(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】ガゼット袋および振とう型培養装置
(51)【国際特許分類】
B65D 30/16 20060101AFI20220224BHJP
B65D 77/06 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B65D30/16 F
B65D77/06 F
(21)【出願番号】P 2017225678
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓也
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076794(JP,A)
【文献】特開2014-037259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0104120(US,A1)
【文献】特開2008-212049(JP,A)
【文献】特開2003-191967(JP,A)
【文献】特開平09-165054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/16
B65D 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に対向する前面壁及び後面壁と、
前記前面壁の幅方向の一方の側端部と前記後面壁の幅方向の一方の側端部との間を接続して、その間の少なくとも1箇所で前記幅方向の内方に折り込まれるガゼット部を構成する第1の側面壁と、
前記前面壁の幅方向の他方の側端部と前記後面壁の幅方向の他方の側端部との間を接続して、その間の少なくとも1箇所で前記幅方向の内方に折り込まれるガゼット部を構成する第2の側面壁と、を備え、
前記前面壁及び前記後面壁は、上下両端部に近づくほど幅が狭くなる斜辺部に沿ってシールされた斜辺シール部を有し、
前記第1の側面壁の有するガゼットの前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG1、前記第2の側面壁の有するガゼットの前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG2、これらに前記前面壁及び前記後面壁の個数を加えた数をN=G1+G2+2として、前記幅方向の両側に対応する前記斜辺シール部の成す角度θが80°以下であり、前記G1または前記G2の少なくとも一方が2以上であり、前記Nが5以上であり、前記θと前記Nとの積であるNθが280~400°の範囲内であ
り、
前記上下両端部のうち上端部により構成される天面は、前記前面壁または前記後面壁のいずれかにおいて、前記幅方向に対向する前記斜辺シール部の間に第1の注出口を有し、前記第1の注出口には、チューブが取り付けられ、
前記上下両端部のうち下端部により構成される底面は、前記前面壁または前記後面壁のいずれかにおいて、前記幅方向に対向する前記斜辺シール部の間に第2の注出口を有し、前記第2の注出口には、チューブが取り付けられ、
前記上端部および前記下端部のそれぞれにおいて、前記斜辺シール部の間で、前記前面壁の内面と前記後面壁の内面とが直接対向して接合された先端シール部を有することを特徴とするガゼット袋。
【請求項2】
前記第1の側面壁または前記第2の側面壁のうち、前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数が2以上である側面壁は、前記ガゼット部のそれぞれが異なる側面フィルムから構成され、
前記側面フィルムのそれぞれが、前記幅方向の内方に折り込まれる部分に折り線を有し、前記折り線を介した両方の側端部は、前記前面壁と前記後面壁との間で順に隣接するフィルムの側端部と、各フィルムの内面同士のシールにより接合されていることを特徴とする請求項1に記載のガゼット袋。
【請求項3】
前記第1の側面壁及び前記第2の側面壁は、前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数を同数とすることを特徴とする請求項1または2に記載のガゼット袋。
【請求項4】
前記Nが5~10であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガゼット袋。
【請求項5】
培養細胞、バイオ医薬品、再生医療等製品のいずれかの製造用もしくは保存用のガゼット袋
である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガゼット袋。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のガゼット袋と、前記ガゼット袋を収容する外殻容器とを備える、振とう型培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガゼット袋および振とう型培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガゼット袋を用いた振とう型培養装置が開示されている。
特許文献2には、ガゼット袋を用いたバッグインボックスが開示されている。
特許文献3には、円筒型のドラム缶用内袋を用いた培養装置が開示されている。
特許文献4には、天面に注出口を設けたドラム缶用内袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-136928号公報
【文献】特開2001-253474号公報
【文献】特開2007-282629号公報
【文献】特開2005-298038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
培養、輸送、保管等の各種用途の容器として用いる場合、従来のガゼット袋は、内容物を充填して膨らませたとき、特許文献1,2に記載のように略直方体状となる。このため、袋を大型にすると、略直方体の角部において内容物の注出や混合が容易でないという問題があった。
【0005】
略円筒状の袋として、特許文献3,4に記載のように、上下に天面及び底面を有するドラム缶用内袋が知られている。しかし、袋を大型にすると、天面及び底面の折り畳みが容易でないという問題があった。
また、従来のガゼット袋やドラム缶用内袋は、既存のフィルム幅では大型の袋の製造が困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大型にしても折り畳みが容易であり、膨らませたときに略円筒状とすることが可能なガゼット袋および振とう型培養装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、前後に対向する前面壁及び後面壁と、前記前面壁の幅方向の一方の側端部と前記後面壁の幅方向の一方の側端部との間を接続して、その間の少なくとも1箇所で前記幅方向の内方に折り込まれるガゼット部を構成する第1の側面壁と、前記前面壁の幅方向の他方の側端部と前記後面壁の幅方向の他方の側端部との間を接続して、その間の少なくとも1箇所で前記幅方向の内方に折り込まれるガゼット部を構成する第2の側面壁と、を備え、前記前面壁及び前記後面壁は、上下両端部に近づくほど幅が狭くなる斜辺部に沿ってシールされた斜辺シール部を有し、前記第1の側面壁の有するガゼットの前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG1、前記第2の側面壁の有するガゼットの前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG2、これらに前記前面壁及び前記後面壁の個数を加えた数をN=G1+G2+2として、前記幅方向の両側に対応する前記斜辺シール部の成す角度θが80°以下であり、前記G1または前記G2の少なくとも一方が2以上であり、前記Nが5以上であり、前記θと前記Nとの積であるNθが280~400°の範囲内であり、前記上下両端部のうち上端部により構成される天面は、前記前面壁または前記後面壁のいずれかにおいて、前記幅方向に対向する前記斜辺シール部の間に第1の注出口を有し、前記第1の注出口には、チューブが取り付けられ、前記上下両端部のうち下端部により構成される底面は、前記前面壁または前記後面壁のいずれかにおいて、前記幅方向に対向する前記斜辺シール部の間に第2の注出口を有し、前記第2の注出口には、チューブが取り付けられ、前記上端部および前記下端部のそれぞれにおいて、前記斜辺シール部の間で、前記前面壁の内面と前記後面壁の内面とが直接対向して接合された先端シール部を有することを特徴とするガゼット袋を提供する。
【0008】
前記第1の側面壁または前記第2の側面壁のうち、前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数が2以上である側面壁は、前記ガゼット部のそれぞれが異なる側面フィルムから構成され、前記側面フィルムのそれぞれが、前記幅方向の内方に折り込まれる部分に折り線を有し、前記折り線を介した両方の側端部は、前記前面壁と前記後面壁との間で順に隣接するフィルムの側端部と、各フィルムの内面同士のシールにより接合されていてもよい。
【0009】
前記第1の側面壁及び前記第2の側面壁は、前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数を同数としてもよい。
前記Nが5~10であってもよい。
【0010】
前記ガゼット袋は、培養細胞、バイオ医薬品、再生医療等製品のいずれかの製造用もしくは保存用のガゼット袋であってもよい。
また、本発明は、前記ガゼット袋と、前記ガゼット袋を収容する外殻容器とを備える、振とう型培養装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガゼット袋は、側面壁の少なくとも一方に、少なくとも2以上のガゼット部を有するので、大型にしても折り畳みが容易であり、膨らませたときに略円筒状とすることが可能である。また、ガゼット部のそれぞれが異なる側面フィルムから構成される場合、既存のフィルム幅で作製できない大きさのバッグも容易に製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ガゼット袋を折り畳んだ状態の一例を示す正面図である。
【
図2】ガゼット袋を膨らませた状態の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う横断面図である。
【
図5】ガゼット袋の上下両端部を示す部分拡大図である。
【
図6】培養容器を収容する外殻容器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に、本実施形態のガゼット袋を折り畳んだ状態の一例を示す。また、
図2に、本実施形態のガゼット袋を膨らませた状態の一例を示す。本実施形態のガゼット袋10は、前後に対向する前面壁12及び後面壁13と、前面壁12と後面壁13との間を接続する側面壁18,19と、を備えている。左右の側面壁18,19は、それぞれ前側の側面フィルム14と、後側の側面フィルム15を備えている。
【0014】
前面壁12と前側の側面フィルム14との間、前後の側面フィルム14,15の間、及び後面壁13と後側の側面フィルム15との間は、それぞれシール部11により接合されている。また、前面壁12及び後面壁13は、上下両端部に近づくほど幅が狭くなる斜辺部に沿ってシールされた斜辺シール部11bを有する。斜辺シール部11bは、側面フィルム14,15の間のシール部11にも含まれている。上下の斜辺シール部11bの間は、フィルムの側端部同士が側端シール部11aにより接合されている。
【0015】
前面壁12、後面壁13、側面フィルム14、15のいずれかに、注出口16を有する構成とすることができ、なかでも前面壁12、後面壁13のいずれかに注出口16を有する構成とすることが好ましい。前面壁12、後面壁13のいずれかに注出口16を有する構成とするときは、上下両端部の少なくとも一方において、幅方向に対向する左右の斜辺シール部11b,11bの間に注出口16を有することが好ましい。注出口16には、チューブ17が取り付けられていてもよい。
本実施形態のガゼット袋は
図1に示すように従来のガゼット袋よりも縦長であるため、材料となる樹脂フィルムも縦長とすることができる。そのため幅手方向に長さの制限のあるロール状の樹脂フィルムを用いて本実施形態のガゼット袋を製造するときであっても、大きな容量のガゼット袋を製造することができるという利点がある。
【0016】
図3に、ガゼット袋を折り畳んだ状態の横断面図を示す。また、
図4に、ガゼット袋を膨らませた状態の横断面図を示す。
第1の側面壁18は、前面壁12の幅方向の一方の側端部12aと、後面壁13の幅方向の一方の側端部13aとの間を接続している。第1の側面壁18は、これらの側端部12a,13aの間の少なくとも1箇所で幅方向の内方に折り込まれるガゼット部である。
第2の側面壁19は、前面壁12の幅方向の他方の側端部12bと、後面壁13の幅方向の他方の側端部13bとの間を接続している。第2の側面壁19は、これらの側端部12b,13bの間の少なくとも1箇所で幅方向の内方に折り込まれるガゼット部である。
【0017】
側面壁18,19において、幅方向の内方に折り込まれるガゼット部のそれぞれが異なる側面フィルム14,15から構成されている。この場合、それぞれの側面フィルム14,15は、前面壁12及び後面壁13と幅が略同等のフィルムから構成することができる。それぞれの側面フィルム14,15は、幅方向の内方に折り込まれる部分に折り線14c,15cを有する。また、側面フィルム14,15は、折り線14c,15cを介した両側に、前側の側端部14a,15aと、後側の側端部14b,15bを有する。ガゼット袋が6枚(後述するNと同数)のフィルムから構成されるため、
図2及び
図4に示すように膨らませた状態では周囲の長さがフィルム幅の6倍で、大容量のバッグが得られる。
【0018】
前側の側面フィルム14のうち前側の側端部14aは、それぞれ前面壁12の側端部12a,12bに接合されている。前側の側面フィルム14のうち後側の側端部14bは、それぞれ後側の側面フィルム15のうち前側の側端部15aに接合されている。後側の側面フィルム15のうち後側の側端部15bは、それぞれ後面壁13の側端部13a,13bに接合されている。このように、前側の側面フィルム14の側端部14a,14bは、隣接する前面壁12及び側面フィルム15の側端部12a,12b,15aと接合されている。また、後側の側面フィルム15の側端部15a,15bは、隣接する後面壁13及び側面フィルム14の側端部13a,13b,14bと接合されている。側端部12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b同士の各シール部は、フィルムの内面同士を対向させたシールにより構成されている。
【0019】
なお、側面フィルム14,15間をシール部で接合する代わりに、各側面壁18,19を1枚のフィルムから構成することも可能である。この場合、各側面壁18,19は、V字状に折り畳まれた2枚の側面フィルム14,15の代わりに、W字状に折り畳まれた1枚のフィルムからなり、幅方向の内方に折り込まれる折り線と、幅方向の外方に折り込まれる折り線とを、交互に有する。幅方向の外方に折り込まれる折り線に沿ってシール部が設けられてもよく、外方のシール部が省略されてもよい。
【0020】
第1の側面壁18の有するガゼットの幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG1、第2の側面壁19の有するガゼットの前記幅方向の内方に折り込まれる箇所数をG2、これらに前面壁12及び後面壁13の個数(すなわち2)を加えた数をN=G1+G2+2として、本実施形態の場合は、G1=2であり、G2=2であり、N=6である。
【0021】
第1の側面壁18の有するガゼットの個数G1と第2の側面壁19の有するガゼットの個数G2は、異なってもよいが、G1=G2と同数であることが好ましい。Nは4より大きい数であり、例えば、5~10であってもよい。Nが7、8、9等でもよく、6~8がより好ましい。G1またはG2の少なくとも一方が2以上であれば、G1またはG2の一方が1であってもよい。なお、特許文献1,2に開示されるガゼット袋の場合、G1=1であり、G2=1であり、N=4である。
【0022】
前面壁12及び後面壁13の上下両端部において、幅方向の両側に対応する斜辺シール部11bの成す角度θが、例えば80°以下であり、72°以下とすることができる。θの下限は20°以上とすることができ、30°以上であることが好ましい。N=5の場合は、θは約72°とすることができ、N=6の場合、θは約60°とすることができる。角度θと数Nとの積であるNθが280~400°の範囲内である。これにより、
図2及び
図4に示すようにガゼット袋10を膨らませたとき、N個の壁面が
図3に示すように略N角柱状の筒面を構成し、N個の壁面の上下両端部が、略360°の端面を構成する。ここで、上端部により構成される端面は天面であり、下端部により構成される端面は底面である。Nθの値を360°としたときは、膨らませたガセット袋の天面や底面は平面に近づく。Nθの値を360°未満とすると、膨らませたガゼット袋の天面や底面は凸状もしくは凹状になる。凸状となると、天面が多角錐状となり、とんがり帽子のような形状となる。Nθの値を360°よりも大きな値とすると、天面や底面はシワが入った形状となりやすい。Nθは300°以上であることが好ましく、320°以上であることがさらに好ましい。このような値をとることによりガゼット袋の天面や底面が平面に近づく。また、Nθは400°以下であることが好ましく、360°以下であることがさらに好ましい。このような値を取ることにより天面や底面にシワの入らないガゼット袋とすることができる。
【0023】
本実施形態のガゼット袋10は、バッグインボックス等の輸送容器、保管容器等の包装容器に限らず、培養容器、反応容器等としても用いることができる。本実施形態のガゼット袋10は、膨らませた状態で略円柱状となるので、円筒状の外装容器または外殻容器にぴったりと収容させることができる。内面が略円柱状となるので、注出、撹拌、混合などが容易になる。
【0024】
また、
図5に示すように、ガゼット袋10の上下両端部は、左右の斜辺シール部11b,11bの間で、前面壁12の内面と後面壁13の内面とが直接対向して接合された先端シール部11cを有してもよい。これにより、前面壁12及び後面壁13の間で、側面フィルム14,15を容易に折り畳むことができる。
【0025】
ガゼット袋10は、二重袋や三重袋などの多重袋であってもよい。この場合、液体が漏れにくいのでより好ましい。本実施形態のガゼット袋10を多重袋とする場合には、内側のガゼット袋の各側面部と外側のガゼット袋の各側面部とが重なり合うとき、ガゼットの個数及び位置が対応することが好ましい。
【0026】
ガゼット袋10を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂や、これらの積層体フィルムを用いることにより、作られる医薬品の製品品質の担保を容易にすることができる。多重袋の場合、内側のガゼット袋と外側のガゼット袋の材質が異なってもよい。例えば、内側のガゼット袋がポリエチレン(PE)の単層フィルム、外側のガゼット袋がポリエチレン(PE)/ナイロン(Ny)/ポリエチレンテレフタレート(PET)の多層フィルムから構成されてもよい。ガゼット袋を構成する部位に応じて、各フィルムの厚さが異なってもよい。
【0027】
ガゼット袋10の容量(大きさ)は特に限定されないが、例えば0.1L~5000Lの大きさとすることができ、好ましくは100~3000Lである。ガゼット袋10は、シングルユース(使い捨て)であってもよい。例えば、容量が20Lのとき、横160mm程度、縦400mm程度としてもよい。また、容量が200Lのとき、横800mm程度、縦2800mm程度としてもよい。さらに寸法を大きくすれば、500~3000L程度の容量にも対応可能である。
【0028】
ガゼット袋10には、培地や雰囲気ガス等の内容物の追加、取り出し等の目的で、複数のチューブ17を連結することができる。また、ガゼット袋10は、注出口16を備えることができる。注出口16には、コック、キャップ、先細り状の注ぎ口等を設けることもできる。注出口16にチューブ17を連結してもよい。本実施形態の場合、注出口16の基部がフィルムの裏側にシールされることにより、注出口16がガゼット袋10に固定されている。
【0029】
チューブの材質は特に限定されないが、シリコーン、熱可塑性エラストマー等、耐薬品性、耐候性等に優れる材質が好ましい。チューブには、フィルター、フローモニター、流量計、バルブ、ポンプ等を設けてもよい。
【0030】
本実施形態のガゼット袋は細胞の培養(培養細胞の製造)もしくは保存に好適であり、またバイオ医薬品や再生医療等製品の製造プロセスにおいて撹拌もしくは保存を行うことができる。
バイオ医薬品は、生物を用いて製造または抽出または半合成等をされた医薬品である。再生医療等製品は、(1)人または動物の細胞に培養等の加工を施したものであって、身体の構造または機能の再建または修復または形成するもの、または、(2)人または動物の細胞に培養等の加工を施したものであって、疾病の治療または予防を目的として使用するもの、または、(3)遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するものである。
本実施形態のガゼット袋に前記の細胞や医薬品、医薬品や再生医療等製品の中間体を入れ、培養や撹拌をする際には、せん断応力がかかりにくいという利点がある。また、本実施形態のガゼット袋に入れて保存を行うと、本実施形態のガゼット袋は立方体のガゼット袋に比べて内容物の体積に対する壁面の割合が少ないため、容器表面に起因する劣化が起こりづらくなるという利点がある。
【0031】
本実施形態のガゼット袋を用いて、例えば
図6に示すような外殻容器20を持つ、
図7に示すような振とう型培養装置30を用いて細胞の培養を行うことができる。本実施形態のガゼット袋を用いて振とう型培養装置30を用いて振とう培養を行うと、培養袋となるガゼット袋の内部の液体に含まれる細胞に撹拌によるシェア(せん断応力)がかかりにくくなる。これは、本実施形態のガゼット袋が従来の立方体状のガゼット袋よりも、より円柱に近いガゼット袋となるために外殻容器にフィットしやすく、ガゼット袋にシワが寄りにくくなり、振とう撹拌を行ったときに内部の溶液が流動しやすくなり、低せん断応力を実現できるためである。これにより振とう撹拌における細胞の死滅を防ぐことができ、効率のよい培養を達成することができる。
図6は
図7に示す振とう型培養装置に含まれる、外殻容器20の一例である。外殻容器20は、ガゼット袋10を保護するため、ガゼット袋10全体を収容することができる。外殻容器の構成は特に限定されないが、
図6の外殻容器20は、側壁部21a及び底壁部21bを有する容器本体21と、側壁部21aの上方開口部を閉鎖する蓋部22とを備える。側壁部21aによりガゼット袋10の上下方向で全体又は大部分を収容できる場合、蓋部22を省略してもよい。ガゼット袋10の側面の下部を容器本体21で覆い、ガゼット袋10の側面の上部を蓋部22で覆うこともできる。
【0032】
内部の温度変動を抑制するためには、外殻容器20に対して培養袋を出し入れするための開口部を蓋部22で閉鎖することが好ましい。蓋部22は、容器本体21から分離可能な取り外し式でもよく、ヒンジ等により容器本体21に対して開閉可能に連結されてもよい。外殻容器20(例えば、容器本体21及び蓋部22)の材質は、培養袋を保護可能な硬さ(剛性)を有することが好ましく、例えば、ステンレス等の金属、樹脂、木材、集成材、繊維強化プラスチック等の複合材料が挙げられる。外殻容器の内部空間は円柱形状であり、外殻容器の底面に円柱の円部分が位置することが、撹拌効率の観点から好ましい。内部空間の円柱の底面に位置する円の直径(内径)と円柱の高さとの比は、例えば1:2~2:1である。内径と高さが同等(比が1:1)でもよい。
【0033】
ガゼット袋10を培養袋とする場合の内容物は、液体(培地)と気体を含むことが好ましい。気体と液体の容量比(気液容量比)は特に限定されず、液体が気体より多くても、気体が液体より多くてもよく、半々程度でもよい。気液容量比は、例えば1:9~9:1の範囲が好ましい。ガゼット袋10が少なくとも液体(培地)を収容する範囲の全体ないし大部分で、ガゼット袋10が外殻容器20に密着し、外殻容器20がガゼット袋10の側面を支持することが好ましい。ガゼット袋10に気体が収容される部分では、ガゼット袋10の上部(一部)が外殻容器20の上(外)に露出されてもよい。
【0034】
側壁部21aには、外殻容器20に収容された培養袋の内容物の量(液面)を目視で確認するための窓23を有する。窓23は、側壁部21aの上下方向にスリット状の切れ目として設けられている。窓23は、開口してもよく、透明な材料で閉鎖されてもよい。また、底壁部21b及び蓋部22には、チューブ17を通すための穴24,25を有する。本実施形態のガゼット袋を用いて培養を行うときは、
図2の底面にある注出口16にチューブ17を接続し、
図6に示す培養装置の外殻容器20の穴25に通して撹拌し培養を行うことができる。これにより、ガゼット袋の内容物が底面からチューブを介して排出しやすくなるため、排出作業を行いやすくなり好ましい。
【0035】
外殻容器の振とう動作の一例として、外殻容器20の平面形状は円形、立体形状は中心軸を略上下に向けた円柱であり、外殻容器20の中心が半径Rの軌道上で回転(公転)してもよい。振とうの振幅は、例えば半径Rの2倍である。さらに外殻容器20を中心周りに回転(自転)させてもよい。
振とうの際、培養袋を収容した外殻容器20は、水平方向に回転することが好ましい。
本実施形態のガセット袋は、外箱として種々の外殻容器中に入れて使用をすることができる。外殻容器としては、球状、円柱状、多角柱状、立方体などの形状が挙げられるが、特に円柱状や多角柱状とすることが好ましく、ガゼット袋の形状に近い形状の外殻容器であることが好ましい。円柱状や多角柱状の外殻容器とすると、外殻容器を縦に積んだ際に強度が上がるという利点もある。外殻容器の材質は特に限定されないが、金属製、プラスチック製、段ボール製、木製等が挙げられる。
【0036】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…ガゼット袋、11…シール部、11b…斜辺シール部、12…前面壁、13…後面壁、14,15…側面フィルム、16…注出口、17…チューブ、18…第1の側面壁、19…第2の側面壁、20…外殻容器、30…振とう培養装置、31…台部、32…枠部、33…動力源。