(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の処理方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/00 20060101AFI20220224BHJP
G01J 3/51 20060101ALI20220224BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C22B1/00 601
G01J3/51
B09B5/00 C ZAB
(21)【出願番号】P 2018065562
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
(72)【発明者】
【氏名】武田 翼
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-029923(JP,A)
【文献】特開2003-156447(JP,A)
【文献】特開2015-078913(JP,A)
【文献】特開2000-343044(JP,A)
【文献】特開2003-236474(JP,A)
【文献】特開2013-000685(JP,A)
【文献】特開2002-210417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0017644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
B09B 3/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子・電気機器部品屑の処理方法であって、
処理対象物の表裏両面の色彩を識別可能な少なくとも2台のカメラユニットを備える色彩選別機を用いて、電子・電気機器部品屑中の基板屑を選別する工程を含
み、
前記2台のカメラユニットは、一方が前記処理対象物の表面の色彩を識別する位置に配置され、他方が前記処理対象物の裏面の色彩を識別する位置に配置され、
前記2台のカメラユニットが、前記基板屑のソルダーレジスト色を識別するように設定され、
前記2台のカメラユニットの少なくとも一方が、前記処理対象物の表面及び/又は裏面の前記ソルダーレジスト色を検出したときに、前記処理対象物を前記基板屑として識別することを含むことを特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項2】
前記2台のカメラユニットが、前記処理対象物の緑色を検出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項3】
前記基板屑が金属物を含む基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項4】
前記電子・電気機器部品屑中の前記基板屑を除去した後の電子・電気機器部品屑を、メタルセンサ
ーを備えるメタルソータを用いて前記電子・電気機器部品屑中の金属物
と非金属物
とに分離する分離工程を更に含
むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項5】
前記色彩選別機を用いて電子・電気機器部品屑中の基板屑を選別する工程の前に、
風力選別を少なくとも2段階行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品屑の処理方法に関し、特に、使用済み電子・電気機器のリサイクル処理に好適な電子・電気機器部品屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきており、その効率的な回収方法が検討されている。電子・電気機器部品屑には種々の部品が含まれていることが知られており、手選別による選別が最も精度が高いが、労力がかかり、現実的ではないという問題がある。そこで、種々の選別装置を用いて、電子・電気機器部品屑の中から所望の部品を効率良く選別するための装置の開発が求められている。
【0003】
例えば、特開2017-83348号公報には、鉱石の良品又は不良品を選別するための鉱石選別方法及び装置が記載されており、ベルト状搬送体上に搬送された岩石粉砕物を撮像器具により撮像し、判別装置により良品及び不良品を判別し、良品及び不良品の各移動軌跡を異ならせるように、吹付対象物に向けて空気を吹き付ける空気吹付器具を備えた鉱石選別装置の例が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、岩石粉砕物に着目した選別方法であり、基板屑、IC、プラスチック、フィルム粉状物等の種々の材料を含む電子・電気機器部品屑を適切に選別することができるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題を鑑み、本発明は、電子・電気機器部品屑を適切且つ効率的に選別することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、電子・電気機器部品屑の中から所望の部品を効率良く選別するための手法として、種々の部品屑を含む電子・電気機器部品屑の中から基板を選択的に除去することが重要であることを見出した。そして、基板屑を除去するための良好な手法を種々検討したところ、特定の色彩選別機を用いることが有効であるとの知見を得た。
【0008】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、電子・電気機器部品屑の処理方法であって、処理対象物の表裏両面の色彩を識別可能な少なくとも2台のカメラユニットを備える色彩選別機を用いて、電子・電気機器部品屑中の基板屑を選別する工程を含む電子・電気機器部品屑の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電子・電気機器部品屑を適切且つ効率的に選別することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に色彩選別機の構成を表す概略図である。
【
図2】エアノズルが備える穴の断面積及びピッチを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は、処理対象物の表裏両面の色彩を識別可能な少なくとも2台のカメラユニット3a、3bを備える色彩選別機1を用いて、電子・電気機器部品屑中の基板屑を選別する工程を含む。
【0012】
本発明の実施の形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。本発明では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0013】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でも構わないが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕がのぞましい。したがって、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0014】
以下に限定されるものではないが、本実施形態では、電子・電気機器部品屑は、最大直径100mm以下程度、更には50mm以下程度に破砕されているものが好ましい。さらに、本実施形態に係る電子・電気機器部品屑の原料を予め粗破砕することにより、コンデンサ、プラスチック、基板、線屑、IC、コネクタ、メタル等の形態で単体分離しておくことが好ましい。
【0015】
本実施形態に係る電子・電気機器部品屑は、基板、パーツ、筐体などに使われる合成樹脂類(プラスチック)、線屑、メタル、フィルム状部品屑、破砕や粉砕によって生じる粉状物、その他、からなる部品屑に分類することができ、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、部品屑として単体分離されている割合が70%以上の電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。
【0016】
特に、本実施形態に係る色彩選別機の処理対象物としては、上述の電子・電気機器部品屑に対して風力選別を実施し、粉状物とフィルム状部品屑を除去した後の物質を処理することが好ましい。風力選別によって電子・電気機器部品屑中から粉状物とフィルム状部品屑等の軽量物を予め取り除いておくことにより、後述する色彩選別機内やメタルソータ内において粉状物とフィルム状部品屑等が舞い上がり、視界不良となることによって、色彩選別機又はメタルソータが備えるカメラユニットの検知能力の低下を抑制することができる。
【0017】
また、風力選別によって電子・電気機器部品屑中から粉状物とフィルム状部品屑等の軽量物を予め取り除いておくことにより、合成樹脂類、メタル、基板、IC、コンデンサなどの金属を含有する部品屑の含有比率を高くすることができる。
【0018】
風力選別は少なくとも2段階で行われることが好ましい。まず、第1段階目の風力選別において、本実施形態に係る色彩選別機での選別能力に悪影響を与える可能性のある粉状物とフィルム状部品屑(樹脂、アルミ箔等)を除去することができる。第1段階目の風力選別工程は、例えば、風量を5~20m/s、より好ましくは5~12m/s、更には5~10m/s程度、更には6~8m/sで設定することができる。
【0019】
2段階目の風力選別は、紛状物とフィルム状部品屑が除去された電子・電気機器部品屑から、合成樹脂類及び基板を濃縮することを目的とした選別が行われることが好ましい。例えば、2段階目の風力選別の風量を5~20m/s、より好ましくは10~18m/s、更には15~18m/s、更には16~17m/s程度で設定することができる。
【0020】
第1段階目の風力選別と第2段階目の風力選別との間にスリット状の篩を有する篩別機を用いて篩別処理を更に行うことが更に好ましい。第1段階目の風力選別の後に篩別処理を行うことにより、紛状物とフィルム状部品屑が除去された電子・電気機器部品屑から、線屑などの線状の部品屑を取り除くことができるため、第2段階目の風力選別において、処理対象物中の合成樹脂類及び基板の含有率をより高めることができるとともに、線屑の混入による後段の選別処理の負荷を低減することができる。
【0021】
このようにして得られた合成樹脂類及び基板の含有率が濃縮された処理対象物に対してそのまま例えばメタルソータ等を用いて金属物及び非金属物の選別を行った場合、非金属物が除去されにくく、金属物を高効率で回収できない場合があることが分かった。
【0022】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法では、後述する色彩選別機1を用いることにより、合成樹脂類、IC等のパーツ、メタル類、基板の混在する部品屑の中から基板屑を選択的に取り除くことができる。これにより、その後のメタルソータにおける処理における金属物の濃縮が容易になることを本発明者らが見出したものである。
【0023】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法においては、電子・電気機器部品屑中の基板屑を除去した後の電子・電気機器部品屑に対し、メタルセンサー、カメラユニット、エアーバルブ、コンベアを備えるメタルソータを用いて電子・電気機器部品屑中の金属物又は非金属物を分離する分離工程において、メタルソータが備えるメタルセンサーが金属物と判別するものと非金属物と判別する物の個数比(金属物/非金属物)が2.0以下となるように、色彩選別機1を用いて、電子・電気機器部品屑の中から金属物を含む基板屑を選択的に除去する。これにより、本実施形態に係る色彩選別機1による選別処理の後のメタルソータを用いた処理における金属物の濃縮が容易になる。
【0024】
図1に本発明の実施の形態に係る色彩選別機1の一例を示す。本発明の実施の形態に係る色彩選別機1は、処理対象物に必要に応じて振動を与えるフィーダ(図示せず)と、フィーダから供給される処理対象物を搬送するコンベア2と、コンベア2から放出された落下軌跡上で処理対象物の表裏両面の色彩を識別する少なくとも2台のカメラユニット3a、3bと、カメラユニット3a、3bが除去対象として検出する検出物に対して空気を吹き付け、検出物を除去物側の容器へと撃ち落とすエアノズル5とを備える。
【0025】
色彩選別機1は更に、エアノズルから噴出させる空気の圧力(エア圧力)を調整するコントローラ(図示せず)、カメラユニット3a、3bの近傍に設けられ、カメラユニット3a、3bの視界を照らすカメラユニット照明4a、4b、コンベア2の下方に設けられ、処理対象物中の金属物を検知するメタルセンサー8、処理対象物の位置を検出可能な近赤外線センサ6、近赤外線センサ6の近傍に設けられた近赤外線センサ照明7等を更に含んでいてもよい。
【0026】
選別処理対象物である基板は、表裏両面がソルダーレジストで覆われているものと、片面のみソルダーレジストで覆われているものがある。一般的に、ソルダーレジストで覆われた面は緑色であり、ソルダーレジストで覆われていない面は茶色である。色彩選別機1で検出色を緑色に設定することによりソルダーレジストで覆われた面を検出し基板を選択的に除去することができる。
【0027】
カメラユニットが処理対象物の表面又は裏面の一方のみの色彩を識別する位置にある従来の装置では、処理対象物の表面及び裏面の両面の色彩を識別するように検出色を設定する必要がある。このような従来のカメラユニットにより片方のみソルダーレジストで覆われている基板を検出する場合は、検出色をソルダーレジストで覆われている面の緑色と、ソルダーレジストで覆われていない面の茶色に設定する必要があるが、茶色や汚れた白色のプラスチック(合成樹脂類)を基板と検知するような誤検知が生じやすい。
【0028】
一方で、
図1に示す色彩選別機1のように、カメラユニット3a、3bが処理対象物の表面及び裏面の両面の色彩を識別する位置にある場合は、処理対象物の表面又は裏面の一方のみの色彩を識別するようにカメラユニット3a、3bの検出色が設定されれば良い。カメラユニット3a、3bが、片方のみソルダーレジストで覆われた基板を検出する場合は、検出色をソルダーレジストで覆われている面の緑色に設定することで、プラスチック(合成樹脂類)の誤検知を抑えながら基板を選択的に除去することができる。検出色はソルダーレジストの現在の標準色である緑色とすることが好ましいが、選別する基板の色調に応じて検出色を追加してもよい。例えば、選別する基板の色に応じて、赤色、青色、黒色、白色などを検出色として追加してもよい。
【0029】
本実施形態に係る色彩選別機1によれば、処理対象物の表裏両面の色彩を識別可能な少なくとも2台のカメラユニット3a、3bを、コンベア2の下方及び上方に配置した色彩選別機1を用いることにより、処理対象物それぞれの表裏両面の色彩を検知することが可能となるため、除去対象とする基板以外の誤検知を低減することができる。カメラユニット3a、3bの検知範囲は特に限定されないが、検知範囲があまり大きすぎたり小さすぎたりすると誤検知が生じる場合がある。
【0030】
電子・電気機器部品屑の中から基板を高い効率で除去するためには、エアノズル5を適正化することも必要である。本実施形態では、例えば
図2に示すように、複数の穴からなるエアノズルを用いて、基板屑に対して空気を吹き付け、除去物側の容器へと基板を誘導することが好ましい。
【0031】
ノズル断面積A及びピッチPは大きすぎると基板以外の部品屑を除去物側へと撃ち落とす恐れがある一方で、小さすぎると基板を適切に除去物側の容器へと撃ち落とせない場合がある。エアノズル5のノズル断面積Aは好ましくは2~6mm2であり、更に好ましくは3~5mm2である。エアノズル5のピッチPは好ましくは2~8mmであり、更に好ましくは3~6mmである。
【0032】
エアノズル5を用いて基板を適切に除去物側の容器へ分離させるためには、エアノズル5から噴射される空気のスプレー距離を5~50mmとすることが好ましく、より好ましくは5~30mmであり、更に好ましくは5~10mmである。
【0033】
また、エアノズル5を用いて基板を適切に除去物側の容器へ分離させるためには、エアノズル5から噴射されるエア圧力を0.1~1.0MPaとすることが好ましく、より好ましくは0.3~0.7MPaであり、更に好ましくは0.3~0.5MPaである。なお、
図2においてはエアノズル5の穴の形状が矩形を有しているが、矩形には限られず、円形や楕円形、スリット状とすることもできる。
【0034】
このように、本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬工程で処理する電子・電気機器部品屑の処理量を増大でき、有価金属を効率的に回収することが可能となる。
【0035】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0037】
最大直径50mm以下に破砕した電子・電気機器部品屑に対して二段階の風力選別と篩別処理を行うことにより、合成樹脂類を25%、基板屑を53%、メタル類を1%、その他21%それぞれ質量比で含む処理対象物を用意した。この処理対象物に対し、本実施形態に係る色彩選別機1を用いて基板を除去する処理を行った。カメラユニットの2台のカメラユニットの識別色を基板のソルダーレジスト色に対応する緑色とし、エアノズルのノズル断面積Aを5mm2、ピッチPを5mm、スプレー距離を20mm、エア圧力を0.3MPaと設定して選別処理を行い、回収物側の容器に回収された回収物中の部品屑の種類を判別したところ、合成樹脂類53%、基板屑9%、メタル類3%、その他35%となり、基板屑を適切に除去することができた。この回収物を更に処理するメタルソータが備えるメタルセンサーが金属物と判別するものと非金属物と判別する物の個数比(金属物/非金属物)を調べたところ、金属物/非金属物の個数比は0.6であった。なお、本実施例に係る色彩選別機で得られた部品屑をコンベアのベルト幅が約0.6mのメタルソータを用いて処理量2.0t/hで処理したところ処理対象物中の合成樹脂類のおよそ66%を除去することができた。
【符号の説明】
【0038】
1…色彩選別機
2…コンベア
3a、3b…カメラユニット
4a、4b…カメラユニット照明
5…エアノズル
6…近赤外線センサ
7…近赤外線センサ照明
8…メタルセンサー