(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】鉛蓄電池の蓋、及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/256 20210101AFI20220225BHJP
H01M 50/15 20210101ALN20220225BHJP
H01M 10/06 20060101ALN20220225BHJP
【FI】
H01M50/256 101
H01M50/15 101
H01M10/06 Z
(21)【出願番号】P 2019568424
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018002953
(87)【国際公開番号】W WO2019150428
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-66861(JP,U)
【文献】特開2003-162988(JP,A)
【文献】実開昭63-32455(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01M50/10-50/198
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の電槽の上部に取り付けられる蓋本体と、
前記蓋本体に対して回動可能に取り付けられたハンドルと、
前記蓋本体に対する前記ハンドルの回動範囲を規制する規制部と、
を備え、
前記ハンドルは、上方から見たときに、前記蓋本体に取り付けられた側に対して反対側の先端部が前記鉛蓄電池の重心側を向くように回動し、
前記規制部は、前記ハンドルの回動の軸方向に沿って見たときに、前記蓋本体の上面に対する前記ハンドルの開き角度が90°未満となるように前記ハンドルの回動範囲を規制する、鉛蓄電池の蓋。
【請求項2】
前記ハンドルは、
基端部が前記蓋本体に回動可能に取り付けられたアーム部と、
前記アーム部の先端部に取り付けられたグリップ部と、
を有し、
前記規制部は、前記アーム部の回動の軸方向に沿って見たときに、前記アーム部の回動の軸と前記グリップ部とを接続する直線と、前記蓋本体の上面とがなす角度が90°未満となるように回動範囲を規制する、請求項1に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項3】
前記ハンドルは、2つ設けられ、
前記規制部は、2つ設けられるとともに、2つの前記ハンドルの回動範囲をそれぞれ規制し、
上方から見たときに、2つの前記ハンドルは、前記鉛蓄電池の重心を挟むように前記蓋本体に取り付けられている、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項4】
前記規制部は、前記蓋本体に設けられた凸部又は壁部であり、前記蓋本体の上面に対する前記ハンドルの開き角度が90°未満となる回動位置で前記ハンドルと当接することによって回動範囲を規制する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項5】
前記蓋本体は、
前記ハンドルに通された軸部と、
前記軸部の軸方向において前記ハンドルに対向し、前記軸部から外れる方向における前記ハンドルの移動を規制する規制壁と、
を有し、
前記ハンドルは、前記軸部を軸として回動可能であり、
前記規制部は、前記規制壁であり、前記蓋本体の上面に対する前記ハンドルの開き角度が90°未満となる回動位置で前記ハンドルと当接することによって回動範囲を規制する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池の蓋。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の前記鉛蓄電池の蓋を備える、鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の蓋、及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、自動車等に搭載された鉛蓄電池がある。このような鉛蓄電池は、電極群及び電解液等を収容する電槽と、電槽の開口を閉じる蓋とを備えている。また、鉛蓄電池の蓋は、蓋本体と、作業者等が鉛蓄電池を容易に持ち上げることができるようにするためのハンドルとを備えている。ハンドルは、蓋本体に対して回動可能に取り付けられている。ハンドルは、使用されないときには蓋本体の面上に倒され、使用されるときには蓋本体から立ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、蓋本体に対してハンドルが回動可能に取り付けられているため、作業者等がハンドルを立ち上げて鉛蓄電池を持ち上げたときに、蓋本体及び電槽がハンドルに対して揺動することがある。この場合、作業者等は、鉛蓄電池を安定して持ち上げることができない。このため、本技術分野では、ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる鉛蓄電池の蓋、及び鉛蓄電池が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池の蓋は、鉛蓄電池の電槽の上部に取り付けられる蓋本体と、蓋本体に対して回動可能に取り付けられたハンドルと、蓋本体に対するハンドルの回動範囲を規制する規制部と、を備え、ハンドルは、上方から見たときに、蓋本体に取り付けられた側に対して反対側の先端部が鉛蓄電池の重心側を向くように回動し、規制部は、ハンドルの回動の軸方向に沿って見たときに、蓋本体の上面に対するハンドルの開き角度が90°未満となるようにハンドルの回動範囲を規制する。
【0006】
ここで、この鉛蓄電池の蓋が電槽に取り付けられた状態で、作業者等がハンドルを把持して鉛蓄電池を持ち上げた場合について説明する。作業者等がハンドルを把持して鉛蓄電池を持ち上げると、ハンドルが立ち上げられた状態となる。このとき、ハンドルにおける蓋本体への取り付け位置と鉛蓄電池の重心との位置関係によって、蓋本体及び電槽がハンドルに対して回動しようとする。上述したように、ハンドルは、先端部が鉛蓄電池の重心側を向くように回動する。規制部は、ハンドルの開き角度が90°未満となるように回動範囲を規制する。このため、ハンドルに対する蓋本体及び電槽の回動は、規制部によって規制される。すなわち、ハンドルによって鉛蓄電池が持ち上げられた状態では、ハンドルに対する蓋本体及び電槽の回動が規制部によって常に規制された状態となる。従って、蓋本体及び電槽がハンドルに対して回動しようとしたときに、一方の方向への回動は規制部によって規制され、他方の方向への回動は鉛蓄電池(蓋本体及び電槽)の重さによって抑制される。これにより、鉛蓄電池が持ち上げられたときに、ハンドルに対する蓋本体及び電槽の揺動が抑制される。以上のように、この鉛蓄電池の蓋は、ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる。
【0007】
鉛蓄電池の蓋において、ハンドルは、基端部が蓋本体に回動可能に取り付けられたアーム部と、アーム部の先端部に取り付けられたグリップ部と、を有し、規制部は、アーム部の回動の軸方向に沿って見たときに、アーム部の回動の軸とグリップ部とを接続する直線と、蓋本体の上面とがなす角度が90°未満となるように回動範囲を規制してもよい。この場合、鉛蓄電池の蓋は、ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる。
【0008】
鉛蓄電池の蓋において、ハンドルは、2つ設けられ、規制部は、2つ設けられるとともに、2つのハンドルの回動範囲をそれぞれ規制し、上方から見たときに、2つのハンドルは、鉛蓄電池の重心を挟むように蓋本体に取り付けられていてもよい。この場合、作業者等が2つのハンドルをそれぞれ把持して鉛蓄電池を持ち上げると、2つのハンドルがそれぞれ立ち上げられた状態となる。このとき、2つのハンドルにおける蓋本体への取り付け位置と鉛蓄電池の重心との位置関係により、蓋本体の上面に対する開き角度が90°となるように2つのハンドルが蓋本体に対してそれぞれ回動しようとする。このため、2つのハンドルは、2つの規制部によってそれぞれ回動が規制された状態となる。すなわち、鉛蓄電池が持ち上げられた状態では、2つのハンドルの回動が2つの規制部によってそれぞれ常に規制された状態となる。従って、蓋本体及び電槽が回動しようとしたときに、一方の方向への回動は一方の規制部によって規制され、他方の方向への回動は他方の規制部によって規制される。これにより、鉛蓄電池の蓋は、2つのハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢をより一層安定させることができる。
【0009】
鉛蓄電池の蓋において、規制部は、蓋本体に設けられた凸部又は壁部であり、蓋本体の上面に対するハンドルの開き角度が90°未満となる回動位置でハンドルと当接することによって回動範囲を規制してもよい。この場合、ハンドルによって鉛蓄電池が持ち上げられた状態では、凸部又は壁部がハンドルに当接することによって、ハンドルに対する蓋本体及び電槽の回動が規制される。
【0010】
鉛蓄電池の蓋において、蓋本体は、ハンドルに通された軸部と、軸部の軸方向においてハンドルに対向し、軸部から外れる方向におけるハンドルの移動を規制する規制壁と、を有し、ハンドルは、軸部を軸として回動可能であり、規制部は、規制壁であり、蓋本体の上面に対するハンドルの開き角度が90°未満となる回動位置でハンドルと当接することによって回動範囲を規制してもよい。この場合、鉛蓄電池の蓋は、ハンドルが軸部から外れることを防止する規制壁を規制部としても機能させることができる。
【0011】
本発明の他の一側面に係る鉛蓄電池は、上記の鉛蓄電池の蓋を備える。この鉛蓄電池は、ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の種々の側面によれば、ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】ハンドルが取り外された状態の鉛蓄電池を示す正面図である。
【
図4】ハンドルが取り外された状態の鉛蓄電池を示す上面図である。
【
図5】ハンドルが立ち上げられた状態の鉛蓄電池を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の蓋が適用された鉛蓄電池の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、鉛蓄電池1は、液式鉛蓄電池である。鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2、及び電槽2の開口を閉じる蓋(鉛蓄電池の蓋)3を備えている。電槽2及び蓋3は、例えばポリプロピレンで形成されている。電槽2の内部には、複数の電極群、及び電解液が収容されている。
【0016】
蓋3は、ハンドル(一方のハンドル)10、ハンドル(他方のハンドル)20、及び蓋本体30を備えている。蓋本体30は、上方から見たときに、略長方形状を呈している(
図2参照)。以下、説明の便宜上、
図2に示されるように、蓋本体30の長手方向をX軸方向、蓋本体30の短手方向をY軸方向とする。なお、電槽2の内部には、X軸方向に沿って複数の電極群が並べて配置されている。
図2に示されるように鉛蓄電池1を上方から見たときに、鉛蓄電池1の重心Gは、本実施形態においては、X軸方向における蓋本体30の中央位置C上に位置している。
【0017】
蓋本体30は、カバー部31、及び盛上部32を備えている。カバー部31は、電槽2の開口を閉じるように、電槽2の上部に取り付けられている。カバー部31には、正極端子D1と、負極端子D2とが設けられている。正極端子D1は、カバー部31におけるX軸方向の一方の端部近傍に設けられている。負極端子D2は、カバー部31におけるX軸方向の他方の端部近傍に設けられている。電槽2内の電極群は、正極端子D1及び負極端子D2にそれぞれ接続されている。
【0018】
盛上部32は、カバー部31の上面31aに設けられ、上面31aから突出している。盛上部32は、X軸方向に沿って延在している。盛上部32内には、電解液の注入口等が設けられている。盛上部32は、正極端子D1及び負極端子D2を避けるように設けられている。
【0019】
ハンドル10は、蓋本体30に対して回動可能に取り付けられている。詳細には、ハンドル10は、アーム部11、アーム部12、及びグリップ部13を備えている。アーム部11及び12の基端部は、盛上部32の側壁部32aにそれぞれ回動可能に取り付けられている。本実施形態では、アーム部11の基端部に設けられた孔に、盛上部32の側壁部32aに設けられた軸部P11が嵌め込まれている(通されている)。また、アーム部12の基端部に設けられた孔に、盛上部32の側壁部32aに設けられた軸部P12が嵌め込まれている(通されている)。
【0020】
アーム部11の先端部には、グリップ部13の一方の端部が取り付けられている。アーム部12の先端部には、グリップ部13の他方の端部が取り付けられている。すなわち、ハンドル10は、略U字状を呈している。
【0021】
ここで、
図3及び
図4に示されるように、軸部P11は、盛上部32の側壁部32aにおけるY軸方向の一方の面に取り付けられ、側壁部32aからY軸方向に沿って突出している。軸部P12は、盛上部32の側壁部32aにおけるY軸方向の他方の面に取り付けられ、側壁部32aからY軸方向に沿って突出している。軸部P11及びP12は、X軸方向において、中央位置Cよりも正極端子D1側に位置している。
【0022】
ハンドル20は、
図1及び
図2に示されるように、蓋本体30に対して回動可能に取り付けられている。詳細には、ハンドル20は、アーム部21、アーム部22、及びグリップ部23を備えている。アーム部21及び22の基端部は、盛上部32の側壁部32aにそれぞれ回動可能に取り付けられている。本実施形態では、アーム部21の基端部に設けられた孔に、盛上部32の側壁部32aに設けられた軸部P21が回動可能に嵌め込まれている(通されている)。また、アーム部22の基端部に設けられた孔に、盛上部32の側壁部32aに設けられた軸部P22が回動可能に嵌め込まれている(通されている)。
【0023】
アーム部21の先端部には、グリップ部23の一方の端部が取り付けられている。アーム部22の先端部には、グリップ部23の他方の端部が取り付けられている。すなわち、ハンドル20は、略U字状を呈している。
【0024】
ここで、
図3及び
図4に示されるように、軸部P21は、盛上部32の側壁部32aにおけるY軸方向の一方の面に取り付けられ、側壁部32aからY軸方向に沿って突出している。軸部P22は、盛上部32の側壁部32aにおけるY軸方向の他方の面に取り付けられ、側壁部32aからY軸方向に沿って突出している。軸部P21及びP22は、X軸方向において、中央位置Cよりも負極端子D2側に位置している。
【0025】
ハンドル10は、軸部P11及びP12を軸として回動可能である。ハンドル20は、軸部P21及びP22を軸として回動可能である。すなわち、ハンドル10及び20は、それぞれY軸方向に沿った軸周りに回動する。ハンドル10とハンドル20とは、X軸方向において並べて配置されている。ハンドル10の回動の軸は、ハンドル20の回動の軸と平行となっている。上方から見たときに、ハンドル10及び20は、鉛蓄電池1の重心を挟むように蓋本体30に取り付けられている。ハンドル10は、上方から見たときに、蓋本体30に取り付けられた側に対して反対側の先端部(グリップ部13側)が鉛蓄電池1の重心G側を向くように回動する。同様に、ハンドル20は、上方から見たときに、蓋本体30に取り付けられた側に対して反対側の先端部(グリップ部23側)が鉛蓄電池1の重心G側を向くように回動する。
【0026】
盛上部32の上面には、
図1及び
図2に示されるようにハンドル10及び20が倒されたときにグリップ部13及び23を収容する溝32b(
図3及び
図4参照)が設けられている。なお、ハンドル10及び20が倒されたときに、ハンドル10のグリップ部13とハンドル20のグリップ部23とがX軸方向において並ぶように、ハンドル10及び20が蓋本体30に取り付けられている。
【0027】
蓋本体30には、
図5に示されるようにハンドル10及び20が立ち上げられたときに、蓋本体30に対するハンドル10及び20の回動範囲を規制する凸部S11、S12、S21及びS22が設けられている(
図3及び
図4参照)。
【0028】
図4及び
図5に示されるように、凸部S11及びS12は、蓋本体30に対するハンドル10の回動範囲を規制する。詳細には、凸部S11は、カバー部31の上面31aにおいて、軸部P11の近傍(軸部P11の下方位置)に設けられている。アーム部11の基端部には、外側に張り出す張出部11aが設けられている。アーム部11が回動させられたときに、凸部S11は、張出部11aにおける回動方向の端面と当接することによってアーム部11(ハンドル10)の回動範囲を規制する。凸部S11は、アーム部11(ハンドル10)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル10の開き角度αが90°未満となる回動位置で当接することによってハンドル10の回動範囲を規制する。より詳細には、凸部S11は、アーム部11の回動の軸方向に沿って見たときに、アーム部11の回動の軸とグリップ部13とを接続する直線L10と、カバー部31の上面31aとがなす角度αが90°未満となるようにハンドル10の回動範囲を規制する。
【0029】
図4に示されるように、凸部S12は、凸部S11と同様に、カバー部31の上面31aにおいて、軸部P12の近傍(軸部P12の下方位置)に設けられている。アーム部12の基端部には、外側に張り出す張出部12a(
図2参照)が設けられている。アーム部12が回動させられたときに、凸部S12は、張出部12aにおける回動方向の端面と当接することによってアーム部12(ハンドル10)の回動範囲を規制する。凸部S12は、アーム部12(ハンドル10)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル10の開き角度αが90°未満となる回動位置で当接することによってハンドル10の回動範囲を規制する。より詳細には、凸部S12は、アーム部12の回動の軸方向に沿って見たときに、アーム部12の回動の軸とグリップ部13とを接続する直線と、カバー部31の上面31aとがなす角度αが90°未満となるようにハンドル10の回動範囲を規制する。
【0030】
図4及び
図5に示されるように、凸部S21及びS22は、蓋本体30に対するハンドル20の回動範囲を規制する。詳細には、凸部S21は、カバー部31の上面31aにおいて、軸部P21の近傍(軸部P21の下方位置)に設けられている。アーム部21の基端部には、外側に張り出す張出部21aが設けられている。アーム部21が回動させられたときに、凸部S21は、張出部21aにおける回動方向の端面と当接することによってアーム部21(ハンドル20)の回動範囲を規制する。凸部S21は、アーム部21(ハンドル20)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル20の開き角度αが90°未満となる回動位置で当接することによってハンドル20の回動範囲を規制する。より詳細には、凸部S21は、アーム部21の回動の軸方向に沿って見たときに、アーム部21の回動の軸とグリップ部23とを接続する直線L20と、カバー部31の上面31aとがなす角度αが90°未満となるようにハンドル20の回動範囲を規制する。
【0031】
図4に示されるように、凸部S22は、凸部S21と同様に、カバー部31の上面31aにおいて、軸部P22の近傍(軸部P22の下方位置)に設けられている。アーム部22の基端部には、外側に張り出す張出部22a(
図2参照)が設けられている。アーム部22が回動させられたときに、凸部S22は、張出部22aにおける回動方向の端面と当接することによってアーム部22(ハンドル20)の回動範囲を規制する。凸部S22は、アーム部22(ハンドル20)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル20の開き角度αが90°未満となる回動位置で当接することによってハンドル20の回動範囲を規制する。より詳細には、凸部S22は、アーム部22の回動の軸方向に沿って見たときに、アーム部22の回動の軸とグリップ部13とを接続する直線と、カバー部31の上面31aとがなす角度αが90°未満となるようにハンドル20の回動範囲を規制する。
【0032】
蓋本体30は、
図4に示されるように、ハンドル10が軸部P11及びP12からそれぞれ外れることを防止する規制壁R11及びR12と、ハンドル20が軸部P21及びP22からそれぞれ外れることを防止する規制壁R21及びR22とを有している。
【0033】
規制壁R11は、
図4及び
図5に示されるように、カバー部31の上面31aにおいて軸部P11の近傍に設けられている。規制壁R11は、盛上部32の側壁部32aに対向している。
図5に示されるように、アーム部11(ハンドル10)が立ち上げられたときに、アーム部11の張出部11aは、規制壁R11と盛上部32の側壁部32aとによって挟まれた状態となる。すなわち、規制壁R11は、アーム部11が立ち上げられた状態においては、軸部P11の軸方向においてアーム部11の張出部11aに対向している。そして、規制壁R11は、軸部P11から外れる方向(軸部P11の先端に向かう方向)におけるアーム部11の移動を規制する。これにより、
図4及び
図5に示されるように、アーム部11が立ち上げられた状態においては、アーム部11が軸部P11から外れることが防止される。
【0034】
一方、
図1に示されるように、アーム部11(ハンドル10)が倒されたときに、アーム部11の張出部11aは、軸部P11の軸方向において規制壁R11と対向しない。これにより、アーム部11が倒された状態においては、アーム部11が軸部P11の先端に向かって移動させられることによって、アーム部11が軸部P11から取り外され得る。
【0035】
規制壁R12、R21及びR22は、規制壁R11と同様の構成及び機能を有している。このため、規制壁R12、R21及びR22について、説明を省略する。
【0036】
ここで、作業者等がハンドル10及び20を把持して鉛蓄電池1を持ち上げた場合について説明する。作業者等がハンドル10及び20をそれぞれ把持して鉛蓄電池1を持ち上げると、
図5に示されるように、ハンドル10及び20が立ち上げられた状態となる。このとき、ハンドル10及び20における蓋本体30への取り付け位置と鉛蓄電池1の重心Gとの位置関係により、開き角度αが90°となるようにハンドル10が蓋本体30に対して回動しようとする。これにより、アーム部11及び12が凸部S11及びS12にそれぞれ当接し、ハンドル10の回動が規制された状態となる。すなわち、鉛蓄電池1が持ち上げられた状態では、アーム部11及び12が常に凸部S11及びS12にそれぞれ当接した状態となる。同様に、ハンドル10及び20における蓋本体30への取り付け位置と鉛蓄電池1の重心Gとの位置関係により、開き角度αが90°となるようにハンドル20が蓋本体30に対して回動しようとする。このため、アーム部21及び22が凸部S21及びS22にそれぞれ当接し、ハンドル20の回動が規制された状態となる。すなわち、鉛蓄電池1が持ち上げられた状態では、アーム部21及び22が常に凸部S21及びS22にそれぞれ常に当接した状態となる。
【0037】
従って、蓋本体30及び電槽2がY軸方向に沿った軸周りに回動しようとしたときに、一方の方向(負極端子D2側が下がる方向)への回動は凸部S11及びS12によって規制され、他方の方向(正極端子D1側が下がる方向)への回動は凸部S21及びS22によって規制される。これにより、鉛蓄電池1が持ち上げられたときに、ハンドル10及び20に対する蓋3及び電槽2の揺動が抑制される。以上のように、この鉛蓄電池1は、ハンドル10及び20を用いて鉛蓄電池1が持ち上げられたときに、鉛蓄電池1の姿勢を安定させることができる。
【0038】
上記実施形態では、ハンドル10及び20の回動範囲を規制する規制部として凸部S11、S12、S21及びS22を用いたが、凸部S11等が用いられることに限定されない。以下、ハンドル10及び20の回動範囲を規制する規制部の変形例について説明する。
【0039】
(規制部の第1変形例)
本変形例では、
図6に示されるように、ハンドル10のアーム部11の回動範囲を規制する規制部として、壁部33が用いられる。具体的には、カバー部31の上面31aにおいて軸部P11の近傍には、壁部33が設けられている。壁部33は、上方から見たときに、軸部P11が壁部33よりも中央位置C側に位置するように配置されている。壁部33における中央位置C側の面が、ストッパ面S11Aとなっている。ハンドル10が立ち上げられたときに、アーム部11が壁部33のストッパ面S11Aに当接することによってアーム部11(ハンドル10)の回動が規制される。実施形態における凸部S11と同様に、壁部33のストッパ面S11Aは、アーム部11(ハンドル10)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル10の開き角度αが90°未満となるようにハンドル10の回動範囲を規制する。
【0040】
他のアーム部12、21及び22についてもアーム部11と同様に、軸部P12、P21及びP22の近傍にそれぞれ設けられた壁部のストッパ面によって、回動範囲が規制される。本変形例のように、ハンドル10及び20の回動範囲を規制する規制部として壁部33等が用いられる場合であっても、鉛蓄電池1は、実施形態における凸部S11等が用いられる場合と同様の作用効果を奏する。
【0041】
(規制部の第2変形例)
本変形例では、
図7に示されるように、ハンドル10のアーム部11の回動範囲を規制する規制部として、規制壁R11が用いられる。ここで、張出部11aは、アーム部11の他の部位よりも厚さが薄い。このため、アーム部11における張出部11aの端部は、張出部11aの厚さが薄いことによって形成された段差部11bとなっている。ハンドル10が立ち上げられると、アーム部11に設けられた段差部11bが規制壁R11の上端面S11Bに当接することによってアーム部11(ハンドル10)の回動が規制される。実施形態における凸部S11と同様に、規制壁R11の上端面S11Bは、アーム部11(ハンドル10)の回動の軸方向に沿って見たときに、カバー部31の上面(蓋本体の上面)31aに対するハンドル10の開き角度αが90°未満となる回動位置で当接することによってハンドル10の回動範囲を規制する。
【0042】
他のアーム部12、21及び22についてもアーム部11と同様に、規制部としての規制壁R12、R21及びR22によって、回動範囲が規制される。本変形例のように、ハンドル10及び20の回動範囲を規制する規制部として規制壁R11等が用いられる場合であっても、鉛蓄電池1は、実施形態と同様の作用効果を奏する。また、ハンドル10等が軸部P11等から外れることを防止する規制壁R11等を、ハンドル10等の回動範囲を規制する規制部としても機能させることができる。これにより、蓋3の構成が簡素化される。
【0043】
(ハンドルの変形例)
次に、ハンドルを一つのみ備える鉛蓄電池の蓋の変形例について説明する。
図8に示されるように、鉛蓄電池1Aは、電槽2、及び蓋3Aを備えている。蓋3Aは、ハンドル10を備えている。本変形例におけるハンドル10は、蓋本体30に対して取り付けられる位置が異なっている点以外、実施形態におけるハンドル10と同様の構成となっている。また、本変形例におけるハンドル10は、実施形態におけるハンドル10と同様に、凸部S11及びS12によって回動範囲が規制されている。
【0044】
ハンドル10は、中央位置Cよりも正極端子D1側の位置において蓋本体30に回動可能に取り付けられている。本変形例におけるハンドル10は、上方から見たときに、蓋本体30に取り付けられた側に対して反対側の先端部(グリップ部13側)が鉛蓄電池1Aの重心G側を向くように回動する。また、ハンドル10が立ち上げられて凸部S11及びS12によってハンドル10の回動が規制された状態で、ハンドル10のグリップ部13が鉛蓄電池1Aの重心Gに重なるようにハンドル10が蓋本体30に取り付けられている。
【0045】
ここで、作業者等がハンドル10を把持して鉛蓄電池1Aを持ち上げた場合について説明する。作業者等がハンドル10を把持して鉛蓄電池1Aを持ち上げると、ハンドル10が立ち上げられた状態となる。このとき、ハンドル10における蓋本体30への取り付け位置と鉛蓄電池1Aの重心Gとの位置関係によって、蓋本体30及び電槽2がハンドル10に対して回動しようとする。上述したように、ハンドル10は、先端部が鉛蓄電池1Aの重心G側を向くように回動する。凸部S11及びS12は、ハンドル10の開き角度αが90°未満となるように回動範囲を規制する。このため、ハンドル10に対する蓋本体30及び電槽2の回動は、凸部S11及びS12によって規制される。すなわち、ハンドル10によって鉛蓄電池1Aが持ち上げられた状態では、ハンドル10に対する蓋本体30及び電槽2の回動が凸部S11及びS12によって常に規制された状態となる。従って、蓋本体30及び電槽2がハンドル10に対して回動しようとしたときに、一方の方向(負極端子D2側が下がる方向)への回動は凸部S11及びS12によって規制され、他方の方向(正極端子D1側が下がる方向)への回動は鉛蓄電池の重さによって抑制される。これにより、鉛蓄電池1Aが持ち上げられたときに、ハンドル10に対する蓋本体30及び電槽2の揺動が抑制される。以上のように、鉛蓄電池1Aは、ハンドル10を用いて鉛蓄電池1Aが持ち上げられたときに、鉛蓄電池1Aの姿勢を安定させることができる。
【0046】
また、ハンドル10が立ち上げられた状態では、上方から見たときに、ハンドル10のグリップ部13が鉛蓄電池1Aの重心Gに重なっている。この場合、ハンドル10の回動の軸方向に沿って見たときに、グリップ部13と、ハンドル10の回動の軸(軸部P11、P12)と、鉛蓄電池1Aの重心Gとが同一直線上に位置する。このため、ハンドル10を用いて鉛蓄電池1Aが持ち上げられたときに、電槽2が傾くことが抑制される。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ハンドル10及び20は、Y軸方向に沿った軸周りに回動したが、X軸方向に沿った軸周りに回動してもよい。蓋3及び3Aは、上方から見たときに、略正方形状を呈していてもよい。ハンドル10のアーム部11及び12は、基端部から先端部に向かって湾曲していてもよい。同様に、ハンドル20のアーム部21及び22は、基端部から先端部に向かって湾曲していてもよい。
【0048】
また、ハンドルの変形例として説明した鉛蓄電池1Aの蓋3Aにおいて、ハンドル10の回動が規制された状態で、ハンドル10のグリップ部13が鉛蓄電池1Aの重心Gに重なっていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ハンドルを用いて鉛蓄電池が持ち上げられたときに、鉛蓄電池の姿勢を安定させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1A…鉛蓄電池、2…電槽、3、3A…蓋、10、20…ハンドル、11、12、21、22…アーム部、13、23…グリップ部、30…蓋本体、33…壁部(規制部)、G…重心、P11、P12、P21、P22…軸部、R11、R12、R21、R22…規制壁(規制部)、S11、S12、S21、S22…凸部(規制部)。