(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】めっき装置及びリンス処理方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/08 20060101AFI20220224BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220224BHJP
C25D 21/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C25D21/08
C25D17/06 F
C25D17/06 H
C25D21/00 B
(21)【出願番号】P 2021575490
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033307
【審査請求日】2021-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 一仁
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0301049(US,A1)
【文献】特開2006-70349(JP,A)
【文献】特許第6934127(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0018724(KR,A)
【文献】特開2003-247098(JP,A)
【文献】特開2004-241433(JP,A)
【文献】特開2007-332435(JP,A)
【文献】特開2004-183042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードが配置されためっき槽と、前記アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダを回転させる回転機構と、前記基板ホルダを昇降させる昇降機構と、前記基板ホルダが前記めっき槽よりも上方に位置した状態で前記基板及び前記基板ホルダの少なくとも一方である被リンス部材をリンス液でリンスするリンス処理を実行可能なリンスモジュールと、を有するめっきモジュールを備え、
前記リンスモジュールは、
前記リンス処理の実行時に、前記被リンス部材に向けてリンス液を吐出するリンスノズルと、
前記リンスノズルよりも下方に配置され、前記リンス処理の実行時に、前記めっき槽と前記基板ホルダとの間の空間を横切るように気体を吹き出すブローノズルと、
前記ブローノズルから吹き出された前記気体の下流側に配置され、前記被リンス部材から落下して前記ブローノズルから吹き出された前記気体の流れに乗った前記リンス液を回収する回収部材と、を備える、めっき装置。
【請求項2】
前記リンスノズル及び前記ブローノズルは、前記基板ホルダが昇降する領域である昇降領域の外側に固定されている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記リンスモジュールは、前記基板ホルダが昇降する領域である昇降領域の外側の第1位置と前記昇降領域の内側の第2位置との間で、前記ブローノズルを移動させる移動機構をさらに備える、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記移動機構は、さらに、前記リンスノズルを前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる、請求項3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記ブローノズルは、前記気体を膜状に吹き出すスリットノズルである、請求項1~4のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記ブローノズルは、前記ブローノズルを起点として前記気体を放射状に吹き出すように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項7】
前記リンス処理の実行時において、前記基板ホルダは水平の状態になっている、請求項1~6のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項8】
前記めっきモジュールは、前記基板ホルダを水平方向に対して傾斜させる傾斜機構をさらに備え、
前記リンス処理の実行時において、前記基板ホルダは傾斜した状態になっている、請求項1~6のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項9】
前記リンスノズルが前記リンス液を吐出することを開始する時期は、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すことを開始する時期よりも早い、請求項1~8のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項10】
前記めっきモジュールは、少なくとも前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記回転機構、前記昇降機構、及び、前記リンスモジュールを内部に収容する筐体と、前記筐体の内部の空気を前記筐体の外部に排出する排気機構と、をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のめっき装置。
【請求項11】
前記排気機構は、前記ブローノズルが気体を吹き出している期間の排気流量を、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すことを開始する前の時点における排気流量よりも高くする、請求項10に記載のめっき装置。
【請求項12】
前記ブローノズルから吹き出される前記気体に含まれる水蒸気の量は、前記筐体の内部の空気に含まれる水蒸気の量以上である、請求項10又は11に記載のめっき装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のめっき装置を用いたリンス処理方法であって、
前記基板ホルダが前記めっき槽よりも上方に位置した状態で、前記リンスノズルが前記被リンス部材に向けて前記リンス液を吐出する第1工程と、
前記リンスノズルによる前記リンス液の吐出が実行されている最中に、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すとともに、前記被リンス部材から落下して前記ブローノズルから吹き出された前記気体の流れに乗った前記リンス液を前記回収部材が回収する、第2工程と、を含む、リンス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びリンス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっきを施すことが可能なめっき装置として、いわゆるカップ式のめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、アノードが配置されためっき槽と、アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、基板ホルダを回転させる回転機構と、基板ホルダを昇降させる昇降機構とを備えている。
【0003】
このようなめっき装置において、基板及び基板ホルダの少なくとも一方である「被リンス部材」をリンス液でリンスする「リンス処理」が実行される場合がある(例えば、特許文献1参照)。これに関して、例えば、特許文献1に係るめっき装置においては、めっき槽よりも上方に配置されたリンスノズル(特許文献1では噴射ノズルと称されている)から被リンス部材に向けてリンス液を吐出することで、被リンス部材をリンスしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような特許文献1に例示されるような従来のめっき装置の場合、被リンス部材から落下したリンス液の全量がめっき槽の内部に落下する構造になっているので、リンス液がめっき槽のめっき液に多量に入ってしまうおそれがある。この場合、リンス液によってめっき槽のめっき液が薄まり過ぎるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、リンス液がめっき槽のめっき液に多量に入ることを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の1態様に係るめっき装置は、アノードが配置されためっき槽と、前記アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、前記基板ホルダを回転させる回転機構と、前記基板ホルダを昇降させる昇降機構と、前記基板ホルダが前記めっき槽よりも上方に位置した状態で前記基板及び前記基板ホルダの少なくとも一方である被リンス部材をリンス液でリンスするリンス処理を実行可能なリンスモジュールと、を有するめっきモジュールを備え、前記リンスモジュールは、前記リンス処理の実行時に、前記被リンス部材に向けてリンス液を吐出するリンスノズルと、前記リンスノズルよりも下方に配置され、前記リンス処理の実行時に、前記めっき槽と前記基板ホルダとの間の空間を横切るように気体を吹き出すブローノズルと、前記ブローノズルから吹き出された前記気体の下流側に配置され、前記被リンス部材から落下して前記ブローノズルから吹き出された前記気体の流れに乗った前記リンス液を回収する回収部材と、を備える。
【0008】
この態様によれば、リンス処理の実行時にリンスノズルから被リンス部材に向けてリンス液を吐出することで、被リンス部材をリンスすることができる。また、この被リンス部材から落下したリンス液を、ブローノズルから吹き出された気体の流れに乗せて、回収部材で回収することができる。これにより、リンス液がめっき槽のめっき液に多量に入ることを抑制することができる。この結果、リンス液によってめっき槽のめっき液が薄まり過ぎることを抑制することができる。
【0009】
(態様2)
上記の態様1において、前記リンスノズル及び前記ブローノズルは、前記基板ホルダが昇降する領域である昇降領域の外側に固定されていてもよい。
【0010】
(態様3)
上記の態様1において、前記リンスモジュールは、前記基板ホルダが昇降する領域である昇降領域の外側の第1位置と前記昇降領域の内側の第2位置との間で、前記ブローノズルを移動させる移動機構をさらに備えていてもよい。
【0011】
(態様4)
上記の態様3において、前記移動機構は、さらに、前記リンスノズルを前記第1位置と前記第2位置との間で移動させてもよい。
【0012】
(態様5)
上記の態様1~4のいずれか1態様において、前記ブローノズルは、前記気体を膜状に吹き出すスリットノズルであってもよい。
【0013】
(態様6)
上記の態様1~4のいずれか1態様において、前記ブローノズルは、前記ブローノズルを起点として前記気体を放射状に吹き出すように構成されていてもよい。
【0014】
(態様7)
上記の態様1~6のいずれか1態様において、前記リンス処理の実行時において、前記基板ホルダは水平の状態になっていてもよい。
【0015】
(態様8)
上記の態様1~6のいずれか1態様において、前記めっきモジュールは、前記基板ホルダを水平方向に対して傾斜させる傾斜機構をさらに備え、前記リンス処理の実行時において、前記基板ホルダは傾斜した状態になっていてもよい。
【0016】
(態様9)
上記の態様1~8のいずれか1態様において、前記リンスノズルが前記リンス液を吐出することを開始する時期は、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すことを開始する時期よりも早くてもよい。
【0017】
(態様10)
上記の態様1~9のいずれか1態様において、前記めっきモジュールは、少なくとも前記めっき槽、前記基板ホルダ、前記回転機構、前記昇降機構、及び、前記リンスモジュールを内部に収容する筐体と、前記筐体の内部の空気を前記筐体の外部に排出する排気機構と、をさらに備えていてもよい。
【0018】
(態様11)
上記の態様10において、前記排気機構は、前記ブローノズルが気体を吹き出している期間の排気流量を、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すことを開始する前の時点における排気流量よりも高くしてもよい。
【0019】
(態様12)
上記の態様10又は11において、前記ブローノズルから吹き出される前記気体に含まれる水蒸気の量は、前記筐体の内部の空気に含まれる水蒸気の量以上であってもよい。
【0020】
(態様13)
上記目的を達成するため、本発明の1態様に係るリンス処理方法は、上記の態様1~12のいずれか1態様に係るめっき装置を用いたリンス処理方法であって、前記基板ホルダが前記めっき槽よりも上方に位置した状態で、前記リンスノズルが前記被リンス部材に向けて前記リンス液を吐出する第1工程と、前記リンスノズルによる前記リンス液の吐出が実行されている最中に、前記ブローノズルが前記気体を吹き出すとともに、前記被リンス部材から落下して前記ブローノズルから吹き出された前記気体の流れに乗った前記リンス液を前記回収部材が回収する、第2工程と、を含む。
【0021】
この態様によれば、リンス液がめっき槽のめっき液に多量に入ることを抑制することができる。この結果、リンス液によってめっき槽のめっき液が薄まり過ぎることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す上面図である。
【
図3】実施形態に係るめっきモジュール400の構成を説明するための模式図である。
【
図4】実施形態に係るリンスモジュールを説明するための模式図である。
【
図5】実施形態に係るリンスモジュールの模式的な上面図である。
【
図6】実施形態に係るリンス処理時におけるめっき装置の動作を説明するためのフローチャートの一例である。
【
図7】実施形態の変形例1に係るリンスモジュールの模式的な上面図である。
【
図8】実施形態の変形例2に係るリンスモジュールを説明するための模式図である。
【
図9】実施形態の変形例2に係るリンスモジュールの模式的な上面図である。
【
図10】実施形態の変形例3に係るリンスモジュールの模式的な上面図である。
【
図11】実施形態に係るブローノズルの吹き出し口の他の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、実施形態の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0024】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す上面図である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0025】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、及び搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0026】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0027】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0028】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0029】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0030】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0031】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0032】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0033】
また、本実施形態に係るめっきモジュール400は、後述するリンスモジュール40を備えており、このリンスモジュール40が実行するリンス処理が、上述した洗浄モジュール500による洗浄処理の代わりになり得る。したがって、めっき装置1000は、洗浄モジュール500を備えていない構成とすることもできる。
【0034】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0035】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400の構成を説明するための模式図である。本実施形態に係るめっき装置1000は、カップ式のめっき装置である。
図3に例示されためっきモジュール400は、主として、めっき槽10と、基板ホルダ20と、回転機構30と、昇降機構32と、傾斜機構34と、リンスモジュール40と、を備えるとともに、これらの構成要素を内部に収容する筐体70を備えている。また、めっきモジュール400は排気機構80も備えている。なお、
図3において、一部の構成要素は、その断面が模式的に図示されている。
【0036】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外周縁から上方に延在する外周壁10bとを有しており、この外周壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の外周壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周壁10bは、一例として円筒形状を有している。
【0037】
めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。なお、めっき液Psには所定の添加剤が含まれていてもよい。
【0038】
めっき槽10の内部には、アノード11が配置されている。アノード11の具体的な種類は特に限定されるものではなく、溶解アノードや不溶解アノードを用いることができる。本実施形態においては、アノード11の一例として不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0039】
めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方には、隔膜12が配置されている。具体的には、隔膜12は、アノード11と基板Wfとの間の箇所に配置されている。めっき槽10の内部は、隔膜12によって上下方向に2分割されている。隔膜12よりも下方側に区画された領域をアノード室13と称する。隔膜12よりも上方側の領域をカソード室14と称する。前述したアノード11は、アノード室13に配置されている。隔膜12は、金属イオンの通過を許容しつつ、めっき液Psに含まれる添加剤の通過を抑制する膜によって構成されている。隔膜12の具体的な種類は、特に限定されるものではないが、例えば、イオン交換膜等を用いることができる。
【0040】
カソード室14には、イオン抵抗体15が配置されている。具体的には、イオン抵抗体15は、イオン抵抗体15の上面と下面とを貫通する複数の孔(細孔)を有する多孔性の板部材によって構成されている。イオン抵抗体15は、アノード11と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている部材である。イオン抵抗体15の具体的な材質は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、一例として、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を用いている。なお、めっきモジュール400の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、めっきモジュール400は、イオン抵抗体15を備えていない構成とすることもできる。
【0041】
基板ホルダ20は、カソードとしての基板Wfを保持するための部材である。基板Wfの下面は、被めっき面に相当する。基板ホルダ20は、回転機構30に接続されている。回転機構30は、基板ホルダ20を回転させるための機構である。回転機構30としては、回転モータ等の公知の機構を用いることができる。回転機構30は、昇降機構32に接続されている。昇降機構32は、上下方向に延在する支軸36によって支持されている。昇降機構32は、基板ホルダ20、回転機構30及び傾斜機構34を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構32としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。傾斜機構34は、基板ホルダ20及び回転機構30を傾斜させるための機構である。傾斜機構34としては、ピストン・シリンダ等の公知の傾斜機構を用いることができる。
【0042】
めっき処理を実行する際には、回転機構30が基板ホルダ20を回転させるとともに、昇降機構32が基板ホルダ20を下方に移動させて、基板Wfをめっき槽10のめっき液Psに浸漬させる。次いで、通電装置(図示せず)によって、アノード11と基板Wfとの間に電気が流される。これにより、基板Wfの下面にめっき皮膜が形成される(すなわち、めっき処理が施される)。なお、めっき処理の実行時に、傾斜機構34は、必要に応じて基板ホルダ20を傾斜させてもよい。
【0043】
排気機構80は、筐体70の内部の空気を筐体70の外部に排出するための機構である。このような機構であれば、排気機構80の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る排気機構80は、一例として、一端が筐体70に接続された排気管81と、排気管81に接続された排気ポンプ82と、を備えている。
【0044】
具体的には、本実施形態に係る排気管81の排気流動方向で上流側の端部は筐体70の内部に連通し、排気管81の下流側の端部は、筐体70の外部に連通している。より具体的には、本実施形態に係る排気管81の下流側の端部は、めっき装置1000の外部(めっき装置1000の筐体の外部)に配置されている。排気ポンプ82は、制御モジュール800の指令を受けて動作する。排気ポンプ82が運転を開始することで、筐体70の内部の空気は排気管81を通過して、筐体70の外部(本実施形態では、めっき装置1000の外部)に排出される。これにより、筐体70の内部の圧力を筐体70の外部の圧力よりも低い「陰圧」にすることができる。本実施形態において、この陰圧は、具体的には、大気圧よりも低い圧力となっている。
【0045】
なお、筐体70における排気機構80が接続されている箇所以外の箇所は密閉されていてもよい。あるいは、筐体70は、排気機構80が接続されている箇所以外の箇所に隙間や開口部が設けられていてもよい(すなわち、筐体70は密閉されていなくてもよい)。このように筐体70が密閉されていない場合であっても、排気機構80によって、筐体70の内部を陰圧にすることは可能である。
【0046】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)801や、非一時的な記憶媒体としての記憶部802、等を備えている。制御モジュール800においては、記憶部802に記憶されたプログラムの指令に基づいてCPU801が、めっきモジュール400の動作を制御する。
【0047】
続いて、リンスモジュール40について説明する。
図4は、リンスモジュール40を説明するための模式図である。具体的には、
図4は、リンスモジュール40がリンス処理を実行している状態を模式的に示している。
図5は、リンスモジュール40の模式的な上面図である。なお、
図5において、後述するリンスノズル41の図示は省略されている。また、
図5の一部(A2)には、後述するブローノズル42の吹き出し口44の近傍部分の斜視図も図示されている。
【0048】
リンスモジュール40は、基板Wf及び基板ホルダ20の少なくとも一方である「被リンス部材25」にリンス処理を施すことが可能なモジュールである。本実施形態に係る被リンス部材25は、一例として、基板Wf及び基板ホルダ20の両方を含んでいる。また、本実施形態に係るリンス処理は、具体的には、めっき処理が施された後の基板Wfを含む被リンス部材25をリンス液RLでリンスする、という処理である。
【0049】
リンス液RLの具体的な種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、純水を用いている。
【0050】
図4を参照して、リンス処理の実行時に、基板ホルダ20はめっき槽10よりも上方に位置している。また、リンス処理の実行時に、基板ホルダ20は回転している。さらに、リンス処理の実行時に、基板ホルダ20は水平方向に対して傾斜している。具体的には、基板ホルダ20は、リンス処理の実行時に、被リンス部材25の被リンス面(リンス液RLが付着する面)が後述するリンスノズル41に向くように、傾斜している。
【0051】
リンスモジュール40は、リンスノズル41と、ブローノズル42と、支持部材43と、回収部材50とを備えている。支持部材43は、リンスノズル41及びブローノズル42を支持するための部材である。支持部材43は、基板ホルダ20が昇降する領域である「昇降領域EA」の外側の領域に、配置されている。
【0052】
リンスノズル41は、リンス処理の実行時に被リンス部材25に向けてリンス液RLを吐出する。本実施形態においては、リンスノズル41の一例として、リンス液RLを広角に吐出するように構成されたスプレー式の液体吐出ノズルを用いている。
【0053】
リンスノズル41には、リンス液RLをリンスノズル41に供給するためのリンス液供給装置(図示せず)が接続されている。このリンス液供給装置は、リンス液RLを貯留する貯留タンクや、貯留タンクのリンス液RLをリンスノズル41に圧送するポンプ等、を備えている。リンスノズル41のリンス液RLの吐出動作は、制御モジュール800によって制御されている。
【0054】
また、本実施形態に係るリンスノズル41は、リンス処理の実行時に、リンス液RLが回転している基板Wfの下面の全体に付着するように、その吐出角度が調整されている。具体的には、リンスノズル41は、基板Wfの下面の中央から基板Wfの下面の外縁に亘ってリンス液RLが付着するように、リンス液RLを吐出する。これにより、回転している基板Wfの下面の全体にリンス液RLを付着させることができる。また、リンスノズル41は、基板ホルダ20における、基板Wfの外縁の外側に配置された部分にも、リンス液RLを付着させる。これにより、基板Wfの下面のみならず、基板ホルダ20の一部もリンス液RLによってリンスすることができる。
【0055】
ブローノズル42は、リンスノズル41よりも下方に配置されている。ブローノズル42は、リンス処理の実行時に、めっき槽10と基板ホルダ20との間の空間(すなわち、めっき槽10よりも上方且つ基板ホルダ20よりも下方の空間)を横切るように、気体Gaを吹き出すように構成されている。また、本実施形態に係るブローノズル42は、一例として、水平方向(-X方向)に気体Gaを吹き出している。
【0056】
図4及び
図5を参照して、本実施形態においては、ブローノズル42の一例として、気体Gaを膜状に吹き出すように構成されたスリットノズルを用いている。具体的には、
図5のA2部分の斜視図に示すように、本実施形態に係るブローノズル42は、水平方向(
図5ではY方向)に延在するスリット状の吹き出し口44を有している。この吹き出し口44から気体Gaが-X方向に吹き出すことで、吹き出された気体GaはY方向を幅方向とする膜状になる。なお、このブローノズル42としてのスリットノズルは、一般に、「エアーナイフ」と別称されていることのあるノズルである。
【0057】
但し、ブローノズル42の構成は、上述したようなスリットノズルに限定されるものではない。ブローノズル42の他の一例を挙げると、
図11に例示するように、ブローノズル42は、水平方向(Y方向)に列状に配置された、複数の吹き出し口44を備え、各々の吹き出し口44から、気体Gaを吹き出すように構成されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態に係るブローノズル42は、傾斜した基板ホルダ20の最も下方に位置する「最下点P3」の下を気体Gaが通過するように、気体Gaを吹き出している。この最下点P3は、基板ホルダ20に付着したリンス液RLが基板ホルダ20から最も落下し易い箇所である。この構成によれば、基板ホルダ20から落下したリンス液RLを効果的に気体Gaの流れに乗せることができる。
【0059】
ブローノズル42には、気体Gaをブローノズル42に供給するための気体供給装置(図示せず)が接続されている。この気体供給装置は、気体をブローノズル42に圧送するためのポンプ等を備えている。ブローノズル42の気体Gaの吹き出し動作は、制御モジュール800によって制御されている。
【0060】
なお、本実施形態に係る気体Gaは、一例として、空気である。但し、気体Gaの種類はこれに限定されるものではなく、他の例を挙げると、窒素やアルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。この場合、気体供給装置は、例えば、不活性ガスを貯留するガスボンベ等を備えていればよい。
【0061】
図4に示すように、リンスノズル41及びブローノズル42は、昇降領域EAの外側に配置された支持部材43によって支持されている。すなわち、リンスノズル41及びブローノズル42は、昇降領域EAの外側に固定されている。
【0062】
図4及び
図5を参照して、リンスノズル41及びブローノズル42は、上面視で、基板ホルダ20の中央C1(これは、昇降領域EAの中央C1でもある)を挟んで、基板ホルダ20の最下点P3の反対側の箇所に配置されている。
【0063】
回収部材50は、ブローノズル42から吹き出された気体Gaの下流側に配置されている。回収部材50は、リンスノズル41から吐出されて被リンス部材25に付着後に被リンス部材25から落下して気体Gaの流れに乗ったリンス液RLを、回収するように構成されている。
【0064】
具体的には、回収部材50は、昇降領域EAを挟んで、ブローノズル42に対向するように配置されている。また、
図4のA1部分の拡大図や
図5を参照して、回収部材50は、樋部材51と、収容部材52と、排出管57とを備えている。
【0065】
樋部材51は、気体Gaの流れに乗ったリンス液RLが衝突するとともに、衝突したリンス液RLを収容部材52に導くように配置された板部材によって構成されている。本実施形態に係る樋部材51は、収容部材52の後述する側壁54(具体的には、後述する外側側壁56)の上端から上方に延在するように配置されている。
【0066】
収容部材52は、樋部材51に衝突した後に樋部材51を伝って落下したリンス液RLを一時的に収容するように構成された部材である。具体的には、本実施形態に係る収容部材52は、底壁53と、底壁53の外周縁から上方に延在する側壁54と、を備えている。この底壁53と側壁54とによって区画された内部領域に、樋部材51に衝突した後のリンス液RLが一時的に貯留される。
【0067】
なお、側壁54のうち、基板ホルダ20の径方向で基板ホルダ20の中央に近い側の側壁を「内側側壁55」と称し、この内側側壁55に対向するとともに、内側側壁55よりも基板ホルダ20の径方向で基板ホルダ20の中央から遠い側に配置された側壁を「外側側壁56」と称する。
【0068】
排出管57は、収容部材52に接続されている。排出管57は、収容部材52に一時的に収容されたリンス液RLを外部に排出するための管である。具体的には、本実施形態に係る排出管57の上流側端部は収容部材52に接続され、下流側端部は排液回収タンク(図示せず)に接続されている。収容部材52に一時的に収容されたリンス液RLは、この排出管57を通過して、排液回収タンクに収容される。なお、本実施形態に係る排液回収タンクは、筐体70の外部(具体的には、めっき装置1000の外部)に配置されているが、排液回収タンクの配置箇所はこれに限定されるものではない。
【0069】
図6は、リンス処理時におけるめっき装置1000の動作を説明するためのフローチャートの一例である。
図6のフローチャートは、制御モジュール800の具体的にはCPU801が、記憶部802のプログラムの指令に基づいて実行する。
【0070】
制御モジュール800は、
図6のフローチャートを、リンス処理の実行を開始する旨の制御指令である「リンス処理実行開始指令」を受けた場合にスタートする。このリンス処理実行開始指令を受けた場合、制御モジュール800は、基板ホルダ20がめっき槽10よりも上方に位置するように昇降機構32を制御し、基板ホルダ20が水平方向に対して傾斜するように傾斜機構34を制御し、基板ホルダ20が回転するように回転機構30を制御する。これにより、基板ホルダ20がめっき槽10よりも上方に位置し、水平方向に対して傾斜し、且つ、回転した状態で、後述するステップS10やステップS20が実行される。
【0071】
また、制御モジュール800は、リンス処理実行開始指令を受けた場合に、排気機構80の排気ポンプ82の運転を開始させる。これにより、リンス処理の実行時(具体的には、後述するステップS10やステップS20の実行時)に、筐体70の内部を陰圧にすることができる。この結果、化学物質を含むミストやパーティクル等が筐体70の内部から外部に漏出して、めっき装置1000の他の構成要素(例えば搬送装置700等)に付着すること抑制することができる。
【0072】
制御モジュール800は、ステップS10に係る第1工程において、被リンス部材25に向けたリンスノズル41からのリンス液RLの吐出を開始させる。具体的には、制御モジュール800は、前述したポンプ(リンス液RLをリンスノズル41に圧送するためのポンプ)を作動させることで、リンスノズル41からのリンス液RLの吐出を開始させる。
【0073】
制御モジュール800は、このステップS10に係るリンス液RLの吐出が実行されている最中に、ステップS20に係る第2工程を実行する。この第2工程において、制御モジュール800は、ブローノズル42からの気体Gaの吹き出しを開始させる。具体的には、制御モジュール800は、前述したポンプ(気体Gaをブローノズル42に圧送するためのポンプ)を作動させることで、ブローノズル42からの気体Gaの吹き出しを開始させる。
【0074】
この第2工程において、被リンス部材25から落下して気体Gaの流れに乗ったリンス液RLは、回収部材50によって回収される。以上の工程によって、リンス処理は実行されている。
【0075】
以上説明したような本実施形態によれば、リンス処理の実行時にリンスノズル41から被リンス部材25に向けてリンス液RLを吐出することで、被リンス部材25をリンスすることができる。また、この被リンス部材25から落下したリンス液RLを、ブローノズル42から吹き出された気体Gaの流れに乗せて、回収部材50で回収することができる。これにより、リンス液RLがめっき槽10のめっき液Psに多量に入ることを抑制することができる。この結果、リンス液RLによってめっき槽10のめっき液Psが薄まり過ぎることを抑制することができる。
【0076】
なお、本実施形態において、リンス処理の実行時に基板ホルダ20は傾斜しているが、この構成に限定されるものではない。リンス処理の実行時において、基板ホルダ20は、傾斜せずに水平の状態になっていてもよい。すなわち、この場合、基板ホルダ20に保持された基板Wfの下面が水平の状態で、リンス処理が実行される。
【0077】
また、ステップS10でリンスノズル41がリンス液RLを吐出することを開始する時期は、ステップS20でブローノズル42が気体Gaを吹き出すことを開始する時期よりも、早くてもよい。
【0078】
この構成によれば、ブローノズル42から気体Gaが吹き出される前にリンスノズル41から吐出されて被リンス部材25に付着した後に被リンス部材25から落下したリンス液RL(すなわち、吐出開始初期のリンス液RL)を、めっき槽10に戻すことができる。これにより、被リンス部材25に付着しているめっき液Psを、リンス液RLとともにめっき槽10に戻すことができる。この結果、「めっき槽10に戻されずに廃棄されるめっき液Psの量」の低減を図ることができる。一方、ブローノズル42から気体Gaが吹き出された後においては、被リンス部材25から落下したリンス液RLを回収部材50によって回収することができるので、リンス液RLがめっき槽10のめっき液Psに多量に入ることを抑制することができる。
【0079】
なお、この場合において、リンス液RLの吐出開始時期を気体Gaの吹き出し開始時期に比較して、どの程度まで早くするかは、めっき槽10から蒸発する水の量に基づいて決定することが好ましい。この具体例を挙げると、以下のとおりである。
【0080】
例えば、めっき槽10から蒸発する水の量が1時間当たりN(L)である場合(すなわち、N(L/hr)の場合)、リンスノズル41から吐出された後にめっき槽10に入り込むリンス液RLの量がN(L/hr)以下であると、めっき槽10のめっき液Psにリンス液RLが多量に入り込むことを抑制することができる(なお、Nはゼロよりも大きな値である)。そこで、リンスノズル41から吐出された後にめっき槽10に入り込むリンス液RLの量がN(L/hr)以下になる範囲で、リンス液RLの吐出開始時期が気体Gaの吹き出し開始時期よりも早くなるように、リンス液RLの吐出開始時期を設定すればよい。このような、好適なリンス液RLの吐出開始時期は、例えば、実験やシミュレーション等を行って適宜決定すればよい。
【0081】
また、上述したように、リンス液RLの吐出開始時期を設定するにあたり、めっき槽10から蒸発する水の量の他に、めっき処理の1時間当たりの実行回数(回数/hr)をさらに考慮することが好ましい。この具体例を挙げると、例えば、1つのめっき槽10を用いて、1時間当たりに2回めっき処理を実行すると仮定する(すなわち、この場合、1つのめっき槽10を用いて、1時間当たりに2枚の基板Wfにめっき処理が実行される)。この場合、2回のめっき処理の実行によってめっき槽10に入り込むリンス液RLの合計量がN(L/hr)以下になる範囲で、リンス液RLの吐出開始時期が気体Gaの吹き出し開始時期よりも早くなるように、リンス液RLの吐出開始時期を設定すればよい。
【0082】
また、排気機構80は、ブローノズル42が気体Gaを吹き出している期間における排気流量(すなわち、排出される空気の流量(mm3/sec))を、ブローノズル42が気体Gaを吹き出すことを開始する前の時点における排気流量(mm3/sec)よりも高くしてもよい。具体的には、この場合、制御モジュール800は、ブローノズル42が気体Gaを吹き出している期間における、排気機構80の排気ポンプ82の回転数(rpm)を、ブローノズル42が気体Gaを吹き出すことを開始する前の時点における排気ポンプ82の回転数(rpm)よりも増大させればよい。
【0083】
この構成によれば、ブローノズル42が気体Gaを吹き出している期間、筐体70の内部を効果的に陰圧にすることができるので、化学物質を含むミストやパーティクル等が筐体70の内部から外部に漏出することを効果的に抑制することができる。
【0084】
また、ブローノズル42から吹き出される気体Gaに含まれる水蒸気の量(g/m3)は、筐体70の内部の空気に含まれる水蒸気の量(g/m3)以上であってもよい。具体的には、この場合、例えばブローノズル42に気体Gaを供給するための気体供給装置に加湿器を付加し、この加湿器を経由した気体Gaをブローノズル42から吹き出すようにすることで、ブローノズル42から吹き出される気体Gaに含まれる水蒸気の量を筐体70の内部の空気に含まれる水蒸気の量よりも多くすることができる。
【0085】
この構成によれば、例えばブローノズル42から吹き出される気体Gaに含まれる水蒸気の量が筐体70の内部の空気に含まれる水蒸気の量よりも少ない場合に比較して、被リンス部材25を乾燥し難くすることができる。
【0086】
続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明において、上述した実施形態と同一又は対応する構成については、同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
【0087】
(変形例1)
図7は、実施形態の変形例1に係るリンスモジュール40Aの模式的な上面図である。なお、
図7において、リンスノズル41の図示は省略されている。本変形例に係るリンスモジュール40Aは、上面視で、ブローノズル42が、基板ホルダ20の中央C1(昇降領域EAの中央C1)よりも、傾斜した状態の基板ホルダ20の最下点P3に近い側に配置されている。すなわち、本変形例に係るブローノズル42は、傾斜した状態の基板ホルダ20の最下点P3の近傍箇所に配置されている。この点において、本変形例に係るリンスモジュール40Aは、前述した
図5に示すリンスモジュール40と異なっている。
【0088】
本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
(変形例2)
図8は、実施形態の変形例2に係るリンスモジュール40Bを説明するための模式図である。具体的には、
図8は、本変形例に係るリンスモジュール40Bがリンス処理を実行している状態を模式的に示している。本変形例に係るリンスモジュール40Bは、移動機構60をさらに備えている点と、リンスノズル41に代えてリンスノズル41Bを備えている点と、ブローノズル42に代えてブローノズル42Bを備えている点と、回収部材50に代えて回収部材50Bを備えている点と、において、前述した
図4に示すリンスモジュール40と異なっている。
【0090】
図9は、本変形例に係るリンスモジュール40Bの模式的な上面図である。
図8及び
図9を参照して、移動機構60は、リンスノズル41B及びブローノズル42Bを、昇降領域EAの外側の「第1位置P1」と、昇降領域EAの内側の「第2位置P2」との間で移動させるように構成されている。
【0091】
具体的には、移動機構60は、アーム61とアーム62と回転軸63とを備えている。アーム61の一端はリンスノズル41Bに接続され、他端は回転軸63に接続されている。アーム62の一端はブローノズル42Bに接続され、他端は回転軸63におけるアーム61が接続されている箇所よりも下方の箇所に接続されている。
【0092】
回転軸63は、アーム61及びアーム62の回転軸であり、昇降領域EAの外側に配置されている。また、回転軸63は上下方向(鉛直方向)に延在している。回転軸63は、回転モータ等のアクチュエータ(図示せず)に接続されており、このアクチュエータによって回転駆動される。このアクチュエータの動作は制御モジュール800によって制御されている。
【0093】
本変形例に係るリンスモジュール40Bは、制御モジュール800によって制御されることで、リンスノズル41B及びブローノズル42Bが第2位置P2に位置した状態でリンス処理を実行する。具体的には、本変形例に係る制御モジュール800は、前述したリンス処理実行開始指令を受けた場合に、回転軸63を回転させて、リンスノズル41B及びブローノズル42Bを第2位置P2に位置させる。このように、リンスノズル41B及びブローノズル42Bが第2位置P2に位置した状態で、リンスノズル41Bからのリンス液RLの吐出、及び、ブローノズル42Bからの気体Gaの吹き出しが開始される。
【0094】
一方、リンスモジュール40Bは、リンス処理の実行前又はリンス処理の実行後においては、リンスノズル41B及びブローノズル42Bを第1位置P1に移動させる。具体的には、制御モジュール800は、リンス処理実行開始指令を受ける前(リンス処理の実行前)又はリンス処理の実行終了指令を受けた場合(リンス処理の実行後)に、回転軸63を回転させて、リンスノズル41B及びブローノズル42Bを第1位置P1に戻す。すなわち、この第1位置P1は、退避位置ということもできる。
【0095】
このように、リンス処理の実行前又はリンス処理の実行後にリンスノズル41B及びブローノズル42Bが第1位置P1に移動することで、リンス処理を実行しない場合に、リンスノズル41B及びブローノズル42Bが基板ホルダ20の昇降領域EAに入り込むことを抑制することができる。
【0096】
図8に示すように、リンスノズル41Bは、第2位置P2に位置した場合に、被リンス部材25の下方に位置している。この一例として、本変形例に係るリンスノズル41Bは、第2位置P2において、基板ホルダ20の中央C1の下方に位置している。そして、リンスノズル41Bは、第2位置P2において、リンスノズル41Bの上方にある被リンス部材25に向けてリンス液RLを吐出する。
【0097】
本変形例に係るブローノズル42Bも、第2位置P2に位置した場合に、被リンス部材25の下方に位置している。この一例として、本変形例に係るブローノズル42Bは、第2位置P2において、基板ホルダ20の中央C1の下方に位置している。
【0098】
また、
図8及び
図9に示すように、ブローノズル42Bは、上面視で、ブローノズル42Bを起点として気体Gaを放射状に吹き出している。具体的には、本変形例に係るブローノズル42Bは、
図8のA3部分の拡大図に示すように、円柱状の外観形状を有している。そして、ブローノズル42Bの複数の吹き出し口44は、この円柱状のブローノズル42Bの外周面42aに、周方向に配列している。この構成により、ブローノズル42Bの複数の吹き出し口44は気体Gaを放射状に吹き出している。
【0099】
図9に示すように、本変形例に係る回収部材50Bは、上面視で、昇降領域EAの外周を全体的に覆うように設けられている。具体的には、回収部材50Bの収容部材52Bの内側側壁55Bは、上面視で昇降領域EAの外周を全体的に覆っている。また、回収部材50Bの樋部材51Bは、上面視で、内側側壁55Bよりも基板ホルダ20の径方向で外側に配置されて、内側側壁55Bの外周を全体的に覆っている。
【0100】
なお、本変形例に係る樋部材51Bの一部には、アーム61が貫通する溝孔(溝状の孔)、及び、アーム62が貫通する溝孔が設けられている。これにより、リンスノズル41B及びブローノズル42Bが第1位置P1と第2位置P2との間を移動する際に、アーム61及びアーム62が樋部材51Bに当たることが抑制されている。
【0101】
但し、上記の構成に限定されるものではない。例えば、アーム62は、回収部材50Bよりも下方(具体的には、回収部材50Bの底壁53よりも下方)を通過するように配置されていてもよい。この場合、樋部材51Bは、上述したアーム62用の溝孔を備えていなくてもよい。
【0102】
これと同様に、アーム61も、回収部材50Bよりも下方(具体的には、底壁53よりも下方)を通過するように配置されていてもよい。この場合、樋部材51Bは、上述したアーム61用の溝孔を備えていなくてもよい。
【0103】
また、
図9を参照して、本変形例に係る回収部材50Bの収容部材52Bは、樋部材51Bに衝突した後に落下したリンス液RLを収容することができるように配置されているのみならず、第1位置P1に位置したリンスノズル41Bの下方に収容部材52Bの底壁53が位置するように配置されている。これにより、仮に、リンスノズル41Bが第1位置P1に位置した状態でリンスノズル41Bからリンス液RLが滴下した場合であっても、この滴下したリンス液RLを収容部材52Bによって収容することができる。
【0104】
本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。具体的には、リンス処理の実行時にリンスモジュール40Bのリンスノズル41B及びブローノズル42Bが第2位置P2に位置した状態でリンスノズル41Bから被リンス部材25に向けてリンス液RLを吐出することで、被リンス部材25をリンスすることができる。また、この被リンス部材25から落下したリンス液RLを、ブローノズル42Bから吹き出された気体Gaの流れに乗せて、回収部材50Bで回収することができる。これにより、リンス液RLがめっき槽10のめっき液Psに多量に入ることを抑制することができる。
【0105】
なお、
図8に例示するリンス処理の実行時において、基板ホルダ20は傾斜していないが、この構成に限定されるものではない。本変形例においても、リンス処理の実行時に、基板ホルダ20は水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0106】
また、本変形例において、リンスノズル41B及びブローノズル42Bの両方とも、第1位置P1と第2位置P2との間で移動しているが、この構成に限定されるものではない。他の例を挙げると、ブローノズル42Bは第1位置P1と第2位置P2との間で移動する一方で、リンスノズル41Bは移動せずに、前述した実施形態に係るリンスノズル41(
図4)のように、昇降領域EAの外側に固定されていてもよい。
【0107】
あるいは、リンスノズル41Bは第1位置P1と第2位置P2との間で移動する一方で、ブローノズル42Bは移動せずに、前述した実施形態に係るブローノズル42(
図4)のように、昇降領域EAの外側に固定されていてもよい。
【0108】
(変形例3)
図10は、実施形態の変形例3に係るリンスモジュール40Cの模式的な上面図である。本変形例に係るリンスモジュール40Cは、ブローノズル42が移動機構60によって第1位置P1と第2位置P2との間で移動する点において、前述した
図5に例示するリンスモジュール40と異なっている。
【0109】
すなわち、本変形例において、リンスノズル41は、前述した
図4に例示するように、支持部材43によって昇降領域EAの外側に固定されている一方で、ブローノズル42は、
図10に例示するように、第1位置P1と第2位置P2との間で移動する。
【0110】
本変形例においても、前述した実施形態や変形例2と同様の作用効果を奏することができる。
【0111】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 めっき槽
11 アノード
20 基板ホルダ
30 回転機構
32 昇降機構
34 傾斜機構
40 リンスモジュール
41 リンスノズル
42 ブローノズル
50 回収部材
70 筐体
80 排気機構
400 めっきモジュール
1000 めっき装置
Wf 基板
Ps めっき液
RL リンス液
Ga 気体
EA 昇降領域
P1 第1位置
P2 第2位置
【要約】
リンス液がめっき槽のめっき液に多量に入ることを抑制することができる技術を提供する。
めっき装置1000は、リンス処理を実行可能なリンスモジュール40を備え、リンスモジュールは、リンス処理の実行時に、被リンス部材25に向けてリンス液を吐出するリンスノズル41と、リンスノズルよりも下方に配置され、リンス処理の実行時に、めっき槽と基板ホルダ20との間の空間を横切るように気体を吹き出すブローノズル42と、ブローノズルから吹き出された気体の下流側に配置され、被リンス部材から落下してブローノズルから吹き出された気体の流れに乗ったリンス液を回収する回収部材50と、を備える。