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特許7030780三脚型二座副配位子を含む、二核およびオリゴ核の金属錯体、並びにその電子デバイスにおける使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】三脚型二座副配位子を含む、二核およびオリゴ核の金属錯体、並びにその電子デバイスにおける使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20220228BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220228BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
H05B33/14 B
H01L29/28 250F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019503698
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2017068290
(87)【国際公開番号】W WO2018019687
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】16180997.5
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ステッセル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、エーレンライヒ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-506652(JP,A)
【文献】特開2013-235950(JP,A)
【文献】特開2013-243234(JP,A)
【文献】特開2013-149812(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024668(WO,A1)
【文献】特表2007-524585(JP,A)
【文献】国際公開第2015/117718(WO,A1)
【文献】特開2005-187473(JP,A)
【文献】特開2005-082598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326964(US,A1)
【文献】特表2018-531896(JP,A)
【文献】特表2018-510903(JP,A)
【文献】特表2019-527684(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086505(WO,A1)
【文献】TANIMA HAJRA; ET AL,MULTIMETALLIC COMPOUNDS CONTAINING CYCLOMETALATED IR(III) UNITS: SYNTHESIS,STRUCTURE, 以下備考,INORGANICA CHIMICA ACTA,ELSEVIER,2011年01月13日,VOL:372, NR:1,PAGE(S):53 - 61,HTTP://DX.DOI.ORG/10.1016/J.ICA.2011.01.021,ELECTROCHEMISTRY AND PHOTOPHYSICAL PROPERTIES
【文献】Prasad, Kota Thirumala; Therrein, Bruno; Rao, Kollipara Mohan,Syntheses and characterization of mono and dinuclear complexes of platinum group metals bearing benzene-linked bis(pyrazolyl)methane ligands,Journal of Organometallic Chemistry ,2010年,695(9),,1375-1382
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C09K
H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、使用される記号および添え字は以下の通りである:
Mは、3つの二座副配位子がイリジウム原子に配位しており、かつ同一または異なっていてもよい、この3つの二座副配位子が以下の式(5a’’)で表されるブリッジを介して結合している、三脚型六座配位子を含むイリジウム錯体であり:
【化2】
ここで、破線の結合は、二座副配位子のこの構造への結合を表し、さらに:
M中の3つの二座副配位子が、出現毎に同一であるかまたは異なり、式(L-1)および(L-2)で表される構造から選択され
【化3】
(式中、破線の結合は、式(5a’’)で表されるブリッジへの副配位子の結合を表し、この副配位子は、場合により、Zに結合されており、かつ使用される他の記号は以下の通りである:
CyCは、出現毎に同一であるかまたは異なり、Rによる置換もしくは非置換の、6~13個の芳香族環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール基、またはRによる置換もしくは非置換のフルオレン基であり、その各々は炭素原子を介して金属に配位しており、かつ各々の場合において共有結合を介してCyDに結合しており;
CyDは、出現毎に同一であるかまたは異なり、窒素原子もしくはカルベン炭素原子を介して金属に配位しており、かつ共有結合を介してCyCに結合している、Rによる置換もしくは非置換の、6~10個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基であり;
同時に、2つ以上の任意の置換基が一緒に環系を形成していてもよい);
Μ’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、Mであり;
Rは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、1個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基、または3~10個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで、アルキル基は、各々1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい)、または6~24個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つのRラジカルがまた、一緒に、環系を形成していてもよく
は、出現毎に、同一であるかまたは異なり、H、D、F、1個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基、または3~個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで、アルキル基は、各々1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい)、または6~13個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つ以上のRラジカルがまた、一緒に、環系を形成していてもよく;
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1~5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、または6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり
Zは、出現毎に同一であるかまたは異なり、単結合、5~20個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のR ラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または-Ar-[アルキレン-Ar-] -基(pは1であり、ここで、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、各々の場合において、6~24個の芳香族環原子を有し、1つ以上のR ラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、そしてアルキレンは、1~4個の炭素原子を有し、1つ以上のR ラジカルによって置換されていてもよいアルキレン基である)からなる群から選択され
nは、1または2であり;
mは、出現毎に同一であるかまたは異なり、0、1、または2である)
【請求項2】
n=1または2であり、かつm=0または1であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zが、出現毎に、同一であるかまたは異なり、単結合または式(Z-1)~(Z-8)で表される基から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【化4】
(式中、破線の結合は、この基の連結を表し、Rは、請求項1に記載された定義を有し、かつ、さらに;
Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであり;
Wは、出現毎に同一であるかまたは異なり、NR、OまたはSである)
【請求項4】
M中の3つの二座副配位子が同一に選択されていること、または二座副配位子のうちの2つが同一に選択され、かつ3つ目の二座副配位子が最初の2つの二座副配位子とは異なること、および二座副配位子の各々がモノアニオン性であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
二座副配位子が、式(L-1-1)、(L-1-2)、(L-2-1)~(L-2-3)および(L-4)~(L-33)で表される構造から選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【化5-1】
【化5-2】
(式中、使用される記号は請求項1およびに記載された定義を有し、そして「o」は、この副配位子が、式(5a’’)で表される基に結合する位置を示すが、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している)
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つの別の化合物を含んでなることを特徴とする、配合物。
【請求項7】
電子デバイスにおける、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含んでなる、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光検出器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電気化学電池、酸素センサー、および有機レーザーダイオードからなる群から選択される電子デバイス。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物が1つ以上の発光層に使用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である、請求項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子おける発光体としての使用に好適な、二核およびオリゴ核の金属錯体に関する。
【0002】
従来技術によれば、燐光性の有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)で用いられる三重項発光体は、特に、芳香族配位子を有する、ビス-およびトリス-オルトメタル化イリジウム錯体であり、同時に、この配位子は、負に帯電した炭素原子と非荷電の窒素原子を介して、または負に帯電した炭素原子と非荷電のカルベン炭素原子を介して、金属に結合している。そのような錯体の例は、トリス(フェニルピリジル)イリジウム(III)およびその誘導体であり、同時に、用いられる配位子は、例えば、1-、もしくは3-フェニルイソキノン、2-フェニルキノリン、またはフェニルカルベンである。
【0003】
錯体の安定性の改善が、例えば、WO2004/081017またはUS7,332,232に記載されているように、多脚型配位子を使用することにより達成されている。これらの錯体が、個々の配位子が多脚型の橋架けを有していないことを除いてその他の点では同じ錯体構造を有する錯体に対して優位さを示しているとしても、まだ改善の余地がある。従って、多脚型配位子を有する錯体の場合であっても、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用上の特性に関して、特に効率、電圧および/または寿命に関して、まだ改善の余地がある。
【0004】
従って、本発明によって取り扱われた課題は、OLEDに使用される発光体として適した新規な金属錯体を提供することである。具体的な目的は、効率、動作電圧および/または寿命に関して、改善された特性を示す発光体を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、この課題は、2つ以上の金属錯体が(そのうちの少なくとも1つが三脚型六座配位子とのイリジウム錯体である)リンカーによって互いに結合しており、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に対して非常に優れた適性を示す、二核およびオリゴ核のイリジウム錯体により解決されることが見出された。本発明は、これらの錯体およびこれらの錯体を含んでなる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。これらの錯体は、優れた効率性と溶解性、および狭い発光スペクトルを示す。
【0006】
本発明は、下記式(1)の化合物を提供する。
【化1】
(式中、使用される記号および添え字は以下の通りである:
【0007】
Mは、3つの二座副配位子がイリジウム原子に配位しており、かつ同一または異なっていてもよい、この3つの二座の副配位子が下記の式(2)または式(3)で表されるブリッジを介して結合している、三脚型六座配位子を含むイリジウム錯体であり:
【化2】
ここで、破線の結合は、二座副配位子のこの構造への結合を表し、さらに:
【0008】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであり;
【0009】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、C(R)またはOであり、
【0010】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、CR、P(=O)、BまたはSiRであり、但し、AがP(=O)、BまたはSiRの場合、記号Aは、Oであり、かつこのAに結合している記号Aは、-C(=O)-NR’-または-C(=O)-O-ではなく;
【0011】
Aは、出現毎に同一であるかまたは異なり、-CR=CR-、-C(=O)-NR’-、-C(=O)-O-または下記式(4)で表される基であり;
【化3】
ここで、破線の結合は、二座副配位子のこの構造への結合の位置を表し、かつ*は、式(4)で表される単位の、式(2)または式(3)中の中央環状基への結合の位置を表し;
【0012】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRもしくはNであり、または2つの隣接する基X基は一緒に、NR、OまたはSであって、5員環を形成し、残りのXは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであるか;または、環中のX基の1つがNである場合、2つの隣接する基Xは一緒に、CRまたはNであって、5員環を形成しており;但し、最大で2つの隣接する基Xは、Nであり;
【0013】
は、出現毎にCであるか、または1つのX基がNであり、かつ同じ環中の他のX基がCであり;但し、環中のX基の1つがNである場合、2つの隣接するXは、一緒に、CRまたはNであり;
【0014】
同時に、3つの二座副配位子は、式(2)または(3)で表されるブリッジとは別に、更なるブリッジによって閉環してクリプテートを形成してもよく;
【0015】
Μ’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、Mであるか、または、同一であるかもしくは異なっていてもよい3つの二座配位子が1つのイリジウム原子に配位しているイリジウム錯体であるか、または、1つのプラチナ原子に、同一であるかもしくは異なってもよい2つの二座配位子が配位しているか、もしくは四座配位子が配位している、プラチナ錯体であり;
【0016】
Rは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、OH、COOH、C(=O)(R、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1~20個の炭素原子を有する、直鎖状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2~20個の炭素原子を有する、アルケニルもしくはアルキニル基、または3~20個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(ここで、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルケニルもしくはアルキニル基は、各々1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで1つ以上の非隣接のCH基は、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き換えられていてもよい)、または5~40個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリール基であり;同時に、2つのRラジカルがまた、共に、環系を形成していてもよく;
【0017】
R’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、1~20個の炭素原子を有する、直鎖状のアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基(ここで、各々の場合におけるアルキル基は、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよく、かつ1つ以上の非隣接のCH基は、Si(Rによって置き換えられていてもよい)、または5~40個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
【0018】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R、CN、NO、Si(R、B(OR、C(=O)R、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、OSO、1~20個の炭素原子を有する、直鎖状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2~20個の炭素原子を有する、アルケニルもしくはアルキニル基、または3~20個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(ここで、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルケニルもしくはアルキニル基は、各々1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよく、ここで1つ以上の非隣接のCH基は、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き換えられていてもよい)、または5~40個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリール基であり;同時に、2つのRラジカルがまた、共に、環系を形成していてもよく;
【0019】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または、脂肪族、芳香族およびヘテロ芳香族の有機ラジカル、特に、1~20個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、同時に1つ以上の水素原子がFで置き換えられていてもよく;
【0020】
Zは、出現毎に同一であるかまたは異なり、単結合、または2つの以上の錯体MおよびM’を互いに共有結合させるリンカーであり;
【0021】
nは、1、2、3、4、5または6であり;
【0022】
mは、出現毎に同一であるかまたは異なり、0、1、2、3または4である)
【0023】
2つのRまたはRラジカルが一緒になって環系を形成するとき、それは単環式もしくは多環式、かつ脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族であってもよい。この場合、一緒になって環系を形成するラジカルは、隣接していてもよく、すなわち、これらのラジカルが、同じ炭素原子に、もしくは互いに直接結合している炭素原子に結合しているか、またはそれらが互いにさらに離れていてもよいことを意味する。例えば、A基に結合しているRラジカルが、X基に結合しているRラジカルと環を形成することもできる。A基に結合しているRラジカルとX基に結合しているRラジカルとの間でそのような環形成がある場合、好ましくは、この環は、3個のブリッジ原子を、好ましくは3個の炭素原子を有する基によって、より好ましくは-(CR-基によって形成される。
【0024】
2つ以上のラジカルが一緒に環を形成してもよいという記述は、本明細書の意味においては、とりわけ、2つのラジカルが、2つの水素原子の形式的脱離を伴う化学結合によって互いに連結されていることを意味するものと解されるべきである。これは、以下のスキームにより示される:
【化4】
【0025】
また、しかしながら、上記の表現は、2つのラジカルのうちの1つが水素であり、2つ目のラジカルが、その水素原子が結合されていた位置に結合して環を形成することも意味するものと解されるべきである。これは、以下のスキームにより示される:
【化5】
【0026】
芳香族環系の形成は、以下のスキームにより示される:
【化6】
【0027】
この種の環形成は、互いに直接結合した炭素原子に結合しているラジカル中において、または、さらに離れた炭素原子に結合しているラジカル中において可能である。好ましくは、互いに直接結合した炭素原子に、または同一の炭素原子に結合しているラジカル中におけるこの種の環形成である。
【0028】
本発明の意味におけるアリール基は、6~40個の炭素原子を含む。本発明の意味におけるヘテロアリール基は、2~40個の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含むが、但し、炭素原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。アリール基またはヘテロアリール基は、単一の芳香環、すなわちベンゼン、または単一のヘテロ芳香環、例えば、ピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合したアリールもしくはヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかを意味するものと解される。
【0029】
本発明の意味における芳香環系は、環系に6~40個の炭素原子を含み;本発明の意味におけるヘテロ芳香族環系は、1~40個の炭素原子と少なくとも1つのヘテロ原子を含むが、但し、炭素原子とヘテロ原子の合計が少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の意味における芳香族またはヘテロ芳香族環系は、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基のみを含む系ではなく、2つ以上のアリールまたはヘテロアリール環系が、非芳香族単位(好ましくは、10%未満の、H以外の原子)、例えば、炭素、窒素もしくは酸素原子、またはカルボニル基により中断されていることもできる系を意味するものと解される。例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の系は、従って、本発明の意味において、芳香族環系とみなされ、また、2つ以上のアリール基が、例えば、直鎖状もしくは環状のアルキル基により、またはシリル基により中断されている系も同様である。さらに、2つ以上のアリールまたはヘテロアリール基が互いに直接結合されている系、例えば、ビフェニル、ターフェニル、クウォーターフェニル、またはビピリジンも同様に、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系とみなされる。
【0030】
本発明の意味における、環状の、アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基は、単環式、二環式もしくは多環式の基を意味するものと解される。
【0031】
本発明の意味において、各々の水素原子もしくはCH基が前述の基によって置き換えられていてもよいC~C20-アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、シクロプロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジメチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジメチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプタ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジエチル-n-デカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデカ-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデカ-1-イル、1-(n-プロピル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ブチル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-ヘキシル)シクロヘキサ-1-イル、1-(n-オクチル)シクロヘキサ-1-イルおよび1-(n-デシル)シクロヘキサ-1-イルラジカルを意味するものと解される。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを意味するものと解される。アルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを意味するものと解される。C~C20-アルコキシ基は、例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味するものと解される。
【0032】
各々の場合において前述のラジカルによって置換されていてもよく、かつ任意の位置を介して芳香族またはヘテロ芳香族系に結合していてもよい、5~40個の芳香族環原子を有する、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-またはトランス-インデノフルオレン、シス-またはトランス-モノベンゾインデノフルオレン、シス-またはトランス-ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントリイミダゾール、ピリジムイミダゾール、ピラジニムイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0033】
リンカーZは、式(2)もしくは(3)で表される基か、または副配位子のうちの1つのいずれかにおいて、金属錯体Mに結合されることができる。
【0034】
本発明によれば、金属錯体Mの配位子は、3つの二座副配位子を有する三脚型六座配位子である。三脚型六座配位子の構造は、下記式(Lig)によって模式的に表すことができる:
【化7】
(式中、Vは、式(2)または(3)で表されるブリッジを表し、また、L1、L2およびL3は、出現毎に同一であるかまたは異なり、それぞれ二座副配位子である)
「二座」は、錯体M中の特定の副配位子が2つの配位位置を介してイリジウムに、配位しているか結合していることを意味する。「三脚型」は、配位子(Lig)が、ブリッジV、または式(2)もしくは(3)で表されるブリッジに結合した3つの副配位子を有することを意味する。この配位子は、3つの二座副配位子を有するので、結果的には全体で、六座配位子、すなわち、6つの配位位置を介してイリジウムに、配位しているか結合している配位子である。本出願の意味における用語「二座副配位子」は、式(2)もしくは(3)で表されるブリッジとリンカーZが存在しない場合、この単位は二座配位子であることを意味する。しかしながら、この二座配位子中の水素原子の形式的な引き抜き反応、および式(2)もしくは(3)で表されるブリッジへの、そして必要に応じてZへの接合の結果として、それは別の配位子ではなく、このように発生してZに結合されている六座配位子の一部であるので、用語「副配位子」がそれに対して使用される。
【0035】
式(Lig)で表される配位子と形成されたイリジウム錯体Mは、従って、以下の式で模式的に表すことができる:
【化8】
(式中、Vは、式(2)または(3)で表されるブリッジを表し、またL1、L2およびL3は、出現毎に同一であるかまたは異なり、それぞれ二座副配位子である)
リンカーZは、ここでは、式(2)もしくは(3)で表されるブリッジか、1つ以上の副配位子L1、L2もしくはL3のいずれかに結合することができる。
【0036】
イリジウムへの配位子の結合は、配位結合もしくは共有結合のいずれかであるか、または結合の共有比率は配位子に応じて変えることができる。配位子または副配位子がイリジウムに配位している、もしくは結合していると云うとき、これは本出願の意味において、結合の共有比率に拘わらず、配位子もしくは副配位子のあらゆる種類の結合のことを指している。
【0037】
好ましくは、本発明の化合物は、それらが非荷電、すなわち、電気的に中性であることが特徴とされる。ここで、M、M’およびリンカーZが非荷電であることが好ましい。これは、3つの二座副配位子の電荷を、錯化されたイリジウム原子の電荷を補償するように選択することにより簡単な方法で達成される。好ましくは、3つの二座副配位子がIr(III)の電荷を補償するように、3つの二座副配位子のそれぞれが一価の負電荷を持つ。
【0038】
添え字nとmの選択に従い、nとmのいくつかの組み合わせに対して概略的な形で以下に詳述するように、種々の二核およびオリゴ核の化合物を形成することができる:
【化9】
(式中、使用される記号は上記の定義を有する)
非常に類似したやり方で、添え字nとmの更なる組み合わせから、更なるオリゴ核の錯体を形成することができる。
【0039】
本発明の好ましい形態では、n=1または2であり、およびm=0または1である。特に好ましい形態では、n=1およびm=0である。
【0040】
以下、Zの好ましい形態について説明する。上述したように、Zは、単結合またはリンカーである。m=0の場合、Zは、単結合または2価の基である。m=1の場合、Zは3価の基である。m=2の場合は、Zは4価の基である。
【0041】
好ましくは、Zは、単結合、1~20個の炭素原子を有し、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、アルキレン基(ここで、1つ以上の非隣接のCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き換えられていてもよい)、5~20個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、-Ar-アルキレン基、アルキレン-Ar-アルキレン基、もしくは-Ar-[アルキレン-Ar-]-基(pは1、2または3である)からなる群から選択される。ここで、Arは、出現毎に同一であるかまたは異なり、各々の場合において、5~30個の芳香族環原子、好ましくは6~24個の芳香族環原子、より好ましくは6~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり、そしてアルキレンは、ここでは1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有し、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよいアルキレン基(ここで、1つ以上の非隣接のCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き換えられていてもよい)である。ここで、アルキレン基は、直鎖状であってもよく、または3つ以上の炭素原子を有するアルキレン基はまた、分枝状もしくは環状であってもよい。さらに、Zは、オリゴマーまたはポリマーであってもよい。
【0042】
本発明の好ましい形態では、Zが、出現毎に同一であるかまたは異なり、単結合、および6~24個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系よりなる群から選択される。好ましい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系は、下記の式(Z-1)~(Z-8)で表される基である:
【化10】
(式中、破線の結合は、この基の連結を表し、Rは、上記の定義を有し、またさらに;
【0043】
Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであり;
【0044】
Wは、出現毎に同一であるかまたは異なり、NR、OまたはSである)
【0045】
Zが、-Ar-アルキレン基、アルキレン-Ar-アルキレン基、もしくは-Ar-[アルキレン-Ar-]基である場合、これらの基中のArは、出現毎に同一であるかまたは異なり、好ましくは、上記された式(Z-1)~(Z-8)から選択される。
【0046】
好ましくは、式(Z-1)~(Z-8)のそれぞれにおいて、Z基当たり、最大で2つの記号X、およびより好ましくは最大で1つの記号Xが、Nであり、そしてその他の記号XがCRである。より好ましくは、全ての記号XがCRである。従って、特に好ましいのは以下の式(Z-1a)~(Z-8a)で表されるZ基である:
【化11】
(式中、使用される記号は上記の定義を有する)
【0047】
イリジウム錯体Mの好ましい形態を以下に記載する。最初に、3つの二座副配位子を結合する、式(2)または(3)で表されるブリッジの好ましい形態を列挙する。
【0048】
式(2)で表される基の好適な形態は、下記式(5)~(8)で表される構造であり、かつ式(3)で表される基の好適な形態は、下記式(9)~(13)で表される構造である:
【化12】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0049】
式(5)~(13)中の好ましいRラジカルは以下の通りである:
【0050】
Rは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~10個の炭素原子を有する、直鎖状の、アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、または3~10個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基であり、これらの各々は、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよく、または5~24個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
【0051】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~10個の炭素原子を有する、直鎖状の、アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、または3~10個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基であり、これらの各々は、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよく、または5~24個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つ以上の隣接するRラジカルが一緒に、環系を形成していてもよく;
【0052】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1~20個の炭素原子を有し、その中の1つ以上の水素原子がまた、Fで置き換えられていてもよい、脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族の有機ラジカルである。
【0053】
式(5)~(13)中の特に好ましいRラジカルは以下の通りである:
【0054】
Rは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~4個の炭素原子を有する、直鎖状のアルキル基、または3~6個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基(これらの各々は、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい)、または6~12個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
【0055】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~4個の炭素原子を有する、直鎖状のアルキル基、または3~6個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基(これらの各々は、1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい)、または6~12個の芳香族環原子を有し、各々の場合において1つ以上のRラジカルによって置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つのRラジカルが一緒に、環系を形成していてもよく;
【0056】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1~12個の炭素原子を有する、脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルである。
【0057】
本発明の好ましい形態において、式(2)で表される基中の全てのX基はCRであり、従って、式(2)で表される中央の三価の環はベンゼンである。より好ましくは、全てのX基はCHである。本発明のさらに好ましい形態において、全てのX基は窒素原子であり、従って、式(2)で表される中央の三価の環はトリアジンである。このように、式(2)の好ましい形態は、上述の式(5)および(6)で表される構造である。より好ましくは、式(5)で表される構造は、下記式(5’)で表される構造である:
【化13】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0058】
本発明の更に好ましい形態において、式(3)で表される基中の全てのA基はCRである。より好ましくは、全てのA基はCHである。式(3)の好ましい形態は、従って、上述の式(9)で表される構造である。より好ましくは、式(9)で表される構造は、下記式(9’)または(9’’)で表される構造である:
【化14】
(式中、記号は上記の定義を有し、またRは好ましくはHである)
特に好ましいのは、ここでは式(9’)で表される基である。
【0059】
基がCRである場合、特に全てのA基がCRである場合、格別にAの0、1、2もしくは3、特に3つが、さらにCRである場合、A上のRラジカルは、立体配座次第で異なる位置をとることができる。好ましいのは、HまたはD等の小さなRラジカルである。それらが、全て金属から離れた方向を向いている(尖端(apical))か、全て金属に向かって内側に向いている(内包(endohedral))のいずれかであることが好ましい。これは、エステルブリッジを持つ錯体の例を用いて以下に示される。ブリッジがどのように配向されているか、すなわち、エステル/アミド-ブリッジのカルボニル基またはイミン-ブリッジの窒素原子が、シクロヘキサン環に、または二座副配位子の芳香族系に結合しているかどうかとは関係なく、これは、オルト-アリーレン、オルト-ヘテロアリーレン、1,2-オレフィン、イミンおよびアミド結合に等しく当てはまる。
【化15】
【0060】
明確にするために、3つ目の副配位子は図示されておらず、破線でのみ示されている。従って、好ましいのは、2つの立体配座のうちの少なくとも1つをとることができる錯体である。これらは、3つのA基の全てが中央の環上でエカトリアル配座された錯体である。
【0061】
式(2)および(3)並びに(5)~(13)で表される構造に存在するような、好ましいA基について以下に記載する。基Aは、出現毎に同一であるかまたは異なり、アルケニル基、アミド基、エステル基、または、式(4)で表される、オルト結合したアリーレンもしくはヘテロアリーレン基であることができる。Aがアルケニル基である場合、それはシス結合したアルケニル基である。非対称のA基の場合、基の任意の配向が可能である。これは、Aが-C(=O)-O-である場合を例にして模式的に以下に示される。これは、Aについての以下の可能な配向をもたらし、その全ては本発明に包含される:
【化16】
【0062】
本発明の好ましい形態において、Aは、出現毎に同一であるかまたは異なり、好ましくは同一であり、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-および式(4)で表される基からなる群から選択される。さらに好ましくは、2つのA基は同一であり、また同じ置換を有し、かつ3つ目のA基は、最初の2つのA基とは異なるか、または3つのA基の全てが同じであり、かつ同じ置換を有する。式(2)および(3)中の3つのA基の好ましい組み合わせ、および好ましい形態は次の通り:
【化17】
【0063】
3つのA基の全てが式(4)で表される基である場合が特に好ましい。
【0064】
Aが-C(=O)-NR’-ある場合、R’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、1~10個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、または3~10個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基、または6~24個の芳香族環原子を有し、各々の場合において、1個の以上のR基により置換されてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。より好ましくは、R’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、1~5個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、または3~6個の炭素原子を有する、分岐状もしくは環状のアルキル基、または6~12個の芳香族環原子を有し、各々の場合において、1個の以上のR基により置換されてもよいが、好ましくは非置換である、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。
【0065】
式(4)で表される基の好ましい形態を以下に記載する。式(4)で表される基は、ヘテロ芳香族5員環、または芳香族もしくはヘテロ芳香族6員環を表すことができる。本発明の好ましい形態において、式(4)で表される基は、芳香族もしくはヘテロ芳香族単位中に最大で2個のヘテロ原子、より好ましくは最大で1個のヘテロ原子を含む。これは、この基に結合されている任意の置換基もまた、ヘテロ原子を含有することができないということを意味するものではない。さらに、この定義は、置換基による環形成が、例えば、ナフタレン、ベンゾイミダゾール等の、縮合した芳香族もしくはヘテロ芳香族構造を生じさせることができないということを意味するものではない。
【0066】
式(4)中のX基の両方が、炭素原子である場合、式(4)で表される基の好ましい形態は、下記の式(14)~(30)で表される構造であり、また、1つのX基が炭素原子であり、同じ環中の他のX基が窒素原子である場合、式(4)で表される基の好ましい形態は、下記の式(31)~(38)で表される構造である:
【化18】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0067】
特に好ましいのは、上述の式(14)~(18)で表される6員環の、芳香族化合物およびヘテロ芳香族環系である。格別に好ましいのは、オルト-フェニレン、すなわち最も好ましくは全てのRがHである、上記式(14)で表される基である。
【0068】
同時に、隣接する置換基Rは、一緒になって環系を形成することもでき、従って、縮合したアリールおよびヘテロアリール基、例えば、ナフタレン、キノリン、ベンゾイミダゾール、カルバゾール、ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェン、を含む縮合した構造を形成することができる。そのような環の形成は、上記式(14)で表される基において以下に模式的に示され、これは例えば、下記式(14a)~(14j)で表される基に導くことができる:
【化19】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0069】
一般的に、式(14a)~(14c)中で縮合したベンゾ基によって示されるように、縮合した基は式(4)で表される単位の任意の位置で縮合されていることができる。式(14d)~(14j)において式(4)で表される単位に縮合しているような基は、従って、式(4)で表される単位のその他の位置で縮合されていることもできる。
【0070】
式(2)で表される基は、より好ましく、下記式(2a)~(2m)により表されることができ、そして式(3)で表される基は、より好ましく、下記式(3a)~(3m)により表されることができる:
【化20-1】
【化20-2】
(式中、記号は上記の定義を有する)
好ましくは、Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRである。
【0071】
本発明の好ましい形態において、式(2a)~(2m)で表される基は式(5a’)~(5m’)で表される基から選択され、また、式(3a)~(3m)で表される基は式(9a’)~(9m’)で表される基から選択される:
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
(式中、記号は上記の定義を有する)
好ましくは、Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRであり、特にCHである。
【0072】
式(2)で表される基の特に好ましい形態は、下記式(5a’’)で表される基である:
【化22】
(式中、記号は上記の定義を有する)
より好ましくは、上記式中のR基は、同一であるかまたは異なり、H、D、または1~4個の炭素原子を有するアルキルである。最も好ましくは、R=Hである。格別に好ましいのは、従って、下記式(5a’’’)の構造である。
【化23】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0073】
M中で式(2)もしくは(3)で表される、または上記の好ましい形態のブリッジに結合した、二座副配位子について以下に記載する。
【0074】
本発明の好ましい形態において、二座副配位子の各々はモノアニオン性である。
【0075】
3つの二座副配位子は同じであっても異なっていてもよい。二座副配位子が同じである場合、それらは、好ましくは、また同じ置換を有している。選択された3つの二座副配位子の全てが同じである場合、式(2)もしくは(3)で表される単位もC対称であれば、C対称イリジウム錯体が生じることになり、このことは、配位子合成の点において有利である。しかしながら、C対称の金属錯体を生じさせるように、3つの二座副配位子が異なるように選択すること、または2つの同一の副配位子と異なる3つ目の副配位子を選択することもまた、有利でありうる。それは、これが錯体により大きな変動の幅をもたらし、従って錯体に求められる特性、例えば、HOMOおよびLUMO位置または発光色、をより容易に変えることができるからである。さらに、長い、脂肪族もしくは芳香族の、溶解性付与基を結合させずに、錯体の溶解性をまた改善することもできる。本発明の好ましい形態においては、3つの二座副配位子が同一に選択されるか、または2つの二座副配位子が同一に選択され、かつ3つ目の二座副配位子が最初の2つの二座副配位子とは異なるかのいずれかである。
【0076】
本発明のさらに好ましい形態において、二座副配位子の配位原子は、出現毎に同一であるかまたは異なり、C、N、P、O、Sおよび/またはB、より好ましくはC、Nおよび/またはO、そして最も好ましくはCおよび/またはNから選択される。二座副配位子は、好ましくは、1つの炭素原子と1つの窒素原子、または2つの炭素原子、または2つの窒素原子、または2つの酸素原子、または1つの酸素原子と1つの窒素原子を、配位原子として有する。この場合、3つの副配位子各々の配位原子は同じでも異なっていてもよい。好ましくは、二座副配位子の少なくとも1つは、1つの炭素原子と1つの窒素原子、または2つの炭素原子、特に、1つの炭素原子と1つの窒素原子を、配位原子として有する。より好ましくは、二座副配位子の少なくともうちの2つ、そして最も好ましくは、3つの二座副配位子の全てが、1つの炭素原子と1つの窒素原子、または2つの炭素原子、特に1つの炭素原子と1つの窒素原子を、配位原子として有する。従って、特に好ましいのは、3つの二座副配位子の全てがオルトメタル化されている、すなわち、少なくとも1つのイリジウム-炭素結合が存在している、イリジウムとの金属環状化合物を形成しているイリジウム錯体である。
【0077】
さらに好ましいのは、イリジウムと二座副配位子から形成される金属環状化合物が5員環である場合であり、配位原子がCとN、NとN、またはNとOである場合が特に好ましい。配位原子がOである場合、金属環状の6員環もまた好ましい。これは以下に模式的に示される:
【化24】
(式中、Nは配位窒素原子であり、Cは配位炭素原子であり、また、Oは配位酸素原子を表わし、そして、表示されている炭素原子は二座配位子の原子である)
【0078】
本発明の好ましい形態において、少なくとも1つの二座副配位子、より好ましくは少なくとも2つの二座副配位子、最も好ましくは3つの二座副配位子の全てが、出現毎に同一であるかまたは異なり、式(L-1)、(L-2)および(L-3)で表される構造から選択される:
【化25】
(式中、破線の結合は、式(2)または(3)で表される、または好ましい形態のブリッジへの副配位子の結合を表し、この副配位子は、場合により、Zに結合されており、また、使用される他の記号は以下の通りである:
【0079】
CyCは、出現毎に同一であるかまたは異なり、5~14個の芳香族環原子を有する、置換もしくは非置換の、アリールもしくはヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の、フルオレン基であり、その各々は炭素原子を介して金属に配位しており、かつ各々の場合において共有結合を介してCyDに結合しており;
【0080】
CyDは、出現毎に同一であるかまたは異なり、窒素原子もしくはカルベン炭素原子を介して金属に配位しており、かつ共有結合を介してCyCに結合している、5~14個の芳香族環原子を有する、置換もしくは非置換の、ヘテロアリール基であり;
【0081】
同時に、2つ以上の任意の置換基が一緒に環系を形成していてもよく;さらに、任意のラジカルは、好ましくは上記のRラジカルから選択される)
【0082】
同時に、式(L-1)および(L-2)で表される副配位子中のCyDは、好ましくは、非荷電の窒素原子を介して、またはカルベン炭素原子を介して、特に非荷電の窒素原子を介して配位する。さらに好ましくは、式(L-3)で表される配位子中の2つのCyD基のうちの1つが、非荷電の窒素原子を介して、また2つのCyD基の他方がアニオン性窒素原子を介して配位する。さらに好ましくは、式(L-1)および(L-2)で表される副配位子中のCyCがアニオン性炭素原子を介して配位する。
【0083】
2つ以上の置換基、特に2つ以上のラジカルRが一緒になって環系を形成する場合、直接隣接する炭素原子に結合している置換基から環系を形成することができる。また、式(L-1)および(L-2)中の、CyCおよびCyD上の置換基、または式(L-3)中の2つのCyD基上の置換基が、一緒になって環を形成することも可能であるが、その結果として、CyCおよびCyD、または2つのCyD基、または2つのCyC基もまた、一緒になって、二座配位子として、単一の縮合した、アリールもしくはヘテロアリール基を形成していてもよい。
【0084】
本発明の好ましい形態形態において、CyCは、6~13個の芳香族環原子、より好ましくは、6~10個の芳香族環原子、最も好ましくは、6個の芳香族環原子、特にフェニル基を有し、炭素原子を介して金属に配位し、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよく、かつ、共有結合を介してCyDに結合している、アリールもしくはヘテロアリール基である。
【0085】
CyC基の好ましい形態は、下記の式(CyC-1)~(CyC-20)で表される構造である:
【化26】
(式中、CyCは、各々の場合において、#で示す、CyD中の位置に結合しており、かつ、*で示す位置で金属に配位しており、Rは上記された定義を有し、そして、使用される更なる記号は以下の通りである:
【0086】
Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであり、但し、環当たり最大で2つの記号XはNであり;
【0087】
Wは、NR、OまたはSであり;
【0088】
但し、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyCに結合している場合、1つの記号XはCであり、かつ、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジは、この炭素原子に結合しており、そしてさらに、但し、ZがCyCに結合している場合、1つの記号XはCであり、Zはこの炭素原子に結合している。CyC基が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合している場合、その結合は好ましくは、上記の式中で「o」と印を付けた位置を介しており、そしてそれ故、「o」と印を付けられた記号Xはその場合、好ましくは、Cである。「o」と印を付けられた記号Xを含有しない、上記の構造は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに、好ましくは直接結合していない。これは、ブリッジへのそのような結合が立体的な理由から有利でないからである)
【0089】
好ましくは、CyC中の最大で1つの記号Xは、Nであり、そしてより好ましくは、全ての記号XはCRであり、但し、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyCに結合している場合、1つの記号XはCであり、かつ式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがこの炭素原子に結合していること、およびZがCyCに結合している場合、1つの記号XがCであり、かつZがこの炭素原子に結合していることを条件とする。
【0090】
特に好ましいCyC基は、下記式(CyC-1a)~(CyC-20a)で表される基である:
【化27-1】
【化27-2】
(式中、使用される記号は上記の定義を有し、そして、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyCに結合している場合、1つのRラジカルが存在せず、かつ、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジは、対応する炭素原子に結合しており、そしてさらに、但し、ZがCyCに結合している場合、1つのRラジカルは存在せず、Zは対応する炭素原子に結合している。CyC基が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合している場合、その結合は好ましくは、上記の式中で「o」と印を付けた位置を介しており、そしてそれ故、この位置のラジカルRはその場合、好ましくは、存在しない。「o」と印を付けられた炭素原子を含有しない、上記の構造は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに、好ましくは直接結合していない)
【0091】
(CyC-1)~(CyC-20)基のうちで好ましい基は、(CyC-1)、(CyC-3)、(CyC-8)、(CyC-10)、(CyC-12)、(CyC-13)および(CyC-16)基であり、特に好ましいのは、(CyC-1a)、(CyC-3a)、(CyC-8a)、(CyC-10a)、(CyC-12a)、(CyC-13a)および(CyC-16a)基である。
【0092】
本発明のさらなる好ましい形態において、CyDは、5~13個の芳香族環原子、より好ましくは、6~10個の芳香族環原子を有し、非荷電の窒素原子を介して、もしくはカルベン炭素原子を介して金属に配位し、かつ、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよく、かつ、共有結合を介してCyCに結合している、ヘテロアリール基である。
【0093】
CyD基の好ましい形態は、下記式(CyD-1)~(CyD-14)で表される構造である:
【化28】
(式中、CyD基は、各々の場合において、#で示す、CyC中の位置に結合しており、かつ、*で示す位置で金属に配位しており、X、WおよびRは、上記された定義を有し、但し、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyDに結合している場合、1つの記号XはCであり、かつ、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジは、この炭素原子に結合しており、そしてさらに、但し、ZがCyDに結合している場合、1つの記号XはCであり、Zはこの炭素原子に結合している。CyD基が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合している場合、その結合は好ましくは、上記の式中で「o」と印を付けた位置を介しており、そしてそれ故、「o」と印を付けられた記号Xはその場合、好ましくは、Cである。「o」と印を付けられた記号Xを全く含有しない、上記の構造は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに、好ましくは直接結合していない。これは、ブリッジへのそのような結合が立体的な理由から有利でないからである)
【0094】
この場合、(CyD-1)~(CyD-4)、(CyD-7)~(CyD-10)、(CyD-13)および(CyD-14)基は、非荷電の窒素原子を介して、(CyD-5)および(CyD-6)基は、カルベン炭素原子を介して、また、(CyD-11)および(CyD-12)基は、アニオン性窒素原子を介して、金属に配位している。
【0095】
好ましくは、CyD中の、最大で1つの記号XがNであり、より好ましくは記号Xの全てがCRであり、但し、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyDに結合している場合、記号Xの1つがCであり、かつ、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがこの炭素原子に結合している。さらに、ZがCyDに結合している場合、記号Xの1つはCであり、Zはこの炭素原子に結合している。
【0096】
特に好ましい基CyDは、下記の式(CyD-1a)~(CyD-14b)で表される基である:
【化29】
(式中、使用される記号は上記の定義を有し、そして、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジがCyDに結合している場合、ラジカルRの1つが存在せず、かつ、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジは、対応する炭素原子に結合しており、そしてさらに、但し、ZがCyDに結合している場合、1つの記号Xは存在せず、Zは対応する炭素原子に結合している。CyD基が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合している場合、その結合は好ましくは、上記の式中で「o」と印を付けた位置を介しており、そしてそれ故、この位置のラジカルRはその場合、好ましくは、存在しない。「o」と印を付けられた炭素原子を全く含有しない、上記の構造は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに、好ましくは直接結合していない。さらに、ZがCyDに結合している場合、1つの位置がRラジカルにより置換されておらず、Zがこの炭素原子に結合している)
【0097】
(CyD-1)~(CyD-14)基のうちで好ましい基は、(CyD-1)、(CyD-2)、(CyD-3)、(CyD-4)、(CyD-5)および(CyD-6)基、特に、(CyD-1)、(CyD-2)および(CyD-3)基であり、特に好ましいのは、(CyD-1a)、(CyD-2a)、(CyD-3a)、(CyD-4a)、(CyD-5a)および(CyD-6a)基、特に、(CyD-1a)、(CyD-2a)および(CyD-3a)である。
【0098】
本発明の好ましい形態において、CyCは、6~13個の芳香族環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール基であり、そして同時に、CyDは、5~13個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基である。より好ましくは、CyCは、6~10個の芳香族環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール基であり、そして同時に、CyDは、5~10個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基である。最も好ましくは、CyCは、6個の芳香族環原子を有する、アリールもしくはヘテロアリール基、特にフェニル基であり、そしてCyDは、6~10個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基である。同時に、CyCおよびCyDは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい。
【0099】
上記の好ましい、(CyC-1)~(CyC-20)および(CyD-1)~(CyD-14)基は、式(L-1)および(L-2)で表される副配位子において、所望により互いに組み合わせることができ、但し、CyCもしくはCyD基の少なくとも1つは、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジへの適当な結合部位を有しており、適当な結合部位は上記の式中で「o」と印付けられている。上記で特に好ましいものと特定されたCyCおよびCyD基、すなわち、式(CyC-1a)~(CyC-20a)で表される基および式(CyD1-a)~(CyD-14b)で表される基、が互いに組み合わされる場合が特に好ましく、但し、好ましい、CyCもしくはCyD基の少なくとも1つは、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジへの適当な結合部位を有しており、適当な結合部位は上記の式中で「o」と印付けられている。式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジへの適当な結合部位をCyCとCyDのいずれもが有していない組み合わせは、従って、好ましくない。
【0100】
格別に好ましいのは、(CyC-1)、(CyC-3)、(CyC-8)、(CyC-10)、(CyC-12)、(CyC-13)および(CyC-16)基、特に、(CyC-1a)、(CyC-3a)、(CyC-8a)、(CyC-10a)、(CyC-12a)、(CyC-13a)および(CyC-16a)基のうちの1つが、(CyD-1)、(CyD-2)および(CyD-3)基のうちの1つと、そして特に、(CyD-1a)、(CyD-2a)および(CyD-3a)基のうちの1つと、組み合わされる場合である。
【0101】
好ましい副配位子(L-1)は、下記の式(L-1-1)および(L-1-2)で表される構造であり、そして、好ましい副配位子(L-2)は、下記の式(L-2-1)~(L-2-3)で表される構造である:
【化30】
(式中、使用される記号は上記の定義を有し、*は、イリジウムに配位する位置を示し、そして「o」は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合する位置を示すが、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している)
【0102】
特に好ましい副配位子(L-1)は、下記式(L-1-1a)および(L-1-2b)で表される構造であり、そして、特に好ましい副配位子(L-2)は、下記式(L-2-1a)~(L-2-3a)で表される構造である:
【化31】
(式中、使用される記号は上記された定義を有し、そして、「o」は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合する位置を示し、但し、Zがこの副配位子に結合する場合、1つのRラジカルは存在せず、かつZは、この炭素原子に結合している)
【0103】
同様に、(L-3)で表される副配位子中の上記の好ましいCyD基を、所望により、互いに組み合わせることができ、好ましくは、非荷電のCyD、すなわち、(CyD-1)~(CyD-10)、(CyD-13)もしくは(CyD-14)基を、アニオン性のCyD基、すなわち、(CyD-11)もしくは(CyD-12)基と結合させることができ、但し、好ましいCyD基の少なくとも1つが、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに対する適当な結合部位を有しており、適当な結合部位は上記の式中で「o」と印付けられている。
【0104】
2つのRラジカル(式(L-1)および(L-2)中で、その一方がCyCに結合し、他方がCyDに結合している;または式(L-3)中で、その一方がCyDの一方に結合し、他方がCyDの他方に結合している)が互いに芳香族環系を形成する場合、これは橋架けされた副配位子になり、そして、例えば、ベンゾ[h]キノリン等のような、全体として、単一のより大きなヘテロアリール基を表わす副配位子にもなる。式(L-1)および(L-2)における、CyCおよびCyD上の置換基の間、または式(L-3)における、2つのCyD基上の置換基の間での環形成は、好ましくは、下記式(39)~(48)のうちの1つに従う基を介する:
【化32】
(式中、Rは、上記された定義を有し、破線の結合は、CyCまたはCyDへの結合を示す。同時に、上記基中の非対称のものは、2つの可能な選択肢のそれぞれに組み込まれることができる;例えば、式(48)で表される基において、酸素原子がCyC基に結合し、かつ、カルボニル基がCyD基に結合してもよい、または酸素原子がCyD基に結合し、かつ、カルボニル基がCyC基に結合してもよい。さらに、Zはまた、これらの基に結合していてもよい)
【0105】
同時に、式(45)で表される基は、これが、例えば、式(L-22)および(L-23)によって次に示されるように、環形成により6員環をもたらす場合が特に好ましい。
【0106】
異なる環にある2つのRラジカル間での環形成によって生じる、好ましい配位子は、下記式(L-4)~(L-31)で表される構造である:
【化33-1】
【化33-2】
(式中、使用される記号は上記された定義を有し、そして、「o」は、この副配位子が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジに結合する位置を示し、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZは、この炭素原子に結合している)
【0107】
式(L-4)~(L-31)で表される副配位子の好ましい形態において、全体として、1つの記号XがNであり、かつその他の記号XがCRであるか、または記号Xの全てがCRであり、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している。
【0108】
本発明の更なる形態では、(CyC-1)~(CyC-20)もしくは(CyD-1)~(CyD-14)基において、または、(L-1-1)~(L-2-3)および(L-4)~(L-31)副配位子において、原子Xの1つがNであることが好ましいが、これは、この窒素原子に隣接する置換基として結合されたR基が、水素もしくは重水素ではない場合である。これは、好ましい構造、(CyC-1a)~(CyC-20a)もしくは(CyD-1a)~(CyD-14b)に同様に適用され、そこでは、非配位の窒素原子に隣接して結合された置換基が、水素もしくは重水素ではない、R基であることが好ましい。この置換基Rは、好ましくは、CF、OCF、1~10個の炭素原子を有する、アルキルもしくはアルコキシ基、特に、3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基、2~10個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、またはアラルキルもしくはヘテロアラルキル基から選択される基である。これらの基は、立体的に嵩高い基である。さらに好ましくは、このRラジカルはまた、隣接するRラジカルと環を形成してもよい。
【0109】
さらに好適な二座副配位子は、下記式(L-32)または(L-33)で表される副配位子である:
【化34】
(式中、Rは上記の定義を有し、*は金属への配位の位置を表し、「o」は、この副配位子が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基に結合する位置を示し、そしてその他の記号は、次の通りである:
【0110】
Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであり、但し、環当たり最大で1つの記号XはNであり、また、但し、1つの記号XがCであり、かつ式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基がこの炭素原子に結合されており、また但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している)
【0111】
副配位子(L-32)および(L-33)中の隣接する炭素原子に結合している、2つのRラジカルが、互に芳香族環を形成する場合、この環は、好ましくは、その2つの隣接する炭素原子と一緒になって、下記の式(49)で表される構造である:
【化35】
(式中、破線の結合は、副配位子内の、この基の連結を表わし、かつ、Yは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRもしくはNであり、そして好ましくは、最大で1つの記号Yは、Nである。さらに、Zはまた、この基に結合していてもよい)
【0112】
副配位子(L-32)および(L-33)の好ましい形態において、最大で1つの、式(49)で表される基が存在する。この副配位子は、従って、好ましくは、下記の式(L-34)~(L-39)で表される副配位子である:
【化36】
(式中、Xは、出現毎に同一であるかまたは異なり、CRまたはNであるが、ラジカルRは一緒になって、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を形成せず、そして、その他の記号は上記された定義を有し、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している)
【0113】
本発明の好ましい形態では、式(L-32)~(L-39)で表される副配位子において、合計で0、1もしくは2つの記号Xと、存在する場合のYが、Nである。より好ましくは、合計で0もしくは1つの記号Xと、存在する場合のYが、Nである。
【0114】
式(L-34)~(L-39)の好ましい形態は、下記の式(L-34a)~(L-39f)で表される構造である:
【化37-1】
【化37-2】
【化37-3】
(式中、使用される記号は上記された定義を有し、そして、「o」は、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基への結合の位置を示し、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つのRは存在せず、かつZは対応する炭素原子に結合している)
【0115】
本発明の好ましい形態では、金属への配位に対してオルト位にあるX基はCRである。このラジカル中で、金属への配位に対してオルト位で結合したRは、好ましくは、H、D、Fおよびメチルからなる群から選択される。
【0116】
本発明のさらなる形態において、原子Xのうちの1つ、または、存在する場合のYは、Nであることが好ましいが、これは、この窒素原子に隣接して結合された置換基が、水素もしくは重水素ではない、R基である場合である。この置換基Rは、好ましくは、CF、OCF、1~10個の炭素原子を有する、アルキルもしくはアルコキシ基、特に、3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基、2~10個の炭素原子を有するジアルキルアミノ基、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、またはアラルキルもしくはヘテロアラルキル基から選択される基である。これらの基は、立体的に嵩高い基である。さらに好ましくは、このRラジカルはまた、隣接するRラジカルと共に環を形成していてもよい。
【0117】
さらに好適な二座副配位子は、下記式(L-40)~(L-44)で表される構造であり、ここで、好ましくは3つの二座副配位子のうちの最大で1つが、その構造のうちの1つであり、
【化38】
(式中、副配位子(L-40)~(L-42)は、明示されている窒素原子および負に荷電されている酸素原子を介してそれぞれ金属に配位し、そして、副配位子(L-43)および(L-44)は、2つの酸素原子を介して金属に配位し、Xは、上記した定義を有し、そして、「o」は、副配位子が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基にそれを介して結合している位置を示し、但し、Zがこの副配位子に結合している場合、1つの記号XはCであり、かつZはこの炭素原子に結合している)
【0118】
Xの上記の好ましい形態はまた、一般式(L-40)~(L-42)で表される副配位子にも好ましい。式(L-40)~(L-42)で表される好ましい副配位子は、従って、下記式(L-40a)~(L-42a)で表される副配位子である:
【化39】
(式中、使用される記号は上記された定義を有し、そして、「o」は、副配位子が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基に結合している位置を示し、Zがこの副配位子に結合する場合、1つのRラジカルは存在せず、かつZは対応する炭素原子に結合している)
【0119】
より好ましくは、これらの式において、Rは水素であり、ここで、「o」は、副配位子が、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態の基にそれを介して結合している位置を示しており、そしてそれ故、その構造は、下記式(L-40b)~(L-42b)で表されるものである:
【化40】
(式中、使用される記号は、上記された定義を有する)
【0120】
金属錯体M’について以下に記載する。本発明によれば、Μ’は、出現毎に同一であるかまたは異なり、Mであるか、または、同一であるかもしくは異なっていてもよい3つの二座配位子が1つのイリジウム原子に配位しているイリジウム錯体であるか、または、1つのプラチナ原子に、同一であるかもしくは異なってもよい2つの二座配位子が配位しているか、もしくは四座配位子が配位している、プラチナ錯体である。一般的には、有機ルミネッセンス素子に通常使用される全てのイリジウムおよびプラチナ錯体をここで使用することができる。
【0121】
本発明の好ましい形態において、Μ’は、同一であるかまたは異なり、Mである、すなわち、同一であるかまたは異なっていてもよい、3つの二座副配位子が1つのイリジウム原子に配位し、かつこの3つの二座副配位子がブリッジを介して上記の式(2)もしくは(3)中で結合している、三脚型の六座配位子を含むイリジウム錯体、または同一であるかまたは異なっていてもよい、3つの二座副配位子が1つのイリジウム原子に配位しているイリジウム錯体である。Μ’が、3つの二座配位子が1つのイリジウム原子に配位しているイリジウム錯体である場合、Zは、3つの二座配位子の1つに結合している。Zが結合している対応する配位子は、それがZ-Mへの連結の結果としての副配位子であるとしても、本発明の意味においては二座配位子という。
【0122】
Μ’が、同一であるかまたは異なっていてもよい、3つの二座配位子が1つのイリジウム原子に配位しているイリジウム錯体である場合、これらの二座配位子は、好ましくは、下記式(L-1’)および(L-3’)で表される構造から選択される:
【化41】
(式中、記号は上記の定義を有する)
【0123】
この文脈において、副配位子(L-1)、(L-2)および(L-3)に対して記載されたと同じ優先性は、式(L-1’)および(L-3’)で表される配位子に適用されるが、式(L-1’)および(L-3’)で表される配位子は、式(2)または(3)で表されるブリッジに結合していないという違いがある。
【0124】
本発明の好ましい形態において、Μ’は、同一であるかまたは異なり、Mであり、ここではまた、Mに対して記載されたと同じ優先性が適用される。好ましくは、MとΜ’は、三脚型の六座配位子を有するイリジウム錯体である。
【0125】
本発明の好ましい形態において、MとΜ’は、同一である。このことは、錯体のより容易な合成可能性という点での利点を持つことができる。
【0126】
さらに好ましい形態において、MとΜ’は、異なり、そしてまた特に、異なる発光色を有する。例えば、赤色発光性の錯体MもしくはΜ’と、黄色もしくは緑色発光性の錯体Μ’もしくはMとの組み合わせは、同一分子内でのコドーピングをもたらすことができる。
【0127】
次に、上記した副配位子および配位子上に、また式(4)で表される構造における2価のアリーレンもしくはヘテロアリーレン基上に存在することのできる、好ましい置換基について記載する。
【0128】
本発明の好ましい形態において、本発明に係る金属錯体は、隣接する炭素原子に結合し、かつ、一緒になって、これ以降に記載する式の1つに従う、脂肪族環を形成する、2つの置換基Rを含有する。この場合、この脂肪族環を形成する、2つの置換基Rは、式(2)もしくは(3)で表される、または好ましい形態のブリッジ上に、および/または1つ以上の二座副配位子上に存在していてもよい。2つの置換基Rが一緒になっての環形成により形成される、脂肪族環は、好ましくは、下記式(50)~(56)の1つによって記載される:
【化42】
(式中、RおよびRは上記された定義を有し、破線の結合は、配位子中の2つの炭素原子の結合を意味し、そして、さらに:
【0129】
、Zは、出現毎に同一であるかまたは異なり、C(R、O、S、NRまたはC(=O)であり;
【0130】
は、C(R、O、S、NRまたはC(=O)であり;
【0131】
Gは、1、2もしくは3つの炭素原子を有し、かつ、1つ以上のRラジカルで置換されていてもよいアルキレン基、-CR=CR-、または5~14個の芳香族環原子を有し、かつ、1つ以上のRラジカルで置換されていてもよい、オルト結合した、アリーレンもしくはヘテロアリーレン基であり;
【0132】
は、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、F、1~10個の炭素原子を有する、直鎖の、アルキルもしくはアルコキシ基、3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、アルキルもしくはアルコキシ基は、各々の場合において、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよく、またここで、1つ以上の非隣接のCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、NR、O、S、もしくはCONRで置き換えられていてもよい)、または5~24個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~24個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい、アリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であり;同時に、同じ炭素原子に結合した2つのRラジカルは、一緒になって、脂肪族もしくは芳香族環系を形成し、このためスピロ系を形成していてもよく;さらに、Rは、隣接するラジカルRもしくはRと共に、脂肪族環系を形成してもよく;
【0133】
但し、これらの基中の2つのヘテロ原子が直接互いに結合しない、そして2つの基C=Oが、直接互いに結合していないことを条件する)
【0134】
本発明の好ましい形態において、Rは、Hではない。
【0135】
式(50)~(56)で表される上記の構造および好ましいとして特定されたこれらの構造の更なる形態において、二重結合が2つの炭素原子間で形式的に表現されている。これは、これらの2つの炭素原子が芳香族もしくはヘテロ芳香族系に組み入れられる際の化学構造を簡素化したものであり、従って、これらの2つの炭素原子間の結合は形式的には、単結合の結合レベルと二重結合の結合レベルの間である。形式的な二重結合の図示は、従って、その構造を制限するためのものであると解釈すべきではない;しかし、当業者には、これが芳香族結合であるということは明らかであろう。
【0136】
本発明に係る構造において隣接するラジカルが脂肪族環系を形成する場合、後者が酸性ベンジルプロトンを持たない場合が好ましい。ベンジルプロトンは、配位子に直接結合している炭素原子に結合するプロトンを意味すると解される。これは、完全に置換されており、結合した水素原子を含有していない、アリールもしくはヘテロアリール基に直接結合する脂肪族環系の炭素原子により達成される。従って、式(50)~(52)における酸性ベンジルプロトンの不存在は、ZおよびZがC(R(Rは水素ではないと定義される)である場合、ZおよびZにより達成される。これは、さらに、二環式もしくは多環式構造における橋頭である、アリールもしくはヘテロアリール基に直接結合する脂肪族環系の炭素原子により達成される。橋頭の炭素原子に結合したプロトンは、二環式もしくは多環式の立体的構造のために、二環式もしくは多環式構造内で結合されていない炭素原子上のベンジルプロトンよりも極めて弱い酸性であり、そして、本発明の意味において、非酸性プロトンとみなされる。従って、式(53)~(56)における酸性のベンジルプロトンの不存在は、この二環式構造であることにより達成され、その結果として、二環式構造の対応するアニオンがメソメリー的に安定化していないので、Rは、それがHであるとき、ベンジルプロトンよりも非常に弱い酸性である。式(53)~(56)におけるRがHである場合、これは、従って、本発明の意味において、非酸性プロトンである。
【0137】
式(50)~(56)で表される構造の好ましい形態において、Z、ZおよびZ
の最大で1つは、ヘテロ原子、特に、OもしくはNRであり、かつ、その他の基は、C(RもしくはC(Rであるか、または、ZおよびZは、出現毎に同一であるかまたは異なり、OもしくはNRであり、かつ、Zは、C(Rである。本発明の特に好ましい形態において、ZおよびZは、出現毎に同一であるかまたは異なり、C(Rであり、かつ、Zは、C(R、さらに好ましくは、C(RもしくはCHである。
【0138】
式(50)の好ましい形態は、従って、式(50-A)、(50-B)、(50-C)および(50-D)で表される構造であり、そして、式(50-A)の特に好ましい形態は、式(50-E)および(50-F)で表される構造である:
【化43】
(式中、RおよびRは、上記された定義を有し、そして、Z、ZおよびZは、出現毎に同一であるかまたは異なり、OもしくはNRである)
【0139】
式(51)の好ましい形態は、下記式(51-A)~(51-F)で表される構造である:
【化44】
(式中、RおよびRは、上記された定義を有し、そして、Z、ZおよびZは、出現毎に同一であるかまたは異なり、OもしくはNRである)
【0140】
式(52)の好ましい形態は、下記式(52-A)~(52-E)で表される構造である:
【化45】
(式中、RおよびRは、上記された定義を有し、そして、Z、ZおよびZは、出現毎に同一であるかまたは異なり、OもしくはNRである)
【0141】
式(53)で表される構造の好ましい形態では、橋頭に結合したラジカルRは、H、D、FまたはCHである。さらに好ましくは、Zは、C(RもしくはOであり、より好ましくは、C(Rである。式(53)の好ましい形態は、従って、式(53-A)および(53-B)で表される構造であり、そして、式(53-A)の特に好ましい形態は、式(53-C)で表される構造である:
【化46】
(式中、使用される記号は、上記された定義を有する)
【0142】
式(54)、(55)および(56)で表される構造の好ましい形態において、橋頭に結合したラジカルRは、H、D、FまたはCHである。さらに好ましくは、Zは、C(Rである。式(54)、(55)および(56)の好ましい形態は、従って、式(54-A)、(55-A)および(56-A)で表される構造である:
【化47】
(式中、使用される記号は、上記された定義を有する)
【0143】
さらに好ましくは、式(53)、(53-A)、(53-B)、(53-C)、(54)、(54-A)、(55)、(55-A)、(56)および(56-A)中のG基は、1つ以上のRラジカルで置換されていてもよい、1,2-エチレン基(ここで、Rは好ましくは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、もしくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基である)、または、6~10個の炭素原子を有し、かつ、1つ以上のラジカルRで置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、オルトアリーレン基、特に、1つ以上のラジカルRで置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、オルトアリーレン基である。
【0144】
本発明のさらに好ましい形態では、式(50)~(56)で表される基および好ましい形態におけるRは、出現毎に同一であるかまたは異なり、F、1~10個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基(ここで、1つ以上の非隣接のCH基は、各々の場合において、RC=CRで置き換えられていてもよく、そして1つ以上の水素原子はDもしくはFで置き換えられていてもよい)、または5~14個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同じ炭素原子に結合した2つのラジカルRは、一緒になって、脂肪族もしくは芳香族環系を形成し、このためスピロ系を形成していてもよく;さらに、Rは、隣接するラジカルRもしくはRと共に、脂肪族環系を形成してもよい。
【0145】
本発明の特に好ましい形態では、式(50)~(56)で表される基および好ましい形態におけるRは、出現毎に同一であるかまたは異なり、F、1~3個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、特にメチル、または5~12個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよいが、好ましくは非置換である、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同じ炭素原子に結合した2つのラジカルRは、一緒になって、脂肪族もしくは芳香族環系を形成し、このためスピロ系を形成していてもよく;さらに、Rは、隣接するラジカルRもしくはRと共に、脂肪族環系を形成してもよい。
【0146】
式(50)で表される基の特に好適な例は、下記の基である:
【化48-1】
【化48-2】
【0147】
式(51)で表される基の特に好適な例は、下記の基である:
【化49】
【0148】
式(52)、(55)および(56)で表される基の特に好適な例は、下記の基である:
【化50】
【0149】
式(53)で表される基の特に好適な例は、下記の基である:
【化51】
【0150】
式(54)で表される基の特に好適な例は、下記の基である:
【化52】
【0151】
Rラジカルが、二座副配位子もしくは配位子内で、または式(2)もしくは(3)で表されるかまたは好ましい形態内で、式(4)で表される、2価のアリーレンもしくはヘテロアリーレン基に結合されている場合、これらのRラジカルは、出現毎に同一であるかまたは異なり、好ましくは、H、D、F、Br、I、N(R、CN、Si(R、B(OR、C(=O)R、1~10個の炭素原子を有する、直鎖のアルキル基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、または3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基(ここで、アルキルもしくはアルケニル基は、各々の場合において、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい)、または5~30個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系からなる群から選択され;同時に、2つのラジカルRが一緒になって、またはRがRと一緒になって、単環式もしくは多環式の、脂肪族もしくは芳香族環系を形成してもよい。より好ましくは、これらのラジカルRは、出現毎に同一であるかまたは異なり、好ましくは、H、D、F、N(R、1~6個の炭素原子を有する、直鎖のアルキル基、または3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基(ここで、1つ以上の水素原子は、DもしくはFにより置き換えられてもよい)、または5~24個の芳香族環原子、特に6~13個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、ラジカルRにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系からなる群から選択され;同時に、2つの隣接するラジカルRが一緒になって、またはRがRと一緒になって、単環式もしくは多環式の、脂肪族もしくは芳香族環系を形成してもよい。
【0152】
好ましい、Rに結合されるRラジカルは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R、CN、1~10個の炭素原子を有する、直鎖のアルキル基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、または3~10個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基(ここで、アルキル基は、各々の場合において、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい)、または5~24個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つ以上のRラジカルは一緒になって、単環式もしくは多環式の、脂肪族環系を形成してもよい。特に好ましい、Rに結合されるRラジカルは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、F、CN、1~5個の炭素原子を有する、直鎖のアルキル基、または3~5個の炭素原子を有する、分枝状もしくは環状の、アルキル基(これらの各々は、1つ以上のラジカルRにより置換されていてもよい)、または5~13個の芳香族環原子、特に6~13個の芳香族環原子を有し、かつ、各々の場合において、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい、芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;同時に、2つ以上の隣接するRラジカルが一緒になって、単環式もしくは多環式の、脂肪族環系を形成してもよい。
【0153】
好ましいRラジカルは、出現毎に同一であるかまたは異なり、H、F、または1~5個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、または6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり;同時に、2つ以上の置換基Rがまた、一緒になって、単環式もしくは多環式の、脂肪族環系を形成してもよい。
【0154】
本発明の化合物は、キラル構造である。錯体および配位子の正確な構造によれば、ジアステレオマーの、および鏡像異性体の複数の対の形成が可能である。本発明の錯体は、異なるジアステレオマーもしくは対応するラセミ体の混合物と、個々の分離された、ジアステレオマーもしくは鏡像異性体との両方を含む。
【0155】
単核錯体合成単位が、本発明の多核錯体を形成するために用いられる場合、これらは通常、ΔおよびΛ異性体のラセミ体の形で用いられる。これは、本発明の多核化合物中にジアステレオマー混合物を、例えば、二核化合物に対してΔ,Δ/Λ,Λおよび(メソ)-Δ,Λ体をもたらす。特に断らない限り、これらは、変換されるか、または、ジアステレオマー混合物としてさらに使用される。また、クロマトグラフィー法、または分別晶析によってこれらを分離することができる。
【0156】
単核錯体合成単位の、鏡像異性的に純粋なΔおよびΛ異性体が、本発明の多核錯体を形成するために用いられる場合、例えば、二核錯体に対してΔ,ΔまたはΛ,Λまたは(メソ)-Δ、Λ体を選択的に製造することができる。同じことがまた、本発明の三核およびそれ以上の多核の錯体に対して適用される。
【0157】
そのために必要とされる単核錯体合成単位の、ΔまたはΛ異性体は、以下のように得ることができる。C-もしくはC3V-対称性の配位子が単核錯体合成単位の合成に使用される場合、通常得られるものは、C-対称性の錯体のラセミ混合物、すなわち、Δ鏡像異性体とΛ鏡像異性体のラセミ混合物である。これらは、通常の方法(キラル材料/カラムを用いたクロマトグラフィー、または結晶化による光学分割)により分離することができる。これは、3つのフェニルピリジン副配位子を持つC-対称性の配位子の例を用いて、下記のスキームに示され、そして同様にその他のC-もしくはC3V-対称性の配位子の全てにも適用される。
【化53】
【0158】
対のジアステレオマー塩の分別晶析による光学分割は、通常の方法により行うことができる。この目的のための1つのオプションは、次に概略的に示すように、非荷電のIr(III)錯体を(例えば、過酸化物もしくはHで、または電気化学的手段により)酸化し、このようにして製造されたカチオン性Ir(IV)錯体に、鏡像異性的に純粋なモノアニオン性塩基(キラル塩基)を加え、このようにして製造されたジアステレオマー塩を分別晶析によって分離し、次いで、還元剤(例えば、亜鉛、ヒドラジン水和物、アスコルビン酸等)を用いてそれらを還元して、鏡像異性的に純粋な非荷電の錯体を得る:
【化54】
【0159】
さらに、鏡像異性的に純粋な、もしくは鏡像異性的に富化させる合成は、キラル媒体(例えば、R-もしくはS-1,1-ビナフトール)中での錯体化によって可能である。
【0160】
同様の手法はまた、C-対称性配位子の錯体についても行なうことができる。
【0161】
-対称性配位子は錯体化に使用され、通常得られるのは、通常の方法(クロマトグラフィー、結晶化)により分離することができる錯体のジアステレオマー混合物である。
【0162】
鏡像異性的に純粋なC-対称性の錯体はまた、次のスキームに示すように、選択的に合成することができる。このためには、鏡像異性的に純粋なC-対称性の配位子を製造し、そして錯体化し、得られたジアステレオマー混合物を分け、次いで、キラル基を分離する。
【化55】
【0163】
このようにして得られた、単核錯体合成単位のΔまたはΛ異性体は、最終的に官能化され、例えば、ハロゲン化され、またはホウ素化され、そしてその後のカップリング反応、例えば鈴木カップリングにより結合され、本発明の多核錯体を得る。
【0164】
上記の好ましい形態は、所望により互いに組み合すことができる。本発明の特に好ましい形態では、上記の好ましい形態が同時に適用される。
【0165】
本発明の錯体は、特に2つの経路で製造することができる。第一に、12座、18座、24座等の配位子を製造し、その後o-メタル化反応により金属に配位させることができる。一般的には、このために、イリジウム塩を対応する遊離配位子と反応させる。
【0166】
従って、本発明はさらに、対応する遊離の配位子と、式(57)で表される金属アルコキシドとの、式(58)で表される金属ケトケトナートとの、式(59)で表される金属ハライドとの、または式(60)で表される金属カルボン酸塩との反応により、本発明に係る化合物を製造する方法を提供する:
【化56】
(式中、Rは上記された定義を有し、HalはF、Cl、BrもしくはIであり、およびイリジウム反応物は、対応する水和物の形をとることができる。ここで、Rは、好ましくは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である)
【0167】
同様に、アルコキシドおよび/またはハライドおよび/またはヒドロキシルと、ケトケトナートラジカルとの両方を備えたイリジウム化合物を使用することができる。これらの化合物はまた、荷電されていてもよい。反応物として特に好適な、対応するイリジウム化合物は、WO2004/085449に開示されている。特に好適なのは、[IrCl(acac)、例えば、Na[IrCl(acac)]、配位子としてのアセチルアセトナート誘導体との金属錯体、例えば、Ir(acac)、またはトリス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナート)イリジウム、およびIrCl・xHO(ここで、xは通常、2~4の数である)である。
【0168】
錯体の合成は、好ましくは、WO2002/060910およびWO2004/085449に記載されるように行なわれる。この場合、合成はまた、例えば、熱的もしくは光化学的手段および/またはマイクロ波照射によって活性化することができる。さらに、合成はまた、オートクレーブ中にて、高圧および/または高温で行うことができる。
【0169】
前記反応は、o-メタル化される、対応の配位子の溶融物中で、溶媒もしくは溶融助剤を加えることなく行うことができる。必要に応じて、溶媒もしくは溶融助剤を加えることができる。適当な溶媒は、プロトン性もしくは非プロトン性溶媒であり、例えば、脂肪族および/または芳香族アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等)、オリゴ-およびポリアルコール類(エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、グリセロール等)、アルコールエーテル類(エトキシエタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、エーテル類(ジ-およびトリエチレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテル等)、芳香族類、ヘテロ芳香族および/または脂肪族炭化水素類(トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ピリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリデカン、ヘキサデカン等)、アミド類(DMF、DMAC等)、ラクタム類(NMP)、スルホキシド類(DMSO)、またはスルホン類(ジメチルスルホン、スルホラン等)である。適当な溶融助剤は、室温で固体であるが、反応混合物を加熱したときに溶融し、さらに反応物を溶解させて均質な溶融を形成するような化合物である。特に好適なのは、ビフェニル、m-テルフェニル、トリフェニル、R-もしくはS-ビナフトールまたは対応するラセミ体、1,2-、1,3-もしくは1,4-ビスフェノキシベンゼン、トリフェニルホスフィンオキシド、18-クラウン-6、フェノール、1-ナフトール、ヒドロキノン等である。特に好ましいのは、ここではヒドロキノンを使用することである。
【0170】
第二に、ハロゲンまたはボロン酸で官能化された、2つの以上の金属錯体を、カップリング反応、好ましくは、鈴木カップリングで、互いに反応させるか、あるいは適当なアリール/ヘテロアリールハライドまたはアリール/ヘテロアリール-ボロン酸もしくは-ボロン酸エステルと反応させて本発明の化合物を得ることができる。このような合成を行うことができる方法は、実施例から推察できる。
【0171】
これらの方法によって、必要に応じて、精製、例えば、再結晶もしくは昇華を伴い、式(1)で表される本発明の化合物を、高純度で、好ましくは99%(H-NMRおよび/またはHPLCによる測定で)より高い純度で得ることができる。
【0172】
本発明に係る金属錯体はまた、適切な置換により、例えば、比較的長いアルキル基(約4~20個の炭素原子)、特に分枝状アルキル基、または場合により置換されているアリール基、例えば、キシリル、メシチル、または分枝状の、テルフェニルもしくはクウォーターフェニル基により、可溶性を付与することもできる。金属錯体の溶解性に関する明確な改善をもたらすもう1つの特別な方法は、例えば、これまでに開示した式(50)~(56)により示されるような縮合した脂肪族基を使用することである。このような化合物は然して、溶液から錯体を処理できるように、室温において十分な濃度で一般的な溶剤、例えば、トルエンもしくはキシレンに可溶性である。これらの可溶性化合物は、溶液からの処理、例えば、印刷法による処理に特に好適である。
【0173】
液相から本発明の金属錯体を、例えば、スピンコーティングもしくは印刷法によって、処理するためには、本発明に係る金属錯体の配合物が必要とされる。これらの配合物は、例えば、溶液、分散液またはエマルジョンであってもよい。この目的のために、2つ以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい。適当で好ましい溶媒は、例えば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、ベラトロール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、安息香酸ブチル、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、安息香酸エチル、インダン、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、ヘキサメチルインダン、2-メチルビフェニル、3-メチルビフェニル、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、オクタン酸エチル、セバシン酸ジエチル、オクタン酸オクチル、ヘプチルベンゼン、イソ吉草酸メンチル、ヘキサン酸シクロヘキシル、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0174】
従って、本発明はさらに、少なくとも1つの、本発明に係るイリジウム錯体および少なくとも1つの、更なる化合物を含んでなる配合物を提供する。この更なる化合物は、例えば、溶媒、特に上記の溶媒の1つか、またはこれらの溶媒の混合物であってもよい。あるいは、この更なる化合物は、電子素子に同様に使用される、更なる、有機もしくは無機化合物、例えば、マトリックス材料であってもよい。この更なる化合物は、また、ポリマーであってもよい。
【0175】
本発明に係る、上記の金属錯体もしくは上記の好ましい形態は、電子素子における活性成分として、または酸素増感剤として使用することができる。本発明は、従って、さらに、本発明に係る化合物の電子素子中での、または酸素増感剤もしくは光触媒としての使用を提供する。本発明は、さらになお、本発明に係る化合物を少なくとも1つ含んでなる電子素子を提供する。
【0176】
電子素子は、アノード、カソードおよび少なくとも1つの層を含んでなり、この層が、少なくとも1つの、有機もしくは有機金属化合物を含んでなる、任意の素子を意味するものと解される。従って、本発明に係る電子素子は、アノード、カソード、および本発明に係る金属錯体の少なくとも1つを含んでなる、少なくとも1つの層を含んでなる。好ましい電子素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)(後者は、純粋に有機の太陽電池と色素増感型太陽電池の両方を意味するものと解される)、有機光検出器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)、酸素センサー、および有機レーザーダイオード(O-laser)からなる群から選択され、少なくとも1つの層に、少なくとも1つの、本発明に係る金属錯体を含んでなる。特に好ましいのは、有機エレクトロルミネッセンス素子である。活性成分は、一般に、アノードとカソードの間に導入される、有機もしくは無機材料であり、例えば、電荷注入、電荷輸送もしくは電荷ブロック材料であるが、特に発光材料およびマトリックス材料である。本発明に係る化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子における発光材料として特に優れた特性を示す。従って、本発明の好ましい形態は、有機エレクトロルミネッセンス素子である。さらに、本発明に係る化合物は、一重項酸素の製造に、または光触媒に使用することができる。特に、金属がルテニウムである場合、色素増感型太陽電池(「グレッツェルセル」)における光増感剤として使用することが好ましい。
【0177】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、カソード、アノードおよび少なくとも1つの発光層を含んでなる。これらの層とは別に、それは更なる層を含むことができ、例えば、各々の場合において、1つ以上の、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層、電荷発生層および/または有機もしくは無機のp/n-接合である。同時に、1つ以上の正孔輸送層が、例えば、MoOもしくはWO等の金属酸化物で、または(過)フッ素化された電子不足芳香族系でp-ドープされていることができ、および/または1つ以上の電子輸送層がn-ドープされていることができる。同様に、2つの発光層の間に中間層を導入することができ、これらは、例えば、励起子をブロックする機能を有し、および/または有機エレクトロルミネッセンス素子における電荷バランスを制御する。しかしながら、これらの層はいずれも、必ずしも存在する必要がないということが指摘される。
【0178】
この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子は、1つの発光層を含むか、または複数の発光層を含むことができる。複数の発光層が存在する場合、これらは、好ましくは、380nm~750nm全体に複数の発光極大を有し、その結果、全体として白色発光を生じる、すなわち、蛍光または燐光を発することができる様々な発光化合物が、発光層中に用いられる。特に好ましいのは、3つの層が青色、緑色および橙色もしくは赤色の発光を示す3層系(基本的な構成については、例えば、WO2005/011013参照)、または3つより多い発光層を有する系である。この系は、1つ以上の層が蛍光を発し、かつ、1つ以上の層が燐光を発する、ハイブリッド系であってもよい。白色発光性OLEDの好ましい形態は、タンデム式OLEDである。白色発光性の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明用途に、あるいはカラーフィルターと一緒に、フルカラーディスプレイに使用することができる。
【0179】
本発明の好ましい形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、1つ以上の発光層中の発光性の化合物として本発明に係る金属錯体を含んでなる。
【0180】
本発明に係る金属錯体が発光層中の発光性化合物として使用される場合、それは好ましくは1つ以上のマトリックス材料と組み合わせて使用される。本発明に係る金属錯体とマトリックス材料との混合物は、発光体とマトリックス材料との混合物全体に対して、0.1~99重量%、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~40重量%、そして特に5~25重量%の、本発明に係る金属錯体を含む。これに対応して、この混合物は、発光体とマトリックス材料との混合物全体に対して、99.9~1重量%、好ましくは99~10重量%、より好ましくは97~60重量%、そして特に95~75重量%の、マトリックス材料を含む。
【0181】
使用されるマトリックス材料は一般に、その目的に対して従来技術により既知の任意の材料である。マトリックス材料の三重項準位が発光体の三重項準位よりも高いことが好ましい。
【0182】
本発明に係る化合物に好適なマトリックス材料は、ケトン類、ホスフィンオキシド類、スルホキシド類およびスルホン類(例えば、WO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による)、トリアリールアミン類、カルバゾール誘導体類(例えば、CBP(N、N-ビスカルバゾリルビフェニル)、m-CBP、またはWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527、WO2008/086851もしくはUS2009/0134784に開示されるカルバゾール誘導体類)、インドロカルバゾール誘導体類(例えば、WO2007/063754もしくはWO2008/056746による)、インデノカルバゾール誘導体類(例えば、WO2010/136109もしくはWO2011/000455による)、アザカルバゾール誘導体類(例えば、EP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160による)、双極性マトリックス材料(例えば、WO2007/137725による)、シラン類(例えば、WO2005/111172による)、アザボロール類もしくはボロン酸エステル類(例えば、WO2006/117052よる)、ジアザシロール誘導体類(例えば、WO2010/054729による)、ジアザホスホール誘導体類(例えば、WO2010/054730による)、トリアジン誘導体類(例えば、WO2010/015306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746による)、亜鉛錯体類(例えば、EP652273もしくはWO2009/062578による)、ジベンゾフラン誘導体類(例えば、WO2009/148015もしくはWO2015/169412による)、または架橋カルバゾール誘導体類(例えば、US2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107もしくはWO2011/088877による)である。
【0183】
複数の異なるマトリックス材料を混合物として、特に、少なくとも1つの電子伝導性マトリックス材料と少なくとも1つの正孔伝導性マトリックス材料との混合物を使用することが好ましい。好ましい組み合わせは、例えば、芳香族ケトン、トリアジン誘導体もしくはホスフィンオキサイドを、トリアリールアミン誘導体もしくはカルバゾール誘導体と共に、本発明に係る金属錯体のための混合マトリックスとして使用することである。好ましいのは、同様に、例えば、WO2010/108579に記載されているような、電荷輸送マトリックス材料と、電荷輸送に、あるとしても重大な関与をしない、電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用である。好ましいのは、同様に、2つの電子輸送マトリックス材料の使用、例えば、WO2014/094964に記載されているような、例えば、トリアジン誘導体およびラクタム誘導体の使用である。
【0184】
さらに、2つ以上の三重項発光体の混合物をマトリックスと一緒に使用することが好ましい。この場合、より短い波長の発光スペクトルを持つ三重項発光体は、より長い波長の発光スペクトルを持つ三重項発光体のための共マトリックス(co-matrix)として働く。例えば、本発明に係る金属錯体を、より長い波長を発光する三重項発光体、例えば、緑色-もしくは赤色-発光性の三重項発光体、に対する共マトリックスとして使用することができる。この場合、より短い波長-およびより長い波長-発光性の両方の金属錯体が本発明に係る化合物である場合がまた好ましい。
【0185】
本発明に係る金属錯体はまた、電子素子中で他の機能に使用することができ、例えば、正孔注入もしくは輸送層の正孔輸送材料として、電荷発生材料として、電子ブロック材料として、正孔ブロック材料として、または、例えば、電子輸送層中の電子輸送材料としてである。同様に、本発明に係る金属錯体を発光層中における他の燐光性金属錯体に対するマトリックス材料として使用することもできる。
【0186】
好ましいカソードは、低い仕事関数を有する金属、金属合金もしくは様々な金属からなる、多層構造体であり、例えば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族の金属もしくはランタノイド(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)である。さらに、適しているのは、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と銀とからなる合金(例えば、マグネシウムと銀とからなる合金)である。多層構造体の場合には、前記金属に加えて、相対的に高い仕事関数を有する更なる金属(例えば、Ag)を用いることもでき、この場合、例えば、Mg/Ag、Ca/AgまたはBa/Agのような金属の組合せが、一般に用いられる。また、好ましくは、高い誘電率を有する材料からなる薄い中間層を、金属カソードと有機半導体の間に導入することもできる。この目的のために有用な材料の例は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のフッ化物であり、また、対応する、酸化物もしくは炭酸塩(例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCO等)である。同様に、この目的のために有用なのは、有機アルカリ金属錯体、例えば、Liq(リチウムキノリナート)である。この層の層厚は、好ましくは、0.5~5nmである。
【0187】
好ましいアノードは、高い仕事関数を有する材料である。好ましくは、アノードは、真空に対して4.5eVより大きな仕事関数を有する。第一に、高い酸化還元電位を有する金属がこの目的に適しており、例えば、Ag、PtまたはAuである。第二に、好ましくはまた、金属/金属酸化物の電極(例えば、Al/Ni/NiOx、Al/PtOx)であってもよい。いくつかの用途では、有機材料の照射(O-SC)もしくは光の発光(OLED/PLED、O-laser)のいずれかを可能にするために、少なくとも1つの電極が透明もしくは部分的に透明である必要がある。ここで、好ましいアノード材料は、導電性の混合された金属酸化物である。特に好ましいのは、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)である。好ましいのは、さらに、導電性のドーピングされた有機材料、特に、導電性のドーピングされたポリマー、例えば、PEDOT、PANI、またはこれらのポリマーの誘導体である。さらに好ましいのは、p-ドープされた正孔輸送材料が、正孔注入層としてアノードに適用される場合であり、その際には、適当なp-ドーパントは、例えば、MoOもしくはWO等の酸化金属、または(過)フッ素化された電子不足芳香族系である。さらに適当なp-ドーパントは、HAT-CN(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)またはノバレッド(Novaled)社製の化合物NPD9である。このような層は、低いHOMO、すなわち、強度的には大きなHOMO、を有する材料への正孔注入を簡単にする。
【0188】
更なる層においては、これらの層に対して従来技術に従って使用される任意の材料を使用することが一般的に可能であり、また、当業者は、発明的工夫をすることなしに、電子素子において、任意のこれらの材料を本発明に係る材料と組み合わせることができる。
【0189】
このような素子の寿命は、水および/または空気が存在すると著しく短くなるので、素子は、相応に(用途に応じて)構造化され、接点が備えられ、最後に密閉される。
【0190】
1つ以上の層を昇華法により塗布したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに好ましい。この場合、材料は、通常は10-5mbar未満、好ましくは10-6mbar未満の初期圧力で、真空昇華系中で真空蒸着により塗布される。初期圧力は、より低くあるいはより高く、例えば10-7mbar未満にすることも可能である。
【0191】
同様に、OVPD(有機気相蒸着)法により、またはキャリヤガスを用いた昇華により、1つ以上の層を塗布したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子も好ましい。この場合、10-5mbar~1barの圧力で材料を塗布する。この方法の特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法であり、この方法では、材料を、ノズルにより直接塗布し、そしてこのようにして構造化する(例えば、M.S.Arnold et al.,Appl.Phys.Lett.2008,92,053301)。
【0192】
例えば、スピンコーティングにより、または、印刷法(例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、もしくはノズル印刷により)、より好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷により、1つ以上の層を溶液から作成したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに好ましい。この目的のためには、可溶性の化合物が必要とされるが、これは、例えば、適当な置換により得られる。本発明の好ましい形態において、本発明の化合物を含んでなる層は、溶液から塗布される。
【0193】
有機エレクトロルミネッセンス素子はまた、ハイブリッド系として、1つ以上の層を溶液から塗布し、さらに1つ以上の他の層を真空蒸着で塗布することにより製造することもできる。例えば、本発明に係る金属錯体とマトリックス材料を含んでなる発光層を溶液から塗布し、そして、それに正孔ブロック層および/または電子輸送層を減圧下で真空蒸着により塗布することができる。
【0194】
これらの方法は、当業者に一般的に知られており、そして当業者によって、式(1)で表される、または上記で詳述した好ましい形態の化合物を含んでなる有機エレクトロルミネッセンス素子に容易に適用することができる。
【0195】
本発明に係る電子素子、特に有機エレクトロルミネッセンス素子は、従来技術に優る以下の驚くべき利点の1つ以上により注目に値する:
【0196】
1.本発明に係る金属錯体は、非常に短い反応時間及び比較的低い反応温度で、非常に高い収率および非常に高純度で合成することができる。
【0197】
2.本発明に係る金属錯体は、優れた熱安定性を有する。
【0198】
3.本発明に係る金属錯体は、MとΜ’の両方が三脚型の六座配位子を有する錯体である場合、熱的な、あるいは光化学的な、フィシャル体/メリジオナル体(fac/mer)の異性化もしくはメリジオナル体/フィシャル体(mer/fac)の異性化を示さず、このことは、これらの錯体の使用における利点となる。
【0199】
4.本発明に係る金属錯体のあるものは、非常に狭い発光スペクトルを有しており、このことは、特にディスプレイ用途に望まれているような発光での高い色純度をもたらす。
【0200】
5.発光材料として本発明に係る金属錯体を含んでなる有機エレクトロルミネッセンス素子は、非常に良好な寿命を有する。
【0201】
6.発光材料として本発明に係る金属錯体を含んでなる有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた効率を有する。
【0202】
これらの上記の利点は、他の電子的な特性の劣化を伴わない。
【0203】
以下の実施例により本発明を詳細に説明するが、それらによって本発明を限定することを意図しない。当業者は、記載される詳細を用いて、発明的工夫をなさずして、本発明に係る更なる電子素子を製造し、そして、結果として特許が請求された範囲の全体にわたり本発明を実施することができる。
【0204】
実施例:
以下の合成は、特に断りのない限り、乾燥溶媒中で、保護ガス雰囲気下で行われる。金属錯体は、さらに、遮光して、または黄色の光の下で取り扱われる。溶媒および試薬は、例えば、シグマ-アルドリッチ社(Sigma-ALDRICH)またはエービーシーアール社(ABCR)から購入できる。角括弧内の各々の数字または個々の化合物に対して示されている番号は、文献既知の化合物のCAS番号に関する。
【0205】
1.文献公知のシントンLS:
【化57-1】
【化57-2】
【化57-3】
【0206】
2.有機および有機金属シントンの製造
2.1 有機シントンSの製造:
【0207】
実施例S1:1,3,5-トリス(6-ブロモ-1,1,3,3-テトラメチルインダン-5-イル)ベンゼン
【化58】
【0208】
a)1-(6-ブロモ-1,1,3,3-テトラメチルインダン-5-イル)エタノン
【化59】
I.Pravst et al.Tetrahedron Lett.,2006,47,4707による手法。
21.6g(100ミリモル)の1-(1,1,3,3-テトラメチルインダン-5-イル)エタノン[17610-14-9]、39.2g(220ミリモル)のN-ブロモサクシンイミド、1.6g(2.5ミリモル)の[CpRhCl[12354-85-7]、3.4g(10ミリモル)のヘキサフルオロアンチモン酸銀(I)[26042-64-8]、20.0g(110ミリモル)の酢酸銅(II)[142-71-2]および500mlの1,2-ジクロロエタンからなる混合物を、120℃で20時間撹拌した。冷却後、シリカゲル床を通して固体を濾別し、減圧下で溶媒を除去し、残留物をアセトニトリルから3回再結晶させた。収量:12.1g(41ミリモル)、41%。純度:H-NMRにより約97%。
【0209】
b)1,3,5-トリス(6-ブロモ-1,1,3,3-テトラメチルインダン-5-イル)ベンゼン、S1
12.1g(41ミリモル)の1-(6-ブロモ-1,1,3,3-テトラメチルインダン-5-イル)エタノンおよび951mg(5ミリモル)のトルエンスルホン酸一水和物[6192-52-5](またはトリフルオロメタンスルホン酸、バリアントB)の混合物を、水分離器上、150℃で48時間撹拌した。冷却後、残留物を300mlの酢酸エチルに取り、各回100mlの水で3回および100mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで乾燥させた。粗生成物をシリカゲル上でn-ヘプタン:酢酸エチル(5:1)を用いてクロマトグラフィーにかけた。収量:4.3g(5ミリモル)、38%。純度:H-NMRにより約97%。
【0210】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化60】
【0211】
以下の文献公知の化合物は、シントンとして使用することができる。
【化61】
【0212】
実施例S6:
【化62】
a)S6a
【化63】
22.6g(100ミリモル)の(6-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)ボロン酸[459423-16-6]、16.6g(105ミリモル)の2-ブロモピリジン[109-04-6]、21.2g(200ミリモル)の炭酸ナトリウム、1.2g(1ミリモル)のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム[14221-01-3]、300mlのトルエン、100mlのエタノール、300mlの水からなる混合物を、よく撹拌ながら還流下で18時間加熱した。冷却後、有機相を分離し、各回300mlの水で2回および300mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機相の濃縮後に得られた油をさらに精製することなく、オイルポンプ真空下、80℃で乾燥させた。収量:25.6g(98ミリモル)、98%。純度:H-NMRにより約95%。
【0213】
b)S6b
【化64】
26.1g(100ミリモル)のS6aおよび81.9g(700ミリモル)のピリジニウム塩酸塩の混合物を、190℃で3時間加熱した。冷却後、反応混合物を500mlの水に注ぎ、各回200mlのジクロロメタンで5回抽出し、有機相を200mlの水で2回および200mlの飽和NaCl溶液で1回洗浄し、溶媒を減圧下で除去し、300mlのトルエンを共沸乾燥のために加え、そして後者を減圧下で完全に留去した。このようにして得られた粘性の油を、さらに精製せずに変換させる。収量:21.0g(85ミリモル)、85%。純度:H-NMRにより約95%。
【0214】
c)S6
300mlのジクロロメタンおよび80mlのピリジンの混合物中、24.7g(100ミリモル)のS6bの、0℃に冷却した溶液に、34ml(200ミリモル)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物[358-23-6]をよく撹拌しながら滴加した。反応混合物を室温まで昇温させ、さらに16時間撹拌し、1000mlの氷水に攪拌しながら注ぎ、次いで300mlのジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を各回300mlの氷水で2回および500mlの飽和NaCl溶液で1回洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下でのジクロロメタンの除去後に残留しているワックスを、アセトニトリルから再結晶させた。収量:32.6g(86ミリモル)、86%。純度:H-NMRにより約95%。
【0215】
2-ブロモピリジンの代わりに2-ブルモ-4-tert-ブチルピリジン[50488-34-1]を使用することを除いて、類似の方法でS7を製造することができる:
【化65】
【0216】
実施例S10:5-ブロモ-2-[1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン-5-イル]-ピリジン
【化66】
164.2g(500ミリモル)の2-(1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン-5-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン[152418-16-9](同様に、ボロン酸を使用することができる)、142.0g(500ミリモル)の5-ブロモ-2-ヨードピリジン[223463-13-6]、159.0g(1.5モル)の炭酸ナトリウム、5.8g(5ミリモル)のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)、700mlのトルエン、300mlのエタノールおよび700mlの水からなる混合物を、よく撹拌しながら還流下で16時間加熱した。冷却後、1000mlのトルエンを加え、有機相を分離し、そして水相を300mlのトルエンで再抽出した。合わせた有機相を500mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去した後、粗生成物を約300mlのエタノールから2回再結晶させた。収量:130.8g(365ミリモル)、73%。純度:H-NMRにより約95%。
【0217】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化67】
【0218】
実施例S20:
【化68】
25.1g(100ミリモル)の2,5-ジブロモ-4-メチルピリジン[3430-26-0]、15.6g(100ミリモル)の4-クロロフェニルボロン酸[1679-18-1]、27.6g(200ミリモル)の炭酸カリウム、1.57g(6ミリモル)のトリフェニルホスフィン[603-35-0]、676mg(3ミリモル)の酢酸パラジウム(II)[3375-31-3]、200gのガラスビーズ(直径3mm)、200mlのアセトニトリルおよび100mlのエタノールからなる混合物を、還流下で48時間加熱した。冷却後、減圧下で溶媒を除去し、500mlのトルエンを加え、混合物を各回300mlの水で2回および200mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、そしてスラリー状でシリカゲル床を通して濾過し、これを300mlのトルエンで洗浄した。減圧下でトルエンを除去した後、メタノール/エタノール(1:1 v/v)から1回およびn-ヘプタンから1回再結晶させた。収量:17.3g(61ミリモル)、61%。純度:H-NMRにより約95%。
【0219】
実施例S21:
【化69】
28.3g(100ミリモル)のS20、12.8g(105ミリモル)のフェニルボロン酸、31.8g(300ミリモル)の炭酸ナトリウム、787mg(3ミリモル)のトリフェニルホスフィン、225mg(1ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、300mlのトルエン、150mlのエタノールおよび300mlの水からなる混合物を、還流下で48時間加熱した。冷却後、混合物を300mlのトルエンで増量し、そして有機相を分離し、300mlの水で1回および200mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の除去後、残留物をシリカゲル(トルエン/酢酸エチル、9:1 v/v)上でクロマトグラフィーにかけた。収量:17.1g(61ミリモル)、61%。純度:H-NMRにより約97%。
【0220】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができる:
【化70】
【0221】
実施例S30:2-[1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン-5-イル]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン
バリアントA:
【化71】
35.8g(100ミリモル)のS10、25.4g(100ミリモル)のビス(ピノコラート)ジボラン[73183-34-3]、49.1g(500ミリモル)の酢酸カリウム、1.5g(2ミリモル)の、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)のDCMとの錯体[95464-05-4]、200gのガラスビーズ(直径3mm)、700mlの1,4-ジオキサンおよび700mlのトルエンからなる混合物を、還流下で16時間加熱した。冷却後、セライト床を通して懸濁液を濾過し、そして減圧下で溶媒を除去した。黒色残留物を、1000mlの熱シクロヘキサンで温浸し、まだ熱いうちにセライト床を通して濾過し、次いで約200mlに濃縮させると、その工程中に生成物が結晶化し始めた。結晶化を一晩冷蔵庫中で完了させ、そして結晶を濾過し、少量のn-ヘプタンで洗浄した。2つ目の生成物分画を母液から得ることができた。収量:31.6g(78ミリモル)、78%。純度:H-NMRにより約95%。
【0222】
バリアントB:塩化アリールの変換
バリアントAのようにして、但し、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンジクロロパラジウム(II)のDCMとの錯体ではなく、1.5ミリモルのSPhos[657408-07―6]と1.0ミリモルの酢酸パラジウム(II)を使用した。
類似の方法で、以下の化合物を製造することができ、また、精製用には、n-ヘプタンではなく、シクロヘキサン、トルエン、アセトニトリル、酢酸エチルまたは前記溶媒の混合物を使用することもできる:
【化72-1】
【化72-2】
【0223】
実施例S100:
【化73】
28.1g(100ミリモル)の2-フェニル-5-[4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン[879291-27-7]、28.2g(100ミリモル)の1-ブロモ-2-ヨードベンゼン[583-55-1]、31.8g(300ミリモル)の炭酸ナトリウム、787mg(3ミリモル)のトリフェニルホスフィン、225mg(1ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、300mlのトルエン、150mlのエタノールおよび300mlの水からなる混合物を、還流下で24時間加熱した。冷却後、混合物を500mlのトルエンで増量し、そして有機相を分離し、500mlの水で1回および500mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒の除去後、残留物を酢酸エチル/n-ヘプタンから再結晶させるか、またはシリカゲル(トルエン/酢酸エチル、9:1 v/v)上でクロマトグラフィーにかけた。収量:22.7g(73ミリモル)、73%。純度:H-NMRにより約97%。
【0224】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができる:
【化74-1】
【化74-2】
【0225】
実施例S200:
【化75】
36.5g(100ミリモル)の2,2’-[5-(クロロ)-1,3-フェニレン]ビス[4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン[1417036-49-7]、65.2g(210ミリモル)のS100、42.4g(400ミリモル)の炭酸ナトリウム、1.57g(6ミリモル)のトリフェニルホスフィン、500mg(2ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、500mlのトルエン、200mlのエタノールおよび500mlの水からなる、よく撹拌した混合物を、還流下で48時間加熱した。冷却後、混合物を500mlのトルエンで増量し、そして有機相を分離し、500mlの水で1回および500mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いでトルエンスラリーの形でセライト床を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去した後、残留物を、必要に応じて、酢酸エチルを加えて、アセトニトリルから再結晶させた。収量:39.4g(69ミリモル)、69%。純度:H-NMRにより約95%。
【0226】
粗生成物は、クロマトグラフィー(アクセルセムラウ(Axel Semrau)社製、トレントコンビフラッシュ(Torrent Combi Flash))により精製することができる。
【0227】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができる:
【化76-1】
【化76-2】
【0228】
実施例S300:
【化77】
57.1g(100ミリモル)のS200、27.9g(110ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボラン[73183-34-3]、29.4g(300ミリモル)の酢酸カリウム、534mg(1.3ミリモル)のSPhoss[657408-07-6]、225mg(1ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、100gのガラスビーズ(直径3mm)および500mlの1,4-ジオキサンからなる混合物を、還流下で16時間加熱した。冷却後、減圧下で懸濁液から1,4-ジオキサンを除去し、そして残留物を500mlの酢酸エチルに取り、300mlの水で2回および200mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いでスラリーの形でセライト床を通して濾過し、これを少量の酢酸エチルで洗浄した。濾液を濃縮乾固し、そして酢酸エチル/メタノールから再結晶させた。収量:53.7g(81ミリモル)、81%。純度:H-NMRにより約97%。
【0229】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができる:
【化78-1】
【化78-2】
【0230】
2.2 六座配位子Lの製造:
実施例L1:
【化79】
54.1g(100ミリモル)の1,3,5-トリス(2-ブロモフェニル)ベンゼン[380626-56-2]、98.4g(350ミリモル)の2-フェニル-5-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ピリジン、106.0g(1モル)の炭酸ナトリウム、5.8g(5ミリモル)のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)、750mlのトルエン、200mlのエタノールおよび500mlの水からなる混合物を、還流下で非常に激しく撹拌しながら24時間加熱した。24時間後、300mlの5重量%アセチルシステイン水溶液を加え、混合物を還流下でさらに16時間撹拌し、そして放冷し、水相を分離し、そして有機相を乾燥状態まで濃縮させた。鈴木カップリングからの有機相を濃縮した後、褐色の泡をジクロロメタン:酢酸エチル(8:1 v/v)の混合物300ml中に取り、そして褐色の成分を除去するために、ジクロロメタン:酢酸エチル(8:1 v/v)のスラリーの形で、シリカゲル床(直径15cm、長さ20cm)を通して濾過した。濃縮後、残りの泡を、沸騰状態の400mlのメタノールを加えながら800mlの酢酸エチルから、次いで、二度目に1000mlの純粋な酢酸エチルから再結晶させ、次いで、高真空中(p:約5mbar、T:280℃)でクーゲルロールを用いて昇華させた。収量:50.6g(66ミリモル)、66%。純度:H-NMRにより約99.7%。
【0231】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができ、その際、精製はまた、クロマトグラフィー(例えば、アクセルセムラウ社製、トレントコンビフラッシュ)により行うことができる:
【化80-1】
【化80-2】
【0232】
実施例L100:
【化81】
66.3g(100ミリモル)のS300、43.4g(105ミリモル)のS101、63.7g(300ミリモル)のリン酸三カリウム、1.23g(3ミリモル)のSPhos[657408-07-6]、449mg(2ミリモル)の酢酸パラジウム(II)、500mlのトルエン、300mlのジオキサンおよび300mlの水からなる混合物を、還流下6時間加熱した。冷却後、有機相を分離し、300mlの水で2回および200mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、次いで、トルエンスラリーの形で、セライト床を通して濾過し、これをトルエンで洗浄した。濾液を乾燥状態まで濃縮し、そして残留物を酢酸エチル/メタノールから2回再結晶させた。収量:58.8g(66ミリモル)、66%。純度:H-NMRにより約97%。
【0233】
類似の方法で、以下の化合物を合成することができる:
【化82-1】
【化82-2】
【化82-3】
【化82-4】
【0234】
2.3 単核金属錯体の製造:
実施例Ir(L1):
【化83】
7.66g(10ミリモル)の配位子L1、4.90g(10ミリモル)のトリスアセチルアセトナートイリジウム(III)[15635-87-7]および120gのハイドロキノン[123-31-9]からなる混合物を、最初に、ガラスで被覆された磁気コアを備えた、500mlの二口丸底フラスコに充填した。フラスコには、(水よりも低い密度の媒体用)水分離器、およびアルゴンを充填した空気冷却器を具備した。フラスコを金属加熱浴に配置した。この装置を、二口フラスコの側口からアルゴンを流出させながら、アルゴン充填システムを介して上方から15分間アルゴンでパージした。二口フラスコの側口を通して、ガラスで被覆されたPt-100熱電対をフラスコ内に導入し、そしてその端部を磁気スターラーコアのすぐ上に配置した。次に、この装置を家庭用アルミニウム箔のいくつかの巻き緩みで熱的に遮断し、この遮断は、水分離器の上昇管の中央まで行なった。次いで、この装置を、加熱した実験室用スターラーシステムを用いて、250~260℃(攪拌された溶融反応混合物中に浸漬したPt-100熱センサーで測定した)に急速に加熱した。次の1.5時間にわたって反応混合物を250-260℃に保ち、その間に、少量の凝縮物を留去させ、水分離器に集めた。冷却後、溶融ケーキを機械的に粉砕し、500mlのメタノールと共に沸騰させることにより抽出した。このようにして得られたベージュ色の懸濁液を、両頭フリットを通して濾過し、そしてベージュ色の固体を50mlのメタノールで1回洗浄し、次いで減圧下で乾燥させた。粗収量:定量的。このようにして得られた固体を1500mlのジクロロメタンに溶解させ、暗中で空気を排除して、ジクロロメタンスラリー(カラムの直径:約18cm)の形で約1Kgのシリカゲルを通して濾過したところ、最初に暗色の成分が残った。コア分画を切り取り、そして結晶化するまで、同時連続的にメタノールを滴下しながら、ロータリーエバポレーター上で十分に濃縮した。吸引除去した後、少量のMeOHで洗浄し、次いで減圧下で乾燥させ、黄色の生成物をさらに、空気と光を注意深く排除して、トルエン/アセトニトリル(3:1 v/v)で3回およびトルエンで5回の連続的熱抽出(各場合における当初導入量:約150ml、円筒濾紙:ワットマン(Whatman)社製、セルロースの標準ソックスレーシンブル)により精製した。収量:8:52g(8.9ミリモル)、89%。純度:HPLCにより>99.9%。
【0235】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化84-1】
【化84-2】
【0236】
2.4 単核金属錯体のハロゲン化:
一般的な手法:
金属錯体の溶解度により、500ml~2000mlのジクロロメタン中、イリジウムに対してパラ位にA個のC-H基を有する、10ミリモルの錯体の、溶液もしくは懸濁液に、暗中、空気の排除下、-30~+30℃で、Ax10.5ミリモルのN-ハロサクシンイミド(ハロゲン:Cl、Br、I;A=1は、モノハロゲン化に相当、A=2はジハロゲン化に対応し、A=3は、トリハロゲン化に相当)を加え、そして混合物を20時間撹拌した。DCMに難溶性の錯体については、他の溶媒(TCE、THF、DMF、クロロベンゼン等)中で、かつ、高温で変換させることもできる。次いで、減圧下で溶媒を十分に除去した。残留物を、100mlのメタノールと共に沸騰させることにより抽出し、そして固体を吸引濾過し、約30mlのメタノールで3回洗浄し、次いで減圧下で乾燥させた。準化学量論的な臭素化、例えば、イリジウムに対してパラ位に3つのC-H基を有する錯体のモノ-およびジ臭素化は、通常、化学量論的な臭素化よりも非選択的に進む。これらの臭素化の粗生成物は、クロマトグラフィー(A.サムラウ社製、コンビフラッシュトレント)により、または分別晶析により分離することができる。
【0237】
実施例Ir(L1-3Br):
【化85】
0℃で撹拌された、2000mlのジクロロメタン(DCM)中、9.6g(10ミリモル)のIr(L1)の懸濁液に、5.6g(31.5ミリモル)のN-ブロモサクシンイミドを一度に添加し、次いで、混合物をさらに20時間撹拌した。減圧下で約1900mlのDCMを除去した後、黄色の懸濁液に100mlのメタノールを加え、これを撹拌しながら沸騰させ、そして固体を吸引濾過し、約30mlのメタノールで3回洗浄し、次いで減圧下で乾燥させた。収量:11.3g(9.5ミリモル)、95%。純度:NMRにより>99.0%。
【0238】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化86-1】
【化86-2】
【化86-3】
【化86-4】
【化86-5】
【化86-6】
【化86-7】
【化86-8】
【0239】
2.5 臭素官能基を有する単核金属錯体のホウ素化:
10ミリモルの臭素化された錯体、臭素官能基当たり12ミリモルのビス(ピナコラート)ジボラン[73183-34-3]、臭素官能基当たり30ミリモルの無水酢酸カリウム、0.2ミリモルのトリシクロヘキシルホスフィン、0.1ミリモルの酢酸パラジウム(II)(バリアントA)または0.2ミリモルのdppfPdCl*CHCl[95464-05-4](バリアントB)および300mlの溶媒(ジオキサン、DMSO、NMP、トルエン等)からなる混合物を、80~160℃で4~16時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残留物を300mlのジクロロメタン、THFまたは酢酸エチルに取り、セライト床を通して濾過し、濾液を減圧下で結晶化開始まで濃縮し、そして結晶化を完了させるため約100mlのメタノールを最終的に滴加した。この化合物は、メタノールの添加下、ジクロロメタン、酢酸エチルまたはTHFから再結晶することができる。
【0240】
Ir(L1-3BE)-バリアントAの合成:
【化87】
11.9g(10ミリモル)のIr(L1-3Br)および9.1g(36ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボロン[73183-34-3]の使用、ジオキサン/トルエン(1:1 v/v)、120℃、16時間、取り出しおよびTHF中でのセライト濾過、THF:メタノールからの再結晶。収量:7.3g(5.5ミリモル)、55%。純度:HPLCにより約99.8%。
【0241】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化88-1】
【化88-2】
【化88-3】
【化88-4】
【化88-5】
【0242】
2.6 ホウ素化した金属錯体のクロロブロモ芳香族化合物との鈴木カップリング
ボロン酸エステル官能基当たり、1当量の金属ボロン酸エステル、1.0~1.1当量のクロロブロモ芳香族化合物、3当量のリン酸三カリウム[7778-53-2]、300mlのトルエン、100mlのジオキサンおよび100mlの水からなる混合物に、ボロン酸エステル官能基当たり、0.06当量のトリ-o-トリルホスフィン[6163-58-2]および0.01当量の酢酸パラジウム(II)[3975-31-3]を加え、そして混合物を還流下で18時間よく攪拌した。冷却後、沈殿した固体を吸引濾過した。固体の沈殿物が析出しない場合には、有機相を分離し、各回300mlの水で2回および300mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、そして硫酸マグネシウム上で乾燥させ、この硫酸マグネシウムをセライト床によりトルエンスラリーの形で濾過し、そして濾液を乾燥状態まで濃縮した。このようにして得られた粗生成物を再結晶、クロマトグラフィーもしくはフラッシュクロマトグラフィー(アクセルセムラウ社製、コンビフラッシュトレント)により精製した。さらなる精製は、繰り返しの連続的熱抽出によって行ったが、その際には、生成物を熱い抽出器中でセルロースシンブル(ワットマン社製)に導入し、そして適当な熱い抽出剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ジクロロメタン等、(初期量:約150~200ml)で、>99.0%の純度が得られるまで、繰り返し(典型的には2回)熱抽出した。
【0243】
Ir(L200-2Cl)の合成:
【化89】
5.9g(22ミリモル)の4’-ブロモ-3-クロロ-1,1’-ビフェニル[91354-09-5]、12.4g(10ミリモル)のIr(L100-2BE)、12.7g(60ミリモル)のリン酸三カリウム、365mg(1.2ミリモル)のトリ-o-トリルホスフィンおよび45mg(0.2ミリモル)の酢酸パラジウム(II)を使用。DCMを用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製、およびその後、トルエンを用いた2回の熱抽出。収量:9.2g(6.3ミリモル)、63%。純度:HPLCにより約99.5%。
【0244】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化90-1】
【化90-2】
【化90-3】
【0245】
2.7 塩素官能基を有する単核金属錯体のホウ素化:
10ミリモルの、塩素官能基を有する錯体、塩素官能基当たり11ミリモルのビス(ピナコラ-ト)ジボラン[73183-34-3]、塩素官能基当たり30ミリモルの無水酢酸カリウム、0.13ミリモルのSPhos、0.1ミリモルの酢酸パラジウム(II)および300mlの溶媒(ジオキサン、DMSO、NMP、トルエン等)からなる混合物を、80~160℃で4~16時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、残留物を300mlのジクロロメタン、THFもしくは酢酸エチルに取り、次いでセライト床を通して濾過し、濾液を、結晶化の開始まで減圧下で濃縮し、結晶化を完了させるため、最終的に約100mlのメタノールを滴加した。この化合物は、メタノールの添加下、ジクロロメタン、酢酸エチルまたはTHFから再結晶することができる。
【0246】
Ir(L200-2BE)の合成:
【化91】
ジオキサン300ml中の、12.4g(10ミリモル)のIr(L200-2Cl)および5.6g(22ミリモル)のビス(ピナコラート)ジボラン[73183-34-3]を使用し、そして120℃で16時間撹拌した。残留物をDMCに取り、セライトを通して濾過した。さらなる精製は、酢酸エチル/メタノールからの再結晶によって行った。収量:14.9g(9.1ミリモル)、91%。純度:HPLCにより約99%。
【0247】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化92-1】
【化92-2】
【化92-3】
【0248】
3.本発明に係る金属錯体の製造:
生成物の正式な命名:
以下の実施例では、本発明に係る金属錯体は、連続的に番号付けされる。さらに、各錯体は、対応するモル比で、反応に用いられた単位から生じる式によって記載される。連結の位置、従って構造は、反応性基の位置によって決定される。
【0249】
カップリング反応の一般的な例を用いた命名:
【化93】
【0250】
立体化学:
典型的には、単核錯体合成単位はΔおよびΛ異性体のラセミ体の形で使用される。これは、本発明の多核化合物におけるジアステレオマー混合物、例えば、二核化合物に対するΔ,Δ/Λ,Λおよび(メソ)Δ,Λ型をもたらす。特に明記しない限り、これらは、変換され、もしくはさらにジアステレオマー混合物として使用される。また、クロマトグラフィー法により、または分別晶析によりこれらを分離することができる。
【0251】
3.1 臭素化された金属錯体とボロン酸との鈴木カップリングによる
バリアントA:二相性の水性-有機媒体中での鈴木カップリング
臭素化された錯体とボロン酸とのモル比は以下の表に見出すことができる。臭素化された金属錯体とボロン酸エステル、臭素官能基当たり3当量のリン酸三カリウム[7778-53-2]、300mlのトルエン、100mlのジオキサンおよび100mlの水からなる混合物に、臭素官能基当たり、0.06当量のトリ-o-トリルホスフィン[6163-58-2]および0.01当量の酢酸パラジウム(II)[3975-31-3]を加え、そして混合物を還流下で18時間よく撹拌した。冷却後、沈殿した固体を吸引濾過した。固体の沈殿物が析出しない場合には、有機相を分離し、各回300mlの水で2回および300mlの飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、そして硫酸マグネシウム上で乾燥させ、この硫酸マグネシウムを濾過し、そして濾液を乾燥状態まで濃縮した。このようにして得られた粗生成物をクロマトグラフィーもしくはフラッシュクロマトグラフィー(アクセルセムラウ社製、コンビフラッシュトレント)により精製した。さらなる精製は、繰り返しの連続的熱抽出によって行ったが、その際には、生成物を熱い抽出器中でセルロースシンブル(ワットマン社製)に導入し、そして適当な熱い抽出剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン、アニソール、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ジクロロメタン等、(初期量:約150~200ml)で、>99.5%、好ましくは>99.9%の純度が得られるまで、繰り返し(典型的には3~6回)熱抽出した。
【0252】
バリアントB:単相の双極性非プロトン性媒体中での鈴木カップリング
臭素化された錯体とボロン酸とのモル比は以下の表に見出すことができる。臭素化された金属錯体とボロン酸エステル、臭素官能基当たり3当量のリン酸三カリウム三水和物[22763-03-7]および200mlのDMSOからなる混合物に、臭素官能基当たり0.01当量のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)[14221-01-3〕および50gのガラスビーズ(直径3ミリメートル)を加え、そして混合物を80℃で18時間、十分に撹拌した。冷却後、DMSOを減圧下で十分に除去し、残留物を1000mlのジクロロメタンに取り、次いでジクロロメタンスラリーの形でシリカゲル床を通して濾過し、この床を500mlのジクロロメタンで洗浄し、次いで減圧下で有機相を乾燥状態まで濃縮した。このようにして得られた粗生成物のさらなる精製は、Aに記載したように行なった。
【0253】
バリアントC:塩素官能基を有する錯体のカップリング
使用された触媒系が、塩素官能基当たり、0.026当量のSPhos[657408-07-6]および0.02当量の酢酸パラジウム(II)であることを除いて、バリアント2と同様の手法。
【0254】
実施例Ir100:Ir100=Ir(L1)-Ir(L1)
【化94】
バリアントBに従った手法。10.34g(10.0ミリモル)のIr(L1-1Br)、10.81g(10ミリモル)の(L1-1BE)、8.0g(30ミリモル)のリン酸三カリウム三水和物、116mg(0.1ミリモル)のテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(0)の使用。5回のクロロベンゼンからの熱抽出。収量:7.44g(3.9ミリモル)、39%。純度:HPLCにより>99.8%。
【0255】
類似の方法で、以下の化合物を製造することができる:
【化95-1】
【化95-2】
【化95-3】
【化95-4】
【化95-5】
【0256】
5)オリゴマーおよびポリマー金属錯体
重合性基としての臭化物またはボロン酸誘導体のための一般的な重合法、鈴木重合
バリアントA:二相性の反応混合物
手法は、不活性条件下、注意深く脱気した溶媒を用いて、WO2002/077060およびWO2003/048225に従った。モノマー(臭化物およびボロン酸またはボロン酸エステル、HPLCによる純度は>99.8%)を、3容積部のトルエン:6容積部のジオキサン:2容積部の水からなる混合物中での全体の濃度が約100ミリモル/lである、表に示された組成に変更した。モノマーM1およびモノマーM3は、常に当初に完全に充填された。次いで、全体で使用された臭素官能基当たり2モル当量のリン酸三カリウムを加え、混合物をさらに5分間攪拌し、使用された臭素官能基当たり、0.06モル当量のトリ-オルトトリルホスフィンを、次いで0.01モル当量の酢酸パラジウム(II)を加え、そして混合物を非常に激しく撹拌しながら還流下で加熱した。1時間後、表に従う残りのモノマーを全て一度に加え、そして還流下でさらに4時間加熱した。混合物の粘度が急激に上がり過ぎた場合、2容量部のトルエンと3容量部のジオキサンの混合物による希釈が可能である。4~6時間の全反応時間の後、エンドキャッピングのために、使用されたボロン酸官能基当たり0.05モル当量のモノブロモ芳香族化合物、3-ブロモビフェニル[2113-57-7]をここで、次いで30分後に、使用された臭素官能基当たり0.05モル当量のモノボロン酸またはモノボロン酸エステル、3-ビフェニルボロン酸ピナコールエステル[912844-88-3]をここで加え、そして混合物をさらに1時間煮沸させた。冷却後、混合物を500mlのトルエンで希釈し、水性相を分離し、そして有機相を各回300mlの水で2回洗浄した。有機相を、5重量%濃度のN-アセチルシステイン水溶液300mlと共に、80℃で16時間撹拌し、そして有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、セライト床を通して濾過し、次いで濃縮乾固させた。粗ポリマーをTHF中に溶解させ(約10~30g/lの濃度)、そしてこの溶液を、非常に激しい攪拌下で2倍量のメタノール中にゆっくりと移し入れた。ポリマーを吸引濾過し、メタノールで3回洗浄し、乾燥させた。再沈殿操作を5回繰り返し、次いでポリマーを、30~50℃で一定重量となるまで減圧下で乾燥させた。
【0257】
バリアントB-単相の反応混合物
モノマー(臭化物およびボロン酸もしくはボロン酸エステル、HPLCによる純度は>99.8%)を、溶剤(THF、ジオキサン、キシレン、メシチレン、ジメチルアセトアミド、NMP、DMSO等)中での全体の濃度が約100ミリモル/lである、表に示された組成に溶解または懸濁させた。次いで、臭素官能基当たり3モル当量の塩基(各々無水の形で、フッ化カリウム、リン酸三カリウム(無水、一水和物もしくは三水和物)、炭酸カリウム、炭酸セシウム等)および等重量のガラスビーズ(直径3mm)を添加し、混合物をさらに5分間攪拌し、臭素官能基当たり、0.03~0.003モル当量のトリ-オルト-トリルホスフィンを、次いで0.005~0.0005モル当量の酢酸パラジウム(II)(Pdに対するホスフィンの比は、好ましくは6:1)を添加し、そして混合物を80℃まで加熱し、2~3時間非常に激しく攪拌しながら還流させた。あるいは、例えば、トリ-tert-ブチルホスフィン、SPhos、XPhos、RuPhos、XanthPhos等の他のホスフィンを使用することができるが、これらのホスフィンの場合、好ましいホスフィン:パラジウムの比は、2:1~1.3:1である。4-12時間の全反応時間の後、エンドキャッピングのために、0.05モル当量のモノブロモ芳香族化合物(上記参照)、次いで30分後に、0.05モル当量のモノボロン酸もしくはモノボロン酸エステル(上記参照)を加え、次いで混合物をさらに1時間煮沸させた。溶媒を減圧下で十分に除去し、残留物をトルエンに取り、バリアントAの下に記載されているように、ポリマーを精製した。
【0258】
オリゴマー/ポリマーP、およびモノマーM1~M5で構成される、その組成、数字はミリモル:
【化96】
【0259】
実施例:OLED素子の製造
A:低分子量で可溶性の機能材料に基づく、溶液処理された素子
本発明に係るイリジウム錯体は、溶液から処理することができ、良好な特性を有するOLEDをもたらすものである。このような構成要素の製造は、高分子発光ダイオード(PLED)の製造に基づいており、これは既に何度も文献(例えば、WO2004/037887)に記載されている。その構造は、基板/ITO/正孔注入層(60nm)/中間層(20nm)/発光層(60nm)/正孔ブロック層(10nm)/電子輸送層(40nm)/カソードからなる。この目的のために、ITO構造(酸化インジウムスズ、透明導電性アノード)が設けられたテクノプリント(Technoprint)社製の基板(ソーダ石灰ガラス)が使用される。基板を、クリーンルーム内で脱イオン水および洗浄剤(Deconex 15PF)で洗浄し、次いでUV/オゾンプラズマ処理によって活性化させる。その後、同様にクリーンルーム内で、20nmの正孔注入層をスピンコーティングにより塗布する。要求されるスピン速度は、希釈の程度および具体的なスピンコーターの幾何学的形状に依存する。層から残留水分を除去するために、基板をホットプレート上で、200℃で30分間焼成する。使用される中間層は正孔輸送の役割を果たし、この場合、メルク(Merck)社製のHLXが使用される。あるいは、この中間層は、その後の溶液からEMLを堆積する処理工程によって再び脱離しないという条件を単に満たさなければならない1つ以上の層で置き換えることもできる。発光層の製造のために、本発明に係る三重項発光体は、マトリックス材料とともにトルエンまたはクロロベンゼンに溶解される。このような溶液の通常の固形分は、スピンコーティングにより、素子が通常の層厚約60nmを得る場合のタイプ1および2の素子について16~25g/lであり、また、素子が通常の層厚約40nmを得る場合のタイプ3の素子について10~15g/lである。溶液処理したタイプ1の素子は、M1:M2:IrL(20%:60%:20%)からなる発光層を含み、タイプ2の素子は、M1:M2:IrLa:IrLb(30%:35%:30%:5%)からなる発光層を含み、すなわち、それらは2つの異なるIr錯体を含み、そしてタイプ3の素子はM1:IrL(40%:60%)からなる発光層を含む。発光層を、不活性ガス雰囲気中、本件の場合ではアルゴン中でスピンオンし、そして160℃で10分間焼成する。その上に、正孔ブロック層(10nmのETM1)および電子輸送層(40nmの、ETM1(50%)/ETM2(50%))を蒸着する(レスカー(Lesker)社製等の蒸着装置、通常の蒸着圧力:5×10-6mbar)。最後に、アルミニウム(100nm)(アルドリッチ(Aldrich)社製の高純度金属)のカソードを蒸着によって設ける。素子を空気および空気の湿気から保護するために、素子を最終的にカプセル化し、次いで特徴付ける。挙げられているOLEDの例はまだ最適化されていない。表1は、得られたデータをまとめたものである。
【表1】
【0260】
発光体Ir113、Ir201、Ir202、Ir203、Ir209、Ir304およびIrP8を用いて、上述した実施例と同様にして、EQE、電圧、CIEおよびLD50に関して、表1に表示されているものと同等の性能データを有する、オレンジ-から赤色-の発光性素子を得ることができる。
【0261】
発光体Ir100、Ir102、Ir104、Ir105、Ir109、Ir110、Ir111、Ir112、Ir114、Ir200、Ir205、Ir206、Ir207、Ir208、Ir300、Ir301、Ir302、LrP1、LrP2、LrP5、LrP6およびlrP7を用いて、上述した実施例と同様にして、EQE、電圧、CIEおよびLD50に関して、表1に表示されているものと同等の性能データを有する、黄色-から緑色-の発光性素子を得ることができる。
【表2-1】
【表2-2】