(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】送電装置、受電装置及び給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220224BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20220224BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220224BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/80
H02J50/12
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2020114848
(22)【出願日】2020-07-02
(62)【分割の表示】P 2016164419の分割
【原出願日】2016-08-25
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】上原 輝昭
【審査官】坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-253649(JP,A)
【文献】特開平08-068854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00- 7/12
7/34- 7/36
H02J50/00-50/90
H04B 5/00- 5/06
G06K19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリを有する受電装置との間で、情報パケットの送受信と非接触での電力伝送とを切り替えつつ実行する送電装置であって、
前記受電装置から前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報を受信し、前記アドレス情報に基づいて、前記電力伝送の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケット
の一方に前記メモリ内の所定のメモリ領域を指定するアドレス指定を付与し
、他方に前記メモリ内の前記所定のメモリ領域を指定しないアドレス指定を付与して前記受電装置に送信することを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記電力伝送パケット及び前記通常パケットを前記受電装置との間で送受信する通信手段と、
前記電力伝送パケットが送受信された後、前記電力伝送を行う送電手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1
に記載の送電装置。
【請求項3】
前記
送電装置は、
前記アドレス情報に基づいて、前記メモリ内の第1のメモリ領域を指定するアドレス指定を前記通常パケットに付与し、前記メモリ内の第2のメモリ領域を指定するアドレス指定を前記電力伝送パケットに付与し、
前記アドレス指定を付与した前記通常パケット及び前記電力伝送パケットを前記受電装置に送信することを特徴とする請求項1または2
に記載の送電装置。
【請求項4】
前記アドレス情報は、前記受電装置が前記通常パケットの送受信に使用する前記メモリ内のアドレスの最大値の情報を含み、
前記
送電装置は、前記アドレスの最大値の情報に基づいて、前記第1のメモリ領域及び前記第2のメモリ領域を設定することを特徴とする請求項3
に記載の送電装置。
【請求項5】
メモリを有し、送電装置との間で情報パケットの送受信と非接触での電力の受電とを切り替えつつ実行する受電装置であって、
前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報を前記送電装置に送信し、前記電力
の受電の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケットの少なくとも一方を前記送電装置から受信する通信手段と、
前記通信手段で受信した情報パケット
を、前記メモリ内の前記情報パケット内のアドレス指定に基づいて
決まるメモリ領域で処理するパケット処理手段と、
を備え
、
前記通常パケット及び前記電力伝送パケットの一方には、前記メモリ内の所定のメモリ領域を指定するアドレス指定が付与されており、他方には前記メモリ内の前記所定のメモリ領域以外のメモリ領域を指定するアドレス指定が付与されていることを特徴とする受電装置。
【請求項6】
バッテリと、
前記電力を受電し、前記バッテリを充電する受電手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5
に記載の受電装置。
【請求項7】
前記パケット処理手段は、前記アドレス指定に基づいて、前記通常パケットを前記メモリ内の第1のメモリ領域で処理し、前記電力伝送パケットを前記メモリ内の第2のメモリ領域で処理することを特徴とする請求項5または6
に記載の受電装置。
【請求項8】
受電した前記電力の電力値に基づいて、前記送電装置からの
前記電力の伝送が中断されたか否かを判定する受電パワー判定手段をさらに備えることを特徴とする請求項5~7のいずれか1に記載の受電装置。
【請求項9】
送電装置と、メモリを有する受電装置とを含み、前記送電装置及び前記受電装置の間で情報パケットの送受信と非接触での電力伝送とを切り替えつつ実行する給電システムであって、
前記送電装置は、前記受電装置からの前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報に基づいて、前記電力伝送の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケット
の一方に前記メモリ内の所定のメモリ領域を指定するアドレス指定を付与し
、他方に前記メモリ内の前記所定のメモリ領域以外のメモリ領域を指定するアドレス指定を付与して前記受電装置に送信し、
前記受電装置は、前記送電装置からの情報パケットを受信して該情報パケットを前記メモリ内の
前記情報パケットの前記アドレス指定に基づいて決まるメモリ領域で処理する
ことを特徴とする給電システム。
【請求項10】
前記送電装置は、前記アドレス情報に基づいて、前記メモリ内の第1のメモリ領域を指定するアドレス指定を前記通常パケットに付与し、前記メモリ内の第2のメモリ領域を指定するアドレス指定を前記電力伝送パケットに付与し、前記アドレス指定を付与した前記通常パケット及び前記電力伝送パケットを前記受電装置に送信する送電側通信手段を有し、
前記受電装置は、前記アドレス指定に基づいて、前記通常パケットを前記メモリ内の
前記第1のメモリ領域で処理し、前記電力伝送パケットを前記メモリ内の
前記第2のメモリ領域で処理するパケット処理手段を有する
ことを特徴とする請求項9
に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置、受電装置及び給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、NFC(Near Field Communication)による近距離無線通信が広く用いられている。この近距離無線通信を用いて、非接触に電力供給(電力伝送)を行う給電システムが検討されている。このような給電システムを構成する送電装置及び受電装置は、近距離無線通信による情報伝送手段と非接触型の電力電圧手段とを備え、情報伝送及び電力伝送を行う。
【0003】
通信品質を保持するため、情報伝送手段及び電力伝送手段は排他的に動作するように構成される。しかし、一方の手段が動作している限り他方の手段が動作を開始しないという形で排他的制御を行うと、情報伝送中に電池の残量がなくなった場合にも充電が直ちには開始しないため、通信機器が安定して動作しなくなるといった事態が生じる。そこで、情報伝送を時分割で行い、無線通信処理を行うActive期間以外のSleep期間を電力供給の期間に割り当てて、無線通信処理と充電処理との排他的制御を自動的に行う通信機器が考えられた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受電装置は、送電装置との間で給電制御のための情報交換を行う他、PCとの間で一般的な情報交換を行うことが可能に構成されている。例えば、位置情報を自動的に保存する腕時計を端末装置(受電装置)、PCに接続された装置を充電装置(送電装置)とすると、充電装置による腕時計の充電及びPCによる腕時計からの位置情報の吸い出しを行う場合が考えられる。
【0006】
このような場合、充電を開始した後、しばらくして腕時計内部の位置情報をPCに取り込もうとすると、充電を強制的に中止した上で通常の情報交換を行い、その後に改めて認証等を含む充電制御のための情報交換を行ってから充電をやり直す必要があった。このため、電力伝送の効率が落ち、実質的な充電時間が長くなってしまうという問題があった。また、充電制御のための情報交換を行っている間は一般的な情報交換を行うことができないため、一定期間待ってから初期化する必要があり、情報交換の反応時間が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、電力伝送の効率を落とすことなく情報交換を行うことが可能な給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る送電装置は、メモリを有する受電装置との間で、情報パケットの送受信と非接触での電力伝送とを切り替えつつ実行する送電装置であって、前記受電装置から前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報を受信し、前記アドレス情報に基づいて、前記電力伝送の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケットの少なくとも一方に前記メモリ内の所定のメモリ領域を指定するアドレス指定を付与して前記受電装置に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る受電装置は、メモリを有し、送電装置との間で情報パケットの送受信と非接触での電力の受電とを切り替えつつ実行する受電装置であって、前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報を前記送電装置に送信し、前記電力伝送の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケットの少なくとも一方を前記送電装置から受信する通信手段と、前記通信手段で受信した情報パケット内のアドレス指定に基づいて、前記情報パケットを前記メモリ内の所定のメモリ領域で処理するパケット処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る給電システムは、送電装置と、メモリを有する受電装置とを含み、前記送電装置及び前記受電装置の間で情報パケットの送受信と非接触での電力伝送とを切り替えつつ実行する給電システムであって、前記送電装置は、前記受電装置からの前記メモリのアドレス構成を示すアドレス情報に基づいて、前記電力伝送の設定に関する情報パケットである電力伝送パケットと前記電力伝送パケット以外の情報パケットである通常パケットの少なくとも一方に前記メモリ内の所定のメモリ領域を指定するアドレス指定を付与して前記受電装置に送信し、前記受電装置は、前記送電装置からの情報パケットを受信して該情報パケットを前記メモリ内の所定のメモリ領域で処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力伝送の効率を落とすことなく情報交換を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】給電システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】送電装置のNFC通信モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図6】受電装置のNFC通信モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施例2の受電装置のNFC通信モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図8】実施例2において電力伝送を中断して情報パケットの送受信を行う場合の処理動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の給電システム100の構成を示すブロック図である。給電システム100は、送電装置10及び受電装置20から構成されている。送電装置10は送電コイルTCを有し、受電装置20は受電コイルRCを有する。
【0015】
送電装置10及び受電装置20は、送電コイルTCと受電コイルRCとの間で、例えば13.56MHzの電磁波を利用して近距離無線通信(以下、NFC(Near Field Communication)とも称する)による情報交換を行う。送電装置10及び受電装置20は、この情報交換を例えばNFCのパケット規格の1つであるType-Fのパケットを用いた情報パケットの送受信により行う。
【0016】
また、送電装置10及び受電装置20は、送電コイルTCと受電コイルRCとの間で、例えば電磁界共振により非接触で送電及び受電を行う。以下の説明では、送電及び受電を総称して電力伝送とも称する。
【0017】
電力伝送に用いる信号は情報交換に用いる信号に比べて振幅が大きいため、電力伝送を行っている間は情報交換を行うことができない。そこで、送電装置10及び受電装置20は、電力伝送と情報交換とを切り替えつつ実行する。
【0018】
電力伝送は、電力伝送の設定に関する情報パケットの送受信(例えば、受電装置20におけるバッテリBTの状況を示す状況パラメータの送信)とこれに続く短時間の送電及び受電とが複数回繰り返されることによって行われる。以下の説明では、1回毎の送電における送電時間を単位送電時間と称する。なお、単位送電時間は受電装置20のバッテリBTの電圧レベルの変化に応じて異なる値に設定されうる。
【0019】
送電装置10は、NFC通信モジュール11、NFC送電モジュール12、切替スイッチ13及び送電コイルTCを有する。
【0020】
NFC通信モジュール11は、送電装置10に近接する他の装置(本実施例では受電装置20)との間で、情報パケットの送受信を行う。NFC通信モジュール11は、電力伝送の設定に関する情報パケット(以下、電力伝送パケットPPと称する)の送受信と、電力伝送パケット以外の通常の情報パケット(以下、通常パケットGPと称する)の送受信とを行う。
【0021】
図2は、NFC通信モジュール11が送信する情報パケットの構造を示す図である。「LEN」はパケット長、「Cmd」(Command Code)はパケットの種類、「IDm」は通信の相手方のIDを夫々表している。
【0022】
「Blk_no」は、パケットに入っているブロックの数を示している。1ブロックは16バイトのデータ量に対応している。「Blk_Data」は書き込まれるデータそのものであり、データサイズは「Blk_no」×16バイトとなるので、16バイトの倍数となる。
【0023】
「Blk_List」はパケットに入っているブロックデータが、相手方の装置(本実施例では受電装置20)のメモリに書き込まれる際の、メモリ内の位置(ブロックアドレスと称する)を指定するアドレス指定を示している。
【0024】
図3は、メモリ及びブロックアドレスを模式的に示す図である。例えば、「Blk_List」に「1、5、7」が示されている場合、相手方の装置のメモリ内のブロックアドレス1、ブロックアドレス5及びブロックアドレス7がデータの書き込み位置として指定される。
【0025】
なお、ブロックアドレス0は、通常の情報パケットを送受信する際に使用されるメモリ内のブロックアドレスの範囲(アドレスの最大値)を示す。例えば、メモリで処理されるデータの最大サイズを256バイトとすると、1ブロックが16バイトであるため、アドレスの最大値は「16」となる。従って、ブロックアドレス0が示す値は「16」となり、ブロックアドレス1~16までのメモリ領域が通常の情報パケットの送受信に使用される。以下の説明では、ブロックアドレス0が示す値を「アドレス画定値」と称する。
【0026】
再び
図1を参照すると、NFC通信モジュール11は、電力伝送の開始時の認証に用いる認証パケットや、相手方の装置がNFCによる給電に対応しているか否かを確認するための能力確認パケット等を相手方の装置(本実施例では、受電装置20)との間で送受信する。
【0027】
また、NFC通信モジュール11は、受電装置20のバッテリ状況を確認するための状況確認パケットを送信し、これに応じて受電装置20から送信されたバッテリの状況を示す状況パラメータや、受電装置20が送電を要求する電力量を示す要求パラメータを受信する。
【0028】
さらに、NFC通信モジュール11は、受電装置20に対し、アドレス画定値(すなわち、ブロックナンバー0に示される値)を問い合わせるアドレス範囲要求信号を送信する。そして、NFC通信モジュール11は、受電装置20からアドレス画定値を示す応答信号を受信する。
【0029】
図4は、NFC通信モジュール11の構成を示すブロック図である。NFC通信モジュール11は、通信回路31、パケット処理回路32、受電モジュール認証回路33及び送電制御回路34を有する。
【0030】
通信回路31は、通常パケットGP及び電力伝送パケットPPの送受信を行う。
【0031】
パケット処理回路32は、通常パケットGPと電力伝送パケットPPとを区別可能とするため、これらに異なるブロックアドレス指定(
図2の「Blk_List」の数値)を付与する処理を行う。
【0032】
具体的には、パケット処理回路32は、受電装置20から受信したアドレス画定値(すなわち、ブロックアドレス0に示される値)以下のブロックアドレスを示すアドレス指定を通常パケットGPに付与し、アドレス画定値よりも大きいブロックアドレスを示すアドレス指定を電力伝送パケットPPに付与する。例えば、アドレス画定値が「16」である場合、ブロックアドレス1~16がアドレス指定として通常パケットGPに付与される。一方、ブロックアドレス17以上がアドレス指定として電力伝送パケットPPに付与される。以下、通常パケットGPを処理するためのメモリ領域(アドレス1~16)を第1のメモリ領域、電力伝送パケットPPを処理するためのメモリ領域(アドレス17以上)を第2のメモリ領域と称する。
【0033】
受電モジュール認証回路33は、通信回路31が受信した認証パケットに基づいて、相手方の装置の認証を行う。また、通信回路31が受信した能力確認パケットに基づいて、相手方の装置がNFCによる給電に対応しているか否かの確認を行う。
【0034】
送電制御回路34は、通信回路31が受信した状況パラメータ及び要求パラメータに基づいて、送電パラメータを設定する。送電パラメータは、例えばNFC送電モジュール12が送電を行う単位送電時間(1回あたりの送電時間)及び電力値の情報を含む。送電制御回路34は、設定した送電パラメータに従って、NFC送電モジュール12に送電を行わせる。なお、NFC送電モジュール12による送電は、送電パラメータに設定された単位送電時間の間行われ、その後状況確認パケット、状況パラメータ及び要求パラメータの送受信を経て新たに送電パラメータが設定される度に、繰り返し実行される。
【0035】
再び
図1を参照すると、NFC送電モジュール12は、送電制御回路33の制御に従い、送電パラメータに従って送電を行う。
【0036】
切替スイッチ13は、受電装置20との間で情報パケットの送受信を行うか受電装置20に対して電力伝送を行うかに応じて、送電コイルTCに接続されるモジュールをNFC通信モジュール11とNFC送電モジュール12とに切り替える。
【0037】
図5は、送電装置10が送電を行う際に送信する信号の概要を示す図である。NFC通信モジュール11の通信回路31は、まずポーリングパケットを送受信して周辺の装置に問い合わせを行い、受電装置20の存在を確認する。そして、NFC通信モジュール11は、受電装置20との間で認証パケット及び能力確認パケットの送受信を行い、受電装置20との間で近距離無線通信の接続を確立する(図中、「NFCLink確立」として示す)。そして、NFC通信モジュール11は、受電装置20に状況確認パケットを送信し、受電装置20から状況パラメータ及び要求パラメータを含む電力伝送パケットPPを受信する(図中、「WPC」として示す)。NFC通信モジュール11は、状況パラメータ及び要求パラメータに従って送電パラメータを設定し、NFC送電モジュール12は設定された送電パラメータに従って送電を行う(図中、「WPT(1)」として示す)。NFC送電モジュール12は、NFC通信モジュール11により状況確認パケット、状況パラメータ及び要求パラメータの送受信が行われる度に、繰り返し送電を行う(図中、「WPT(2)」「WPT(3)」として示す)。
【0038】
再び
図1を参照すると、受電装置20は、NFC通信モジュール21、NFC受電モジュール22、切替スイッチ23、受電コイルRC及びバッテリBTを有する。
【0039】
切替スイッチ23は、送電装置10との間で情報パケットの送受信を行うか送電装置10から送電された電力を受電するかに応じて、受電コイルRCに接続されるモジュールをNFC通信モジュール21とNFC受電モジュール22とに切り替える。
【0040】
NFC通信モジュール21は、受電装置20に近接する他の装置(本実施例では送電装置10)との間で、情報パケットの送受信を行う。NFC通信モジュール21は、通常パケットGPの送受信を行うほか、電力伝送パケットPPの送受信を行う。
【0041】
図6は、NFC通信モジュール21の構成を示すブロック図である。NFC通信モジュール21は、通信回路41、ブロックアドレス判定回路42、通常パケット処理モジュール43、電力伝送パケット処理モジュール44及びメモリ45を含む。
【0042】
通信回路41は、通常パケットGP及び電力伝送パケットPPの送受信を行う。
【0043】
ブロックアドレス判定回路42は、送電装置10から送信された情報パケットに付与されているアドレス指定(ブロックアドレス)に基づいて、当該情報パケットが通常パケットGPか電力伝送パケットPPかを判定し、判定結果に基づいて当該情報パケットを通常情報パケット処理モジュール43又は電力伝送パケット処理モジュール44に供給する。すなわち、ブロックアドレス判定回路42は、付与されているアドレス指定がアドレス画定値よりも小さい場合は通常パケットGPであると判定し、情報パケットを通常情報パケット処理モジュール43に供給する。一方、付与されているアドレス指定がアドレス画定値よりも大きい場合は電力伝送パケットPPであると判定し、情報パケットを電力伝送パケット処理モジュール44に供給する。
【0044】
通常情報パケット処理モジュール43は、メモリ45内の第1のメモリ領域(すなわち、アドレス画定値よりも小さいブロックアドレスの領域)を用いて、通常パケットGPを処理する。例えば、アドレス画定値が「16」である場合、
図3に「GP」として示されるブロックアドレス1~16が第1のメモリ領域となる。
【0045】
電力伝送パケット処理モジュール44は、メモリ45内の第2のメモリ領域(すなわち、アドレス画定値よりも大きいブロックアドレスの領域)を用いて、電力伝送パケットPPを処理する。例えば、アドレス画定値が「16」である場合、
図3に「PP」として示されるブロックアドレス17以上の領域が第2のメモリ領域となる。
【0046】
以上のように、本実施例の送電装置10は、受電装置20内のメモリ45におけるアドレス画定値(ブロックアドレス0に示される値)に基づいて、通常パケットGPと電力伝送パケットPPとに異なるメモリ領域を指定するアドレス指定を付与し、情報パケットの送受信を行う。
【0047】
従って、受電装置20は、送電装置10から送信された情報パケットを受信した時点で、その情報パケットが通常パケットGPなのか電力伝送パケットPPなのかを判別することができる。従って、簡易な構成で情報パケットの分離を行うことができる。
【0048】
また、本実施例の給電システム100では、通常の情報パケットの送受信に用いるメモリ内のアドレスの最大値(例えば「16」)を示すアドレス画定値を用いて、第1のメモリ領域及び第2のメモリ領域を設定する。従って、本実施例の電力伝送に対応していない一般的な近距離無線通信装置が本発明の送電装置10及び受電装置20にアクセスする場合であっても、アドレス画定値の制限を受けるため、誤って電力伝送パケットPPを送受信することはない。
【0049】
また、通常パケットGPと電力伝送パケットPPとを受電装置20において区別することができるため、電力伝送パケットPPの送受信を行っている途中に通常パケットGPが挿入された場合であっても、電力伝送のシーケンスに影響を与えることなく通常パケットGP及び電力伝送パケットPPを処理することが可能である。従って、これらの情報パケットの処理に要する時間を除き、電力伝送を継続することができる。
【0050】
よって、本実施例の給電システム100によれば、電力伝送の効率を落とすことなく情報交換を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0051】
本実施例の給電システムは、受電装置20のNFC通信モジュール21の構成において、実施例1の給電システム100と異なる。
【0052】
図7は、本実施例のNFC通信モジュール21の構成を示すブロック図である。本実施例のNFC通信モジュール21は、実施例1のNFC通信モジュール21と同様の構成(通信回路41、ブロックアドレス判定回路42、通常パケット処理モジュール43、電力伝送パケット処理モジュール44及びメモリ45)に加えて、受電パワー判定回路46を含む。
【0053】
受電パワー判定回路46は、NFC受電モジュール22が受電した電力の電力レベルを判定し、判定結果に基づいて、送電装置10が送電を実行中(すなわち、電力伝送を継続中)であるか、送電を行っていない(すなわち、電力伝送を中断している)状態であるかを判定する。例えば、受電パワー判定回路46は、受電した電力の電力レベルが所定の電圧閾値未満である場合、電力伝送が行われていないと判定する。受電パワー判定回路46は、電力伝送が行われていないと判定すると、その判定結果を切替スイッチ23に供給する。切替スイッチ23は、これに応じて受電コイルRCに接続されるモジュールをNFC通信モジュール21に切り替える。これにより、受電装置20は、電力を受電する状態(受電モード)から情報パケットの送受信を行う状態(通信モード)に切り替わる。
【0054】
次に、送電装置10が送電を中断して通常パケットGPの送信を行う場合の、送電装置10及び受電装置20の処理動作について
図8のシーケンス図を参照して説明する。
【0055】
送電装置10は、送電を中断する(ステップS101)。受電装置20の受電パワー判定回路46は、NFC受電モジュール22が受電した電力の電力レベルが電圧閾値未満であると判定する(ステップS102)。切替スイッチ23は、受電コイルRCの接続先をNFC受電モジュール22からNFC通信モジュールへと切り替える(ステップS103)。
【0056】
送電装置10のNFC通信モジュール11は、アドレス画定値以下のブロックアドレスを示すアドレス指定を付与した通常パケットGPを送信する(ステップS104)。受電装置20のNFC通信モジュール21は、これを受信する。ブロックアドレス判定回路42は、受信した情報パケットに付与されているアドレス指定に基づいて、通常パケットGPであると判定する(ステップS105)。通常パケット処理モジュール43は、メモリ45内の第1のメモリ領域(アドレス画定値以下のブロックアドレスの領域)を用いて通常パケットGPを処理する(ステップS106)。
【0057】
必要な通常パケットGPの送信(又は受信)が終了すると、送電装置10は、電力伝送パケットPPを送信する(ステップS107)。受電装置20のNFC通信モジュール21は、これを受信する。ブロックアドレス判定回路42は、受信した情報パケットに付与されているアドレス指定に基づいて、電力伝送パケットPPであると判定する(ステップS108)。電力伝送パケット処理モジュール44は、メモリ45の第2のメモリ領域(アドレス画定値より大きいブロックアドレスの領域)を用いて電力伝送パケットPPを処理する(ステップS109)。
【0058】
送電装置10は、受電装置10のバッテリ状況を確認するための状況確認パケットを送信する(ステップS110)。受電装置20は、送電装置10から送信された状況確認パケットに応じて、状況パラメータ及び要求パラメータを送信する(ステップS111)。
【0059】
送電装置10は、状況パラメータ及び要求パラメータを受信し、これらに基づいて送電パラメータを設定する(ステップS112)。送電装置10は、設定した送電パラメータに従って、電力を伝送する。受電装置20は、電力を受電してバッテリBTを充電する(ステップS113)。
【0060】
以上のように、本実施例の給電システム100によれば、電力伝送の中断後、すぐに受電装置20が情報パケットの送受信を行う状態に移行するため、送電装置10及び受電装置20は速やかに情報パケットの送受信を開始することができる。特に、電力伝送の途中に通常パケットGPの送受信を行うことが必要となった場合、電力伝送の1周期(単位送電時間の送電)が終了するのを待たずに通常パケットGPの送受信を行うことが可能となる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、電磁界共振により電力伝送を行う例について説明した。しかし、電力伝送の方式はこれに限られず、電磁誘導方式等の他の方式により電力伝送を行うものであっても良い。
【0062】
また、上記実施例では、NFCのパケット規格の1つであるType-Fのパケットを用いて情報パケットの送受信を行い、情報パケットの構造が
図2に示すような構造である例について説明した。しかし、他のNFCの通信規格に従って情報パケットの送受信を行うものであっても良く、情報パケットの構造も
図2に示したものに限られない。本発明は、受電装置におけるメモリ内のアドレス構造に基づいて、情報パケットにアドレス指定を付与することが可能な他の通信方式にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 送電装置
11 NFC通信モジュール
12 NFC送電モジュール
13 切替スイッチ
20 受電装置
21 NFC通信モジュール
22 NFC受電モジュール
23 切替スイッチ
31 通信回路
32 パケット処理回路
33 受電モジュール認証回路
34 送電制御回路
41 通信回路
42 ブロックアドレス判定回路
43 通常情報パケット処理モジュール
44 電力伝送パケット処理モジュール
45 メモリ
46 受電パワー判定回路