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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】異方性を有する樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/62 20060101AFI20220228BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20220228BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20220228BHJP
   B29B 13/08 20060101ALI20220228BHJP
   B29C 31/00 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
B29C70/62
C08J5/00 CFC
C08J5/00 CFH
B29C39/26
B29B13/08
B29C31/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018086770
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019188755
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 紀仁
(72)【発明者】
【氏名】福田 健
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-140936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/62
C08J 5/00
B29C 39/26
B29B 13/08
B29C 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気異方性を有する充填材が一方向に配向した樹脂成形体を製造する方法であって、下記工程(a)~(c)を有することを特徴とする異方性を有する樹脂成形体の製造方法。
(a)磁気異方性を有する充填材を含有し、熱、光または電子線によって硬化もしくはBステージ化することで固形化し得る樹脂組成物であって、該樹脂組成物からなるシート状又はブロック状の樹脂成形体を水平方向に移動可能な運搬手段上に載置し、該樹脂成形体の少なくとも上面を厚さ5mm未満のカバー材で覆う準備工程、
(b)上記工程(a)で得られた樹脂成形体を、中心の磁束密度が1T以上であるバルク超伝導体磁石で磁場を印加する工程、及び
(c)厚さ2mm以下のフィルムを介して磁場を印加した状態でバルク超伝導体磁石の中心部分の領域に載置した樹脂成形体に振動を印加しながら該樹脂成形体を水平方向に移動させスキャンする工程
【請求項2】
上記充填材が、繊維状物質、ナノチューブ系物質、板状又は柱状物質、結晶性無機物及び結晶性有機物の群から選ばれる少なくとも1種の充填材である請求項1記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
上記充填材が、セルロースナノファイバー、炭素繊維、アルミナ繊維、窒化アルミニウムウィスカー、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブ、鱗片状窒化ホウ素、板状凝集窒化ホウ素、鱗片状黒鉛、グラフェン及び板状アルミナの群から選ばれる少なくとも1種の充填材である請求項1又は2記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
上記工程(a)において、上記カバー材が、厚さ2mm以下のフィルム、または非強磁性金属板である請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
得られる樹脂成形体が厚さ5mm以下のシート形状である請求項1~のいずれか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
上記樹脂組成物がシリコーン樹脂組成物である請求項1~のいずれか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
上記樹脂組成物が25℃で液状のエポキシ樹脂組成物である請求項1~のいずれか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
上記樹脂組成物が、40~150℃の軟化点を有し、且つ25℃で固形のエポキシ樹脂組成物である請求項1~のいずれか1項記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載の工程(a)~(c)に次いで、さらに、(d)スキャン後の樹脂成形体を熱、光または電子線によって硬化もしくはBステージ化させる工程を有する樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気異方性を有する樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、飛行機、太陽電池などに使われる樹脂は、様々な面で高性能化が求められている。特に、高い異方性を有する充填材を含有した樹脂は近年注目を集めている。例えば、飛行機や自動車の車体には高強度且つ軽量の部材が必要とされ、炭素繊維やセルロースナノファイバーを含有する樹脂が注目を集め、開発が進められている。また、透明材料としてITOに替わる材料として銀ナノワイヤーを含有した樹脂、TIM用途として鱗片状窒化ホウ素を含有した高熱伝導樹脂が開発されている。しかし、これらの材料では充填材の特性を利用して高機能化を実現しているが、それらの異方性を利用すれば高強度化などの更なる高性能化が実現可能である。充填材の異方性を十分に利用するには、樹脂中で充填材の配列や配向を制御する技術が必要になる。
【0003】
このような方法には、例えば、樹脂の流動を利用する方法が挙げられる(特許文献1)。射出時の流動を用いる方法では、射出成形時の金型内部の流動に合わせ繊維が配向するため、特定の形状における完全な配向の制御は難しい。特に、面方向に繊維が配向した薄いシート状の成形物を作成するのは難しい。また、使える樹脂は流動性が高いものに限定される。
【0004】
また、電場を利用する方法が挙げられる(特許文献2)。電場を用いた方法では、配向の制御は容易ではあるが、高電圧を必要とし、安全性を確保しながら配向体の樹脂を製造するのは困難である。
【0005】
また、磁場を利用する方法が挙げられる(特許文献3~5)。特許文献3や特許文献4では、10Tの超電導コイル磁石を用いて、異方性のある充填材を配向した樹脂成形体を作成する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、超電導コイル磁石のコイルの穴の大きさ以上の樹脂の充填材を配向させるは困難である。また、筒状の構造のため、超音波振動子の接触などの、空気振動による振動以外の方法で配向させることは難しい。また、装置の価格も高く、連続製造も難しいため、樹脂成形体の量産や低コスト化は困難である。特許文献5では、常伝導コイル磁石による磁場を印加した状態で、樹脂に振動を加え、強磁性体被覆炭素繊維を樹脂中で配向させる方法が開示されている。しかし、常伝導コイル磁石では磁束密度が小さく、充填材を強磁性体で被覆しなければ十分に配向できず、コストや材料の特性に大きな制限がかかる。
【0006】
そこで、バルク超伝導体磁石を用いる方法が挙げられる。バルク超伝導体磁石は、4T~20Tという強い磁場を冷却のみで維持でき、構造もシンプルかつコンパクトで、普通の永久磁石のように用いることができる。しかし、問題としてバルク超伝導体磁石では、中心部分は強力な磁場が出ているが、中心から数センチ外れただけで、弱い斜めの磁場しか出ていない。そのため、例えば30cm角のシート状成形体のような大型の異方性材料を製造するには不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-124785号公報
【文献】特開2006-312677号公報
【文献】特開2004-255600号公報
【文献】特開2006-335957号公報
【文献】特開2000-141505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連続成形及び大型化が可能な、バルク超伝導体磁石を用いた異方性樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、バルク超伝導体磁石の中心部分の磁場中にある未硬化の成形体に振動を印加し、水平方向にスキャンする方法で連続成形及び大型化が可能な異方性樹脂成形体の製造方法を見出した。即ち、バルク超伝導体磁石を着磁すると中心部分の磁束密度が磁石の面と垂直方向に出るものであり、並行且つ均一で強い磁場の領域を利用し、該領域にある樹脂成形体に超音波振動を印加しながら成形体を移動させることで、樹脂成形物中の磁気異方性を有する充填材が一方向に配向した大判又は長いテープ状の樹脂成形体が製造できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
具体的には、本発明では、下記工程(a)~(c)を有することを特徴とする磁気異方性を有する充填材が一方向に配向した樹脂成形体の製造方法を提供する。
1.磁気異方性を有する充填材が一方向に配向した樹脂成形体を製造する方法であって、下記工程(a)~(c)を有することを特徴とする異方性を有する樹脂成形体の製造方法。
(a)磁気異方性を有する充填材を含有し、熱、光または電子線によって硬化もしくはBステージ化することで固形化し得る樹脂組成物であって、該樹脂組成物からなるシート状又はブロック状の樹脂成形体を水平方向に移動可能な運搬手段上に載置し、該樹脂成形体の少なくとも上面を厚さ5mm未満のカバー材で覆う準備工程、
(b)上記工程(a)で得られた樹脂成形体を、中心の磁束密度が1T以上であるバルク超伝導体磁石で磁場を印加する工程、及び
(c)厚さ2mm以下のフィルムを介して磁場を印加した状態でバルク超伝導体磁石の中心部分の領域に載置した樹脂成形体に振動を印加しながら該樹脂成形体を水平方向に移動させスキャンする工程
2.上記充填材が、繊維状物質、ナノチューブ系物質、板状又は柱状物質、結晶性無機物及び結晶性有機物の群から選ばれる少なくとも1種の充填材である1記載の樹脂成形体の製造方法。
3.上記充填材が、セルロースナノファイバー、炭素繊維、アルミナ繊維、窒化アルミニウムウィスカー、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブ、鱗片状窒化ホウ素、板状凝集窒化ホウ素、鱗片状黒鉛、グラフェン及び板状アルミナの群から選ばれる少なくとも1種の充填材である1又は2記載の樹脂成形体の製造方法。
4.上記工程(a)において、上記カバー材が、厚さ2mm以下のフィルム、または非強磁性金属板である上記1~3のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
.得られる樹脂成形体が厚さ5mm以下のシート形状である上記1~のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
.上記樹脂組成物がシリコーン樹脂組成物である上記1~のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
.上記樹脂組成物が25℃で液状のエポキシ樹脂組成物である上記1~のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
.上記樹脂組成物が、40~150℃の軟化点を有し、且つ25℃で固形のエポキシ樹脂組成物である上記1~のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
.上記1~のいずれかに記載の工程(a)~(c)に次いで、さらに、(d)スキャン後の樹脂成形体を熱、光または電子線によって硬化もしくはBステージ化させる工程を有する樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法は、バルク超伝導体磁石を用いた異方性樹脂成形体を製造する方法として、連続成形及び大型化が可能な異方性樹脂成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】バルク超伝導体磁石の磁束密度の様子を表す概念図である。
図2】本発明の一実施例に係る製造方法に使用される装置の概略構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施例に係る製造方法に使用される装置の概略構成を示す平面図である。
図4図2の概略構成において、樹脂組成物に磁場を印加し、超音波振動により異方性樹脂組成物を作成した様子を説明するための図である。
図5図2の概略構成において、樹脂組成物に磁場を印加し、超音波振動により異方性樹脂組成物を硬化させた後、樹脂組成物を移動させ、超音波振動により隣接する部分の異方性樹脂組成物を硬化させた様子を説明するための図である。
図6】実施例3で得られたシートの断面のSEM画像である。
図7】比較例6で得られたシートの断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の製造方法につき、更に詳しく説明する。
〈樹脂組成物〉
本発明は、磁気異方性を有する充填材を含有する樹脂組成物の成形方法に関するものである。この樹脂組成物は、熱硬化樹脂組成物、光(UV)硬化樹脂組成物または電子線硬化樹脂組成物から選ばれるものである。これらの樹脂組成物は、未硬化状態において室温(25℃)で液状あるいは固体または半固体のものをそのまま用いてもよいし、加熱、またはUVレーザー、電子線レーザーなどの照射により硬化もしくはBステージ化することによって固形化したものを用いてもよい。
なお、本発明において「Bステージ化」とは、樹脂組成物を半硬化させることを意味する。
【0014】
上記樹脂組成物は、硬化性樹脂と後述する磁気異方性を有する充填材とを必須成分とする。
【0015】
硬化性樹脂としては、特に限定されないが、熱硬化性シリコーン樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、UV硬化エポキシ樹脂、UV硬化シリコーン樹脂、電子線硬化シリコーン樹脂などが挙げられ、中でも熱硬化性シリコーン樹脂が好ましく用いられる。また、硬化性樹脂は、室温で液状、あるいは、40~150℃の軟化点を有し、25℃で固形の樹脂を用いることができる。40~150℃の軟化点を有し25℃で固形の樹脂を用いる場合、スキャン工程時に樹脂の軟化点以上の温度に樹脂を加熱することが好ましい。
【0016】
〈磁気異方性を有する充填材〉
上記樹脂組成物に含有させるに磁気異方性充填材としては、結晶磁気異方性及び/又は形状磁気異方性を有し、磁場を印加することで一方向に配向する材料を用いる。これらの充填材の配向を一方向に制御することで、樹脂組成物に異方性をもたせ、強度、電気伝導度や熱伝導率、圧電特性などを向上させることができる。
【0017】
結晶磁気異方性を有する材料としては、結晶性無機物や、有機物単結晶などの結晶性有機物が挙げられる。また、形状磁気異方性を有する材料としては、セルロースナノファイバー、炭素繊維、アルミナ繊維、窒化アルミニウムウィスカー、金属ナノワイヤーなどの繊維状物質;カーボンナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブなどのナノチューブ系物質;鱗片状窒化ホウ素、板状凝集窒化ホウ素、鱗片状黒鉛、グラフェン、板状アルミナなどの板状または柱状物質が挙げられる。中でも繊維状物質や板状または柱状物質を採用することが好ましく、特に炭素繊維が好ましい。また、樹脂硬化物の強度の向上等のため、充填材として、球状シリカなどの磁気異方性のない材料を併用して用いても良い。
【0018】
磁気異方性を有する充填材の配合量については、特に制限はないが、樹脂組成物中の硬化性樹脂100質量部に対して、10~1,000質量部、好ましくは10~300質量部の範囲で配合することができる。
【0019】
〈製造方法の詳細〉
次に、本発明の製造方法の例について図1~5を用いて具体的に説明する。
【0020】
工程(a)
先ず、工程(a)として、図2に示すように上記樹脂組成物からなるシート状またはブロック状の樹脂成形体3を水平方向に移動可能な運搬手段4の上に載置する。運搬手段4は、樹脂フィルムまたは非磁性金属の薄板を用いることが好ましい。樹脂フィルムの例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリエチレンフィルム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルム、PCTFE(ポリトリフロロクロロエチレン)フィルムなどが挙げられ、非磁性金属の薄板の例としては、アルミニウム板、非磁性ステンレス板、銅板、チタン板などが挙げられる。中でもPETフィルムを採用することが好ましい。また、運搬手段4の厚さは0.5mm以下であることが好ましい。厚さ0.5mm以下の運搬手段であれば、磁場が減衰するなどの影響が抑えられるため好適に用いることができる。運搬手段4を用いて上記樹脂成形体を運搬する方法は特に限定されないが、例えば、運搬手段であるフィルムまたは薄板を巻き取り、移動させる方法などが挙げられる。
【0021】
また、樹脂成形体の少なくとも上部をカバー材5で覆う。上記カバー材で覆わないで樹脂組成物が露出してしまうと、後述する超音波振動の印加が困難であったり、超音波振動により樹脂の表面が波立ってしまい厚さが不均一になったりするため好ましくない。上記カバー材としては、特に制限はないが、例えば、樹脂フィルムまたは非強磁性金属板から選ばれる部材を用いることが好適である。樹脂フィルムの一例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリエチレンフィルム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルム、PCTFE(ポリトリフロロクロロエチレン)フィルムなどが挙げられる。非強磁性金属板の一例としては、アルミニウム板、非磁性ステンレス板、銅板、チタン板などが挙げられる。中でも、取り扱い性や価格の観点からPETフィルムを用いることが好ましい。なお、カバー材の少なくとも片面に離型性を付与する処理を施してもよい。また、カバー材の厚さは、5mm未満であることが必要であり、特に、2mm以下であることが好ましい。カバー材の厚さが5mm未満であれば、超音波振動が中心部分に充分に伝わるので好ましい。上記運搬手段と上記カバー材との材質とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
上記樹脂成形体の成形方法としては、該樹脂成形体の少なくとも上面がカバー材5で覆われ、且つ、運搬手段4上に載置された状態になれば、その方法、順序などについては特には問わない。例えば、上記樹脂組成物を予めシート状またはブロック状の型に注入し、型の上面にカバー材を覆ったものを運搬手段に載置してもよい。或いは、運搬手段4のフィルムまたは薄板とカバー材との間に上記樹脂組成物をはさみ、ロールでシート状に伸ばしてもよい。この場合、樹脂の周囲は樹脂が外部に漏れないように両面粘着テープなどで封止してあることが好ましい。
【0023】
工程(b)
続いて、工程(b)として、図4に示したように、上記工程(a)で準備した樹脂成形体の一部分に、バルク超伝導体磁石1により磁場を印加する。磁場の強度の観点から、樹脂成形体とバルク超伝導体磁石1との距離は、可能な限り近いことが好ましい。
【0024】
図2は、本発明の一実施例に係る製造方法に使用される装置の概略構成を示す側面図であるが、図2において符号1はバルク超伝導体磁石であり、樹脂成形体3の一部に磁場を印加することができるようになっている。符号2は超音波振動子であり、バルク超電導体磁石の中心部分1’に振動を印加できるようになっている。
【0025】
上記バルク超伝導体磁石は、超伝導体を超電導コイル等の磁場下で着磁し、磁極として用いるものである。一度着磁すると、冷却状態において半永久的に強い磁束密度を有する磁石が得られる。構造も単純で、通常の永久磁石のように使用することが可能である。そのため、超電導コイル磁石を用いた場合には、構造状難しい装置を組むことが可能である。また、価格も安く、将来的に更なる大型化や強磁場化が可能である。
【0026】
上記バルク超伝導体磁石の着磁方法としては、例えば、パルス着磁、超電導コイル磁石による着磁などが挙げられる。これらの中では、捕捉される磁束密度の大きさから超電導コイル磁石で着磁を行うことが好適である。着磁に用いる超伝導コイル磁石の磁束密度は6T以上のものを用いることが好ましい。6Tより小さいと、着磁後のバルク超伝導体磁石の磁束密度が不十分となるおそれがある。
【0027】
図1に示したように、通常、バルク超伝導磁石の磁場は中心部分のみ強く、かつ面に対して垂直である。本発明においては、バルク超伝導磁石の「中心部分」とは、バルク超伝導磁石の中心周辺の磁束密度の大きさが1T以上である領域を指す。実際に用いる中心部分の磁束密度は1T以上であり、2T以上であることが好ましく、3T以上であることがさらに好ましい。1Tより磁束密度の値が小さい領域を配向に用いると、充填材の配向が不十分になるおそれがある。
【0028】
バルク超伝導磁石に用いる超伝導体としては、特に限定されないが、RE-Ba-Cu-O系(REはY、Sm、Nd、Yb、La、Gd、Eu、Erのうちから選ばれる1種以上)、MgB2系、NbSn3系、鉄系の超伝導体等を用いることが好ましい。更に好ましくは、価格や製造方法の簡便さ、磁束密度の強さから、RE-Ba-Cu-O系を用いることである。
【0029】
バルク超伝導体磁石の形状や大きさとしては、特に限定されないが、着磁の簡便さや利用可能な磁場の範囲から、直径4cm以上の円板状のものを用いることが好ましい。
【0030】
工程(c)
続いて工程(c)としては、図4に示したように、バルク超伝導体磁石の中心部分の範囲内の上にある樹脂成形体に超音波振動子2により超音波振動を印加する。
【0031】
本発明の製造方法では、バルク超伝導体磁石の中心部分の磁束密度が高く、磁力線の方向が均一の領域のみを利用するため、磁石の中心部分にのみ振動を印加する。バルク超伝導体磁石の中心部分の磁場の領域にある樹脂成形体に振動を印加することで、並行且つ均一で強い磁場の領域で配向した異方性充填材を固定化することができる。
【0032】
本発明の製造方法に用いる振動は、樹脂組成物中の磁気異方性充填材を狭い領域で配向させ、充填材が配向した樹脂成形体3’を作成するのに用いる。通常、磁気異方性のある充填材は強磁場の印加のみでは配向せず、振動での促進を必要とする。すなわち、磁気異方性のある充填材は、磁場と振動との両方が印加された場合にのみ該充填材の配向が生じる。そこで、本発明の製造方法は、磁場及び振動の印加領域を樹脂成形体全体にわたり水平方向にスキャンすることで、樹脂成形体に、連続的に充填材の配向の領域を作成することができる。
【0033】
本発明の製造方法において、用いる振動の態様としては、打撃による振動、空気振動子による振動、音波振動、空気振動などが挙げられる。これらの中では、5,000Hzより高い周波数の振動を用いることが好ましく、更にこれら中でも、装置の入手の簡便さや、薄膜状態での配向を可能にする観点から、20kHz以上の周波数の超音波振動を用いることが好ましい。なお、超音波振動子による印加については、樹脂成形体を加熱した状態で行っても良い。また、振動の方向については、成形体に対していずれの方向から印加しても構わないが、配向のし易さの観点から、上面から下方向に印加するのが好ましい。更に、図5に示すように、符号3’の領域が超音波振動の照射範囲外に出るように、運搬手段4により移動し、次いで、隣接した樹脂成形体に超音波振動を印加することで、該成形体を構成する樹脂組成物中の充填材が配向した樹脂3”を作成する。このような操作を繰り返す(スキャンする)ことにより、樹脂組成物全体の充填材を一方向に配向させることができる。磁場及び振動の印加と樹脂成形体の運搬については、ステップあるいは連続的にて行うことができる。樹脂成形体に連続的に超音波振動を印加させるために該樹脂成形体を運搬手段4により移動させる速度は、その樹脂成形体の形状や大きさ等にもよるが、好ましくは0.1~100mm/秒、より好ましくは3~20mm/秒に設定する。
【0034】
また、バルク超伝導体磁石の中心部分以外で超音波を印加した場合は、磁場が弱くて充填材が配向しない、又は斜めに配向するなどの問題が生じるため、バルク超伝導体磁石の中心部分の1T以上の磁束密度を有する領域よりも小さい領域に対して超音波振動を印加する。この場合、超音波の印加する領域は、バルク超伝導体磁石の中心部分(1T以上の磁束密度)の3~100%であることが好ましく、より好ましくは10~50%の範囲である。
【0035】
工程(d)
その後、工程(d)として、配向した樹脂成形体を、更に、反応硬化またはBステージ化することで配向樹脂成形体を作成することが可能である。このようにして作成された樹脂成形体は、異方性導電シートや異方性熱伝導シートなどに利用することができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の製造方法を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記の実施例及び比較例の記載の粘度については、JIS K 7117-1:1999記載の回転粘度計により測定した25℃における測定値である。
【0037】
バルク超伝導体磁石としてはGd-Ba-Cu-Oの組成で直径6cmのものを用いた。6.5Tの超伝導コイル磁石を用いて、中心磁束密度が4.5T、中心から半径1cmの磁束密度が3T、中心から半径2cmの磁束密度が2T、中心から半径2.5cmの磁束密度が1T、中心から半径3cmの磁束密度が0.1T以下に着磁したものを使用した。超音波振動子としては、端子の直径が10mm、振動数20kHzの周波数のものを用いた。
【0038】
[実施例1]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維a(平均長100μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を100μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で100μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0039】
[実施例2]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維a(平均長100μm)150質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を100μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で100μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0040】
[実施例3]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を100μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で100μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0041】
[実施例4]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維c(平均長250μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を100μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂組成物の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で100μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0042】
[実施例5]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:50Pa・s)100質量部に、炭素繊維a(平均長100μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0043】
[実施例6]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、窒化ホウ素a(平均粒径15μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0044】
[実施例7]
軟化点が60℃であり、25℃で固形である熱硬化性エポキシ樹脂組成物100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。樹脂を100℃で加熱した状態で、磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂を室温に冷却し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0045】
[実施例8]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、0.3mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0046】
[実施例9]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に1cm×200cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化しテープ状の樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0047】
[実施例10]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を2mm厚のアルミ板でカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分でアルミ板の上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0048】
[比較例1]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を5mm厚のアルミ板でカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分でアルミ板の上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0049】
[比較例2]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分でフィルムを介さずに超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンしたが、超音波の接触により樹脂層は崩れてしまった。
【0050】
[比較例3]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞ぎ、樹脂成形体を作成した。樹脂成形体の端をネオジム磁石の中心部分の上に配置した。ネオジム磁石としては中心半径1cmの磁束密度が0.8Tであるものを用いた。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0051】
[比較例4]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維a(平均長100μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞いだ。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。その後、超音波振動を印加せずにフィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0052】
[比較例5]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞いだ。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。その後、超音波振動を印加せずにフィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0053】
[比較例6]
熱硬化性液状シリコーン樹脂組成物(粘度:0.4Pa・s)100質量部に、炭素繊維b(平均長150μm)100質量部を配合した樹脂組成物を離型性のある100μm厚のPETフィルム上に30cm×30cmの範囲に、1mmの厚さで塗付した。塗布後、樹脂組成物を300μm厚のPETフィルムでカバーし、樹脂が漏れないように周囲を両面テープで塞いだ。樹脂成形体の端をバルク超伝導体磁石の中心部分の上に配置した。磁石の中心部分で300μm厚フィルムの上から、直径6cmのアルミ棒で太くした振動子で超音波振動を印加開始後、フィルム状の樹脂成形体を5mm/秒の速さで移動させ、フィルム状の樹脂成形体全体をスキャンした。その後、樹脂成形体を硬化し樹脂シートを得た。硬化物の断面をSEM写真で観測した。
【0054】
上記の実施例1~10及び比較例1~6について、樹脂硬化物の断面を示すSEM写真により、炭素繊維の長軸、または窒化ホウ素の面方向とシート表面のなす角度の平均を算出し、平均配向角度を求めた。その結果を表1及び表2に示す。また、実施例3及び比較例6で得られた断面のSEM画像を図6及び図7にそれぞれ示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
上記表1及び表2の結果から以下の点が考察される。
実施例1~8のように本発明の製造方法を用いれば、大型の異方性樹脂組成物が簡便に得られる。さらに、超音波振動と磁場によるスキャンでは連続的かつ高速に、大型、長いテープ状又は薄膜の異方性樹脂組成物を得ることも可能である。
また、実施例7のように樹脂を加熱しながらスキャンすることで、熱硬化性エポキシ樹脂のBステージ上の配向シート樹脂も得ることができる。
更に、実施例9のように細長いテープ状の樹脂を連続的に配向させることも可能である。
一方、比較例6のように振動子を太くした場合は、配向角は大きく落ちる。これは磁束密度の小さい領域で振動が加わり配向が乱されたためと考えられ、本発明の中心部分での振動の印加の有用性が明らかとなる。
逆に、振動を印加しない場合や、カバー材に分厚いアルミ板を用いて振動を減衰させると、充填材は配向しない。
【符号の説明】
【0058】
1 バルク超伝導体磁石
1’ バルク超伝導体磁石の中心部分
2 超音波振動子
3 シート状の磁気異方性充填材含有樹脂組成物(樹脂成形体)
3’ 樹脂成形体において充填材が配向した部分
3” 3’に隣接した充填材が配向した部分
4 運搬手段
5 カバー材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7