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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】表面性状測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/016 20060101AFI20220228BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G01B5/016
G01B21/00 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020199509
(22)【出願日】2020-12-01
(62)【分割の表示】P 2019214039の分割
【原出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021085884
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-247517(JP,A)
【文献】特開2008-185535(JP,A)
【文献】特開2000-035325(JP,A)
【文献】特開2000-221024(JP,A)
【文献】特開2006-090945(JP,A)
【文献】特表2016-515192(JP,A)
【文献】特開2009-053052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の変位を検出する検出器と、
前記測定対象物の測定及び清掃を制御する制御装置と、
を備え、
前記検出器は、
測定対象物に接触させる接触子と、
前記接触子が先端部に付け替え可能に取り付けられるアームと、
前記アームの先端部に前記接触子と付け替え可能に取り付けられる清掃部材であり、前記測定対象物に接触させて前記測定対象物に付着した異物を除去する清掃部材と、
前記アームを介して前記接触子又は前記清掃部材のいずれかに対して付勢力を付与する測定力付与部と、
前記アームを介して前記接触子の変位を検出する変位検出部とを備え、
前記制御装置は、前記アームの先端部に前記接触子又は前記清掃部材のいずれが取り付けられたのかを検出し、前記アームの先端部に前記接触子が取り付けられた場合は測定モードを実施し、前記アームの先端部に前記清掃部材が取り付けられた場合は清掃モードを実施する、表面性状測定装置。
【請求項2】
測定対象物に対して、アームの先端部に取り付けられた接触子を接触させて、前記測定対象物の表面性状を測定する測定方法であって、
前記アームの先端部に取り付けられた前記接触子が清掃部材に付け替えられた場合に清掃モードを実施して、前記アームを介して前記清掃部材に対して付勢力を付与する付勢力付与工程と、
前記測定対象物に対して接触させた前記清掃部材を用いて、前記測定対象物に付着する異物を除去する除去工程と、
を含む測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検出器、表面性状測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に対して接触子を接触させて、測定対象物の表面性状を測定する際に、測定対象物の表面に付着しているほこり及びちり等の微細な異物の存在に起因して、測定データが影響を受けてしまうという課題が存在する。
【0003】
従来は、測定者が測定データを確認し、異物の影響を受けた場合には再測定を実施して、微細な異物に起因する測定データへの影響に対応していた。また、数学的なフィルタを適用したフィルタ処理を行い、異物の影響を測定データから除去する対応を実施し得る。
【0004】
特許文献1は、同じ部分を二回にわたって測定し、二回の測定の間で変化した部分をごみと判定する表面性状測定装置が記載されている。同文献に記載の装置は、ごみの存在を自動的に識別し補正して、誤った測定結果の出力を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-264213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の対応は、測定ごとに測定者が測定データを確認する必要が生じ、測定の自動化の障害となり得る。また、測定データに対してフィルタ処理を適用する場合、フィルタ処理の対象となる測定データが、測定対象物の実際の形状を表すか又は異物の影響を表すのかの判定が困難である。
【0007】
更に、特許文献1に記載の装置は、測定の実施に起因して異物が何らかの変位を受けることを前提としているが、異物の変位が微小である場合は、二回の測定の間で測定データが変化しない。そうすると、測定データは測定対象物の形状を表すものとして処理される。また、二回の測定の間の変化が微小である場合は、異物に起因する変化であるか又は測定誤差であるかの区別が困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、測定対象物の測定データにおける異物の影響を抑制し得る検出器、表面性状測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0010】
第1態様に係る検出器は、測定対象物に接触させる接触子と、接触子が先端部に取り付けられるアームと、アームの先端部に取り付けられる清掃部材であり、測定対象物に接触させて測定対象物に付着した異物を除去する清掃部材と、測定対象物に対して接触子を接触させるか又は清掃部材を接触させるかを切り替える接触切替部と、アームを介して接触子又は清掃部材のいずれかに対して付勢力を付与する測定力付与部と、アームを介して接触子の変位を検出する変位検出部と、を備えた検出器である。
【0011】
第1態様によれば、測定対象物を測定する際に測定対象物に対してアームの先端部に取り付けられる接触子を接触させる。測定対象物の異物を除去する際に、接触子に代わりアームの先端部に取り付けられる清掃部材を測定対象物に対して接触させる。これにより、測定対象物への異物の付着を効率的に抑制し得る。
【0012】
第2態様は、第1態様の検出器において、清掃部材は、アームの先端部において、アームを挟んで接触子の反対側の位置に取り付けられる。
【0013】
第2態様において、接触子と清掃部材とのなす角度は、180度が好ましい。
【0014】
第3態様は、第1態様又は第2態様の検出器において、接触切替部は、アームの中心軸についてアーム又は検出器を回転させて、測定対象物に対して接触子を接触させるか又は清掃部材を接触させるかを切り替える。
【0015】
第3態様によれば、接触子と清掃部材との切り替えが容易である。
【0016】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の検出器において、測定対象物に対して清掃部材を接触させる際に、測定力付与部を用いて清掃部材へ付与する付勢力の方向を切り替える付勢方向切替部を備える。
【0017】
第4態様によれば、測定対象物の測定の際の接触子及び異物の除去の際の清掃部材の両者に対して、測定対象物へ向く付勢力を付与し得る。
【0018】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の検出器において、清掃部材は、測定対象物へ接触させる接触面が曲面を含む。
【0019】
第5態様によれば、母線ずれが生じた場合でも、測定対象物に対して清掃部材が接触し得る。
【0020】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか一態様の検出器において、清掃部材は、アームの中心軸からの距離が、アームの中心軸から検出器の本体の外周までの距離を超える位置に支持される。
【0021】
第6態様によれば、測定対象物に対して接触子及び清掃部材を接触させる際の、検出器の本体と測定対象物との干渉を抑制し得る。
【0022】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の検出器において、清掃部材は、アームの中心軸からからの距離が、アームの中心軸から接触子までの距離と同一の位置に支持される。
【0023】
第7態様によれば、測定対象物に対する接触子の接触位置及び清掃部材の接触位置が一致し得る。これにより、測定対象位置に付着する異物を除去し得る。また、測定対象物について無駄な異物の除去を実施しないので、清掃部材の消耗を抑制し得る。
【0024】
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれか一態様の検出器において、測定力付与部は、測定対象物に対して清掃部材を接触させる際に、測定対象物に対して接触子を接触させる際の測定力と同一の大きさの付勢力を付与する。
【0025】
第8態様によれば、清掃部材を用いた測定対象物の異物の除去の際に、測定力と同一の付勢力が付与される。これにより、測定対象物の異物の除去の際に測定対象物に対して過剰な付勢力を加えることがなく、測定対象物の変形を抑制し得る。
【0026】
第9態様に係る表面性状測定装置は、測定対象物の変位を検出する検出器と、測定対象物の測定及び清掃を制御する制御装置と、を備え、検出器は、測定対象物に接触させる接触子と、接触子が先端部に取り付けられるアームと、アームの先端部に取り付けられる清掃部材であり、測定対象物に接触させて測定対象物に付着した異物を除去する清掃部材と、測定対象物に対して接触子を接触させるか又は清掃部材を接触させるかを切り替える接触切替部と、アームを介して接触子又は清掃部材のいずれかに対して付勢力を付与する測定力付与部と、アームを介して接触子の変位を検出する変位検出部と、を備えた表面性状測定装置である。
【0027】
第9態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0028】
第9態様において、第2態様から第8態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、検出器において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う表面性状測定装置の構成要素として把握することができる。
【0029】
第10態様は、第9態様の表面性状測定装置において、制御装置は、測定対象物に対して清掃部材を接触させて測定対象物の清掃を実施する際に、測定対象物に対して接触子を接触させて測定対象物を測定する際の手順を適用する。
【0030】
第10態様によれば、測定対象物の測定と同様の手順が適用された、測定対象物の異物の除去を自動化し得る。また、異物の除去用の手順を作成する必要がなく、異物の除去用の手順を作成するコストを低減し得る。
【0031】
第11態様は、第9態様又は第10態様の表面性状測定装置において、制御装置は、測定対象物の異物の除去を実施した後に、測定対象物の測定を実施する。
【0032】
第11態様によれば、測定対象物から異物が除去された直後に、測定対象物の測定を実施し得る。また、測定対象物への異物の付着を抑制し得る。
【0033】
第11態様において、複数の測定対象位置について一括して異物の除去を実施した後に、複数の測定対象位置について一括して測定を実施してもよい。かかる態様によれば、接触子と清掃部材との切替回数を低減でき、測定及び異物の除去に費やされる期間を短縮し得る。
【0034】
第12態様は、第9態様から第11態様のいずれか一態様の表面性状測定装置において、制御装置は、変位検出部から出力される測定対象物の測定データを解析し、異物の影響を受けた測定データの有無を判定する測定データ処理部を備え、制御装置は、異物の影響を受けた測定データが有る場合に、清掃部材を測定対象物に接触させて、測定対象物に付着した異物を除去する。
【0035】
第12態様によれば、必要に応じて異物の除去を実施し得る。これにより、異物の除去に費やされる期間を短縮し得る。
【0036】
第13態様は、第9態様から第12態様のいずれか一態様の表面性状測定装置において、制御装置は、測定対象物の清掃回数が規定回数を超えるか否かを判定する清掃回数判定部を備え、制御装置は、測定対象物の清掃回数が規定回数以下の場合、以降の測定対象物の清掃を実施し、測定対象物の清掃回数が規定回数を超える場合は、以降の測定対象物の
清掃を非実施とする。
【0037】
第13態様によれば、測定対象物に対する異物の付着に起因する測定データの発生を低減し得る。また、測定の信頼性向上と測定に費やされる期間の短縮とのバランスを取ることができる。
【0038】
第14態様は、第9態様から第13態様のいずれか一態様の表面性状測定装置において、制御装置は、異物の除去が実施された測定対象位置と異物の除去が未実施の測定対象位置との比率を用いて表される測定対象物の清浄度を算出する清浄度算出部を備える。
【0039】
第14態様によれば、測定対象物の清浄度を評価し得る。
【0040】
第15態様に係る測定方法は、測定対象物に対して、アームの先端部に取り付けられた接触子を接触させて、測定対象物の表面性状を測定する測定方法であって、測定対象物に対して、アームの先端部に取り付けられる清掃部材を接触させる接触切替工程と、アームを介して清掃部材に対して付勢力を付与する付勢力付与工程と、測定対象物に対して接触させた清掃部材を用いて、測定対象物に付着した異物を除去する除去工程と、を含む測定方法。
【0041】
第15態様によれば、第1態様と同様の効果を得ることができる。
【0042】
第15態様において、第2態様から第8態様及び第10態様から第14態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、検出器及び表面性状測定装置において特定される処理や機能を担う構成要素は、これに対応する処理や機能を担う測定方法の構成要素として把握することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、測定対象物を測定する際に測定対象物に対してアームの先端部に取り付けられる接触子を接触させる。測定対象物の異物を除去する際に、接触子に代わりアームの先端部に取り付けられる清掃部材を測定対象物に対して接触させる。これにより、測定対象物への異物の付着を効率的に抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は第一実施形態に係る検出器の全体構成図である。
図2図2図1に示す検出器を用いた測定対象物の測定の模式図である。
図3図3は第一変形例に係る吸着材の模式図である。
図4図4は第二変形例に係る検出器の全体構成図である。
図5図5図1に示す検出器が適用される真円度測定装置の全体構成図である。
図6図6図5に示す真円度測定装置の機能ブロック図である。
図7図7図5に示す真円度測定装置に適用される測定方法の手順を示すフローチャートである。
図8図8は第二実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。
図9図9は第三実施形態に係る真円度測定装置の機能ブロック図である。
図10図10は第三実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。
図11図11は第三実施形態の変形例に係る測定データ解析の模式図である。
図12図12は応用例に係る検出器の全体構成図である。
図13図13図12に示す検出器において吸着材に代わり接触子を取り付ける態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0046】
[第一実施形態]
〔検出器の全体構成〕
図1は第一実施形態に係る検出器の全体構成図である。同図に示す検出器100はテコ式検出器が適用される。検出器100は、接触子102、アーム104、測定力付与機構106及び変位センサ108を備える。
【0047】
接触子102は、揺動支点104Aにおいて揺動可能に支持されるアーム104の先端部104Bに取り付けられる。揺動支点104Aは固定部118を用いて支持される。符号104Eを付した矢印線はアーム104の揺動方向を表す。
【0048】
アーム104の先端部104Bは、アーム104の先端104Cを含み、アーム104の先端104Cからアーム104の長手方向について一定の長さを有する、アーム104の部分を意味する。
【0049】
測定力付与機構106は、測定対象物110に対して接触子102を接触させる際に、接触子102に対して測定対象物110へ向かう付勢力である測定力を付与する。図1では測定力の図示を省略する。測定力は符号Fを付して図2に図示する。また、図1では、測定対象物110は全体を図示せず一部のみを図示する。図2等についても同様である。
【0050】
変位センサ108は、アーム104の変位検出位置112の変位を検出する。変位検出位置112は、アーム104の揺動支点104Aを挟んで、接触子102と反対側のアーム104の位置である。図1には、変位検出位置112にアーム104の基端を適用する態様を示す。
【0051】
変位センサ108は、変位検出位置112の変位を表す測定データを出力する。図1には、固定部118に固定支持されるスケールを用いて、変位センサ108を模式的に図示する。
【0052】
検出器100は、アーム104の先端部104Bにおける、アーム104の中心軸104Dを挟んで接触子102と対称となる位置に、吸着材114が取り付けられる。吸着材114の先端114Aからアーム104の中心軸104Dの距離Lは、接触子102の先端102Aからアーム104の中心軸104Dまでの距離Lと同一である。ここでいう同一は一定の誤差を含み得る。
【0053】
検出器100は、測定対象物110に対して吸着材114を接触させて、測定対象物110に付着するほこり及びちり等の微細な異物を拭き取る。吸着材114の材料の一例としてセーム革が挙げられる。
【0054】
検出器100は、測定対象物110に対して、接触子102を接触させるか又は吸着材114を接触させるかを切り替える接触切替部を備える。接触切替部は、アーム104の中心軸104Dを回転軸として、検出器100を回転させる態様を適用し得る。
【0055】
接触切替部は、アーム104の中心軸104Dを回転軸として、アーム104を回転させる態様を適用してもよい。なお、図1では接触切替部の図示を省略する。接触切替部は符号76を付して図6に図示する。
【0056】
測定力付与機構106は、測定対象物110に対して吸着材114を接触させる際に、吸着材114に対して測定対象物110へ向かう付勢力Fを付与する。また、測定力付与機構106は、測定対象物110に対して接触子102を接触させる際に、接触子102に対して測定対象物110へ向かう測定力を付与する。なお、測定対象物110に対して接触子102を接触させる状態は図2に図示する。図1には、コイルバネを用いて測定力付与機構106を模式的に図示する。
【0057】
すなわち、検出器100は、測定力付与機構106を用いて付与する付勢力の方向を切り替える付勢方向切替部を備える。図1では付勢方向切替部の図示を省略する。付勢方向切替部は符号78を付して図6に図示する。
【0058】
検出器100は測定対象物110に対して吸着材114を接触させる。測定対象物110の清掃を実施する際に、測定対象物110は回転する。符号110Aは測定対象物110の回転方向を示す。
【0059】
なお、実施形態に記載の吸着材114は清掃部材の一例に相当する。実施形態に記載の測定力付与機構106は測定力付与部の一例に相当する。実施形態に記載の変位センサ108は変位検出部の一例に相当する。
【0060】
図2図1に示す検出器を用いた測定対象物の測定の模式図である。図2には、図1に示す検出器100に対して、アーム104の中心軸104Dについて検出器100を180度回転させた状態を図示する。
【0061】
検出器100は、測定対象物110に対して接触子102を接触させる。測定力付与機構106は、接触子102に対して測定対象物110へ向く測定力Fを付与する。測定力付与機構106は、付勢力Fと測定力Fとを同一の値として、測定対象物110の測定及び測定対象物110の清掃を実施し得る。なお、付勢力Fと測定力Fとを異なる値としてもよい。
【0062】
測定力付与機構106は、吸着材114に付勢力Fを付与する場合、接触子102に測定力Fを付与する場合に対して付勢方向を切り替える。図2に破線を用いて図示する測定力付与機構106は、付勢方向の切り替え前の状態を示す。
【0063】
一方、実線を用いて図示する測定力付与機構106は、付勢方向の切り替え後の状態を示す。測定力付与機構106に付した破線を用いた矢印線は、付勢方向を切り替える際に測定力付与機構106の移動方向を表す。
【0064】
[第一実施形態に係る検出器の作用効果]
上記の如く構成された検出器100によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0065】
〔1〕
アーム104の先端部104Bに取り付けられた接触子102に対して、アーム104の中心軸104Dを挟んで反対側の位置に吸着材114を取り付ける。接触切替部を用いて、測定対象物110に対して吸着材114を接触させるか又は接触子102を接触させるかを切替可能に構成する。これにより、検出器100を用いて測定対象物110に付着した異物を除去し得る。また、検出器100を用いた測定のアルゴリズムを利用した異物の除去の自動化が可能である。
【0066】
〔2〕
アーム104の先端部104Bに取り付けられた接触子102に対して、アーム104の中心軸104Dを挟んで対称となる、反対側の位置に吸着材114を取り付ける。これにより、測定対象物110における接触子102を接触させる測定位置に対して吸着材114を接触させることができ、測定位置に存在する異物を除去し得る。また、測定位置以外を清掃しないので、吸着材114の消耗を抑制でき、吸着材114が長持ちする。
【0067】
〔3〕
測定力付与機構106は、測定対象物110に対して吸着材114を接触させる際に、測定対象物110へ向かう方向の付勢力Fを吸着材114に対して付与する。これにより、規定の付勢力Fを付与した吸着材114を用いた測定対象物110に付着した異物の除去が可能となる。
【0068】
〔4〕
測定力付与機構106は、測定対象物110の清掃の際に測定対象物110へ付与する付勢力Fを、測定対象物110を測定する際に付与される測定力Fと同一の値とする。これにより、吸着材114を用いた測定対象物110の清掃の際に、測定力Fを超える過剰な付勢力Fを測定対象物110へ付加することがなく、測定対象物110の変形等を抑制し得る。
【0069】
〔検出器の第一変形例〕
図3は第一変形例に係る吸着材の模式図である。図3に示す検出器100Bは、鉛直方向の上側から下側へ見た際の吸着材114Bの形状が円形状となっている。換言すると、吸着材114Bは、測定対象物110へ接触させる接触面114Cに曲面が含まれる。図3に示す吸着材114Bの接触面114Cを構成する曲面の例として、球面一部が挙げられる。吸着材114Bの全体形状を球形状としてもよい。
【0070】
第一変形例に係る検出器100Bによれば、測定対象物110の母線121に対して、実際の吸着材114Bの接触位置122のずれが生じた場合でも、吸着材114Bが測定対象物110に接触するので、母線ずれが発生した場合でも、吸着材114Bの接触位置122において異物の除去が可能となる。
【0071】
〔検出器の第二変形例〕
図4は第二変形例に係る検出器の全体構成図である。図4に示す検出器100Cは、スタイラス130が、検出器本体101の全幅を超える全長を有している。スタイラス130は、一方の端に接触子102が取り付けられ、他方の端に吸着材114が取り付けられる。
【0072】
検出器本体101の全幅をDとする場合、アーム104の中心軸104Dから吸着材114の吸着材114の接触面114Cまでの距離Lは、L>D/2を満たす。換言すると、アーム104の中心軸104Dから吸着材114の吸着材114の接触面114Cまでの距離Lは、アーム104の中心軸104Dから検出器本体101の外周面101Aまでの距離を超える。
【0073】
同様に、アーム104の中心軸104Dから接触子102の先端102Aまでの距離Lは、L>D/2を満たす。換言すると、アーム104の中心軸104Dから接触子102の先端102Aまでの距離Lは、アーム104の中心軸104Dから検出器本体101の外周面101Aまでの距離を超える。
【0074】
第二変形例に係る検出器100Cによれば、測定対象物110に対して吸着材114を接触させた際に、測定対象物110と検出器本体101との接触を回避し得る。同様に、測定対象物110に対して接触子102を接触させた際に、測定対象物110と検出器本体101との接触を回避し得る。
【0075】
〔検出器の第三変形例〕
図1等には、アーム104の先端部104Bにおいて、アーム104の中心軸104Dを挟んで接触子102の反対側の位置に吸着材114を取り付ける態様を例示したが、アーム104の中心軸104Dについて接触子102と同じ側の位置に吸着材114を取り付けてもよい。
【0076】
すなわち、アーム104の先端104Cから、アーム104の中心軸104Dの方向を見た場合に、接触子102と吸着材114とのなす角度は0度を超え180度未満の角度であってもよい。但し、接触子102と吸着材114との切り替えの容易性、測定対象位置と清掃対象位置との同一性の確保等を考慮すると、接触子102と吸着材114とのなす角度は180度が好ましい。なお、ここでいう180度には、許容範囲の誤差が含まれ得る。
【0077】
本実施形態では、アーム104の中心軸104Dが鉛直方向に沿う態様を例示したが、アーム104の中心軸104Dが鉛直方向と直交する水平方向に沿う態様も可能である。
【0078】
〔真円度測定装置への適用例〕
図5図1に示す検出器が適用される真円度測定装置の全体構成図である。図5に示す真円度測定装置10は、ワーク9の測定対象部分に接触子102を接触させて、ワーク9の測定を実施する。真円度測定装置10は、ワーク9の測定データを解析して、ワーク9の円筒度及び真円度等の幾何公差を導出し得る。なお、ワーク9は、図1等に示す測定対象物110に対応する。
【0079】
真円度測定装置10は、ベース11を備える。ベース11は真円度測定装置10の各部を支持する支持台である。なお、支持台は基台と呼ばれる場合がある。真円度測定装置10は、テーブル13を備える。テーブル13は載物台と呼ばれる場合がある。
【0080】
テーブル13は、円盤状であり、ベース11の上面に取り付けられる。テーブル13は、テーブル13の中心を通り、かつ、上下方向に延びる回転軸22の位置において、ベース11を用いて回転可能に支持される。テーブル13は、水平方向の基準面に対して平行となるように、基準面に対する傾きが調整される。
【0081】
ここで、本明細書のおける上方向という用語は鉛直上方向を表す。また、下方向という用語は鉛直下方向を表す。
【0082】
テーブル13の上面は把持具が取り付けられる。把持具は、ワーク9をテーブル13の上面に載置する際にワーク9の基端部を把持する。把持具は、三爪のスクロールチャックを適用し得る。なお、把持具の図示は省略する。
【0083】
ワーク9は、測定対象部分の形状中心がテーブル13の回転軸22と一致するように、テーブル13の上面に載置される。図5には、円柱形状のワーク9における外周面が測定対象部分であり、円柱の中心軸がテーブル13の回転軸22と一致するようにワーク9が載置される例を示す。
【0084】
真円度測定装置10は、モータ14を備える。モータ14は、ベース11の内部に配置される。モータ14の回転軸は、駆動伝達機構20を介してテーブル13の駆動軸と連結される。モータ14は、回転軸22を回転中心として、テーブル13を回転動作させる。駆動伝達機構20は、ギア等を含み得る。
【0085】
真円度測定装置10は、コラム15、キャリッジ16、水平アーム17及び検出器100を備える。コラム15は、ベース11の上面であり、水平方向におけるベース11の側方側に配置される。コラム15は上下方向に延びる柱である。
【0086】
コラム15は、水平アーム17が水平方向に移動可能に取り付けられるキャリッジ16を昇降可能に支持する。水平アーム17の先端部は、検出器100が取り付けられる。ここでは、検出器100の詳細な説明は省略する。符号Aは接触子102及び吸着材114の移動方向を表す。
【0087】
真円度測定装置10は、制御装置19、表示装置19A及び入力装置19Bを備える。制御装置19は、表示装置19A及び入力装置19Bが接続される。表示装置19Aは液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置を適用し得る。入力装置19Bは、キーボード及びマウスを適用し得る。タッチパネル方式のディスプレイ装置を表示装置19Aに適用して、表示装置19Aと入力装置19Bとを兼用してもよい。
【0088】
検出器100から出力されるワーク9の測定データは、制御装置19へ送信される。制御装置19は、ワーク9の測定データに基づき、ワーク9の真円度等の測定結果を導出する。表示装置19Aは、ワーク9の測定結果を表示する。
【0089】
入力装置19Bは、ワーク9の測定を実施する際の測定条件等の情報を制御装置19へ入力する。制御装置19は、制御装置19を用いて入力された測定条件に基づいて、モータ14、キャリッジ16及び検出器100の動作を制御する。
【0090】
〔制御装置の説明〕
図6図5に示す真円度測定装置の機能ブロック図である。真円度測定装置10は、制御装置19を備える。制御装置19は、測定データ取得部40、測定データ処理部42、測定データ記憶部44、処理結果記憶部46を備える。
【0091】
測定データ取得部40は、検出器100に具備される変位センサ108から送信されるワーク9の測定データを取得する。測定データ取得部40は、測定データ記憶部44を用いて測定データ取得部40を介して取得した測定データを記憶する。
【0092】
測定データ処理部42は、測定データ取得部40を介して取得した測定データに対して処理を実施する。測定データ処理部42は、処理結果記憶部46を用いて処理結果を記憶する。
【0093】
制御装置19は、表示制御部48を備える。表示制御部48は、表示装置19Aを制御する。表示制御部48は、表示装置19Aに表示させる情報に対応する電気信号を表示信号へ変換し、表示信号を表示装置19Aへ送信する。表示装置19Aは、表示制御部48から送信された表示信号が表す情報を表示する。
【0094】
制御装置19は、測定力付与制御部50及び測定力設定部52を備える。測定力付与制御部50は、ワーク9の測定に適用される測定力付与機構106の設定値に基づき、検出器100に具備される測定力付与機構106の動作を制御する。
【0095】
測定力設定部52は、測定力付与機構106の設定値を取得する。測定力設定部52は、入力装置19B等を用いて入力された測定力付与機構106の設定値を取得し得る。測定力設定部52は、取得した測定力付与機構106の設定値を測定力付与制御部50へ送信する。
【0096】
制御装置19は、駆動制御部60を備える。駆動制御部60は、駆動機構62の動作パラメータに基づき駆動機構62の動作を制御する。駆動機構62は、図5にテーブル13を回転させるモータ14、キャリッジ16を動作させるモータ及び水平アーム17を動作させるモータを含み得る。
【0097】
制御装置19は、入力部64を備える。入力部64は入力装置19Bから送信される入力信号を取得する。入力部64は入力信号に対応する情報を制御装置19の各部へ送信する。例えば、入力装置19Bを用いて制御パラメータの設定値が入力される場合、入力部64は取得した入力信号に対応する制御パラメータを該当する制御部へ送信する。
【0098】
制御装置19は、プログラム記憶部66を備える。プログラム記憶部66は、真円度測定装置10及び制御装置19に適用される各種のプログラムが記憶される。プログラムの一例として、円筒度測定に適用される円筒度測定プログラムが挙げられる。
【0099】
制御装置19は、モード設定部70を備える。モード設定部70は入力部64を介して入力された動作モード情報に基づき、真円度測定装置10の動作モードを設定する。真円度測定装置10は、動作モードとして測定モード又は清掃モードのいずれかを実施し得る。測定モードはワーク9を設定する動作モードである。清掃モードはワーク9の清掃を実施する動作モードである。
【0100】
制御装置19は、接触切替制御部72及び付勢方向切替制御部74を備える。接触切替制御部72は、真円度測定装置10の動作モードに応じて、検出器100に具備される接触切替部76の動作を制御する。
【0101】
接触切替部76は、接触切替制御部72から送信される制御信号に基づき、ワーク9に対して接触子102を接触させるか又は吸着材114を接触させるかを切り替える。例えば、測定モードが設定される場合、接触切替部76はワーク9に対して接触子102を接触させる。また、清掃モードが設定される場合、接触切替部76はワーク9に対して吸着材114を接触させる。
【0102】
付勢方向切替制御部74は、検出器100に具備される付勢方向切替部78の動作を制御する。付勢方向切替部78は、測定モードにおいてワーク9に対して接触子102させる場合と、清掃モードにおいてワーク9に対して吸着材114を接触させる場合とにおいて、接触子102又は吸着材114に対して付与される付勢力の方向を切り替える。
【0103】
〔制御装置のハードウェア構成〕
制御装置19は、コンピュータを適用し得る。制御装置19は、以下に説明するハードウェアを用いて、規定のプログラムを実行して真円度測定装置10の機能を実現する。各制御部のハードウェアは、各種のプロセッサ及び各種のメモリを適用し得る。プロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。CPUはプログラムを実行して各種処理部として機能する。メモリの例として、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)が挙げられる。
【0104】
〔測定方法の手順〕
図7図5に示す真円度測定装置に適用される測定方法の手順を示すフローチャートである。移動工程S10では、図6に示す駆動制御部60は駆動機構62を動作させて、ワーク9における未測定の測定対象位置へ検出器100を移動させる。移動工程S10の後に清掃工程S12へ進む。
【0105】
清掃工程S12では、モード設定部70は動作モードを清掃モードに設定する。すなわち、清掃工程S12では、接触切替制御部72は接触切替部76を動作させて、ワーク9に対して吸着材114を接触させる。
【0106】
また、清掃工程S12では、付勢方向切替制御部74は、付勢方向切替部78を動作させて、吸着材114からワーク9へ向かう付勢力Fを吸着材114に対して付与する。
【0107】
更にまた、清掃工程S12では、駆動制御部60は駆動機構62を動作させ、ワーク9を回転させて、吸着材114を用いたワーク9の清掃を実施する。清掃工程S12の後に測定工程S14へ進む。
【0108】
なお、実施形態に記載の清掃工程S12において、ワーク9に対して吸着材114を接触させる工程は、接触切替工程の一例に相当する。実施形態に記載の清掃工程S12において、吸着材114からワーク9へ向かう付勢力Fを吸着材114に対して付与する工程は、付勢力付与工程の一例に相当する。実施形態に記載の清掃工程S12は除去工程の一例に相当する。
【0109】
測定工程S14では、接触切替制御部72は動作モードを測定モードに設定する。また、測定工程S14では、接触切替制御部72は接触切替部76を動作させて、接触切替制御部72はワーク9に対して接触子102を接触させる。
【0110】
更に、測定工程S14では、付勢方向切替制御部74は付勢方向切替部78を動作させて、接触子102からワーク9へ向かう測定力Fを接触子102に対して付与する。
【0111】
更にまた、測定工程S14では、駆動制御部60は駆動機構62を動作させ、ワーク9を回転させて、接触子102を用いたワーク9の測定を実施する。検出器100はワーク9の測定データを制御装置19へ送信する。測定工程S14の後に測定判定工程S16へ進む。
【0112】
なお、実施形態に記載の測定工程S14において、ワーク9に対して接触子102を接触させる工程は、接触切替工程の一例に相当する。
【0113】
測定判定工程S16では、測定データ取得部40は全ての測定対象位置の測定が実施済みであるか否かを判定する。すなわち、測定データ取得部40は全ての測定対象位置における測定データを取得したか否かを判定する。
【0114】
測定判定工程S16において、測定データ取得部40が未測定の測定対象位置が存在すると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は移動工程S10へ進み、測定判定工程S16においてYes判定となるまで、移動工程S10から測定判定工程S16までの各工程を繰り返し実施する。
【0115】
一方、測定判定工程S16において、測定データ取得部40が全ての測定対象位置の測定が実施済みである判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、制御装置19は規定の終了処理を実施して、測定方法を終了させる。
【0116】
[第一実施形態に係る測定方法の作用効果]
第一実施形態に係る測定方法によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0117】
〔1〕
測定対象位置ごとに、測定前に測定対象位置の清掃が実施される。これにより、異物が除去された直後に、各測定対象位置の測定が可能となる。
【0118】
〔2〕
測定対象位置ごとに、清掃が実施された直後に測定を実施する。これにより、測定中において、測定対象位置への異物付着の可能性を低減し得る。
【0119】
[第二実施形態]
図8は第二実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。第二実施形態に係る測定方法は、第一実施形態に係る検出器100が適用される真円度測定装置10を用いて実施し得る。
【0120】
第二実施形態に係る測定方法は、清掃モードにおいて全ての測定対象位置の清掃を実施し、動作モードを測定モードに切り替えて、測定モードにおいて全ての測定対象位置の測定を実施する。
【0121】
清掃モード設定工程S100では、モード設定部70は動作モードを清掃モードに設定する。清掃モード設定工程S100では、図7の清掃工程S12と同様に、ワーク9へ吸着材114を接触させる切り替え及び吸着材114に対する付勢方向の切り替えを実施する。清掃モード設定工程S100の後に第一移動工程S102へ進む。
【0122】
第一移動工程S102は、移動工程S10に対応する。第一移動工程S102の後に清掃工程S104へ進む。清掃工程S104では、清掃工程S12と同様に、吸着材114を用いて測定対象位置ごとに清掃を実施する。
【0123】
清掃工程S104では、測定対象位置ごとの清掃が一括して実施されるので、測定工程S14に適用される測定プログラムを適用し得る。清掃工程S104の後に清掃判定工程S106へ進む。
【0124】
清掃判定工程S106では、制御装置19は全ての測定対象位置の清掃が実施済みであるか否かを判定する。制御装置19は測定対象位置の数から第一移動工程の実施回数を減算し、減算結果が0以下となる場合に、全ての測定対象位置の清掃が実施済みであると判定し得る。
【0125】
清掃判定工程S106において、制御装置19が未清掃の測定対象位置が存在すると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は第一移動工程S102のへ進み、清掃判定工程S106においてYes判定となるまで、第一移動工程S102から清掃判定工程S106までの各工程を繰り返し実施する。
【0126】
一方、清掃判定工程S106において、制御装置19が全ての測定対象位置の清掃が実施済みである判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、測定モード設定工程S108へ進む。
【0127】
測定モード設定工程S108では、モード設定部70は動作モードを測定モードに設定する。測定モード設定工程S108では、ワーク9へ接触子102を接触させる切り替え及び接触子102に対する付勢方向の切り替えを実施する。測定モード設定工程S108の後に第二移動工程S110へ進む。
【0128】
第二移動工程S110は、第一移動工程S102と同様の処理が実施される。第二移動工程S110の後に測定工程S112へ進む。測定工程S112では、測定工程S14と同様に、測定対象位置に対して接触子102を接触させて、測定対象位置ごとに測定を実施する。測定工程S112では、測定工程S14と同様の測定プログラムが適用される。測定工程S112の後に測定判定工程S114へ進む。
【0129】
測定判定工程S114では、測定判定工程S16と同様に、測定データ取得部40は全ての測定対象位置の測定が実施済みであるか否かを判定する。測定判定工程S114において、測定データ取得部40が未測定の測定対象位置が存在すると判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は第二移動工程S110へ進み、測定判定工程S114においてYes判定となるまで、第二移動工程S110から測定判定工程S114までの各工程を繰り返し実施する。
【0130】
一方、測定判定工程S114において、測定データ取得部40が全ての測定対象位置の測定が実施済みである判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、制御装置19は規定の終了処理を実施して、測定方法を終了させる。
【0131】
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0132】
〔1〕
第一実施形態に係る測定方法と比較して、清掃モードと測定モードとの切替回数が少ないので、測定方法の全体の実施期間を短縮し得る。
【0133】
〔2〕
清掃工程S104において、測定工程S112と同様のプログラムが適用される。これにより、清掃工程S104に適用される清掃工程用のプログラムの作成を必要とせず、プログラムの作成に必要なコストを低減し得る。
【0134】
[第三実施形態]
図9は第三実施形態に係る真円度測定装置の機能ブロック図である。第三実施形態に係る真円度測定装置10Aは、図6に示す真円度測定装置10に対して、制御装置19Cに清掃回数判定部80、清掃回数設定部82及び清掃回数記憶部84が追加される。
【0135】
清掃回数判定部80は、ワーク9の清掃回数が規定回数を超えるか否かを判定する。清掃回数は、図7の清掃工程S12及び図8の清掃工程S104等の実施回数を適用し得る。制御装置19Cは、ワーク9の清掃回数が規定回数以下の場合にワーク9の清掃を実施し、ワーク9の清掃回数が規定回数を超える場合にワーク9の清掃を非実施とする。
【0136】
清掃回数設定部82は、最大の清掃回数を設定する。最大の清掃回数は、固定値でもよいし、変動値でもよい。清掃回数記憶部84は、実際に実施された清掃回数を記憶する。
【0137】
図10は第三実施形態に係る測定方法の手順を示すフローチャートである。第三実施形態に係る測定方法は、測定データの解析の際に異物の影響を受けた測定データが発見された場合に、ワーク9の清掃直後に再測定を実施する。測定データの解析は、図9に示す測定データ処理部42を用いて実施される。
【0138】
第一測定工程S200では、制御装置19は未測定の測定対象位置に対する測定を実施する。第一測定工程S200は測定工程S14と同様の処理を実施し、全ての測定対象位置についての測定を実施する。第一測定工程S200の後に第一測定データ判定工程S202へ進む。
【0139】
第一測定データ判定工程S202では、測定データ処理部42は異物の影響を受けた測定データの有無を判定する。異物の影響を受けた測定データの例として、急激な変化がある測定データが挙げられる。
【0140】
第一測定データ判定工程S202において、測定データ処理部42が異物の影響を受けた測定データが無いと判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は、測定判定工程S204へ進む。
【0141】
第一測定データ判定工程S202において、測定データ処理部42が異物の影響を受けた測定データがあると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、清掃工程S206へ進む。
【0142】
測定判定工程S204は、測定判定工程S16に対応する。測定判定工程S204においてNo判定の場合は第一測定工程S200へ進み、測定判定工程S204においてYes判定となるまで、第一測定工程S200から測定判定工程S204までの各工程を繰り返し実施する。
【0143】
一方、測定判定工程S204においてYes判定の場合は、制御装置19は規定の終了処理を実施して、測定方法を終了させる。
【0144】
清掃工程S206では、制御装置19は異物の影響を受けた測定データに対応する測定対象位置について清掃を実施する。清掃工程S206は清掃工程S12に対応する。清掃工程S206の後に第二測定工程S208へ進む。
【0145】
第二測定工程S208では、制御装置19は清掃工程S206において清掃を実施した測定対象位置について測定を実施する。第二測定工程S208は清掃工程S12に対応する。第二測定工程S208の後に清掃回数判定工程S210へ進む。
【0146】
清掃回数判定工程S210では、清掃回数判定部80は清掃工程S206の実施回数が規定回数を超えるか否かを判定する。清掃回数判定工程S210において、清掃回数判定部80が清掃工程S206の実施回数が規定回数以下と判定する場合はNo判定となる。No判定の場合は、第二測定データ判定工程S212へ進む。
【0147】
一方、清掃回数判定工程S210において、清掃回数判定部80が清掃工程S206の実施回数が規定回数を超えると判定する場合はYes判定となる。Yes判定の場合は、第一測定工程S200へ進む。
【0148】
すなわち、清掃回数判定工程S210においてNo判定の場合は、以降のワーク9の測定は非実施とされる。一方、清掃回数判定工程S210においてYes判定の場合は、以降のワーク9の測定は実施される。
【0149】
清掃工程S206の実施回数が規定回数を超える場合は、第一測定データ判定工程S202において、異物の影響を受けた測定データと判定された測定データは現実のワーク9の測定データとして記憶される。すなわち、一回以上の清掃工程S206を実施して十分な清掃が実施された直後の測定において得られた測定データは、異物の影響を受けていないと判定される。
【0150】
第二測定データ判定工程S212では、第一測定データ判定工程S202と同様に、測定データ処理部42は異物の影響を受けた測定データの有無を判定する。第二測定データ判定工程S212におけるNo判定の場合は、第一測定工程S200へ進む。
【0151】
すなわち、第二測定データ判定工程S212においるNo判定の場合は、測定対象位置の異物が除去され、異物の影響を受けていない測定データが取得されたと判定される。かかる測定データは現実のワーク9の測定データとして記憶される。
【0152】
一方、第二測定データ判定工程S212においるYes判定の場合は、清掃工程S206へ進み、清掃回数判定工程S210においてYes判定となるまで、清掃工程S206から清掃回数判定工程S210までの各工程を繰り返し実施する。
【0153】
第三実施形態に係る真円度測定装置10Aにおいて、清掃を実施した清掃実施測定対象位置と清掃を実施しない未実施測定対象位置と比率を算出する清浄度算出部を備えてもよい。清浄度算出部の算出結果に基づき、ワーク9の表面の清浄度を評価してもよい。かかる比率を算出する際に、清掃実施測定対象位置について、測定対象位置ごとの清掃回数に応じた重み係数を用いてもよい。
【0154】
[第三実施形態の作用効果]
第三実施形態によれば、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0155】
〔1〕
測定データの解析結果に基づき、必要に応じて測定対象位置ごとに清掃を実施する。これにより、第一実施形態に係る測定方法及び第二実施形態に係る測定方法と比較して、ワーク9の清掃に費やされる期間を低減し得る。
【0156】
〔2〕
清掃工程S206の最大実施回数を規定する。これにより、ワーク9の測定データの全体の中に、異物の影響を受けた測定データが残る可能性を抑制し得る。また、測定の信頼性向上と測定に費やされる期間の短縮とのバランスを取ることができる。
【0157】
〔3〕
清掃を実施した測定対象位置と清掃を未実施の測定対象位置との比率を算出する。これにより、ワーク9の表面の清浄度を評価し得る。
【0158】
[第三実施形態の変形例]
図11は第三実施形態の変形例に係る測定データ解析の模式図である。図11には、測定対象位置における回転断面の輪郭における位置を横軸、変位センサ108の測定値を縦軸としたグラフ200を示す。
【0159】
グラフ200における点線を用いて図示した曲線は、清掃前の測定データ202を示す。清掃前の測定データは、図10の第一測定工程S200において取得された測定データである。
【0160】
グラフ200における実線を用いて図示した曲線は、清掃後の測定データ204を示す。清掃後の測定データは、図10の第二測定工程S208において取得された測定データである。
【0161】
清掃前の測定データ202は、急激な変化である突起形状202Aが含まれる。同様に、清掃後の測定データ204は突起形状204Aが含まれる。清掃前の測定データ202における突起形状202Aの出現位置Pと、清掃後の測定データ204における突起形状204Aの出現位置Pとが異なる場合、出現位置Pの異物の出現位置Pへの移動及び出現位置Pへの新たな異物の付着が考えられる。
【0162】
かかる場合、出現位置Pにおける測定データ及び出現位置Pにおける測定データは、いずれも異物の影響を受けた測定データと判定し、出現位置P及び出現位置Pを含む測定対象位置の清掃が実施される。
【0163】
第三実施形態の変形例によれば、異物の影響を受けた測定データを正確に認識でき、清掃を実施して異物の除去が可能である。
【0164】
[検出器の応用例]
図12は応用例に係る検出器の全体構成図である。同図に示す検出器300は、アーム104の先端部104Bに吸着材114のみが取り付けられ、図1等に示す接触子102が取り付けられていない。
【0165】
図13図12に示す検出器において吸着材に代わり接触子を取り付ける態様の説明図である。すなわち、図12等に示す検出器300は、接触子102と吸着材114とを付け替える構造を有する。
【0166】
検出器300は、付勢方向の切り替えを必要とせず、ワーク9の測定に適用される測定力Fを、ワーク9の清掃の際の付勢力Fとして適用し得る。
【0167】
検出器300を備える真円度測定装置は、アーム104の先端部104Bに接触子102が取り付けられるか又は吸着材114が取り付けられるかを検出し、接触子102が取り付けられる場合は測定モードを自動実施し、吸着材114が取り付けられる場合は清掃モードを自動実施し得る。
【0168】
図12等に示す検出器300は、アーム104の先端部104Bを交換可能に構成してもよい。すなわち、検出器300は、接触子102が取り付けられるアーム104の先端部104Bと、吸着材114が取り付けられるアーム104の先端部104Bとを交換可能に構成されたアーム104を備えてもよい。
【0169】
本実施形態では、ワーク9の表面性状を測定する表面性状測定装置の一例として、ワーク9の円筒度等を測定する真円度測定装置を例に挙げて説明したが、これに限らず、真円度測定装置以外の表面性状測定装置であってもよい。
【0170】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0171】
9…ワーク、10…真円度測定装置、19…制御装置、42…測定データ処理部、70…モード設定部、72…接触切替制御部、74…付勢方向切替制御部、76…接触切替部、78…付勢方向切替部、100,100B,100C…検出器、102…接触子、102A…先端、104…アーム、104B…先端部、106…測定力付与機構、108…変位センサ、114,114B…吸着材、114C…接触面、130…スタイラス
図1
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図13