(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】感光性転写材料、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/09 20060101AFI20220228BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220228BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20220228BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20220228BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220228BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220228BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G03F7/09 501
G03F7/004 512
G03F7/023 511
G03F7/039 601
B32B7/06
B32B27/00 Z
H05K3/06 J
(21)【出願番号】P 2019544987
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2018034500
(87)【国際公開番号】W WO2019065373
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2017190833
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018168471
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】両角 一真
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】宮宅 一仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀之
(72)【発明者】
【氏名】漢那 慎一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、
酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を含有する重合体及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂層と、を有し、
前記仮支持体と前記感光性樹脂層との間に、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層を少なくとも1層有し、
前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、変性ポリオレフィンを含有する層であるとき、前記変性ポリオレフィンが、酸変性ポリオレフィンである
感光性転写材料。
【請求項2】
前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層の膜厚が10nm以上500nm以下である、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、ウレタン化合物を含有する層である場合、前記ウレタン化合物を含有する層の全体積に対するイソシアネート基含有量が0.01mol/m
3~0.40mol/m
3である、請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記仮支持体と前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層とが接しており、前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層と前記仮支持体との密着力が0.22N/cm以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、ウレタン化合物を含有する層である場合、前記ウレタン化合物を含有する層に含まれるウレタン化合物が、アルキレンジイソシアネート化合物とジオール化合物とを少なくとも反応させた反応物を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位が、下記式A1で表される構成単位である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【化1】
式A1中、R
31及びR
32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR
31及びR
32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R
33はアルキル基又はアリール基を表し、R
31又はR
32と、R
33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R
34は水素原子又はメチル基を表し、X
0は単結合又はアリーレン基を表す。
【請求項7】
基板に対し、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を前記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程後の前記感光性転写材料の前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記露光する工程後の感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、
回路配線の製造方法。
【請求項8】
基板に対し、請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の感光性転写材料の感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を前記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記貼り合わせる工程後の前記感光性転写材料の前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記露光する工程後の感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、回路配線の製造方法及びタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置等(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置や液晶表示装置など)においては、視認部のセンサーに相当する電極パターンや周辺配線部分や取り出し配線部分の配線などの回路配線がタッチパネル内部に設けられている。
このような、パターン化した回路配線の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといった理由から、ドライフィルムレジストを感光性転写材料として用いることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支持体と、熱可塑性樹脂層と、感光性樹脂層とをこの順で有し、上記感光性樹脂層が(A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位(a1)を有する重合体を含む重合体成分および(B)光酸発生剤を含むことを特徴とする感光性転写材料が記載されている。
特許文献2には、仮支持体上にレジスト層を有するポジ型ドライフィルムレジストであり、上記仮支持体の全光線ヘイズが0.3%以下であるドライフィルムレジストが記載されている。
【0004】
特許文献1:特開2014-085643号公報
特許文献2:特開2017-078852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2には、感光性転写材料の仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を形成することにより、転写性を改良することが記載されている。
しかし、本発明者らは、特許文献1及び特許文献2に記載の方法には、仮支持体の密着性(以下、単に「密着性」ともいう。)及び感光性樹脂層の転写性(以下、単に「転写性」ともいう。)に更なる向上の余地があることを見出した。
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、密着性及び転写性に優れた感光性転写材料を提供することである。
また、本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、上記感光性転写材料を用いた回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体と、
酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を含有する重合体及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂層と、を有し、
上記仮支持体と上記感光性樹脂層との間に、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層を少なくとも1層有する
感光性転写材料。
<2> 上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層の膜厚が10nm以上500nm以下である、<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、ウレタン化合物を含有する層である場合、上記ウレタン化合物を含有する層の全体積に対するイソシアネート基含有量が0.01mol/m3~0.40mol/m3である、<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記仮支持体と上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層とが接しており、上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層と上記仮支持体との密着力が0.22N/cm以上である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<5> 上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、ウレタン化合物を含有する層である場合、上記ウレタン化合物を含有する層に含まれるウレタン化合物が、アルキレンジイソシアネート化合物とジオール化合物とを少なくとも反応させた反応物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層が、変性ポリオレフィンを含有する層であるとき、上記変性ポリオレフィンが、酸変性ポリオレフィンである、<1>、<2>又は<4>に記載の感光性転写材料。
<7> 上記酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位が、下記式A1で表される構成単位である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
【0008】
【0009】
式A1中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、X0は単結合又はアリーレン基を表す。
【0010】
<8> 基板に対し、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記露光する工程後の感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
上記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、
回路配線の製造方法。
<9> 基板に対し、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記露光する工程後の感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
上記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含む、
タッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、密着性及び転写性に優れた感光性転写材料を提供することができる。
また、本発明の別の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本開示に係る感光性転写材料を用いたタッチパネル用回路配線の製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0014】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を含有する重合体及び光酸発生剤を含有する感光性樹脂層と、を有し、
上記仮支持体と上記感光性樹脂層との間に、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層(以下、「特定層」ともいう。)を少なくとも1層有する。
【0015】
例えば、感光性転写材料においては、基板に転写を行い、感光性樹脂層、仮支持体及び基板を含む構造体を作製した後に、上記構造体が切断される場合がある。
本発明者らは、感光性転写材料における仮支持体の密着力が低い場合、上記切断により仮支持体が部分的に剥離してしまい、仮支持体の浮き等が発生してしまう場合があることを見出した。本開示において、切断時等に仮支持体の浮き等の発生が抑制されることを、「仮支持体の密着性に優れる」という。上記浮き等が発生した部位においては、露光等が困難となる場合がある。
また、上記密着性が高すぎる場合、仮支持体を剥離した際に、感光性樹脂層が持ち上げられて、感光性樹脂層と基材の間が密着できなくなってしまう等の理由により、感光性樹脂層の転写面積が小さくなってしまう場合があることを見出した。本開示において、転写時の転写面積が大きいことを「感光性樹脂層の転写性に優れる」という。
このように、感光性転写材料においては、密着性と転写性という、相反する性能を両立することが要求されていると考えられる。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、上記仮支持体と上記感光性樹脂層との間に、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層を少なくとも1層有することにより、密着性及び転写性に優れた感光性転写材料が得られることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層は、層中のウレタン化合物及び変性ポリオレフィンが、炭化水素基やポリオレフィンなどの疎水部と、ウレタン結合や変性された酸基などの非疎水部との両方を併せ持つために、感光性樹脂層や後述する中間層との相互作用が適切に保たれ、密着性及び転写性に優れると推測される。特に、特定層がウレタン化合物を有する場合には、残存していてもよいイソシアネート基と、感光性樹脂層との相互作用により、仮支持体の密着力が適切な値となり、密着性及び転写性に優れると推測される。
【0016】
以下、本開示に係る感光性転写材料について、詳細に説明する。
図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を概略的に示している。
図1に示す感光性転写材料100は、仮支持体10と、特定層14と、感光性樹脂層12と、カバーフィルム16とがこの順に積層されている。
感光性樹脂層12は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含有する。
特定層14は、後述するウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含む層である。
以下、本開示に係る感光性転写材料の構成材料等について説明する。なお、本開示における上記構成について本明細書では以下のように称する場合がある。
酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体を「重合体A1」と称する場合がある。
上記感光性樹脂層は、ポジ型の感光性樹脂層であり、「ポジ型感光性樹脂層」と称する場合がある。
【0017】
<仮支持体>
仮支持体は、感光性樹脂層及び特定層を支持し、特定層、又は、特定層と仮支持体との間に存在する他の層から剥離可能な支持体である。
本開示に用いられる仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する際に仮支持体を介して感光性樹脂層を露光し得る観点から、光透過性を有することが好ましい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0018】
また、仮支持体は、未延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルムであることが好ましい。
延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよいし、三軸延伸等の多軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
中でも、二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0019】
仮支持体の厚みは、特に限定されず、取扱い易さ、汎用性などの点で、5μm~200μmの範囲が好ましく、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
仮支持体の厚みは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
【0020】
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0021】
<感光性樹脂層>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体上に、感光性樹脂層を有し、上記感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体A1と、光酸発生剤とを含む。
また、本開示における感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層であり、化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることが好ましい。
後述するオニウム塩やオキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤は、活性放射線(活性光線)に感応して生成される酸が、上記重合体A1中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
一方、活性放射線に感応する光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いた場合、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下であり、化学増幅型には該当しない。
【0022】
〔酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体を含む重合体A1〕
上記感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(「構成単位A」ともいう。)を有する重合体A1(単に「重合体A1」ともいう。)を含む。
また、上記感光性樹脂層は、構成単位Aを有する重合体A1に加え、他の重合体を含んでいてもよい。本開示においては、構成単位Aを有する重合体A1及び他の重合体をあわせて、「重合体成分」ともいう。
上記重合体A1は、露光により生じる触媒量の酸性物質の作用により、重合体A1中の酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aが脱保護反応を受け酸基となる。この酸基により、現像液への溶解が可能となる。
以下に構成単位Aの好ましい態様について説明する。
【0023】
上記感光性樹脂層は、更に、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体A1以外の重合体を含んでいてもよい。
また、上記重合体成分に含まれる全ての重合体がそれぞれ、後述する酸基を有する構成単位を少なくとも有する重合体であることが好ましい。
また、上記感光性樹脂層は、更に、これら以外の重合体を含んでいてもよい。本開示における上記重合体成分は、特に述べない限り、必要に応じて添加される他の重合体を含めたものを意味するものとする。なお、後述する架橋剤及び分散剤に該当する化合物は、高分子化合物であっても、上記重合体成分に含まないものとする。
【0024】
重合体A1は、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンに由来する構成単位や、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
【0025】
上記感光性樹脂層は、パターン形状の変形抑制、現像液への溶解性及び転写性の観点から、重合体成分として、上記構成単位Aとして下記式A1で表される構成単位を有する重合体を含むことが好まし重合体成分として、上記構成単位Aとして下記式A1で表される構成単位、及び、後述する酸基を有する構成単位Bを有する重合体A1を含むことが更に好ましい。
上記感光性樹脂層に含まれる重合体A1は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0026】
-構成単位A-
上記重合体成分は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aを少なくとも有する重合体A1を含む。上記重合体成分が構成単位Aを有する重合体を含むことにより、極めて高感度な化学増幅ポジ型の感光性樹脂層とすることができる。
本開示における「酸分解性基で保護された酸基」は、酸基及び酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な酸基としては、カルボキシル基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性基で保護された酸基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、式A1で表される基で保護されたエステル基、テトラヒドロピラニルエステル基、又は、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール系官能基)や酸により比較的分解し難い基(例えば、tert-ブチルエステル基等の第三級アルキル基、tert-ブチルカーボネート基等の第三級アルキルカーボネート基)を用いることができる。
これらの中でも、上記酸分解性基としては、アセタールの形で保護された構造を有する基であることが好ましい。
【0027】
<<構成単位A1>>
上記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aは、感度及び解像度の観点から、下記式A1で表される構成単位であることが好ましい。
【0028】
【0029】
式A1中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、X0は単結合又はアリーレン基を表す。
【0030】
式A1中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R31及びR32は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A1中、R33は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R31~R33におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A1中、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A1中、X0は単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
上記式A1で表される構成単位は、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。重合体A1が式A1で表される構成単位を含むことで、パターン形成時の感度に優れ、また、解像度より優れる。
【0031】
式A1中、R34は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる式A1で表される構成単位の全量に対し、式AにおけるR34が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、式A1で表される構成単位中の、式A1におけるR34が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0032】
<<構成単位A2>>
式A1で表される構成単位の中でも、下記式A2で表される構成単位が、パターン形成時の感度を更に高める観点からより好ましい。
【0033】
【0034】
式A2中、R34は水素原子又はメチル基を表し、R35~R41はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
式A2中、R34は水素原子が好ましい。
式A2中、R35~R41は、水素原子が好ましい。
【0035】
式A1で表される、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、R34は水素原子又はメチル基を表す。
【0036】
【0037】
<<構成単位A3>>
また、上記構成単位Aとしては、パターン形状の変形抑制の観点から、下記式A3で表される構成単位が好ましい。
【0038】
【0039】
式A3中、RB1及びRB2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともRB1及びRB2のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、RB3はアルキル基又はアリール基を表し、RB1又はRB2と、RB3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、RB4は水素原子又はメチル基を表し、XBは単結合又は二価の連結基を表し、RB12は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
【0040】
式A3中、RB1又はRB2がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。RB1又はRB2がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。RB1及びRB2は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A3中、RB3は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、RB1~RB3におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、RB1又はRB2と、RB3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、RB1又はRB2と、RB3とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、XBは単結合又は二価の連結基を表し、単結合又はアルキレン基、-C(=O)O-、-C(=O)NRN-、-O-又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐を有していても環状構造を有していてもよく、置換基を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~4がより好ましい。XBが-C(=O)O-を含む場合、-C(=O)O-に含まれる炭素原子と、RB4が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。XBが-C(=O)NRN-を含む場合、-C(=O)NRN-に含まれる炭素原子と、RB4が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。RNはアルキル基又は水素原子を表し、炭素数1~4のアルキル基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
式A3中、RB1~RB3を含む基と、XBとは、互いにパラ位で結合することが好ましい。
式A3中、RB12は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A3中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0041】
式A3中、RB4は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる構成単位Aの全含有量に対し、式A3におけるRB4が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、構成単位A中の、式A3におけるRB4が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0042】
<<構成単位A4>>
式A3で表される構成単位の中でも、パターン形状の変形抑制の観点から、下記式A4で表される構成単位がより好ましい。
【0043】
【0044】
式A4中、RB4は水素原子又はメチル基を表し、RB5~RB11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、RB12は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A4中、RB4は水素原子が好ましい。
式A4中、RB5~RB11は、水素原子が好ましい。
式A4中、RB12は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A4中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0045】
式A4で表される構成単位A4の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、RB4は水素原子又はメチル基を表す。
【0046】
【0047】
重合体A1に含まれる構成単位Aは、1種であっても、2種以上であってもよい。
重合体A1における構成単位Aの含有量は、重合体A1の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
重合体A1における構成単位Aの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
また、全ての重合体成分を構成単位(モノマー単位)に分解したうえで、構成単位Aの割合は、重合体成分の全質量に対して、5質量%~80質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0048】
-構成単位B-
上記重合体A1は、酸基を有する構成単位Bを含むことが好ましい。
構成単位Bは、保護基、例えば、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有さない酸基を有する構成単位である。重合体A1が構成単位Bを含むことで、パターン形成時の感度が良好となり、パターン露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなり、現像時間の短縮化を図ることができる。
本明細書における酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。酸基は、通常、酸基を形成しうるモノマーを用いて、酸基を有する構成単位(構成単位B)として、重合体に組み込まれる。感度向上の観点から、酸基のpKaは、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
【0049】
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、スルホニルイミド基等が例示される。中でも、カルボン酸基及びフェノール性水酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基が好ましい。
重合体A1への酸基を有する構成単位の導入は、酸基を有するモノマーを共重合させること又は酸無水物構造を有するモノマーを共重合させ酸無水物を加水分解することで行うことができる。
構成単位Bである、酸基を有する構成単位は、スチレン化合物に由来する構成単位若しくはビニル化合物に由来する構成単位に対して酸基が置換した構成単位、又は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましい。具体的には、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシスチレン等が挙げられ、フェノール性水酸基を有するモノマーとしてはp-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0050】
構成単位Bとしては、カルボン酸基を有する構成単位、又は、フェノール性水酸基を有する構成単位が、パターン形成時の感度がより良好となるという観点から好ましい。
構成単位Bを形成しうる酸基を有するモノマーは既述の例に限定されない。
【0051】
重合体A1に含まれる構成単位Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
重合体A1は、重合体A1の全質量に対し、酸基を有する構成単位(構成単位B)を0.1質量%~20質量%含むことが好ましく、0.5質量%~15質量%含むことがより好ましく、1質量%~10質量%含むことが更に好ましい。上記範囲であると、パターン形成性がより良好となる。
重合体A1における構成単位Bの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0052】
-その他の構成単位-
重合体A1は、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、他の構成単位(以下、構成単位Cと称することがある。)を、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
構成単位Cを形成するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、脂肪族環式骨格を有する基、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
構成単位Cを用いて、種類及び含有量の少なくともいずれかを調整することで、重合体A1の諸特性を調整することができる。特に、構成単位Cを適切に使用することで、重合体A1のTgを容易に調整することができる。
ガラス転移温度を120℃以下とすることで、重合体A1を含有するポジ型感光性樹脂層は、転写性、仮支持体からの剥離性を良好なレベルに維持しつつ、パターン形成時の解像度及び感度がより良好となる。
重合体A1は、構成単位Cを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0053】
構成単位Cは、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又は、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどを重合して形成される構成単位を挙げることができる。その他、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載の化合物を挙げることができる。
【0054】
また、構成単位Cとしては、芳香環を有する構成単位、又は、脂肪族環式骨格を有する構成単位が、得られる転写材料の電気特性を向上させる観点で好ましい。これら構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、構成単位Cとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく挙げられる。
【0055】
また、構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、密着性の観点で好ましい。中でも、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが密着性の観点でより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0056】
構成単位Cの含有量は、重合体A1の全質量に対し、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。下限値としては、0質量%でもよいが、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上記範囲であると、解像度及び密着性がより向上する。
【0057】
重合体A1が、構成単位Cとして、上記構成単位Bにおける酸基のエステルを有する構成単位を含むことも、現像液に対する溶解性、及び、上記感光性樹脂層の物理物性を最適化する観点から好ましい。
中でも、重合体A1は、構成単位Bとして、カルボン酸基を有する構成単位を含み、更に、カルボン酸エステル基を含む構成単位Cを共重合成分として含むことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸由来の構成単位Bと、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸n-ブチル由来の構成単位(c)とを含む重合体がより好ましい。
以下、本開示における重合体A1の好ましい例を挙げるが、本開示は以下の例示に限定されない。なお、下記例示化合物における構成単位の比率、重量平均分子量は、好ましい物性を得るために適宜選択される。
【0058】
【0059】
-重合体A1のガラス転移温度:Tg-
本開示における重合体A1のガラス転移温度(Tg)は、転写性の観点から、120℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。
【0060】
本開示における重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行った。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される重合体のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を描かせる。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0061】
重合体のTgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする重合体A1のTgを制御することが可能である。
FOX式について
重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することも可能である。
【0062】
-重合体A1の酸価-
重合体A1の酸価は、現像性及び転写性の観点から、0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0063】
本開示における重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的には、測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0064】
-重合体A1の分子量:Mw-
重合体A1の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。重合体A1の重量平均分子量が60,000以下であることで、感光性樹脂層の溶融粘度を低く抑え、上記基板と貼り合わせる際において低温(例えば130℃以下)での貼り合わせを実現することができる。
また、重合体A1の重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましい。
なお、重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定することができ、測定装置としては、様々な市販の装置を用いることができ、装置の内容、及び、測定技術は同当業者に公知である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本、直列に連結したものを用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。
また、測定条件としては、試料濃度を0.2質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行うことができる。
検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作製できる。
【0065】
重合体A1の数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
【0066】
-重合体A1の製造方法-
重合体A1の製造方法(合成法)は特に限定されないが、一例を挙げると、式Aで表される構成単位Aを形成するための重合性単量体、酸基を有する構成単位Bを形成するための重合性単量体、更に必要に応じて、その他の構成単位Cを形成するための重合性単量体を含む有機溶剤中、重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
【0067】
本開示における上記感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体成分を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
また、上記感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体A1を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
【0068】
〔他の重合体〕
上記感光性樹脂層は、重合体成分として、重合体A1に加え、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲において、式Aで示される構成単位(a)を含まない重合体(「他の重合体」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。上記感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の配合量は、全重合体成分中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0069】
上記感光性樹脂層は、重合体A1に加え、他の重合体を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
他の重合体として、例えばポリヒドロキシスチレンを用いることができ、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及び、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及び、ARUFON UC-3080(以上、東亞合成(株)製)、並びに、Joncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及び、Joncryl 586(以上、BASF社製)等を用いることもできる。
【0070】
〔光酸発生剤〕
上記感光性樹脂層は、光酸発生剤を含有する。
本開示で使用される光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、及び、荷電粒子線等の放射線を照射することにより酸を発生することができる化合物である。
本開示で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
本開示で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0071】
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤と、非イオン性光酸発生剤とを挙げることができる。
また、光酸発生剤としては、感度及び解像度の観点から、後述するオニウム塩化合物、及び、後述するオキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
【0072】
非イオン性光酸発生剤の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、感度、解像度、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、及び、ジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が例示できる。
【0073】
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート構造を有する化合物としては、下記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物が好ましい。
【0074】
【0075】
式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表し、*は他の原子又は他の基との結合部位を表す。
【0076】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、いずれの基も置換されてもよく、R21におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐構造を有していても、環構造を有していてもよい。許容される置換基は以下に説明する。
R21のアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6~11のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、シクロアルキル基(7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい。
R21のアリール基としては、炭素数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1つ以上の基で置換されてもよい。
【0077】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、特開2014-85643号公報の段落0078~0111に記載のオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0078】
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
【0079】
イオン性光酸発生剤としては特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
【0080】
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記感光性樹脂層における光酸発生剤の含有量は、感度、解像度の観点から、上記感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0081】
〔溶剤〕
上記感光性樹脂層は、溶剤を含んでいてもよい。
また、上記感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物は、上記感光性樹脂層を容易に形成するため、一旦溶剤を含有させて感光性樹脂組成物の粘度を調節し、溶剤を含む感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥して、上記感光性樹脂層を好適に形成することができる。
本開示に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、及び、ラクトン類等が例示できる。また、溶剤の具体例としては特開2011-221494号公報の段落0174~段落0178に記載の溶剤も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0082】
また、既述の溶剤に、更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、又は、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
本開示に用いることができる溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用することがより好ましい。溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類との併用、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類との併用、又は、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類との併用が好ましい。
【0083】
また、溶剤としては、沸点130℃以上160℃未満の溶剤、沸点160℃以上の溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(沸点155℃)、及び、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3-メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチエルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、及び、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
【0084】
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部あたり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
また、上記感光性樹脂層における溶剤の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0085】
〔その他の添加剤〕
本開示における上記感光性樹脂層は、重合体A1及び光酸発生剤に加え、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
【0086】
-可塑剤-
上記感光性樹脂層は、可塑性を改良する目的で、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤は、重合体A1よりも重量平均分子量が小さいことが好ましい。
可塑剤の重量平均分子量は、可塑性付与の観点から500以上10,000未満が好ましく、700以上5,000未満がより好ましく、800以上4,000未満が更に好ましい。
可塑剤は、重合体A1と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に限定されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は下記構造を有することが好ましい。
【0087】
【0088】
上記式中、Rは炭素数2~8のアルキル基であり、nは1~50の整数を表し、*は他の原子との結合部位を表す。
【0089】
なお、例えば、上記構造のアルキレンオキシ基を有する化合物(「化合物X」とする。)であっても、化合物X、重合体A1及び光酸発生剤を混合して得た化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物が、化合物Xを含まずに形成した化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物に比べて可塑性が向上しない場合は、本開示における可塑剤には該当しない。例えば、任意に添加される界面活性剤は、一般に感光性樹脂組成物に可塑性をもたらす量で使用されることはないため、本明細書における可塑剤には該当しない。
【0090】
上記可塑剤としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【0092】
可塑剤の含有量は、密着性の観点から、上記感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましい。
上記感光性樹脂層は、可塑剤を1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0093】
-増感剤-
上記感光性樹脂層は、増感剤を更に含むことができる。
増感剤は、活性光線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、及び、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。
増感剤を含有させることで、露光感度を向上させることができる。
【0094】
増感剤としては、アントラセン誘導体、アクリドン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、及び、ジスチリルベンゼン誘導体よりなる群からえらばれた化合物が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。
アントラセン誘導体としては、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、9-ブロモアントラセン、9-クロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、2-エチルアントラセン、又は、9,10-ジメトキシアントラセンが好ましい。
【0095】
上記増感剤としては、国際公開第2015/093271号の段落0139~段落0141に記載の化合物を挙げることができる。
【0096】
増感剤の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0097】
-塩基性化合物-
上記感光性樹脂層は、塩基性化合物を更に含むことが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0204~段落0207に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
具体的には、脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、及び、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、及び、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、N-メチル-4-フェニルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8-オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.3.0]-7-ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、及び、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0099】
上記塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
塩基性化合物の含有量は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.005質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0100】
-ヘテロ環状化合物-
本開示における感光性樹脂層は、ヘテロ環状化合物を含むことができる。
本開示におけるヘテロ環状化合物には、特に制限はない。例えば、以下に述べる分子内にエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有ヘテロ環状化合物、その他、各種環状エーテル、環状エステル(ラクトン)などの含酸素モノマー、環状アミン、オキサゾリンといった含窒素モノマー、更には珪素、硫黄、リンなどのd電子をもつヘテロ環モノマー等を添加することができる。
【0101】
感光性樹脂層中におけるヘテロ環状化合物の添加量は、ヘテロ環状化合物を添加する場合には、上記感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、密着性及びエッチング耐性の観点で好ましい。ヘテロ環状化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0102】
分子内にエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0103】
分子内にエポキシ基を有する化合物は市販品として入手できる。例えば、JER828、JER1007、JER157S70(三菱化学(株)製)、JER157S65((株)三菱ケミカルホールディングス製)など、特開2011-221494号公報の段落0189に記載の市販品などが挙げられる。
その他の市販品として、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX-611、EX-612、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-411、EX-421、EX-313、EX-314、EX-321、EX-211、EX-212、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-911、EX-941、EX-920、EX-931、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L、DLC-201、DLC-203、DLC-204、DLC-205、DLC-206、DLC-301、DLC-402、EX-111,EX-121、EX-141、EX-145、EX-146、EX-147、EX-171、EX-192(以上ナガセケムテック製)、YH-300、YH-301、YH-302、YH-315、YH-324、YH-325(以上、新日鐵住金化学(株)製)セロキサイド2021P、2081、2000、3000、EHPE3150、エポリードGT400、セルビナースB0134、B0177((株)ダイセル製)などが挙げられる。
分子内にエポキシ基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
分子内にエポキシ基を有する化合物の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0105】
分子内にオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT-201、OXT-211、OXT-212、OXT-213、OXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
【0106】
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
【0107】
本開示における感光性樹脂層においては、ヘテロ環状化合物がエポキシ基を有する化合物であることが、エッチング耐性及び線幅安定性の観点から好ましい。
【0108】
-アルコキシシラン化合物-
上記感光性樹脂層は、アルコキシシラン化合物を含有してもよい。アルコキシシラン化合物としては、トリアルコキシシラン化合物が好ましく挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。これらのうち、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0109】
-界面活性剤-
上記感光性樹脂層は、膜厚均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系(非イオン系)、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、及び、SH-8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式I-1で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0110】
【0111】
式(I-1)中、R401及びR403はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R402は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R404は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、sは1以上10以下の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0112】
Lは、下記式(I-2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(I-2)におけるR405は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
【0113】
【0114】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
【0115】
その他、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も用いることができる。
【0116】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の添加量は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0117】
-その他の成分-
本開示における感光性樹脂層には、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に加えることができる。
その他の成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0118】
-感光性樹脂層の形成方法-
各成分、及び、溶剤を任意の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0119】
感光性樹脂組成物を、例えば特定層上に塗布し、乾燥させることで、感光性樹脂層を形成することができる。
塗布方法は特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
【0120】
<ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層(特定層)>
本開示に係る感光性転写材料は、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含有する層(特定層)を含む。
本開示に係る感光性転写材料において、仮支持体と特定層、及び、特定層と感光性樹脂層との間には、他の層を有していてもよいが、密着性及び転写性の観点からは、仮支持体と特定層が、接していることが好ましい。
上記特定層は、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを含む層であればよい。本開示において、ウレタン化合物とは、構造中にウレタン結合を有する化合物をいい、ポリマーであってもオリゴマーであってもよいし、低分子化合物であってもよい。また、変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンの一部が酸基、アミノ基、水酸基で変性されることで水分散可能になった化合物をいい、ポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0121】
〔ウレタン化合物を含有する層〕
ウレタン化合物を含有する層(以下、単に「ウレタン化合物含有層」ともいう。)は、例えば、多価イソシアネート化合物と、多価アルコール化合物とを含む塗布液を仮支持体上に塗布し、反応させることにより形成される。
この際、上記塗布液に含まれるイソシアネート基の全モル量、及び、上記塗布液に含まれるヒドロキシ基の全モル量を調整することにより、後述するウレタン化合物含有層の全体積に対するイソシアネート基含有量を調整することが可能となる。
また、ウレタン化合物を含有する層は、ウレタンポリマー等の化合物を含む塗布液を仮支持体上に塗布し、乾燥させることにより形成してもよい。
この場合、塗布液に多価イソシアネート化合物(好ましくは、ブロック化剤により保護された多価イソシアネート化合物)を更に添加することにより、後述するウレタン化合物含有層の全体積に対するイソシアネート基含有量を調整することが可能となる。
すなわち、ウレタン化合物を含有する層に含まれるウレタン化合物は、多価イソシアネート化合物と、多価アルコール化合物との反応物であるか、又は、多価イソシアネート化合物と、ウレタン化合物との反応物であることが好ましい。
また、ウレタン化合物は、アルキレンジイソシアネート化合物とジオール化合物とを少なくとも反応させた反応物を含むことが好ましい。アルキレンジイソシアネート化合物及びジオール化合物の好ましい態様については後述する。
以下、多価イソシアネート化合物、多価アルコール化合物、任意に含まれる多価カルボン酸化合物及びウレタンポリマーについて説明する。これらの化合物は1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
-多価イソシアネート化合物-
多価イソシアネート化合物は、脂肪族多価イソシアネート化合物であっても、芳香族多価イソシアネート化合物であってもよい。
多価イソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、4-クロロキシリレン-1,3-ジイソシアネート、2-メチルキシリレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレンジイソシアネート化合物を用いることが好ましい。 また、アルキレンジイソシアネート化合物におけるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖又は環構造を有していてもよいし、シクロアルキレン基であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
以上では2官能であるジイソシアネート化合物を例示したが、これらに類推される3官能のトリイソシアネート化合物、4官能のテトライソシアネート化合物であってもよい。
【0123】
3官能以上の多価イソシアネート化合物としては、例えば、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられる。3官能以上の多価イソシアネート化合物の例としては、2官能のイソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能のイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。
3官能以上のイソシアネート化合物の具体的な例としては、キシリレン-1,4-ジイソシアネート又はキシリレン-1,3-ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等であってもよい。
【0124】
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N(イソシアネート価=3.5 mmol/g)、D-140N、D-160N(以上、三井化学(株))、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン(株))、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン(株))、P301-75E(旭化成(株))等が挙げられる。
【0125】
中でも、アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物として、三井化学(株)のタケネート(登録商標)D-110N、D-120N、D-140N、及びD-160Nから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-127N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
【0126】
これらの多価イソシアネート化合物におけるイソシアネート基は、公知のブロック化剤により保護されていてもよい。
イソシアネート基がブロック化剤により保護されていることにより、上述の塗布液を仮支持体上に塗布した後に、加熱を行い、多価イソシアネート化合物と多価アルコール化合物とを反応させることが可能となる。
【0127】
ブロック化剤としては、ラクタム化合物[例えばε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等]、オキシム化合物[例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)、シクロヘキサノンオキシム等]、アミン化合物[例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソブチルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)、芳香族アミン(アニリン、ジフェニルアミン等)]、脂肪族アルコール化合物[例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール等]、フェノール及びアルキルフェノール化合物[例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ジイソプロピルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール等]、イミダゾール化合物[例えばイミダゾール、2-メチルイミダゾール等]、ピラゾール化合物[例えばピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等]、イミン化合物[例えばエチレンイミン、ポリエチレンイミン等]、活性メチレン化合物[例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等]、特開2002-309217号公報及び特開2008-239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。中でも、ブロック化剤としては、オキシム化合物、ラクタム化合物、ピラゾール化合物、活性メチレン化合物、又はアミン化合物が好ましい。
【0128】
ブロックイソシアネート化合物としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、デュラネートWM44-L70G(旭化成株式会社)が好適に用いられる。
【0129】
-多価アルコール化合物-
多価アルコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、などの脂肪族ジオール化合物、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール化合物;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール化合物等のジオール化合物等が挙げられる。
以上では2官能であるジオール化合物を例示したが、これらに類推される3官能のアルコール化合物(グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4官能のアルコール化合物(ペンタエリスリトール)等であってもよい。
【0130】
-多価カルボン酸化合物-
上記塗布液は、仮支持体の密着性をより向上させる観点から、多価イソシアネート化合物及び多価アルコール化合物に加え、多価カルボン酸化合物を含んでもよい。塗布液が多価カルボン酸化合物を更に含むことにより、反応後にはポリエステルポリウレタンが得られると考えられる。
多価カルボン酸化合物としては、脂肪族多価カルボン酸でも芳香族多価カルボン酸でもよいが、脂肪族多価カルボン酸が好ましい。
また、飽和カルボン酸でも不飽和カルボン酸であってもよいが、不飽和カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸化合物としては、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0131】
-ウレタンポリマー-
ウレタンポリマーとしては、上述の多価イソシアネート化合物等のイソシアネート化合物と、上述の多価アルコール化合物等のアルコール化合物とを反応させて得られるポリマーが挙げられ、過剰量の多価アルコール化合物と、多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端ヒドロキシ基含有ウレタンポリマーが好ましい。
【0132】
〔変性ポリオレフィン〕
変性ポリオレフィンを含有する層は、変性ポリオレフィンを含む塗布液を仮支持体上に塗布し、乾燥させることにより形成される。
なお、本開示における変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンの水への分散が可能とするために、ポリオレフィンが変性され、水分散可能な基を導入されたものを表す。
水分散可能な基としては、具体的には、酸基、アミノ基、水酸基などが挙げられる。
変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリオレフィン、塩基変性ポリオレフィン、又は、水酸基変性ポリオレフィンが好ましい。
中でも、密着性と転写性の観点から、酸変性ポリオレフィンが好ましい。
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。酸基は、酸無水物を形成していていもよいし、また、アルカリ金属塩類、有機アンモニウム化合物、有機アミン化合物、及び、アンモニアよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物により中和されていてもよい。水分散可能な基としてのアミノ基も、塩酸、硫酸、及び、酢酸よりなる群から選択される少なくとも1種の酸により中和されていてもよい。
変性ポリオレフィンにおけるポリオレフィン構造としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリヘキセンなどが好ましく挙げられる。
変性ポリオレフィンとしては、具体的には、ケミパールS100、S120、S200、S300、S650、SA100(三井化学(株)製)、ハードレンAP-2、NZ-1004、NZ-1005(東洋紡(株)製)、アローベースSE-1013、SE-1010、SB-1200、SD-1200、SD-1200、DA-1010、DB-4010(ユニチカ(株)製)、ザイクセンAC、A、L、NC、N(住友精化(株)製)、セポルジョンG315、VA407(住友精化(株)製)、ハイテックS3121、S3148K(東洋化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0133】
-含有量-
特定層は、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを1種単独で含有しても、2種以上を含有してもよい。
特定層がウレタン化合物を含有する場合、変性ポリオレフィンを更に有していてもよい。
また、特定層が変性ポリオレフィンを含有する場合、ウレタン化合物を更に有していてもよい。
特定層は、層の全質量に対し、ウレタン化合物又は変性ポリオレフィンを25質量%以上100質量%以下含有することが好ましく、50質量%以上95質量%以下含有することがより好ましい。
【0134】
〔その他の化合物〕
特定層は、ウレタン化合物、及び、変性ポリオレフィン以外のその他の化合物を含有してもよい。
その他の化合物としては、界面活性剤、pH調整剤、ワックス、触媒等が挙げられる。
【0135】
-界面活性剤-
特定層は、膜厚均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系(非イオン系)、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はアニオン系界面活性剤である。
アニオン系界面活性剤の例としては、ラピゾール(登録商標)A-90、A-80、BW-30、B-90、C-70(以上、日油(株)製)、NIKKOL(登録商標)OTP-100(以上、日光ケミカル(株)製)、コハクール(登録商標)ON、L-40、フォスファノール(登録商標)702(以上、東邦化学工業(株)製)、ビューライト(登録商標)A-5000、SSS(以上、三洋化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0136】
界面活性剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、上記特定層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0137】
-pH調整剤-
特定層は、pH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤としては、塩化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0138】
pH調整剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の含有量は、特に限定されないが、上記特定層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0139】
-ワックス-
特定層は、特定層を塗布液の塗布により形成する場合の塗布液の塗布性の観点から、ワックスを含有してもよい。
ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス;が挙げられる。
【0140】
ワックスは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ワックスの含有量は、特に限定されないが、上記特定層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0141】
-触媒-
ウレタン化合物を含有する層は、多価イソシアネート化合物と多価アルコール化合物の反応を促進する等の観点から、触媒を含有してもよい。
触媒としては、公知のウレタン化触媒が挙げられる。
ウレタン化触媒としては、例えば、錫系触媒(例えば、オクチル酸錫など)、鉛系触媒(例えば、オクチル酸鉛など)、ビスマス系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒、有機金属系触媒、アミン系触媒などが挙げられる。
【0142】
ウレタン化触媒は1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化触媒の含有量は、ウレタン化合物を含有する層の全質量に対し、0.0001質量部~2.0質量部であることが好ましく、0.0005質量部~1.0質量部であることがより好ましい。
【0143】
-その他の成分-
本開示に係る特定層は、その他の成分を更に含有してもよい。
その他の成分としては、ウレタンポリマー以外のバインダーポリマー、樹脂粒子、シリカ粒子等の粒子等が挙げられる。
【0144】
〔膜厚〕
特定層の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
膜厚の下限は、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
【0145】
〔イソシアネート基含有量〕
上記特定層がウレタン化合物を含有する層である場合、上記特定層の全体積に対するイソシアネート基含有量は、密着性及び転写性を向上させる観点から、0.01mol/m3以上0.40mol/m3以下であることが好ましく、0.01mol/m3以上0.35mol/m3以下であることがより好ましく、0.01mol/m3以上0.30mol/m3以下であることが更に好ましい。
ウレタン化合物を含有する層の全体積に対するイソシアネート基含有量は、下記方法により測定される。
ガラス基板に感光性転写材料を熱ラミネートし、仮支持体を剥離することにより感光性転写材料からウレタン化合物を含有する層を有する仮支持体を取得する。
得られた仮支持体を20cm×20cmの面積で採取し、仮支持体を1mLの乾燥トルエンを用いて被覆層を抽出する。仮支持体の、感光性樹脂層と逆側の面にも更に層が形成されている場合、必要に応じて剃刀等で該当する層を削り取って抽出を行う。JIS K7301(1995)に準じ、過剰のジブチルアミンを乾燥トルエン溶液に加えて反応させ、相当する尿素を生成させた後、塩酸標準溶液を用いて、指示薬滴定法によって逆滴定を行い、上記乾固物中のイソシアネート基含有率を測定する。その後、断面TEM像で得た膜厚と合わせて、ウレタン化合物を含有する層の単位体積当たりのイソシアネート基含有量を計算する。
【0146】
〔特定層の密着力〕
本開示に係る感光性転写材料において、上記仮支持体と上記特定層とが接しており、上記特定層と上記仮支持体との密着力が、0.098N/cm(10.0gf/cm)以上であることが好ましく、0.22N/cm(22gf/cm)以上であることがより好ましい。
また、生産性の観点から、仮支持体が延伸フィルムであり、かつ、0.098N/cm(10.0gf/cm)以上であることが好ましく、仮支持体が延伸フィルムであり、かつ、0.22N/cm(22gf/cm)以上であることがより好ましい。
特定層の密着力が上記範囲内であることにより、仮支持体の剥離時に、特定層が仮支持体側に密着したまま、特定層と感光性樹脂層の界面において剥離されやすい。
このため、基材上に感光性転写材料を張り合わせた後に、仮支持体を剥離させた場合には、特定層と感光性樹脂層との界面において剥離されるので、基材上には感光性樹脂層が残り、感光性樹脂層上に特定層は残りにくいと考えられる。
このように、特定層が感光性樹脂層上に残りにくいことにより、現像時には特定層に由来する現像残渣の発生が抑制されやすく、本開示に係る感光性転写材料を用いた場合には現像性にも優れやすいと考えられる。
なお、特定層と感光性樹脂層との間に、後述するその他の層を更に含む場合には、「特定層と感光性樹脂層との界面」は「特定層とその他の層との界面」と読み替えるものとする。
特定層の密着力は、下記方法により測定される。
ガラス基板に感光性転写材料を熱ラミネートし、仮支持体を剥離することにより感光性転写材料から特定層を有する仮支持体を取得する。
得られた特定層を有する仮支持体の特定層側の表面にテープ(プリンタックC、日東電工(株)製)を貼り、テープと支持体の幅が合うように4.5cm×9cmに切り抜く。これを、株式会社エーアンドデイー社製テンシロン万能試験機を用いて500mm/minの剥離速度で180°剥離を行い、密着力を測定する。
なお、密着力の上限は、特に限定されず、上記測定方法による測定限界を超えていてもよい。
【0147】
〔特定層の製造方法〕
各成分、及び、溶剤を任意の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して特定層を形成するための特定層形成用の組成物を調製することができる。
例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0148】
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、感光性樹脂層において上述したものを好適に用いることができる。
特定層を形成するために使用する溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類、あるいは、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類とを併用することが好ましい。
また、感光性樹脂層と混合することを抑制するため、特定層に含まれる各成分を水溶性又は水分散性の成分として、溶剤として水を用いることが好ましい。
【0149】
特定層を形成するための組成物における溶剤の含有量は、組成物中の全固形分100質量部当たり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0150】
上記組成物を、例えば仮支持体上に塗布し、加熱、乾燥させることで、特定層を形成することができる。
塗布方法は特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
【0151】
また、特定層の密着力を向上させる観点から、仮支持体が延伸フィルムである場合、上記組成物の塗布を、仮支持体の延伸前に行うことも好ましい。
仮支持体が二軸延伸フィルムである場合、例えば、縦延伸(フィルムの搬送方向の延伸)の後に、上記組成物の塗布を行い、続けて横延伸(フィルムの面上においてフィルムの搬送方向と垂直な方向の延伸)を行うことにより、密着力に優れた特定層が形成される。
また、特定層がウレタン化合物を含有する層である場合には、上記組成物中の多価イソシアネート化合物、多価アルコール化合物、多価カルボン酸化合物、ウレタンポリマー等を、上記延伸における加熱において反応させることにより、ウレタン化合物とすることが好ましい。
具体的には、多価イソシアネート化合物として、上述のブロック化剤によりイソシアネート基がブロックされた多価イソシアネート化合物を使用することにより、上記加熱においてイソシアネート基が再生され、上記イソシアネート基がヒドロキシ基と反応するか、イソシアネート基のままウレタン化合物含有層に含有されることが好ましい。
仮支持体が延伸フィルムである場合、延伸方法は特に限定されず、公知の方法により行われる。
【0152】
<その他の層>
本開示に係る感光性転写材料は、上記感光性樹脂層及び特定層以外の層(以下、「その他の層」と称することがある)を有していてもよい。その他の層としては、コントラストエンハンスメント層、中間層、カバーフィルム、熱可塑性樹脂層、バック層等を挙げることができる。
【0153】
〔コントラストエンハンスメント層〕
本開示に係る感光性転写材料は、上記感光性樹脂層に加え、コントラストエンハンスメント層を有することができる。
コントラストエンハンスメント層(Contrast Enhancement Layer;CEL)は、露光前には露光波長に対する吸収が大きいが、露光されるに伴って次第に吸収が小さくなる、すなわち、光の透過率が高くなる材料(光消色性色素成分と称する)を含有する層である。光消色性色素成分としては、ジアゾニウム塩、スチルバゾリウム塩、アリールニトロソ塩類等が知られている。被膜形成成分としては、フェノール系樹脂等が用いられる。
その他、コントラストエンハンスメント層としては、特開平6-97065号公報の段落0004~段落0051、特開平6-332167号公報の段落0012~段落0055、フォトポリマーハンドブック,フォトポリマー懇話会編,工業調査会(1989)、フォトポリマー・テクノロジー,山岡、永松編,(株)日刊工業新聞社(1988)に記載の材料を用いることができる。
【0154】
〔中間層〕
上記感光性樹脂層の上に、複数層を塗布する目的、及び塗布後の保存の際における成分の混合を防止する目的で、中間層を設けることができる。
中間層としては、特開2005-259138号公報の段落0084~0087に記載の中間層を用いることができる。中間層としては、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましい。
中間層に用いられる材料としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体などの樹脂が挙げられる。中でも特に好ましいのはポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0155】
〔熱可塑性樹脂層、カバーフィルム等〕
本開示に係る感光性転写材料は、転写性の観点から、上記仮支持体と上記感光性樹脂層との間に、熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
また、本開示に係る感光性転写材料は、上記感光性樹脂層を保護する目的でカバーフィルムを有していてもよい。
熱可塑性樹脂層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193、他の層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
中でも、転写性の観点から、熱可塑性樹脂層が、アクリル樹脂及びスチレン/アクリル共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0156】
本開示に係る感光性転写材料が、熱可塑性樹脂層等のその他の層を有する場合、特開2006-259138号公報の段落0094~段落0098に記載の感光性転写材料の作製方法に準じて作製することができる。
例えば、熱可塑性樹脂層及び中間層を有する本開示に係る感光性転写材料を作製する場合には、仮支持体上に、上述の方法により特定層を設けた後、熱可塑性の有機高分子と添加剤とを溶解した溶解液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を作製し、得られた熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤に樹脂及び添加剤を加えて調製した調製液(中間層用塗布液)を塗布し、乾燥させて中間層を積層する。形成した中間層上に、更に、中間層を溶解しない溶剤を用いて調製した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて感光性樹脂層を積層することによって、本開示に係る感光性転写材料を好適に作製することができる。
【0157】
〔バック層〕
本開示に係る感光性転写材料は、上記仮支持体の上記感光性樹脂層とは反対側に、バック層を有していてもよい。
バック層には、界面活性剤、ワックス等の滑り剤及びマット剤等の各種添加剤や樹脂粒子を添加することができる。
バック層の形成に使用される樹脂粒子としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマーの単独重合体及び共重合体、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートのようなセルロース系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールのようなビニル系ポリマー及びビニル化合物の共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドのような縮合系ポリマー、ブタジエン-スチレン共重合体のようなゴム系熱可塑性ポリマー、エポキシ化合物のような光重合性若しくは熱重合性化合物を重合、架橋させたポリマー、メラミン化合物等を挙げることができる。
バック層は、例えば、バック層に含まれる成分を水等の公知の溶剤に分散又は溶解した組成物を、仮支持体の感光性樹脂層と逆側の面に塗布することにより形成される。
仮支持体が延伸により製造される場合、上記組成物を塗布した後に延伸を行ってもよく、例えば、特定層形成用の組成物の塗布と同様のタイミングで塗布してから延伸を行ってもよい。
【0158】
(回路配線の製造方法)
本開示に係る感光性転写材料を用いた、回路配線の製造方法の第1の実施態様について説明する。
回路配線の製造方法の第1の実施態様は、
基板に対し、本開示に係る感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)と、
上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)と、
上記露光する工程後の露光部を現像してパターンを形成する工程(現像工程)と、
上記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)と、を含む。
回路配線の製造方法の第1の実施態様における基板は、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材自体が基板であってもよく、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材上に、必要により導電層などの任意の層が設けられた基板であってもよい。
回路配線の製造方法の第1の実施態様によれば、基板表面に微細パターンを形成することができる。
【0159】
回路配線の製造方法の第2の実施形態は、
基材、及び、互いに構成材料が異なる第1導電層及び第2導電層を含む複数の導電層とを有し、上記基材の表面上に、上記基材の表面から遠い順に、最表面層である上記第1導電層及び上記第2導電層が積層されている基板に対し、本開示に係る感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を上記第1導電層に接触させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、
上記貼り合わせ工程後の上記感光性転写材料の上記仮支持体を介して上記感光性樹脂層をパターン露光する第1露光工程と、
上記第1露光工程後の感光性樹脂層から上記仮支持体を剥離した後、上記第1露光工程後の露光部を現像して第1パターンを形成する第1現像工程と、
上記第1パターンが配置されていない領域における上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層及び上記第2導電層をエッチング処理する第1エッチング工程と、
上記第1エッチング工程後の上記第1パターンを上記第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する第2露光工程と、
上記第2露光工程後の上記第1パターンを現像して第2パターンを形成する第2現像工程と、
上記第2パターンが配置されていない領域における上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層をエッチング処理する第2エッチング工程と、をこの順に含む。上記第2の実施形態としては、国際公開第2006/190405号を参考にすることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0160】
本開示に係る回路配線の製造方法は、タッチパネル又はタッチパネル表示装置用の回路配線の製造方法として用いることができる。
以下、第2の実施形態を元に、各工程の詳細について説明する。
【0161】
<貼り合わせ工程>
貼り合わせ工程の一例を、
図2(a)に概略的に示した。
まず、貼り合わせ工程では、基材22と、互いに構成材料が異なる第1導電層24及び第2導電層26を含む複数の導電層とを有し、基材22の表面上に、基材22の表面から遠い順に、最表面層である第1導電層24と第2導電層26とが積層されている基板(回路配線形成用基板)20に対し、上述した本開示に係る感光性転写材料100の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層である感光性樹脂層12を第1導電層24に接触させて貼り合わせる。なお、このような回路配線形成用基板と感光性転写材料との貼り合わせを「転写」又は「ラミネート」と称する場合がある。
図2(a)において、感光性転写材料100の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層は感光性樹脂層であるが、感光性樹脂層上にその他の層が形成され、最外層がその他の層であってもよい。
【0162】
図1に示したように感光性転写材料100の感光性樹脂層12上にカバーフィルム16を有する場合は、感光性転写材料100(感光性樹脂層12)からカバーフィルム16を除去した後、感光性転写材料100の感光性樹脂層12を第1導電層24に接触させて貼り合わせる。
感光性転写材料の第1導電層上への貼り合わせ(転写)は、感光性転写材料の感光性樹脂層側を第1導電層の上に重ね、ロール等による加圧及び加熱することに行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネータを使用することができる。
回路配線形成用基板の基材が樹脂フィルムである場合は、ロールツーロールでの貼り合わせも行うこともできる。
【0163】
〔基材〕
基材上に複数の導電層が積層された基板は、基材がガラス基材又はフィルム基材であることが好ましく、フィルム基材であることがより好ましい。本開示に係る回路配線の製造方法は、タッチパネル用の回路配線である場合、基材がシート状樹脂組成物であることが特に好ましい。
また、基材は透明であることが好ましい。
基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
基材は、ガラス基材等の透光性基材で構成されていてもよく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、前述の透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みがない基材、及び、透明度が高い基材を用いることがより好ましく、具体的な素材には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマーをあげることができる。
【0164】
〔導電層〕
基材上に形成されている複数の導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電層を挙げることができる。
導電層の材料としては、金属及び金属酸化物などを挙げることができる。
金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SiO2等を挙げることができる。金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等を挙げることができる。
【0165】
本開示に係る回路配線の製造方法は、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層が金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
【0166】
〔回路配線形成用基板〕
基材の表面に導電層を有する基板である。導電層をパターンニングすることで回路配線とする。本例では、PETなどのフィルム基材に金属酸化物や金属などの複数の導電層が設けられたものであることが好ましい。
【0167】
<露光工程(第1露光工程)>
上記第1の実施態様においては露光工程が、上記第2の実施態様においては第1露光工程が行われる。露光工程(第1露光工程)の一例を、
図2(b)に概略的に示した。
露光工程(第1露光工程)では、貼り合わせ工程後の感光性転写材料の仮支持体10及び特定層14を介して感光性樹脂層12をパターン露光する。
【0168】
本実施形態における露光工程、現像工程、及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を本実施形態においても好適に用いることができる。
【0169】
例えば、第1導電層24の上に配置された感光性転写材料100の上方(第1導電層24と接する側とは反対側)に所定のパターンを有するマスク30を配置し、その後、マスク30を介してマスク上方から紫外線で露光する方法などが挙げられる。
本実施形態においてパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に限定されない。本実施形態により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることが更に好ましい。
ここで、露光に使用する光源としては、感光性転写材料の露光された箇所が現像液に溶解しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量としては、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2であることがより好ましい。
また、露光後にパターンの矩形性、直線性を向上させる目的で、現像前に熱処理を行うことも好ましい。いわゆるPEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる工程により、露光時に感光性樹脂層中で生じた定在波によるパターンエッジの荒れを低減することが可能である。
【0170】
なお、パターン露光は、仮支持体を感光性樹脂層から剥離してから行っても、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介して露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。感光性樹脂層とマスクの接触によるマスク汚染の防止や、マスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずに露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0171】
<現像工程(第1現像工程)>
上記第1の実施態様においては現像工程が、上記第2の実施態様においては第1現像工程が行われる。現像工程(第1現像工程)の一例を、
図2(c)に概略的に示した。
現像工程(第1現像工程)では、露光工程(第1露光工程)後の感光性樹脂層12から仮支持体10(及び特定層14)を剥離した後、露光工程(第1露光工程)後の感光性樹脂層12を現像して第1パターン12Aを形成する。
【0172】
現像工程(第1現像工程)は、パターン露光された感光性樹脂層を現像することによりパターン(第1パターン)を形成する工程である。
パターン露光された感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、感光性樹脂層の露光部分を除去することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は感光性樹脂層の露光部が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、更に、水と混和性を有する有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本実施形態において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
【0173】
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0174】
更に、現像して得られた感光性樹脂層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークの加熱は8.1kPa~121.6kPaの環境下で行うことが好ましく、506.6kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。一方、1114.6kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが特に好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃であることが好ましく、110℃~170℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
ポストベークの時間は、1分~30分であることが好ましく、2分~10分であることがより好ましく、2分~4分であることが特に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
【0175】
ポスト露光工程等、その他の工程を有していてもよい。
【0176】
<エッチング工程(第1エッチング工程)>
上記第1の実施態様においてはエッチング工程が、上記第2の実施態様においては第1エッチング工程が行われる。エッチング工程(第1エッチング工程)の一例を、
図2(d)に概略的に示した。
エッチング工程(第1エッチング工程)では、第1パターン12Aが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24及び第2導電層26をエッチング処理する。エッチングにより、同じパターンを有する第1導電層24A及び第2導電層26Aが形成される。
【0177】
導電層のエッチングは、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法、公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法など、公知の方法でエッチングを適用することができる。
【0178】
例えば、エッチングの方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0179】
エッチング液の温度は特に限定されないが、45℃以下であることが好ましい。本実施形態でエッチングマスク(エッチングパターン)として使用される第1パターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、エッチング工程中に感光性樹脂層が剥離することが防止され、感光性樹脂層の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
【0180】
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて洗浄工程及び乾燥工程を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温で純水により10秒~300秒間基板を洗浄して行い、乾燥工程については、例えばエアブローを使用し、エアブロー圧(好ましくは0.1kg/cm2~5kg/cm2程度)を適宜調整して乾燥を行えばよい。
【0181】
<第2露光工程>
上記第2の実施態様においては第2露光工程が行われる。第2露光工程の一例を、
図2(e)に概略的に示した。
第1エッチング工程後、第1エッチング工程後の第1パターン12Aを第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する。
【0182】
第2露光工程では、第1導電層上に残存する第1パターンに対し、後述する第2現像工程において少なくとも第1導電層の除去すべき部分に相当する箇所を露光する。
第2露光工程におけるパターン露光は、第1露光工程で用いたマスク30とはパターンが異なるマスク40を用いること以外は第1露光工程におけるパターン露光と同じ方法を適用することができる。
【0183】
<第2現像工程>
上記第2の実施態様においては第2現像工程が行われる。第2現像工程の一例を、
図2(f)に概略的に示した。
第2現像工程では、第2露光工程後の第1パターン12Aを現像して第2パターン12Bを形成する。
現像により、第1パターンのうち第2露光工程において露光された部分が除去される。
なお、第2現像工程では、第1現像工程における現像と同じ方法を適用することができる。
【0184】
<第2エッチング工程>
上記第2の実施態様においては第2露光工程が行われる。第2エッチング工程の一例を、
図2(g)に概略的に示した。
第2エッチング工程では、第2パターン12Bが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24Aをエッチング処理する。
【0185】
第2エッチング工程におけるエッチングは、エッチングにより除去すべき導電層に応じたエッチング液を選択すること以外は第1エッチング工程におけるエッチングと同じ方法を適用することができる。
第2エッチング工程では、所望のパターンに応じて、第1エッチング工程よりも少ない導電層を選択的にエッチングすることが好ましい。例えば、
図2に示すように、感光性樹脂層が配置されていない領域において第1導電層24Bのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチングを行うことで、第1導電層を第2導電層のパターンとは異なるパターンにすることができる。
第2エッチング工程の終了後、少なくとも2種類のパターンの導電層24B,26Aを含む回路配線が形成される。
【0186】
<感光性樹脂層除去工程>
感光性樹脂層除去工程の一例を、
図2(h)に概略的に示した。
第2エッチング工程の終了後、第1導電層24B上の一部には第2パターン12B及び14Bが残存している。感光性樹脂層が不要であれば、残存する全ての感光性樹脂層の第2パターン12Bを除去すればよい。
【0187】
残存する感光性樹脂層を除去する方法としては特に制限はないが、薬品処理により除去する方法を挙げることができる。
感光性樹脂層の除去方法としては、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の剥離液に感光性樹脂層などを有する基材を1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0188】
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた剥離液が挙げられる。剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により剥離してもよい。
【0189】
本開示に係る回路配線の製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に限定されない。
【0190】
<保護フィルムを貼り付ける工程>
上記第2の実施態様において、第1エッチング工程の後、第2露光工程の前に、第1パターン上に、光透過性を有する保護フィルム(不図示)を貼り付ける工程を更に有してもよい。
この場合、第2露光工程において、保護フィルムを介して第1パターンをパターン露光し、第2露光工程後、第1パターンから保護フィルムを剥離した後、第2現像工程を行うことが好ましい。
【0191】
<可視光線反射率を低下させる工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、基材上の複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含むことが可能である。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0192】
<絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、形成した回路配線上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程を含むことも好ましい。
このような構成により、上述の第二の電極パターンを、第一の電極パターンと絶縁しつつ、形成することができる。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0193】
また、
図2を参照した説明では、2層の導電層を備えた回路配線形成用基板に対して2つの異なるパターンを有する回路配線を形成する場合について説明したが、本開示に係る回路配線の製造方法を適用する基板の導電層の数は2層に限定されず、導電層が3層以上積層された回路配線形成用基板を用い、前述した露光工程、現像工程、及びエッチング工程の組み合わせを3回以上行うことで、3層以上の導電層をそれぞれ異なる回路配線パターンに形成することもできる。
【0194】
また、
図2には示していないが、本開示に係る回路配線の製造方法は、基材が両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有し、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成することができる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0195】
(回路配線及び回路基板)
本開示に係る回路配線は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線である。
本開示に係る回路基板は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線を有する基板である。
本開示に係る回路基板の用途は限定されないが、例えば、タッチパネル用回路基板であることが好ましい。
【0196】
(入力装置及び表示装置)
本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を備えた装置として、入力装置が挙げられる。
本実施形態における入力装置は、静電容量型タッチパネルであることが好ましい。
本実施形態における表示装置は、本実施形態における入力装置を備えることが好ましい。本実施形態における表示装置は、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置等の画像表示装置であることが好ましい。
【0197】
(タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置並びにこれらの製造方法)
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線を少なくとも有するタッチパネルである。また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネル表示装置は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線を少なくとも有するタッチパネル表示装置であり、本開示に係るタッチパネルを有するタッチパネル表示装置であることが好ましい。
本開示に係るタッチパネル又はタッチパネル表示装置の製造方法は、本開示に係る回路配線の製造方法を含むことが好ましい。
本開示に係るタッチパネル又はタッチパネル表示装置の製造方法は、感光性転写材料の製造方法により得られた感光性転写材料の、仮支持体の感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記感光性層をパターン露光する工程と、上記露光する工程後の感光性層を現像してパターンを形成する工程と、上記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含むことが好ましい。各工程の詳細は、上述の回路配線の製造方法における各工程の詳細と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置のおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式など公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7、
図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の
図1や
図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)を挙げることができる。
本実施形態のタッチパネル及び本実施形態のタッチパネル表示装置としては、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日、(株)テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【実施例】
【0198】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0199】
<製造例1>
特定層を有する仮支持体を、以下の方法で基材として用いるポリエステルフィルムの一方の面に下記オモテ面用塗布液を、別の一方の面に下記ウラ面用塗布液をそれぞれ塗布し、下記条件により延伸することによって作製した。
オモテ面とは、仮支持体の感光性樹脂層側の面をいい、ウラ面とはその逆側の面をいう。
【0200】
〔被覆層形成用の塗布液〕
下記に示す配合で、各成分を混合し、オモテ面用塗布液及びウラ面用塗布液をそれぞれ得た。その塗布液を調整後塗布までに6μmフィルター(F20、マーレフィルターシステムズ(株)製)でのろ過および膜脱気(2x6ラジアルフロースーパーフォビック、ポリポア(株)製)を実施した。
【0201】
-オモテ面用塗布液-
・ウレタンポリマー(エラストロンH3DF、第一工業製薬(株)製、固形分28質量%)164.9部
・ブロックイソシアネート(デュラネートWM44-L70G、旭化成(株)製、固形分70質量%)15.4部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈)41.7部
・炭酸水素ナトリウム(旭硝子(株)製、固形分5質量%水希釈)3.2部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂(株)製、固形分30質量%)4.9部
・有機スズ水分散物(エラストロンCat21、第一工業製薬(株)製、固形分1質量%水希釈)32.5部
・水 737.3部
【0202】
-ウラ面用塗布液-
・アクリルポリマー(AS-563A、ダイセルファインケム(株)製、固形分27.5質量%)167部
・ノニオン系界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分100質量%)0.7部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈)114.4部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂(株)製、固形分30質量%)7部
・カルボジイミド化合物(カルボジライトV-02-L2、日清紡(株)製、固形分10質量%水希釈)20.9部
・マット剤(スノーテックスXL、日産化学(株)製、固形分40質量%)2.8部
・水 690.2部
【0203】
〔押出成形〕
特許第5575671号公報に記載のクエン酸キレート有機チタン錯体を重合触媒としたポリエチレンテレフタレートのペレットを、含水率50ppm以下に乾燥させた後、直径30mmの1軸混練押出し機のホッパーに投入し、280℃で溶融して押出した。この溶融体(メルト)を、濾過器(孔径3μm)を通した後、ダイから25℃の冷却ロールに押出し、未延伸フィルムを得た。なお、押出されたメルトは、静電印加法を用い冷却ロールに密着させた。
【0204】
〔延伸、塗布〕
上記方法で冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、厚み25μmの基材(ポリエステルフィルム)と厚み80nmの被覆層を有する仮支持体を得た。
【0205】
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を75℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.4倍、延伸速度を1300%/秒として実施した。
【0206】
(b)塗布
縦延伸したフィルムのオモテ面又はウラ面に、上記オモテ面用塗布液又は上記ウラ面用塗布液を、それぞれ製膜後80nmの厚みとなるように、バーコーターで塗布した。
【0207】
(c)横延伸
上記縦延伸と塗布を行ったフィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<<条件>>
予熱温度:110℃
延伸温度:120℃
延伸倍率:4.2倍
延伸速度:50%/秒
【0208】
〔熱固定、熱緩和〕
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを下記条件で熱固定した。さらに、熱固定した後、テンター幅を縮め下記条件で熱緩和した。
-熱固定条件-
熱固定温度:227℃
熱固定時間:6秒
-熱緩和条件-
熱緩和温度:190℃
熱緩和率:4%
【0209】
〔巻き取り〕
熱固定及び熱緩和の後、両端をトリミングし、端部に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力40kg/mで巻き取った。なお、幅は1.5m、巻長は6300mであった。得られたフィルムロールを、製造例1の仮支持体とした。
得られた仮支持体の基材は、ヘイズ:0.2、150℃、30分加熱による熱収縮率は、MD(搬送方向、Machine Direction):1.0%、TD(フィルムの面上において搬送方向と直交する方向、Transverse Direction):0.2%であった。膜厚は断面TEM写真から測定し、80nmであった。ヘイズはヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH2000)を用いて全光ヘイズとして測定した。
【0210】
<製造例2~10>
オモテ面用塗布液の組成を表2に記載の組成に変更し、また塗布時のバーを調整して製膜後膜厚を表2に記載の値に変えた以外は製造例1と同様にして製造例2~10の特定層を有する仮支持体を得た。
【0211】
<製造例11>
オモテ面用塗布液のみを、横延伸後、熱固定の前に、横延伸したフィルムのオモテ面に80nmの膜厚となるように塗布し、ウラ面用塗布液の塗布を行わなかった以外は製造例1と同様にして製造例11の特定層を有する仮支持体を得た。
【0212】
<製造例12>
オモテ面用塗布液を塗布しない以外は製造例1と同様にして製造例12の特定層を有しない仮支持体を得た。
【0213】
【0214】
表1中、オモテ面用塗布液の組成の欄に記載の数値は各成分の含有量(質量部)を示しており、「-」の記載は該当する成分と含有していないことを示している。
表1中の略語の詳細は下記の通りである。
【0215】
・ウレタンa:エラストロンH3DF(第一工業製薬(株)製)
・ウレタンb:スーパーフレックス150HS(第一工業製薬(株)製)
・ウレタンc:タケラックWS-5100(三井化学(株)製)
・炭酸水素Na:炭酸水素ナトリウム
【0216】
<製造例13>
オモテ面用塗布液の組成を以下のように変更し、塗布時のバーを調整して製膜後膜厚を80nmになるようにした以外は、製造例1と同様にして、製造例13の特定層を有する仮支持体を得た。
【0217】
(オモテ面用塗布液)
・ザイクセンNC(住友精化(株)製、固形分28%、酸変性ポリオレフィン):16.7部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油(株)製、固形分1質量%水希釈):5.6部
・水:77.7部
【0218】
<製造例14>
塗布時のバーを調整して製膜後膜厚を180nmになるようにした以外は、製造例13と同様にして、製造例14の特定層を有する仮支持体を得た。
【0219】
<製造例15>
ザイクセンNCをケミパールS120(三井化学(株)製、固形分27%、酸変性ポリオレフィン)に変更した以外は、製造例13と同様にして、製造例15の特定層を有する仮支持体を得た。
【0220】
(実施例1)
<MATHF共重合体の合成>
メタクリル酸(86g、1モル)を15℃に冷却しておき、カンファースルホン酸(4.6g、0.02モル)を添加した。その溶液に、2,3-ジヒドロフラン(71g、1モル、1.0当量)を滴下した。1時間撹拌した後に、飽和炭酸水素ナトリウム(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物を濾過後40℃以下で減圧濃縮し、残渣の黄色油状物を減圧蒸留して沸点(bp.)54~56℃/3.5mmHg留分のメタクリル酸テトラヒドロ-2H-フラン-2-イル(MATHF)125gを無色油状物として得た(収率80モル%)。
これを用い、特開2013-61616号公報の0248から0249に記載の方法で以下のMATHF共重合体を合成した。得られたMATHF共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量は、14,000であった。MATHF共重合体の構造は以下に示すとおりであった(構造式中の数値はモル比)。
【0221】
【0222】
<感光性樹脂組成物1の作製>
下記組成となるように各成分を混合して感光性樹脂組成物1を作製した。
【0223】
-組成-
・MATHF共重合体:93.9部
・光酸発生剤(PAG-1):5.0部
・界面活性剤(界面活性剤1):0.1部
・添加剤(添加剤1):1.0部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):900部
【0224】
PAG-1:下記構造の化合物A-1
界面活性剤1:F-554、パーフルオロアルキル基含有ノニオン系界面活性剤(DIC製)
添加剤1:(N-シクロヘキシル-N’-[2-(4-モルホリニル)エチル]チオ尿素 略称CHMETU)
【0225】
【0226】
製造例1で作製した仮支持体のオモテ面の上に、感光性樹脂組成物1を、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した。その後、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ、最後に保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着してドライフィルムレジストを作製した。得られたドライフィルムレジストを実施例1の感光性転写材料とした。
【0227】
(実施例2~11、及び、15~17)
製造例1で作製した仮支持体の代わりに製造例2~11、又は、15~17で作製した仮支持体を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~11、及び、15~17の感光性転写材料をそれぞれ得た。
【0228】
(実施例12)
感光性樹脂組成物1の代わりに下記感光性樹脂組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例12の感光性転写材料を得た。
【0229】
<感光性樹脂組成物2の作製>
下記組成となるように各成分を混合して感光性樹脂組成物2を作製した。
【0230】
-組成-
・ノボラック樹脂(メタクレゾール:パラクレゾール=30:70(質量比)、分子量5,500):79.9部
・感光剤:特開平4-22955号公報の第4頁に記載のナフトキノンジアジド(以下、
NQDとも言う)化合物(1):20部
・界面活性剤(下記界面活性剤1):0.1部
・PGMEA:900部
界面活性剤1:F-554、パーフルオロアルキル基含有ノニオン系界面活性剤(DIC製)
【0231】
(実施例13)
<中間層用組成物1の作製>
下記組成となるように各成分を混合して中間層用組成物1を作製した。
【0232】
-組成-
・蒸留水:39.0部
・メタノール:58.0部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC-5、信越化学工業(株)製):
3.0部
【0233】
製造例1で作製した仮支持体の上に、中間層用組成物1を乾燥膜厚0.8μmとなるようにスリットコートし、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させた。次に感光性樹脂組成物1を、この中間層上に、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した。その後、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ、最後に保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着してドライフィルムレジストを作製した。得られたドライフィルムレジストを実施例13の感光性転写材料とした。
【0234】
(実施例14)
<中間層用組成物2の作製>
下記組成となるように各成分を混合して中間層用組成物2を作製した。
【0235】
-組成-
・蒸留水:38.0部
・メタノール:57.0部
・ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバールPVA-205、クラレ(株)製):3.0部
・ポリビニルピロリドン(商品名:ポリビニルピロリドンK-30、(株)日本触媒製):2.0部
【0236】
製造例1で作製した仮支持体の上に、中間層用組成物2を乾燥膜厚0.8μmとなるようにスリットコートし、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させた。次に感光性樹脂組成物1を、この中間層上に、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μmとなるように塗布した。その後、100℃のコンベクションオーブンで2分間乾燥させ、最後に保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着してドライフィルムレジストを作製した。得られたドライフィルムレジストを実施例14の感光性転写材料とした。
【0237】
(比較例1)
製造例1で作製した仮支持体の代わりに特定層のない製造例12で作製した仮支持体を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の感光性転写材料を得た。
【0238】
(比較例2)
<感光性樹脂組成物3の作製>
以下の処方でネガ型の感光性組成物3を作製した。
・アクリル酸・メチルメタクリレート共重合体(Mw20000、酸価130mgKOH/g):30部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:100部
・イルガキュア907(BASF(株)製):4.0部
・トリメチルプロパントリアクリレート:15.0部
【0239】
感光性樹脂組成物1の代わりに感光性樹脂組成物3を使用すること以外は実施例1と同様にして比較例2の感光性転写材料を得た。
【0240】
(評価)
<特定層と仮支持体の密着力測定>
ガラス基板に各実施例又は比較例における感光性転写材料を熱ラミネート(100℃)し、仮支持体を剥離することにより感光性転写材料から特定層を有する仮支持体を取得した。
得られた特定層を有する仮支持体の特定層側の表面に、テープ(プリンタックC、日東電工(株)製)を貼り、テープと支持体の幅が合うように4.5cm×9cmに切り抜く。これを株式会社エーアンドデイー社製テンシロン万能試験機を用いて500mm/minの剥離速度で180°剥離を行い、密着力を測定した。
その後、下記評価基準による評価を行い、評価結果を表2又は表3に記載した。
〔評価基準〕
5:測定上限(22gf/cm(0.22N/cm))より大きい
4:10.0gf/cm(0.098N/cm)以上22.0gf/cm未満
3:5.0gf/cm(0.049N/cm)以上10.0gf/cm未満
2:1.0gf/cm(0.0098N/cm)以上5.0gf/cm未満
1:1.0gf/cm未満
【0241】
<特定層がウレタン化合物を含有する層である場合のイソシアネート基含有量測定方法>
ガラス基板に各実施例又は比較例における感光性転写材料を熱ラミネート(100℃)し、仮支持体を剥離することにより感光性転写材料からウレタン化合物を含有する層を有する仮支持体を取得した。
得られた仮支持体を20cm×20cmの面積で採取し、仮支持体を1mLの乾燥トルエンを用いて被覆層を抽出した。仮支持体の、感光性樹脂層と逆側の面にも更に層が形成されている場合、必要に応じて剃刀等で該当する層を削り取って抽出を行った。JIS K7301(1995)に準じ、過剰のジブチルアミンを乾燥トルエン溶液に加えて反応させ、相当する尿素を生成させた後、塩酸標準溶液を用いて、指示薬滴定法によって逆滴定を行い、上記乾固物中のイソシアネート基含有率を測定した。その後、断面TEM像で得た膜厚と合わせて、ウレタン化合物を含有する層の単位体積当たりのイソシアネート基含有量を計算した。
評価結果は表2又は表3に記載した。
【0242】
<カット浮き評価>
次いで、100μmの膜厚のPET基材上に、導電層として銅を真空蒸着法で200nmの膜厚にて成膜して、回路形成基板とした。
各実施例又は比較例の感光性転写材料から保護フィルムを剥離し、銅層上に上記保護フィルムを剥離した感光性転写材料を感光性樹脂層と銅層が接触するように100℃、4m/minの速度、線圧0.6MPaの条件でラミネートし、銅層上に仮支持体、特定層及び感光性樹脂層が積層した積層体を作製した。
銅層上にラミネートした積層体を、カッターナイフを用いて銅層ごと切断した。その際にカット端から浮いて空気が入った距離を測定し、下記評価基準に従ってカット浮きを評価した。カッターナイフにはNTカッター(エヌティー社製)を、刃にはBA-160を用いた。空気が入った距離が小さいほど、感光性転写材料における仮支持体の密着性に優れるといえる。評価結果は、実用上の観点から、3~5であることが好ましく、4又は5であることがより好ましく、5であることが更に好ましい。評価結果は表2又は表3に記載した。
〔評価基準〕
5:250μm未満
4:250μm以上500μm未満
3:500μm以上750μm未満
2:750μm以上1000μm未満
1:1000μm以上
【0243】
<転写性評価>
上記回路形成基板上に100℃、2m/minの速度、線圧0.6MPaの条件でラミネートした積層体から仮支持体を剥離した際の転写面積について下記評価基準に従って転写性を評価した。転写面積とは、感光性樹脂層と基材とが密着している部分の面積をいい、面積値の算出は転写した基板の写真を撮影し、画像を2値化することにより行った。転写面積が大きいほど、感光低転写材料における感光性樹脂層の転写性に優れるといえる。評価結果は、実用上の観点から、3~5であることが好ましく、4又は5であることがより好ましく、5であることが更に好ましい。評価結果は表2又は表3に記載した。
〔評価基準〕
5:100%
4:98%以上100%未満
3:96%以上98%未満
2:90%以上96%未満
1:90%未満
【0244】
<エッジラフネス評価>
〔回路配線の製造〕
各実施例又は比較例の感光性転写材料から保護フィルムを剥離し、上記回路形成基板上に上記保護フィルムを剥離した感光性転写材料を感光性樹脂層と銅層が接触するように100℃、2m/minの速度、線圧0.6MPaの条件でラミネートし、銅層上に仮支持体、特定層、(中間層を有する場合は中間層)、及び、感光性樹脂層が積層した積層体を作製した。
この積層体に対し、仮支持体を剥離せずに、線幅4μmのラインアンドスペース配線パターン(開口部:遮光部の幅比は1:1)を設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光を行った。露光にはi線(365nm)を露光主波長とする高圧水銀灯を用いた。
露光後の積層体から仮支持体を剥離後、28℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で40秒間現像し、水洗を行った。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングし、銅配線基板を得た。得られた回路配線を、各実施例又は比較例の回路配線とした。
【0245】
〔パターン直線性(LWR)〕
得られた各実施例又は比較例の回路配線を有する回路配線基板のラインアンドスペースパターンからアトランダムに選んだ箇所のパターン幅を20箇所測定した。得られた線幅データから標準偏差σを算出し、標準偏差σを3倍した値をLWR(Line Width Roughness)と定義し、パターン直線性の指標とした。
LWRは定義上、小さいほど線幅変動が小さいこととなり好ましい。4μm線幅のパターンに対しては、LWRの値によって以下のように評価される。LWRの値が小さいほどパターン直線性に優れるといえる。また、パターン直線性に優れるほど、線幅のぎざつき(エッジラフネス)に優れるともいえる。評価結果は、実用上の観点から、3~5であることが好ましく、4又は5であることがより好ましく、5であることが更に好ましい。評価結果は表2又は表3に記載した。
-評価基準-
5:LWR<300nm:回路配線基板として非常に好ましい。
4:300nm≦LWR<500nm:回路配線基板として好ましい。
3:500nm≦LWR<700nm:回路配線基板として使用可能。
2:700nm≦LWR<1000nm:不良発生の可能性が有り好ましくない。
1:1000nm≦LWR:線幅変動が大きく回路不良に繋がり、好ましくない。
【0246】
【0247】
【0248】
表2及び表3から、実施例に係る感光性転写材料は、密着性及び転写性に優れ、かつ、パターンの直線性にも優れることがわかる。
比較例1に記載の、特定層を有しない感光性転写材料は、「カット浮き」の評価が低く、密着性に劣っていると考えられる。
また、比較例2に記載の、感光性樹脂層がネガ型である感光性転写材料は、「転写性」及び「パターン直線性(LWR)」の評価が低く、転写性及びエッジラフネスにおいて劣っていた。
【0249】
2017年9月29日に出願された日本国特許出願第2017-190833号の開示、及び、2018年9月10日に出願された日本国特許出願第2018-168471号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0250】
10 仮支持体、12 感光性樹脂層、12A 第1パターン、12B 第2パターン、14 特定層、16 カバーフィルム、20 回路形成用基板、22 基材、24 第1導電層、24A 第1導電層(第1エッチング工程後)、24B 第1導電層(第2エッチング工程後)、26 第2導電層、26A 第2導電層(第1エッチング工程及び第2エッチング工程後)、30 マスク、40 マスク、100 感光性転写材料、SL 実線部、G グレー部、DL 点線部