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特許7030053変性共役ジエン系重合体の製造方法及び重合体組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体の製造方法及び重合体組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/44 20060101AFI20220225BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
C08C19/44
C08L15/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018532008
(86)(22)【出願日】2017-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2017028416
(87)【国際公開番号】W WO2018025998
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2016154894
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016160838
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017070428
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】青嶋 紘
(72)【発明者】
【氏名】今井 昌子
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 勝成
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/123164(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/123163(WO,A1)
【文献】特開2001-139633(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133097(WO,A1)
【文献】特開2010-077412(JP,A)
【文献】特開2008-260943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F8/00-8/50
C08L7/00-21/02
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物を含む単量体に基づく単位と、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を有する変性剤に基づく単位とを有する共役ジエン系重合体に、有機金属化合物を作用させる工程(但し、前記共役ジエン系重合体を水添する工程を除く)を備え、
前記有機金属化合物が、有機アルカリ金属化合物及び有機アルカリ土類金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種である、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン系重合体が、末端に前記変性剤に基づく単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体が、分子鎖中に前記変性剤に基づく単位を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記変性剤が、式(5)で表される構造を有する化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【化1】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を表し、Mはケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を表し、Lはハロゲン原子又はヒドロカルビルオキシ基を表し、R及びLが複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Mがケイ素原子、スズ原子又はゲルマニウム原子であるとき、nは0を表し、m及びlはそれぞれ独立にm+l=4を満たす0~4の整数を表し、Mがリン原子であるとき、nは0又は1を表し、m及びlはそれぞれ独立にm+l=3を満たす0~3の整数を表す。
【請求項5】
前記変性剤が、式(6)で表される構造を有する化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【化2】

(式中、X、X及びXはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子、又は、前記共役ジエン系重合体の活性末端と反応しうる官能基を表し、R61及びR62はそれぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R61及びR62が複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Aは、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有する有機基を表し、環構造を有していてもよく、X、X又はXの構造の一部がAの一部と結合していてもよく、aは0~10の整数を表す。)
【請求項6】
前記変性剤が、式(7)で表される構造を有する化合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【化3】

(式中、R71は水素原子又はヒドロカルビル基を表し、sは0又は1を表し、R72はヒドロカルビレン基を表し、X、X及びXはそれぞれ独立に、置換アミノ基、又は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが置換アミノ基である。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により作製される変性共役ジエン系共重合体100質量部に対して、補強材を10~150質量部混練する工程を備える、重合体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体の製造方法、及び、該重合体を含有する重合体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して省燃費化の要求が強くなっており、自動車用タイヤに用いる重合体組成物に対しても、省燃費性に優れることが求められている。自動車タイヤ用の重合体組成物としては、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体等の共役ジエン系重合体と、カーボンブラック、シリカ等の充填剤とを含有する重合体組成物などが用いられている。例えば、アルキルリチウムを重合開始剤としてブタジエンを重合又はブタジエンとスチレンとを共重合した共役ジエン系重合体を、ジアルキルアミノ基を有するアルコキシシランで変性した重合体を含有する重合体組成物(特許文献1、2参照。)が、省燃費性が良好な重合体組成物として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-186748号公報
【文献】特開2005-290355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような省燃費性が良好な重合体組成物は、経時により粘度が上昇してしまうことがあった。そこで、共役ジエン系重合体を用いた重合体組成物には、省燃費性が良好であると共に、貯蔵安定性を有することが求められる。かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、省燃費性能が良好であり、かつ、優れた貯蔵安定性を有する重合体組成物を得ることのできる変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、共役ジエン化合物を含む単量体に基づく単位と、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を有する変性剤に基づく単位とを有する共役ジエン系重合体に、有機金属化合物を作用させる工程を備える、変性共役ジエン系重合体の製造方法に係る。
【0006】
本発明はまた、上記の方法により作製される変性共役ジエン系共重合体100質量部に対して、補強材を10~150質量部混練する工程を備える、重合体組成物の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、省燃費性能が良好であり、かつ、優れた貯蔵安定性を有する重合体組成物を得ることのできる変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書では、ヒドロカルビル基は炭化水素から1個の水素原子を除いた1価の基を表す。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2個の水素原子を除いた2価の基を表す。ヒドロカルビルオキシ基は、ヒドロキシ基の水素原子がヒドロカルビル基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。置換基を有するアミノ基(以下、置換アミノ基と記すこともある。)は、アミノ基の少なくとも1個の水素原子が、水素原子以外の1価の原子又は1価の基に置き換えられた構造を有する基、又はアミノ基の2個の水素原子が2価の基で置き換えられた構造を有する基を表す。置換基を有するヒドロカルビル基(以下、置換ヒドロカルビル基と記すこともある。)は、ヒドロカルビル基の少なくとも1個の水素原子が置換基で置き換えられた構造を有する1価の基を表す。窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基とは、ヒドロカルビレン基の水素原子が除かれている炭素原子以外の炭素原子及び/又は水素原子が、窒素原子及び/又は酸素原子を有する基で置き換えられた構造を有する2価の基を表す。
【0010】
[変性共役ジエン系重合体の製造方法]
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、共役ジエン化合物を含む単量体に基づく単位と、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を有する変性剤に基づく単位とを有する共役ジエン系重合体に、有機金属化合物を作用させる工程を備える。この工程は、前記共役ジエン系重合体の前記変性剤に基づく単位に、有機金属化合物を反応させる工程であってよい。
【0011】
本実施形態に係る共役ジエン系重合体は、変性剤に基づく単位を当該重合体の末端に有していてもよく、変性剤に基づく単位を当該重合体の分子鎖中に有していてもよく、変性剤に基づく単位を当該重合体の末端及び分子鎖中に有していてもよい。一般に変性剤の官能基数が多いと、燃費性能に優れる傾向にあり、貯蔵安定性に劣る傾向にある。
【0012】
変性剤に基づく単位を重合体の末端に有する場合、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、以下の方法により作製してもよい。
【0013】
まず、工程1として、重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させ、活性末端を有する重合体を得る。次に、工程2として、この重合体の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤とこの重合体とを反応させて、該重合体の末端に前記変性剤に基づく単位を導入する。このとき、変性剤を介して2以上の重合体がつながった2量体以上の重合体が生成し、共存していてもよい。そして、工程3として、前記変性剤に基づく単位を有する重合体に、有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に、有機金属化合物を反応させることで、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体を得る。
【0014】
重合体の分子鎖中に変性剤に基づく単位を導入する場合は、共役ジエン化合物と共重合可能な官能基を有する前記変性剤を用いることができる。例えば、工程1’として、重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させる際に、共役ジエン化合物と共重合可能な官能基を有する前記変性剤を共に重合させることで、重合体の分子鎖中に前記変性剤に基づく単位を有する重合体を得る。次いで、工程3’として、前記変性剤に基づく単位を有する重合体に、有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に、有機金属化合物を反応させることで、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体を得る。この場合、工程2’として、重合体の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤と、工程1’で得られた重合体とを反応させて、該重合体の末端に前記変性剤に基づく単位を導入することで、変性剤に基づく単位を当該重合体の末端及び分子鎖中に有する共役ジエン系重合体を得ることができ、その後に、前記工程3’を行うことで、対応する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0015】
また、重合体の分子鎖中に変性剤に基づく単位を導入する場合は、共役ジエン化合物と共重合可能な共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物であって、変性剤と反応しうる部位へ変換可能な官能基を有する化合物を用いることができる。例えば、工程1”として、重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させる際に、共役ジエン化合物と共重合可能な共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物であって、変性剤と反応しうる部位へ変換可能な官能基を有する化合物(例えば、4-メチルスチレン)を共に重合させて重合体を得た後に、変性剤と反応しうる部位へと当該官能基の変換を行い(例えば、4-メチルスチレンに基づく単位を有する重合体に有機金属化合物を作用させてメチル基から水素を引き抜き)、当該変換後の官能基と反応しうる官能基を有する前記変性剤とそれとを反応させることで、重合体の分子鎖中に前記変性剤に基づく単位を有する重合体を得ることができる。次いで、工程3”として、前記変性剤に基づく単位を有する重合体に、有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に、有機金属化合物を反応させることで、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体を得る。この場合、工程2”として、重合体の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤と、工程1”で得られた重合体とを反応させて、該重合体の末端に前記変性剤に基づく単位を導入することで、変性剤に基づく単位を当該重合体の末端及び分子鎖中に有する共役ジエン系重合体を得ることができ、その後に、前記工程3”を行うことで、対応する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0016】
以下、本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体の製造に用いることができる各成分について、説明する。
【0017】
(単量体)
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン及び1,3-ヘキサジエンが挙げられ、好ましくは、1,3-ブタジエン又はイソプレンである。
【0018】
本実施形態に係る単量体は、共役ジエン化合物と共に、芳香族ビニル化合物を含むことができる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン及びジビニルナフタレンが挙げられ、好ましくはスチレンである。
【0019】
単量体中の芳香族ビニル化合物の含有量は、単量体の総量を100質量%として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは14質量%以上である。また、芳香族ビニル化合物の含有量は、省燃費性を高めるために、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下である。
【0020】
(ビニル化剤)
上記共役ジエン系重合体の作製は、共役ジエン化合物に由来する単量体単位のビニル結合量を調整する剤、共役ジエン系重合体鎖中での共役ジエン化合物に由来する単量体単位と芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位とそれら以外の化合物に由来する単量体単位の分布を調整する剤(以下、総称して「調整剤」と記す。)の存在下で行ってもよい。
【0021】
調整剤としては、エーテル化合物、第三級アミン、ホスフィン化合物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド等を挙げることができる。エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等の環状のエーテル;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等の脂肪族モノエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等の脂肪族ジエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等の脂肪族トリエーテル;ジフェニルエーテル、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、3,4-ジメトキシトルエン等の芳香族エーテルを挙げることができる。第三級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、1,1,2,2-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン及びキノリンを挙げることができる。ホスフィン化合物として、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン及びトリフェニルホスフィンを挙げることができる。アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ペントキシド及びカリウム-tert-ペントキシドを挙げることができる。アルカリ金属フェノキシドとしては、例えば、ナトリウムフェノキシド及びカリウムフェノキシドを挙げることができる。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0022】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、アルカリ金属、アルカリ金属と極性化合物との錯体、アルカリ金属を有するオリゴマー、有機アルカリ金属化合物、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒、活性末端を有する共役ジエン系重合体等を挙げることができる。重合開始剤として、好ましくは、有機アルカリ金属化合物である。これらの重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0023】
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムを挙げることができる。アルカリ金属と極性化合物との錯体としては、例えば、カリウム-テトラヒドロフラン錯体及びカリウム-ジエトキシエタン錯体を挙げることができる。アルカリ金属を有するオリゴマーとしては、例えば、α-メチルスチレンテトラマーのナトリウム塩等を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、窒素原子を含有する基を有する有機アルカリ金属化合物及びヒドロカルビル基を有する有機アルカリ金属化合物を挙げることができる。
【0024】
ヒドロカルビル基を有する有機アルカリ金属化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-ブテン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼン、2,3,5-トリス(リチオメチル)ナフタレン、1,4,5-トリス(リチオメチル)ナフタレン、ナトリウムナフタレニド、ナトリウムビフェニリド及びカリウムナフタレニドを挙げることができ、好ましくはn-ブチルリチウムである。
【0025】
窒素原子を含有する基を有する有機アルカリ金属化合物として、好ましくは、下記式(2)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物である。
【化1】
式(2)中、R21及びR22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基又はトリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R21の一部とR22の一部とが結合して成る、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基、-Si(R32-(CH-Si(R32-で表される炭素原子数5以上20以下の基(R32はヒドロカルビル基を表し、xは1以上10以下の整数である。)、又は、-Si(R33-(CH-で表される炭素原子数4以上20以下の基(R33はヒドロカルビル基を表し、yは2以上11以下の整数である。)を形成していてもよい。
【0026】
21及びR22におけるヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基を挙げることができる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基及び2-プロピニル基を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、トリル基及びキシリル基を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基を挙げることができる。ヒドロカルビル基として、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。
【0027】
21及びR22における置換基を有するヒドロカルビル基としては、例えば、1以上の水素原子が置換アミノ基で置換されたヒドロカルビル基、1以上の水素原子がヒドロカルビルオキシ基で置換されたヒドロカルビル基、1以上の水素原子がトリアルキルシリル基で置換されたヒドロカルビル基、1以上の水素原子がトリアルコキシシリル基で置換されたヒドロカルビル基等を挙げることができる。
【0028】
ここで、置換アミノ基としては、例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等のN,N-ジアルキルアミノ基、1-ピロリル基、1-ピペリジル基、1-イミダゾリル基等の環状アミノ基が挙げられる。
【0029】
1以上の水素原子が置換アミノ基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、N,N-ジメチルアミノメチル基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル基、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル基、3-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アルキル基;4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-(N,N-ジエチルアミノ)フェニル基、3-(N,N-ジエチルアミノ)フェニル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アリール基;4-(N,N-ジメチルアミノ)メチルフェニル基、4-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]フェニル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アルキルアリール基;3-(1-ピロリジニル)プロピル基、3-(1-ピペリジニル)プロピル基、3-(1-イミダゾリル)プロピル基等の環状アミノ基で置換されたアルキル基;4-(1-ピロリジニル)フェニル基、4-(1-ピペリジニル)フェニル基、4-(1-イミダゾリル)フェニル基等の環状アミノ基で置換されたアリール基;4-[2-(1-ピロリジニル)エチル]フェニル基、4-[2-(1-ピペリジニル)エチル]フェニル基、4-[2-(1-イミダゾリル)エチル]フェニル基等の環状アミノ基で置換されたアルキルアリール基を挙げることができる。
【0030】
1以上の水素原子がヒドロカルビルオキシ基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基を挙げることができる。
1以上の水素原子がトリアルキルシリル基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、トリメチルシリルメチル基、2-トリメチルシリルエチル基、3-トリメチルシリルプロピル基等のトリアルキルシリルアルキル基を挙げることができる。
1以上の水素原子がトリアルコキシシリル基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、トリメトキシシリルメチル基、2-トリメトキシシリルエチル基、3-トリメトキシシリルプロピル基等のトリアルコキシシリルアルキル基を挙げることができる。
【0031】
置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、炭素原子数1以上20以下の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が好ましく、炭素原子数1以上20以下のヒドロカルビル基がより好ましく、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基が一層好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0032】
21及びR22におけるトリヒドロカルビルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、tert-ブチル-ジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基を挙げることができ、好ましくは、トリメチルシリル基又はトリエチルシリル基である。
【0033】
21の一部とR22の一部とが結合して成る窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基とは、ヒドロカルビレン基、又は、窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基である。
【0034】
ヒドロカルビレン基としては、例えば、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、アリーレン基がアルキレン基に結合して成る基(以下、アリーレン-アルキレン基と称することがある。)等が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基及び2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基を挙げることができる。アルケンジイル基としては、例えば、ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基を挙げることができる。アリーレン-アルキレン基として、例えば、フェニレン-アルキレン基、ナフチレン-アルキレン基及びビフェニレン-アルキレン基を挙げることができる。ヒドロカルビレン基として、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4以上7以下のアルキレン基である。
【0035】
窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基としては、例えば、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、-CH-CH-O-CH-CH-で表される基等を挙げることができ、好ましくは、-CH=N-CH-CH-、又は-CH-CH-O-CH-CH-で表される基である。
窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、炭素原子数3以上20以下の窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基が好ましく、炭素原子数3以上20以下のヒドロカルビレン基が好ましく、炭素原子数4以上7以下のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が更に好ましい。
【0036】
21の一部とR22の一部とが結合して成る-Si(R35-(CH-Si(R35-で表される炭素原子数5以上20以下の基(R35はヒドロカルビル基を表し、xは1以上10以下の整数を表す。)としては、-Si(CH-CH-CH-Si(CH-で表される基等を挙げることができる。
21の一部とR22の一部とが結合して成る-Si(R36-(CH-で表される炭素原子数4以上20以下の基(R36はヒドロカルビル基を表し、yは2以上11以下の整数を表す。)としては、-Si(CH-CH-CH-CH-で表される基等を挙げることができる。
【0037】
21及びR22は、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基を表すか、あるいは、R21の一部とR22の一部とが結合して成るヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すか、あるいは、R21の一部とR22の一部とが結合して成る炭素原子数4以上7以下のアルキレン基を表すことがより好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが更に好ましく、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表すことが一層好ましい。
【0038】
式(2)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物として、具体的には、ジメチルアミノプロピルリチウム、ジエチルアミノプロピルリチウム、tert-ブチルジメチルシリロキシプロピルリチウム、N-モルホリノプロピルリチウム、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等が挙げられる。
【0039】
式(2)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物の製造方法としては、式(3)で表される化合物を用いる方法、有機アルカリ金属化合物と式(2)で表される基を有する2級アミン化合物とを反応させる方法等を挙げることができる。
【化2】
式(3)中、R21及びR22は、それぞれ、式(2)におけるR21及びR22と同義であり、R31は炭素原子数6以上100以下のヒドロカルビレン基を表し、Mはアルカリ金属原子を表す。
【0040】
31の炭素原子数6以上100以下のヒドロカルビレン基は、好ましくは炭素原子数7以上90以下のヒドロカルビレン基であり、より好ましくは炭素原子数8以上80以下のヒドロカルビレン基である。
【0041】
31の炭素原子数8以上80以下のヒドロカルビレン基は、好ましくは式(3-1)で表される基である。
【化3】
式(3-1)中、R34は共役ジエン化合物由来の構造単位及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構造単位を表し、i及びfは1以上10以下の整数である。なお、式(3-1)中の-(CHが式(3)の窒素原子に結合し、R34が式(3)のMに結合する。
【0042】
34における共役ジエン化合物由来の構造単位及び/又は芳香族ビニル化合物由来の構造単位として、好ましくはイソプレン由来の構造単位、スチレン由来の構造単位、又はブタジエン由来の構造単位である。
fとして、好ましくは1以上5以下の整数である。
iとして、好ましくは2以上4以下の整数であり、より好ましくは3である。
【0043】
上記式(3-1)で表される基として、好ましくは、R34がイソプレン由来の構造単位であり、iが1である基、R34がイソプレン由来の構造単位を表し、iが2である基、又はR34がイソプレン由来の構造単位を表し、iが3である基である。
Mのアルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムを挙げることができ、好ましくはリチウムである。
【0044】
式(3)で表される化合物のうち、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基を表し、Mがリチウムを表す化合物としては、(ジアルキルアミノ)アルキルリチウム化合物にイソプレンを反応させて得られる化合物を挙げることができる。このような化合物として、例えば、3-(ジメチルアミノ)プロピルリチウム、3-(ジエチルアミノ)プロピルリチウム、3-(ジブチルアミノ)プロピルリチウム、4-(ジメチルアミノ)ブチルリチウム、4-(ジエチルアミノ)ブチルリチウム、4-(ジプロピルアミノ)ブチルリチウム、3-(ジブチルアミノ)ブチルリチウム等を挙げることができる。
【0045】
式(3)で表される化合物のうち、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、R21の一部とR22の一部とが結合して成るヒドロカルビレン基を表し、Mがリチウムを表す化合物としては、環状アミノ基を有するアルキルリチウム化合物にイソプレンを反応させて得られる化合物を挙げることができる。環状アミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、3-(1-ピロリジニル)プロピルリチウム、3-(1-ピペリジニル)プロピルリチウム、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピルリチウム、3-[1-(1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル)]プロピルリチウム等を挙げることができる。
【0046】
式(3)で表される化合物のうち、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、R21の一部とR22の一部とが結合して成る窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基を表し、Mがリチウムを表す化合物としては、環状アミノ基を有するアルキルリチウム化合物にイソプレンを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。環状アミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、3-(1-モルホリノ)プロピルリチウム、3-(1-イミダゾリル)プロピルリチウム、3-(4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル)プロピルリチウム等を挙げることができる。
【0047】
式(3)で表される化合物のうち、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、R21の一部とR22の一部とが結合して成る-Si(R35-(CH-Si(R35-で表される炭素原子数5以上20以下の基(R35はヒドロカルビル基を表し、xは1以上10以下の整数である。)を表し、Mがリチウムを表す化合物としては、3-(2,2,5,5-テトラメチル-1-アザ-2,5-ジシラ-1-シクロペンチル)プロピルリチウムと、イソプレン、ブタジエン又はスチレンとを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
【0048】
式(3)で表される化合物のうち、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、R21の一部とR22の一部とが結合して成る-Si(R36-(CH-で表される炭素原子数4以上20以下の基(R36はヒドロカルビル基を表し、yは2以上11以下の整数である。)を表し、Mがリチウムを表す化合物としては、3-(2,2,-ジメチル-1-アザ-2-シラ-1-シクロペンチル)プロピルリチウムと、イソプレン、ブタジエン又はスチレンとを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
【0049】
式(3)で表される化合物としては、好ましくは、R31が式(3-1)で表される基を表し、R21及びR22が、それぞれ独立してヒドロカルビル基を表し、Mがリチウムを表す化合物であり、より好ましくは、R21及びR22が、それぞれ独立して炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、Mがリチウムを表し、R31が式(3-1)で表される基であり、式(3-1)中のR34がイソプレン由来の構造単位を表し、fが1以上5以下であり、iが2以上4以下である化合物であり、更に好ましくは、3-(ジメチルアミノ)プロピルリチウム又は3-(ジエチルアミノ)プロピルリチウムに、イソプレンを反応させて得られる化合物である。
【0050】
式(3)で表される化合物は、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
重合開始剤として活性末端を有する共役ジエン系重合体を用いてもよい。活性末端を有する共役ジエン系重合体は、重合開始剤と共役ジエン化合物を含む単量体とを反応させて得ることができる。重合開始剤としては上述した化合物と同様のものを用いることができる。活性末端を有する共役ジエン系重合体に用いる単量体は特に制限されないが、当該単量体として、例えば、上述した共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び共役ジエン化合物と共重合可能な化合物を用いることができる。活性末端を有する共役ジエン系重合体は単量体単位としてイソプレンのみ、又はイソプレンと芳香族ビニル化合物とを含んでいることが好ましい。
【0052】
単量体の重合に使用する重合開始剤の使用量は、単量体の総量100gあたり、好ましくは0.01mmol~15mmolである。
【0053】
(溶媒)
上記工程1、1’及び1”の重合は、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒としては、上記工程1、1’又は1”の重合に支障のないものを用いればよく、炭化水素溶媒が好ましい。
【0054】
炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素等を用いることができる。脂肪族炭化水素としては、例えば、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、n-ヘキサン、プロペン、1-ブテン、iso-ブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン及び2-ヘキセンが挙げられる。また、芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンが挙げられる。脂環族炭化水素としては、例えば、シクロペンタン及びシクロヘキサンが挙げられる。炭化水素溶媒は、1種単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。炭化水素溶媒として、工業用ヘキサンのような脂肪族炭化水素及び脂環族炭化水素の混合物を用いてもよい。
【0055】
(重合)
溶媒中で単量体の重合を行う場合、溶媒中の単量体の濃度は、通常、1~50質量%であり、好ましくは5~30質量%である。
【0056】
重合温度は、通常25~100℃であり、好ましくは35~90℃であり、より好ましくは50~80℃である。重合時間は、通常10分~5時間である。
【0057】
(変性剤)
本実施形態に係る変性剤としては、ケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を有する化合物を用いることができる。変性剤は、共役ジエン系重合体の活性末端と反応し得る官能基及び/又は共役ジエン化合物と共重合可能な官能基を有する化合物を含むことが好ましい。これらの変性剤は2種類以上を併用してもよい。
【0058】
変性剤は、式(5)で表される構造を有する化合物を含むことができる。
【化4】
【0059】
式(5)中、Rはアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を表し、Mはケイ素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を表し、Lはハロゲン原子又はヒドロカルビルオキシ基を表し、R及びLが複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Mがケイ素原子、スズ原子又はゲルマニウム原子であるとき、nは0を表し、m及びlはそれぞれ独立にm+l=4を満たす0~4の整数を表し、Mがリン原子であるとき、nは0又は1を表し、m及びlはそれぞれ独立にm+l=3を満たす0~3の整数を表す。
【0060】
における、アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。アルケニル基としては、炭素原子数2~12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基が挙げられる。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、トリル基及びキシリル基が挙げられる。
【0061】
における、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、アルコキシ基及びアリールオキシ基を挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素原子数6~12のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基及びベンジルオキシ基が挙げられる。
【0062】
式(5)で表される構造を有する化合物としては、例えば、Mがケイ素原子であるシラン化合物、Mがスズ原子であるスズ化合物、Mがゲルマニウム原子であるゲルマニウム化合物及びMがリン原子であるリン化合物が挙げられる。
【0063】
シラン化合物としては、例えば、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、クロロトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジクロロジメトキシシラン及びトリクロロメトキシシランが挙げられる。
スズ化合物としては、例えば、四塩化スズ、モノメチルトリクロロスズ、モノエチルトリクロロスズ、モノブチルトリクロロスズ、モノフェニルトリクロロスズ、テトラメトキシスズ及びテトラエトキシスズが挙げられる。
ゲルマニウム化合物としては、例えば、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、四ヨウ化ゲルマニウム、メチルトリクロロゲルマニウム、エチルトリクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、ジメチルジクロロゲルマニウム、ジエチルジクロロゲルマニウム、ジブチルジクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムが挙げられる。
リン化合物としては、例えば、トリクロルホスフィン、トリブロモホスフィン等のハロゲン化リン化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリメチルホスフェイト、トリエチルホスフェイト等のリン酸エステル化合物が挙げられる。
【0064】
変性剤は、式(6)で表される構造を有する化合物を含むことができる。
【化5】
【0065】
式(6)中、X、X及びXはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子、又は、共役ジエン系重合体の活性末端と反応しうる官能基を表し、R61及びR62はそれぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R61及びR62が複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Aは、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有する有機基(酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子又はケイ素原子のいずれか、あるいは複数を含む有機基)を表し、Aは環構造を有していてもよく、X、X又はXの構造の一部がAの一部と結合していてもよい。すなわち、Aは、X、X又はXを介して式(6)中のケイ素原子と結合していてもよい。aは0~10の整数を表す。
【0066】
、X及びXにおける、ヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基及びアラルキル基が挙げられる。アルキル基としては、好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。アリール基としては、好ましくは炭素原子数6~12のアリール基であり、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、トリル基及びキシリル基が挙げられる。アルケニル基としては、好ましくは炭素原子数2~12のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基が挙げられる。
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1~12のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基及びtert-ブトキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、好ましくは炭素原子数6~12のアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ基及びベンジルオキシ基が挙げられる。ヒドロカルビルオキシ基として、好ましくはアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
共役ジエン系重合体の活性末端と反応しうる官能基としては、例えば、エポキシ基を有する炭化水素基及びカルボニル基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0067】
61及びR62における、ヒドロカルビル基としては、好ましくは炭素原子数1~4のヒドロカルビル基であり、より好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基又はエチル基である。R61が複数ある場合、複数のR61は互いに同じであっても異なっていてもよく、R62が複数ある場合、複数のR62は互いに同じであっても異なっていてもよい。
aは、省燃費性を高める観点から、好ましくは3以上であり、製造時の経済性を高める観点から、好ましくは4以下である。
【0068】
少なくとも窒素原子を有する有機基であるAとしては、例えば、式(6-1)で表される基を挙げることができる。
【化6】
【0069】
式(6-1)中、R63及びR64はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基又はトリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R63の一部とR64の一部とが結合して成る、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
【0070】
ここで、式(6-1)で表される基は、R63の一部とR64の一部とが結合していない場合、非環状アミノ基であり、R63とR64とが結合している場合、環状アミノ基である。
【0071】
63及びR64における、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基は、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等の炭素原子数1~12のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の炭素原子数2~12のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数6~12のアリール基を挙げることができ、好ましくはアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはメチル基、エチル基又はベンジル基である。
置換ヒドロカルビル基としては、例えば、オキシラニル基、テトラヒドロフラニル基等のオキサシクロアルキル基を挙げることができ、好ましくはテトラヒドロフラニル基である。
【0072】
本明細書において、オキサシクロアルキル基は、シクロアルキル基の脂環上のCHが酸素原子に置き換わった基を表す。
【0073】
63及びR64における、トリヒドロカルビルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、tert-ブチル-ジメチルシリル基を挙げることができ、好ましくはトリメチルシリル基である。
【0074】
63の一部及びR64の一部が結合して成る、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有していてもよいヒドロカルビレン基は、ヒドロカルビレン基、又は、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有するヒドロカルビレン基(ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基)である。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基等の炭素原子数2~12のアルキレン基を挙げることができ、中でも炭素原子数4~7のアルキレン基が好ましく、ペンタメチレン基又はヘキサメチレン基が特に好ましい。
ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、ケイ素原子含有ヒドロカルビレン基、窒素原子含有ヒドロカルビレン基及び酸素原子含有ヒドロカルビレン基を挙げることができる。
ケイ素原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、-Si(CH-CH-CH-Si(CH-で表される基を挙げることができる。窒素原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、-CH=N-CH=CH-で表される基及び-CH=N-CH-CH-で表される基を挙げることができる。酸素原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、-CH-CH-O-CH-CH-で表される基を挙げることができる。
【0075】
少なくとも酸素原子を有する有機基であるAとしては、例えば、式(6-2)で表される基を挙げることができる。
【化7】
【0076】
式(6-2)中、Xは酸素原子を有していてもよい炭素原子数が1~6のヒドロカルビレン基を表し、R65は水素原子又は炭素原子数が1~6のヒドロカルビル基を表す。
【0077】
における、酸素原子を有していてもよい炭素原子数が1~6のヒドロカルビレン基としては、例えば、無置換のヒドロカルビレン基、及び、酸素原子を有する基を置換基として有するヒドロカルビレン基を挙げることができる。
として、具体的には、ヒドロカルビレン基及びヒドロカルビレンオキシ基を挙げることができ、より具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1-オキシエチレン基、1-オキシトリメチレン基及び1-オキシテトラメチレン基を挙げることができる。Xとして好ましくは、1-オキシトリメチレン基である。
【0078】
65における、炭素原子数が1~6のヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基及びアリール基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基及びフェニル基を挙げることができる。R65として好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0079】
少なくとも硫黄原子を有する有機基であるAとしては、例えば、式(6-3)で表される基を挙げることができる。
【化8】
【0080】
式(6-3)中、R66はトリヒドロカルビルシリル基を表す。トリヒドロカルビルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチル-ジメチルシリル基を挙げることができ、好ましくはトリメチルシリル基又はトリエチルシリル基である。
【0081】
少なくともケイ素原子を有する有機基であるAとしては、例えば、式(6-4)で表される基を挙げることができる。すなわち、式(6)で表される化合物としては、例えば、Aとして式(6-4)で表される基を有するポリオルガノシロキサン化合物を挙げることができる。
【化9】
【0082】
式(6-4)中、R66、R67及びR68はそれぞれ独立に、ヒドロカルビル基、又は、ヒドロカルビレンオキシ基の繰り返し単位を有する基を表し、X及びXはそれぞれ独立に、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビレンオキシ基の繰り返し単位を有する基、ハロゲン原子、又は、共役ジエン系重合体の活性末端と反応しうる官能基を表し、gは0~600の整数を表し、複数存在するR66及びXが複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0083】
66、R67、R68、X及びXにおける、ヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、トリル基及びキシリル基が挙げられる。アラルキル基としては、炭素原子数7~13のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基が挙げられる。
66、R67、R68、X及びXにおける、ヒドロカルビレンオキシ基の繰り返し単位を有する基としては、例えば、アルキレングリコールに基づく繰り返し単位を有する基が挙げられる。ヒドロカルビレンオキシ基としては、例えば、1-オキシエチレン基、1-オキシトリメチレン基及び1-オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくは1-オキシエチレン基である。
【0084】
及びXにおける、ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、アルコキシ基及びアリールオキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基及びオクチルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、炭素原子数6~12のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基及びベンジルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
共役ジエン系重合体の活性末端と反応しうる官能基としては、例えば、エポキシ基を有する炭化水素基、及び、カルボニル基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0085】
gは、取扱いの観点から、好ましくは3~360であり、省燃費性能の観点から好ましくは4~20である。
【0086】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-1)で表される非環状アミノ基である化合物として、例えば、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ジメチルメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシラン、[3-(N-アリルN-メチルアミノ)ペンチル]トリメトキシシラン、[3-(N-ベンジルN-メチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(N-ベンジルN-メチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(N-フェニルN-プロピルアミノ)ペンチル]トリメトキシシラン、{3-[ジ(メトキシメチル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[ジ(メトキシエチル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[ジ(メトキシメチル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3-[ジ(メトキシエチル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3-[ジ(エトキシエチル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[ジ(エトキシメチル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[ジ(エトキシエチル)アミノ]プロピル]トリエトキシシラン、{3-[ジ(エトキシメチル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3-[N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}トリメトキシシラン、{3-[N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}トリエトキシシラン、{3-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジメトキシシラン、{3-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジエトキシシラン、{3-[N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジメトキシシラン、{3-[N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ]プロピル}メチルジエトキシシラン、{3-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]プロピル}ジメチルメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]メチルジメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]エチルジメトキシシラン、[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]メチルジエトキシシラン及び[3-(エチルメチルアミノ)プロピル]エチルジエトキシシランを挙げることができる。
【0087】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-1)で表される非環状アミノ基である化合物としては、省燃費性を高める観点から、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3-(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン又は[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランが好ましい。
【0088】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-1)で表される環状アミノ基である化合物として、例えば、3-モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3-モルホリノプロピルトリエトキシシラン、3-モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3-モルホリノプロピルエチルジメトキシシラン、3-モルホリノプロピルメチルジエトキシシラン、3-モルホリノプロピルエチルジエトキシシラン、3-ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3-ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ピペリジノプロピルエチルジエトキシシラン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジメトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン及び3-ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジエトキシシランを挙げることができる。
【0089】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-1)で表される環状アミノ基である化合物としては、省燃費性を高める観点から、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾール又はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-イミダゾールが好ましい。
【0090】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-2)で表される基である化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、ビス(3-グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン及びビス(3-グリシドキシプロピル)ジエトキシシランを挙げることができる。
【0091】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-2)で表される基である化合物としては、省燃費性を高める観点、化合物の入手容易性、長期保存安定性を高める観点から、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0092】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-3)で表される基である化合物としては、例えば、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S-トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、S-トリエチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S-トリエチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S-トリエチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及びS-トリエチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0093】
式(6)で表される構造を有する化合物のうち、Aが式(6-4)で表される基である化合物としては、例えば、ジグリシドキシポリジメチルシロキサン、ジメチル(メトキシ-メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチル(アセトキシ-メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジグリシジルポリシロキサン及びジクロロポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0094】
上記化合物以外の式(6)で表される構造を有する化合物としては、例えば、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]イソシアヌレート、トリス[3-(トリブトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート等のトリス[(アルコキシシリル)アルキル]イソシアヌレート化合物を挙げることができる。中でも、式(6)で表される化合物として、トリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートが好ましく、アルコキシ基が炭素原子数1~4のアルコキシ基であるトリス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]イソシアヌレートがより好ましく、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートが更に好ましい。
【0095】
上記化合物以外の式(6)で表される構造を有する化合物としては、例えば、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3-ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4-ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5-ビス(トリクロロシリル)ペンタン、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)エタン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)エタン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトメチルトリメトキシシラン、3-メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-[N-2-{N’,N’-ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル-N-トリメチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3-[N-2-{N’,N’-ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル-N-トリエチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3-[N-2-{N’,N’-ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル-N-トリエチルシリルアミノ]プロピルトリクロロシラン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4-メチルペンタン-2-イミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-メチルペンタン-2-イミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)プロパン-2-イミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ペンタン-3-イミン、N-(3-トリクロロシリルプロピル)-4-メチルペンタン-2-イミン、1,4-ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4-ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N-トリメチルシリルアミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-N-トリメチルシリルアミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]メチルアミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]メチルアミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチルアミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチルアミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(トリエトキシシリルメチル)アミン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-トリメチルシリル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジエトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジメトキシ-8-(N,N-ジエチル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2-メトキシ-2-メチル-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジクロロ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、N-[2-(トリメトキシシラニル)-エチル]-N,N’,N’-トリメチルエタン-1,2-ジアミン、2-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3-ジメチルイミダゾリジン及び2-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3-(ビストリメチルシリル)イミダゾリジンが挙げられる。
【0096】
変性剤は、式(7)で表される構造を有する化合物を含むことができる。
【化10】
【0097】
式(7)中、R71は水素原子又はヒドロカルビル基を表し、sは0又は1(0~1の整数)を表し、R72はヒドロカルビレン基を表し、X、X及びXはそれぞれ独立に、置換アミノ基、又は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、X、X及びXの少なくとも1つが置換アミノ基である。
【0098】
71におけるヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアリール基を挙げることができる。
アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基を挙げることができ、好ましくはメチル基である。アルケニル基としては、炭素原子数2~12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基を挙げることができ、好ましくはビニル基である。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基及びエチルフェニル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。
71として、好ましくは水素原子、メチル基、ビニル基又はフェニル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0099】
72におけるヒドロカルビレン基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基、及び、アリーレン基とアルキレン基とが結合した基を挙げることができる。
アルキレン基としては、炭素原子数2~6のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基及びトリメチレン基を挙げることができ、さらに好ましくは、メチレン基又はエチレン基である。アリーレン基としては、炭素原子数5~12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基を挙げることができ、さらに好ましくはフェニレン基である。アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、例えば、フェニレン基とアルキレン基とが結合した基、ナフチレン基とアルキレン基とが結合した基及びビフェニレン基とアルキレン基とが結合した基を挙げることができ、好ましくはフェニレン基とアルキレン基とが結合した基である。
アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、式(7)のR71が結合している炭素原子に、当該基のアリーレン基の炭素原子が結合していることが好ましい。
【0100】
フェニレン基とアルキレン基とが結合した基(フェニレン-アルキレン基)としては、例えば、式(7-R)で表される基を挙げることができる。
【0101】
【化11】
式中、dは1~10の整数を表す。
【0102】
フェニレン-アルキレン基としては、アルキレン基が結合するベンゼン環上の炭素原子の位置によって、パラ-フェニレン-アルキレン基、メタ-フェニレン-アルキレン基、オルト-フェニレン-アルキレン基を挙げることができる。式(7-R)で表される基の場合、パラ-フェニレン-アルキレン基は式(7-Ra)で表される基であり、メタ-フェニレン-アルキレン基は式(7-Rb)で表される基であり、オルト-フェニレン-アルキレン基は式(7-Rc)で表される基である。
【化12】
【化13】
【化14】
式中、d1、d2及びd3はそれぞれ独立に、1~10の整数を表す。
【0103】
アリーレン基とアルキレン基とが結合した基としては、好ましくは、フェニレン基とアルキレン基とが結合した基(フェニレン-アルキレン基)であり、より好ましくは、式(7-Ra)で表される基又は式(7-Rb)で表される基であり、更に好ましくは、パラ-フェニレン-メチレン基(d1=1である式(7-Ra)で表される基)、メタ-フェニレン-メチレン基(d2=1である式(7-Rb)で表される基)、パラ-フェニレン-エチレン基(d1=2である式(7-Ra)で表される基)又はメタ-フェニレン-エチレン基(d2=2である式(7-Rb)で表される基)である。
【0104】
、X及びXにおける、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、ヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基を挙げることができる。
【0105】
、X及びXのヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基を挙げることができる。アルケニル基としては、炭素原子数2~12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、炭素原子数2~12のアルキニル基が好ましく、エチニル基及び2-プロピニル基を挙げることができる。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基及びキシリル基を挙げることができる。アラルキル基としては、炭素原子数7~13のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基を挙げることができる。ヒドロカルビル基として、好ましくはアルキル基である。
【0106】
、X及びXの置換ヒドロカルビル基としては、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも一種の原子を有する基を挙げることができる。
酸素原子を有する置換ヒドロカルビル基としては、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基を挙げることができる。
窒素原子を有する置換ヒドロカルビル基としては、例えば、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基等のジアルキルアミノアルキル基を挙げることができる。
ケイ素原子を有する置換ヒドロカルビル基としては、例えば、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルメチル基、トリエチルシリルエチル基等のトリアルキルシリルアルキル基を挙げることができる。
【0107】
置換基を有していてもよいヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~4である。置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、好ましくは、アルキル基又はアルコキシアルキル基である。アルキル基としては、更に好ましくは炭素原子数が1~4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。アルコキシアルキル基としては、好ましくは、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基である。
【0108】
、X及びXにおける置換アミノ基として、例えば、式(7-X)で表される基及び式(7-Y)で表される基が挙げられる。
【化15】
式(7-X)中、R73及びR74はそれぞれ独立に、ヒドロカルビル基又はトリヒドロカルビルシリル基を表すか、あるいは、R73の一部とR74の一部とが結合して成る、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。
【化16】
式(7-Y)中、R75は、ヒドロカルビリデン基を表す。なお、R75は、式(7-X)において、R73及びR74が一つの基であって、窒素原子に二重結合で結合する基に対応する基である。
【0109】
73及びR74における、ヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基を挙げることができる。アルケニル基としては、炭素原子数2~12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、炭素原子数2~12のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基及び2-プロピニル基を挙げることができる。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、トリル基及びキシリル基を挙げることができる。アラルキル基としては、炭素原子数7~13のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基を挙げることができる。
【0110】
ヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~4であり、更に好ましくは1~2である。ヒドロカルビル基としては、好ましくはアルキル基であり、より好ましくは直鎖アルキル基である。
【0111】
73及びR74における、トリヒドロカルビルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチル-ジメチルシリル基等の炭素原子数3~12のトリアルキルシリル基を挙げることができる。
【0112】
トリヒドロカルビルシリル基としては、好ましくは、炭素原子数が3~9のトリアルキルシリル基であり、より好ましくは、ケイ素原子に結合したアルキル基が炭素原子数1~3のアルキル基であるトリアルキルシリル基であり、更に好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0113】
73の一部とR74の一部とが結合した、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、例えば、ヒドロカルビレン基、窒素原子含有ヒドロカルビレン基及び酸素原子含有ヒドロカルビレン基を挙げることができる。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基を挙げることができる。
窒素原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、-CHCH-NH-CH-で表される基、-CHCH-N=CH-で表される基、-CH=CH-N=CH-で表される基及び-CHCH-NH-CHCH-で表される基を挙げることができる。
酸素原子含有ヒドロカルビレン基としては、例えば、-CHCH-O-CHCH-で表される基を挙げることができる。
【0114】
窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基の炭素原子数は、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~7であり、更に好ましくは4~6である。
【0115】
窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、好ましくはヒドロカルビレン基であり、より好ましくはアルキレン基であり、更に好ましくはポリメチレン基である。
【0116】
73及びR74としては、好ましくは、それぞれ独立にアルキル基又はトリアルキルシリル基であるか、R73の一部とR74の一部とが結合したアルキレン基であり、より好ましくはそれぞれ独立にアルキル基である。
【0117】
式(7-X)で表される基としては、非環状アミノ基又は環状アミノ基を挙げることができる。
【0118】
非環状アミノ基のうち、式(7-X)においてR73及びR74がヒドロカルビル基である基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、ジ(イソプロピル)アミノ基、ジ(n-ブチル)アミノ基、ジ(sec-ブチル)アミノ基、ジ(tert-ブチル)アミノ基、エチルメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基を挙げることができる。
非環状アミノ基のうち、式(7-X)においてR73及びR74がトリヒドロカルビルシリル基である基としては、例えば、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(tert-ブチル-ジメチルシリル)アミノ基等のビス(トリアルキルシリル)アミノ基を挙げることができる。
【0119】
環状アミノ基のうち、式(7-X)において、R73の一部とR74の一部とが結合した基がヒドロカルビレン基である基としては、例えば、1-アジリジニル基、1-アゼチジニル基、1-ピロリジニル基、1-ピペリジニル基、1-ヘキサメチレンイミノ基及び1-ピロリル基を挙げることができる。
環状アミノ基のうち、式(7-X)において、R73の一部とR74の一部とが結合した基が窒素原子含有ヒドロカルビレン基である基としては、例えば、1-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1-イミダゾリル基、1-イミダゾリジニル基、1-ピペラジニル基を挙げることができる。
環状アミノ基のうち、式(7-X)において、R73の一部とR74の一部とが結合した基が酸素原子含有ヒドロカルビレン基である基としては、モルホリノ基を挙げることができる。
【0120】
75におけるヒドロカルビリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、1-メチルエチリデン基、1-メチルプロピリデン基及び1,3-ジメチルブチリデン基を挙げることができる。
ヒドロカルビリデン基の炭素原子数は、好ましくは2~20であり、より好ましくは2~6である。
【0121】
式(7-Y)で表される基としては、例えば、エチリデンアミノ基、1-メチルプロピリデンアミノ基、1,3-ジメチルブチリデンアミノ基、1-メチルエチリデンアミノ基、4-N,N-ジメチルアミノベンジリデンアミノ基等の非環状アミノ基を挙げることができる。
【0122】
式(7)において、X、X及びXにおける置換アミノ基は、好ましくは非環状アミノ基であり、より好ましくは、ジアルキルアミノ基であり、更に好ましくは、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基又はジ(n-ブチル)アミノ基であり、特に好ましくは、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基である。
【0123】
式(7)において、X、X及びXの少なくとも1つが置換アミノ基であり、好ましくは、X、X及びXの2つ以上が、置換アミノ基であり、より好ましくは、X、X及びXのうちの2つが、置換アミノ基である。
【0124】
式(7)で表される化合物のうち、R71が水素原子であり、X、X及びXのうち1つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0125】
式(7)中のsが0である化合物としては、例えば、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジプロピルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジブチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジメチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチルビニルシラン、(ジプロピルアミノ)ジエチルビニルシラン及び(ジブチルアミノ)ジエチルビニルシランが挙げられる。
【0126】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、(ジメチルアミノ)ジメチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジメチルアミノ)ジメチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジエチルアミノ)ジメチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジエチルアミノ)ジメチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジプロピルアミノ)ジメチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジプロピルアミノ)ジメチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジブチルアミノ)ジメチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジブチルアミノ)ジメチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジメチルアミノ)ジエチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジメチルアミノ)ジエチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジエチルアミノ)ジエチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジエチルアミノ)ジエチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジプロピルアミノ)ジエチル(4-ビニルフェニル)シラン、(ジプロピルアミノ)ジエチル(3-ビニルフェニル)シラン、(ジブチルアミノ)ジエチル(4-ビニルフェニル)シラン及び(ジブチルアミノ)ジエチル(3-ビニルフェニル)シランが挙げられる。
【0127】
式(7)で表される化合物のうち、R71が水素原子であり、X、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0128】
式(7)中のsが0である化合物としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチルビニルシラン及びビス(ジブチルアミノ)エチルビニルシランが挙げられる。
【0129】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)メチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)メチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)メチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチル(4-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチル(3-ビニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)エチル(4-ビニルフェニル)シラン及びビス(ジブチルアミノ)エチル(3-ビニルフェニル)シランが挙げられる。
【0130】
式(7)で表される化合物のうち、R71がメチル基でありX、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0131】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)メチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)メチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)メチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)メチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチル(3-イソプロペニルフェニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)エチル(4-イソプロペニルフェニル)シラン及びビス(ジブチルアミノ)エチル(3-イソプロペニルフェニル)シランが挙げられる。
【0132】
式(7)で表される化合物としては、R71がビニル基であり、X、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0133】
式(7)中のsが0である化合物としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)メチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)メチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジブチルアミノ)メチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジメチルアミノ)エチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジエチルアミノ)エチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチル(1-メチレン-2-プロペニル)シラン及びビス(ジブチルアミノ)エチル(1-メチレン-2-プロペニル)シランが挙げられる。
【0134】
式(7)で表される化合物としては、R71がフェニル基であり、X、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0135】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、1-{4-[ビス(ジメチルアミノ)メチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジエチルアミノ)メチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジプロピルアミノ)メチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジブチルアミノ)メチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジメチルアミノ)エチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジエチルアミノ)エチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン、1-{4-[ビス(ジプロピルアミノ)エチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレン及び1-{4-[ビス(ジブチルアミノ)エチルシリル]フェニル}-1-フェニルエチレンが挙げられる。
【0136】
式(7)で表される化合物としては、R71が水素原子であり、X、X及びXの3つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0137】
式(7)中のsが0である化合物としては、例えば、トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジエチルアミノ)ビニルシラン及びトリス(ジプロピルアミノ)ビニルシラン、トリス(ジブチルアミノ)ビニルシランが挙げられる。
【0138】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、トリス(ジメチルアミノ)(4-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジメチルアミノ)(3-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジエチルアミノ)(4-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジエチルアミノ)(3-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジプロピルアミノ)(4-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジプロピルアミノ)(3-ビニルフェニル)シラン、トリス(ジブチルアミノ)(4-ビニルフェニル)シラン及びトリス(ジブチルアミノ)(3-ビニルフェニル)シランが挙げられる。
【0139】
式(7)で表される化合物としては、R71がメチル基であり、X、X及びXの3つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0140】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、トリス(ジメチルアミノ)(4-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジメチルアミノ)(3-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジエチルアミノ)(4-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジエチルアミノ)(3-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジプロピルアミノ)(4-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジプロピルアミノ)(3-イソプロペニルフェニル)シラン、トリス(ジブチルアミノ)(4-イソプロペニルフェニル)シラン及びトリス(ジブチルアミノ)(3-イソプロペニルフェニル)シランが挙げられる。
【0141】
式(7)で表される化合物としては、R71がビニル基であり、X、X及びXの3つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0142】
式(7)中のsが0である化合物としては、例えば、トリス(ジメチルアミノ)(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、トリス(ジエチルアミノ)(1-メチレン-2-プロペニル)シラン、トリス(ジプロピルアミノ)(1-メチレン-2-プロペニル)シラン及びトリス(ジブチルアミノ)(1-メチレン-2-プロペニル)シランが挙げられる。
【0143】
式(7)で表される化合物としては、R71がフェニル基であり、X、X及びXのうち3つがジアルキルアミノ基である化合物として、次の化合物を挙げることができる。
【0144】
式(7)中のsが1である化合物としては、例えば、1-[4-トリス(ジメチルアミノ)シリルフェニル]-1-フェニルエチレン、1-[4-トリス(ジエチルアミノ)シリルフェニル]-1-フェニルエチレン、1-[4-トリス(ジ-n-プロピルアミノ)メチルシリルフェニル]-1-フェニルエチレン及び1-[4-トリス(ジ-n-ブチルアミノ)メチルシリルフェニル]-1-フェニルエチレンが挙げられる。
【0145】
式(7)で表される基で好ましい化合物としては、式(7)中のX、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基である化合物であり、より好ましくは、式(7)中のX、X及びXのうち2つがジアルキルアミノ基であり、R71が水素原子であり、sが0である化合物である。
【0146】
式(7)で表される化合物として最も好ましくは、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジブチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジプロピルアミノ)エチルビニルシラン、ビス(ジブチルアミノ)エチルビニルシランである。
【0147】
変性剤は、下記式(8)で表される窒素原子及びカルボニル基を含有する化合物を含んでいてもよい。
【化17】
【0148】
式(8)中、R81及びR82は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表すか、又は、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を表し、R84は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は水素原子を表し、あるいは、R81及びR82のいずれかの一部とR84の一部とが結合して成る、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基を形成する。また、R83は2価の基を表し、nは0又は1である。
【0149】
81、R82及びR84における置換基を有していてもよいヒドロカルビル基とは、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基である。置換ヒドロカルビル基としては、例えば、ヒドロカルビルオキシ基で置換されたヒドロカルビル基、置換アミノ基で置換されたヒドロカルビル基等を挙げることができる。
【0150】
ヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基を挙げることができる。アルキル基としては、炭素原子数1~12のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基を挙げることができる。アルケニル基としては、炭素原子数2~12のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基及びイソプロペニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、炭素原子数2~12のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基及び2-プロピニル基を挙げることができる。アリール基としては、炭素原子数6~12のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、トリル基及びキシリル基を挙げることができる。アラルキル基としては、炭素原子数7~13のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基を挙げることができる。
【0151】
ヒドロカルビルオキシ基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基を挙げることができる。
【0152】
置換アミノ基で置換されたヒドロカルビル基としては、例えば、N,N-ジメチルアミノメチル基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル基、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル基、3-(N,N-ジエチルアミノ)プロピル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アルキル基;4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、3-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-(N,N-ジエチルアミノ)フェニル基、3-(N,N-ジエチルアミノ)フェニル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アリール基;4-(N,N-ジメチルアミノ)メチルフェニル基、4-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]フェニル基等の(N,N-ジアルキルアミノ)アルキルアリール基;3-(1-ピロリジニル)プロピル基、3-(1-ピペリジニル)プロピル基、3-(1-イミダゾリル)プロピル基等の環状アミノ基で置換されたアルキル基;4-(1-ピロリジニル)フェニル基、4-(1-ピペリジニル)フェニル基、4-(1-イミダゾリル)フェニル基等の環状アミノ基で置換されたアリール基;4-[2-(1-ピロリジニル)エチル]フェニル基、4-[2-(1-ピペリジニル)エチル]フェニル基、4-[2-(1-イミダゾリル)エチル]フェニル基等の環状アミノ基で置換されたアルキルアリール基を挙げることができる。
【0153】
81の一部とR82の一部とが結合して成る基、あるいは、R81及びR82のいずれかの一部とR84の一部とが結合して成る基において、窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基とは、ヒドロカルビレン基、又は、窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基である。
【0154】
ヒドロカルビレン基としては、例えば、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基等のアルキレン基;1,4-フェニレン基等のアリーレン基を挙げることができる。窒素原子及び/又は酸素原子を有していてもよいヒドロカルビレン基としては、例えば、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、-(CH-O-(CH-で表される基(t及びuは1以上の整数である。)等を挙げることができる。
【0155】
83における2価の基としては、例えば、ヒドロカルビレン基、窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基、ヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合して成る基、又はヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合して成る基を挙げることができる。
【0156】
ヒドロカルビレン基としては、例えば、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とが結合して成る基(以下、アリーレン-アルキレン基と称することがある。)等が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基及び2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基を挙げることができる。アルケンジイル基としては、例えば、ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基を挙げることができる。アリーレン-アルキレン基として、例えば、フェニレン-アルキレン基、ナフチレン-アルキレン基及びビフェニレン-アルキレン基を挙げることができる。
【0157】
窒素原子窒素原子及び/又は酸素原子を有するヒドロカルビレン基としては、例えば、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、-(CH-O-(CH-で表される基(t及びuは1以上の整数である)等を挙げることができる。ヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合して成る基としては、例えば、-(CH-O-で表される基(uは1以上の整数である)を挙げることができる。
【0158】
ヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85は、ヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合して成る基としては、例えば、-(CH)v-NR-で表される基(Rは、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を表し、vは1以上の整数である)等を挙げることができる。
【0159】
上記式(8)で表される化合物として、好ましくは、nが0であり、R84が置換基を有していてもよいヒドロカルビル基又は水素原子を表す化合物、すなわち、下記式(8-1)で表される化合物;nが0であり、R81の一部とR84の一部とが結合して成る、ヒドロカルビレン基、又は、ヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合して成る基を表す化合物、すなわち、下記式(8-2)で表される化合物;nが1であり、R83がヒドロカルビレン基を表す化合物、すなわち、下記式(8-3)で表される化合物;又はnが1であり、R83がヒドロカルビレン基と酸素原子とが結合して成る基、又はヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)とが結合して成る基を表す化合物、すなわち、下記式(8-4)で表される化合物である。
【0160】
【化18】
式(8-1)中、R81、R82及びR84は、上記式(8)におけるR81、R82及びR84と同義である。
【0161】
【化19】
式(8-2)中、R82は、上記式(8)におけるR82と同義である。R86は、ヒドロカルビレン基、又はヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基とが結合して成る基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)を表す。
【0162】
【化20】
式(8-3)中、R81、R82及びR84は、上記式(8)におけるR81、R82及びR84と同義である。R83はヒドロカルビレン基を表す。
【0163】
【化21】
式(8-4)中、R81、R82及びR84は、上記式(8)におけるR81、R82及びR84と同義である。R87はヒドロカルビレン基を表し、Aは酸素原子又は-NR85-(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)を表す。
【0164】
式(8-1)におけるR81及びR82としては、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上10以下のヒドロカルビレン基、又は炭素原子数3以上10以下の窒素原子を有するヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上10以下のアルキレン基、-CH=N-CH=CH-で表される基、又はCH=N-CH-CH-で表される基を表すことがより好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが更に好ましく、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表すことが一層好ましい。
【0165】
式(8-1)におけるR84としては、ヒドロカルビル基、又は水素原子を表すことが好ましく、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は水素原子を表すことが更に好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基を表すことが一層好ましい。
【0166】
式(8-1)で表される化合物のうち、R84がヒドロカルビル基を表す化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-N-エチルアセトアミド等のN,N-ジヒドロカルビルアセトアミド;N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-メチル-N-エチルアクリルアミド等のN,N-ジヒドロカルビルアクリルアミド;N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチル-N-エチルメタクリルアミド等のN,N-ジヒドロカルビルメタクリルアミドを挙げることができる。
【0167】
式(8-1)で表される化合物のうち、R84が水素原子を表す化合物としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチル-N-エチルホルムアミド等のN,N-ジヒドロカルビルホルムアミドを挙げることができる。
【0168】
式(8-2)において、R86におけるヒドロカルビレン基としては、例えば、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基又はアリーレン基がアルキレン基に結合して成る基(以下、アリーレン-アルキレン基と称することがある。)等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基等を挙げることができる。アルケンジイル基としては、炭素原子数4~12のアルケンジイル基が好ましく、例えば、ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基等を挙げることができ、アリーレン基としては、炭素原子数6~12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。アリーレン-アルキレン基として、例えば、フェニレン-アルキレン基、ナフチレン-アルキレン基、ビフェニレン-アルキレン基等を挙げることができる。R86におけるヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)とが結合して成る基としては、例えば、-(CH-NR-で表される基(Rは、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基、又は水素原子を表し、vは1以上の整数である)等を挙げることができる。
【0169】
式(8-2)におけるR82としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はフェニル基を表すことが更に好ましく、メチル基、エチル基又はフェニル基を表すことが一層好ましい。
【0170】
式(8-2)におけるR86としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビレン基、又は、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビレン基と-NR88-で表される基(R88は、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基又は水素原子を表す。)とが結合して成る基を表すことが好ましく、炭素原子数3以上6以下のアルキレン基、又は-(CH-NR-で表される基(Rは、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表し、wは2以上5以下の整数である。)を表すことがより好ましく、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、又は-(CH-N(CH)-で表される基を表すことが更に好ましい。
【0171】
式(8-2)で表される化合物のうち、R86がヒドロカルビレン基を表す化合物としては、例えば、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-ヒドロカルビル-β-プロピオラクタム;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-tert-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-ヒドロカルビル-2-ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-ヒドロカルビル-2-ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム等のN-ヒドロカルビル-ε-カプロラクタム;N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム等のN-ヒドロカルビル-ω-ラウリロラクタムを挙げることができる。これらの中では、好ましくはN-メチル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタムであり、更に好ましくはN-フェニル-2-ピロリドン、N-メチル-ε-カプロラクタムである。
【0172】
式(8-2)で表される化合物のうち、R86がヒドロカルビレン基と-NR85-で表される基(R85はヒドロカルビル基又は水素原子)とが結合して成る基を表す化合物としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジビニル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン等の1,3-ジヒドロカルビル-2-イミダゾリジノンを挙げることができる。これらの中では、好ましくは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノンであり、更に好ましくは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンである。
【0173】
式(8-3)におけるR83としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、又は炭素原子数6以上10以下のアリーレン基を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基又はフェニレン基を表すことが更に好ましく、エチレン基、トリメチレン基又は1,4-フェニレン基を表すことが一層好ましい。
【0174】
式(8-3)におけるR84としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基、又はジアルキルアミノ基で置換された炭素原子数3以上10以下のヒドロカルビル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数3以上6以下のジアルキルアミノアルキル基、又は炭素原子数8以上10以下のジアルキルアミノアリール基を表すことがより好ましく、メチル基、エチル基、炭素原子数3以上6以下のジアルキルアミノメチル基、炭素原子数4以上6以下のジアルキルアミノエチル基、フェニル基、又は炭素原子数8以上10以下のジアルキルアミノフェニル基を表すことが更に好ましい。
【0175】
式(8-3)におけるR81及びR82としては、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上10以下のヒドロカルビレン基、又は炭素原子数3以上10以下の窒素原子を有するヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すか、あるいは、R81がR82に結合し、R81がR82に結合して成る基が、炭素原子数3以上10以下のアルキレン基、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、又は-(CH-O-(CH-で表される基を表すことがより好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上6以下のアルキレン基、-CH=N-CH=CH-で表される基、又は-CH=N-CH-CH-で表される基を表すことが更に好ましく、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表すか、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基又は-CH=N-CH=CH-で表される基を表すことが一層好ましい。
【0176】
式(8-3)で表される化合物のうち、R83がアリーレン基を表し、R84がアルキル基を表す化合物としては、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)アセトフェノン、4-(N-メチル-N-エチルアミノ)アセトフェノン、4-(N,N-ジエチルアミノ)アセトフェノン等の4-(N,N-ジヒドロカルビルアミノ)アセトフェノン;4’-(イミダゾール-1-イル)アセトフェノン等の4-環状アミノアセトフェノン化合物を挙げることができる。これらの中では、4-環状アミノアセトフェノン化合物が好ましく、4’-(イミダゾール-1-イル)アセトフェノンがより好ましい。
【0177】
式(8-3)で表される化合物のうち、R83がヒドロカルビレン基を表し、R84がヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表す化合物としては、例えば、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン等のビス(ジヒドロカルビルアミノアルキル)ケトンが挙げられる。R83がアリーレン基を表し、R84がアリール基又は置換アリール基を表す化合物としては、例えば、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン等の4-(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノン;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’-ビス(ジヒドロカルビルアミノ)ベンゾフェノンを挙げることができる。これらの中では、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましく、4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンがより好ましい。
【0178】
式(8-4)において、Aにおける酸素原子又は-NR85-(R85はヒドロカルビル基又は水素原子を表す)としては、酸素原子、又は-NR-(Rは、炭素原子数1以上5以下のヒドロカルビレン基又は水素原子を表す。)で表される基を表すことが好ましく、酸素原子、又は-NH-で表される基を表すことがより好ましく、-NH-で表される基を表すことが更に好ましい。
【0179】
式(8-4)において、R87におけるヒドロカルビレン基としては、例えば、アルキレン基、アルケンジイル基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とが結合して成る基(以下、アリーレン-アルキレン基と称することがある。)等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素原子数1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、2,2,4-トリメチルへキサン-1,6-ジイル基等を挙げることができる。アルケンジイル基としては、炭素原子数4~12のアルケンジイル基が好ましく、例えば、ペンタン-2-エン-1,5-ジイル基等を挙げることができる。アリーレン基としては、炭素原子数6~12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等を挙げることができる。アリーレン-アルキレン基として、例えば、フェニレン-アルキレン基、ナフチレン-アルキレン基、ビフェニレン-アルキレン基等を挙げることができる。
【0180】
式(8-4)におけるR84としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表すことが好ましく、炭素原子数2以上5以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、ビニル基又はイソプロペニル基を表すことが更に好ましく、ビニル基を表すことが一層好ましい。
【0181】
式(8-4)におけるR87としては、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基を表すことがより好ましく、エチレン基又はトリメチレン基を表すことが更に好ましく、トリメチレン基を表すことが一層好ましい。
【0182】
式(8-4)におけるR81及びR82としては、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のヒドロカルビル基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上10以下のヒドロカルビレン基、又は炭素原子数3以上10以下の窒素原子を有するヒドロカルビレン基を表すことが好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上10以下のアルキレン基、-CH=N-CH=CH-で表される基、-CH=N-CH-CH-で表される基、又は-(CH-O-(CH-で表される基を表すことがより好ましく、それぞれ独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すか、あるいは、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、炭素原子数3以上6以下のアルキレン基、-CH=N-CH=CH-で表される基、又は-CH=N-CH-CH-で表される基を表すことが更に好ましく、それぞれ独立して、メチル基、又はエチル基を表すか、R81の一部とR82の一部とが結合して成る、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、又は-CH=N-CH=CH-で表される基を表すことが一層好ましい。
【0183】
式(8-4)で表される化合物のうち、Aが酸素原子を表す化合物としては、例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート等の2-(ジヒドロカルビルアミノ)エチルアクリレート;3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート等の3-(ジヒドロカルビルアミノ)プロピルアクリレート;2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート等の2-(ジヒドロカルビルアミノ)エチルメタクリレート;3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート等の3-(ジヒドロカルビルアミノ)プロピルメタクリレートを挙げることができる。これらの中では、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートが好ましく、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートがより好ましい。
【0184】
式(8-4)で表される化合物のうち、Aが-NR85-(R85はヒドロカルビレン基又は水素原子を表す)で表される基を表す化合物としては、例えば、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノエチル)アクリルアミド等のN-(2-ジヒドロカルビルアミノエチル)アクリルアミド;N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-(3-ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド等のN-(3-ジヒドロカルビルアミノプロピル)アクリルアミド;N-(4-ジメチルアミノブチル)アクリルアミド、N-(4-ジエチルアミノブチル)アクリルアミド等のN-(4-ジヒドロカルビルアミノブチル)アクリルアミド;N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド等のN-(2-ジヒドロカルビルアミノエチル)メタクリルアミド;N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-(3-ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド等のN-(3-ジヒドロカルビルアミノプロピル)メタクリルアミド;N-(4-ジメチルアミノブチル)メタクリルアミド、N-(4-ジエチルアミノブチル)メタクリルアミド等のN-(4-ジヒドロカルビルアミノブチル)メタクリルアミドを挙げることができる。これらの中では、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-(4-ジメチルアミノブチル)アクリルアミドが好ましく、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドがより好ましい。
【0185】
(有機金属化合物)
共役ジエン系重合体が有する変性剤に基づく単位に、反応させる有機金属化合物としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機両性金属化合物を用いることができる。これらの有機金属化合物は2種類以上を併用してもよく、また、有機金属化合物の反応性を上げるために、必要に応じて上述した調整剤を添加してもよい。
【0186】
有機アルカリ金属化合物としては、上述の重合開始剤として例示された化合物から選ばれる化合物を用いてもよい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物及び有機セシウム化合物が挙げられる。有機アルカリ金属化合物として、好ましくは有機リチウム化合物であり、より好ましくは炭素原子数が1以上20以下のヒドロカルビル基を有するリチウム化合物であり、更に好ましくは炭素原子数が1以上10以下のヒドロカルビル基を有するリチウム化合物であり、特に好ましくはn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム又はtert-ブチルリチウムである。
【0187】
有機アルカリ土類金属化合物としては、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機ストロンチウム化合物等が挙げられる。有機アルカリ土類金属化合物として、好ましくは有機マグネシウム化合物であり、より好ましくは炭素原子が1以上20以下のヒドロカルビル基を有するマグネシウム化合物であり、更に好ましくは炭素原子数が1以上10以下のヒドロカルビル基を有するマグネシウム化合物である。有機アルカリ土類金属化合物として、例えば、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-プロピルマグネシウムクロリド、n-プロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、sec-ブチルマグネシウムクロリド、sec-ブチルマグネシウムブロミド、tert-ブチルマグネシウムクロリド、tert-ブチルマグネシウムブロミド、アリルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ビニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド及びベンジルマグネシウムブロミドが挙げられる。
【0188】
有機両性金属化合物としては、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられる。有機両性金属化合物として、好ましくは炭素原子が1以上20以下のヒドロカルビル基を有する有機亜鉛化合物又は有機アルミニウム化合物である。有機亜鉛化合物としては、例えば、メチル亜鉛クロリド、プロピル亜鉛ブロミド、イソプロピル亜鉛ブロミド、ブチル亜鉛ブロミド、sec-ブチル亜鉛ブロミド、tert-ブチル亜鉛ブロミド等のヒドロカルビル亜鉛ハライド化合物、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛等のジヒドロカルビル亜鉛化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-へキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0189】
有機金属化合物の添加量は、特に限定されないが、変性剤1molに対して、好ましくは0.1~10molであり、より好ましくは0.25~5.0molであり、更に好ましくは0.5~2.0molであり、特に好ましくは0.7~1.8molである。これにより、より貯蔵安定性に優れる重合体組成物を得ることができる。
【0190】
上記のような有機金属化合物は、前記工程3、3’、3”及び1”における有機金属化合物として用いることができる。
【0191】
(カップリング剤)
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、単量体の重合開始から、後述する重合体の回収までに、重合溶液にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、上記式(5)又は(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0192】
カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、重合開始剤がアルカリ金属を含む場合、生成する変性共役ジエン重合体を混練し易くするために、アルカリ金属1mol当たり、好ましくは0.03mol以上であり、より好ましくは0.05mol以上である。また、カップリング剤の添加量は、変性共役ジエン重合体組成物の省燃費性を高めるために、アルカリ金属1mol当たり、好ましくは0.4mol以下であり、より好ましくは0.3mol以下である。
【0193】
(変性共役ジエン系重合体の製造)
以下に、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造の実施形態について、更に詳しく説明する。
実施形態の一つとして、以下の工程1~3からなる方法が挙げられる(第1の実施形態)。
工程1:重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させ、活性末端を有する重合体1を得る。
工程2:重合体1の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤と、重合体1とを反応させて、重合体1の末端に前記変性剤に基づく単位を導入した重合体2を得る。
工程3:重合体2に有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に有機金属化合物を反応させることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体を得る。
【0194】
工程1における重合の様式は特に限定されないが、回分式(バッチ式)又は連続式で行うことができる。反応器としては、攪拌機付きの回分反応器又は管型反応器を用いることができる。連続式の重合様式では、連結された2個以上の反応器を用いてもよく、連続槽型反応器を用いてもよい。
【0195】
工程2は、重合体1の活性末端が存在している状態で実施する。
工程2で使用する変性剤としては、前述の式(5)で表される構造を有する化合物、式(6)で表される構造を有する化合物及び式(8)で表される構造を有する化合物が好ましい。
工程2は、工程1を回分式で実施している場合は、工程1を実施した反応器に変性剤を添加することで実施することができるし、重合体1の活性末端が消失しない条件で他の反応器に重合体1を移し、当該他の反応器で変性剤と重合体1とを接触させることで実施することもできる。また、工程2は、工程1を連続式で実施している場合は、重合反応の末尾近くで反応器に変性剤を添加することで実施することができるし、連結された2個以上の反応器を用いて工程1を実施している場合は、2個目以降の反応器であって重合開始剤を投入していない反応器に変性剤を添加することで実施することができる。
【0196】
工程3は、工程1を回分式で実施している場合は、工程2を実施した反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、重合体2を他の反応器に移し、当該他の反応器で有機金属化合物と重合体2とを接触させることで実施することもできる。また、工程3は、工程1を連続式で実施している場合は、工程2を実施したよりも後ろの方で反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、工程3は、連結された2個の反応器を用いて工程1を実施している場合は、得られた重合体2を抜き出して更なる反応器に導き、当該更なる反応器に有機金属化合物を添加することにより実施することができるし、連結された3個以上の反応器を用いて工程1を実施している場合は、工程2を実施したよりも後ろの反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができる。
【0197】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造の第2の実施形態として、以下の工程1’及び工程3’からなる方法が挙げられる。
工程1’:重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させる。その際、共役ジエン化合物と共重合可能な官能基を有する前記変性剤を共に重合させて、重合体1’を得る。
工程3’:重合体1’に有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に有機金属化合物を反応させることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体を得る。
【0198】
工程1’における重合の様式は特に限定されないが、回分式(バッチ式)又は連続式で行うことができる。反応器としては、攪拌機付きの回分反応器又は管型反応器を用いることができる。連続式の重合様式では、連結された2個以上の反応器を用いてもよく、連続槽型反応器を用いてもよい。
【0199】
工程1’で使用する変性剤としては、前述の式(7)で表される構造を有する化合物が好ましい。
工程3’は、工程1’を回分式で実施している場合は、工程1’を実施した反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、重合体1’を他の反応器に移し、当該他の反応器に有機金属化合物を添加することで実施することもできる。また、工程3’は、工程1’を連続式で実施している場合は、重合反応の末尾近くで反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、連結された2個以上の反応器を用いて工程1’を実施している場合は、2個目以降の反応器であって前記変性剤を投入していない反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができる。
【0200】
なお、工程1’の実施後であって工程3’の実施前に、次の工程2’を実施することで、変性剤に基づく単位を重合体の分子鎖中及び末端に有する共役ジエン共重合体(重合体2’)を得ることができる。
工程2’:重合体1’の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤と、重合体1’とを反応させて、重合体1’の末端に前記変性剤に基づく単位を導入した重合体2’を得る。
工程2’で使用する変性剤としては、前述の式(5)で表される構造を有する化合物、式(6)で表される構造を有する化合物及び式(8)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0201】
重合体1’に代えて重合体2’を用いて、重合体2’に対して工程3’を実施することで、重合体2’に対応する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。工程2’の実施は、工程2に準じて行うことができる。また、工程2’を実施する場合の工程3’の実施も、工程3に準じて実施することができる。
【0202】
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造の第3の実施形態として、以下の工程1”及び工程3”からなる方法が挙げられる。
工程1”:重合開始剤の存在下、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させる。その際、変性剤と反応しうる部位へ変換可能な官能基を有し、共役ジエン化合物と共重合可能な共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を共に重合させて、重合体1”-1を得る。その後、変性剤と反応しうる部位へと、重合体1”-1が有する当該官能基の変換を行って重合体1”-2を得て、当該変換後の官能基と反応しうる官能基を有する変性剤と、重合体1”-2とを反応させることで、重合体1”を得る。
工程3”:重合体1”に有機金属化合物を添加し、前記変性剤に基づく単位に有機金属化合物を反応させることで、本発明に係る変性共役ジエン系重合体を得る。
【0203】
工程1”における重合体1”-1を得る重合の様式は特に限定されないが、回分式(バッチ式)又は連続式で行うことができる。反応器としては、攪拌機付きの回分反応器又は管型反応器を用いることができる。連続式の重合様式では、連結された2個以上の反応器を用いてもよく、連続槽型反応器を用いてもよい。
【0204】
工程1”で使用する変性剤へ変換可能な官能基を有し、共役ジエン化合物と共重合可能な共役ジエン化合物としては、前記共役ジエン化合物や側鎖に二重結合を有する共役ジエン化合物等が挙げられる。工程1”で使用する変性剤へ変換可能な官能基を有し、共役ジエン化合物と共重合可能な芳香族ビニル化合物としては、ビニルトルエン(2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン)等が挙げられる。これらの化合物を使用して得られる重合体1”-1を、工程3”で使用するのと同様な有機金属化合物と反応させることで、例えば、共役ジエン化合物に由来する二重結合のアリル位の水素が引き抜かれたり、芳香族ビニル化合物に由来する芳香環のベンジル位の水素が引き抜かれたりして、重合体1”-1に変性剤と反応しうる部位を与えることができ、重合体1”-2を得ることができる。
【0205】
このようにして得られた重合体1”-2と反応させる変性剤としては、前述の式(5)で表される構造を有する化合物、式(6)で表される構造を有する化合物及び式(8)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0206】
工程1”における重合体1”-1を得る重合を回分式で実施している場合は、重合体1”-2を得る反応、及び重合体1”-2と変性剤との反応は、重合体1”-1を得る重合を実施した反応器に有機金属化合物又は変性剤を添加することで、それぞれ実施することができるし、重合体1”-1又は重合体1”-2を他の反応器に移し、当該他の反応器に有機金属化合物又は変性剤を添加することで、それぞれ実施することができる。また、重合体1”-2を得る反応は、工程1”における重合体1”-1を得る重合を連続式で実施している場合は、重合反応の末尾近くで反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、連結された2個以上の反応器を用いて重合体1”-1を得る重合を実施している場合は、2個目以降の反応器であって単量体を投入していない反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができる。重合体1”-2と変性剤との反応は、工程1”における重合体1”-1を得る重合を連続式で実施している場合は、重合体1”-2を得る反応よりも後ろの方で反応器に変性剤を添加することで実施することができるし、連結された2個の反応器を用いて工程1”における重合体1”-1を得る重合を実施している場合は、得られた重合体1”-2を抜き出して更なる反応器に導き、当該更なる反応器に変性剤を添加することで実施することができるし、重合体1”-2を得る反応を行ったよりも後ろの反応器に変性剤を添加することで実施することができる。
【0207】
工程3”は、工程1”における重合体1”-1を得る重合を回分式で実施している場合は、重合体1”を得る反応を実施した反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、重合体1”を他の反応器に移し、当該他の反応器に有機金属化合物を添加することで実施することもできる。また、工程3”は、工程1”における重合体1”-1を得る重合を連続式で実施している場合は、重合体1”を得る反応よりも後ろの方で反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、連結された2個以上の反応器を用いて重合体1”-1を得る重合を実施している場合は、得られた重合体1”を抜き出して更なる反応器に導き、当該更なる反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができるし、重合体1”を得る反応を行ったよりも後ろの反応器に有機金属化合物を添加することで実施することができる。
【0208】
なお、工程1”における重合体1”-2を得る反応の実施後であって、工程3”の実施前に、次の工程2”を実施することで、変性剤に基づく単位を重合体の分子鎖中及び末端に有する共役ジエン共重合体(重合体2”)を得ることができる。
工程2”:重合体1”-2の活性末端と反応しうる官能基を有する前記変性剤と、重合体1”-2とを反応させて、重合体1”-2の末端に前記変性剤に基づく単位を導入した重合体2”を得る。
工程2”で使用する変性剤としては、前述の式(5)で表される構造を有する化合物、式(6)で表される構造を有する化合物及び式(8)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0209】
重合体1”に代えて重合体2”を用いて、重合体2”に対して工程3”を実施することで、重合体2”に対応する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。工程2”の実施は、工程2に準じて行うことができる。また、工程2”を実施する場合の工程3”の実施も、工程3に準じて実施することができる。
【0210】
重合体が溶解している溶液から変性共役ジエン系重合体を回収する方法としては、公知の方法を用いることができる。回収方法として、例えば、変性共役ジエン系重合体を含有する溶液に凝固剤を添加する方法、変性共役ジエン系重合体を含有する溶液にスチームを吹き込み、揮発成分をガス化させて除去する(スチームストリッピング)方法、フラッシングタンクで濃縮し、更にベント押し出し機等で脱揮する方法、及び、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法を挙げることができる。回収した変性共役ジエン系重合体は、バンドドライヤー、押出型ドライヤー等の公知の乾燥機で乾燥してもよい。加工性の面では、本発明を適用するとムーニー粘度の低い重合体を得やすいため、フラッシングタンクで濃縮し、更にベント押し出し機等で脱揮する方法、及び、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法による回収方法が好ましい。また、本発明を適用するとムーニー粘度の低く、加工性に優れた共重合体も得られる特徴があり、スチームストリッピング方法を適用する場合に本発明は有用である。
【0211】
本発明においては、変性共役ジエン系重合体の加工性を改良するため、溶媒を分離する前に、必要に応じて溶液に伸展油を混合し、変性共役ジエン重合体を油展ゴムとして回収することができる。
【0212】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4)は、引張破断強度を高めるために、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。また、変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度は、加工性を高めるために、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下である。ムーニー粘度(ML1+4)は、JIS K6300(1994)に従って、100℃にて測定される。
【0213】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体のビニル結合量は、共役ジエン化合物に由来する単量体単位の含有量を100mol%として、省燃費性を高めるために、好ましくは80mol%以下であり、より好ましくは70mol%以下である。また、変性共役ジエン系重合体のビニル結合量は、グリップ性を高めるために、共役ジエン化合物に由来する単量体単位の含有量を100mol%として、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは15mol%以上であり、更に好ましくは20mol%以上であり、特に好ましくは30mol%以上である。該ビニル結合量は、赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より求められる。
【0214】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、変性剤に基づく単位に、有機金属化合物が反応した構造を有している。共役ジエン系重合体が、上記式(6)で表される構造を有する変性剤に由来する単位を有する場合、変性共役ジエン系重合体は、下記式(A1)、(A2)又は(A3)で表される構造を有していてもよい。変性共役ジエン系重合体は、例えば、下記式(A1)で表される構造を有する重合体と、下記式(A2)で表される構造を有する重合体と、下記式(A3)で表される構造を有する重合体との混合物であってもよい。
【化22】
式(A1)、(A2)及び(A3)中、X、X、R61、R62、a及びAは上述の式(6)におけるそれらと同義であり、R91及びR92はそれぞれ独立に炭素原子数が1以上20以下のヒドロカルビル基を表す。R91及びR92は、炭素原子数が1以上10以下のヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0215】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は、例えば、下記式(B)で表される構造を有する重合体であってもよい。
【化23】
式(B)中、X、R61、R62、a及びAは上述の式(6)におけるそれらと同義であり、R91は炭素原子数が1以上20以下のヒドロカルビル基を表し、n1とk1はそれぞれ独立にn1+k1=2を満たす実数を表す。R91は、炭素原子数が1以上10以下のヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0216】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体は式(7)で表される化合物で変性した共役ジエン系共重合体に有機金属化合物を反応させることによって得られる構造を有する重合体であってもよい。
【0217】
[重合体組成物の製造方法]
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体に、補強材を配合して、重合体組成物を調製してもよい。本実施形態の重合体組成物の製造方法は、上述した変性共役ジエン系共重合体100質量部に対して、補強材を10~150質量部混練する工程を備える。
【0218】
補強材としては、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム及びカーボンブラックが挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0219】
シリカとしては、乾式シリカ(無水ケイ酸)、湿式シリカ(含水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ等を挙げることができる。シリカのBET比表面積は、好ましくは、50m/g~250m/gである。該BET比表面積は、ASTM D1993-03に従って測定される。市販品としては、デグッサ社製の商品名「ウルトラシルVN3-G」、東ソー・シリカ社製の商品名「VN3」、「AQ」、「ER」、「RS-150」、Rhodia社製の商品名「Zeosil 1115MP」、「Zeosil 1165MP」等を用いることができる。
【0220】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等を挙げることができる。カーボンブラックとしては、EPC、MPC及びCCのようなチャンネルカーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスカーボンブラック;FT及びMTのようなサーマルカーボンブラック;アセチレンカーボンブラックが例示される。
【0221】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは、5m/g~200m/gであり、また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、好ましくは、5mL/100g~300mL/100gである。該窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定され、該DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定される。市販品としては、三菱化学社製の商品名「ダイヤブラックN339」、東海カーボン社製の商品名「シースト6」、「シースト7HM、「シーストKH」、デグッサ社製の商品名「CK 3」、「Special Black 4A」等を用いることができる。
【0222】
重合体組成物における補強材の含有量は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対して、耐摩耗性及び強度を高めるために、10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。また、補強材の含有量は、補強性を高めるために、150質量部以下であり、好ましくは120質量部以下であり、より好ましくは100質量部以下である。
【0223】
本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体には、他の重合体成分、添加剤等を更に配合して、重合体組成物を調製してもよい。
【0224】
他の重合体成分としては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、ブチルゴムを挙げることができる。また、天然ゴム、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体なども挙げることができる。これらの重合体成分は、2種類以上を併用してもよい。
【0225】
他の重合体成分を配合する場合、重合体組成物中における本実施形態に係る変性共役ジエン系重合体の含有量は、燃費性能を高めるために、重合体組成物中における重合体成分の総量(変性共役ジエン系重合体を含む)を100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。
【0226】
添加剤としては、公知の添加剤を用いることができ、硫黄等の加硫剤;チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤等の加硫促進剤;ステアリン酸、酸化亜鉛等の加硫活性化剤;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシド等の有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;シランカップリング剤;伸展油;加工助剤;老化防止剤;滑剤を例示することができる。
【0227】
硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄があげられる。硫黄の配合量は、重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.3~10質量部であり、更に好ましくは0.5~5質量部である。
【0228】
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシメチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。加硫促進剤の配合量は、重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.2~3質量部である。
【0229】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン及びメルカプト-チオカルボキシレート オリゴマーを挙げることができる。これらは1種以上用いられる。市販品としては、エボニック社製の商品名「Si69」、「Si75」、「Si266」等、Momentive Performance Materials社製の商品名「NXT Silane」、「NXT-Z30」、「NXT-Z45」、「NXT-Z60」、「NXT-Z100」等を用いることができる。
【0230】
シランカップリング剤の配合量は、補強材100質量部に対して、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは2~15質量部であり、更に好ましくは5~10質量部である。
【0231】
伸展油としては、例えば、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900~1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850~0.899)及びパラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790~0.849)を挙げることができる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、1種以上用いられる。
【0232】
本実施形態に係る重合体組成物を製造する方法としては、例えば、各成分をロール及びバンバリー等の公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0233】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0234】
本実施形態に係る重合体組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、かつ、省燃費性に優れ、タイヤに好適に用いられる。
【実施例
【0235】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0236】
物性評価は次の方法で行った。
1.ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6300(1994)に従って、100℃にて重合体の初期のムーニー粘度を測定した。次いで、温度50℃の恒温槽中に重合体を放置し、2週間後(促進試験後)のムーニー粘度を測定した。
【0237】
2.ビニル結合量(単位:mol%)
赤外分光分析法により、ビニル基の吸収ピークである910cm-1付近の吸収強度より重合体のビニル結合量を求めた。
【0238】
3.スチレンに由来する単量体単位の含有量(単位:質量%)
JIS K6383(1995)に従って、屈折率から重合体のスチレンに由来する単量体単位の含有量を求めた。
【0239】
4.分子量分布(Mw/Mn)
下記の条件(1)~(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:東ソー社製HLC-8220
(2)分離カラム:東ソー社製TSKgel SuperHM-H(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
【0240】
5.省燃費性
シート状の加硫成形体から幅1mm又は2mm、長さ40mmの短冊状試験片を打ち抜き、試験に供した。測定は、粘弾性測定装置(上島製作所社製)によって、歪み1%及び周波数10Hzの条件下で、温度70℃での試験片の損失正接(tanδ(70℃))を測定した。省燃費性能を比較する際、ミクロ構造が大きく異なると運動性の違いにより省燃費性能が大きく異なるため、ミクロ構造が近い重合体同士で比較することが好ましい。
【0241】
[実施例1]
<変性共役ジエン系重合体の作製>
(工程1)
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、工業用ヘキサン(住友化学社製、商品名:ヘキサン(一般品)、密度0.68g/mL)10.2kg、1,3-ブタジエン720g、スチレン80g、テトラヒドロフラン6.1mL及びエチレングリコールジエチルエーテル1.1mLを重合反応器内に投入した。次に、重合開始剤の失活に作用する不純物を予め無毒化させるために、スカベンジャーとして少量のn-ブチルリチウム(n-BuLi)のヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを13.42mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0242】
重合反応を3時間行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン1080gとスチレン120gとを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素1.13mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0243】
(工程2)
工程1の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、変性剤である[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン8.90mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0244】
(工程3)
工程2の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、そこへn-BuLiを8.90mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0245】
2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)8.0g、及び、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)4.0gを重合反応器内に投入し、次に、重合体溶液中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、変性共役ジエン系重合体1を得た。
【0246】
<重合体組成物の調製>
変性共役ジエン系重合体1を100質量部、シリカ(デグッサ社製、商品名:ウルトラシルVN3-G)を80.0質量部、シランカップリング剤(デグッサ社製、商品名:Si69)を6.4質量部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:ダイヤブラックN339)を5.0質量部、伸展油(ジャパンエナジー社製、商品名:JOMOプロセスNC-140)を40.0質量部、老化防止剤(住友化学社製、商品名:アンチゲン6C)を2.0質量部、ワックス(大内新興化学工業社製、商品名:サンノックN)を1.5質量部、ワックス(ストラクトール社製、商品名:EF44)を1質量部、ステアリン酸を2.0質量部、亜鉛華を2.0質量部、ラボプラストミルにて混練して、重合体組成物を調製した。
【0247】
<加硫シートの作製>
得られた重合体組成物に、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールCZ)1.5質量部、加硫促進剤(住友化学社製、商品名:ソクシノールD)2.0質量部、硫黄1.5質量部を添加し、6インチロールでシートに成形し、該シートを160℃で55分加熱して加硫させ、加硫シートを作製した。
【0248】
[実施例2]
工程3において、n-BuLiを8.90mmol含有するn-ヘキサン溶液を、n-BuLiを17.80mmol含有するn-ヘキサン溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体2を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0249】
[比較例1]
工程3において、n-BuLiを含有するn-ヘキサン溶液を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体C1を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0250】
実施例1、2及び比較例1で得られた変性共役ジエン系重合体のビニル結合量、スチレン単位の含有量、工程2で用いた変性剤に対する工程3で用いたn-BuLiのモル比、ムーニー粘度、及び、加硫シートの省燃費性の評価結果を表1に示す。ここで、表1中のムーニー粘度は初期と促進試験後の差が小さいほど貯蔵安定性に優れ、省燃費性は、比較例1を100とした相対値であり、この数値が大きいほど、省燃費性に優れる。
【0251】
【表1】
【0252】
[実施例3]
<変性共役ジエン系重合体の作製>
(工程1)
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」10.2kg、1,3-ブタジエン608g、スチレン192g、テトラヒドロフラン6.1mL及びエチレングリコールジエチルエーテル4.6mLを重合反応器内に投入した。次に、少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを15.20mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0253】
重合反応を3時間行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン912gとスチレン288gとを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素1.16mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0254】
(工程2)
工程1の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン10.55mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0255】
(工程3)
工程2の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、そこへn-BuLiを10.55mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0256】
「スミライザーGM」8.0g及び「スミライザーTP-D」4.0gを重合反応器内に投入し、次に、重合体溶液中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、変性共役ジエン系重合体3を得た。
【0257】
<重合体組成物の調製及び加硫シートの作製>
変性共役ジエン系重合体3を用いた以外は、実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0258】
[実施例4]
工程3において、n-BuLiを10.55mmol含有するn-ヘキサン溶液を、n-BuLiを15.83mmol含有するn-ヘキサン溶液に変更した以外は、実施例3と同様にして、変性共役ジエン系重合体4を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例3と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0259】
[実施例5]
工程3において、n-BuLiを21.10mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加した以外は実施例3と同様にして、変性共役ジエン系重合体5を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例3と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0260】
[比較例2]
工程3において、n-BuLiを含有するn-ヘキサン溶液を添加しなかった以外は実施例3と同様にして、変性共役ジエン系共重合体C2を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例3と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0261】
実施例3~5及び比較例2で得られた変性共役ジエン系重合体のビニル結合量、スチレン単位の含有量、工程2で用いた変性剤に対する工程3で用いたn-BuLiのモル比、ムーニー粘度、及び、加硫シートの省燃費性の評価結果を表2に示す。ここで、表2中の省燃費性は、比較例2を100とした相対値である。
【0262】
【表2】
【0263】
[実施例6]
<変性共役ジエン系重合体の作製>
(工程1’)
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」10.2kg、1,3-ブタジエン608g、スチレン192g、テトラヒドロフラン6.1mL、エチレングリコールジエチルエーテル4.6mL及びビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン3.66mmolを重合反応器内に投入した。次に、少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを11.70mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0264】
重合反応を0.5時間行った後、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン4.88mmolを重合反応器内に投入し、更に重合反応を2.5時間行った。総計3時間の重合反応中は、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン912gとスチレン288gとを連続的に供給した。
【0265】
(工程3’)
工程1’の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、そこへn-BuLiを17.08mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0266】
「スミライザーGM」8.0g及び「スミライザーTP-D」4.0gを重合反応器内に投入し、次に、重合体溶液中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、変性共役ジエン系重合体6を得た。
【0267】
<重合体組成物の調製及び加硫シートの作製>
変性共役ジエン系重合体6を用いた以外は実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0268】
[実施例7]
工程3’において、n-BuLiを17.08mmol含有するn-ヘキサン溶液を、n-BuLiを34.16mmol含有するn-ヘキサン溶液に変更した以外は、実施例6と同様にして、変性共役ジエン系重合体7を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例6と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0269】
[比較例3]
工程3’において、n-BuLiを含有するn-ヘキサン溶液を添加しなかった以外は実施例6と同様にして、変性共役ジエン系重合体C3を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例6と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0270】
実施例6、7及び比較例3で得られた変性共役ジエン系重合体のビニル結合量、スチレン単位の含有量、工程1’で用いた変性剤に対する工程3’で用いたn-BuLiのモル比、ムーニー粘度、及び、加硫シートの省燃費性の評価結果を表3に示す。ここで、表3中の省燃費性は、比較例3を100とした相対値である。
【0271】
【表3】
【0272】
[実施例8]
<変性共役ジエン系重合体の作製>
(工程1’)
実施例6と同じように工程1’を行った。
【0273】
(工程2’)
工程1’の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド11.70mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0274】
(工程3’)
工程2’の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、そこへn-BuLiを17.08mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0275】
「スミライザーGM」8.0g及び「スミライザーTP-D」4.0gを重合反応器内に投入し、次に、重合体溶液中の揮発分の大部分を、常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、変性共役ジエン系重合体8を得た。
【0276】
<重合体組成物の調製及び加硫シートの作製>
変性共役ジエン系重合体8を用いた以外は実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0277】
[実施例9]
工程3’において、n-BuLiを17.08mmol含有するn-ヘキサン溶液を、n-BuLiを40.48mmol含有するn-ヘキサン溶液に変更した以外は、実施例8と同様にして、変性共役ジエン系重合体9を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例8と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0278】
[比較例4]
工程3’において、n-BuLiを含有するn-ヘキサン溶液を添加しなかった以外は実施例8と同様にして、変性共役ジエン系共重合体C4を得た。また、当該重合体を用いた以外は実施例8と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0279】
実施例8、9及び比較例4で得られた変性共役ジエン系重合体のビニル結合量、スチレン単位の含有量、工程1’で用いた変性剤に対する工程3’で用いたn-BuLiのモル比、ムーニー粘度、及び、加硫シートの省燃費性の評価結果を表4に示す。ここで、表4中の省燃費性は、比較例4を100とした相対値である。
【0280】
【表4】
【0281】
[実施例10]
<変性共役ジエン系重合体の作製>
(工程1)
内容積20Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄及び乾燥し、当該重合反応器の内部の雰囲気を乾燥窒素に置換した。次に、「ヘキサン(一般品)」10.2kg、1,3-ブタジエン608g、スチレン192g、テトラヒドロフラン6.1mL及びエチレングリコールジエチルエーテル4.6mLを重合反応器内に投入した。次に、少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、n-BuLiを15.20mmol含有するn-ヘキサン溶液を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。
【0282】
重合反応を3時間行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン912gとスチレン288gとを連続的に供給した。次いで、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、四塩化ケイ素1.16mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0283】
(工程2)
工程1の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、[3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン10.55mmolを重合溶液に添加し、15分間撹拌した。
【0284】
(工程3)
工程2の後、重合反応器温度を65℃に保ちながら、得られた重合溶液を重合反応器内で130rpmの撹拌速度で撹拌し、そこへn-BuLiを15.83mmol含有するn-ヘキサン溶液を添加し、15分間撹拌した。次いで、メタノール0.8mLを含むヘキサン溶液5mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。
【0285】
「スミライザーGM」8.0g及び「スミライザーTP-D」4.0gを重合反応器内に投入し重合体溶液を得た。該重合体溶液の一部を常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥したときのML粘度は41であった。次に、該重合体溶液を、スチームストリッピングにより脱溶媒した後、70℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥して、変性共役ジエン系重合体10を得た。変性共役ジエン系重合体10のML粘度は44であった。
【0286】
<重合体組成物の調製及び加硫シートの作製>
変性共役ジエン系重合体10を用いた以外は実施例1と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0287】
[比較例5]
工程3において、n-BuLiを含有するn-ヘキサン溶液を添加しなかった以外は実施例10と同様にして、重合体溶液を得た。該重合体溶液の一部を常温、24時間で蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥したときのML粘度は46であった。次に、該重合体溶液を実施例10と同様にして脱溶媒、乾燥して変性共役ジエン系重合体C5を得た。変性共役ジエン系重合体C5のML粘度は63であった。また、当該重合体を用いた以外は実施例10と同様にして、重合体組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0288】
実施例10及び比較例5で得られた変性共役ジエン系重合体のビニル結合量、スチレン単位の含有量、工程2で用いた変性剤に対する工程3で用いたn-BuLiのモル比、ムーニー粘度、及び、加硫シートの省燃費性の評価結果を表5に示す。ここで、表5中の省燃費性は、比較例5を100とした相対値である。また、ムーニー粘度は、減圧乾燥による値と、スチームストリッピングし、熱風乾燥した後の値であり、この差が小さいほど貯蔵安定性に優れる。
【0289】
【表5】