(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】液体金属二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/39 20060101AFI20220225BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220225BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220225BHJP
H01M 10/38 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H01M10/39 Z
H01M10/39 D
H01M4/40
H01M4/38 Z
H01M10/38
(21)【出願番号】P 2018038690
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598017217
【氏名又は名称】野村興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 幹人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悌
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌己
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501531(JP,A)
【文献】特表2016-516274(JP,A)
【文献】特表2015-530722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099522(US,A1)
【文献】Haomiao Li et al.,Liquid Metal Electrodes for Energy Storage Batteries,Advanced Energy Materials,Volume 16, Issue 14, 1600483,doi:10.1002/aenm.201600483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ナトリウムおよび/または溶融カリウムを含む溶融アルカリ金属電極と、
水銀またはその合金を含む溶融水銀電極と、
前記溶融アルカリ金属電極および前記溶融水銀電極の間に配置された電解液と、
を含
み、
前記電解液が、前記溶融アルカリ金属電極に接するように配置された、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを含む第1電解液、ならびに前記溶融水銀電極に接するように配置された、水銀イオンを含む第2電解液を含み、
前記第1電解液および前記第2電解液の間にセパレータが配置されている、
液体金属二次電池。
【請求項2】
前記第1電解液が、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよびビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンのうち、少なくとも一方のナトリウム塩および/またはカリウム塩と、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾール塩、およびN-メチル-N-プロピルピロリジウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の非金属塩と、を含む、
請求項
1に記載の液体金属二次電池。
【請求項3】
前記第2電解液が、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾール塩、およびN-メチル-N-プロピルピロリジウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の非金属塩と、
水銀化合物と、を含む、
請求項
1または
2に記載の液体金属二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融アルカリ金属電極および溶融水銀電極を含む液体金属二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム金属を用いた二次電池は、容量が大きく、高性能化が期待されている。しかしながら、リチウム金属の析出状態が課題となっている。リチウム金属を用いた二次電池では、リチウムイオンの還元反応により電極上にリチウム金属が析出する。このとき、リチウム金属は樹枝状(デンドライト状)に成長する。そして、当該リチウム金属が、対向する電極に向かって成長し、各電極間に配置されたセパレータを突き破ることで、ショート等が生じる。したがって、リチウム金属の二次電池は、いまだ実用化されていない。
【0003】
このような課題に対し、リチウムイオンの樹枝状成長を抑制するための添加剤を電解液に加えたり、純リチウムの代わりにリチウム合金を用いたりすることが検討されている。しかしながら、充放電を繰り返すと、上記抑制効果が低下しやすく、樹枝状のリチウム金属が形成されやすかった。
【0004】
一方で近年、金属が液体となる温度域で、電池を構成することが提案されている(例えば、非特許文献1)。液体の金属を電極とすると、金属析出時に樹枝状成長が生じず、さらには高速充放電が可能になるという利点がある。そしてこれまでに、研究レベルではあるが、Mg-Sb系電池(電池電圧約0.95V、温度700℃)や、Li-Bi系電池(電池電圧約1V、温度550℃)等が実現されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】David J. Bradwell他3名、「Magnesium-Antimony Liquid Metal Battery for Stationary Energy Storage」、Journal of the American Chemical Society、2012年1月6日、No.134、p.1895-1897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の液体金属を電極とする二次電池は、使用温度が高温であり、さらに実用化に十分な電池電圧が得られていない。そこで、より低い温度で使用可能であり、かつ電池電圧の大きな液体金属二次電池の提供が求められている。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、充放電時に樹枝状の金属析出がなく、使用温度が比較的低く、かつ電池電圧が大きい液体金属二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の液体金属二次電池を提供する。
[1]溶融ナトリウムおよび/または溶融カリウムを含む溶融アルカリ金属電極と、水銀またはその合金を含む溶融水銀電極と、前記溶融アルカリ金属電極および前記溶融水銀電極の間に配置された電解液と、を含む、液体金属二次電池。
【0009】
[2]前記電解液が、前記溶融アルカリ金属電極に接するように配置された、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを含む第1電解液と、前記溶融水銀電極に接するように配置された、水銀イオンを含む第2電解液と、を含み、前記第1電解液および前記第2電解液の間にセパレータが配置されている、[1]に記載の液体金属二次電池。
【0010】
[3]前記第1電解液が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよびビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンのうち、少なくとも一方のナトリウム塩および/またはカリウム塩と、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾール塩、およびN-メチル-N-プロピルピロリジウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の非金属塩と、を含む、[2]に記載の液体金属二次電池。
【0011】
[4]前記第2電解液が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾール塩、およびN-メチル-N-プロピルピロリジウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の非金属塩と、水銀化合物と、を含む、[2]または[3]に記載の液体金属二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充放電時に樹枝状の金属析出が生じず、使用温度が比較的低く、さらには電池電圧が大きい液体金属二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例で作製した液体金属二次電池の電池電圧を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液体金属二次電池の構成を示す模式図である。
【
図3】実施例で作製した液体金属二次電池のサイクリックボルタモグラム測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述のように、従来のMg-Sb系電池や、Li-Bi系電池等、液体金属を電極に用いた二次電池は、その使用温度域が高温であり、電池電圧を十分に高めることが難しかった。
【0015】
これに対し、本発明の液体金属二次電池は、ナトリウムおよび/またはカリウムを含む溶融アルカリ金属電極と、溶融水銀電極と、を使用する。ここで、ナトリウムは融点が約98℃であり、カリウムは、63.5℃である。一方の水銀やその合金は、常温で液体である。したがって、本発明の液体金属二次電池では、その使用温度域を比較的低い温度(例えば120℃程度)とすることができる。また、本発明者らの鋭意検討によれば、溶融アルカリ金属電極と溶融水銀電極とを組み合わせることで、高い電池電圧が得られることも見出された。例えば、実施例の液体金属二次電池の電池電圧をポテンショスタットの開回路電圧測定で調べたところ、
図1に示すように、2.9Vと非常に高い値を示した。
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について、
図2を参照して詳細に説明する。ただし、本発明の液体金属二次電池は、当該構成に限定されない。
【0017】
本実施形態の液体金属二次電池(以下単に「二次電池」とも称する)100では、絶縁性の第1容器20の底部に溶融水銀電極12が充填されており、当該溶融水銀電極12上に第2電解液13bが充填されている。一方、セパレータ22’を一端に備える円筒状かつ絶縁性の第2容器22内に、第1電解液13aおよび溶融アルカリ金属電極11が充填されている。そして、セパレータ22’を介して第1電解液13aおよび第2電解液13bが隣接するように、第2容器22が第1容器20内に固定されている。また、溶融アルカリ金属電極11および溶融水銀電極12は、それぞれ集電体24、25と接続されている。さらに、第1容器20の周囲には、ヒータ30が配置されており、第1容器20内の温度を測定するための熱電対23も第1容器20内に配置されている。なお、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上記二次電池100は、上記以外の部材をさらに有していてもよい。
【0018】
ここで、上記溶融アルカリ金属電極11は、二次電池100において正極となり、ナトリウムおよび/またはカリウムが溶融した状態で使用される。本実施形態の二次電池100では、放電時に溶融アルカリ金属電極11中のナトリウムもしくはカリウムが酸化されてナトリウムイオンもしくはカリウムイオンとなり、第1電解液13aに溶出する。一方、充電時には第1電解液13a中のナトリウムイオンもしくはカリウムイオンが還元されて溶融アルカリ金属電極11側に電析する。
【0019】
溶融アルカリ金属電極11は、本発明の目的および効果を損なわない限り、ナトリウムおよびカリウム以外の成分を含んでいてもよい。また、ナトリウムとカリウムとの合金等であってもよいが、ナトリウム単体、もしくはカリウム単体から構成されることが、その反応性や溶融性等の観点で好ましい。溶融アルカリ金属電極11がナトリウムを含む場合、溶融アルカリ金属電極11中のナトリウムの濃度は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。溶融アルカリ金属電極11中のナトリウムの濃度が80質量%以上であると、充放電時に、ナトリウムの酸化還元反応が生じやすくなる。一方、溶融アルカリ金属電極11がカリウムを含む場合の溶融アルカリ金属11中のカリウムの濃度も、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。
【0020】
一方、溶融水銀電極12は、二次電池100において負極となり、水銀が溶融した状態で使用される。本実施の形態の二次電池100では、充電時には溶融水銀電極12中の水銀が酸化されて水銀イオンとなり、第2電解液13bに溶出する。一方、放電時には第2電解液13b中の水銀イオンが還元されて溶融水銀電極12側に電析する。
【0021】
溶融水銀電極12は、水銀を少なくとも含んでいればよく、水銀単体から構成されてもよく、水銀の合金(以下、「アマルガム」とも称する)を含んでいてもよい。溶融水銀電極12がアマルガムからなる場合、水銀と共に含まれる金属の例には、スズ、インジウム、銅、パラジウム、銀、金、白金およびこれらの組み合わせ等が含まれる。ただし、溶融水銀電極12中の水銀の濃度は、90質量%であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。水銀の濃度が90質量%以上であると、充放電時に水銀の酸化還元反応が生じやすくなる。
【0022】
第1電解液13aは、溶融アルカリ金属電極が含む金属のイオン(ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオン)を含み、二次電池100の使用温度で蒸発、分解等し難い溶液であれば特に制限されない。第1電解液13aの例には、1)ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(以下、「TFSI」とも称する)アニオンおよび/またはビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、「FSI」とも称する)アニオンと、ナトリウムイオンからなるナトリウム塩、またはカリウムイオンとからなるカリウム塩(以下、これらをまとめてアルカリ金属塩とも称する)、ならびに2)TFSIアニオンまたはFSIアニオンと特定の非金属カチオンとからなる非金属塩、を含む液体が含まれる。なお、溶融アルカリ金属電極11が溶融ナトリウムからなる電極(溶融ナトリウム電極)である場合には、上記アルカリ金属塩としてナトリウム塩を用いる。一方、溶融アルカリ金属電極11が溶融カリウムからなる電極(溶融カリウム電極)である場合には、上記アルカリ金属塩としてカリウム塩を用いる。
【0023】
また、TFSIおよびFSIのアニオンは、IUPACの命名法に基づけばイミドではなくアミドが正しいとされているが、本明細書では慣用名として広く使用されている「TFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)」および「FSI(ビス(フルオロスルホニル)イミド)」の名称を使用する。
【0024】
上記アルカリ金属塩中のナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンは、二次電池100の充電時に還元されて、金属ナトリウムもしくは金属カリウムとして電析しやすい。また、上記アルカリ金属塩は、蒸気圧が低く、不燃性である。したがって、当該アルカリ金属塩を第1電解液13aに用いると、第1電解液13aの取扱性や安全性が良好になる。第1電解液13aは、TFSIアニオンのアルカリ金属塩およびFSIアニオンのアルカリ金属塩のうち、いずれか一種のみを含んでいてもよく、二種以上を含んでいてもよい。
【0025】
ただし、上記アルカリ金属塩は比較的融点が高い。そのため、第1電解液13aにアルカリ金属塩のみを用いると、二次電池使用時の温度を高める必要がある。しかしながら、二次電池使用時の温度を過度に高めると、TFSIアニオンやFSIアニオンが熱分解し、これらが溶融アルカリ金属電極11と反応することがある。そこで、第1電解液13aには、TFSIアニオンまたはFSIアニオンと特定の非金属カチオンとからなる非金属塩がさらに含まれることが好ましい。これにより、第1電解液13aの融点を低くすることができ、ひいては、アルカリ金属塩中のTFSIアニオンやFSIアニオンの熱分解物と溶融アルカリ金属電極11との反応を防止することができる。
【0026】
上記非金属塩の具体例には、TFSIアニオンおよび/またはFSIアニオンの、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾール塩、およびN-メチル-N-プロピルピロリジウム塩が含まれる。第1電解液13aには、これらの非金属塩が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。上記非金属塩であれば、溶融アルカリ金属電極11と反応せず、さらには上記アルカリ金属塩と均一に混合することが可能である。上記の非金属塩の中でも、特に好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンのテトラエチルアンモニウム塩である。
【0027】
第1電解液13aが含むアルカリ金属塩と非金属塩とのモル比は、第1電解液13aの融点が適度な範囲となり、アルカリ金属塩と非金属塩とが分離することなく混合可能な範囲であれば特に限定されない。具体的には、上記アルカリ金属塩と非金属塩とのモル比が1:9~3:7であることが好ましく、1:3~1:5であることが特に好ましい。
【0028】
アルカリ金属塩と非金属塩とのモル比を上記範囲内とすると、第1電解液13aの融点を70~150℃程度とすることができる。なお、アルカリ金属塩に対する非金属塩の比が少な過ぎる場合、第1電解液13aの融点を十分に低下させることが困難となる。一方、アルカリ金属塩に対する非金属塩の比が多過ぎる場合、アルカリ金属塩と非金属塩とが分離することがある。またさらに、アルカリ金属塩の量が過度に少ないと、上述のナトリウムの酸化還元反応が生じ難くなり、十分な充放電量が得られなくなることがある。
【0029】
一方、第2電解液13bは、水銀イオンを含み、かつ二次電池100の使用温度で蒸発、分解等し難い溶液であれば特に制限されない。第2電解液13bの例には、1)TFSIアニオンおよび/またはFSIアニオンと、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンと、からなるアルカリ金属塩、2)TFSIアニオンおよび/またはFSIアニオンと特定の非金属カチオンとからなる非金属塩、ならびに3)水銀化合物、を含む液体等が含まれる。
【0030】
ここで、第2電解液13bが含む1)アルカリ金属塩および2)非金属塩については、第1電解液13aが含む1)アルカリ金属塩および2)非金属塩と同様とすることができる。またこれらの混合比も、第1電解液13aと同様とすることができる。ただし、1)アルカリ金属塩は、必ずしも含まれていなくてもよい。
【0031】
一方、第2電解液13bが含む3)水銀化合物は、上記1)アルカリ金属塩および2)非金属塩に溶解し、水銀イオンを形成可能な化合物であればよい。3)水銀化合物の例には、塩化水銀(Hg2Cl2)、Hg2(TFSA)2、Hg2(FSA)2等が含まれる。第2電解液13b中での水銀濃度は反応効率の観点から高いことが好ましく、第2電解液13b中の3)水銀化合物の量は、飽和量とすることが好ましい。
【0032】
また、第1電解液13aおよび第2電解液13bの間に配置されるセパレータ22’は、十分な耐熱性を有し、第2の電解液13b側から第1の電解液13a側への水銀イオンの移動抑制が可能な膜であれば特に制限されない。セパレータ22’を水銀イオンが透過すると、溶融アルカリ金属電極11表面で水銀が析出しやすくなり、二次電池100の性能が低下しやすくなる。
【0033】
セパレータ22’は、従来公知の二次電池に用いられるセパレータと同様とすることができ、無機化合物または有機樹脂からなる多孔性のシートとすることができる。セパレータの材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラス等が含まれる。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。上記の中でも、化学的安定性や耐熱性等の観点から、セパレータ22’は、ガラスからなることが特に好ましい。
【0034】
また、セパレータ22’の平均孔径は任意であるが、例えば10~50μm程度とすることができる。平均孔径を上記範囲とすることで、水銀イオンの透過を抑制しつつ、電荷の受け渡し等を行うことが可能となる。
【0035】
また、上述のヒータ30は、第1容器20内(溶融アルカリ金属電極11、溶融水銀電極12、第1電解液13a、および第2電解液13b)等を均一に加熱可能であれば特に制限されず、公知のものを使用することが可能である。また、熱電対23は、第1容器20内の温度(例えば第2電解液13bの温度等)を測定可能なものであれば特に制限されず、公知の熱電対とすることができる。
【0036】
上述の二次電池100は、通常100~140℃の範囲で使用することが可能であり、使用時の温度は110~130℃であることがより好ましく、120~130℃であることがさらに好ましい。当該温度範囲であれば、効率よく充放電を行うことができ、さらには充放電時に樹枝状の金属析出等を生じさせることがない。
【0037】
[その他の態様]
上記では、電解液が、第1電解液および第2電解液の2液からなる場合を説明したが、ナトリウムイオンやカリウムイオンと、水銀イオンとを含む溶液であれば、電解液は1液であってもよい。ただし、溶融水銀電極12側から溶融アルカリ金属電極11側に水銀イオンが移動しないように二次電池を構成することが、二次電池を充放電する観点から好ましい。
【0038】
また、上記では、第1容器や第2容器内に、溶融水銀電極や溶融アルカリ金属電極、電解液等を充填する態様を説明したが、溶融アルカリ金属電極や溶融水銀電極を充填する容器の形状は特に制限されず、二次電池の用途に合わせて適宜選択することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されない。
【0040】
(実施例)
図2に示す構造の二次電池100を作製した。具体的には、TFSIのナトリウム塩(三菱マテリアル社製(以下、「NaTFSI」とも称する))と、TFSIのテトラエチルアンモニウム塩((以下、「テトラエチルアンモニウムTFSI」とも称する)99.0%;Iolitech社製)と、塩化水銀(HgCl
2)と、をガラスビーカ(第1容器)20内に入れて加熱し、NaTFSI、テトラエチルアンモニウムTFSI、および塩化水銀を含む第2電解液13bを得た。NaTFSIとテトラエチルアンモニウムTFSIとのモル比は、20:80とした。また、塩化水銀の量は、飽和量とした。また、第2電解液13bの総量は、50gとした。
【0041】
そして、第2電解液13bよりガラスビーカ20の底面側に、水銀を注入し、溶融水銀電極12とした。なお、水銀の注入は、一端がガラスビーカ20の底部側、他端がガラスビーカ20の天面側となるように、ガラスビーカ20内に挿入された円筒状の部材21を介して行った。水銀の量は、100gとした。
【0042】
また、ガラスビーカ20の外部には、ヒータ30を配置し、ガラスビーカ20内の温度を120℃とした。ガラスビーカ20内の温度は、ガラスビーカ内20配置された熱電対23により測定した。
【0043】
一方、NaTFSI(三菱マテリアル社製)とテトラエチルアンモニウムTFSI(99.0%;Iolitech社製)とを、上記とは異なるガラスビーカ(図示せず)内で加熱混合し、第1電解液13aを準備した。当該第1電解液13aを、セパレータ22’付きガラス容器(第2容器)22(柴田ガラス社製ろ過器、15AGP40、セパレータ22’のポアサイズ:16~40μm)内に15g充填した。そして、当該第1電解液13a上に、さらに溶融ナトリウムを5g充填し、溶融アルカリ金属電極(溶融ナトリウム電極)11とした。
【0044】
そして、溶融アルカリ金属電極(溶融ナトリウム電極)11および溶融水銀電極12に、集電体24、25をそれぞれ接触させて、120℃でサイクリックボルタモグラムを測定(以下、「CV測定」とも称する)した。CV測定は、ポテンショスタットを用いて、スキャン速度10mV/s、およびスキャン電圧2.9~1.5Vv.s.Hgとした。結果を
図3に示す。
【0045】
図3から明らかなように、120℃において、充放電反応が十分に行われており、二次電池として有用であることが明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の液体金属二次電池は、使用温度が比較的低く、さらには電池電圧が大きい。したがって、各種用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100 液体金属二次電池
11 溶融アルカリ金属電極
12 溶融水銀電極
13a 第1電解液
13b 第2電解液
20 第1容器
21 円筒状の部材
22 第2容器
22’ セパレータ
23 熱電対
24、25 集電体
30 ヒータ