(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】細胞培養装置及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/02 20060101AFI20220228BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220228BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20220228BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20220228BHJP
【FI】
C12M3/02
C12M1/00 A
C12M1/02 A
C12M1/34 D
(21)【出願番号】P 2020528835
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025813
(87)【国際公開番号】W WO2020009017
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018128455
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 淳史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 英俊
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/056302(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/015561(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/021022(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/155500(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013392(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/013394(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056142(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 ー 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の複数の培養容器と、
前記複数の培養容器を相互に接続する流路と、
前記複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、
前記流路を介して前記複数の培養容器のうちの他のいずれかに移送する移送制御を行う移送制御部と、
前記流路の途中に配置され、前記流路を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタするモニタ装置と、
を含
み、
前記移送制御部は、前記移送制御において移送する細胞懸濁液を、前記流路の、前記モニタ装置が配置された部位を通過させ、
前記移送制御部は、前記モニタ装置によってモニタされた細胞の状態に基づいて、当該細胞を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定める、
細胞培養装置。
【請求項2】
前記複数の培養容器を収容する収容容器を更に含む
請求項1に記載の細胞培養装置。
【請求項3】
前記モニタ装置は、前記流路を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を撮像する撮像装置を含む
請求項
1に記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記移送制御部は、前記モニタ装置によってモニタされた細胞凝集体のサイズが大きい程、当該細胞凝集体を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を短くする、
請求項
1に記載の細胞培養装置。
【請求項5】
3つ以上の複数の培養容器と、
前記複数の培養容器を相互に接続する流路と、
前記複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、前記流路を介して前記複数の培養容器のうちの他のいずれかに移送する移送制御を行う移送制御部と、
前記流路の途中に配置され、前記流路を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタするモニタ装置と、
を含み、
前記モニタ装置は、第1の流通口及び前記第1の流通口に連通する第2の流通口を有するフローセルを含み、
前記流路は、前記第1の流通口及び前記複数の培養容器のうちのいずれか
1つ以上
を含む第1の群に接続された第1の流路と、前記第2の流通口及び前記複数の培養容器のうちの他の2つ以上
を含む第2の群に接続された第2の流路と、を含
み、
前記移送制御部は、前記第1の群の培養容器のいずれかから前記第2の群の培養容器のいずれかへ、又は前記第2の群の培養容器のいずれかから前記第1の群の培養容器のいずれかへ、収容された細胞懸濁液を移送する、
細胞培養装置。
【請求項6】
前記移送制御部は、前記移送制御において、前記複数の培養容器のうちのいずれか2つ以上に収容された細胞懸濁液を、前記複数の培養容器のうちの他の1つの培養容器に移送することにより混合する
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記移送制御部は、前記移送制御において、前記培養容器の内部の圧力制御により細胞懸濁液の移送を行う
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
【請求項8】
前記圧力制御は、前記複数の培養容器のうちの移送対象の細胞懸濁液が収容された培養容器の内部への気体の導入により行われる
請求項
7に記載の細胞培養装置。
【請求項9】
前記気体として、温度及び組成が調整されたガスが用いられる
請求項
8に記載の細胞培養装置。
【請求項10】
前記複数の培養容器の各々に接する伝熱媒体と、
前記伝熱媒体を加熱する熱源と、
を更に含む請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の細胞培養装置。
【請求項11】
3つ以上の複数の培養容器と、前記複数の培養容器を相互に接続する流路と、を含む細胞培養装置の、前記複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を撹拌する撹拌方法であって、
前記複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、前記流路を介して前記複数の培養容器のうちの他のいずれかに移送することにより移送対象の細胞懸濁液を撹拌
し、
前記移送対象の細胞懸濁液が、前記流路を通過している間に、前記移送対象の細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタし、
モニタされた細胞の状態に基づいて、当該細胞を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定める、
撹拌方法。
【請求項12】
モニタされた細胞凝集体のサイズが大きい程、当該細胞凝集体を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を短くする
請求項
11に記載の撹拌方法。
【請求項13】
前記複数の培養容器のうちのいずれか2つ以上に収容された細胞懸濁液を、前記複数の培養容器のうちの他の1つの培養容器に移送することにより混合する
請求項
11又は請求項
12に記載の撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2018年7月5日出願の日本出願第2018-128455号の優先権を主張すると共に、その全文を参照により本明細書に援用する。
開示の技術は、細胞培養装置及び撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養装置に関する技術として、例えば、以下の技術が知られている。
【0003】
例えば、特表2002-531114号公報には、培養菌を収容するための第1及び第2の培養容器、ガス源、培地源、殺菌剤源を含み、2つの培養容器の一方を培地源に、並びに2つの培養容器を互いに選択的に連結させ、他方の培養容器を殺菌剤源に選択的に連結させるための手段を有する導管系を含む装置が記載されている。
【0004】
また、特開2015-188392号公報には、複数の培養容器に培地を供給する培地供給容器と、複数の培養容器として、培養面積の異なる培養容器を備え、複数の培養容器が、それぞれ他の容器との内容物の移送用のポートを一つ備え、培地供給容器に複数の培養容器が培養面積の小さい順にチューブを用いて接続された細胞培養システムが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量の細胞を培地とともに培養容器に収容して培養する場合、細胞の増殖に必要な栄養分及び酸素を、細胞全体に行き渡らせるために、細胞及び培地を含む細胞懸濁液を、撹拌翼を用いて撹拌することが行われている。しかしながら、撹拌翼を用いて細胞懸濁液を撹拌すると、細胞にせん断力が作用し、これによって細胞がダメージを受け、その結果、細胞の増殖性が低下したり、生存率が低下したりするおそれがある。
【0006】
大量培養においては、培地中における栄養分及び酸素の偏りが生じやすくなることから、撹拌処理の重要性が高まる一方、撹拌に必要なエネルギーが大きくなるため、細胞へのダメージが大きくなるものと考えられる。
【0007】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことができる細胞培養装置及び撹拌方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術に係る細胞培養装置は、3つ以上の複数の培養容器と、複数の培養容器を相互に接続する流路と、複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、流路を介して前記複数の培養容器のうちの他のいずれかに移送する移送制御を行う移送制御部と、を含む。
【0009】
これにより、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能となる。
【0010】
開示の技術に係る細胞培養装置は、複数の培養容器を収容する収容容器を更に含んでいてもよい。
【0011】
収容容器がインキュベータとして機能することで、細胞にとって好ましい培養環境を形成することができる。
【0012】
開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置は、流路の途中に配置され、流路を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタするモニタ装置を更に含んでいてもよい。
【0013】
これにより、細胞懸濁液の撹拌処理に並行して、細胞懸濁液に含まれる細胞の全数観察が可能となる。
【0014】
モニタ装置は、流路を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を撮像する撮像装置を含んでいてもよい。
【0015】
これにより、細胞懸濁液の撹拌処理に並行して、細胞懸濁液に含まれる細胞の画像を取得することが可能である。
【0016】
移送制御部は、移送制御において移送する細胞懸濁液を、流路の、モニタ装置が配置された部位を通過させることが好ましい。
【0017】
これにより、細胞懸濁液の撹拌処理に並行して、細胞懸濁液に含まれる細胞の全数観察が可能となる。
【0018】
移送制御部は、モニタ装置によってモニタされた細胞の状態に基づいて、当該細胞を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定める。
【0019】
これにより、移送制御において、細胞の状態に応じた適切なサイクルタイムを設定することが可能となる。
【0020】
培養容器は4つ以上であってもよい。モニタ装置は、第1の流通口及び第1の流通口に連通する第2の流通口を有するフローセルを含んでいてもよい。流路は、第1の流通口及び複数の培養容器のうちのいずれか2つ以上に接続された第1の流路と、第2の流通口及び複数の培養容器のうちの他の2つ以上に接続された第2の流路と、を含んでいてもよい。
【0021】
これにより、培養容器間で細胞懸濁液を往復移動させることなく、1サイクルの移送制御を完了させることができるので、細胞懸濁液の撹拌処理を効率的に行うことが可能となる。
【0022】
移送制御部は、移送制御において、複数の培養容器のうちのいずれか2つ以上に収容された細胞懸濁液を、複数の培養容器のうちの他の1つの培養容器に移送することにより混合してもよい。
【0023】
これにより、複数の培養容器に収容された細胞懸濁液について、撹拌処理と並行して混合処理を行いことができるので、培養容器間での細胞の品質のばらつきを抑制することができる。
【0024】
移送制御部は、移送制御において、培養容器の内部の圧力制御により細胞懸濁液の移送を行ってもよい。また、上記の圧力制御は、複数の培養容器のうちの移送対象の細胞懸濁液が収容された培養容器の内部への気体の導入により行われてもよい。
【0025】
これにより、細胞懸濁液の移送を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能である。
【0026】
上記の圧力制御において、培養容器の内部に導入される気体として、温度及び組成が調整されたガスが用いられてもよい。
【0027】
これにより、細胞にとって好ましい培養環境を形成することができる。
【0028】
開示の技術に係る細胞培養装置は、培養容器の各々に接する伝熱媒体と、伝熱媒体を加熱する熱源と、を更に含んでいてもよい。
【0029】
これにより、培養容器に収容された細胞懸濁液の温度を所望の温度に制御することでき、細胞にとって好ましい培養環境を形成することができる。
【0030】
開示の技術に係る撹拌方法は、3つ以上の複数の培養容器と、複数の培養容器を相互に接続する流路と、を含む細胞培養装置の、複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を撹拌する撹拌方法であって、複数の培養容器のうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、流路を介して複数の培養容器のうちの他のいずれかに移送することにより移送対象の細胞懸濁液を撹拌することを含む。
【0031】
これにより、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能となる。
【0032】
開示の技術に係る撹拌方法は、移送対象の細胞懸濁液が、流路を通過している間に、移送対象の細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタすることを含んでいてもよい。
【0033】
これにより、細胞懸濁液の撹拌処理に並行して、細胞懸濁液に含まれる細胞の全数観察が可能となる。
【0034】
開示の技術に係る撹拌方法は、モニタされた細胞の状態に基づいて、当該細胞を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定めることを含んでいてもよい。この場合、モニタされた細胞凝集体のサイズが大きい程、当該細胞凝集体を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を短くすることが好ましい。
【0035】
これにより、細胞の状態に応じた適切なサイクルタイムを設定することが可能となる。
【0036】
開示の技術に係る撹拌方法は、複数の培養容器のうちのいずれか2つ以上に収容された細胞懸濁液を、複数の培養容器のうちの他の1つの培養容器に移送することにより混合することを含む。
【0037】
これにより、複数の培養容器に収容された細胞懸濁液について、撹拌処理と並行して混合処理を行いことができるので、培養容器間での細胞の品質のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
開示の技術によれば、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置の構成の一例を示す図である。
【
図2A】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2B】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2C】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2D】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2E】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2F】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図2G】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図3】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】開示の技術の実施形態に係る移送制御部が移送制御を行う場合に実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】開示の技術の実施形態に係るヒータを備えた伝熱媒体の構成の一例を示す斜視図である。
【
図6】開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置の構成の一例を示す図である。
【
図8A】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図8B】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図8C】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図8D】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図8E】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図9】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10A】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図10B】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図10C】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図11A】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図11B】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図11C】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図12】開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置の構成の一例を示す図である。
【
図13A】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図13B】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図13C】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図13D】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図13E】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図13F】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示す図である。
【
図14】開示の技術の実施形態に係る移送制御の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0041】
[第1の実施形態]
図1は、開示の技術の第1の実施形態に係る細胞培養装置1の構成の一例を示す図である。細胞培養装置1は、複数の培養容器10A、10B、10C、10D、モニタ装置30および移送制御部40を含んで構成されている。
【0042】
培養容器10A~10Dの各々は、複数の細胞及び細胞凝集体の少なくとも一方を含む細胞懸濁液が収容される容器である。培養容器10A~10Dの形態は、特に限定されず、例えば、ガラス製またはステンレス製の容器またはガス透過性を有するプラスチックフィルムを含んで構成されるバッグの形態を有する容器を使用することが可能である。なお、
図1に示す例では、4つの培養容器10A~10Dを含む構成が例示されているが、細胞培養装置1は、3つまたは5つ以上の培養容器を含んでいてもよい。
【0043】
培養容器10A~10Dは、流路20によって相互に接続されている。流路20は、培養容器10A~10Dの各々に対応して設けられた個別流路21A、21B、21C、21Dと、個別流路21A~21Dを相互に接続する共通流路22を含んで構成されている。個別流路21A~21Dの途中には、それぞれ、バルブ60A、60B、60C、60Dが設けられている。
【0044】
細胞培養装置1は、培養容器10A~10Dの内部の圧力を調整するための圧力調整機構50を有する。圧力調整機構50は、培養容器10A~10Dの内部に導入されるガスが流通するガス導入配管51と、培養容器10A~10Dの内部から排出されたガスが流通するガス排出配管52とを有する。ガス導入配管51は、培養容器10A~10Dの各々に対応して設けられた個別配管51A、51B、51C、51Dを有する。個別配管51A~51Dの途中には、それぞれ、バルブ61A、61B、61C、61Dが設けられている。ガス排出配管52は、培養容器10A~10Dの各々に対応して設けられた個別配管52A、52B、52C、52Dを有する。個別配管52A~52Dの途中には、それぞれ、バルブ62A、62B、62C、62Dが設けられている。圧力調整機構50によって、培養容器10A~10Dの内部の圧力のバランスを調整することにより、培養容器10A~10Dの相互間で、これらに収容されている細胞懸濁液が移送される。なお、培養容器10A~10Dに導入するガスとして、温度及び組成が調整されたガスを用いてもよい。これにより、培養容器10A~10Dにおいて、好ましい培養環境を形成することが可能となる。
【0045】
共通流路22の、個別流路21Cとの接続部と、個別流路21Dとの接続部との間の区間Xには、モニタ装置30が設けられている。モニタ装置30は、共通流路22の区間Xを通過する細胞懸濁液に含まれる細胞をモニタする。モニタ装置30は、フローセル31及び撮像装置33を含んで構成されている。
【0046】
フローセル31は、その全体が、ガラスまたはプラスチック等の光透過性を有する材料で構成されている。フローセル31は、第1の流通口32aと、第1の流通口32aに連通する第2の流通口32bとを有している。
【0047】
撮像装置33は、フローセル31の第1の流通口32aと第2の流通口32bとの間の領域に撮像視野が設定されており、第1の流通口32a及び第2の流通口32bのうちの一方から他方に向けて流れる細胞懸濁液に含まれる細胞(細胞凝集体)を、フローセル31越しに連続的に撮像する。撮像装置33によって撮像された複数の画像は、移送制御部40に送信される。
【0048】
移送制御部40は、培養容器10A~10Dのうちのいずれかに収容された細胞懸濁液を、流路20を介して他のいずれかの培養容器に移送する移送制御を行う。移送制御部40は、バルブ60A~60D、バルブ61A~61D、バルブ62A~62Dに対して制御信号Scを供給して、これらのバルブを選択的に開閉することにより上記の移送制御を行う。移送制御によって移送される細胞懸濁液の液流によって、細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素を細胞全体に行き渡らせることができる。移送制御部40は、細胞懸濁液が、モニタ装置30が配置された共通流路22の区間Xを通過するように、移送制御を行う。
【0049】
移送制御部40は、細胞懸濁液の移送を、培養容器10A~10D毎に、断続的に行う。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞(細胞凝集体)の状態に基づいて、当該細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定める。より具体的には、移送制御部40は、モニタ装置30を構成する撮像装置33から供給される複数の画像から、移送対象の細胞懸濁液に含まれる複数の細胞凝集体の平均サイズを導出する。移送制御部40は、導出した細胞凝集体の平均サイズに基づいて、当該細胞凝集体を含む細胞懸濁液の次の移送までの期間を定める。
【0050】
以下において、移送制御部40における移送制御の一例を、
図2A~
図2Gを参照しつつ説明する。
【0051】
初期状態において、
図2Aに示すように、培養容器10A、10B、10Cには、それぞれ、複数の細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液が収容されており、培養容器10Dは空状態であるものとする。培養容器10A、10B、10Cには、複数の細胞(細胞凝集体)が、培地中に静止した状態で浮遊している。培地中に複数の細胞(細胞凝集体)を浮遊させるために、培地には増粘剤が添加されていてもよい。また、初期状態において、バルブ60A~60D、61A~61D、62A~62Dは、それぞれ閉状態であるものとする。
【0052】
移送制御部40は、バルブ60A、60D、61A、62Dにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Aの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Aの内部が加圧され、
図2Bに示すように、培養容器10Aの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21A及び共通流路22を経由して、培養容器10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。すなわち、モニタ装置30を構成する撮像装置33は、フローセル31を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を連続的に撮像する。撮像装置33は、例えば、移送対象の細胞懸濁液に含まれる全ての細胞(細胞凝集体)を撮像可能な間隔で撮像を行う。なお、撮像装置33は、移送対象の細胞懸濁液に含まれる一部の細胞(細胞凝集体)を撮像してもよい。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60D、61A、62Dを閉状態に制御する。
【0053】
次に、移送制御部40は、バルブ60A、60D、62A、61Dを開状態に制御する。これにより、培養容器10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Dの内部が加圧され、
図2Cに示すように、培養容器10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21D及び共通流路22を経由して、培養容器10Aに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60D、62A、61Dを閉状態に制御する。
【0054】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Aに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Dに移送した後、培養容器10Aに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。なお、培養容器10Dから培養容器10Aに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0055】
次に、移送制御部40は、バルブ60B、60D、61B、62Dにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Bの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器
10Bの内部が加圧され、
図2Dに示すように、培養容器10Bの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21B及び共通流路22を経由して、培養容器10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60B、60D、61B、62Dを閉状態に制御する。
【0056】
次に、移送制御部40は、バルブ60B、60D、62B、61Dを開状態に制御する。これにより、培養容器10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Dの内部が加圧され、
図2Eに示すように、培養容器10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21D及び共通流路22を経由して、培養容器10Bに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60B、60D、62B、61Dを閉状態に制御する。
【0057】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Bに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Dに移送した後、培養容器10Bに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。なお、培養容器10Dから培養容器10Bに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0058】
次に、移送制御部40は、バルブ60C、60D、61C、62Dにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Cの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器
10Cの内部が加圧され、
図2Fに示すように、培養容器10Cの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21C及び共通流路22を経由して、培養容器10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60C、60D、61C、62Dを閉状態に制御する。
【0059】
次に、移送制御部40は、バルブ60C、60D、62C、61Dを開状態に制御する。これにより、培養容器10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Dの内部が加圧され、
図2Gに示すように、培養容器10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、個別流路21D及び共通流路22を経由して、培養容器10Cに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60C、60D、62C、61Dを閉状態に制御する。
【0060】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Cに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Dに移送した後、培養容器10Cに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。なお、培養容器10Dから培養容器10Cに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る細胞培養装置1によれば、細胞懸濁液の移送は、培養容器毎に行われ、1つの培養容器に収容された細胞懸濁液の移送は、間欠的に行われる。
【0062】
図3は、
図2A~
図2Gに示す一連の移送制御に対応するタイミングチャートである。
図3には、細胞懸濁液の「存在」及び「不存在」が培養容器毎に示されている。
図3において、細胞懸濁液の「存在」がハイレベルに対応し、細胞懸濁液の「不存在」がローレベルに対応する。
図3に示すように、移送制御部40は、培養容器10A、10B、10Cの各々と、培養容器10Dとの間での細胞懸濁液の各1往復の移送を1セットとする移送制御を、繰り返し実施する。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞(細胞凝集体)の状態に基づいて、培養容器10A、10B、10Cに収容されている細胞懸濁液の次の移送までの期間(サイクルタイムT)を定める。
【0063】
図4は、移送制御部が、一例として、培養容器10Aに収容された細胞懸濁液について移送制御を行う場合に実施する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS1において、移送制御部40は、バルブ60A、60D、61A、62Dにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Aの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞(細胞凝集体)が、撮像装置33によって撮像される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60D、61A、62Dを閉状態に制御する。
【0065】
ステップS2において、移送制御部40は、撮像装置33によって撮像された細胞の複数の画像を取得する。
【0066】
ステップS3において、移送制御部40は、バルブ60A、60D、62A、61Dを開状態に制御する。これにより、培養容器10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Aに移送される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60D、62A、61Dを閉状態に制御する。
【0067】
ステップS4において、移送制御部40は、ステップS2において取得した複数の画像から、当該細胞懸濁液に含まれる細胞凝集体の平均サイズを導出する。例えば、当該細胞懸濁液に含まれる細胞凝集体の各々について、球形近似して得られる直径の算術平均値を、細胞凝集体の平均サイズとして適用してもよい。
【0068】
ステップS5において、移送制御部40は、例えば、下記の表1に例示されるテーブルを参照することにより、ステップS4において導出した細胞凝集体の平均サイズに対応するサイクルタイムTを導出する。表1に例示されるテーブルにおいて、細胞凝集体の平均サイズ100μm以上150μm未満に対してサイクルタイムT1(例えば6時間~12時間)が割り当てられ、細胞凝集体の平均サイズ150μm以上250μm未満に対してサイクルタイムT2(例えば4時間~10時間)が割り当てられ、細胞凝集体の平均サイズ250μm以上500μm未満に対してサイクルタイムT3(2時間~8時間)が割り当てられている。なお、T1≧T2≧T3である。移送制御部40は、テーブルを参照することにより導出したサイクルタイムTを、培養容器10Aに収容された細胞懸濁液の次の移送までの期間として定める。
【表1】
【0069】
移送制御部40は、培養容器10B及び10Cに収容された細胞懸濁液について移送制御を行う場合についても、上記と同様の処理を実施する。なお、培養容器10A~10Cの各々に収容される細胞懸濁液に含まれる細胞凝集体の平均サイズが概ね同じであることが想定される場合には、培養容器10A~10Cのいずれかに収容された細胞懸濁液に含まれる細胞凝集体の平均サイズに基づいて導出したサイクルタイムTを、他の培養容器に収容された細胞懸濁液の移送制御において適用してもよい。
【0070】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置1によれば、培養容器10A、10B、10Cと、培養容器10Dとの間で細胞懸濁が移送されることで、細胞懸濁液が撹拌される。これにより、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。細胞懸濁液の撹拌を、細胞懸濁液の移送によって行うことで、撹拌翼を用いて撹拌を行う場合と比較して、細胞へのダメージを小さくすることができる。すなわち、開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置1によれば、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能となる。
【0071】
また、開示の技術の実施形態に係る細胞培養装置1によれば、モニタ装置30が、共通流路22の区間Xに配置されており、細胞懸濁液の移送が行われている間、移送対象の細胞懸濁液に含まれる細胞(細胞凝集体)がモニタ装置30によってモニタされる。これにより、細胞懸濁液の撹拌処理と並行して、当該細胞懸濁液に含まれる細胞(細胞凝集体)の全数観察を行うことが可能となる。
【0072】
また、モニタ装置30によってモニタされた細胞(細胞凝集体)の状態に応じて移送制御のサイクルタイムTが定められる。より具体的には、撮像装置33によって撮像された画像から導出された細胞凝集体の平均サイズが相対的に小さい場合には、移送制御のサイクルタイムTとして相対的に長い期間が設定される。一方、撮像装置33によって撮像された画像から導出された細胞凝集体の平均サイズが相対的に大きい場合には、移送制御のサイクルタイムTとして相対的に短い期間が設定される。サイズが相対的に小さい細胞凝集体は、細胞懸濁液の液流によって生じるせん断力に対する耐性が相対的に低く、且つ栄養分及び酸素の必要量は相対的に少ない。一方、サイズが相対的に大きい細胞凝集体は、細胞懸濁液の液流によって生じるせん断力に対する耐性が相対的に高く、且つ栄養分及び酸素の必要量は相対的に多い。従って、上記のように、細胞凝集体の平均サイズに応じて移送制御のサイクルタイムTを定めることで、細胞凝集体のサイズに適した移送制御(撹拌処理)のサイクルタイムTの設定を行うことができる。
【0073】
なお、モニタ装置30による細胞のモニタ結果を、移送制御のサイクルタイムTの設定以外の目的で利用してもよい。例えば、撮像装置33によって撮像された細胞(細胞凝集体)の画像に基づいて、培地交換または継代処理を実施するタイミングを定めてもよい。また、撮像装置33によって撮像された細胞(細胞凝集体)の画像に基づいて、細胞の良否判定を行ってもよい。
【0074】
また、細胞培養装置1は、
図5に示すように、培養容器10A~10Dの各々と接する伝熱媒体80と、伝熱媒体80を加熱するヒータ(熱源)81とを備えていてもよい。伝熱媒体80は、金属または樹脂等の熱伝導率の比較的高い一対の板状部材を含んで構成されており、培養容器10A~10Dの各々は、一対の板状部材の間に挟まれる。一対の板状部材は、相互の間隔が一定となるように構成されている。ヒータ81は、伝熱媒体80の、培養容器10A~10Dの接触面とは反対側の面に取り付けられている。ヒータ
81から発せられる熱は、伝熱媒体80を介して、培養容器10A~10Dの内部に収容された細胞懸濁液に伝導する。ヒータ81の温度は、培養容器10A~10Dに収容された細胞懸濁液が所望の温度(例えば37℃)を維持するように制御される。
【0075】
このように、培養容器10A~10Dを、伝熱媒体80を構成する一対の板状部材の間に挟むことで、培養容器10A~10Dに収容された細胞懸濁液の温度を所望の温度に制御することでき、細胞にとって好ましい培養環境を形成することができる。また、培養容器10A~10Dが、例えばプラスチックフィルムを含んで構成されるバッグの形態を有する場合、細胞懸濁液を移送する際に、移送対象の細胞懸濁液を収容した培養容器の内部を加圧すると、当該培養容器の容積が拡大する。その結果、培養容器の内部の圧力制御が困難となり、細胞懸濁液の払い出し制御が困難となる。培養容器10A~10Dを、伝熱媒体80を構成する一対の板状部材の間に挟むことで、培養容器10A~10Dの内部を加圧した場合の容積の拡大を拘束することができるので、培養容器の内部の圧力制御が容易となり、細胞懸濁液の払い出し制御が容易となる。
【0076】
[第2の実施形態]
図6は、開示の技術の第2の実施形態に係る細胞培養装置1Aの構成の一例を示す図である。
【0077】
細胞培養装置1Aは、培養容器10A~10Dを収容する収容容器70を含んでいる。収容容器70は、インキュベータとしての機能を備えており、収容容器70の内部の温度を一定(例えば37℃)に保持する温度制御機構を有する。また、培養容器10A~10Dがガス透過性を有するプラスチックフィルムを含んで構成されるバッグの形態を有する場合、収容容器70の内部には、組成が調整された酸素及び二酸化炭素を含むガスが導入される。これにより、培養容器10A~10D内に収容された細胞懸濁液に、細胞の増殖に必要な酸素及び二酸化炭素を取り込むことができる。なお、本実施形態において、個別流路21A~21D、共通流路22、ガス導入配管51、ガス排出配管52、モニタ装置30及び移送制御部40は、収容容器70の外部に設けられている。
【0078】
本実施形態に係る細胞培養装置1Aによれば、培養容器10A~10Dは、インキュベータとして機能する収容容器70の内部に収容されるので、培養容器10A~10Dに収容された細胞にとって好ましい培養環境を形成することができる。
【0079】
[第3の実施形態]
図7は、開示の技術の第3の実施形態に係る細胞培養装置1Bの構成の一例を示す図である。
【0080】
細胞培養装置1Bは、培養容器10A~10Dの容積よりも大きい容積を有する培養容器10Eを備える。培養容器10Eは、個別流路21Eを介して共通流路22に接続されている。個別流路21Eの途中には、バルブ60Eが設けられている。ガス導入配管51は、培養容器10Eに対応して設けられた個別配管51Eを有する。個別配管51Eの途中にはバルブ61Eが設けられている。ガス排出配管52は、培養容器10Eに対応して設けられた個別配管52Eを有する。個別配管52Eの途中にはバルブ62Eが設けられている。モニタ装置30は、共通流路22の、個別流路21Dとの接続部と、個別流路21Eとの接続部との間の区間Xに設けられている。
【0081】
図8A~
図8Eは、本実施形態に係る細胞培養装置1Bの移送制御部40における移送制御の一例を示す図である。
【0082】
初期状態において、
図8Aに示すように、培養容器10A~10Dには、それぞれ、複数の細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液が収容されており、培養容器10Eは空状態であるものとする。培養容器10A~10Dには、複数の細胞(細胞凝集体)が、培地中に静止した状態で浮遊している
。
【0083】
また、初期状態において、バルブ60A~60E、61A~61E、62A~62Eは、それぞれ閉状態であるものとする。
【0084】
移送制御部40は、バルブ60A、60B、60E、61A、61B、62Eにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10A及び10Bの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10A及び10Bの内部が加圧され、
図8Bに示すように、培養容器10A及び10Bの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Eに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。すなわち、モニタ装置30を構成する撮像装置33は、フローセル31を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を連続的に撮像する。撮像装置33は、例えば、移送対象の細胞懸濁液に含まれる全ての細胞(細胞凝集体)を撮像可能な間隔で撮像を行う。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60B、60E、61A、61B、62Eを閉状態に制御する。
【0085】
次に、移送制御部40は、バルブ60A、60B、60E、62A、62B、61Eを開状態に制御する。これにより、培養容器10Eの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Eの内部が加圧され、
図8Cに示すように、培養容器10Eの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10A及び10Bに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60B、60E、62A、62B、61Eを閉状態に制御する。
【0086】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10A及び10Bに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Eに移送した後、培養容器10A及び10Bに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。また、初期状態において、培養容器10A及び10Bに収容されている細胞懸濁液は、移送先の培養容器10E内において混合される。なお、本実施形態では、培養容器10Aと培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送と、培養容器10Bと培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送とを同時に行う場合を例示したが、これらの移送を順次行ってもよい。また、培養容器10Eから培養容器10A及び10Bに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0087】
次に、移送制御部40は、バルブ60C、60D、60E、61C、61D、62Eにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10C及び10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10C及び10Dの内部が加圧され、
図8Dに示すように、培養容器10C及び10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Eに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60C、60D、60E、61C、61D、62Eを閉状態に制御する。
【0088】
次に、移送制御部40は、バルブ60C、60D、60E、62C、62D、61Eを開状態に制御する。これにより、培養容器10Eの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10
Eの内部が加圧され、
図8Eに示すように、培養容器10Eの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10C及び10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60C、60D、60E、62C、62D、61Eを閉状態に制御する。
【0089】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10C及び10Dに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Eに移送した後、培養容器10C及び10Dに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。また、初期状態において、培養容器10C及び10Dに収容されている細胞懸濁液は、移送先の培養容器10E内において混合される。なお、本実施形態では、培養容器10Cと培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送と、培養容器10Dと培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送とを同時に行う場合を例示したが、これらの移送を順次行ってもよい。また、培養容器10Eから培養容器10C及び10Dに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0090】
図9は、
図8A~
図8Eに示す一連の移送制御に対応するタイミングチャートである。
図9には、細胞懸濁液の「存在」及び「不存在」が、培養容器毎に示されている。
図9において、細胞懸濁液の「存在」がハイレベルに対応し、細胞懸濁液の「不存在」がローレベルに対応する。
【0091】
図9に示すように、移送制御部40は、培養容器10A~10Dの各々と、培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の各1往復の移送を1セットとする移送制御を、繰り返し実施する。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞の状態に基づいて、培養容器10A~10Dに収容された細胞懸濁液の次の移送までの期間(サイクルタイムT)を定める。
【0092】
本実施形態に係る細胞培養装置1
Bによれば、第1の実施形態に係る細胞培養装置1(
図1参照)と同様、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能である。また、本実施形態に係る細胞培養装置1
Bによれば、培養容器10A及び10Bに収容されている細胞懸濁液が移送先の培養容器10Eにおいて混合され、培養容器10C及び10Dに収容されている細胞懸濁液が移送先の培養容器10Eにおいて混合される。これにより、培養容器間での細胞の品質のばらつきを抑制することが可能となる。
【0093】
図10A~
図10Cは、本実施形態に係る細胞培養装置1Bの移送制御部40における移送制御の他の例を示す図である。
【0094】
初期状態において、
図10Aに示すように、培養容器10A~10Dには、それぞれ、複数の細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液が収容されており、培養容器10Eは空状態であるものとする。培養容器10A~10Dには、複数の細胞(細胞凝集体)が、培地中に静止した状態で浮遊している。また、初期状態において、バルブ60A~60E、61A~61E、62A~62Eは、それぞれ閉状態であるものとする。
【0095】
移送制御部40は、バルブ60A~60E、61A~61D、62Eにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10A~10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10A~10Dの内部が加圧され、
図10Bに示すように、培養容器10A~10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Eに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。すなわち、モニタ装置30を構成する撮像装置33は、フローセル31を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を連続的に撮像する。撮像装置33は、例えば、移送対象の細胞懸濁液に含まれる全ての細胞(細胞凝集体)を撮像可能な間隔で撮像を行う。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A~60E、61A~61D、62Eを閉状態に制御する。
【0096】
次に、移送制御部40は、バルブ60A~60E、62A~62D、61Eを開状態に制御する。これにより、培養容器10Eの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Eの内部が加圧され、
図10Cに示すように、培養容器10Eの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10A~10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A~60E、62A~62D、61Eを閉状態に制御する。
【0097】
このように、移送制御部40は、初期状態において培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Eに移送した後、培養容器10A~10Dに戻す移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。更に、初期状態において、培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液は、移送先の培養容器10E内において混合される。なお、本実施形態では、培養容器10A~10Dの各々と培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送を同時に行う場合を例示したが、これらの移送を順次行ってもよい。また、培養容器10Eから培養容器10A~10Dに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0098】
移送制御部40は、培養容器10A~10Dの各々と、培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の各1往復の移送を1セットとする移送制御を、繰り返し実施する。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞の状態に基づいて、培養容器10A~10Dに収容された細胞懸濁液の次の移送までの期間(サイクルタイムT)を定める。
【0099】
図10A~
図10Cに示す移送制御によれば、培養容器10A~10Dに収容されている全ての細胞懸濁液が、移送先の培養容器10Eにおいて混合される。これにより、培養容器間での細胞の品質のばらつきを抑制する効果を更に高めることができる。
【0100】
図11A~
図11Cは、本実施形態に係る細胞培養装置1Bの移送制御部40における移送制御の他の例を示す図である。
【0101】
初期状態において、
図11Aに示すように、培養容器10A~10Dには、それぞれ、複数の細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液が収容されており、培養容器10Eは空状態であるものとする。培養容器10A~10Dには、複数の細胞(細胞凝集体)が、培地中に静止した状態で浮遊している。また、初期状態において、バルブ60A~60E、61A~61E、62A~62Eは、それぞれ閉状態であるものとする。
【0102】
移送制御部40は、バルブ60A~60E、61A~61D、62Eにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10A~10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10A~10Dの内部が加圧され、
図11Bに示すように、培養容器10A~10Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10Eに移送される。本実施形態では、培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液の一部(例えば半分)が、それぞれ培養容器10Eに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。すなわち、モニタ装置30を構成する撮像装置33は、フローセル31を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を連続的に撮像する。撮像装置33は、例えば、移送対象の細胞懸濁液に含まれる全ての細胞(細胞凝集体)を撮像可能な間隔で撮像を行う。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A~60E、61A~61D、62Eを閉状態に制御する。
【0103】
次に、移送制御部40は、バルブ60A~60E、62A~62D、61Eを開状態に制御する。これにより、培養容器10Eの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Eの内部が加圧され、
図11Cに示すように、培養容器10Eの内部に収容されている細胞懸濁液は、培養容器10A~10Dに移送される。細胞懸濁液が、共通流路22の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A~60E、62A~62D、61Eを閉状態に制御する。移送制御部40は、培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液の一部を培養容器10Eに移送した後、培養容器10A~10Dに戻す処理を、繰り返し実施する。
【0104】
このように、移送制御部40は、初期状態において培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Eとの間で複数回に亘り往復させる移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。更に、初期状態において、培養容器10A~10Dに収容されている細胞懸濁液は、移送先の培養容器10E内において混合される。なお、本実施形態では、培養容器10A~10Dと培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の移送を同時に行う場合を例示したが、これらの移送を順次行ってもよい。また、培養容器10Eから培養容器10A~10Dに細胞懸濁液を戻す場合には、モニタ装置30による細胞のモニタを省略してもよい。
【0105】
移送制御部40は、培養容器10A~10Dの各々と、培養容器10Eとの間での細胞懸濁液の所定回数に亘る往復移動を1セットとする移送制御を、繰り返し実施する。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞の状態に基づいて、培養容器10A~10Dに収容された細胞懸濁液の次の移送までの期間(サイクルタイムT)を定める。
【0106】
[第4の実施形態]
図12は、開示の技術の第4の実施形態に係る細胞培養装置1Cの構成の一例を示す図である。細胞培養装置1Cは、複数の培養容器10A、10B、10C、10D、10E及び10Fを備えている。
【0107】
培養容器10A~10Fは、第1の流路20L及び第2の流路20Rを介して相互に接続されている。第1の流路20Lは、培養容器10A、10B、10Cの各々に対応して設けられた個別流路21A、21B、21Cと、個別流路21A、21B、21C及びフローセル31の第1の流通口32aに接続された共通流路22Lと、を含んで構成されている。個別流路21A、21B、21Cの途中には、それぞれ、バルブ60A、60B、60Cが設けられている。第2の流路20Rは、培養容器10D、10E、10Fの各々に対応して設けられた個別流路21D、21E、21Fと、個別流路21D、21E、21F及びフローセル31の第2の流通口32bに接続された共通流路22Rと、を含んで構成されている。個別流路21D、21E、21Fの途中には、それぞれ、バルブ60D、60E、60Fが設けられている。
【0108】
図13A~
図13Fは、本実施形態に係る細胞培養装置1Cの移送制御部40における移送制御の一例を示す図である。
【0109】
初期状態において、
図13Aに示すように、培養容器10A~10Eには、それぞれ、複数の細胞(細胞凝集体)を含む細胞懸濁液が収容されており、培養容器10Fは空状態であるものとする。培養容器10A~10Eには、複数の細胞(細胞凝集体)が、培地中に静止した状態で浮遊している。また、初期状態において、バルブ60A~60F、61A~61F、62A~62Fは、それぞれ閉状態であるものとする。
【0110】
移送制御部40は、バルブ60A、60F、61A、62Fにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Aの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Aの内部が加圧され、
図13Bに示すように、培養容器10Aの内部に収容されている細胞懸濁液は、第1の流路20L及び第2の流路20Rを経由して、培養容器10Fに移送される。細胞懸濁液が、第1の流路20Lと第2の流路20Rとの間の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。すなわち、モニタ装置30を構成する撮像装置33は、フローセル31を通過する細胞懸濁液に含まれる細胞を連続的に撮像する。撮像装置33は、例えば、移送対象の細胞懸濁液に含まれる全ての細胞(細胞凝集体)を撮像可能な間隔で撮像を行う。なお、撮像装置33は、移送対象の細胞懸濁液に含まれる一部の細胞(細胞凝集体)を撮像してもよい。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60A、60F、61A、62Fを閉状態に制御する。
【0111】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Aに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Fに移送する移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。
【0112】
次に、移送制御部40は、バルブ60D、60A、61D、62Aにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Dの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Dの内部が加圧され、
図13Cに示すように、培養容器10
Dの内部に収容されている細胞懸濁液は、第1の流路20L及び第2の流路20Rを経由して、培養容器10Aに移送される。細胞懸濁液が、第1の流路20Lと第2の流路20Rとの間の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60D、60A、61D、62Aを閉状態に制御する。
【0113】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Dに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Aに移送する移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。
【0114】
次に、移送制御部40は、バルブ60B、60D、61B、62Dにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Bの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Bの内部が加圧され、
図13Dに示すように、培養容器10Bの内部に収容されている細胞懸濁液は、第1の流路20L及び第2の流路20Rを経由して、培養容器10Dに移送される。細胞懸濁液が、第1の流路20Lと第2の流路20Rとの間の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60B、60D、61B、62Dを閉状態に制御する。
【0115】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Bに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Dに移送する移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。
【0116】
次に、移送制御部40は、バルブ60E、60B、61E、62Bにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Eの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Eの内部が加圧され、
図13Eに示すように、培養容器10Eの内部に収容されている細胞懸濁液は、第2の流路20R及び第1の流路20Lを経由して、培養容器10Bに移送される。細胞懸濁液が、第1の流路20Lと第2の流路20Rとの間の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60E、60B、61E、62Bを閉状態に制御する。
【0117】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Eに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Bに移送する移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。
【0118】
次に、移送制御部40は、バルブ60C、60E、61C、62Eにそれぞれ制御信号Scを供給することで、これらのバルブを開状態に制御する。これにより、培養容器10Cの内部にガス導入配管51を介してガスが導入され、培養容器10Cの内部が加圧され、
図13Fに示すように、培養容器10Cの内部に収容されている細胞懸濁液は、第1の流路20L及び第2の流路20Rを経由して、培養容器10Eに移送される。細胞懸濁液が、第1の流路20Lと第2の流路20Rとの間の区間Xを通過する間、当該細胞懸濁液に含まれる細胞が、モニタ装置30によってモニタされる。撮像装置33によって撮像された細胞の画像は、移送制御部40に供給される。移送制御部40は、細胞懸濁液の移送完了後、バルブ60C、60E、61C、62Eを閉状態に制御する。
【0119】
このように、移送制御部40は、初期状態において、培養容器10Cに収容されている細胞懸濁液を、培養容器10Eに移送する移送制御を行う。これにより、移送された細胞懸濁液は撹拌され、培地に含まれる栄養分及び酸素が細胞全体に行き渡る。
【0120】
図14は、
図13A~
図13Fに示す一連の移送制御に対応するタイミングチャートである。
図14には、細胞懸濁液の「存在」及び「不存在」が、培養容器毎に示されている。
図14において、細胞懸濁液の「存在」がハイレベルに対応し、細胞懸濁液の「不存在」がローレベルに対応する。
図14に示すように、移送制御部40は、培養容器10A~10Fの相互間での細胞懸濁液の各1回の移送を1セットとする移送制御を、繰り返し実施する。移送制御部40は、モニタ装置30によってモニタされた細胞の状態に基づいて、培養容器10A~10Fに収容された細胞懸濁液の次の移送までの期間(サイクルタイムT)を定める。
【0121】
本実施形態に係る細胞培養装置1Cによれば、第1の実施形態に係る細胞培養装置1(
図1参照)と同様、細胞懸濁液の撹拌を、細胞へのダメージを抑制しつつ行うことが可能である。また、本実施形態に係る細胞培養装置1Cによれば、第1の流路20Lに接続された培養容器10A、10B、10Cのいずれかと、第2の流路20Rに接続された培養容器10D、10E、10Fのいずれかとの間で、細胞懸濁液を往復移動させることなく、1サイクルの移送制御を完了させることができるので、細胞懸濁液の撹拌処理を効率的に行うことが可能となる。
【0122】
なお、本実施形態では、1つの培養容器に収容された細胞懸濁液を他の1つの培養容器に移送する場合を例示したが、2つ以上の培養容器に収容された細胞懸濁液を、他の1つまたは2つ以上の培養容器に移送してもよい。これにより、2つ以上の培養容器に収容された細胞懸濁液を移送先の培養用容器において混合してもよい。