応液中のPdイオンの初期濃度は、実施例1と同様に1.0mol/m3である。
【0075】
また、反応液を調製した後(菌体懸濁液を添加した後)から120分経過後までの所定時間毎(5分、10分、30分、60分および120分経過時)に反応液をサンプリングし、反応液中のPdイオンの濃度をICP発光分光法により測定した。
【0076】
液相Pd濃度の測定値と処理時間との関係を、
図2(a)(中性反応液を用いた場合)および
図2(b)(酸性反応液を用いた場合)にグラフで示す。なお、各線量(白丸:1.0kGy、黒三角:1.5kGy、白菱形:3.0kGy)の放射線を照射したときの120分経過後のPd濃度減少量と回収率を
図2において別途表で示した。
【0077】
図2(a)に示される結果から、線量1.0kGy、1.5kGyまたは3.0kGyの放射線を照射した後の金属イオン還元細菌であっても、十分な白金族金属の回収能を有していることが分かる。
【0078】
なお、このように、反応液のpHを中性範囲に調整し、反応液中に電子供与体を添加した場合、120分経過時の反応液が黒色化していた(図示せず)ことから、Pdイオンの還元およびPdの析出(バイオミネラリゼーション)が起こっていることが分かる。
【0079】
図2(b)に示される結果から、反応液が酸性である場合(電子供与体の添加なし)でも、線量1.0kGy、1.5kGyまたは3.0kGyの放射線を照射した後の金属イオン還元細菌は、十分な白金族金属イオンの回収能(捕集能)を有していることが分かる。なお、この場合、回収工程において焼成等を行うことで、白金族金属イオンを還元し金属Pdを回収することができる。
【0080】
図3(a)に、実施例2における金属イオン還元細菌(S.algae)細胞とPdナノ粒子の電子顕微鏡写真を示す。この写真は、実施例2において、菌体懸濁液に3.0kGyの放射線を照射して中性反応液を用いた場合の120分経過後の金属イオン還元細菌(S.algae)細胞を撮影したものである。なお、
図3において、(b)は(a)の一部分Aの拡大図であり、(c)は(a)の一部分Bの拡大図であり、(d)は(c)の一部分Cの拡大図である。
【0081】
図3から、バイオ処理工程によって粒子(Pd粒子)が析出し、菌体に捕集されていることが分かる。なお、バイオ処理工程によって析出したPd粒子は、菌体内全体に捕集されていることが分かる。また、析出したPd粒子の粒径は10nm程度以下(2~7nm程度)であった。
【0082】
図4は、実施例2における電子線回折分析の回折パターンを示す図である。
図4に示されるように、電子線回折分析によって求めたPd粒子の格子面間隔(実測値)は、標準試料の金属Pdの格子面間隔(Pd文献値)とほぼ一致した。これにより、菌体に捕集された粒子がPd粒子であることが確認された。
【0083】
上記の実施例1および実施例2の結果から、金属イオン還元細菌(S.algae)または酵母(S.cerevisiae)の懸濁液に対して1kGy~3kGy程度の線量範囲の放射線(ガンマ線)照射を行った場合でも、これらの微生物は十分なPd回収能力を有していることが分かる。
【0084】
[実施例3:酵母による白金族金属の回収実験(反応液に放射線照射)]
実施例1および実施例2では、菌体懸濁液のみに対して放射線を照射したのに対して、本実施例3では、原料溶液と菌体懸濁液を含む反応液に対して放射線を照射した。それ以外の点は、基本的に実施例1と同様にしてPd回収実験を行った。
【0085】
まず、原料溶液としては、初期Pd濃度0.5mol/m3(0.5mM)のPdCl2水溶液を実施例1と同様にして調製した。また、実施例1と同様にしてS.cerevisiaeの菌体懸濁液を調製した。その原料溶液と菌体懸濁液を別々の容器に入れて放射線設備に持参した。
【0086】
上記原料溶液に、菌体懸濁液と、緩衝溶液(KH2PO4/NaOH緩衝溶液(pH7))とを、細胞濃度5.0×1014cells/m3、pH6.7(中性)となる量で添加し、反応液を調製した。なお、反応液中に電子供与体は添加しなかった。
【0087】
このようにして調製した反応液に対して、一定の線量率(3.0kG/h)の放射線(60Coガンマ線)を20分間だけ照射した。すなわち、反応液(微生物)に照射された放射線の線量は1.0kGである。
【0088】
反応液への放射線照射を停止した後すぐに、その現場で反応液をミクロフィルターを用いて濾過し、微生物と溶液を固液分離した。その濾液を実験室に持ち帰り、Pdイオンの濃度をICP発光分光法により測定し、反応液中の測定された液相Pd濃度の初期濃度に対する減少量を回収量とみなして、Pd回収率を算出した。
【0089】
なお、
図5に示すように、反応液中の酵母濃度(菌体濃度)と放射線照射(1.0kGy)の有無を変化させた試験1~5(
図5のグラフ横軸の番号および下欄の枠内の番号に対応)を行った。ただし、試験5では、酵母を添加しない無菌対照の反応液に放射線照射を行った。
【0090】
図5は、実施例3の試験1~5におけるPd回収率を示すグラフである。
図5の試験2および4の結果から、反応液が中性であり、電子供与体が添加されていない場合は、放射線が照射されない環境下では、Pdの回収が難しいと考えられる。これに対して、原料溶液(Pdイオン含有液)および微生物(S.cerevisiae)を含む反応液に対して放射線(
60Coガンマ線:1.0kGy)が照射された場合(試験1および3)は、反応液が中性であり、電子供与体が添加されていない場合でも、Pdの回収が可能であることが分かる。
【0091】
さらに、
図5の右上に示した試験1および3におけるバイオ処理工程後の反応液の写真から、電子供与体が添加されていないにも関わらず、反応液が黒色化しており、Pdイオンの還元およびPd粒子の析出が起こっていることが分かる。
【0092】
図6(a)に、実施例3におけるバイオ処理工程後のS.cerevisiae細胞の電子顕微鏡写真を示す。なお、
図6において、(b)は(a)の一部分Aの拡大図であり、(c)は(b)の一部分Bの拡大図である。
【0093】
図6から、バイオ処理工程によって粒子(Pd粒子)が析出し、菌体に捕集されていることが分かる。なお、バイオ処理工程によって析出したPd粒子は、10nm以下のものが多く、細胞表面(細胞壁周辺)に多く捕集されていた。
【0094】
図7は、実施例3における電子線回折分析の回折パターンを示す図である。
図7に示されるように、電子線回折分析によって求めたPd粒子の格子面間隔(実測値)は、標準試料の金属Pdの格子面間隔(Pd文献値)とほぼ一致した。これにより、菌体に捕集された粒子がPd粒子であることが確認された。
【0095】
実施例3における以上の結果から、原料溶液(白金族金属イオン含有液)および微生物(S.cerevisiae)を含む反応液に対して放射線が照射された場合は、電子供与体(ギ酸塩)を反応液中に添加しなくとも、Pdイオンが還元されて析出したPd粒子が微生物に捕集されることが分かる。
【0096】
実際の本発明の回収方法において、放射性の白金族金属イオンは、バイオ処理工程の前から、原料溶液自体に対して放射線を照射しているため、本実施例3は実施例1よりも実際の本発明の回収方法に近い条件での実験であると言える。したがって、実際の本発明の回収方法においては、電子供与体を添加していない場合でも、実施例1のように白金族金属イオンの還元が生じないとは限らず、本実施例のように白金族金属イオンの還元が生じる可能性が高いと考えられる。
【0097】
なお、この理由として、放射線照射によって電子供与体の役割を果たす何らかの物質が反応液中に生成した可能性が高いと考えられる。したがって、実施例3は、S.cerevisiaeを用いた試験結果であるが、金属イオン還元細菌を用いた場合でも、同様に電子供与体を添加しなくとも、Pdイオンの還元およびPdの析出が可能であると考えられる。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の回収方法は、例えば、高レベル放射性廃棄物(原子力発電所の使用済燃料からウラン・プルトニウムを分離・回収した後に残る液状の廃棄物)などから、白金族金属を回収するために利用される。なお、本発明の回収方法によって回収された放射性の白金族金属(Pd107など)は、例えば中性子を照射することにより、非放射性の白金族金属(Pd106など)に変換された後に、自動車用の触媒コンバータの触媒等として利用することができる。