(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】有機系下層膜を除去する方法、及び酸性洗浄液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220224BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/308 G
(21)【出願番号】P 2017253915
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】平野 勲
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-059831(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096371(WO,A1)
【文献】特開2008-260873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の有機系下層膜を酸性洗浄液と接触させることにより、前記基板上から前記有機系下層膜を除去する方法であって、
前記酸性洗浄液が、アルキルスルホン酸を含み、
前記アルキルスルホン酸が有するアルキル基中の水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子により置換されていてもよ
く、
前記有機系下層膜が、カーボンハードマスクである、方法。
【請求項2】
前記酸性洗浄液における、前記アルキルスルホン酸の含有量が40質量%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機系下層膜が、エーテル結合及び/又はエステル結合を有する樹脂を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性洗浄液が、メタンスルホン酸及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基板を前記酸性洗浄液に浸漬させる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
50℃以上170℃以下の前記酸性洗浄液と、前記有機系下層膜とを接触させる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法において、前記有機系下層膜を前記基板上から除去するために用いられる酸性洗浄液であって、
前記酸性洗浄液が、アルキルスルホン酸を含み、
前記アルキルスルホン酸が有するアルキル基中の水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子により置換されていてもよ
く、
前記有機系下層膜が、カーボンハードマスクである、酸性洗浄液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された有機系下層膜を除去する方法と、当該方法において好適に用いられる酸性洗浄液とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の製造工程では、半導体ウエハ等の基板上に形成された層間絶縁膜や金属膜等の被エッチング膜を、カーボンハードマスクのような有機系硬化膜等をマスク材として使用してエッチングすることで、所定のパターンを形成する工程が行われる。
また、フォトレジスト組成物を用いてフォトリソグラフィー法による加工を行う際に、露光時の基板からの反射による定在波を抑制するために、レジスト膜の下に反射防止膜が形成されることが多い。
このようなマスク材や反射防止膜は下層膜と称される。
【0003】
例えば、エッチング後に基板上に残存するマスク材は基板上からから除去される必要がある。かかる除去の方法としては、例えば、アモルファスカーボンからなるマスク材を、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)を用いて、湿式法により除去する方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)を用いてマスク材の除去を行う場合、有機系硬化膜の除去を良好に行える一方、基板上に設けられた高誘電率材料(High-k材料)や、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージが生じやすい問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージを抑制しつつ、基板上に形成されたマスク材や反射防止膜等の有機下層膜を良好に除去できる、有機下層膜を除去する方法と、当該方法において好ましく用いることができる酸性洗浄液とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基板上の有機下層膜を除去する際に、有機下層膜を酸性洗浄液と接触させ、酸性洗浄液としてハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸を含む酸性洗浄液を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、基板上の有機系下層膜を酸性洗浄液と接触させることにより、前記基板上から前記有機系下層膜を除去する方法であって、
酸性洗浄液が、アルキルスルホン酸を含み、
アルキルスルホン酸が有するアルキル基中の水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子により置換されていてもよい、方法である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる方法において、有機系下層膜を基板上から除去するために用いられる酸性洗浄液であって、
酸性洗浄液が、アルキルスルホン酸を含み、
アルキルスルホン酸が有するアルキル基中の水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子により置換されていてもよい、酸性洗浄液である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージを抑制しつつ、基板上に形成されたマスク材や反射防止膜等の有機系下層膜を良好に除去できる、有機系下層膜を除去する方法と、当該方法において好ましく用いることができる酸性洗浄液とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪有機系下層膜を除去する方法≫
有機系下層膜を除去する方法は、基板上の有機系下層膜を酸性洗浄液と接触させることにより、基板上から有機系下層膜を除去する方法である。
上記方法では、酸性洗浄液としてアルキルスルホン酸を含む酸性洗浄液を用いる。かかる酸性洗浄液を用いることにより、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージを抑制しつつ、基板上から良好に有機系下層膜を剥離することができる。
【0012】
<基板>
基板の種類は、特に限定されない。基板は、例えば、シリコン基板、ガラス基板や金属基板等の無機材料からなる基板であってよく、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等からなる樹脂製の基板であってもよい。
基板としては、典型的にはシリコン基板等の半導体基板である。
なお、基板が樹脂製の基板である場合、基板へのタメージの抑制の点から、例えば、液盛り法等により、基板に酸性洗浄液とが直接接触しないように、有機系下層膜と、酸性洗浄液との接触を行うのが好ましい。
【0013】
基板上には、有機系下層膜以外に、種々の他の層が形成されていてもよい。
他の層としては、絶縁層や、金属やITO等の金属酸化物等の導電性材料からなる導電性層(配線材料)や、半導体層、反射防止層等が挙げられる。
絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜としては、例えば、アルミニウム(Al);アルミニウム-ケイ素(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、アルミニウム-ケイ素-銅(Al-Si-Cu)等のアルミニウム合金(Al合金);チタン(Ti);窒化チタン(TiN)、チタンタングステン(TiW)等のチタン合金(Ti合金);タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、銅(Cu)、コバルト(Co)等が用いられる。
絶縁層としては、例えば、SiO2膜や、酸化アルミニウム、低誘電率膜(Low-k膜)、高誘電率膜(High-k膜)等が挙げられる。
例えば、Low-k膜としては、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率より低い膜である、SiOC膜、SiCOH膜等が挙げられる。High-k膜としては、酸化ハフニウム等の材料からなる膜が挙げられる。
【0014】
以上説明した基板上に、有機系下層膜と、必要に応じて他の層とが、所望する層構成となるように積層される。
【0015】
<有機系下層膜>
有機系下層膜は、半導体素子の製造プロセス等の種々の積層加工プロセスにおいて使用される有機系下層膜であってよい。有機系下層膜としては、例えば、マスク材、反射防止膜等として使用される有機系下層膜が挙げられる。
なお、硬化とは、エポキシ樹脂の硬化反応のような所謂化学的な硬化反応のみならず、樹脂を含む膜をベークすることによる膜の緊密化等の物理的な膜の硬化をも含む概念である。
【0016】
有機系下層膜は、後述する酸性洗浄液による除去が容易である点から、エーテル結合及び/又はエステル結合を有する樹脂を含むのが好ましい。
【0017】
有機系下層膜としては、熱硬化型架橋高分子等からなる層や、フォトレジスト膜(特にイオン注入プロセス用のマスク材として使用されたイオン注入されたフォトレジスト膜)が挙げられるが、典型的には、反射防止膜等の下層膜や、カーボンハードマスク膜(有機ハードマスク膜)である。
リソグラフィープロセスによる微細加工等で、基板上の被エッチング層をエッチングしてパターンを形成する際に、エッチング選択比が被エッチング層と大きく異なる材質からなるパターン化された層を形成し、これをマスクとして被エッチング層のエッチングが行われる。
この被エッチング層とエッチング選択比が大きく異なる、マスクとして使用される層をハードマスクという。
【0018】
市販の反射防止膜材料としては、東京応化工業株式会社製の「SWK-EX1D55」、「SWK-EX3」、「SWK-EX4」、「SWK-T5D60」、「SWK-T7」等や、Brewer science社製の「DUV-42」、「DUV-44」、「ARC-28」、「ARC-29」等の商品名で市販されている材料や、Shipley社製の「AR-3」、「AR-19」等の商品名で市販されている材料等が挙げられる。
【0019】
以下、有機系下層膜の具体例について、いくつかの特許文献を参照しつつ説明する。有機系下層膜は、以下説明する、有機系下層膜の具体例にはなんら限定されない。
なお、以下の説明では、各特許文献に記載される一般式をそのまま引用している。このため、置換基等に関する略号について、異なる複数の一般式中に同一の略号が含まれる場合がある。
このように、異なる複数の一般式中に同一の略号が含まれる場合、各略号の定義は、各一般式についての定義に従う。
【0020】
反射防止膜として使用される有機系下層膜としては、例えば、特許第4895049号公報に記載されるような組成物を用いて形成される有機系下層膜(塗布型下層膜)が知られている。
【0021】
具体的には、特許第4895049号公報に記載の組成物を用いて形成される有機系下層膜(塗布型下層膜)は、下記式(1)又は下記式(2)で表される化合物を含む。
【0022】
【化1】
(式中、Aは芳香族基を有する有機基を示し、R
1はヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、チオール基、アミノ基、又はアミド基を示し、m1はナフタレン環に置換したAの数であり1以上6以下の整数を示し、m2はナフタレン環に置換したR1の数であり0以上5以下の整数であり、m1+m2の和は1以上6以下の整数であり6以外の場合の残部は水素原子を示す。nは2以上7000以下の繰り返し単位を示す。)
【0023】
【化2】
(式中、A、R
1、m1、m2、及びnは式(1)における意味と同じであり、Ar1は置換又は未置換の芳香族基である。)
【0024】
式(1)で表される化合物としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化3】
(式中、Xは単結合、メチレン基、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基、炭素原子数2以上10以下のエーテル結合を有する2価の炭化水素基、又はカルボニル基を示し、Zは-O-、-OC(=O)-で示される連結基を示し、Ar
2は未置換又はカルボン酸、カルボン酸エステル基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、スルホン酸基、若しくはハロゲンで置換された芳香族環を示し、そしてR
1、m1、m2、及びnは式(1)における意味と同じである。)
【0025】
式(2)で表される化合物としては、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【化4】
(式中、X及びZは、式(3)における意味と同一であり、Ar
1は式(2)における意味と同一であり、Ar
2は式(3)における意味と同一であり、そして、R
1、m1、m2、及びnは式(1)における意味と同じである。)
【0026】
カーボンハードマスク膜の材質としては、アモルファスカーボンや種々の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、ノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレン樹脂等の芳香族基を含む樹脂が好ましく用いられる。
【0027】
また、芳香族基を含む樹脂からなるカーボンハードマスク膜としては、例えば、特許第4433933号公報に記載されるような組成物を用いて形成されるハードマスク膜も知られている。
【0028】
具体的には、特許第4433933号公報に記載される組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で表される繰り返し単位とを有する共重合体と、感放射線性酸発生剤と、溶剤とを含有する感放射線性組成物である。
【0029】
【化5】
(式(1)において、R
1は水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、各R
2は相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示し、R
3はエポキシ基を有する1価の有機基を示す。)
【0030】
【化6】
(式(2)において、各R
4は相互に独立に水素原子又は1価の有機基(ただし、エポキシ基を有するものを除く。)を示す。)
【0031】
かかる感放射線性組成物用いて形成されるハードマスク膜は、式(2)で表される繰り返し単位に由来する芳香族基や、式(1)で表される繰り返し単位に由来するエステル結合を含む。
また、式(1)で表される繰り返し単位に含まれるR3で表されるエポキシ基同士が反応すると、エーテル結合が生成し得る。
このように、ハードマスク膜が、エステル結合や、エーテル結合を有するポリマーを含む場合がある。
【0032】
さらに、ハードマスク膜は、フッ素、塩素、硫黄元素を含むこともある。
例えば、ハードマスク膜の材料には種々の目的でフッ素を含有する官能基が導入されることもあるし、ハードマスク膜を備える積層体に対してフッ素含有ガスを用いるドライエッチングが施される場合、ハードマスク膜の材料がフッ素化されることもある。
【0033】
カーボンハードマスク膜について他の材料としては、例えば、特許第5440755号公報、特許第5229044号公報、特許第5920588号公報、国際公開WO2014/014034号、特許第4639919号公報、及び国際公開WO2012/161126号等に記載される材料が挙げられる。
以下、各特許文献に記載の材料について説明するが、一般式の番号や置換基等を示す略号については、各特許文献に記載の番号を用いて説明するため、重複する場合がある。
【0034】
特許第5440755号公報には、下記式(1-1)、(1-2)、(1-3)、又は(1-4)で表される単位構造:
【化7】
と、下記式(2)で表される構造単位と、下記式(3)で表される構造単位:
【化8】
(上記式中、R
3、R
4、R
5、R
10、R
11及びR
12は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1ないし3のアルキル基を表し、
R
6、R
7及びR
8は、それぞれ、水素原子又は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基を表し、
R
9は炭素原子数1ないし10の鎖状又は環状のアルキル基又は炭素原子数6ないし20の芳香族基を表し、また、
R
7とR
8は互いに結合して環を形成していてもよく、
M及びQはそれぞれ直接結合又は連結基を表し、
nは0又は1の整数を表す。)
を含むポリマーであって、当該ポリマーを構成する全ての単位構造の総数を1.0とした場合、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)又は式(1-4)で表される単位構造の数(a)の割合、式(2)で表される単位構造の数(b)の割合及び式(3)で表される単位構造の数(c)の割合が、0.5≦a≦0.8、0.1≦b≦0.2、0.1≦c≦0.3となるポリマーが開示されている。
【0035】
特許第5440755号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、式(2)で表される単位に由来するエステル結合を有する。また、式(3)で表される単位は、エポキシ基(オキシラニル基)又はオキセタニル基を有するため、これらの基同志の反応によって、カーボンハードマスクに含まれるポリマーがエーテル結合を有する場合がある。
さらに、式(1-1)~(1-4)で表される構造単位中の芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0036】
特許第5229044号公報には、
(A)芳香族環を有する重合体と、
(B)下記式(1):
【化9】
(式(1)中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、アダマンチル基、又はグリシジルエーテル基を示す。ただし、複数のRのうち、1つ又は2つがアダマンチル基であるとともに、1つ又は2つがグリシジルエーテル基である。nは0以上3以下の整数を示す。)
で表される化合物と、
(C)有機溶媒と、を含有する組成物を用いて形成されるポリマーをカーボンハードマスクとして使用し得ることが記載されている。
特許第5229044号公報には、(A)芳香族環を有する重合体として、ノボラック樹脂を好適に使用できることも記載されている。
【0037】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、例えば、(A)芳香族環を有する重合体がノボラック樹脂である場合に、フェノール性水酸基と、式(1)で表される化合物が有するグリシジル基との反応により生成するエーテル結合を有する。
さらに、(A)芳香族環を有する重合体や、式(1)で表される化合物に由来する芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0038】
特許第5920588号公報には、下記式(2):
-(-O-Ar2-O-Ar3-T-Ar4-)-・・・(2)
(ただし、式(2)中、Ar2、Ar3、及びAr4はそれぞれ炭素原子数6以上50以下のアリーレン基を含む有機基を表し、Tはカルボニル基を表す。)
で表される構造単位、又は下記式(1)
-(-O-Ar1-)-・・・(1)
(式(1)中、Ar1は炭素原子数6以上50以下のアリーレン基又は複素環基を含む有機基を表す。)
で表される構造単位及び上記式(2)で表される構造単位の組み合わせを含むポリマーが記載されている。
【0039】
特許第5229044号公報に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、芳香族ポリエーテルであって、必然的にエーテル結合を有する。
さらに、特許第5229044号公報に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0040】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂と、下記式(i):
Ar-(X-Q)n・・・(i)
(式(i)中、
Xはカルボニル基又はスルホニル基である。
Qは、1価の複素芳香族基又は-OR1である。R1は、炭素原子数1以上30以下の1価の有機基である。
Arは、芳香族炭化水素基又は複素芳香族基である。
nは1以上8以下の整数である。nが2以上である場合、複数のX及びQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される部分構造を有する架橋剤を含有する組成物を用いて形成されるポリマーが記載されている。
【0041】
国際公開WO2014/014034号には、芳香環を含む樹脂の具体例として、ノボラック樹脂や、ポリアリーレンエーテル等のポリアリーレン系樹脂等について記載され、架橋剤の具体例として下記構造の化合物が開示されている。ノボラック樹脂が下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エステル結合を含む。ポリアリーレンエーテルが下記構造の架橋剤により架橋されて生成するポリマーは、エーテル結合と、エステル結合と、を含む。また、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基を含む架橋剤を用いる場合、生成するポリマーにフッ素原子が含まれ得る。
さらに、国際公開WO2014/014034号に記載のポリマーに含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【化10】
【0042】
特許第4639919号公報には、下記式(4)~(6):
【化11】
(式(4)~(6)において、Rはメチル基を示し;nは0又は1の整数を示す。)
で表される構造単位を有する重合体を含む組成物を用いて形成される膜のハードマスク膜としての使用が記載されている(段落[0035]~[0037]を参照。)。
【0043】
また、特許第4639919号公報には、組成物が、上記の重合体の他に、ポリエーテル類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリイミド類等の種々の樹脂を含んでいてもよいことが記載されている(段落[0063]~[0065]を参照。)。つまり、特許第4639919号公報に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜は、式(4)~(6)で表される構造単位に由来するアミド結合、及びエステル結合のみならず、バインダー樹脂に由来するエーテル結合、アミド結合、エステル結合、及びイミド結合を含み得る。
さらに、特許第4639919号公報に記載の組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれる芳香環は、フッ素含有ガスを用いるドライエッチング等によってフッ素化されることもある。
【0044】
国際公開WO2012/161126号に記載のカーボンハードマスクとして使用される得るポリマーは、下記式(1)で表される構造単位及び下記式(2)で表される構造単位:
【化12】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1以上3以下のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を表し、R
3はヒドロキシ基又はカルボキシ基を表す。
式(2)中、R
4は水素原子又はメチル基を表し、Yは-C(=O)-NH-基又は-C(=O)-O-基で表される連結基を表し、Xはラクトン環を含む基、アダマンタン環を含む基又は置換されていてもよいベンゼン環基、置換されていてもよいナフタレン環基、若しくは置換されていてもよいアントラセン環基を表し、前記Yで表される連結基の炭素原子は前記ポリマーの主鎖と結合する。)
を含むポリマー(A)と、ブロックイソシアネート基、メチロール基又は炭素原子数1以上5以下のアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する架橋性化合物(B)と、溶剤(C)とを含む組成物を用いて形成されるカーボンハードマスク膜が記載されている。
【0045】
国際公開WO2012/161126号に記載される組成物を用いて形成されるハードマスク膜に含まれるポリマーは、式(1)で表される構造単位、又は式(2)で表される構造単位に由来するアミド結合や、式(2)で表される構造単位に由来するエステル結合を有する。
【0046】
上記の特許文献のいくつかにも記載されている通り、所望する構造のポリマーと、架橋剤とを含む組成物を用いて形成される膜が、カーボンハードマスク膜として好ましく使用される。
カーボンハードマスク膜形成用の組成物に配合される一般的な架橋剤としては、特許第5920588号公報に記載されるメラミン系架橋剤、置換尿素系架橋剤、又はこれらのオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤が好ましく、例えば、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、又はメトキシメチル化チオ尿素等の化合物や、特許5867732号の段落[0035]に記載される耐熱性の高い架橋剤である、分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を、架橋剤として特に好ましく用いることができる。
【0047】
このような化合物は下記式(4)で表される部分構造を有する化合物や、下記式(5)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化13】
【0048】
式(4)中、R10及びR11はそれぞれ水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、又は炭素数6以上20以下のアリール基を表し、n10は1以上4以下の整数を表し、n11は1以上(5-n10)以下の整数を表し、(n10+n11)は2以上5以下の整数を表す。
式(5)中、R12は水素原子又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、R13は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表し、n12は1以上4以下の整数を表し、n13は0以上(4-n12)を表し、(n12+n13)は1以上4以下の整数を表す。
オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2以上100以下、又は2以上50以下の範囲で用いることができる。
【0049】
以上説明した材料からなる、反射防止膜、カーボンハードマスク膜やフォトレジスト膜等の有機系下層膜を、後述する酸性洗浄液と接触させることにより、有機系下層膜が良好に除去される。
【0050】
<酸性洗浄液>
酸性洗浄液としては、アルキルスルホン酸を含む酸性洗浄液を用いる。アルキルスルホン酸が有するアルキル基中の水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。以下、本出願の明細書において、「アルキルスルホン酸」は、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキルスルホン酸を意味する。
【0051】
ハロゲン原子としては特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、及び塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0052】
アルキルスルホン酸が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であっても、分岐鎖アルキル基であってもよい。アルキルスルホン酸の炭素原子数は、特に限定されない。アルキルスルホン酸の炭素原子数は、有機系下層膜を良好に除去しやすいことから、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。
アルキルスルホン酸の好適な具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸が挙げられる。
有機系下層膜を特に良好に除去しやすいことから、酸性洗浄液は、メタンスルホン酸、及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸を含むのがより好ましい。
【0053】
酸性洗浄液中のアルキルスルホン酸の含有量は、有機系下層膜を良好に除去できる限り特に限定されない。酸性洗浄液中のアルキルスルホン酸の含有量は、典型的には、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、95質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0054】
酸性洗浄液は、アルキルスルホン酸とともに、脂肪族カルボン酸を含んでいてもよい。脂肪族カルボン酸は、アルキルスルホン酸と比較して一般的に安価である。アルキルスルホン酸と、脂肪族カルボン酸とを併用する場合、酸性洗浄液中のアルキルスルホ酸の含有量が若干少なくとも、酸性洗浄液を用いて有機系下層膜を良好に除去しやすい。
アルキルスルホン酸と併用可能な脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及び乳酸等が挙げられる。
【0055】
酸性洗浄液中の脂肪族カルボン酸の含有量としては、例えば、1質量%以上であり、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよい。
酸性洗浄液中の脂肪族カルボン酸の含有量の上限は、有機系下層膜を良好に除去できる限り特に限定されない。酸性洗浄液中の脂肪族カルボン酸の含有量の上限は例えば50質量以下であり、20質量%以下であってよい。
酸性洗浄液中のアルキルスルホン酸と脂肪族カルボン酸との総量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらにより好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0056】
酸性洗浄液は、有機系下層膜を除去しやすい点で、膜形成性ポリマーを実質的に含有しないのが好ましい。膜形成性ポリマーとは、酸性洗浄液に、酸性洗浄液を有機系下層膜を備える基板上に盛った場合に、酸性洗浄液が容易に流動しないように膜形成できるポリマーである。
また、酸性洗浄液が膜形成性ポリマーを含まない場合、酸性洗浄液が低粘度であるため、剥離対象の有機系下層膜と酸との接触性を向上することができる。
【0057】
酸性洗浄液は、有機系下層膜の除去を阻害したり、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜にダメージを与えたりしない成分であれば、上記の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、防食剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0058】
以上説明した酸性洗浄液と、基板上の有機系下層膜とを接触させることにより、基板上の有機系下層膜を除去する。
酸性洗浄液と、有機系下層膜とを接触させる方法は特に限定されない。好ましい方法としては以下の1)~4)の方法が挙げられる。以下の方法の中では、操作が簡単であり、有機系下層膜全体に酸性洗浄液を接触させやすい点から、1)の浸漬法が好ましい。
1)有機系下層膜を備える基板を、酸性洗浄液中に浸漬する方法
2)有機系下層膜に、酸性洗浄液を盛る方法
3)有機系下層膜に、酸性洗浄液を噴霧する方法
4)有機系下層膜の表面に、酸性洗浄液を流す方法
【0059】
有機系下層膜と接触させる酸性洗浄液の温度は、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージを抑制しつつ、有機系下層膜を良好に除去できる限り特に限定されない。
典型的には、酸性洗浄液の温度は50℃以上170℃以下が好ましく、55℃以上150℃以下がより好ましく、60℃以上120℃以下が特に好ましい。
かかる範囲内の温度の酸性洗浄液を有機系下層膜と接触させることにより、絶縁膜又は配線形成に用いられる金属膜へのダメージを抑制しながら、容易且つ良好に有機系下層膜の除去を行うことができる。
【0060】
有機系下層膜と、酸性洗浄液とを接触させる時間は、有機系下層膜を良好に除去できる限り特に限定されない。酸性洗浄液の温度にもよるが、典型的には、接触時間は10秒以上1時間以内が好ましく、30秒以上30分以内がより好ましく、1分以上10分以内が特に好ましい。
【0061】
所望する時間、有機系下層膜と、酸性洗浄液とを接触させた後、必要に応じて、基板を、水や有機溶媒で洗浄する。洗浄後の基板を乾燥させることにより、有機系下層膜が除去された基板が得られる。
このようにして得られる有機系下層膜が除去された基板は、基板の用途に応じて、そのまま製品にされたり、後工程の加工に供される。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0063】
〔実施例1~8、比較例1~6〕
それぞれ表1に記載の種類の酸成分と、必要に応じ、表1に記載の種類の有機溶媒、又は酢酸とを、表1に記載の濃度となるように混合して、実施例1~8の酸性洗浄液を調整した。
比較例1~6では、表1に記載の洗浄液を用いた。比較例1,2、及び4で用いた洗浄液は市販の洗浄液である。
【0064】
表1に記載の有機溶媒は以下の通りである。
S1:イソプロピルアルコール
S2:スルホラン
【0065】
各実施例及び比較例の洗浄液を用いて、以下の方法に従って、有機系下層膜除去と、酸化アルミニウムのダメージとについて評価した。これらの評価結果を表1に記す。
【0066】
〔有機系下層膜除去〕
試験用の基板として、有機系下層膜として膜Aを備えるシリコン基板と、膜Bを備えるシリコン基板とを用いた。膜Aの材質としては、下記構造の構成単位からなる樹脂を用いた。膜Aの膜厚は200nmである。膜Bは、Brewer science社製のARC-29を用いて形成された、膜厚89nmの反射防止膜である。
【化14】
【0067】
表面に有機系下層膜を備えるシリコン基板を、各実施例及び比較例の洗浄液に、表1の条件で浸漬した。浸漬後、基板を純水で洗浄し、窒素ブローにより乾燥させた。
乾燥後の基板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、除去性を評価した。
有機系下層膜の除去については、3分の浸漬により完全に除去できた場合をAと判定し、3分の浸漬により大部分を除去できたが若干の残渣がある場合をBと判定し、3分の浸漬によりほぼ除去できなかった場合をCと判定した。
【0068】
〔酸化アルミニウムのダメージ〕
試験用の基板として、膜厚200nmの酸化アルミニウム膜を表面に備えるシリコン基板を用いた。
表面に酸化アルミニウム膜を備えるシリコン基板を、各実施例及び比較例の洗浄液に、表1の条件で浸漬した。浸漬後、基板を純水で洗浄し、窒素ブローにより乾燥させた。
乾燥後の基板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、酸化アルミニウム膜へのダメージの有無を評価した。
酸化アルミニウム膜へのダメージについては、3分浸漬後に膜厚減少が観察されなかった場合を○と判定し、3分浸漬後に膜厚減少が観察されなかった場合を×と判定した。
【0069】
【0070】
表1によれば、基板上に形成されたマスク材や反射防止膜等の有機系下層膜を除去する際に、ハロゲン化されていてもよいアルキルスルホン酸を含む酸性洗浄液を用いて有機系下層膜の除去を行った、実施例1~8のみにおいて、有機系下層膜の良好な除去と、酸化アルミニウム膜へのダメージへの抑制とが両立されたことが分かる。