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特許7030204基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-24
(45)【発行日】2022-03-04
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220225BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220225BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20220225BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20220225BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220225BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
C23C16/50
H05H1/46 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020547917
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009658
(87)【国際公開番号】W WO2020059174
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018175638
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 剛
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050979(WO,A1)
【文献】特開平09-074089(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032596(WO,A1)
【文献】特開平08-213196(JP,A)
【文献】特開平11-087092(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013458(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/094140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
C23C 16/50
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、
前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、
前記第2プラズマユニットは、前記処理室の上部の内部に突出するように設けられる絶縁部材と、前記絶縁部材に沿うように設けられるコイルと、を有する基板処理装置。
【請求項2】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、
前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、
前記第2プラズマユニットは、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールドによりシールドされる基板処理装置。
【請求項3】
前記第2プラズマユニットに設けられる前記コイルは、前記絶縁部材で保護された導電性のU字形状である請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
高周波電源から前記第2プラズマユニットに供給される高周波電力は、前記コイルの一端と接続された整合器と、前記コイルの他端と導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールドが接続された接地部を介して前記コイルに供給される請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1プラズマユニットは、導電性のスパイラル形状のコイルと、導電性の円筒体形状の電磁波シールドで構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記導電性のスパイラス形状のコイルは、一端から他端までの間の所定位置の前記コイルの巻径が他の位置の前記コイルの巻径と異なるように形成されるコイルである請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
高周波電源から前記第1プラズマユニットに供給される高周波電力は、前記コイルの両端に接続される整合器と、前記コイルの中間付近と前記電磁波シールドが接続される接地部を介して前記コイルに供給される請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1プラズマユニットに永久磁石が設けられている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記永久磁石は、前記第1プラズマユニットに設けられるコイルの上下に設けられる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、前記処理室の上部の内部に突出するように設けられる絶縁部材と、前記絶縁部材に沿うように設けられるコイルと、を有する基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する工程と、
前記処理室から前記基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールドによりシールドされる基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する工程と、
前記処理室から前記基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、前記処理室の上部の内部に突出するように設けられる絶縁部材と、前記絶縁部材に沿うように設けられるコイルと、を有する基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する工程と、
前記処理室から前記基板を搬出する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項13】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールドによりシールドされる基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する工程と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する工程と、
前記処理室から前記基板を搬出する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項14】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、前記処理室の上部の内部に突出するように設けられる絶縁部材と、前記絶縁部材に沿うように設けられるコイルと、を有する基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する手順と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する手順と、
前記処理室から前記基板を搬出する手順と、
をコンピュータを用いて前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項15】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を備え、前記第2プラズマユニットは、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールドによりシールドされる基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する手順と、
前記処理室内に前記処理ガスを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板上に前記第1プラズマユニットおよび前記第2プラズマユニットにより前記処理ガスのプラズマを生成する手順と、
前記処理室から前記基板を搬出する手順と、
をコンピュータを用いて前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法プログラムおよびプラズマユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(Large Scale Integrated Circuit:以下LSI)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、Flash Memoryなどに代表される半導体装置の高集積化に伴って、回路パターンの微細化が進められている。半導体装置の製造工程では、微細化を実現する処理として、プラズマを用いた処理が行われることがある。例えば、特許文献1に記載の技術が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-092533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微細化に伴い、基板面内で均一に処理させることが求められているが、活性化されたガスが、基板面内に均一に供給されない場合が有る。この様な場合、基板面内に均一な膜を形成することが困難となる。
【0005】
本開示は、基板面内に均一な膜を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内に対して処理ガスを供給するガス供給系と、前記処理室の外周に巻き回すように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第1プラズマユニットと、前記処理室の上部であって内部に突出するように設けられ、前記処理室内で前記処理ガスのプラズマを生成する第2プラズマユニットと、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、基板面内に均一な膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る基板処理工程のシーケンス例である。
図5】本開示の第二実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の実施の形態について説明する。
【0010】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本開示の第一実施形態に係る基板処理装置について説明する。
【0012】
本実施形態に係る基板処理装置100について説明する。基板処理装置100は、例えば、絶縁膜形成ユニットであり、図1に示されているように、枚葉式基板処理装置として構成されている。
【0013】
図1に示すとおり、基板処理装置100は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば水平断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料または、石英やアルミナなどの絶縁材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理室201、移載室203が形成されている。処理容器202は、主に、蓋231と上部容器202aと下部容器202bと、上部容器202aと下部容器202bの間に設けられた仕切り板204とで構成されている。なお、蓋231と上部容器202aと仕切り板204と後述の第2ガス分散板ユニット235bと後述の第2プラズマユニット270bに囲まれた空間を処理室201と呼び、下部容器202bに囲まれた空間を移載室203と呼ぶ。
【0014】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ1490に隣接した基板搬入出口1480が設けられており、ウエハ200は基板搬入出口1480を介して図示しない搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0015】
処理室201には、ウエハ200を支持する基板支持部210が設けられている。基板支持部210は、ウエハ200を載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212に内包された加熱部としてのヒータ213、サセプタ電極256、を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0016】
サセプタ電極256には、バイアス調整器257が接続され、サセプタ電極256の電位を調整可能に構成されている。バイアス調整器257は、コントローラ260にてサセプタ電極256の電位を調整する様に構成される。
【0017】
基板載置台212はシャフト217によって支持される。シャフト217は、下部容器202bの底部を貫通しており、更には下部容器202bの外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、処理室201は気密が保持されている。
【0018】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、図1の破線で示すウエハ移載位置まで下降し、ウエハ200の処理時には図1の示した処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0019】
具体的には、基板載置台212をウエハ移載位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が貫通孔214を通って基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン207は、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナや炭化ケイ素などの材質で形成することが望ましい。
【0020】
(排気系)
下部容器202bの側部には、処理室201および移載室203の雰囲気を排気する排気口221が設けられている。排気口221には排気管224が接続されており、排気管224には、処理室201を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器227と真空ポンプ223が順に直列に接続されている。
【0021】
(ガス導入口)
仕切り板204の側部には、処理室201に各種ガスを供給するための第1ガス導入口241aが設けられている。また、処理室201の上部に、処理室201に各種ガスを供給するための第2ガス導入口241bが設けられている。第1ガス供給部である第1ガス導入口241aおよび第2ガス供給部である第2ガス導入口241bに接続される各ガス供給ユニットの構成については後述する。
【0022】
(ガス分散ユニット)
ガスを分散させる機構としての第1ガス分散ユニット235aは、第1バッファ室232aと複数の第1分散孔234aから成なるリング状の形状を有し、仕切り板204と隣接配置されている。同様に、第2ガス分散ユニット235bは、第2バッファ室232bと複数の第2分散孔234bから成るリング状の形状を有し、蓋231と後述の第2プラズマユニット270bの間に配置されている。第1ガス導入口241aから導入される第1ガスは、第1ガス分散ユニット235aの第1バッファ室232aに供給され、複数の第1分散孔234aを介して処理室201に供給される。第2ガス導入口241bから導入される第2ガスは、第2ガス分散ユニット235bの第2バッファ室232bに供給され、複数の第2分散孔234bを介して処理室201に供給される。
【0023】
(第1プラズマユニット)
上部容器202aの外周に巻き回すように配置された第1プラズマユニット270aは、導電性の金属パイプから成る1巻から10巻のスパイラル形状のコイル電極(コイル)253aと、導電性の金属板により構成される円筒体形状の電磁波シールド254aで構成されている。高周波電源252aからの高周波電力は、コイル電極253aの両端に並行接続された整合器251aと、コイル電極253aの中間付近と電磁波シールド254aが接続された接地部を介して供給される。処理室201に反応ガスを供給すると、コイル電極253aが作る交流磁場に誘導されて、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、略称:ICP)が生成される。永久磁石255は、プラズマ生成の補助として、必要に応じてコイル電極253aの上下に導入することができる。この場合、永久磁石255が作る直流磁場Bは、コイル電極253aが誘導して作るプラズマ電流Jと作用して生じるJxBドリフトモードのプラズマや、コイル電極253aから発生する交流電場Eと作用して生じるExBドリフトモードのプラズマが生成される。これらにより、プラズマ密度が高まり、反応ガスの活性種の生成量を大幅に向上させることができる。なお、コイル電極253aの代わりに平板電極を用いた容量結合プラズマ(Capactively Coupled Plasma、略称:CCP)を採用することもできるが、永久磁石255の磁場と作用して生じるプラズマはExBドリフトモードのみとなる。第1プラズマユニット270aに、プラズマ生成の補助として、永久磁石255が設けられることにより、プラズマ電子が永久磁石255の磁場に補足(トラップ)されるため、処理室201の側面でのプラズマ電子の失活(消滅)率が下がる。その結果、プラズマの生成効率が上がる。
【0024】
(第2プラズマユニット)
上部容器202a上部に配置されかつ処理室201の内側に一部突き出した第2プラズマユニット270bは、台座272に固定された絶縁部材271で保護された導電性の金属パイプから成るU字形状のコイル電極(単にコイルとも呼ぶ。)253bと、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールド254bで構成されている。絶縁部材271は絶縁材料で構成され、処理室201の上部の内部に吐出するように設けられている。コイル電極253bは絶縁部材271に沿うように設けられている。なお、絶縁部材271は突き出し部に丸みのある直方体形状、円筒体形状やパイプ形状を用い、その内外の雰囲気は真空シールで隔絶されている。高周波電源252bからの高周波電力は、コイル電極253bの一端と接続された整合器251bと、コイル電極253bのもう一端と電磁波シールド254bが接続された接地部を介して供給される。処理室201に反応ガスを供給すると、コイル電極253bが作る交流磁場に誘導されて、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、略称:ICP)が生成される。なお、第2プラズマユニット270bの代わりに、リモートプラズマユニットを採用しても良い。
【0025】
第2プラズマユニット270bが処理室201の内側に一部突き出していることにより、コイル電極253bから発する電磁場と結合(交差)するプラズマの割合(領域)が増すため、プラズマのRF電力の投入効率が上がる。その結果、プラズマの生成効率が上がる。
【0026】
第2プラズマユニット270bは、絶縁部材で保護された導電性の金属パイプにより構成されるU字形状のコイル電極253bと、導電性の金属板により構成される円筒体または直方体の形状の電磁波シールド254bで構成させていることにより、コイル電極の絶縁保護材の面と平行しているコイル電極の表面積が大きければ大きいほど、プラズマの生成効率をさらに高められる。つまり、コイル電極の絶縁保護材の形状が曲面を有している場合は、コイル電極の形状もそれと平行する形で曲面・曲率を有することで、プラズマの生成効率がより上がる。
【0027】
コイル電極253bはU字形状に限定されるものではなく、例えば、円盤状や渦巻状のコイルであっても良い。第2プラズマユニット270bは、例えば、ウエハ200の中心に対応する位置に1つ設ける場合等に限定されるものではなく、プラズマ分布に基づき、複数設けても良い。
【0028】
第1プラズマユニットのコイル電極253aや第2プラズマユニットのコイル電極253bは、高周波電源252a,252bからの高周波電力が供給されると、ジュール熱の発生によりそれらの抵抗値が徐々に高くなり、インピーダンス整合を取ろうとする整合器251a,251bは不安定に成りやすくなる。従って、コイル電極253a, 253bは、それらの抵抗値が一定となるよう水や空気などで冷却してそれらの温度の安定化を図る必要がある。
【0029】
(ガス供給系)
第1ガス導入口241aには、第1ガス供給管150aが接続されている。第1ガス供給管150aには、第1処理ガス供給管113とパージガス供給管133aが接続されており、第1ガス導入口241aには、後述の第1処理ガスとパージガスが供給される。第2ガス導入口241bには、第2ガス供給管150bが接続されている。第2ガス供給管150bには、第2処理ガス供給管123とパージガス供給管133bが接続されており、第2ガス導入口241bには、後述の第2処理ガスとパージガスが供給される。
【0030】
(第1処理ガス供給系)
第1処理ガス供給系には、第1処理ガス供給管113、マスフロ―コントローラ(MFC)115、バルブ116が設けられている。なお、第1処理ガス源を第1処理ガス供給系に含めて構成しても良い。また、処理ガスの原料が液体、固体の場合には、気化器が設けられていても良い。
【0031】
(第2処理ガス供給系)
第2処理ガス供給系には、第2処理ガス供給管123、MFC125、バルブ126が設けられている。なお、第2処理ガス源を第2処理ガス供給系に含めて構成しても良い。
【0032】
(パージガス供給系)
パージガス供給系には、パージガス供給管133aとMFC135aとバルブ136aから成る系統と、パージガス供給管133bとMFC135bとバルブ136bから成る系統の2系統が設けられている。なお、パージガス源をパージガス供給系に含めて構成しても良い。
【0033】
(制御部)
図1に示すように基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ260を有している。
【0034】
コントローラ260の概略を図2に示す。制御部(制御装置)であるコントローラ260は、CPU(Central Processing Unit)260a、RAM(Random Access Memory)260b、記憶装置260c、I/Oポート260dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM260b、記憶装置260c、I/Oポート260dは、内部バス260eを介して、CPU260aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ260には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置261や、外部記憶装置262、受信部285などが接続可能に構成されている。
【0035】
記憶装置260cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置260c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述の基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ、ウエハ200への処理に用いるプロセスレシピを設定するまでの過程で生じる演算データや処理データ等が読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述の基板処理工程における各手順をコントローラ260に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM260bは、CPU260aによって読み出されたプログラム、演算データ、処理データ等のデータが一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0036】
I/Oポート260dは、ゲートバルブ1490、昇降機構218、ヒータ213、圧力調整器227、真空ポンプ223、整合器251a,251b、高周波電源252a,252b、MFC115,125,135a,135b、バルブ116,126,136a,136b、バイアス調整器257等に接続されている。
【0037】
演算部としてのCPU260aは、記憶装置260cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置261からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置260cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。また、受信部285から入力された設定値と、記憶装置260cに記憶されたプロセスレシピや制御データとを比較・演算して、演算データを算出可能に構成されている。また、演算データから対応する処理データ(プロセスレシピ)の決定処理等を実行可能に構成されている。そして、CPU260aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ1490の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、ヒータ213への電力供給動作、圧力調整器227の圧力調整動作、真空ポンプ223のオンオフ動作、MFC115,125,135a,135bのガス流量制御動作、バルブ116,126,136a,136bでのガスのオンオフ動作、整合器251a, 251bの電力の整合制御、高周波電源252a,252bの電力制御、バイアス調整器257でのサセプタ電極256への電位制御を行えるように構成されている。
【0038】
なお、コントローラ260は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていても良い。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)262を用意し、係る外部記憶装置262を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ260を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置262を介して供給する場合に限らない。例えば、受信部285やネットワーク263(インターネットや専用回線)等の通信手段を用い、外部記憶装置262を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶装置260cや外部記憶装置262は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置260c単体のみを含む場合、外部記憶装置262単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合が有る。
【0039】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置100を用いて半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜であって、例えば窒化膜としてのシリコン窒化(SiN)膜を形成するフローとシーケンス例について図3図4を参照して説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ260により制御される。
【0040】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された処理の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
以下に、基板処理工程について説明する。
【0042】
(基板搬入工程S201)
成膜処理に際しては、先ず、ウエハ200を処理室201に搬入させる。具体的には、基板支持部210を昇降機構218によって下降させ、リフトピン207が貫通孔214から基板支持部210の上面側に突出させた状態にする。また、処理室201や移載室203を所定の圧力に調圧した後、ゲートバルブ1490を開放し、ツイーザなどの搬送機構(不図示)を用いて、基板搬入出口1480を通ってウエハ200をリフトピン207上に載置させる。ウエハ200をリフトピン207上に載置させた後、ゲートバルブ1490を閉じ、昇降機構218によって基板支持部210を所定の位置まで上昇させることによって、ウエハ200が、リフトピン207から基板支持部210へ載置されるようになる。
【0043】
(第1調圧・調温工程S202)
続いて、処理室201が所定の圧力となるように、バルブ136a, 136bを開き、MFC135a,135bを調節して所定の流量にてNガスを供給し、排気口221を介して処理室201の雰囲気を排気する。この際、圧力センサ(不図示)が計測した圧力値に基づき、圧力調整器227の弁の開度をフィードバック制御する。また、温度センサ(不図示)が検出した温度値に基づき、処理室201が所定の温度となるようにヒータ213への電力をフィードバック制御する。具体的には、基板支持部210をヒータ213により予め加熱しておき、ウエハ200又は基板支持部210の温度が安定してから一定時間置く。この間、処理室201に残留している水分あるいは部材からの脱ガス等が有る場合は、Nガスなどによるパージがそれらの除去に効果的である。これで成膜プロセス前の準備が完了することになる。なお、処理室201を所定の圧力に設定する前に、一度、到達可能な真空度まで真空排気しても良い。
【0044】
このときのヒータ213の温度は、アイドル時の温度から、100~600℃、好ましくは150~500℃、より好ましくは250~450℃の範囲内で一定の温度となるように設定する。
【0045】
また、ウエハ200の電位が所定の電位となるように、バイアス調整器257によりサセプタ電極256に電圧が印加される。
【0046】
(成膜工程S301)
続いて、ウエハ200上にSiN膜を形成する例について説明する。成膜工程S301の詳細について、図3図4を用いて説明する。
【0047】
ウエハ200が基板支持部210に載置され、処理室201の雰囲気が安定した後、図3図4に示す、S203~S207の工程が行われる。
【0048】
(第1処理ガス供給工程S203)
第1処理ガス供給工程S203では、第1処理ガス供給系から処理室201に第1処理ガス(原料ガス)としてのジクロロシラン(SiHCl,dichlorosilane:DCS)ガスを供給する。具体的には、バルブ116を開けて、処理ガス供給源から供給された第1処理ガスをMFC115で流量調整した後、基板処理装置100に供給する。流量調整された第1処理ガスは、第1ガス分散ユニット235aの第1バッファ室232aを通り、複数の第1分散孔234aから、減圧状態の処理室201に供給される。また、排気系による処理室201の排気を継続し、処理室201の圧力を所定の圧力範囲(第1圧力)となるように圧力調整器227を制御する。このとき、所定の圧力(第1圧力:例えば100Pa以上10kPa以下)で、処理室201に第1処理ガスを供給する。このようにして、第1処理ガスが供給されることにより、ウエハ200上に、シリコン含有層が形成される。ここでのシリコン含有層とは、シリコン(Si)または、シリコンと塩素(Cl)を含む層である。
【0049】
(第1パージ工程S204)
第1パージ工程S204では、ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1処理ガス供給管113のバルブ116を閉じ、第1処理ガスの供給を停止する。真空ポンプ223の動作を継続し、第1処理ガスを停止することで、処理室201に存在する第1処理ガスや反応副生成物質などの残留ガス、第1バッファ室232aに残留する処理ガスを真空ポンプ223から排気されることによりパージが行われる。
【0050】
ここで、パージガス供給系のバルブ136aを開き、MFC135aを調整し、パージガスとしてのNガスを供給することによって、第1バッファ室232aの残留ガスを押し出すことができ、また、ウエハ200上の第1処理ガスや反応副生成物質などの残留ガスの除去効率が高くなる。このとき、他のパージガス供給系を組み合わせても良いし、パージガスの供給と停止を交互に行うように構成しても良い。
【0051】
所定の時間経過後、バルブ136aを閉じて、パージガスの供給を停止する。なお、バルブ136aを開けたままパージガスの供給を継続しても良い。第1バッファ室232aへのパージガスの供給を継続することによって、他の工程で、他の工程の処理ガスが第1バッファ室232aに入り込むことを抑制することができる。
【0052】
また、このとき処理室201や第1バッファ室232aに供給するパージガスの流量も大流量とする必要は無く、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、次の工程において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、製造スループットを向上させることができる。また、パージガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0053】
このときのヒータ213の温度は、ウエハ200への第1処理ガス供給時と同様の温度となるように設定する。パージガス供給系から供給するパージガスの供給流量は、例えば100~10000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、Nガスの他に、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いても良く、また、これらを組み合わせても良い。
【0054】
(第2処理ガス供給工程S205)
第2処理ガス供給工程S205では、第2処理ガス供給系のバルブ126を開け、第2ガス分散ユニット235bの第2バッファ室232bと複数の第2分散孔234bを介して、減圧下の処理室201に第2処理ガス(第1の処理ガスとは化学構造(分子構造)が異なる第2の処理ガスとしての反応ガス)としてアンモニア(NH)ガスを供給する。このとき、排気系による処理室201の排気を継続して第2処理ガスが所定流量となるようにMFC125を(例えば、100sccm以上5000sccm以下に)調整し、処理室201が所定圧力になるように圧力調整器227を(第2圧力:例えば、1Pa以上200Pa以下に)制御する。
【0055】
さらに、高周波電源252a, 252bから、整合器251a,251bを介して、第1プラズマユニット270aのコイル電極253aおよび第2プラズマユニット270bのコイル電極253bに高周波電力を供給する。このときの高周波電力は、処理室201のプラズマ分布がウエハ200上の水平方向で一様になるように、高周波電源252aと高周波電源252bで最適に配分する。図4では、第2処理ガスの供給と同時に高周波電力の供給を開始しているが、第2処理ガスの供給開始前から供給されるように構成しても良いし、その後も継続しても良い。高周波電力を供給することによって、ウエハ200上に第2処理ガスのプラズマを生成することができる。これにより、活性化(励起)された第2処理ガスの活性種をシリコン含有層に供給することができ、シリコン含有層に対して低温で窒化処理を施すことができる。
【0056】
ここで、高周波電源252aから第1プラズマユニット270aへの供給電力は1000~5000W、好ましくは3000~5000W、より好ましくは3500~4500Wにする。1000W未満であると、CCPモードのプラズマが支配的となるため、活性種の生成量が非常に低くなる。そのため、ウエハの処理速度が非常に低下する。また、5000Wを超えると、プラズマが石英材料で構成される反応室の内壁を強くスパッタし始めるため、ウエハ200上の膜(SiO膜以外の膜)にとって望ましくないSiやOなどの材料が供給される。
【0057】
また、高周波電源252bから第2プラズマユニット270bへの供給電力は100~2000W、好ましくは500~1000Wにする。100W未満であると、CCPモードのプラズマが支配的となるため、活性種の生成量が非常に低くなる。そのため、ウエハの処理速度が非常に低下する。また、1000Wを超えると、プラズマが石英保護部材の外壁(反応室側)を強くスパッタし始めるため、基板上の膜(SiO膜以外の膜)にとって望ましくないSiやOなどの材料が供給される。
【0058】
また、プラズマ処理時間は60~600秒、好ましくは120~300秒にする。60秒未満であると、十分な膜厚を達成できない。また、600秒を超えると、ウエハ200面内やウエハ200上の段差で膜の均一性に悪影響を与えてしまい、更にはウエハ200へダメージを与えてしまう。
【0059】
なお、基板載置台212内に設けられたサセプタ電極256の電位をバイアス調整器257で調整することによって、ウエハ200へのプラズマ荷電粒子の供給量を制御することができる。例えば、ウエハ200表面に段差加工がされている場合、プラズマ荷電粒子の供給量を抑制することで、成膜の被覆率の向上に有効である。
【0060】
活性化された第2処理ガスの活性種が、ウエハ200上に形成されているシリコン含有層に供給されると、分子結合欠損の回復や不純物の脱離などシリコン含有層の改質処理も施される。例えば、処理室201の圧力、MFC125による第2処理ガスの流量、ヒータ213によるウエハ200の温度、高周波電源252a,252bの電力、バイアス調整器257によるサセプタ電極256の電位等に応じて、所定の分布、所定の深さ、所定の窒素組成比にて、シリコン含有層に対して窒化処理や改質処理が施される。
【0061】
所定の時間経過後、第2処理ガス供給系のバルブ126を閉じ、第2処理ガスの供給を停止する。
【0062】
このときのヒータ213の温度は、ウエハ200への第1処理ガス供給時と同様の温度となるように設定される。
【0063】
(第2パージ工程S206)
第2パージ工程S206では、ウエハ200上に窒素含有層が形成された後、第2処理ガス供給管123のバルブ126を閉じ、第2処理ガスの供給を停止する。真空ポンプ223の動作を継続し、第2処理ガスを停止することで、処理室201に存在する第2処理ガスや反応副生成物質などの残留ガス、第2バッファ室232bに残留する処理ガスを真空ポンプ223から排気されることによりパージが行われる。
【0064】
ここで、パージガス供給系のバルブ136bを開き、MFC135bを調整し、パージガスとしてのNガスを供給することによって、第2バッファ室232bの残留ガスを押し出すことができ、また、ウエハ200上の第2処理ガスや反応副生成物質などの残留ガスの除去効率が高くなる。このとき、他のパージガス供給系を組み合わせても良いし、パージガスの供給と停止を交互に行うように構成しても良い。
【0065】
所定の時間経過後、バルブ136bを閉じて、パージガスの供給を停止する。なお、バルブ136bを開けたままパージガスの供給を継続しても良い。第2バッファ室232bへのパージガスの供給を継続することによって、他の工程で、他の工程の処理ガスが第2バッファ室232bに入り込むことを抑制することができる。
【0066】
また、このとき処理室201や第2バッファ室232bに供給するパージガスの流量も大流量とする必要は無く、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、次の工程において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、製造スループットを向上させることができる。また、パージガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0067】
このときのヒータ213の温度は、ウエハ200への第2処理ガス供給時と同様の温度となるように設定する。パージガス供給系から供給するパージガスの供給流量は、例えば100~10000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、Nガスの他に、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いても良く、また、これらを組み合わせても良い。
【0068】
(判定工程S207)
パージ工程S206の終了後、コントローラ260は、上記の成膜工程S301(S203~S206)が所定のサイクル数nが実行されたか否かを判定する。即ち、ウエハ200上に所望の厚さの膜が形成されたか否かを判定する。上述した成膜工程S301(S203~S206)を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のSiN膜を形成することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰返すことが好ましい。これにより、ウエハ200上に所定膜厚のSiN膜が形成される。
【0069】
判定工程S207で、成膜工程S301が所定回数実施されていないとき(No判定のとき)は、成膜工程S301のサイクルを繰り返し、所定回数実施されたとき(Yes判定のとき)は、成膜工程S301を終了する。
【0070】
(第2調圧・調温工程S208)
処理室201が所定の圧力となるように、バルブ136a,136bを開き、MFC135a,135bを調節して所定の流量にてNガスを供給し、所定の圧力センサ(不図示)が計測した圧力値に基づき、圧力調整器227を制御する。また、温度センサ(不図示)が検出した温度値に基づき、処理室201が所定の温度となるようにヒータ213への電力を制御する。例えば、処理室201の圧力は、第1調圧・調温工程S202のゲートバルブ1490の開放時と同じ圧力に設定し、ヒータ213の温度は、アイドル時の温度になるように設定する。なお、同温度条件にて次のウエハ200を連続処理する場合は、ヒータ213の温度を維持してもよい。
【0071】
(基板搬出工程S209)
続いて、基板支持部210を昇降機構218によって下降させ、リフトピン207が貫通孔214から基板支持部210の上面側に突出させ、ウエハ200をリフトピン207上に載置させた状態にする。ゲートバルブ1490を開放し、ツイーザなどの搬送機構(不図示)を用いて、基板搬入出口1480を通って移載室203外へ搬送し、ゲートバルブ1490を閉じる。
【0072】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態を図面に即して説明する。
【0073】
本開示の第二実施形態の基板処理装置100Aは第一実施形態の基板処理装置100とは第1プラズマユニットの構成が異なるが他は同様である。以下、第1プラズマユニットを中心に説明する。
【0074】
図5に示すように、上部容器202aの外側に配置された第1プラズマユニット270cは、導電性の金属パイプから成る7~8巻のスパイラル形状に旋回したコイル電極253aと、導電性の金属板により構成される円筒体形状の電磁波シールド254aで構成されている。高周波電源252aからの高周波電力は、コイル電極253aの下から1/8から1/2巻目に接続された整合器251aと、コイル電極253aの両端付近と電磁波シールド254aが接続された接地部を介して供給される。高周波電源252aが供給する高周波は、それがつくる波長をコイル電極253aの全長とほぼ同じになるよう設定することで、定在波共振モードにて発生する強い交流電流と弱い交流電圧の箇所を、コイル電極253aの下から1巻目付近、4巻目付近と7巻目付近に同時につくることができる。従って、コイル電極253aの下から2巻目付近、3巻目付近、5巻目付近と6巻目付近を上部容器202aから遠ざけることで、強い交流電圧の発生箇所をプラズマからも遠ざけることができ、上部容器202aの内壁に向かって進むプラズマイオンの加速を抑制することができる。処理室201に反応ガスを供給すると、コイル電極253aが作る交流磁場に誘導されて、コイル電極253aの下から1巻目付近、4巻目付近と7巻目付近に誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、略称:ICP)が支配的に生成される。これらにより、上部容器202aの内壁のスパッタリングあるいはエッチングを抑制しながらプラズマ密度を高めることができ、反応ガスの活性種の生成量を大幅に向上させることができる。
【0075】
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0076】
上述では、原料ガスを供給した後に反応ガスを供給し、それらを交互に供給して成膜する方法について記したが、例えば、原料ガスと反応ガスの供給順序は逆でもよく、また、原料ガスと反応ガスの供給タイミングが重なる様な方法も適用可能である。このように供給方法を変えることで、形成される膜の膜質や組成比を変化させることが可能となる。
【0077】
また、上述では、原料ガスとしてシリコン含有ガスであるDCSガスを、反応ガスとして窒素含有ガスであるNHガスを用いて、シリコン窒化膜を形成する例を示したが、他のガスを用いて酸素含有や炭素含有の成膜にも適用可能である。具体的には、ウエハ200上に、シリコン酸化膜(SiO膜)、シリコン炭化膜(SiC膜)、シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜やSi系炭化膜を形成する場合にも、好適に適用可能である。
【0078】
原料ガスとしては、DCSガスのほかに、例えば、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシランすなわちシリコンテトラクロライド(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等の無機系ハロシラン原料ガスや、テトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(Si[N(CH、略称:BDMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C、略称:BDEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH[NH(C)]、略称:BTBAS)ガス、ジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ジプロピルアミノシラン(DPAS)ガス、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス、ブチルアミノシラン(BAS)ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ガス等の各種アミノシラン原料ガスや、モノメチルシラン(Si(CH)H、略称:MMS)ガス、ジメチルシラン(Si(CH、略称:DMS)ガス、トリメチルシラン(Si(CHH、略称:3MS)ガス、テトラメチルシラン(Si(CH、略称:4MS)ガス、1,4ジシラブタン(略称:1,4DSB)ガス等の各種有機系シラン原料ガスや、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス、ジシラン(Si、略称:DS)ガス、トリシラン(Si、略称:TS)ガス等のハロゲン基非含有の無機系シラン原料ガスを好適に用いることができる。
【0079】
なお、アミノシラン原料とは、アミノ基を有するシラン原料のことであり、また、メチル基やエチル基やブチル基等のアルキル基を有するシラン原料でもあり、少なくともSi、窒素(N)および炭素(C)を含む原料のことである。すなわち、ここでいうアミノシラン原料は、有機系の原料ともいえ、有機アミノシラン原料ともいえる。
【0080】
反応ガスとしては、NHガスのほかに、例えば、窒素ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒素含有ガスを好適に用いることができる。
【0081】
また、その他の窒素含有ガスとしては、アミン系ガスを用いることもできる。なお、アミン系ガスとは、アミン基を含むガスのことであり、少なくとも炭素(C)、窒素(N)および水素(H)を含むガスである。アミン系ガスは、エチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン等のアミンを含む。ここで、アミンとは、アンモニア(NH)の水素原子をアルキル基等の炭化水素基で置換した形の化合物の総称である。つまり、アミンは、アルキル基等の炭化水素基を含む。アミン系ガスは、シリコン(Si)を含んでいないことからシリコン非含有のガスとも言え、更には、シリコンおよび金属を含んでいないことからシリコンおよび金属非含有のガスとも言える。アミン系ガスとしては、例えば、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)等のエチルアミン系ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA)、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMA)、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMA)等のメチルアミン系ガス、トリプロピルアミン((CN、略称:TPA)、ジプロピルアミン((CNH、略称:DPA)、モノプロピルアミン(CNH、略称:MPA)等のプロピルアミン系ガス、トリイソプロピルアミン([(CHCH]N、略称:TIPA)、ジイソプロピルアミン([(CHCH]NH、略称:DIPA)、モノイソプロピルアミン((CHCHNH、略称:MIPA)等のイソプロピルアミン系ガス、トリブチルアミン((CN、略称:TBA)、ジブチルアミン((CNH、略称:DBA)、モノブチルアミン(CNH、略称:MBA)等のブチルアミン系ガス、または、トリイソブチルアミン([(CHCHCHN、略称:TIBA)、ジイソブチルアミン([(CHCHCHNH、略称:DIBA)、モノイソブチルアミン((CHCHCHNH、略称:MIBA)等のイソブチルアミン系ガスを好ましく用いることができる。すなわち、アミン系ガスとしては、例えば、(CNH3-x、(CHNH3-x、(CNH3-x、[(CHCH]NH3-x、(CNH3-x、[(CHCHCHNH3-x(式中、xは1~3の整数)のうち少なくとも1種類のガスを好ましく用いることができる。アミン系ガスは、SiN膜やSiCN膜やSiOCN膜等を形成する際の窒素源(窒素ソース)として作用すると共に炭素源(カーボンソース)としても作用する。窒素含有ガスとしてアミン系ガスを用いることで、膜中の炭素成分を増加させる方向に制御することが可能となる。
【0082】
その他の反応ガスとしては、例えば、酸化剤(酸化ガス)、すなわち、酸素ソースとして作用する酸素含有ガスを適用することができる。例えば、酸素(O)ガス、水蒸気(HOガス)、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、オゾン(O)ガス、過酸化水素(H)ガス、水蒸気(HOガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等の酸素含有ガスを好適に用いることができる。
【0083】
本開示は、半金属元素を含む半金属系膜や金属元素を含む金属系膜を形成する場合に、好適に適用することができる。これらの成膜処理の処理手順、処理条件は、上述の実施形態や変形例に示す成膜処理と同様な処理手順、処理条件とすることができる。これらの場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
また、本開示は、ウエハ200上に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属元素を含む金属系酸化膜や金属系窒化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、本開示は、ウエハ200上に、TiO膜、TiOC膜、TiOCN膜、TiON膜、TiN膜、TiCN膜、ZrO膜、ZrOC膜、ZrOCN膜、ZrON膜、ZrN膜、ZrCN膜、HfO膜、HfOC膜、HfOCN膜、HfON膜、HfN膜、HfCN膜、TaO膜、TaOC膜、TaOCN膜、TaON膜、TaN膜、TaCN膜、NbO膜、NbOC膜、NbOCN膜、NbON膜、NbN膜、NbCN膜、AlO膜、AlOC膜、AlOCN膜、AlON膜、AlN膜、AlCN膜、MoO膜、MoOC膜、MoOCN膜、MoON膜、MoN膜、MoCN膜、WO膜、WOC膜、WOCN膜、WON膜、WN膜、WCN膜等を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0085】
これらの場合、例えば、原料ガスとして、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH、略称:TDMAT)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(Hf[N(C)(CH)]、略称:TEMAH)ガス、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(Zr[N(C)(CH)]、略称:TEMAZ)ガス、トリメチルアルミニウム(Al(CH、略称:TMA)ガス、チタニウムテトラクロライド(TiCl)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl)ガス等を用いることができる。
【0086】
また、上述では、成膜処理について記したが、他の処理にも適用可能である。例えば、プラズマを用いた拡散処理、酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、還元処理、酸化還元処理、エッチング処理、加熱処理などが有る。さらに、反応ガスのみを用いて、基板表面や基板に形成された膜をプラズマ酸化処理や、プラズマ窒化処理や、プラズマ改質処理を行う際にも本開示を適用することができる。また、反応ガスのみを用いたプラズマアニール処理にも適用することができる。
【0087】
また、上述では、半導体装置の製造工程について記したが、実施形態に係る開示は、半導体装置の製造工程以外にも適用可能である。例えば、液晶デバイスの製造工程、太陽電池の製造工程、発光デバイスの製造工程、ガラス基板の処理工程、セラミック基板の処理工程、導電性基板の処理工程、などの基板処理が有る。
【0088】
また、上述では、一つの処理室で一枚の基板を処理する装置構成を示したが、これに限らず、複数枚の基板を水平方向又は垂直方向に並べた装置であっても良い。
【0089】
成膜処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置262を介して記憶装置260c内に格納しておくことが好ましい。そして、各種処理を開始する際、CPU260aが、記憶装置260c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各種処理を迅速に開始できるようになる。
【0090】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置261を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
200…ウエハ(基板)、201…処理室、113…第1処理ガス供給管、123…第2処理ガス供給管、270a…第1プラズマユニット、270b…第2プラズマユニット
図1
図2
図3
図4
図5