(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】通信システム、加入者線終端装置及び加入者線端局装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20220225BHJP
H04L 47/52 20220101ALI20220225BHJP
H04L 47/83 20220101ALI20220225BHJP
【FI】
H04L12/44 D
H04L47/52
H04L47/83
H04L12/44 200
(21)【出願番号】P 2020170777
(22)【出願日】2020-10-08
(62)【分割の表示】P 2017163598の分割
【原出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 學
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-539610(JP,A)
【文献】特開2003-209572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0028638(US,A1)
【文献】特表2009-527957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加入者線終端装置と加入者線端局装置とを備える通信システムにおいて、
前記加入者線終端装置は、
前記加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、
前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、
を備え、
前記加入者線端局装置は、
前記加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて前記上りデータの送信許可を行う送信許可部と、
を備え、
前記加入者線終端装置と前記加入者線端局装置とのうちの少なくとも一方は、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないよう
前記輻輳回避処理部で廃棄されるフレームの予測値に基づいて前記割当要求量を制御する申告調整部を備える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記申告調整部は、前記輻輳回避処理部によって廃棄されるデータ量を廃棄予測値として算出し、前記キューの上りデータ量又は前記割当要求量から前記廃棄予測値を減じて前記割当要求量を制御する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、
前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、
送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないよう
前記輻輳回避処理部で廃棄されるフレームの予測値に基づいて割当要求量を制御する申告調整部とを備える、
ことを特徴とする加入者線終端装置。
【請求項4】
加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて上りデータの送信許可を行う送信許可部と、
前記加入者線終端装置の送信時に送信許可した上りデータ量と前記上りデータのキューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないよう
、前記上りデータのキューから廃棄されるフレームの予測値に基づいて割当要求量を制御する申告調整部とを備える、
ことを特徴とする加入者線端局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、加入者線終端装置及び加入者線端局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受動光ネットワーク(PON: Passive Optical Network)では、加入者線端局装置(OLT:Optical Line Terminal)と加入者線終端装置(ONU:Optical Network Unit)とが、光分配網(ODN:Optical Distribution Network)を介してポイントツーポイント又はポイントツーマルチポイントで通信する。以下、ONUからOLTに向かう方向を「上り」という。以下、OLTからONUに向かう方向を「下り」という。
【0003】
時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)が用いられるPONでは、ODNを介してOLTに収容されるONUに下り信号が送信される。OLTは、宛先を示す識別子であるONU-ID、Alloc-ID又はLLID(Logical Link ID)等を下り信号を付与する。ONUは、宛先とされていない識別子が付与された下り信号を破棄してもよい。
【0004】
OLTは、時分割多重を用いて、複数のONUからの上り信号をそれぞれ異なる時間に受信する。OLTは、異なる時間に到着するべき上り信号が、同じ時間に重なって到着(衝突)した場合、上り信号を正しく復号できない。このため、時分割多重を用いるPONでは、動的帯域割当(DBA: Dynamic Bandwidth Assignment)の手順に従って、上り信号の送信が許可される。動的帯域割当には、OLTに対して帯域割当要求を示すDBRu(Dynamic Bandwidth Report upstream)等をONUが送信し、ONUに対して送信許可を示すGATE信号等をOLTが送信する方法がある。
【0005】
上り信号の輻輳を回避する方法として、バックプレッシャ等によるユーザ機器に対する送信抑止と、ONU又はONUの優先キューにおけるEPD(Early Packet Discard)及びPPD(partial packet detection)等のTail Dropping、ランダムに廃棄するRED(Random Early Discard)、WRED(Weighted RED)等のAQM(Active Queue Management)と、がある。Tail Droppingは、優先キュー等が所定の長さを超過する場合、優先キューに入力される前等に、後方のフレームが廃棄される輻輳回避方法である。AQMは、輻輳が発生する前に予めフレームの廃棄が行われる輻輳回避方法である。AQMは、Tail Droppingと比べて、トランスポート層伝送制御プロトコル(TCP:Transmission Control Protocol)等の輻輳中にトラフィックを減速させるトラフィック輻輳制御と親和性が高く、効果的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】岩田敏行、中西泰彦、前田洋一、PON型アーキテクチャアクセスにおけるトラヒック制御方式の提案、電子情報通信学会論文誌、Vol.J89-B、No.5、PP.705-719
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フレームを廃棄する輻輳回避方法では、帯域の割当要求後にフレームを廃棄してしまうことがあるため、ONUは割当された送信帯域を十分に活用できないという問題があった。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、割当された送信帯域をより効率よく活用することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、加入者線終端装置と加入者線端局装置とを備える通信システムにおいて、前記加入者線終端装置は、前記加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、を備え、前記加入者線端局装置は、前記加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて前記上りデータの送信許可を行う送信許可部と、を備え、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないように前記輻輳回避処理部を制御するキュー調整部又は、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないように前記割当要求量を制御する申告調整部又は、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないように送信許可を制御する許可調整部の少なくともいずれかをさらに備える、ことを特徴とする通信システムである。
【0010】
本発明の一態様は、上記の通信システムであって、前記キュー調整部を備える場合、前記キュー調整部は、申告する前記割当要求量を前記割当要求量に対応する上りデータ送信に用いるまでの間、前記輻輳回避処理部による前記上りデータの廃棄を抑止する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の通信システムであって、前記キュー調整部を備える場合、前記キュー調整部は、申告する前記割当要求量を前記割当要求量に対応する上りデータ送信に用いるまでの間、前記割当要求量を超過したデータ量を上限として前記上りデータを廃棄するよう制御する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の通信システムであって、前記申告調整部を備える場合、前記申告調整部は、廃棄された前記上りデータ量に基づいて、前記輻輳回避処理部によって廃棄されるデータ量を廃棄予測値として算出し、前記キューの上りデータ量又は前記割当要求量から前記廃棄予測値を減じて前記割当要求量を制御する。
【0013】
本発明の一態様は、上記の通信システムであって、前記許可調整部を備える場合、前記許可調整部は、前記割当要求量と前記加入者線終端装置から受信した上りデータ量との差分を差分予測値として算出し、前記割当要求量から前記差分予測値を減じた結果を用いて前記加入者線終端装置に割当する送信許可量を制御する。
【0014】
本発明の一態様は、上記の通信システムであって、前記キュー調整部を備える場合、前記キュー調整部は、前記キューから前記上りデータを廃棄する条件の判定に用いるパラメータを設定して、前記輻輳回避処理部を制御する。
【0015】
本発明の一態様は、加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、を備え、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないように前記輻輳回避処理部を制御するキュー調整部又は、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないように割当要求量を制御する申告調整部の少なくともいずれか、をさらに備える加入者線終端装置である。
【0016】
本発明の一態様は、加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて上りデータの送信許可を行う送信許可部を備え、前記加入者線終端装置の送信時に送信許可した上りデータ量とキューの上りデータ量との乖離が大きくならないように前記加入者線終端装置の輻輳回避処理部を制御するキュー調整部又は、前記加入者線終端装置の送信時に送信許可した上りデータ量と前記キューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないように割当要求量を制御する申告調整部又は、前記加入者線終端装置の送信時に送信許可した上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないように送信許可を制御する許可調整部の少なくともいずれかをさらに備える、ことを特徴とする加入者線端局装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、割当された送信帯域をより効率よく活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第1の機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第2の機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第3の機能ブロック図である。
【
図5】第1実施形態のフレームの廃棄を抑止する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態の要求済のキューに相当するフレームの廃棄を抑止する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の割当要求後に到着したフレームに基づいて廃棄を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態のOLT200に割当要求量を送信する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第1実施形態の廃棄予測値を算出した後にフレームを廃棄する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す第1の機能ブロック図である。
【
図11】第1実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す第2の機能ブロック図である。
【
図12】第1実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す第3の機能ブロック図である。
【
図13】第2実施形態のOLT200が送信許可量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
【
図15】第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定と要求済のキューの廃棄との流れを示すフローチャートである。
【
図16】第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定と到着したフレームに基づいて廃棄する処理との流れを示すフローチャートである。
【
図17】第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定とフレームの廃棄の抑止する処理との流れを示すフローチャートである。
【
図18】第5実施形態の廃棄予測値に基づく輻輳回避パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1は、通信システム1の全体構成図である。通信システム1は、複数のONU100、OLT200及びODN300を備える。各ONU100及びOLT200は、ODN300を介して互いに通信可能に接続される。各ONU100は、複数のユーザ装置400と通信可能に接続される。
【0020】
ONU100は、加入者線終端装置である。ONU100は、通信網を経由する信号によって他の通信装置との通信を実現する装置である。ONU100が接続される通信網は、例えばPON等の受動光通信網である。ONU100は、例えば通信サービスの提供を受けるユーザの宅内に設置される。ONU100は、FTTB(Fiber to the building)等の装置の一部でもよい。
【0021】
ONU100はユーザ装置400から受信した上りデータ(以下「フレーム」という。)を記憶させるキューを備える。ONU100は、輻輳時又は輻輳が予測される場合にAQMやTail Dropping等の輻輳回避処理部によって、キューのフレームを廃棄する。
【0022】
OLT200は、加入者線端局装置である。OLT200は、通信網を経由する信号によって他の通信装置(例えば、ONU)との通信を実現する装置である。OLT200が接続される通信網は、例えばPON等の受動光通信網である。OLT200は、例えば、通信網に接続された局舎に設置される。
【0023】
ODN300は、上り信号と下り信号とを伝送する。ODN300は、光スプリッタを備える場合、ONU100から送信された上り信号を合波してOLT200に送信する。ODN300は、光スプリッタを備える場合、OLT200から送信された下り信号を分岐してONU100に送信する。
【0024】
ユーザ装置400は、ユーザによって操作される機器である。ユーザ装置400は、例えば通信サービスの提供を受けるユーザの宅内に設置される。ユーザ装置400は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、無線LANルータ又はテレビ受像機等の通信可能な情報処理装置である。
【0025】
図2~
図4は、第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第1~第3の機能ブロック図である。ONU100は、第1通信部101、第2通信部102、フレーム記憶部103及び制御部105を備える。ONU100は、廃棄情報記憶部104を備えていてもよい。
【0026】
第1通信部101は、ネットワークインタフェースである。第1通信部101は、OLT200から受信した送信許可に応じて、フレームを上り信号としてOLT200に送信する。第1通信部101は、OLT200から送信された下り信号を下りデータとして受信する。
【0027】
第2通信部102は、ネットワークインタフェースである。第2通信部102は、OLT200から受信した下りデータをユーザ装置400に送信する。第2通信部102は、ユーザ装置400から送信されたフレームを受信する。
【0028】
フレーム記憶部103は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。フレーム記憶部103は、フレームのキューを保持する。フレーム記憶部103は、ユーザ装置400又はコネクションを識別できるように、フレームを保持させてもよい。
【0029】
廃棄情報記憶部104は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。廃棄情報記憶部104は、廃棄情報を記憶する。廃棄情報は、輻輳回避処理部107によって廃棄されたフレームに関する情報である。廃棄情報は、廃棄されたフレームのデータ量と、送信元となるユーザ装置400を識別する情報と、廃棄時刻と、を含んでいてもよい。
【0030】
制御部105は、ONU100の各部の動作を制御する。制御部105は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)を備えた装置により実行される。制御部105は、割当要求プログラムを実行することによって割当要求部106、フレーム廃棄プログラムを実行することによって輻輳回避処理部107、キュー調整プログラムを実行することによってキュー調整部108、要求調整プログラムを実行することによって
図3で説明する申告調整部109として、それぞれ機能してもよい。
【0031】
割当要求部106は、OLT200に帯域の割当を要求する信号(例えば、REPORT信号)を送信する。具体的には、割当要求部106は、フレーム記憶部103に記憶されるキューの長さを示すキュー長を取得する。割当要求部106は、取得したキュー長からデータ量を算出してもよい。割当要求部106は、キュー長或いは算出したデータ量を割当要求量として、OLT200に送信する。ONU100からOLT200へ割当要求量を送信することは、申告の一態様である。
【0032】
輻輳回避処理部107は、AQMやTail Dropping等を実行することでキューに保持されるフレームを廃棄する。輻輳回避処理部107は、廃棄したフレームに基づいて、廃棄情報を生成してもよい。
【0033】
本実施形態では、キュー調整部108又は申告調整部109の少なくともいずれかを備える。本実施形態では、送信時に送信許可された上りデータ量とキューの上りデータ量との乖離が大きくならないように、帯域要求値又はキュー長又は廃棄を制御する。
【0034】
本実施形態では、
図2に示されるように、制御部105はキュー調整部108を備えてもよい。キュー調整部108は、OLT200に割当要求量が送信されてから所定の時間、又は当該割当要求量に対応する送信許可により上りデータが送信するまで輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を制御する。具体的には、キュー調整部108は、所定の方法を用いて、輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を制御する。所定の方法は、後述の第1、第2又は第3の方法である。
【0035】
本実施形態では、
図3に示されるように、制御部105は申告調整部109を備えてもよい。申告調整部109は、OLT200に対する割当要求量と送信許可時に有するフレームの量との乖離が小さくなるように割当要求量を調整する。具体的には、申告調整部109は、所定の方法を用いて、割当要求部106による割当要求量を調整する。所定の方法は、後述の第4又は第5の方法である。申告調整部109は、申告調整部の一態様である。申告調整部は、OLT200に対する割当要求量を制御する。
本実施形態では、
図4に示されるように、制御部105はキュー調整部108及び申告調整部109を備えてもよい。
【0036】
(第1の方法)
第1の方法を、
図2と
図5とを用いて説明する。
図5は、第1実施形態のフレームの廃棄を抑止する処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示されるフローチャートは、輻輳回避処理部107がフレームを廃棄する場合に実行される。
【0037】
キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS101)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0038】
所定の時間が経過している場合(ステップS101:YES)、輻輳回避処理部107は、フレームを廃棄可能とする(ステップS102)。具体的には、輻輳回避処理部107は、キューの長さが所定以上であったり、伸長が著しい場合に、フレームを廃棄してもよい。所定の時間が経過していない場合(ステップS101:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を抑止する(ステップS103)。輻輳回避処理部107は、上りデータを送信することで、フレームの廃棄を抑止するように構成されてもよい。
【0039】
(第2の方法)
第2の方法を、
図2と
図6を用いて説明する。
図6は、第1実施形態の要求済のキューに相当するフレームの廃棄を抑止する処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示されるフローチャートは、輻輳回避処理部107がフレームを廃棄する場合に実行される。
【0040】
キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS201)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0041】
所定の時間が経過している場合(ステップS201:YES)、輻輳回避処理部107は、フレームを廃棄可能とする(ステップS202)。所定の時間が経過していない場合(ステップS201:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避処理部107による割当要求済みのキュー長に相当するフレーム又は割当要求に係ったフレームの廃棄を抑止する(ステップS203)。
【0042】
第2の方法では、輻輳回避処理部107は、所定の時間が経過していないタイミングでは、割当要求量に含まれていないキューのフレームを廃棄する。輻輳回避処理部107が、フレーム毎にユーザ装置400又はコネクションを識別できる場合、かつキュー調整部108によってフレームの廃棄が制御されていないタイミングでは、輻輳回避処理部107は、所定の時間中に廃棄されていないユーザ装置400又はコネクションのフレームを優先して廃棄するように構成されてもよい。
【0043】
具体的には、輻輳回避処理部107は、予めフレームの廃棄履歴を指数平均等で積算する。輻輳回避処理部107は、廃棄が抑止されるフレームを除いて、積算値が少ないコネクションやユーザ装置400のフレームを優先的に廃棄してもよい。また、輻輳回避処理部107は、廃棄対象のフレームが同一のコネクションやユーザ装置400に偏っている場合、フレームの廃棄率又は廃棄数を減らしてもよいし、廃棄を行わないように構成されてもよい。
【0044】
(第3の方法)
第3の方法を、
図2と
図7とを用いて説明する。
図7は、第1実施形態の割当要求後に到着したフレームに基づいて廃棄を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示されるフローチャートは、輻輳回避処理部107がフレームを廃棄する場合に実行される。
【0045】
キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS301)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0046】
所定の時間が経過している場合(ステップS301:YES)、輻輳回避処理部107は、フレームを廃棄可能とする(ステップS302)。所定の時間が経過していない場合(ステップS301:NO)、キュー調整部108は、キュー長が割当要求量より大きいか否か判定する(ステップS303)。
【0047】
割当要求量よりも大きい場合(ステップS303:YES)、輻輳回避処理部107は、超過分のデータ量に相当するフレームを廃棄する(ステップS304)。例えば、ONU100が、割当要求量を送信した後にフレームを受信した場合、輻輳回避処理部107は、受信したフレームの長さの和を上限としてフレームを廃棄する。割当要求量よりも大きくない場合(ステップS303:NO)、キュー調整部108は、当該の処理を終了する。輻輳回避処理部107は、上りデータを送信することで、フレームの廃棄を抑止するように構成されてもよい。
【0048】
輻輳回避処理部107は、受信したフレームの長さの和を上限として、フレーム単位で廃棄するように構成されてもよい。このように構成されることで、フレームの部分廃棄を避けることができる。輻輳回避処理部107は、受信したフレーム長がMTU(Maximum Transmission Unit)を超過した場合、フレームを廃棄してもよい。
【0049】
第3の方法では、短いフレームが優先的に廃棄される場合がある。輻輳回避処理部107は、予めフレームの廃棄履歴を指数平均等で積算する。輻輳回避処理部107は、他のコネクションやユーザ装置400の積算結果と比較して、積算結果が所定の差又は比率を超過した場合に、当該コネクションやユーザ装置400から受信したフレームの廃棄を停止するように構成されてもよい。このように構成されることで、短いフレームが優先的に廃棄される場合を解消できる。
【0050】
第3の方法では、フレームの境界に合うように構成されているが、MTU(またはMTU未満)低いであってもよいし、MTU(またはMTU未満)高い値であってもよいし、割当要求量であってもよい。
【0051】
(第4の方法)
第4の方法を、
図3と
図8とを用いて説明する。
図3は、第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第2の機能ブロック図である。
図8は、第1実施形態のOLT200に割当要求量を送信する処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示されるフローチャートは、割当要求部106が割当要求量をOLT200に送信する場合に実行される。
【0052】
申告調整部109は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの予測値を算出する情報(以下「予測情報」という。)を取得する(ステップS401)。予測情報には、キュー長、キュー長の伸長速度及び廃棄情報記憶部104に記憶される廃棄情報が含まれていてもよいし、予めコントローラやOLT200等から与えた固定値又はキュー長、キュー長の伸長速度や廃棄速度等を変数とする関数をOLT200やコントローラ等から与え、それに基づき申告調整部109で算出してもよい。申告調整部109は、予測情報に基づいて、廃棄されるフレームの廃棄予測値を算出する(ステップS402)。廃棄予測値は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの量を予測した値である。
【0053】
申告調整部109は、廃棄予測値が0より大きいか否か判定する(ステップS403)。廃棄予測値が0より大きい場合(ステップS403:YES)、割当要求部106は、割当要求量から廃棄予測値を減じる(ステップS404)。廃棄予測値が0より大きくない場合(ステップS403:NO)、割当要求部106は、割当要求量をそのままOLT200に送信する(ステップS405)。なお、割当要求部106は、MTUやTQ等の粒度で廃棄予測値を減じてもよい。
【0054】
(第5の方法)
第5の方法を、
図4と
図9とを用いて説明する。
図4は、第1実施形態のONU100の機能構成の一具体例を表す第3の機能ブロック図である。
図9は、第1実施形態の廃棄予測値を算出した後にフレームを廃棄する処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示されるフローチャートは、ステップS401からステップS405までは、割当要求部106が割当要求量をOLT200に送信する場合に実行される。ステップS501からステップS503までは、輻輳回避処理部107がフレームを廃棄する場合に実行される。なお、ステップS401からステップS405までは、第4の方法と同様であるため説明を省略する。
【0055】
キュー調整部108は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの量が廃棄予測値以内であるか否かを判定する(ステップS501)。廃棄予測値以内である場合(ステップS501:YES)、輻輳回避処理部107は、フレームを廃棄する(ステップS502)。廃棄予測値以内ではない場合(ステップS501:NO)、キュー調整部108は、廃棄されるフレーム量が、廃棄予測値以内に収まるように調整し、輻輳回避処理部107に廃棄させる(ステップS503)。
【0056】
このように構成された通信システム1では、キュー調整部108が、所定の方法で、輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を制御する。したがって、ONU100が送信した割当要求量と送信許可時に有するフレームの量との乖離を小さくすることができ、送信帯域をより効率よく活用することができる。また、申告調整部109は、OLT200に送信される割当要求量を調整する。したがって、ONU100が送信した割当要求量と送信許可時に有するフレームの量との乖離を小さくすることができ、送信帯域をより効率よく活用することができる。
【0057】
フレーム記憶部103は、複数のキューを記憶するように構成されてもよい。フレーム記憶部103は、例えば、優先制御されたフレームを優先キューに記憶させ、それ以外のキューを通常のキューに記憶させてもよい。フレーム記憶部103は、ユーザ装置400毎にキューを記憶するように構成されてもよい。キュー調整部108は、複数のキューがフレーム記憶部103に記憶される場合、キューのキュー長毎にフレームの廃棄を制御してもよいし、各キュー長の合計値に基づいて、フレームの廃棄を制御してもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態のOLT200の機能構成を表す機能ブロック図である。OLT200は、第1通信部201、第2通信部202及び制御部204を備える。OLT200は、履歴情報記憶部203を備えていてもよい。なお、第2実施形態のONU100は、少なくとも割当要求部106、輻輳回避処理部107を備えるが、キュー調整部108及び申告調整部109は備えなくともよい。
【0059】
第1通信部201は、ネットワークインタフェースである。第1通信部201は、ONU100から上り信号を受信する。第1通信部201は、上位の装置から受信した下りデータを下り信号としてONU100に送信する。
【0060】
第2通信部202は、ネットワークインタフェースである。第2通信部202は、ONU100から受信したフレームを上位の装置に送信する。第2通信部202は、上位の装置から送信された下りデータを受信する。
【0061】
履歴情報記憶部203は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。履歴情報記憶部203は、履歴情報を記憶する。履歴情報は、ONU100から受信した割当要求量と実際に受信したデータ量との差分を示す情報である。
【0062】
制御部204は、OLT200の各部の動作を制御する。制御部204は、例えばCPU及びRAMを備えた装置により実行される。制御部204は、送信許可プログラムを実行することによって送信許可部205、許可調整プログラムを実行することによって許可調整部207、申告値調整プログラムを実行することによって申告調整部206、キュー調整プログラムを実行することによってキュー調整部208として、それぞれ機能してもよい。
【0063】
送信許可部205は、ONU100に、送信許可を示す信号(例えば、GATE信号やBWMap等)を送信する。具体的には、送信許可部205は、ONU100から受信した割当要求量に基づいて送信許可量を算出する。送信許可部205は、送信許可量を信号に含め、ONU100に送信する。
【0064】
本実施形態では、
図10に示すように申告調整部206又は
図11に示すように許可調整部207又は
図12に示すようにキュー調整部208の少なくともいずれかを備える。本実施形態では、送信時に送信許可した上りデータ量とキューの上りデータ量との乖離が大きくならないように、許可又は帯域要求値又はキュー長又は廃棄を制御する。なお図示していないが、
図10~12に備える申告調整部206、許可調整部207、キュー調整部208の複数又は全てを備え、按分して乖離を小さくしてもよい。
【0065】
本実施形態では、
図10に示されるように、制御部204は申告調整部206を備えてもよい。申告調整部206は、送信時に送信許可した上りデータ量とキューの上りデータ量又はフレームの量との乖離が小さくなるように割当要求量を調整する。具体的には、申告調整部206は、所定の方法を用いて、割当要求部106による割当要求量を調整する。所定の方法は、前述の第4又は第5の方法である。
【0066】
本実施形態では、
図11に示されるように、制御部204は許可調整部207を備えてもよい。許可調整部207は、ONU100に割当する送信許可量と実際に受信するデータ量との乖離が小さくなるように送信許可量を決定する。具体的な処理の流れを後述の
図13のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
第2実施形態のOLT200が送信許可量を決定する処理の流れを示すフローチャートを、
図11と
図13とを用いて説明する。
図11は、第1実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す第2の機能ブロック図である。
図13は、第2実施形態のOLT200が送信許可量を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
図13に示されるフローチャートは、許可調整部207が送信許可量をONU100に送信する場合に実行される。
【0068】
OLT200は、ONU100から割当要求量を受信する(ステップS601)。許可調整部207は、履歴情報記憶部203から履歴情報を取得する(ステップS602)。許可調整部207は、履歴情報に基づいて、ONU100で廃棄されるフレームの差分予測値を算出する(ステップS603)。差分予測値は、割当要求量とONU100から受信したデータ量との差分を予測した値である。算出にあたって、予めコントローラ等から設定された固定値、申告値、申告値の変化速度又は、割当に対する実使用率の推移等を変数とする関数をコントローラ等から与え、それに基づいて設定されてもよい。実使用率はOLTで取得されてもよいし、上位の装置での流量に基づいて上位の装置やコントローラ等で予測されてもよい。
【0069】
許可調整部207は、差分予測値が0より大きいか否か判定する(ステップS604)。差分予測値が0より大きい場合(ステップS604:YES)、許可調整部207は、送信許可量から差分予測値を減ずる。送信許可部205は、減じた値を送信許可量としてONU100に送信する(ステップS605)。差分予測値が0より大きくない場合(ステップS604:NO)、送信許可部205は、送信許可量をそのままONU100に送信する(ステップS606)。
【0070】
このように構成された通信システム1では、許可調整部207が、受信した割当要求量と実際に受信したデータ量との差分とに基づいて、ONU100に割り当てる送信許可量を調整する。したがって、ONU100から受信した割当要求量と実際にOLT200が受信するデータ量との乖離を小さくすることができ、送信帯域をより効率よく活用することができる。
【0071】
図10と
図8を用いて、OLT200による送信許可の処理の流れを説明する。
図10は、第1実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す第3の機能ブロック図である。第1実施形態において、
図8は、ONU100で割当要求量の処理の流れを示すフローチャートとして詳述した。第2実施形態において、
図8に示されるフローチャートは、申告調整部206が送信許可量をONU100に送信する場合に実行される。
【0072】
申告調整部206は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの予測値を算出する情報(以下「予測情報」という。)を取得する(ステップS401)。予測情報には、キュー長、キュー長の伸長速度及び履歴情報記憶部203に記憶される履歴情報が含まれていてもよいし、予めコントローラ等から与えた固定値又は申告値、申告値の伸長速度や廃棄速度等を変数とする関数をコントローラ等から与え、それに基づき申告調整部206で算出してもよい。申告調整部206は、予測情報に基づいて、廃棄されるフレームの廃棄予測値を算出する(ステップS402)。廃棄予測値は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの量を予測した値である。
【0073】
申告調整部206は、廃棄予測値が0より大きいか否か判定する(ステップS403)。廃棄予測値が0より大きい場合(ステップS403:YES)、申告調整部206は、割当要求量から廃棄予測値を減じた値を、送信許可量とする(ステップS404)。廃棄予測値が0より大きくない場合(ステップS403:NO)、送信許可部205は、送信許可量をそのままOLT200に送信する(ステップS405)。なお、送信許可部205は、MTUやTQ等の粒度で廃棄予測値を減じてもよい。
【0074】
(第3実施形態)
第3実施形態の通信システム1は、第1の実施形態のONU100と第2の実施形態のOLT200とを組み合わせて構成される。このように構成された通信システム1は、フレームの廃棄量をONU100及びOLT200で按分して予測しても、制御してもよい。
【0075】
ONU100及びOLT200間で予測値のやり取りが行われる場合、フレームの廃棄量は、以下の通り按分される。具体的には、OLT200の許可調整部207は、フレームの廃棄量の平均値等の統計値を算出する。統計値は、許可調整部207が、送信許可量から減ずるために用いられる。送信許可部205は、送信許可量から統計値、例えば平均値、例えば平均値にN倍の分散量を減じられた値を送信許可量としてONU100に送信する。OLT200は、算出された統計値をONU100に送信する。ONU100のキュー調整部108は、割当要求量を統計値よりも減ずる必要がある場合、統計値との差分を割当要求量から減じた値をOLT200へ送信する。
【0076】
ONU100及びOLT200間で予測値のやり取りが行われない場合、フレームの廃棄量は、以下の通り按分される。具体的には、第2実施形態と同様にOLT200の許可調整部207は、差分予測値を算出する。OLT200は、送信許可量から差分予測値を減じた値をONU100に送信する。ONU100のキュー調整部108は、送信許可量に基づいて、データをOLT200へ送信する。なお、ONU100からの上りデータ量が急増した等の変化が発生した場合、ONU100の申告調整部109は、割当要求量から急増した上りデータ量を減じた値をOLT200へ送信する。
【0077】
このように構成された通信システム1では、ONU100及びOLT200がそれぞれ割当要求量及び送信許可量の制御を行う。したがって、割り当てられた送信帯域をより効率よく活用することが可能となる。
【0078】
(第4実施形態)
第4実施形態における通信システム1は、輻輳回避パラメータを設定する点で第1又は第2実施形態とは異なるが、それ以外の構成は同じである。以下、第1又は第2実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
図2、第4実施形態のONU100の機能構成を表す機能ブロック図である。ONU100は、キュー調整部108がパラメータを設定する。ONU100は、それ以外の点については、第1の実施形態におけるONU100と同じである。
【0080】
キュー調整部108で設定する輻輳回避パラメータ等のパラメータは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて保持されてもよい。輻輳回避パラメータは、ONU100で動作するAQMやTail Dropping等によってキューに保持されるフレームを廃棄する条件の判定に用いられるパラメータである。
【0081】
制御部105は、ONU100の各部の動作を制御する。制御部105は、例えばCPU及びRAMを備えた装置により実行される。制御部105は、割当要求プログラムを実行することによって割当要求部106、フレーム廃棄プログラムを実行することによって輻輳回避処理部107、キュー調整プログラムを実行することによってキュー調整部108、申告調整プログラムを実行することによって申告調整部109として、それぞれ機能してもよい。
【0082】
キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に出力する。輻輳回避処理部107は、受け付けた輻輳回避パラメータに基づいて、AQMやTail Dropping等によりフレームの廃棄を実行する。
【0083】
第4実施形態では、OLT200はキュー調整部を備えてもよい。
図12は、第4実施形態のOLT200の機能構成の一具体例を表す機能ブロック図である。
図12のOLT200の制御部204は、キュー調整部208を備える。
【0084】
ONU100のキュー調整部108によって設定されるパラメータは、OLT200のキュー調整部208で決定して、ONU100に設定されてもよい。その場合、キュー調整部208は、パラメータは、ONU100の上り信号の帯域要求量又は帯域割当状況に基づいて、輻輳回避パラメータを決定する。キュー調整部208は、パラメータを、各ONU100から受信する帯域要求量の総和からで、ONU100の上り信号の帯域要求量を算出する。キュー調整部208は、パラメータを、決定した輻輳回避パラメータを、ONU100に送信する。
【0085】
輻輳回避パラメータは、目標キュー長であってもよいし、輻輳回避処理部107によってフレームの廃棄が開始される閾値であってもよいし、廃棄が停止される閾値であってもよい。輻輳回避処理部107は、目標キュー長に近接するようにフレームを廃棄する。RED等に対する輻輳回避パラメータは、優先キュー、Alloc-ID、LLID又はONU100毎に調整してもよい。また、OLT200が優先度付きキューを備える場合、輻輳回避パラメータは、優先度付きキュー毎に調整されてもよい。キュー調整部208は、輻輳回避パラメータの決定を、周期的に実行してもよいし、DBA周期と同一であってもよいし、DBA周期の約数や倍数であってもよい。
【0086】
このように構成された通信システム1では、OLT200が、AQMやTail Dropping等の動作を定義する輻輳回避パラメータを決定する。ONU100のキュー調整部108が、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。輻輳回避処理部107が設定された輻輳回避パラメータに基づいて、フレームを廃棄する。したがって、通信システム1の稼働状況に応じて、フレームの廃棄を変更することができ、送信帯域をより効率よく活用することができる。
【0087】
なお、ここでOLT200のキュー調整部208がONU100のキュー調整部108を介してパラメータを設定するとしたが、ONU100にはキュー調整部108を備えずに、OLT200のキュー調整部208がONU100の輻輳回避処理部107のパラメータを設定してもよい。
【0088】
また本実施例ではキュー調整部はONU又はOLTに配置するとしたが、それ以外の例えばONUやOLTを制御するコントローラ等や網内外の任意の場所に配置して良い。但し、輻輳回避処理部との通信に係る遅延分だけ応答が遅くなり、応答のオーバーシュートを軽減する観点からは遅延の少ない場所であることが望ましい。
【0089】
(第5実施形態)
第5実施形態では、ONU100のキュー調整部108又はOLT200のキュー調整部208が第4実施形態で決定された輻輳回避パラメータを設定するタイミングを決定する。キュー調整部108は、以下の第6から第10の方法によってタイミングを決定する。第6から第10の方法は、ONU100が輻輳回避パラメータを受信した場合に実行される。
【0090】
(第6の方法)
第6の方法を、
図14を用いて説明する。
図14は、第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS701)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0091】
所定の時間が経過している場合(ステップS701:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS702)。所定の時間が経過していない場合(ステップS701:NO)、パラメータ設定部111は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。キュー調整部108は、所定時間が経過するまでは、輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を抑止する(ステップS703)。なお、ステップS703では、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定するタイミングを延期するように構成されてもよい。
【0092】
(第7の方法)
第7の方法を、
図15を用いて説明する。
図15は、第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定と要求済のキューの廃棄との流れを示すフローチャートである。キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS801)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0093】
所定の時間が経過している場合(ステップS801:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS802)。所定の時間が経過していない場合(ステップS801:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。キュー調整部108は、輻輳回避処理部107による要求済みのキューに相当するフレームの廃棄を抑止する(ステップS803)。なお、ステップS803では、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定するタイミングを延期するように構成されてもよい。
【0094】
第7の方法では、輻輳回避処理部107は、所定の時間が経過していないタイミングでは、割当要求量に含まれていないキューのフレームを廃棄する。輻輳回避処理部107が、フレーム毎にユーザ装置400又はコネクションを識別できる場合、かつキュー調整部108によってフレームの廃棄が制御されていないタイミングでは、輻輳回避処理部107は、所定の時間中に廃棄されていないユーザ装置400又はコネクションのフレームを優先して廃棄するように構成されてもよい。
【0095】
例えば、輻輳回避処理部107は、予めフレームの廃棄履歴を指数平均等で積算する。輻輳回避処理部107は、廃棄が抑止されるフレームを除いて、積算値が少ないコネクションやユーザ装置400のフレームを優先的に廃棄してもよい。また、輻輳回避処理部107は、廃棄対象のフレームが同一のコネクションやユーザ装置400に偏っている場合、フレームの廃棄率又は廃棄数を減らしてもよいし、廃棄を行わないように構成されてもよい。
【0096】
(第8の方法)
第8の方法を、
図16を用いて説明する。
図16は、第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定と到着したフレームに基づいて廃棄する処理との流れを示すフローチャートである。キュー調整部108は、OLT200に割当要求量を送信してから所定の時間が経過しているか否か判定する(ステップS901)。所定の時間とは、OLT200から送信許可を受信するまでの時間であってもよいし、ONU100に予め設定された時間であってもよいし、OLT200から予め指定された時間であってもよいし、過去の送信許可を受信するまでの時間の履歴に基づいて、平均等の統計処理により算出される時間が経過するまでであってもよい。
【0097】
所定の時間が経過している場合(ステップS901:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS902)。所定の時間が経過していない場合(ステップS901:NO)、キュー調整部108は、キュー長から算出されるデータ量が割当要求量より大きいか否か判定する(ステップS903)。
【0098】
割当要求量よりも大きくない場合(ステップS903:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS902)。割当要求量よりも大きい場合(ステップS903:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。キュー調整部108は、輻輳回避処理部107による要求済みのキューに相当するフレームの廃棄を抑止する(ステップS904)。例えば、ONU100が、割当要求量を送信した後にフレームを受信した場合、輻輳回避処理部107は、受信したフレームの長さの和を上限としてフレームを廃棄する。
【0099】
輻輳回避処理部107は、受信したフレームの長さの和を上限として、フレーム単位で廃棄するように構成されてもよい。このように構成されることで、フレームの部分廃棄を避けることができる。輻輳回避処理部107は、受信したフレーム長がMTUを超過した場合、フレームを廃棄してもよい。
【0100】
第8の方法では、短いフレームが優先的に廃棄される場合がある。輻輳回避処理部107は、予めフレームの廃棄履歴を指数平均等で積算する。輻輳回避処理部107は、他のコネクションやユーザ装置400の積算結果と比較して、積算結果が所定の差又は比率を超過した場合に、当該コネクションやユーザ装置400から受信したフレームの廃棄を停止するように構成されてもよい。このように構成されることで、短いフレームが優先的に廃棄される場合を解消できる。
【0101】
第8の方法では、フレームの境界に合うように構成されているが、MTU(またはMTU未満)低いであってもよいし、MTU(またはMTU未満)高い値であってもよいし、割当要求量であってもよい。
【0102】
(第9の方法)
第9の方法を、
図17を用いて説明する。
図17は、第5実施形態の輻輳回避パラメータの設定とフレームの廃棄の抑止する処理との流れを示すフローチャートである。申告調整部109は、予測情報を取得する(ステップS1001)。申告調整部109は、予測情報に基づいて、廃棄予測値を算出する(ステップS1002)。
【0103】
キュー調整部108は、輻輳回避処理部107による廃棄が生じない時間が経過したか否か判定する(ステップS1003)。時間が経過していない場合(ステップS1003:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。キュー調整部108は、所定時間が経過するまでは、輻輳回避処理部107によるフレームの廃棄を抑止する(ステップS1004)。なお、ステップS1004では、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定するタイミングを延期するように構成されてもよい。時間が経過した場合(ステップS1003:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS1005)。
【0104】
(第10の方法)
第10の方法を、
図18を用いて説明する。
図18は、第5実施形態の廃棄予測値に基づく輻輳回避パラメータの設定の流れを示すフローチャートである。
図18に示されるフローチャートは、ステップS1001からステップS1004までは、第9の方法と同様である。
【0105】
キュー調整部108は、輻輳回避処理部107によって廃棄されるフレームの量が予測値よりもMTU分高い値であるか否かを判定する(ステップS1101)。予測値よりもMTU分高い値である場合(ステップS1101:YES)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータの設定を抑止する(ステップS1102)。予測値よりもMTU分高い値でない場合(ステップS1101:NO)、キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する(ステップS1103)。
【0106】
このように構成された通信システム1では、キュー調整部108が、輻輳回避パラメータを設定するタイミングを調整する。キュー調整部108は、輻輳回避パラメータを即時に設定しない。したがって、輻輳回避処理部107が、輻輳回避パラメータが設定されることで、キューからフレームが余分に廃棄されてしまう場合を防ぐことができ、割り当てられた送信帯域をより効率よく活用することができる。
【0107】
(第6実施形態)
第6実施形態の通信システム1は第1から第3実施形態のいずれか1つと第5実施形態とを組み合わせて構成される。このように構成された通信システム1では、輻輳回避パラメータが動的に変更される。具体的には、キュー調整部208は、輻輳回避パラメータを決定する。キュー調整部108は、決定された輻輳回避パラメータを輻輳回避処理部107に設定する。輻輳回避処理部107は、輻輳回避パラメータに基づいて、フレームの廃棄を行う。したがって、ONU100は、上りデータ量が増加又は減少した場合でも、割り当てられた送信帯域をより効率よく活用することができる。
【0108】
本願の実施形態ではキュー調整部、申告調整部、許可調整部はONU又はOLT又はONUとOLTのいずれかの制御部に配置するとしたが、それ以外の例えばONUやOLTを制御するコントローラ等や網内外の任意の場所に配置して良い。但し、ONU又はOLTとの通信に係る遅延分だけ応答が遅くなり、応答のオーバーシュートを軽減する観点からは遅延の少ない場所であることが望ましい。
【0109】
本発明に適用されるPONは、ギガビット・パッシブ・オプティカル・ネットワーク(G-PON)であってもよく、他のPON、例えば、ブロードバンドPON(BPON)、イーサネットPON(EPON)(イーサネット:登録商標)、NG-PON2又はXGS-PONであってもよい。
【0110】
本発明は、1つ又は複数のONUを例に説明したが、PONに用いられる他のネットワーク終端装置(例えば、ONT)が使用されてもよい。本発明は、REDを例にして説明したが、WRED等の他の輻輳回避方法が使用されてもよい。ONUは1つのAlloc-IDやLLIDを備える例で説明したが、ONUは、Alloc-IDやLLIDを複数備えていてもよい。
【0111】
光レイヤでの信号を時分割多重するPONシステムを例に説明したが、ONUの上りデータをOLTやONU-OLT間に配置したスイッチ等で集線する通信システム、特にOLTでの複数ONUからの上りデータ間での待合せによる遅延変動を軽減するために上りデータの送信時刻を制御するシステムに好適である。
【0112】
本実施形態で示した通信システム1に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
加入者線終端装置と加入者線端局装置とを備える通信システムにおいて、
前記加入者線終端装置は、
前記加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、
前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、
を備え、
前記加入者線端局装置は、
前記加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて前記上りデータの送信許可を行う送信許可部と、
を備え、
前記加入者線終端装置と前記加入者線端局装置とのうちの少なくとも一方は、送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの上りデータ量との乖離が大きくならないよう前記輻輳回避処理部で廃棄されるフレームの予測値に基づいて前記割当要求量を制御する申告調整部を備える、
ことを特徴とする通信システム。
(付記2)
前記申告調整部は、前記輻輳回避処理部によって廃棄されるデータ量を廃棄予測値として算出し、前記キューの上りデータ量又は前記割当要求量から前記廃棄予測値を減じて前記割当要求量を制御する、
付記1に記載の通信システム。
(付記3)
加入者線端局装置へ送信される上りデータのキューと、
前記キューから前記上りデータを廃棄する輻輳回避処理部と、
送信時に送信許可された上りデータ量と前記キューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないよう前記輻輳回避処理部で廃棄されるフレームの予測値に基づいて割当要求量を制御する申告調整部とを備える、
ことを特徴とする加入者線終端装置。
(付記4)
加入者線終端装置が申告する割当要求量を用いて上りデータの送信許可を行う送信許可部と、
前記加入者線終端装置の送信時に送信許可した上りデータ量と前記上りデータのキューの前記上りデータ量との乖離が大きくならないよう、前記上りデータのキューから廃棄されるフレームの予測値に基づいて割当要求量を制御する申告調整部とを備える、
ことを特徴とする加入者線端局装置。
【0113】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、ユーザに光通信環境を提供する光アクセスサービスに適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1…通信システム, 100…ONU, 101…第1通信部, 102…第2通信部, 103…フレーム記憶部, 104…廃棄情報記憶部, 105…制御部, 106…割当要求部, 107…輻輳回避処理部, 108…キュー調整部, 109…申告調整部, 200…OLT, 201…第1通信部, 202…第2通信部, 203…履歴情報記憶部, 204…制御部, 205…送信許可部, 206…申告調整部, 207…許可調整部, 208…キュー調整部, 300…ODN, 400…ユーザ装置