(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】偏光子および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220224BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220224BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220224BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220224BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020521191
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2019019481
(87)【国際公開番号】W WO2019225468
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018100563
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】星野 渉
(72)【発明者】
【氏名】濱口 侑也
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195833(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154907(WO,A1)
【文献】特開2017-197630(JP,A)
【文献】特開2013-109090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0291224(US,A1)
【文献】国際公開第2019/132020(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189345(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/203192(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/186503(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079854(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性化合物と、第1の二色性物質と、第2の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
前記第1の二色性物質および前記第2の二色性物質が、前記偏光子の表面に対して水平に配向しており、
前記第1の二色性物質が、前記液晶性化合物と相溶する化合物であり、
前記第2の二色性物質が、前記液晶性化合物と相溶しない化合物であり、
前記液晶性化合物が、メソゲン部位として下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基を有する液晶性化合物であり、
前記第1の二色性物質が、下記式(1Y
)で表される構造を有する二色性色素化合物であり、
前記第2の二色性物質が、下記式(2)で表される構造を有する二色性アゾ色素である、偏光子。
【化1】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく
、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。
【化2】
式(1Y)中、AおよびBは、それぞれ独立に、架橋性基を表す。
式(1Y)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a+b≧1である。
式(1Y)中、a=0の場合にはL
1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL
1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL
2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL
2は単結合または2価の連結基を表す。ただし、L
1およびL
2の主鎖の原子の数は10個以下である。
式(1Y)中、Ar
1は(n1+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar
2は(n2+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar
3は(n3+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。
式(1Y)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。n1≧2である場合には複数のR
1は互いに同一でも異なっていてもよく、n2≧2である場合には複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよく、n3≧2である場合には複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(1Y)中、kは、1~4の整数を表す。k≧2の場合には、複数のAr
2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(1Y)中、n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。ただし、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0であり、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である
。
【化3】
式(2)中、R
1は、炭素数11~20の直鎖状のアルキル基を表す。R
1で表されるアルキル基の炭素原子は、-O-、-CO-または-CH=CH-によって置換されていてもよい。
式(2)中、R
2は、置換基を表し、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
式(2)中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
式(2)中、Eは、単結合、または、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
式(2)中、Qは、酸素原子または硫黄原子を表す。
式(2)中、Lは、単結合、-N=N-、-CR=N-、-CR=CR’-、または、-C(=O)-NR-を表す。RおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。
式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが、単結合または酸素原子もしくは硫黄原子である場合には、nは0であり、Eが、窒素原子である場合には、nは1である。
【請求項2】
前記第2の二色性物質のlogP値と、前記液晶性化合物のlogP値との差が4.3以上である、請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記第1の二色性物質および前記第2の二色性物質のいずれか一方が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質である、請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
前記第1の二色性物質および前記第2の二色性物質のいずれか一方が、560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項5】
前記第1の二色性物質が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質と、455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項6】
前記液晶性化合物が、下記式(P)で表される繰り返し単位を含む高分子液晶性化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光子。
【化4】
式(P)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1は前記式(M1-A)または
前記式(M1-B)で表される基を表し、T1は末端基を表す。
【請求項7】
前記第2の二色性物質の含有量が、前記液晶性化合物100質量部に対して、2~20質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の偏光子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光子を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光または自然光を含む照射光の減衰機能、偏光機能、散乱機能、または、遮光機能等が必要となった際には、それぞれの機能ごとに異なった原理によって作動する装置を利用していた。そのため、上記の機能に対応する製品も、それぞれの機能別に異なった製造工程によって製造されていた。
例えば、画像表示装置(例えば、液晶表示装置)では、表示における旋光性または複屈折性を制御するために直線偏光子または円偏光子が用いられている。また、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)においても、外光の反射防止のために円偏光子が使用されている。
【0003】
従来、これらの偏光子には、ヨウ素が二色性物質として広く使用されてきたが、ヨウ素の代わりに有機色素を二色性物質として使用する偏光子についても検討されている。
例えば、特許文献1には、高分子液晶性化合物と二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようななか、本発明者らが特許文献1の実施例を参考に偏光子を作製し、その配向度を評価したところ、今後予想される画像表示装置等の性能向上を鑑みると、配向度をさらに向上させることが望ましいことが明らかになった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、配向度の高い偏光子および上記偏光子を有する画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、液晶性化合物と第1の二色性物質と第2の二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子について、第1の二色性物質および第2の二色性物質の配向がいずれも水平配向であり、第1の二色性物質が、液晶性化合物と相溶し化合物であり、かつ、第2の二色性物質が、液晶性化合物と相溶しない化合物であることにより、形成される偏光子の配向度が向上することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
[1] 液晶性化合物と、第1の二色性物質と、第2の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子であって、
第1の二色性物質および第2の二色性物質が、偏光子の表面に対して水平に配向しており、
第1の二色性物質が、液晶性化合物と相溶する化合物であり、
第2の二色性物質が、液晶性化合物と相溶しない化合物である、偏光子。
[2] 第2の二色性物質が、後述する式(2)で表される二色性アゾ色素であり、
第2の二色性物質のlogP値と、液晶性化合物のlogP値との差が4.3以上である、[1]に記載の偏光子。
[3] 第1の二色性物質および第2の二色性物質のいずれか一方が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質である、[1]または[2]に記載の偏光子。
[4] 第1の二色性物質および第2の二色性物質のいずれか一方が、560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質である、[1]~[3]のいずれかに記載の偏光子。
[5] 第1の二色性物質が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質と、455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質とを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の偏光子。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の偏光子を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、配向度の高い偏光子および上記偏光子を有する画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交、水平、および、垂直とは、それぞれ厳密な意味での平行、直交、水平、および、垂直を意味するのではなく、それぞれ、平行±5°の範囲、直交±5°の範囲、水平±5°、および、垂直±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0011】
[偏光子]
本発明の偏光子は、液晶性化合物と、第1の二色性物質と、第2の二色性物質と、を含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子である。
また、本発明の偏光子においては、第1の二色性物質および第2の二色性物質が、偏光子の表面(主面)に対して水平に配向している。言い換えると、第1の二色性物質および第2の二色性物質は、偏光子の厚み方向に対して垂直に配向していると言える。
また、本発明の偏光子においては、第1の二色性物質が、液晶性化合物と相溶する化合物であり、第2の二色性物質が、液晶性化合物と相溶しない化合物である。
【0012】
ここで、液晶性化合物と二色性物質との相溶性は、次の方法で確かめることができる。
まず、光学顕微鏡(ECLIPSE E600 POL、株式会社ニコン製)の二枚の偏光子を互いに直交するように配置し、二枚の偏光子の間にサンプル台をセットする。
次いで、偏光子形成用組成物に含まれる液晶性化合物と、ある種の二色性物質との質量比で、液晶性化合物と、ある種の二色性物質とを混合したサンプル組成物をガラス上にキャストし、サンプル台上に置いたホットステージ上にこのガラスをセットする。
次いで、ホットステージの温度を、液晶性化合物および二色性物質の融点のうちいずれか高い方の温度以上、かつ、液晶性化合物および二色性物質の等方相転移温度のうちいずれか低い方の温度以下の範囲で上下させて、サンプルの相分離状態を観察する。
この操作において、相分離が観察されない場合を「相溶する」と定義し、相分離が観察されない場合を「相溶しない」と定義する。
【0013】
本発明においては、上述した通り、液晶性化合物と第1の二色性物質と第2の二色性物質とを含有する偏光子形成用組成物から形成される偏光子について、第1の二色性物質および第2の二色性物質の配向がいずれも水平配向であり、第1の二色性物質が、液晶性化合物と相溶し化合物であり、かつ、第2の二色性物質が、液晶性化合物と相溶しない化合物であると、形成される偏光子の配向度が向上する。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
まず、本発明者らは、後述する比較例1と参考例1との対比から、液晶性化合物と相溶しない第2の二色性物質が、それ自体の配列構造(例えば、結晶構造)により、配向度に影響を与えていると推察している。
また、後述する実施例と比較例1(および参考例1)との対比から、液晶性化合物と相溶する第1の二色性物質を配合することにより、相溶した液晶性化合物と第1の二色性物質とのマトリックスの物性が変化し、第2の二色性物質による配列構造が形成されやすくなる結果、高い配向度を実現できると推察している。
【0014】
〔偏光子形成用組成物〕
本発明の偏光子の形成に用いる偏光子形成用組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、液晶性化合物と、第1の二色性物質と、第2の二色性物質と、を含有する。
本組成物は、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、界面改良剤、および、これら以外の他の成分を含有していてもよい。
以下、各成分について説明する。
【0015】
<液晶性化合物>
本組成物は、液晶性化合物を含有する。液晶性化合物を含有することで、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物は、二色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができる。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶性化合物の含有量は、本組成物中の第1の二色性物質および第2の二色性物質の合計の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、33~1000質量部がより好ましく、50~500質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子の配向度がより向上する。
【0016】
液晶性化合物は、偏光子の配向度がより向上する理由から、下記式(P)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(P)」とも略す。)を含む高分子液晶性化合物であることが好ましい。
【0017】
【0018】
上記式(P)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0019】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0020】
【0021】
上記式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、上記式(P)におけるL1との結合位置を表す。
上記式(P1-A)~(P1-D)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
上記式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
上記式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
上記式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
上記式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR14(OR15)2-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、R14は、(P1-D)におけるR14と同義であり、複数のR15はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0022】
上記式(P)中、L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR3-、-NR3C(O)-、-SO2-、および、-NR3R4-などが挙げられる。式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、偏光子の配向度がより向上する理由から、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、偏光子の配向度がより向上する理由から、L1は単結合が好ましい。
【0023】
上記式(P)中、SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*は、上記式(P)中のL1またはM1との結合位置を表す。n1は、偏光子の配向度がより向上する理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、偏光子の配向度がより向上する理由から、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、偏光子の配向度がより向上する理由から、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、偏光子の配向度がより向上する理由から、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0024】
上記式(P)中、M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、偏光子の配向度がより向上する理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
【0025】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、並びに、偏光子の配向度がより向上する理由から、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、下記式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0026】
【0027】
上記式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基又は置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0028】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0029】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0030】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0031】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0032】
上記式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
上記式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
上記式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、本発明の効果がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0033】
上記式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、C1~C4アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0034】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0035】
【0036】
【0037】
上記式(P)中、T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1及びSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、偏光子の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0038】
繰り返し単位(P)の含有量は、偏光子の配向度がより向上する理由から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(P)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、繰り返し単位(P)が高分子液晶性化合物中に2種含まれているのがよい。
【0039】
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(P)を2種含む場合、偏光子の配向度がより向上する理由から、一方(繰り返し単位A)においてT1が表す末端基がアルコキシ基であり、他方(繰り返し単位B)においてT1が表す末端基がアルコキシ基以外の基であることが好ましい。
上記繰り返し単位BにおいてT1が表す末端基は、偏光子の配向度がより向上する理由から、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基であることが好ましく、アルコキシカルボニル基、又は、シアノ基であることがより好ましい。
高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Aの含有量と高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Bの含有量との割合(A/B)は、偏光子の配向度がより向上する理由から、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~93/7であることがより好ましく、70/30~90/10であることがさらに好ましい。
【0040】
(重量平均分子量)
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、偏光子の配向度がより向上する理由から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0041】
(logP値)
本発明においては、後述する第1の二色性物質および第2の二色性物質との相溶性を調整しやすくなる理由から、液晶性化合物のlogP値が4.0~10であることが好ましく、4.3~9.5であることがより好ましく、4.3~5.5であることが更に好ましい。
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0042】
<第1の二色性物質>
本組成物が含有する第1の二色性物質は、上述した液晶性化合物と相溶する二色性物質である。
このような第1の二色性物質としては、例えば、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば、量子ロッド)等の従来公知の二色性物質のうち、上述した液晶性化合物と相溶する物質が挙げられる。
【0043】
第1の二色性物質としては、具体的には、例えば、下記式(1Y)で表される構造を有する二色性色素化合物(以下、「二色性色素化合物(1Y)」とも略す。)が好適に挙げられる。
【化11】
【0044】
式(1Y)中、AおよびBは、それぞれ独立に、架橋性基を表す。
式(1Y)中、aおよびbは、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a+b≧1である。
式(1Y)中、a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。
式(1Y)中、Ar1は(n1+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar2は(n2+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表し、Ar3は(n3+2)価の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。
式(1Y)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。n1≧2である場合には複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよく、n2≧2である場合には複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよく、n3≧2である場合には複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(1Y)中、kは、1~4の整数を表す。k≧2の場合には、複数のAr2は互いに同一でも異なっていてもよく、複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。
式(1Y)中、n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。ただし、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0であり、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。
【0045】
上記式(1Y)において、AおよびBが表す架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。これらの中でも、反応性および合成適性の向上の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が好ましく、溶解性をより向上できるという観点から、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。
【0046】
上記式(1Y)において、aおよびbはそれぞれ独立に、0または1を表すが、a+b≧1である。すなわち、二色性色素化合物(1Y)は、末端に少なくとも1つの架橋性基を有する。
ここで、aおよびbは両方が1であること、すなわち架橋性基が二色性色素化合物(1Y)の両末端に導入されていることが好ましい。これにより、二色性色素化合物(1Y)の溶解性が向上したり、偏光子の耐久性が向上したりするという利点がある。
【0047】
上記式(1Y)において、a=0の場合にはL1は1価の置換基を表し、a=1の場合にはL1は単結合または2価の連結基を表す。また、b=0の場合にはL2は1価の置換基を表し、b=1の場合にはL2は単結合または2価の連結基を表す。
L1およびL2は、両方が単結合または2価の連結基であることが好ましく、両方が2価の連結基であることが好ましい。これにより、二色性色素化合物(1Y)の溶解性が向上する。
【0048】
L1およびL2が表す1価の置換基としては、二色性色素化合物(1Y)の溶解性を高めるために導入される基、または、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基が好ましい。
例えば、置換基としては、
アルキル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、特に好ましくは炭素数1~8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、
アルケニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、特に好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基などが挙げられる)、
アルキニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~12、特に好ましくは炭素数2~8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3-ペンチニル基などが挙げられる)、
アリール基(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20、特に好ましくは炭素数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、3,5-ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基などが挙げられる)、
置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、特に好ましくは炭素数0~6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~15であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、
オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~15、特に好ましくは2~10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などが挙げられる)、
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは2~6であり、例えば、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは炭素数2~6であり、例えばアセチルアミノ基およびベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~20、より好ましくは炭素数2~10、特に好ましくは炭素数2~6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~16、特に好ましくは炭素数7~12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0~20、より好ましくは炭素数0~10、特に好ましくは炭素数0~6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、
アリールチオ基(好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~16、特に好ましくは炭素数6~12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、
スルホニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、
スルフィニル基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、
ウレイド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、
リン酸アミド基(好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~10、特に好ましくは炭素数1~6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1~30、より好ましくは1~12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、
シリル基(好ましくは、炭素数3~40、より好ましくは炭素数3~30、特に好ましくは、炭素数3~24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)、
ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、および、アゾ基、などを用いることができる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を2つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
上記置換基がさらに上記置換基によって置換された基としては、例えば、アルコキシ基がアルキル基で置換された基である、RB-(O-RA)na-基が挙げられる。ここで、式中、RAは炭素数1~5のアルキレン基を表し、RBは炭素数1~5のアルキル基を表し、naは1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数を表す。
これらの中でも、L1およびL2が表す1価の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、および、これらの基がさらにこれらの基によって置換された基(例えば、上述したRB-(O-RA)na-基)がより好ましい。
【0049】
L1およびL2が表す2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-CO-NRN-、-O-CO-NRN-、-NRN-CO-NRN-、-SO2-、-SO-、アルキレン基、シクロアルキレン基、および、アルケニレン基、ならびに、これらの基を2つ以上組み合わせた基などが挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基と、-O-、-COO-、-OCO-および-O-CO-O-からなる群より選択される1種以上の基と、を組み合わせた基が好ましい。
ここで、RNは、水素原子またはアルキル基を表す。RNが複数存在する場合には、複数のRNは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
二色性色素化合物(1Y)の溶解性が向上するという観点から、L1およびL2の主鎖の原子の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましい。また、主鎖の原子の数の上限値は、12個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましい。
ここで、式(1Y)におけるAが存在する場合には、L1における「主鎖」とは、L1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の個数のことを指す。同様に、式(1Y)におけるBが存在する場合には、L2における「主鎖」とは、L2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分を指し、「主鎖の原子の数」とは、上記部分を構成する原子の数のことを指す。なお、「主鎖の原子の数」には、後述する分岐鎖の原子の数は含まない。
また、Aが存在しない場合には、L1における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL1の原子の個数のことをいう。Bが存在しない場合には、L2における「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないL2の原子の個数のことをいう。
具体的には、下記式(D1)においては、L1の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D1)の右側の点線枠内の原子の数)である。また、下記式(D10)においては、L1の主鎖の原子の数は7個(下記式(D10)の左側の点線枠内の原子の数)であり、L2の主鎖の原子の数は5個(下記式(D10)の右側の点線枠内の原子の数)である。
【0051】
【0052】
L1およびL2は、分岐鎖を有していてもよい。
ここで、式(1Y)においてAが存在する場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(1Y)におけるL1と連結する「O」原子と、「A」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。同様に、式(1Y)においてBが存在する場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(1Y)におけるL2と連結する「O」原子と、「B」と、を直接連結するために必要な部分以外の部分をいう。
また、式(1Y)においてAが存在しない場合には、L1における「分岐鎖」とは、式(1Y)におけるL1と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。同様に、式(1Y)においてBが存在しない場合には、L2における「分岐鎖」とは、式(1Y)におけるL2と連結する「O」原子を起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。
分岐鎖の原子の数は、3以下であることが好ましい。分岐鎖の原子の数が3以下であることで、偏光子の配向度がより向上するなどの利点がある。なお、分岐鎖の原子の数には、水素原子の数は含まれない。
【0053】
上記式(1Y)において、Ar1は(n1+2)価(例えば、n1が1である時は3価)、Ar2は(n2+2)価(例えば、n2が1である時は3価)、Ar3は(n3+2)価(例えば、n3が1である時は3価)、の芳香族炭化水素基または複素環基を表す。ここで、Ar1~Ar3はそれぞれ、n1~n3個の置換基(後述するR1~R3)で置換された2価の芳香族炭化水素基または2価の複素環基と換言できる。
Ar1~Ar3が表す2価の芳香族炭化水素基としては、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよい。2価の芳香族炭化水素基の環数は、溶解性がより向上するという観点から、1~4が好ましく、1~2がより好ましく、1(すなわちフェニレン基であること)がさらに好ましい。
2価の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニレン基、アズレン-ジイル基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、溶解性がより向上するという観点から、フェニレン基およびナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基は、単環であってもよいし、2環以上の縮環構造を有していてもよい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、チアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基(本発明において、「チエノチアゾール基」という。)、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基等が挙げられる。
上記の中でも、2価の芳香族複素環基としては、単環または下記構造式で表される2環の縮環構造を有する基が好ましく用いることができる。なお、下記構造式において、「*」は、式(1Y)におけるアゾ基または酸素原子との結合位置を示す。
【0054】
【0055】
上記式(1Y)において、Ar1~Ar3は、2価の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニレン基が好ましい。
ここで、Ar1がフェニレン基である場合には、Ar1に結合する酸素原子とアゾ基とが、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することが好ましい。これにより、偏光子の配向度がより向上する。同様の観点から、Ar2がフェニレン基である場合には、Ar2に結合する2つのアゾ基が、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することが好ましい。同様に、Ar3がフェニレン基である場合には、Ar3に結合する酸素原子とアゾ基とが、メタ位またはパラ位に位置することが好ましく、パラ位に位置することが好ましい。
【0056】
上記式(1Y)において、Ar1、Ar2およびAr3が縮環構造である場合には、縮環構造を構成する複数の環がいずれも、上記式(1Y)で表される構造の長手方向に沿って連結していることが好ましい。これにより、二色性色素化合物(1Y)の分子が長手方向と交差する方向(短手方向)に嵩高くなることを抑制できるので、分子の配向性が良好となり、偏光子の配向度がより向上する。
ここで、上記式(1Y)で表される構造の長手方向とは、上記式(1Y)で表される構造の延びる方向のことをいい、具体的には、Ar1、Ar2およびAr3に結合するアゾ基の結合手およびエーテル結合(酸素原子)の結合手が延びる方向のことをいう。
縮環構造を構成する複数の環の全てが上記式(1Y)で表される構造の長手方向に沿って連結している態様の具体例として、式(Ar-1)で表される縮環構造を以下に示す。すなわち、Ar1、Ar2およびAr3が縮環構造である場合には、以下の式(A-1)で表される縮環構造を有していることが好ましい。
【0057】
【0058】
上記式(Ar-1)において、ArX、ArYおよびArZは、それぞれ独立に、ベンゼン環または単環の複素環を表す。nは、0以上の整数を表す。*は、式(1Y)におけるアゾ基または酸素原子との結合位置を表す。
上記式(Ar-1)における単環の複素環としては、単環の芳香族複素環が好ましい。単環の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。単環の芳香族複素環としては、具体的には、ピリジン環、チオフェン環、チアゾール環およびオキサゾール環等が挙げられる。
また、ArX、ArYおよびArZは、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、後述するR1~R3における1価の置換基が挙げられる。
nは、0以上の整数を表すが、0~2が好ましく、0~1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0059】
上記式(1Y)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。
R1、R2およびR3が表す1価の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、フッ化アルキル基、-O-(C2H4O)m-R’、-O-(C3H6O)m-R’、アルキルチオ基、オキシカルボニル基、チオアルキル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルフィニル基、または、ウレイド基が好ましい。ここで、R’は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、mは1~6の整数を表す。これらの置換基は、さらにこれらの置換基で置換されていてもよい。
これらの中でも、R1、R2およびR3が表す1価の置換基は、二色性色素化合物(1Y)の溶解性がより向上するという観点から、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、-O-(C2H4O)m-R’、または、-O-(C3H6O)m-R’が好ましく、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、-O-(C2H4O)m-R’、または、-O-(C3H6O)m-R’がより好ましい。
R1、R2およびR3が表す1価の置換基において、主鎖の原子の数は、二色性色素化合物(1Y)の溶解性および偏光子の配向性のバランスの観点から、1~15が好ましく、1~12がより好ましい。ここで、R1、R2およびR3が表す1価の置換基において、「主鎖の原子の数」とは、分岐鎖を含まないR1、R2またはR3の原子の個数のことをいう。また、「分岐鎖」とは、上記式(1Y)におけるAr1~Ar3のいずれかを起点として延びる最長の原子鎖(すなわち主鎖)以外の部分をいう。
【0060】
上記式(1Y)がR1、R2およびR3から選択される少なくとも1つ以上の置換基を有する場合において、下記条件(R1)~条件(R3)から選択される少なくとも1つの条件を満たすことが好ましい。これにより、二色性色素化合物(1Y)の溶解性がより向上する。
条件(R1):Ar1において、少なくとも1つのR1と、アゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R2):Ar2において、少なくとも1つのR2と、少なくとも1つのアゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R3):Ar3において、少なくとも1つのR3と、アゾ基と、が隣り合う位置にあること
条件(R1)の具体例としては、Ar1がフェニレン基である場合に、Ar1に結合するアゾ基に対するオルト位にR1が位置する態様が挙げられる。条件(R2)の具体例としては、Ar2がフェニレン基である場合に、少なくとも1つのアゾ基に対するオルト位にR2が位置する態様が挙げられる。条件(R3)の具体例としては、Ar3がフェニレン基である場合において、Ar3に結合するアゾ基に対するオルト位にR3が位置する態様が挙げられる。
【0061】
上記式(1Y)において、kは1~4の整数を表す。ここで、優れた溶解性を担保しつつ、耐光性にも優れるという観点からはkが2以上であることが好ましい。一方で、二色性色素化合物(1Y)の溶解性により優れるという観点からは、kが1であることが好ましい。
【0062】
上記式(1Y)において、n1、n2およびn3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表すが、0~3が好ましい。
ここで、k=1の場合にはn1+n2+n3≧0である。すなわち、式(1Y)がビスアゾ構造を有する場合には、置換基(式(1Y)のR1~R3)の有無に関わらず、十分な溶解性が得られるが、溶解性をより向上する観点からは置換基を有していることが好ましい。
k=1の場合には、n1+n2+n3は、0~9が好ましく、1~9がより好ましく、1~5がさらに好ましい。
一方で、k≧2の場合にはn1+n2+n3≧1である。すなわち、式(1Y)がトリスアゾ構造、テトラキスアゾ構造、またはペンタキスアゾ構造を有する場合には、置換基(上記式(1Y)のR1~R3)を少なくとも1つ有する。
k≧2の場合には、n1+n2+n3は、1~9が好ましく、1~5がより好ましい。
【0063】
以下に、二色性色素化合物(1Y)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
【0065】
第1の二色性物質の他の具体例としては、下記式(1M)で表される構造を有する二色性色素化合物(以下、「二色性色素化合物(1M)」とも略す。)が好適に挙げられる。
【化17】
【0066】
式(1M)中、mは1または2を表す。
式(1M)中、Ar4、Ar5およびAr6はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基または置換基を有していてもよい複素環基を表す。
複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよい。
芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、および、チエノチオフェン-ジイル基、などが挙げられる。
【0067】
式(1M)中、R4は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、アルキルシリル基、を表す。
上記アルキル基の炭素原子は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-または-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。
R4が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)2、によって置換されていてもよい。
R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
式(1M)中、R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
上記アルキル基の炭素原子は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。
R5およびR6が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、-C(R2’)=C(CN)2、によって置換されていてもよい。
R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよいし、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【0069】
耐光性の観点からは、R4は電子吸引性基であることが好ましく、R5およびR6は電子供与性が低い基であることが好ましい。
このような基の具体例として、R4としては、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルフィニル基、および、アルキルウレイド基などが挙げられ、R5およびR6としては、下記の構造の基などが挙げられる。なお下記の構造の基は、上記式(1M)において、R5およびR6が結合する窒素原子を含む形で示す。
【0070】
【0071】
以下に、二色性色素化合物(1M)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
【0073】
本発明においては、偏光子の色味の調整が容易になるという理由から、第1の二色性物質が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質(以下、「二色性物質Y」とも略する。)と、455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質(以下、「二色性物質M」とも略する。)とを含むことが好ましい。
ここで、二色性物質の最大吸収波長(nm)は、二色性物質を良溶媒中に溶解させた溶液を用いて、分光光度計によって測定される波長380~800nmの範囲における紫外可視光スペクトルから求められる。
また、二色性物質Yとしては、具体的には、例えば、上述した二色性色素化合物(1Y)が挙げられ、二色性物質Mとしては、具体的には、例えば、上述した二色性色素化合物(1M)が挙げられる。
【0074】
また、本発明においては、液晶性化合物とより相溶しやすくなる理由から、二色性物質YのlogP値が13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、11以下であることが更に好ましい。
同様の理由から、二色性物質MのlogP値が9以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0075】
<第2の二色性物質>
本組成物が含有する第2の二色性物質は、上述した液晶性化合物と相溶しない二色性物質である。
このような第2の二色性物質としては、例えば、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、および、無機物質(例えば、量子ロッド)等の従来公知の二色性物質のうち、上述した液晶性化合物と相溶しない物質が挙げられる。
【0076】
本発明においては、偏光子の配向度がより向上する理由から、第2の二色性物質が、下記式(2)で表される構造を有する二色性アゾ色素であり、かつ、第2の二色性物質のlogP値と、液晶性化合物のlogP値との差が4.3以上であることが好ましい。
【化23】
【0077】
式(2)中、R1およびR2は、置換基を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
式(2)中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。
式(2)中、Eは、単結合、または、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表す。
式(2)中、Qは、酸素原子または硫黄原子を表す。
式(2)中、Lは、単結合、-N=N-、-CR=N-、-CR=CR’-、または、-C(=O)-NR-を表す。RおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。
式(2)中、nは、0または1を表す。ただし、Eが、単結合または酸素原子もしくは硫黄原子である場合には、nは0であり、Eが、窒素原子である場合には、nは1である。
【0078】
上記式(2)中、R1およびR2が表す「置換基」について説明する。
上記置換基としては、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性もしくは電子吸引性を有する基、または、配向を固定化するために導入される架橋性基(重合性基)を有する基が挙げられる。
【0079】
R1が表す置換基としては、例えば、上記式(1M)中のR4と同様のものが挙げられる。
【0080】
R2が表す置換基としては、例えば、置換していてもよいアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好適に挙げられる。
ここで、アルキル基を構成する炭素原子は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R)-、-N(R)-CO-、-CO-N(R)-、-N(R)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R)-、-N(R)-C(O)-N(R’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R)=N-、-C(R)=CH-C(O)-または-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。RおよびR’は、アルキル基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
上記アルキル基の炭素原子に結合する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R)(R’)-、アミノ基、-C(R)=C(R’)-NO2、-C(R)=C(R’)-CN、または、-C(R)=C(CN)2、によって置換されていてもよい。RおよびR’は、アルキル基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
【0081】
上記式(2)中、R3およびR4が表す「水素原子または置換基」について説明する。
ここで、R3およびR4の一態様が表す「置換基」としては、式(2)中のR2が表す「置換基」と同様のものが挙げられる。なお、R3が置換基である場合、R2と連結して環構造を形成していてもよい。
【0082】
式(2)中、Ar1およびAr2が表す「置換基を有していてもよい2価の芳香族基」について説明する。
上記置換基としては、例えば、特開2011-237513号公報の[0237]~[0240]段落に記載された置換基群Gが挙げられ、中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、4-メチルフェノキシカルボニル、4-メトキシフェニルカルボニルなど)等が好適に挙げられ、アルキル基がより好適に挙げられ、炭素数1~5のアルキル基がさらに好適に挙げられる。
一方、2価の芳香族基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基および2価の芳香族複素環基が挙げられる。
上記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~12のアリーレン基が挙げられ、具体的には、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。中でもフェニレン基が好ましい。
また、上記2価の芳香族複素環基としては、単環または2環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基としては、具体的には、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基(以下、「チエノチアゾール基」と略す。)等が挙げられる。
上記2価の芳香族基の中でも、2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0083】
式(2)中、Eは、上述した通り、単結合、または、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかの原子を表し、単結合または窒素原子であることが好ましい。
式(2)中、Qは、上述した通り、酸素原子または硫黄原子を表し、硫黄原子であることが好ましい。
式(2)中、Lは、上述した通り、単結合、-N=N-、-CR=N-、-CR=CR’-、または、-C(=O)-NR-を表し、RおよびR’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、または、炭素数1~6のアルキル基を表す。中でも、-N=N-、または、-C(=O)-NH-であることが好ましい。
【0084】
以下に、式(2)で表される構造を有する二色性アゾ色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【0086】
本発明においては、偏光子の色味の調整が容易になるという理由から、第1の二色性物質および第2の二色性物質のいずれか一方が、380nm以上455nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質Yであることが好ましく、第1の二色性物質が、二色性物質Yであることがより好ましい。
【0087】
また、本発明においては、偏光子の色味の調整が容易になるという理由から、第1の二色性物質および第2の二色性物質のいずれか一方が、560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性物質(以下、「二色性物質C」とも略する。)であることが好ましく、第2の二色性物質が、二色性物質Cであることがより好ましい。
なお、本発明においては、液晶性化合物とより相溶し難くなるという理由から、二色性物質CのlogP値が8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。
【0088】
(二色性物質の含有量)
本組成物において、第1の二色性物質および第2の二色性物質の合計の含有量は、液晶性化合物100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましく、8~30質量部が特に好ましい。
また、第1の二色性物質の含有量は、液晶性化合物100質量部に対して、0.5~35質量部が好ましく、1~25質量部がより好ましい。
更に、第2の二色性物質の含有量は、液晶性化合物100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましい。
【0089】
<溶媒>
本組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキソラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、および、シクロペンチルメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル、炭酸ジエチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、本発明の効果がより優れる理由から、有機溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類またはケトン類を用いることがより好ましい。
本組成物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、本組成物の全質量に対して、70~99.5質量%であることが好ましく、80~99質量%であることがより好ましく、85~98質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
<界面改良剤>
本組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性の向上が見込まれる。
界面改良剤としては、液晶性化合物を水平配向させるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。また、特開2007-272185号公報の[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも用いることができる。界面改良剤としては、これら以外の化合物を用いてもよい。
本組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、本組成物中の液晶性化合物と二色性物質との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が好ましい。
【0091】
<重合開始剤>
本組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)等が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819およびイルガキュアOXE-01等が挙げられる。
本組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、本組成物中の液晶性化合物と二色性物質との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であれば、偏光子の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、偏光子の配向がより良好となる。
【0092】
〔偏光子の製造方法〕
本発明の偏光子を製造する方法は特に制限されないが、得られる偏光子の配向度がより高くなる理由から、配向膜上に上述した本組成物を塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、上記塗布膜に含まれる二色性物質を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に備える方法(以下、「本製造方法」ともいう。)が好ましい。なお、以下、「得られる偏光子の配向度がより高くなる」ことを「本発明の効果がより優れる」ともいう。
以下、各工程について説明する。
【0093】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程は、配向膜上に上述した本組成物を塗布して塗布膜を形成する工程である。塗布膜中の液晶性化合物は配向膜と(本組成物が界面改良剤を含有する場合には)界面改良剤との相互作用により水平配向する。
上述した溶媒を含有する本組成物を用いたり、本組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、配向膜上に本組成物を塗布することが容易になる。
本組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0094】
(配向膜)
配向膜は、本組成物に含有される液晶性化合物を水平配向させる膜であれば、どのような膜でもよい。
有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。なかでも、本発明では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜も好ましい。
【0095】
(1)ラビング処理配向膜
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがさらに好ましい。
【0096】
(2)光配向膜
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献などに記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0097】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0098】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0099】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性物質偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0100】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0101】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0102】
<配向工程>
配向工程は、塗布膜に含有される第1の二色性物質および第2の二色性物質を水平に配向させる工程である。これにより、本発明の偏光子が得られる。配向工程では、配向膜によって水平配向した液晶性化合物に沿って、第1の二色性物質および第2の二色性物質が配向するものと考えられる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、本組成物に含有される二色性物質は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、本組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、塗布膜に含有される第1の二色性物質および第2の二色性物質が配向して、本発明の偏光子が得られる場合がある。
【0103】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる第1の二色性物質および第2の二色性物質がより配向し、得られる偏光子の配向度がより高くなる。
加熱処理は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0104】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含有される第1の二色性物質および第2の二色性物質の配向がより固定され、得られる偏光子の配向度がより高くなる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、本発明の偏光子を得ることができる。
【0105】
<他の工程>
本製造方法は、上記配向工程後に、偏光子を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって偏光子の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0106】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、上記基材上に設けられた配向膜と、上記配向膜上に設けられた上述した本発明の偏光子とを有する。
また、本発明の積層体は、上記本発明の偏光子上に、λ/4板を有していてもよい。
さらに、本発明の積層体は、上記本発明の偏光子とλ/4板との間に、バリア層を有していてもよい。
以下、本発明の積層体を構成する各層について説明する。
【0107】
〔基材〕
基材としては、適宜選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。
基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。ポリマーの具体例および好ましい態様は、特開2002-22942号公報の[0013]段落の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開第2000/26705号公報に記載の分子を修飾することで発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0108】
〔配向膜〕
配向膜については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0109】
〔偏光子〕
本発明の偏光子については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
【0110】
〔λ/4板〕
「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルムや、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルムなどが挙げられ、また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
λ/4板と本発明の偏光子とは、接して設けられていてもよいし、λ/4板と本発明の偏光子との間に、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、密着性担保のための粘着層または接着層、およびバリア層が挙げられる。
【0111】
〔バリア層〕
本発明の積層体がバリア層を備える場合、バリア層は、本発明の偏光子とλ/4板との間に設けられる。なお、本発明の偏光子とλ/4板との間に、バリア層以外の他の層(例えば、粘着層または接着層)を備える場合には、バリア層は、例えば、本発明の偏光子と他の層との間に設けることができる。
バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から本発明の偏光子を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
【0112】
〔用途〕
本発明の積層体は、例えば、偏光素子(偏光板)として使用でき、例えば、直線偏光板または円偏光板として使用できる。
本発明の積層体が上記λ/4板などの光学異方性層を有さない場合には、積層体は直線偏光板として使用できる。
一方、本発明の積層体が上記λ/4板を有する場合には、積層体は円偏光板として使用できる。
【0113】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の偏光子または上述した本発明の積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネルなどが挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、液晶表示装置であるのがより好ましい。
【0114】
〔液晶表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である液晶表示装置としては、上述した本発明の偏光子と、液晶セルと、を有する態様が好ましく挙げられる。より好適には、上述した本発明の積層体(ただし、λ/4板を含まない)と、液晶セルと、を有する液晶表示装置である。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光素子のうち、フロント側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光素子として本発明の積層体を用いるのがより好ましい。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0115】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、またはTN(Twisted Nematic)モードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT(Thin Film Transistor)液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、およびPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、および特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶性分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0116】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の偏光子と、λ/4板と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。
より好適には、視認側から、λ/4板を有する上述した本発明の積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順に有する態様である。この場合には、積層体は、視認側から、基材、配向膜、本発明の偏光子、必要に応じて設けられるバリア層、および、λ/4板の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0117】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0118】
[実施例1]
<配向膜の作製>
ガラス基材(セントラル硝子社製、青板ガラス、サイズ300mm×300mm、厚み1.1mm)をアルカリ洗剤で洗浄し、次いで純水を注いだ後、ガラス基材を乾燥させた。
下記の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて乾燥後のガラス基材上に塗布し、塗布した配向膜形成用組成物1を110℃で2分間乾燥して、ガラス基材上に塗布膜を形成した。
得られた塗布膜にラビング処理(ローラーの回転数:1000回転/スペーサー厚2.9mm、ステージ速度1.8m/分)を1回施して、ガラス基材上に配向膜1を作製した。
【0119】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・変性ビニルアルコール(下記PVA-1) 2.00質量部
・水 74.08質量部
・メタノール 23.86質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0120】
【0121】
<偏光子の作製>
得られた配向膜1から30mm×30mmサイズを切り出し、下記の偏光子形成用組成物1を1000回転でスピンコートして、塗布膜を形成した。
塗布膜を室温で30秒間乾燥させた後、さらに150℃で15秒間加熱した。
次いで、塗布膜を室温になるまで冷却した後、80℃に加熱し、室温になるまで冷却することで配向膜1上に偏光子1を作製した。
【0122】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光子形成用組成物1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・液晶性化合物(下記L1) 5.859質量部
・第1の二色性物質(下記Y1) 0.293質量部
・第2の二色性物質(下記C1) 0.792質量部
・界面改良剤(下記F1) 0.056質量部
・クロロホルム 93質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0123】
【0124】
[実施例2~11、比較例1~3および参考例1]
偏光子形成用組成物1の代わりに、下記表1に記載の組成の偏光子形成用組成物を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、偏光子を作製した。
なお、以下に、実施例1も含めた各例で使用した成分をまとめて示す。
また、偏光子形成用組成物における、液晶性化合物と第1の二色性物質または第2の二色性物質との相溶性は、上述した方法により確認し、その結果を下記表1に示している。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
第1の二色性物質および第2の二色性物質の最大吸収波長を以下に示す。
Y1:413nm
Y2:445nm
Y3:413nm
Y4:445nm
Y5:413nm
Y6:413nm
Y7:443nm
Y8:430nm
M1:502nm
M2:457nm
M3:442nm
C1:592nm
C2:592nm
C3:605nm
C4:592nm
C5:592nm
C6:592nm
【0131】
[評価]
上記のようにして得られた実施例および比較例の偏光子について以下の評価を行った。
【0132】
〔配向度〕
光学顕微鏡(ECLIPSE E600 POL、株式会社ニコン製)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各光吸収異方性膜をセットし、マルチチャンネル分光器(QE65000、Ocean Optics社製)を用いて、以下に示す波長域A~Cにおける偏光子の吸光度を測定し、各波長域における配向度を以下の式により算出した。結果を下記表1に示す。
配向度:S=((Az0/Ay0)-1)/((Az0/Ay0)+2)
Az0:色素膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:色素膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
上記式において、「Az0」は光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度を表し、「Ay0」は光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度を表す。
A:400nm~700nmの範囲における配向度
B:400nm~500nmの範囲における配向度
C:600nm~700nmの範囲における配向度
【0133】
【0134】
表1に示す結果から、二色性物質として、液晶性化合物と相溶する二色性物質(第1の二色性物質)と、液晶性化合物と相溶する二色性物質(第1の二色性物質)とを併用すると、配向度の高い偏光子が得られることが分かった(実施例1~11)。
以上の結果は、液晶性化合物と相溶しない二色性物質を2種配合した場合(比較例1)、および、液晶性化合物と相溶する二色性物質を2種配合した場合(比較例2~3)には、液晶性化合物と相溶しない二色性物質を1種配合した参考例1よりも却って配向度が小さくなることを考慮すると、意外な効果であると言える。