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特許7029257電池外装体用積層体原反、電池外装体用積層体及び電池外装体用積層体原反の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電池外装体用積層体原反、電池外装体用積層体及び電池外装体用積層体原反の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20220224BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20220224BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220224BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20220224BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20220224BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220224BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220224BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20220224BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/121
H01M50/119
H01M50/131
H01G11/78
B32B15/08 E
B32B15/18
B32B27/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017170211
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019046702
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 宏和
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓馬
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094724(WO,A1)
【文献】特開2005-103955(JP,A)
【文献】特開2017-112014(JP,A)
【文献】特開2016-184477(JP,A)
【文献】特開2016-184478(JP,A)
【文献】特開2015-185277(JP,A)
【文献】特開2007-095460(JP,A)
【文献】特開2017-213804(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046570(WO,A1)
【文献】特開2015-088415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
B32B 15/08
B32B 15/18
B32B 27/18
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシーラント層、バリア層、基材層をこの順で備える電池外装体用積層体原反であって、前記シーラント層は脂肪酸アミド化合物を含み、前記バリア層はステンレス箔からなり、前記シーラント層の表面における算術平均粗さ(Ra)が、0.0μm以上5.0μm以下であり、
前記シーラント層中の脂肪酸アミド化合物の含有量が下記(式1)を満たすことを特徴とする、電池外装体用積層体原反。
60000/(シーラント層の膜厚(μm))≦(脂肪酸アミド化合物の含有量(ppm))≦100000/(シーラント層の膜厚(μm)) ・・・(式1)
【請求項2】
前記基材層の前記バリア層とは反対の面にマット層を備える、請求項1に記載の電池外装体用積層体原反。
【請求項3】
前記マット層は、粒径が1.0μm以上5.0μm以下のマット剤を含む請求項に記載の電池外装体用積層体原反。
【請求項4】
前記バリア層を構成するステンレス箔のアイユニット値が25以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の電池外装体用積層体原反。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電池外装体用積層体原反を枚葉に切断した電池外装体用積層体。
【請求項6】
請求項に記載の積層体を備えた電池外装体。
【請求項7】
請求項に記載の電池外装体を備えた電池。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電池外装体用積層体原反の製造方法であって、
シーラント層とバリア層とを接着剤を用いて貼り合せる工程と、
前記バリア層と基材層とを接着剤を用いて貼り合せて積層体原反とする工程と、
前記積層体原反をロール状に巻き原反ロールとする工程と、
前記原反ロールを40℃以上の条件で50時間以上加熱する工程と、を有する電池外装体用積層体原反の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池外装体用積層体原反、電池外装体用積層体及び電池外装体用積層体原反の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池等の各種電池は電気自動車、ハイブリット電気自動車、パソコン、カメラ等の様々な製品に使用されている。このため電池には多様な形状が要求されるとともに、薄型化や高い強度等の特性が要求されている。電池用外装体には、基材層/接着剤層/金属層/シーラント層がこの順で積層された積層体が使用されている。例えば特許文献1には、金属層にアルミニウム箔を使用した絞り成形用シートが記載されている。このようなシートは、シーラント層同士を対向させて周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより、電池素子を封止できる材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-73384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに最近では、電池内部に水蒸気、酸素等が侵入することを防止するため、電池外装体には高い強度が求められている。
本発明者らはより高い強度を電池外装体に付与するため、金属層にステンレス箔を用いて電池外装体を製造することを試みた。電池外装体は、シーラント層、バリア層、基材層等を積層して貼り合せた積層体をロール状に巻き取った電池外装体用積層体原反を製造し、該電池外装体用積層体原反を枚葉に切断して得られる積層体を加工することにより製造される。
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、金属層にステンレス箔を使用すると、電池外装体に強度は付与されるものの、電池外装体用積層体原反を枚葉に切断することにより得た電池外装体で電池を製造した際、電池外装体表面に印字し難い、という新たな課題に直面した。
本発明者らがさらに検討を進めた結果、この印字のし難さは、電池外装体用積層体原反の保存時に、シーラント層に含まれる滑剤が積層体の表面に浮き出るブリードアウト現象が発生し、滑剤が基材層に付着することによって積層体同士が貼りつくことに起因することを突き止めた。ステンレス箔はアルミニウム箔に比べて伝熱性が高く、滑剤が比較的低分子であり、熱によりシーラント層から析出しやすいためこのような現象が起こると推察される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、積層体同士の貼りつきが抑制され、積層体原反を加工する際の滑り性が良好な電池外装体用積層体原反、電池外装体用積層体及び電池外装体用積層体原反の製造方法を提供することを課題とする。
本発明において「滑り性」とは、電池外装体用積層体原反表面の滑らかさを表す指標である。滑り性は、具体的には実施例に記載の方法により評価することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]少なくともシーラント層、バリア層、基材層をこの順で備える電池外装体用積層体原反であって、前記シーラント層は脂肪酸アミド化合物を含み、前記バリア層はステンレス箔からなり、前記シーラント層の表面における算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上5.0μm以下であることを特徴とする、電池外装体用積層体原反。
[2]前記シーラント層中の脂肪酸アミド化合物の含有量が下記(式1)を満たす、[1]に記載の電池外装体用積層体原反。
60000/(シーラント層の膜厚(μm))≦(脂肪酸アミド化合物の含有量(ppm))≦100000/(シーラント層の膜厚(μm)) ・・・(式1)
[3]前記基材層の前記バリア層とは反対の面にマット層を備える、[1]又は[2]に記載の電池外装体用積層体原反。
[4]前記マット層は、粒径が1.0μm以上5.0μm以下のマット剤を含む[3]に記載の電池外装体用積層体原反。
[5]前記バリア層を構成するステンレス箔のアイユニット値が25以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の電池外装体用積層体原反。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載の電池外装体用積層体原反を枚葉に切断した電池外装体用積層体。
[7][6]に記載の積層体を備えた電池外装体。
[8][7]に記載の電池外装体を備えた電池。
[9][1]~[5]のいずれか1つに記載の電池外装体用積層体原反の製造方法であって、シーラント層とバリア層とを接着剤を用いて貼り合せる工程と、前記バリア層と基材層とを接着剤を用いて貼り合せて積層体原反とする工程と、前記積層体原反をロール状に巻き原反ロールとする工程と、前記原反ロールを40℃以上の条件で50時間以上加熱する工程と、を有する電池外装体用積層体原反の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層体同士の貼りつきが抑制され、積層体原反を加工する際の滑り性が良好な電池外装体用積層体原反、電池外装体用積層体及び電池外装体用積層体原反の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の電池外装体用積層体原反の断面の模式図である。
図2】本発明の電池外装体用積層体原反の模式図である。
図3】アイユニット値の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<電池外装体用積層体原反>
本発明は、少なくともシーラント層、バリア層、基材層をこの順で備える電池外装体用積層体原反である。
図1に、本実施形態の電池外装体用積層体原反1の概略断面図を示す。本実施形態の電池外装体用積層体原反1は、シーラント層17、バリア層14及び基材層11をこの順で備える。
また、好ましい実施形態においては、図1に示すように、シーラント層17、第2の接着層16、第2の防腐層15、バリア層14、第1の防腐層13、第1の接着層12、基材層11及び基材コート層10をこの順で備える。
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0011】
≪シーラント層≫
シーラント層は、本実施形態の電池外装体用積層体原反において、最内層に該当し、電池を組み立てたときにシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層の材質は、熱溶着可能な材料であれば特に限定されず、例えばポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0012】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0013】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。
また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、環状アルケンが好ましくノルボルネンがより好ましい。
【0014】
シーラント層17は、1種の樹脂成分を単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。
【0015】
また、シーラント層17の厚さとしては、適宜選定することができる。本実施形態においては、一例を挙げると、10μm以上100μm以下、15μm以上50μm以下である。
【0016】
[脂肪則アミド化合物]
本実施形態において、シーラント層17は脂肪酸アミド化合物を含む。脂肪酸アミド化合物は滑剤として存在する。滑剤である脂肪酸アミド化合物は、シーラント層を構成する樹脂中を移動しやすく、シーラント層17の表面に偏析しやすい。これにより、電池外装体用積層体原反を加工する際のシーラント層17の表面の滑り性を向上させることができる。
【0017】
本実施形態において脂肪酸アミド化合物としては、特に制限されないが、成形性及び電池の連続生産性をより向上させる観点からは、炭素数18以上の飽和脂肪酸アミド化合物が好ましい。
具体的には、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、アラキジン酸アミドなどが挙げられる。本実施形態においては中でもエルカ酸アミドが特に好ましい。
【0018】
シーラント層17に脂肪酸アミド化合物を存在させる方法としては、電池外装体用積層体原反のシーラント層17の表面に脂肪酸アミド化合物をコーティングする方法や、シーラント層17を形成する樹脂に脂肪酸アミド化合物を配合する方法が挙げられる。
なお、シーラント層17の表面に脂肪酸アミド化合物をブリードアウトさせる方法としては、電池外装体用積層体原反を40℃以上の温度で、数時間~3日間程度保存する方法が挙げられる。これにより、脂肪酸アミドのブリードを促進できる。脂肪酸アミド化合物をブリードアウトするための具体的な方法は、後述する本発明の電池外装体用積層体原反の製造方法において詳細に記載する。
【0019】
本実施形態において、前記シーラント層中の脂肪酸アミド化合物の含有量は、下記(式1)を満たすことが好ましい。
60000/(シーラント層の膜厚(μm))≦(脂肪酸アミド化合物の含有量(ppm))≦100000/(シーラント層の膜厚(μm)) ・・・(式1)
【0020】
また、本実施形態においてシーラント層17に存在する脂肪酸アミド化合物の含有量は、シーラント層17における質量基準で1000ppm以上が好ましく、1500ppm以上がより好ましく、3000ppm以上が特に好ましい。また、シーラント層17に存在する脂肪酸アミド化合物の含有量は、6000ppm以下が好ましく、5500ppm以下がより好ましく、5000ppm以下が特に好ましい。
【0021】
シーラント層17に存在する脂肪酸アミド化合物の含有量が上記下限値以上であることにより、電池外装体用積層体原反に十分な滑り性を付与できる。また、上記上限値以下とすることにより、電池外装体用積層体原反表面に過度に滑剤が存在することを抑制し、例えば絞り成形加工する際に金型に滑剤が付着することを防止できる。
【0022】
なお、これら値は、シーラント層17の表面及び内部に存在する脂肪酸アミド化合物が、全てシーラント層17中に存在するとした場合における含有割合の合計を意味する。例えば、シーラント層17を形成する樹脂成分に脂肪酸アミド化合物を配合する場合、シーラント層17中における脂肪酸アミド化合物の含有割合が、それぞれ上記の値となるように配合してシーラント層17を形成する。これにより、シーラント層17の表面及び内部に存在する脂肪酸アミド化合物の含有割合を、それぞれ上記の値にすることができる。
【0023】
本実施形態において、前記シーラント層の表面は、微細な凹凸を有する。前記シーラント層の表面における算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上5.0μm以下である。本実施形態において、Raは0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、2.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。Raが上記下限値以上であることにより、積層体同士の貼りつきを抑制でき、電池外装体用積層体原反を加工する際の滑り性を良好なものとすることができる。
上記上限値以下とすることにより、電池外装体用積層体原反の表面の外観を良好なものとすることができる。
【0024】
ここで、「シーラント層の表面」とは、バリア層が積層されている面とは反対の面を意味する。
なお、シーラント層17の表面における算術平均粗さ(Ra)は、日本工業規格 JIS B0601-1994に基づいて算出される。
【0025】
図2(a)にロール状の本実施形態の電池外装用積層体原反20を示す。図2(a)の破線20aで囲まれた部分を拡大した図を図2(b)に示す。積層体20は、基材層21、第1の接着層22、第1の防腐層23、バリア層24、第2の防腐層25、第2の接着層26及びシーラント層27とからなる。なお、基材層21のバリア層積層面とは反対の面に、基材コート層(不図示)を有していてもよい。
【0026】
電池外装体用積層体原反をロール状に巻き取った場合、最内面のシーラント層27は、最外層の基材層21に接する。本実施形態において、シーラント層27は滑剤として脂肪酸アミド化合物を含むため、シーラント層27が基材層21に貼りつくことを抑制できる。
さらに、本実施形態において、バリア層24はステンレス箔からなる。ステンレス箔は他の金属箔に比べて伝熱性が高い。このため、例えば電池外装体用積層体原反の加工時や、保管時に熱がかかるとシーラント層に含まれる脂肪酸アミド化合物がブリードアウトしやすい。
本発明においては、シーラント層の表面に微細な凹凸を形成したことにより、基材層21との接触面積を小さくすることができる。さらに、シーラント層表面の微細な凹凸の凹部と、基材層21との間に形成される隙間に滑剤が出やすく、シーラント層表面に適度な量の滑剤を存在させることができる。これにより、たとえ脂肪酸アミド化合物が過度にブリードアウトした場合であっても、脂肪酸アミド化合物が基材層21側に付着することを抑制できると推察される。
【0027】
≪バリア層≫
本実施形態において、バリア層14はステンレス箔からなる。バリア層14の厚さは、100μm以下が好ましく、5μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上30μm以下がより好ましく、10μm以上20μm以下が特に好ましい。上記下限値以上とすることによって、積層体10に十分な機械的強度を与え、二次電池等の電池に使用した際に、電池の耐久性を高めることができる。また、バリア層17の厚さを上記上限値以下とすることによって、積層体10を十分に薄いものとすることができ、且つ、十分な絞り加工性を与えることができる。
【0028】
[アイユニット値]
本実施形態において、バリア層を構成するステンレス箔のアイユニット値は25以下であることが好ましく、22以下がより好ましい。本明細書において、アイユニット値(または「I-Unit値」)の定義は下記の通りである。
【0029】
・I-Unit値の定義
一般に、圧延材等の帯状形状の評価方法として、急峻度あるいは伸び差率が用いられる。急峻度λは、例えば図3に示すように、帯の長手方向(圧延方向)の波の高さHと波のピッチLとを用いて、次式で表される。
λ=H/L
また、伸び差率Δεは、伸び部分の長さΔLを用いて、次式で表される。
Δε=ΔL/L
そして、伸び差[I-Unit]は、ε×10で表される。
【0030】
単位伸び差である1I-Unitは、基準長さL=1m(=1000mm)に対して、伸び部分の長さΔLが10μm(0.01mm)である次式で与えられる。
1I-Unit=0.01mm/1000mm
すなわち、1I-Unit=1.0×10-5で表される。この伸び差[I-Unit]が小さいほど、帯状形状のたるみが少なく、平坦性に優れた形状であることを意味する。
I-Unit値の測定には、非接触三次元測定装置が用いられる。
【0031】
≪基材層≫
基材層11は、十分な機械的強度を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ナイロン(Ny)等のポリアミド樹脂;延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリオレフィン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等からなる層(フィルム)が使用できる。なかでも、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂からなる層が好ましく、PET又はNyからなる層がより好ましい。
基材層11の厚さは、例えば、1μm以上50μm以下とすることができ、1μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。
【0032】
≪マット層≫
本実施形態においては、前記基材層の前記バリア層とは反対の面にマット層を備えていてもよい。
マット層は、本発明では任意の構成であって、電池外装体用積層体原反1にマット性を付与するための層である。マット層により艶消し状の外観が得られるのみならず、光沢度が高い場合に比して電池外装体用積層体原反1の表面の摺り傷等が見え難いという効果も奏し得る。
【0033】
マット層は具体的には、主剤となる樹脂中に微粒子が分散された組成物からなる層が好ましく、樹脂と微粒子とを溶剤に分散したマット剤を、基材層11上に薄く塗布して形成されることがより好ましい。
マット層が含有するマット剤の微粒子は、略球状が好ましく、その大きさは平均粒子径において1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2.0μm以上が特に好ましい。また、5.0μm以下が好ましく、4.5μm以下がより好ましく、4.0μm以下が特に好ましい。
【0034】
なかでもマット層の微粒子としてはアクリル粒子(アクリルビーズ)、及びシリカ粒子からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、これらの併用がより好ましい。マット層の膜厚は、例えば、0.1μm以上1mm以下とすることができ、0.5μm以上100μm以下が好ましい。
【0035】
≪着色層≫
着色層は、本発明では任意の構成であって、積層体10の意匠性を高めるため、表面側(表面コート層10の側)から電池外装体用積層体原反1を目視した際の色味を任意に決定する層である。
着色層を形成する着色剤の種類や、着色層の形成方法は限定されるものではなく、市販の顔料や染料を用いて、バーコーター等の公知の塗布装置により、着色層を形成することができる。
【0036】
≪第1の接着層12≫
第1接着層12は、本発明では任意の構成であって、後述する第2接着層16と同様の構成としてもよく、一般的なウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤からなる層であってもよい。第1接着層12の厚さは、例えば、0.5μm以上10μm以下とすることができる。厚さをこの範囲とすることによって、基材層11とバリア層14とを高い接着力で接着させることができ、層間剥離を防ぐことができる。
【0037】
≪第1防腐層13、第2防腐層15≫
第1防腐層13、第2防腐層15は、いずれも本発明では任意の構成であって、金属からなる層であることが好ましいバリア層14の、錆等による腐食を防ぐための層である。
第1防腐層13、第2防腐層15はいずれも任意構成ではあるが、本発明の電池外装体用積層体原反1を、金属腐食を亢進し得る成分と接触し得る用途で用いる場合には、第1防腐層13、第2防腐層15をバリア層14表面に設けることが好ましい。
例えば、本発明の電池外装体用積層体原反1を、電池外装用として用いる場合であれば、内包される電池から電解液等の薬液が漏れ出るおそれがあり、漏出した薬液はバリア層14の金属を腐食させ得るため、バリア層14表面に腐食防止処理を施すことが好ましい。また、電池外装用途の場合、電解液と接触する可能性が高い側は、内包される電池の側、即ち、バリア層14のシーラント層17の側となるため、少なくとも第2防腐層15を設けることが好ましい。
【0038】
第1防腐層13、第2防腐層15は、ハロゲン化金属化合物を含有することが好ましく、後述するようなハロゲン化金属化合物を、直接バリア層14の表面にメッキ処理してもよい。このような第1防腐層13、第2防腐層15を設けることにより、バリア層14に良好に防錆効果を付与することが可能となる。
また、第1防腐層13、第2防腐層15は、ハロゲン化金属化合物に加えて、さらに、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有することが好ましい。よって第1防腐層13、第2防腐層15としては、ハロゲン化金属化合物と、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有することが好ましく;第1防腐層13、第2防腐層15は、ハロゲン化合物と、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有する水溶液を、下層となる層の上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成されることが好ましい。以下、第1防腐層13、第2防腐層15を、「腐食防止処理剤」ということがある。
【0039】
(ハロゲン化金属化合物)
ハロゲン化金属化合物は、耐電解液性等の耐薬品性を向上させる作用を有する。すなわち、バリア層14の表面を不動態化し、電解液に対する耐腐食性を高めることができる。
第1防腐層13、第2防腐層15が後述する水溶性樹脂を含有する場合には、ハロゲン化金属化合物は水溶性樹脂を架橋させる作用も有する。
ハロゲン化金属化合物は、後述の水溶性樹脂との混和性や水溶性媒体に分散して塗布する場合を鑑みて、水溶性を有することが好ましい。
ハロゲン化金属化合物としては、例えば、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ハフニウム、チタンハロゲン化水素酸、およびそれらの塩、等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素が挙げられ、塩素又はフッ素が好ましい。また、特に好ましくはフッ素である。ハロゲン化金属化合物がフッ素を含有することにより、条件によっては腐食防止処理剤からフッ酸(HF)を発生させることが可能となる。
また、ハロゲン化金属化合物は、ハロゲン原子、金属以外の原子を有していてもよい。
なかでも、ハロゲン化金属化合物としては、鉄、クロム、マンガン又はジルコニウムの塩化物又はフッ化物が好ましい。
【0040】
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体、及び、ポリビニルエーテル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0041】
ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体は、ポリビニルアルコール樹脂又は変性ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化することで製造することができる。ポリビニルアルコール樹脂は変性されていてもよい。
ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等のビニルエステル系モノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。共重合可能な他のモノマーは特に限定されない。
また、重合や共重合は常法により行うことができる。
【0042】
ポリビニルエーテル系樹脂としては、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ノルボルニルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の、脂肪族ビニルエーテルの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。ビニルエーテル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、上述したビニルエステル系モノマーと共重合可能な他のモノマーと同様なものが挙げられる。
特に、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、その他、各種グリコールや多価アルコールのモノビニルエーテル等の、水酸基を有する脂肪族ビニルエーテルをモノマーに含むポリビニルエーテル系樹脂は、水溶性を有し、かつ水酸基に対する架橋反応が可能なので、本発明に好適に用いることができる。
【0043】
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体とポリビニルエーテル系樹脂のうち、いずれか一方のみを用いてもよいし、両方を併用してもよい。
【0044】
(キレート剤)
キレート剤は、金属イオンに配位結合し金属イオン錯体を形成し得る材料である。
キレート剤は、ハロゲン化金属化合物に由来の金属化合物(酸化クロム等)と、前記水溶性樹脂とを結合させて、第1防腐層13、第2防腐層15の圧縮強度を高めるため、第1防腐層13、第2防腐層15の厚みが、例えば0.2μmを越え、1.0μm以下である場合でも、第1防腐層13、第2防腐層15が脆化して割れや剥離が生じることはない。このため、バリア層14と第1防腐層13、第2防腐層15との間の接着強度及び密着性を高めることができる。
また、キレート剤は、水溶性樹脂またはハロゲン化金属化合物と化学反応することにより、水溶性樹脂を耐水化する作用を有する。
【0045】
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、オキシカルボン酸系、(ポリ)リン酸系キレート剤が使用できる。
なかでもキレート剤としては、ホスホン酸系キレート剤、(ポリ)リン酸系キレート剤等のリン酸系のキレート剤(リン酸化合物)が好ましく、ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。
【0046】
(架橋性化合物)
架橋性化合物は、前記水溶性樹脂と反応して架橋構造を形成し得る化合物をいう。このような架橋性化合物を用いることにより、1防腐層13、第2防腐層15内において前述の水溶性樹脂と架橋性化合物とが緻密な架橋構造を形成し、バリア層14表面の不動態性及び耐腐食性をより向上させることができる。
架橋性化合物としては、水溶性樹脂内の親水性基(例えば、カルボキシ基、カルボン酸基等)と反応して架橋構造を形成し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基を有する化合物や、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
【0047】
腐食防止処理剤において、キレート剤と架橋性化合物とは、いずれか一方のみを用いてもよく、両方を併用してもよい。
【0048】
腐食防止処理剤は、水溶性樹脂と、ハロゲン化金属化合物と、キレート剤及び/又は架橋性化合物とを、水を含む溶媒に溶解して製造することができる。
【0049】
第1防腐層13、第2防腐層15の厚さは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm超がより好ましい。また、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0050】
[第2の接着層16]
第2の接着層16は、本発明においては任意の層であって、シーラント層17と、第2防腐層15が表面に形成されたバリア層14とを接着するために設けられる層である。
第2の接着層16を形成する接着剤としては、上記の層を良好に接着し得るものであればその材料は特に限定されるものではないが、例えば、接着性と貯蔵弾性率とを満たし得ることから、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、複数のエポキシ基を含有する化合物(B)と、を含有する接着剤からなる層であることが好ましい。
【0051】
<電池外装体用積層体>
本発明は、前記本発明の電池外装体用積層体原反を枚葉に切断した電池外装体用積層体である。電池外装体用積層体の形状、大きさ等は特に限定されず、電池外装体用積層体の用途に応じて適宜決定することができる。
本発明の電池外装体用積層体を適用できる電池としては、二次電池であるリチウムイオン電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなどの、電解液に有機電解質を使用したものが挙げられる。有機電解質としては、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネートなどの炭酸エステル類を媒質とするものが一般的であるが、特にこれに限定されない。
【0052】
<電池外装体>
本発明は、前記本発明の電池外装体用積層体を備えた電池外装体を提供する。
該電池外装体は、前記本発明の電池外装体用積層体を備える電池外装体であって、正極、負極、電解質等の電池素子を収容する内部空間を有し、前記積層体のシーラント層の側が当該内部空間の側となる電池外装体である。具体的には、シーラント層が内部空間に面するように積層体を所望の形状に成形し、必要に応じて端部を密封等することにより得られるものである。
電池外装体の形状、大きさ等は特に限定されず、用いられる電池の種類に応じて適宜決定することができる。
【0053】
<電池>
本発明は、前記本発明の電池外装体を備えた電池を提供する。
電池としては二次電池であるリチウムイオン電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなどの、電解液に有機電解質を使用したものが挙げられる。
【0054】
<電池外装体用積層体原反の製造方法>
本発明の電池外装体用積層体原反の製造方法は、シーラント層とバリア層とを接着剤を用いて貼り合せる工程と、前記バリア層と基材層とを接着剤を用いて貼り合せて電池外装体用積層体原反とする工程と、前記電池外装体用積層体原反をロール状に巻き原反ロールとする工程と、前記原反ロールを40℃以上の条件で50時間以上加熱する工程と、を有する。
【0055】
本実施形態においては、まず、脂肪酸アミド化合物の含有量を制御したシーラント層17を構成するフィルムを予め準備し、当該フィルム上に、第2の接着層の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥する。その後、バリア層14を構成するステンレス箔を積層して第2の接着層16を硬化させてシーラント層17とバリア層14とを貼り合せる。
【0056】
次に、バリア層14のシーラント層17とは反対の面に第1の接着層の形成に使用される接着剤を代2の接着剤層の形成方法と同様の方法により塗布・乾燥する。その後、基材層11を構成するフィルムを積層して、第1の接着層12を硬化させて、バリア層14とシーラント層17とを貼り合せる。
【0057】
さらに、上記工程により得られた積層体をロール状に巻き原反ロールとする。そして、前記原反ロールを40℃以上の条件で50時間以上加熱する。この工程は、シーラント層17の表面に脂肪酸アミド化合物をブリードアウトさせる工程である。加熱温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。上記の温度で加熱することにより、脂肪酸アミド化合物のブリードアウトを促進できる。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。だたし、以下において実施例5及び実施例6は参考例5及び参考例6とする。
【0059】
<アイユニット値の測定方法>
後述の方法により製造した電池外装体用積層体原反を、流れ方向に1m引き出し、平坦度測定機の底盤に置いて測定した。n数は1とした。
【0060】
<表面粗さの測定方法>
後述の方法により製造した電池外装体用積層体原反のシーラント層の表面を、レーザー顕微鏡VK-9700(株式会社キーエンス社製)により測定し、表面粗さ(Ra)を求めた。n数は3とした。
【0061】
≪実施例1≫
・シーラントフィルムの製造
2000ppmのエルカ酸アミドと、ポリプロピレンとを溶融混合し、厚み40μmのシーラントフィルムを、Tダイ押出機を用いて長尺状のシーラントフィルムを製造し、これを搬送しながら150℃で加熱を行い、表面に0.0μmの凹凸のあるロールと凹凸の無いロールの間にニップ圧をかけながら通すことで、片面に0.0μmの凹凸を有するシーラント層を製造した。
【0062】
・電池外装体用積層体原反の製造
上記で得たシーラントフィルムの凹凸が形成されていない面に、厚み20μmのステンレス金属箔をポリオレフィン系接着剤を用いて貼り合せた。その後、バリア層と基材(厚み20μmのPETフィルム)とをウレタン系接着剤を用いて貼り合せ、積層体を製造した。得られた積層体をロール状に巻き取り、積層体原反を製造した。
さらに、得られた積層体原反を50℃で60時間加熱し、実施例1の電池外装体用積層体原反を得た。
【0063】
≪実施例2≫
前記基材層の前記バリア層とは反対の面に、バーコーターを用いてマット層形成剤を6.0g/mで塗布し、マット層を形成した以外は実施例1と同様にして、電池外装体用積層体原反を得た。
マット層形成剤:アクリルウレタン樹脂の90質量部と、粒径2μmのシリカ粒子の10質量部と、アクリルビーズ(粒径5μm)の1質量部とを、固形分30質量%となるようにメチルエチルケトンに分散させたマット層形成剤、固形分30質量%。
【0064】
≪実施例3~8、比較例1~2、参考例1≫
マット層の有無、シーラント層中のエルカ酸アミドの含有量、シーラント層表面の凹凸を下記表1に示すように変更した以外は実施例1又は2と同様に電池外装体用積層体原反を得た。
【0065】
得られた電池外装体用積層体原反について、「ロール加工時の滑り性」及び「絞り成形性」について、下記の評価項目に従って評価し、その結果を表1に記載した。
【0066】
[ロール加工時の滑り性]
株式会社東洋精機製作所社製、摩擦測定機TR-2を使用して動摩擦係数を測定し、測定値を下記の評価基準に従って評価した。n数は3とした。下記の評価基準において、△以上を合格とした。
【0067】
・評価基準
○:動摩擦係数が0.15以下。
△:動摩擦係数が0.15を超え、0.30以下。
×:動摩擦係数が0.30を超える。
【0068】
[絞り成形性]
サーボモーター式の絞り成形機を用いて、積層体を絞り成形を行った場合に、下記の評価基準に従って評価した。n数は10とした。下記の評価基準において、△以上を合格とした。
【0069】
・評価基準
○:3.0mmの深さの深絞り成形が可能であった。
△:2.0mmの深さの深絞り成形が可能であった。
×:2.0mmの深さの深絞り成形を行ったところ、破れが生じた。
【0070】
【表1】
【0071】
上記結果に示したとおり、シーラント層中のエルカ酸アミドの含有量が本発明の範囲外である比較例1及び2は、原反を繰り出した時に貼りつきが生じ、ロール加工時の滑り性及び絞り成形性がいずれも不良であった。
これに対し、シーラント層中のエルカ酸アミドの含有量が本発明の範囲内である実施例1~8は、ロール加工時の滑り性及び絞り成形性が△以上であり、合格基準を満たしていた。
実施例2又は4と、実施例5とを比較すると、シーラント層中のエルカ酸アミドの含有量がより多い実施例2又は4の方が、ロール加工時の滑り性及び絞り成形性がより良好であった。
さらに、アイユニット値が低い実施例8は加工性がより優れていた。
【符号の説明】
【0072】
1、20:電池外装体用積層体原反、10:マット層、11、21:基材層、12、22:第1の接着層、13、23:第1の防腐層、14、24:バリア層、15、25:第2の防腐層、16、26:第2の接着層、17、27:シーラント層
図1
図2
図3