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特許7030157基板処理装置、プラズマ生成装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】基板処理装置、プラズマ生成装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20220225BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 A
C23C16/505
H01L21/31 C
H01L21/318 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020092013
(22)【出願日】2020-05-27
(62)【分割の表示】P 2019536413の分割
【原出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2020167166
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2017156343
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175509(JP,A)
【文献】特開2003-344465(JP,A)
【文献】特開2007-231424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
C23C 16/505
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/318
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
電源を供給する高周波電源と、
プラズマを発生する少なくとも1つのバッファ構造を備え、1つの前記バッファ構造に、前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置され、接地される第2電極と、を有するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとの整合をとるための整合器と、
前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとを一致させるように前記整合器の調整を行う調整部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置される第2電極との間に2つのプラズマ生成領域が形成され、前記高周波電源から前記少なくとも2本の第1の電極に電力が印加されると、前記2つのプラズマ生成領域でプラズマが生成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2電極は、前記少なくとも2本の第1電極に対して、共通に用いられる請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
高周波を発振する高周波発振器と、
前記高周波発振器からの進行波成分と前記整合器からの反射波成分の一部をそれぞれ取り出す方向性結合器と、を備える請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記方向性結合器によって取り出された前記反射波成分に加わったノイズ信号を除去するフィルタを有する請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記フィルタは、帯域通過フィルタである請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記帯域通過フィルタの通過帯域は、前記高周波発振器の発振周波数を通過させる周波数範囲である請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記フィルタは、前記方向性結合器によって取り出された前記反射波成分と前記進行波成分とを通過させる請求項記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記調整部は、前記方向性結合器によって取り出された前記反射波成分と前記進行波成分とを測定して、前記反射波成分と前記進行波成分の位相差が小さくなるように制御する電力モニタである請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ生成部は、前記高周波電源から前記少なくとも2本の第1電極に高周波電力を印加すると、反応ガスをプラズマ励起して前記基板に供給する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
電源を供給する高周波電源と、
プラズマを発生する少なくとも1つのバッファ構造を備え、1つの前記バッファ構造に、前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置され、接地される第2電極と、を有するプラズマ生成部と、
前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとの整合をとるための整合器と、
前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとを一致させるように前記整合器の調整を行う調整部と、を備えたプラズマ生成装置。
【請求項12】
基板を処理する処理室と、電源を供給する高周波電源と、プラズマを発生する少なくとも1つのバッファ構造を備え、1つの前記バッファ構造に、前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置され、接地される第2電極と、を有するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとの整合をとるための整合器と、前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとを一致させるように前記整合器の調整を行う調整部と、を備えた基板処理装置の前記処理室内に基板を搬入する工程と、
前記処理室内へ、前記プラズマ生成部によりプラズマ励起させた処理ガスを供給し、前記基板を処理する工程と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板を処理する処理室と、電源を供給する高周波電源と、プラズマを発生する少なくとも1つのバッファ構造を備え、1つの前記バッファ構造に、前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置され、接地される第2電極と、を有するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとの整合をとるための整合器と、前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとを一致させるように前記整合器の調整を行う調整部と、を備えた基板処理装置の前記処理室内に基板を搬入する手順と、
前記処理室内へ、前記プラズマ生成部によりプラズマ励起させた処理ガスを供給し、前記基板を処理する手順と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、プラズマ生成装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造工程の1つに、基板処理装置の処理室内に基板を搬入し、処理室内に供給した原料ガスと反応ガスなどの処理ガスにプラズマを用いて活性化させ、基板上に絶縁膜や半導体膜、導体膜等の各種膜を形成したり、各種膜を除去したりする基板処理が行われることがある。プラズマは、堆積する薄膜の反応を促進したり、薄膜から不純物を除去したり、あるいは成膜原料の化学反応を補助したりする為などに用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-92637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の高周波電源を用いてプラズマ生成を行う処理装置では、それぞれの高周波電源の周波数の差が相互に干渉してノイズとなってしまうため、安定したプラズマ生成を行うことができない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、複数の高周波電源を用いてプラズマ生成を行う場合でも、安定したプラズマ生成を行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
電源を供給する高周波電源と、
プラズマを発生するバッファ構造を備え、前記バッファ構造に、前記高周波電源に接続される少なくとも2本の第1電極と、前記少なくとも2本の第1電極の間に配置され、接地される第2電極と、を有するプラズマ生成部と、
前記プラズマ発生部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとの整合をとるための整合器と、
前記プラズマ生成部の負荷インピーダンスと前記高周波電源の出力インピーダンスとを一致させるように前記整合器の調整を行う調整部と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の高周波電源を用いてプラズマ生成を行う場合でも、安定したプラズマ生成を行うことが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図3】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図4】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る基板処理工程のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る基板処理工程におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る他の基板処理工程におけるガス供給のタイミングを示す図である。
図8】高周波電源273,373の構成を説明するための図である。
図9】BPF514の具体的な回路構成例を示す図である。
図10図9に示したBPF514の周波数特性を示す図である。
図11】高周波電源のその他の構成例を示す図である。
図12】高周波電源のその他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の実施形態>
以下、本発明の一実施形態の基板処理装置について図1から図10を参照しながら説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成 (加熱装置)
本発明の一実施形態の基板処理装置は、図1に示すように、処理炉202を有する。この処理炉202は基板を垂直方向多段に収容することが可能な、いわゆる縦型炉であり、加熱装置(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
(処理室)
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の内側である筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。なお、処理容器は上記の構成に限らず、反応管203のみを処理容器と称する場合もある。
【0012】
処理室201内には、ノズル249a,249b,249cが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。なお、ノズル249aが見える面の断面図を図1に示し、ノズル249b,249cが見える面の断面図を図2に示す。
【0013】
ノズル249a,249b,249cには、ガス供給管232a,232b,232cが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には3本のノズル249a,249b,249cと、3本のガス供給管232a,232b,232cとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。なお、マニホールド209を設置せず、反応管203のみを処理容器とした場合、ノズル249a,249b,249cは反応管203の側壁を貫通するように設けられていてもよい。
【0014】
ガス供給管232a,232b,232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241b,241cおよび開閉弁であるバルブ243a,243b,243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232b,232cのバルブ243a,243b,243cよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232d,232e,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d,232e,232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241d,241e,241fおよびバルブ243d,243e,243fがそれぞれ設けられている。
【0015】
ノズル249aは、図3に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249aは、ウエハ200が配列(載置)されるウエハ配列領域(載置領域)の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249aは、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直となる方向に設けられている。ノズル249aの側面には、ガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0016】
ノズル249b,249cは、ガス分散空間であるバッファ室237b,237c内にそれぞれ設けられている。バッファ室237b,237cは、図3に示すように、それぞれ反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、また、反応管203の内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237b,237cは、ウエハ配列領域の側方のウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにバッファ構造300,400によって形成されている。バッファ構造300,400は、石英などの絶縁物によって構成されており、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口302,304が形成され、バッファ構造400の円弧状に形成された壁面には、ガスを供給するガス供給口402,404が形成されている。
【0017】
ガス供給口302,304は、図3に示すように、後述する棒状電極269,270間、棒状電極270,271間のプラズマ生成領域224a,224bに対向する位置にそれぞれ反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口302,304は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。また、同様に、ガス供給口402,404は、棒状電極369,370間、棒状電極370,371間のプラズマ生成領域324a、324bに対向する位置にそれぞれ反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給口402,404は、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0018】
ノズル249b,249cは、それぞれ反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、ノズル249b,249cは、それぞれバッファ構造300,400の内側であって、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。すなわち、ノズル249b,249cは、処理室201内へ搬入されたウエハ200の端部の側方にウエハ200の表面と垂直となる方向に設けられている。
【0019】
ノズル249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは、バッファ構造300の円弧状に形成された壁面に対して径方向に形成された壁面に向くように(すなわち、ガス供給口302,304の開口向きとは異なる周方向に)開口しており、壁面に向けてガスを供給することが可能となっている。これにより、反応ガスがバッファ室237b内で分散され、棒状電極269~271に直接吹き付けることがなくなり、パーティクルの発生が抑制される。ガス供給孔250bは、ガス供給孔250aと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。なお、ノズル249cにおいてもノズル249bと同様の構造を有する。
【0020】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料として、例えば、所定元素としてのシリコン(Si)を含むシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0021】
シラン原料ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲン元素を含む原料ガス、すなわち、ハロシラン原料ガスを用いることができる。ハロシラン原料とは、ハロゲン基を有するシラン原料のことである。ハロゲン元素は、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
ハロシラン原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0023】
ガス供給管232bからは、上述の所定元素とは異なる元素を含むリアクタント(反応体)として、例えば、反応ガスとしての窒素(N)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。N含有ガスとしては、例えば、窒化水素系ガスを用いることができる。窒化水素系ガスは、NおよびHの2元素のみで構成される物質ともいえ、窒化ガス、すなわち、Nソースとして作用する。窒化水素系ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。
【0024】
ガス供給管232cからは、改質ガスとして例えば水素(H)ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。
【0025】
ガス供給管232d,232e,232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC241d,241e,241f、バルブ243d,243e,243f、ガス供給管232a,232b,232c、ノズル249a,249b,249cを介して処理室201内へ供給される。
【0026】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1のガス供給系としての原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2のガス供給系としての反応体供給系(リアクタント供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第3のガス供給系としての改質ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d,232e,232f、MFC241d,241e,241f、バルブ243d,243e,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、反応体供給系、改質ガス供給系および不活性ガス供給系を総称して単にガス供給系(ガス供給部)とも称する。なお、後述するように、第2のガス供給系と第3のガス供給系は同一ガスを供給するようにしても良い。
【0027】
(プラズマ生成装置)
バッファ室237b内には、図3に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する3本の棒状電極269,270,271が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の配列方向に沿って配設されている。棒状電極269,270,271のそれぞれは、ノズル249bと平行に設けられている。棒状電極269,270,271のそれぞれは、上部より下部にわたって電極保護管275により覆われることで保護されている。棒状電極269,270,271のうち両端に配置される棒状電極269,271は、整合器272を介して高周波電源273に接続されている。棒状電極270は、基準電位であるアースに接続され、接地されている。すなわち、高周波電源273に接続される棒状電極と、接地される棒状電極と、が交互に配置され、高周波電源273に接続された棒状電極269,271の間に配置された棒状電極270は、接地された棒状電極として、棒状電極269,271に対して共通して用いられている。換言すると、接地された棒状電極270は、隣り合う高周波電源273に接続された棒状電極269,271に挟まれるように配置され、棒状電極269と棒状電極270、同じく、棒状電極271と棒状電極270がそれぞれ対となるように構成されてプラズマを生成する。つまり、接地された棒状電極270は、棒状電極270に隣り合う2本の高周波電源273に接続された棒状電極269,271に対して共通して用いられている。そして、高周波電源273から棒状電極269,271に高周波(RF)電力を印加することで、棒状電極269,270間のプラズマ生成領域224a、棒状電極270,271間のプラズマ生成領域224bにプラズマが生成される。
【0028】
同様に、バッファ室237c内には、図3に示すように、導電体からなり、細長い構造を有する3本の棒状電極369,370,371が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の配列方向に沿って配設されている。この3本の棒状電極369,370,371は、上記で説明した3本の棒状電極269,270,271と同様な構成となっている。
【0029】
そして、棒状電極269,270,271によりプラズマ生成領域224a,224bにプラズマを生成する第1のプラズマ発生部が構成される。同様に、棒状電極369,370,371によりプラズマ生成領域324a,324bにプラズマを生成する第2のプラズマ発生部が構成される。なお、電極保護管275をプラズマ発生部に含めて考えてもよい。そして、高周波電源273,373と、整合器272,372および上記で説明した第1および第2のプラズマ発生部によりプラズマ生成装置が構成される。
【0030】
プラズマ生成装置は、後述するように、ガスをプラズマ励起、すなわち、プラズマ状態に励起(活性化)させるプラズマ励起部(活性化機構)として機能する。そして、プラズマ生成装置は、上述したように複数のプラズマ発生部を有して、この複数のプラズマ発生部により発生したプラズマを用いて基板処理を行うことにより成膜処理を行うために用いられる。
【0031】
そして、高周波電源273,373は、複数のプラズマ発生部のそれぞれに電源を供給する。また、整合器272,372は、2台の高周波電源273,373と、2つのプラズマ発生部との間に設けられ、プラズマ発生部の負荷インピーダンスと高周波電源273,373の出力インピーダンスとの整合をそれぞれとるために設けられている。
【0032】
なお、バッファ構造300とバッファ構造400は、排気管231を挟んで、排気管231と反応管203の中心を通る線に対して線対称に設けられている。また、ノズル249aは、排気管231のウエハ200を挟んで対向する位置に設けられている。また、ノズル249bとノズル249cは、それぞれバッファ室237内の排気管231から遠い位置に設けられている。
【0033】
電極保護管275は、棒状電極269,270,271,369,370,371のそれぞれをバッファ室237b,237c内の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237b,237c内へ挿入できる構造となっている。電極保護管275の内部のO濃度が外気(大気)のO濃度と同程度であると、電極保護管275内へそれぞれ挿入された棒状電極269,270,271,369,370,371は、ヒータ207による熱で酸化されてしまう。このため、電極保護管275の内部にN2ガス等の不活性ガスを充填しておくか、不活性ガスパージ機構を用いて電極保護管275の内部をNガス等の不活性ガスでパージすることで、電極保護管275の内部のO濃度を低減させ、棒状電極269,270,271,369,370,371の酸化を防止することができる。
【0034】
(排気部)
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気管231は、反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a,249b,249cと同様にマニホールド209に設けてもよい。
【0035】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0036】
(基板支持具)
図1図2に示すように基板支持具としてのボート217は、1枚または複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、所定の間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。
【0037】
図3に示すように反応管203の内部には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度を所望の温度分布とする。温度センサ263は、ノズル249a,249b,249cと同様に反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0038】
(制御装置)
次に制御装置について図4を用いて説明する。図4に示すように、制御部(制御装置)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0039】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各種処理(成膜処理)における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0040】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、整合器272,372、高周波電源273,373、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0041】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、回転機構267の制御、MFC241a~241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の正逆回転、回転角度および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0042】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0043】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態の基板処理装置を使用して、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200上に薄膜を形成する工程について、図5及び図6を参照しながら説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0044】
ここでは、原料ガスとしてDCSガスを供給するステップと、反応ガスとしてプラズマ励起させたNHガスを供給するステップと、改質ガスとしてプラズマ励起させたHガスを供給するステップとを非同期に、すなわち同期させることなく所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、SiおよびNを含む膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明する。また、例えば、ウエハ200上には、予め所定の膜が形成されていてもよい。また、ウエハ200または所定の膜には予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0045】
本明細書では、図5に示す成膜処理のプロセスフローを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の実施形態の説明においても、同様の表記を用いることとする。
【0046】
(DCS→NH →H )×n ⇒ SiN
【0047】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0048】
(搬入ステップ:S1)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0049】
(圧力・温度調整ステップ:S2)
処理室201の内部、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。続いて、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0050】
(成膜ステップ:S3,S4,S5,S6,S7,S8)
その後、ステップS3,S4,S5,S6,S7,S8を順次実行することで成膜ステップを行う。
【0051】
(原料ガス供給ステップ:S3,S4)
ステップS3では、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する。
【0052】
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へDCSガスを流す。DCSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介してガス供給孔250aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243dを開き、ガス供給管232d内へNガスを流してもよい。Nガスは、MFC241dにより流量調整され、DCSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0053】
また、ノズル249b,249c内へのDCSガスの侵入を抑制するため、バルブ243e,243fを開き、ガス供給管232e,232f内へNガスを流してもよい。Nガスは、ガス供給管232b,232c、ノズル249b,249cを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0054】
MFC241aで制御するDCSガスの供給流量は、例えば1sccm以上、6000sccm以下、好ましくは2000sccm以上、3000sccm以下の範囲内の流量とする。MFC241d,241e,241fで制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば100sccm以上、10000sccm以下の範囲内の流量とする。処理室201内の圧力は、例えば1Pa以上、2666Pa以下、好ましくは665Pa以上、1333Paの範囲内の圧力とする。DCSガスの供給時間は、例えば1秒以上、10秒以下、好ましくは1秒以上、3秒以下の範囲内の時間とする。
【0055】
ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば0℃以上700℃以下、好ましくは室温(25℃)以上550℃以下、より好ましくは40℃以上500℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定する。本実施形態のように、ウエハ200の温度を700℃以下、さらには550℃以下、さらには500℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減させることができ、ウエハ200が受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。
【0056】
上述の条件下でウエハ200に対してDCSガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、Clを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層はClを含むSi層であってもよいし、DCSの吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。以下、Clを含むSi含有層を、単にSi含有層とも称する。
【0057】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのDCSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244を開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはSi含有層の形成に寄与した後のDCSガスや反応副生成物等を処理室201内から排除する(S4)。また、バルブ243d,243e,243fは開いたままとして、処理室201内へのNガスの供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用する。なお、このステップS4を省略してもよい。
【0058】
原料ガスとしては、DCSガスのほか、テトラキスジメチルアミノシランガス、トリスジメチルアミノシランガス、ビスジメチルアミノシランガス、ビスジエチルアミノシランガス、ビスターシャリーブチルアミノシランガス、ジメチルアミノシランガス、ジエチルアミノシランガス、ジプロピルアミノシランガス、ジイソプロピルアミノシランガス、ブチルアミノシランガス、ヘキサメチルジシラザンガス等の各種アミノシラン原料ガスや、モノクロロシランガス、トリクロロシランガス、テトラクロロシランガス、ヘキサクロロジシランガス、オクタクロロトリシランガス等の無機系ハロシラン原料ガスや、モノシランガス、ジシランガス、トリシランガス等のハロゲン基非含有の無機系シラン原料ガスを好適に用いることができる。
【0059】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0060】
(反応ガス供給ステップ:S5,S6)
成膜処理が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して反応ガスとしてのプラズマ励起させたNHガスを供給する(S5)。
【0061】
このステップでは、バルブ243b,243d~243fの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243d~243fの開閉制御と同様の手順で行う。NHガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介してバッファ室237b内へ供給される。このとき、棒状電極269,270,271間に高周波電力を供給する。バッファ室237b内へ供給されたNH3ガスはプラズマ状態に励起され(プラズマ化して活性化され)、活性種(NH )として処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0062】
MFC241bで制御するNHガスの供給流量は、例えば100sccm以上、10000sccm以下、好ましくは1000sccm以上、2000sccm以下の範囲内の流量とする。棒状電極269,270,271に印加する高周波電力は、例えば50W以上、600W以下の範囲内の電力とする。処理室201内の圧力は、例えば1Pa以上、500Pa以下の範囲内の圧力とする。プラズマを用いることで、処理室201内の圧力をこのような比較的低い圧力帯としても、NHガスを活性化させることが可能となる。NHガスをプラズマ励起することにより得られた活性種をウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1秒以上、180秒以下、好ましくは1秒以上、60秒以下の範囲内の時間とする。その他の処理条件は、上述のS3と同様な処理条件とする。
【0063】
上述の条件下でウエハ200に対してNHガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層がプラズマ窒化される。この際、プラズマ励起されたNHガスのエネルギーにより、Si含有層が有するSi-Cl結合、Si-H結合が切断される。Siとの結合を切り離されたCl、Hは、Si含有層から脱離することとなる。そして、Cl等が脱離することで未結合手(ダングリングボンド)を有することとなったSi含有層中のSiが、NHガスに含まれるNと結合し、Si-N結合が形成されることとなる。この反応が進行することにより、Si含有層は、SiおよびNを含む層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと変化させられる。なお、この変化を伴う処理を改質処理と呼ぶ場合もある。
【0064】
なお、Si含有層をSiN層へと改質させるには、NHガスをプラズマ励起させて供給する必要がある。NHガスをノンプラズマの雰囲気下で供給しても、上述の温度帯では、Si含有層を窒化させるのに必要なエネルギーが不足しており、Si含有層からClやHを充分に脱離させたり、Si含有層を充分に窒化させてSi-N結合を増加させたりすることは、困難なためである。
【0065】
Si含有層をSiN層へ変化させた後、バルブ243bを閉じ、NHガスの供給を停止する。また、棒状電極269,270,271間への高周波電力の供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するNHガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S6)。なお、このステップS6を省略してもよい。
【0066】
窒化剤、すなわち、プラズマ励起させるNH含有ガスとしては、NHガスの他、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等を用いてもよい。
【0067】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、ステップS4で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0068】
(改質ガス供給ステップ:S7,S8)
Si含有層をSiN層へ変化させる改質処理が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して改質ガスとしてのプラズマ励起させたHガスを供給する(S7)。
【0069】
このステップでは、バルブ243c,243d~243fの開閉制御を、ステップS3におけるバルブ243a,243d~243fの開閉制御と同様の手順で行う。Hガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介してバッファ室237c内へ供給される。このとき、棒状電極369,370,371間に高周波電力を供給する。バッファ室237c内へ供給されたHガスはプラズマ状態に励起され(プラズマ化して活性化され)、活性種(H )として処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0070】
上述したステップにより形成されているSiN層に対してプラズマ励起されたHガス、すなわち水素の活性種(H )を供給することで、ウエハ200上に形成されているSiN層に存在する塩素原子を除去することができ、高品質なSiN層を得ることができる(改質することができる)。
【0071】
その後、バルブ243cを閉じ、Hガスの供給を停止する。また、棒状電極369,370,371間への高周波電力の供給を停止する。そして、ステップS4,S6と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するHガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(S8)。なお、このステップS8を省略してもよい。
【0072】
不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、ステップS4で例示した各種希ガスを用いることができる。
【0073】
(所定回数実施:S9)
上述したS3,S4,S5,S6,S7,S8をこの順番に沿って非同時に、すなわち、同期させることなく行うことを1サイクルとし、このサイクルを所定回数(n回)、すなわち、1回以上行う(S9)ことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiN膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiN層の厚さを所望の膜厚よりも小さくし、SiN層を積層することで形成されるSiN膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0074】
(大気圧復帰ステップ:S10)
上述の成膜処理が完了したら、ガス供給管232d,232e,232fのそれぞれから不活性ガスとしてのNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガス等が処理室201内から除去される(不活性ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(S10)。
【0075】
(搬出ステップ:S11)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される(S11)。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出されることとなる(ウエハディスチャージ)。なお、ウエハディスチャージの後は、処理室201内へ空のボート217を搬入するようにしてもよい。
【0076】
このように本実施形態では、上記で説明したような基板処理方法によりウエハ200に対する基板処理が実行されて半導体装置が製造される。つまり、本実施形態の基板処理装置の処理室201内にウエハ200を搬入する工程と、処理室201内へプラズマ生成装置によりプラズマ励起させた処理ガスを供給して、搬入したウエハ200を処理する工程と、処理室201内から処理後のウエハ200を搬出する工程とを行うことにより半導体装置を製造する製造方法が実現される。そして、コントローラ12は、上記で説明したプラズマ生成処理を制御するプラズマ制御装置として機能する。
【0077】
なお、第2のガス供給系と第3のガス供給系は同一ガスを供給するようにしても良い。
すなわち、例えば、第2のガス供給系を第1の反応体供給系とし、第3のガス供給系を第
2の反応体供給系として第2のガス供給系と同一の反応体を供給するように構成しても良
い。
【0078】
例えば、図7に示すように、原料ガスとしてDCSガスを供給し、第2のガス供給系と第3のガス供給系からは同一の反応体としてNHガスを供給するようにしてもよい。その際、NHガスのガス源は同一のものとしても良いし、個別に配置するようにしても良い。
【0079】
この場合、原料ガスとしてDCSガスを供給するステップと、反応ガスとしてプラズマ励起させたNHガスを供給するステップとを非同時に、すなわち同期させることなく所定回数(1回以上)行うことで、ウエハ200上に、SiおよびNを含む膜として、シリコン窒化膜(SiN膜)が形成され、反応プロセスは以下のようになる。
【0080】
(DCS→NH )×n ⇒ SiN
【0081】
(3)整合器272,372の調整
次に、整合器272,372の調整を行ってプラズマ発生部の負荷インピーダンスと高周波電源273,373の出力インピーダンスとを一致させるインピーダンスマッチングを行う際の処理について説明する。
【0082】
先ず、高周波電源273,373の構成について図8を参照して説明する。
【0083】
高周波電源273は、図8に示されるように、発振器511と、増幅器512と、方向性結合器(カプラ)513と、バンドパスフィルタ(以降、BPFと略す。)514と、電力モニタ515とから構成されている。
【0084】
図8に示されるように、高周波電源273と高周波電源373とは同様な構成となっており、発振器(高周波発振器)511、増幅器512、方向性結合器513、BPF514、電力モニタ515は、それぞれ、発振器521、増幅器522、方向性結合器523、BPF524、電力モニタ525と対応する構成となっている。そのため、以降の説明においては、主として高周波電源273の構成について説明する。
【0085】
本実施形態において、発振器511は、28MHz(周波数f1)の高周波を発振し、高周波電源373における発振器521は、30MHz(周波数f2)の高周波を発振するものとして説明する。なお、発振器511,521のそれぞれの発振周波数はこれに限られず、例えば13.56MHzなどの周波数帯を利用しても良い。
【0086】
増幅器512は、発振器511により発振された高周波を増幅して方向性結合器513に出力する。
【0087】
方向性結合器513は、発振器511の後段に配置され、発振器511からの進行波成分と整合器272からの反射波成分の一部をそれぞれ取り出す。
【0088】
BPF514は、方向性結合器513によって取り出された反射波成分に加わったノイズ信号を除去するためのフィルタである。なお、BPF514は同一特性の2つのフィルタにより構成され、反射波成分と進行波成分の間の位相ずれを相殺するために、方向性結合器513によって取り出された進行波成分もBPF514を通過するような構成となっている。
【0089】
そして、電力モニタ515は、BPF514を通過後の反射波成分と、方向性結合器513によって取り出されたBPF514を通過後の進行波成分との比(反射係数)を測定して、この比の値が小さくなるように整合器272をフィードバック制御し、反射波成分と進行波成分の位相差が小さくなるように制御する。
【0090】
なお、BPF514,524は、2台の高周波電源273,373のそれぞれの発振器511,521間の発振周波数の差に起因するノイズを除去するための帯域通過フィルタである。具体的には、BPF514は、2つの発振器511,521間の発振周波数の差である2MHz(=|f1-f2|)の成分と、その高調波成分のノイズを除去するような通過帯域となるように設定されている。そして、BPF514,524の通過帯域は、2台の高周波電源273,373のそれぞれの発振器511,521の発振周波数28MHz、30MHzを通過させるような周波数範囲となるように設定されている。すなわち、BPF514の通過帯域は中心周波数を28MHzとして±2MHzとなる26MHz~30MHzを通過帯域とし、BPF524の通過帯域は中心周波数を30MHzとして±2MHzとなる28MHz~32MHzを通過帯域として設定される。
【0091】
ここで、BPF514の具体的な回路構成例を図9に示し、その周波数特性を図10に示す。なお、図9では、BPF514に入力された反射波成分のノイズを除去するためのフィルタ構成のみを示すが、方向性結合器513により取り出された進行波成分についても同様のフィルタ構成を通過するようになっている。
【0092】
BPF514の回路構成は、広帯域オペアンプ(演算増幅器)81を用いた非反転型増幅器として構成されており、方向性結合器513からの反射波が入力信号Vinとして、非反転入力端子に入力されている。そして、広帯域オペアンプ81には、コンデンサC1、C2、抵抗R1、R2等の回路素子が接続されており、出力信号Voutを電力モニタ515に出力するような回路構成となっている。
【0093】
なお、図9に示した回路構成では、C1は245pF、C2は212pFとなっており、R1,R2は、それぞれ25Ωとなっている。そのため、図10に示すように、BPF514の低域側の遮断周波数(カットオフ周波数)FL(1/(2π・C1・R1))は、約26MHz、高域側の遮断周波数FH(1/(2π・C2・R2))は、約30MHzとなっている。また、BPF524の場合には、C1を227pF、C2を200pFとして、FLは約28MHzとなり、FHは約32MHzとなる。
【0094】
つまり、BPF514(524)は、発振器511(521)の発振周波数である28MHz(30MHz)の周波数成分は通過させ、この2つの差分周波数である2MHzのノイズ信号を除去することができるような周波数特性となるように設定されている。
【0095】
そのため、BPF514,524では、方向性結合器513,523により分離された進行波成分、反射成分の信号は大きなロスなく通過し、ノイズ成分のみが除去されることになる。
【0096】
その結果、電力モニタ515,525において行われる整合器272,372のフィードバック制御もノイズ成分による影響を大きく受けることなく正確に行われ、第1のプラズマ発生部および第2のプラズマ発生部における成膜特性およびエッチング特性の安定化が図られ、ウエハ処理に対する生産性や安定性が向上することになる。
【0097】
つまり、本実施形態によれば、複数の高周波電源273,373を用いてプラズマ生成を行う場合でも、安定したプラズマ生成を行うことが可能になるという効果を得ることができる。
【0098】
なお、第1のプラズマ発生部におけるプラズマ特性と、第2のプラズマ発生部におけるプラズマ特性との差異をできるだけ発生させずに均一な基板処理特性や成膜特性を実現しようとした場合、高周波電源273,373の発振周波数はできるだけ同じ方が好ましい。
【0099】
しかし、発振器511,521の発振周波数を同一にしようとしても、発振器の個体差や、温度、湿度等の環境条件の違いにより発振周波数が完全に同一な複数の発振器を構成することは困難である。そのため、複数の高周波電源の発振周波数を同一にしようとした場合、かえって数Hz~数100Hzといった周波数が不定な相互干渉ノイズが発生してしまう可能性がある。
【0100】
そして、発生するノイズ成分の周波数が大きくばらついてしまうと、ノイズ成分を除去するためにフィルタを用いたとしても効果的に除去ができない場合が発生し得る。そして、ノイズ成分が除去できないと装置内部で誤動作が発生してしまう可能性も否定できない。特に、上記で説明したように方向性結合器513,523から取り出しは反射波成分のノイズ成分が効果的に除去できない場合、整合器272,372のフィードバック制御に影響がおよびプラズマ生成特性を悪化しかねない。そして、プラズマ生成特性が悪化することにより、生成されるプラズマの生成量が著しく低下してしまい、成膜特性が大幅に悪化してしまう可能性がある。
【0101】
そのため、本実施形態では、2つの高周波電源273,373の発振周波数を意図的に2MHzずらして、相互干渉ノイズの周波数を特定できるようにして、発生した相互干渉ノイズを効果的に除去することが可能なようにBPF514,524を構成している。
【0102】
なお、BPFを、高周波電源273と整合器272との間や、高周波電源373と整合器372との間に設けるようにして、ノイズ成分を除去することも可能である。しかし、このような場所にBPFを設けた場合、BPFには非常に大きな高周波電力が通過することにより、耐電圧特性や耐電流特性が大きなコンデンサやコイル等の回路素子を用いてBPFを構成する必要があり、BPFの形状が大型化する。そのため、このようなBPFの配置方法では、設置空間の確保が困難となったり、コストが向上する等の問題が発生する可能性がある。
【0103】
これに対して、本実施形態の基板処理装置では、方向性結合器513,523を設けることにより、発振器511,521で発振され増幅器512,522で増幅された高周波電力の一部を取り出すことにより、大きな高周波電力よりも数十dB減衰した信号がBPF514,524に入力されることになる。
【0104】
そのため、本実施形態における配置方法によれば、BPF514,524の形状を小型とすることにより、設置空間も少なくコストも低く抑えることが可能となる。また、本実施形態における配置方法によれば、反射波信号成分だけを正確に取得することが可能となる。
【0105】
なお、本実施形態では、2つの高周波電源273,373を同様な構成とする場合について説明したが、2つの高周波電源273,373のうちのどちらか一方のみを図8に示したような構成とするようにしても良い。また、本実施形態では、2つの周波電源273,373を用いて2つのプラズマ発生部に高周波電源を供給する場合の構成について説明したが、3つ以上の複数のプラズマ発生部に高周波電源を供給するような構成を用いた場合でも本発明は同様に適用可能である。
【0106】
(4)高周波電源のその他の構成
図8に示した高周波電源273,373とは異なるその他の構成を図11図12を参照して説明する。
【0107】
図11は、高周波電源373の替りに高周波電源373aを置き換えた構成である。高周波電源373aは、図11に示すように、高周波電源373から発振器521を削除して、高周波電源273の発振器511の発振周波数を入力するように構成された点が異なっている。
【0108】
この図11に示したような構成では、高周波電源273,373aの発振周波数が28MHzで同一になるため相互干渉ノイズがほぼゼロとなるため、BPF514,524のフィルタ設計が容易になる。しかし、周波数を変化させて整合を取りたい場合には、複数のプラズマ発生部間のインピーダンスに差が生じないように注意を払う必要がある。
【0109】
また、高周波電源273の発振器511からの信号を、増幅器512と増幅器522に信号線で分配する際に、高周波電源273,373それぞれの出力に位相差が発生しないように、分配する信号線の距離を同じにすることが望ましい。
【0110】
そのため、図12に示すように、1つの筐体内に2つの高周波電源の電気回路を収納して1つの高周波電源473として構成する構造を採用し、発振器511からの増幅器512までの距離と、発振器511から増幅器522までの距離がほぼ同じとなるようにし、スイッチ90により発振器511と発振器521とを切替え可能とする構成とすることが望ましい。このように構成することによって、通常使用時は、発振器511、512のそれぞれを用いて基板処理を行い、経年劣化等の問題によって相互干渉ノイズを除去しきれなくなった場合には発振器511のみを用いて基板処理するように高周波電源473を制御することで、第1および第2のプラズマ発生部のそれぞれに均一なプラズマを生成することが可能となる。なお、上述とは逆に初めは発振器511のみを使用し、第1のプラズマ発生部と第2のプラズマ発生部のプラズマ生成に差が生じた場合に第2の発振器521を用いるようにしてもよい。
【0111】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0112】
例えば、上述の実施形態では、2つのバッファ構造を設けた場合に、バッファ構造ごとに異なる反応ガスをプラズマ励起してウエハに供給する構成について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、同一の反応ガスをプラズマ励起してウエハに供給するようにしてもよい。
【0113】
また、上述の実施形態では、原料を供給した後に反応ガスを供給する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、原料、反応ガスの供給順序は逆でもよい。すなわち、反応ガスを供給した後に原料を供給するようにしてもよい。供給順序を変えることにより、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0114】
また、上述の実施形態では、ウエハ200上にSiN膜を形成する例について説明した。本発明はこのような態様に限定されず、ウエハ200上に、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜を形成する場合や、ウエハ200上にシリコン炭窒化膜(SiCN膜)、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)、シリコン硼炭窒化膜(Si
BCN膜)、硼炭窒化膜(BCN膜)等のSi系窒化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。これらの場合、反応ガスとしては、O含有ガスの他、C等のC含有ガスや、NH等のN含有ガスや、BCl等のB含有ガスを用いることができる。
【0115】
また、本発明は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む酸化膜や窒化膜、すなわち、金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本発明は、ウエハ200上に、TiN膜、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜等の金属系薄膜を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0116】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタンガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウムガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウムガス、トリメチルアルミニウムガス、チタニウムテトラクロライドガス、ハフニウムテトラクロライドガス等を用いることができる。反応ガスとしては、上述の反応ガスを用いることができる。
【0117】
すなわち、本発明は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0118】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0119】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
272,372 整合器
273,373,373a,473 高周波電源
511,521 発振器
513,523 方向性結合器
514,524 BPF(バンドパスフィルタ)
515,525 電力モニタ
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上述べたように、本発明は、複数の高周波電源を用いてプラズマ生成を行う場合でも、安定したプラズマ生成を行うことが可能となる技術を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12