(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-25
(45)【発行日】2022-03-07
(54)【発明の名称】位置測定システム、ゼロ調整方法、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220228BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220228BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01B11/00 Z
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021010833
(22)【出願日】2021-01-27
(62)【分割の表示】P 2019552137の分割
【原出願日】2018-02-06
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン、マールテン、ヨゼフ
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01970666(EP,A1)
【文献】特開2010-123950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
9/00-9/10
G03F 7/20-7/24
9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の位置を測定するように構成された位置測定システムであって、
第1放射ビームおよび第2放射ビームを提供する光源と、
前記第1放射ビームに基づいて第1測定ビームを提供し、前記第2放射ビームに基づいて第2測定ビームおよび第4測定ビームを提供する光学システムと、
前記第1測定ビームおよび前記第2測定ビームを受け取る第1検出器と、
前記第4測定ビームを受け取る第2検出器と、
前記第1測定ビームと前記第2測定ビームの干渉に基づいて位置を決定するように構成された変位干渉計と、
前記第2測定ビームと前記第4測定ビームに基づく飛行時間に基づいて位置を決定するように構成された飛行時間型センサと、
を備え、
前記変位干渉計は、第1キャプチャ範囲を有し、
前記飛行時間型センサは、前記第1キャプチャ範囲よりも大きい第2キャプチャ範囲を有し、
前記飛行時間型センサは、前記第1キャプチャ範囲よりも小さい誤差を有する、
位置測定システム。
【請求項2】
前記光学システムは、前記第1放射ビームに基づいて第3測定ビームを提供するように構成され、
前記第2検出器は、前記第3測定ビームを受け取るように構成され、
前記変位干渉計は、前記第3測定ビームおよび前記第4測定ビームの干渉に基づいて位置を決定するよう構成される、請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
当該位置測定システムは、処理ユニットを備え、
当該位置測定システムはゼロ調整モードを有し、該ゼロ調整モードにおいて、前記処理ユニットは、前記飛行時間型センサからの出力に基づいて前記第2キャプチャ範囲内で前記物体の粗い位置を決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記粗い位置および前記変位干渉計からの出力に基づいて前記物体の細かい位置を決定するように構成される、請求項1または2に記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記変位干渉計は、異なる波長からの情報を組み合わせることによって形成される有効波長を有する多波長干渉計であり、前記第1キャプチャ範囲は、前記有効波長のキャプチャ範囲に対応し、前記ゼロ調整モードにおいて、前記処理ユニットは、決定された前記粗い位置と前記有効波長に関連する前記変位干渉計からの出力に基づいて、前記第1キャプチャ範囲内で前記物体のリファインされた位置を決定するように構成され、前記ゼロ調整モードにおいて、前記処理ユニットは、決定された前記リファインされた位置と前記異なる波長の1つに関連する変位干渉計からの出力に基づいて前記物体の細かい位置を決定するように構成され、決定された前記リファインされた位置の誤差は、前記異なる波長の1つの第3キャプチャ範囲よりも小さい、請求項3に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記飛行時間型センサは、変調信号で前記第2放射ビームを変調する変調器を備える、請求項1から4のいずれのいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項6】
前記変調信号の変調周波数は、前記第1放射ビームと前記第2放射ビームとの周波数の差と異なる、請求項5に記載の位置測定システム。
【請求項7】
当該位置測定システムは、前記第1放射ビームおよび前記第2放射ビームと相互作用するかまたは相互作用しないかのいずれかで動作可能な2つの偏光子を備え、
前記2つの偏光子が前記第1放射ビームおよび前記第2放射ビームと相互作用するとき、当該位置測定システムは前記飛行時間型センサとして動作し、
前記2つの偏光子が前記第1放射ビームおよび前記第2放射ビームと相互作用しないとき、当該位置測定システムは前記変位干渉計として動作する、請求項1から
4のいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項8】
前記光学システムは、前記物体と相互作用することなく、第1光路に沿って前記第1測定ビームを導き、前記第1光路とは異なる第2光路に沿って前記第2測定ビームを導き、前記第2測定ビームが前記物体と相互作用した後、前記第1測定ビームおよび前記第2測定ビームが少なくとも部分的に互いに干渉して、第1検出ビームを形成することを可能とするよう構成される、請求項1から7のいずれかに記載の位置測定システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の位置測定システムを備えるリソグラフィ装置であって、
前記物体が当該リソグラフィ装置の一部である、リソグラフィ装置。
【請求項10】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記放射ビームの断面にパターンを放射ビームに付与して、パターン付き放射ビームを形成することができるパターニングデバイスを支持するように構築されたサポートと、
基板を保持するよう構築された基板テーブルと、
前記パターン付き放射ビームを前記基板のターゲット部分に投影するように構成された投影システムと、を備え、
前記物体は、前記投影システム、前記サポートおよび前記基板テーブルの一部を含む、請求項9に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
物体の位置を測定するように構成され、第1キャプチャ範囲を有する変位干渉計と、前記第1キャプチャ範囲よりも大きい第2キャプチャ範囲を有し且つ前記第1キャプチャ範囲よりも小さい誤差を有する飛行時間型センサと、を備える位置測定システムをゼロ調整する方法であって、以下のステップ:
a)前記飛行時間型センサを使用して、前記第2キャプチャ範囲内で前記物体の粗い位置を決定することと、
b)前記変位干渉計と決定された前記粗い位置を使用して、前記物体の細かい位置を決定することと、
c)第1放射ビームおよび第2放射ビームを提供することと、
d)前記第1放射ビームに基づいて第1測定ビームおよび第3測定ビームを提供し、前記第2放射ビームに基づいて第2測定ビームおよび第4測定ビームを提供することと、
e)前記第2測定ビームおよび前記第4測定ビームに基づく飛行時間に基づいて前記粗い位置を決定することと、
f)i)前記第1測定ビームと前記第2測定ビームの干渉に基づいて、またはii)前記第1測定ビームと前記第2測定ビームの干渉および前記第3測定ビームと前記第4測定ビームの干渉に基づいて、前記細かい位置を決定することと、
を備える方法。
【請求項12】
ステップf)はステップe)の後に実行され、ステップe)の間、前記位置測定システムは、飛行時間型センサとしてのみ機能し、ステップf)の間、前記位置測定システムは、変位干渉計としてのみ機能するように調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載の位置測定システムまたは請求項9または10に記載のリソグラフィ装置を使用する、デバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2017年3月22日に出願された欧州出願17162292.1号および2018年1月11日に出願された欧州出願18151242.7号の利益を主張し、その全体が参照により本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、位置測定システム、位置測定システムをゼロ調整(zeroing)する方法、そのような位置測定システムを備えるリソグラフィ装置、およびそのような位置測定システムを使用するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常基板のターゲット部分に与える機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。このような場合、パターニングデバイス(代替的にマスクまたはレチクルと称される)を用いてICの個々の層の上に形成されるべき回路パターンが生成されうる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェハ)のターゲット部分(例えば一つまたは複数のダイの一部を含む)に転写されることができる。パターンの転写は、典型的に、基板上に設けられる放射感受性材料(レジスト)の層上への結像を介する。一般に、一つの基板は、連続的にパターン化される隣接するターゲット部分のネットワークを含むであろう。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体を一度にターゲット部分に露光することによって各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパと、所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームを介してパターンをスキャンしながら、基板をこの方向に平行または反平行に同期してスキャンすることによって各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナを含む。 基板上にパターンをインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
リソグラフィ装置は、通常、パターンをターゲット部分に正確に転写するために位置を非常に正確に知る必要がある複数の可動コンポーネントを含む。位置を取得する鍵は、位置測定システムである。アプリケーションと必要な精度に応じて、位置測定システムは、測定ビームの少なくとも1つが測定波の位相を変更するための可動コンポーネント上の物体、例えばターゲットと相互作用した後、2つの測定ビームを互いに干渉させるという原理に基づいている。干渉後の強度を検出することにより、測定ビーム間の位相差を表す信号を取得できる。したがって、信号は、可動コンポーネントの位置も表す。
【0005】
干渉計などの相対変位測定原理に基づく位置測定システムは、通常、物体の位置を決定するために物体の相対変位の後続の測定に使用できる絶対位置基準を決定するゼロ調整モードを有する。ゼロ調整は、たとえば、測定ビームの中断が発生し、位置情報が失われた後に実行される。
【0006】
追加のセンサがなければ、単一波長干渉計のキャプチャ範囲は波長のほんの数分の1であり、これは十分ではない。干渉計のキャプチャ範囲は、異なる波長からの情報を組み合わせて個々の波長よりもはるかに大きな有効波長を形成する多波長干渉計を使用して拡大することができる。有効波長は、代わりに合成波長と呼ばれてもよい。あるいは、物体と相互作用したビームの重心位置を測定する位置検出装置をゼロ調整の目的に使用することができる。
【0007】
しかし、現在のゼロ調整方法の欠点は、光源と物体との間の距離が増加すると、追加の波長またはセンサを使用してもキャプチャ範囲が十分でないか、精度が十分ではないことである。さらなる欠点は、追加のセンサが余分な体積を占有し、干渉計よりも可動コンポーネント上の異なるターゲットに対して測定することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改善されたキャプチャ範囲および/または改善された精度を有する位置測定システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によれば、物体の位置を測定するように構成された位置測定システムが提供される。この位置測定システムは、
第1キャプチャ範囲を有する変位干渉計と、
第1キャプチャ範囲よりも大きい第2キャプチャ範囲を有し、且つ第1キャプチャ範囲よりも小さい誤差を有する飛行時間型センサと、
処理ユニットと、を備える。
当該位置測定システムはゼロ調整モードを有し、処理ユニットは、飛行時間型センサからの出力に基づいて、第2キャプチャ範囲内で物体の粗い位置を決定するように構成され、
処理ユニットは、決定された粗い位置および変位干渉計からの出力に基づいて物体の細かい位置を決定するように構成される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、物体の位置を測定するよう構成された位置測定システムが提供される。この位置測定システムは、
波長可変光源と、
波長可変光源により出射された放射に作用する音響光学変調器と、
音響光学変調器と同じ放射に作用する分散補償器と、を備える。
【0011】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る位置測定システムを備えるリソグラフィ装置が提供される。このリソグラフィ装置において、物体はリソグラフィ装置の一部である。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、物体の位置を測定するように構成され、
第1キャプチャ範囲を有する変位干渉計と、
第1キャプチャ範囲よりも大きい第2キャプチャ範囲を有し、且つ第1キャプチャ範囲よりも小さい誤差を有する飛行時間型センサと、
を備える位置測定システムをゼロ調整する方法が提供される。この方法は、以下のステップ:
a)飛行時間型センサを使用して、第2キャプチャ範囲内で物体の粗い位置を決定すること、および
b)変位干渉計と決定された粗い位置を使用して、物体の細かい位置を決定すること、を備える。
【0013】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る位置測定システムおよび本発明に係るリソグラフィ装置を使用するデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施の形態は、単なる一例として、添付の概略図を参照して説明される。図面において、対応する参照符号は対応する部品を示す。
【
図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る位置測定システムを概略的に示す図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に係る位置測定システムを概略的に示す図である。
【
図4】本発明のさらなる実施形態に係る位置測定システムの一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはEUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板を正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTaまたはWTbと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されるパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを含む)ターゲット部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSを備える。
【0016】
照明システムは、放射を方向付け、成形し、および/または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型または他の形式の光学素子、もしくは、これらの任意の組み合わせといった様々な形式の光学素子を含んでもよい。
【0017】
サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを支持する、すなわちパターニングデバイスMAの重量を支える。それは、パターニングデバイスMAの向き、リソグラフィ装置の設計、および、例えばパターニングデバイスMAが真空環境で保持されるか否かといった他の条件に応じた態様でパターニングデバイスMAを保持する。サポート構造MTは、機械式、真空式、静電式または他の固定技術を用いてパターニングデバイスMAを保持することができる。サポート構造MTは、フレームまたはテーブルであってもよく、例えば、必要に応じて固定式または可動式であってもよい。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSに対して所望の位置にあることを確実にする。本明細書における「レチクル」または「マスク」という用語の使用はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義と見なすことができる。
【0018】
本書で用いる「パターニングデバイス」の用語は、放射ビームの断面にパターンを付与して基板Wのターゲット部分にパターンを生成するように用いることのできる任意のデバイスを称するものとして広く解釈されるべきである。放射ビームに付されるパターンは、例えば、パターンが位相シフトフィーチャやいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板Wのターゲット部分の所望のパターンと正確に一致しなくてもよいことに留意されよう。一般に、放射ビームに付されるパターンは、集積回路といったターゲット部分に生成されるデバイス内の特定の機能層に一致するであろう。
【0019】
パターニングデバイスMAは、透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、さらに各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、マトリックス状に配列される小型のミラーを採用し、各ミラーは入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜できる。傾斜されるミラーは、ミラーマトリックスにより反射される放射ビームにパターンを付与する。
【0020】
本書で用いられる「放射」および「ビーム」の用語は、いかなる種類の電磁的な放射を包含し、紫外(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm、または、その近傍の波長を有する)、極短紫外(EUV)放射(例えば5-20nmの範囲の波長を有する)、および、イオンビームや電子ビームといった粒子ビームを含む。
【0021】
本書で用いる「投影システム」の用語は、用いられる露光放射や、液浸液の使用または真空の使用といった他の要素について適切であれば、屈折型、反射型、屈折反射型、磁気型、電磁気型および静電型の光学システムまたはこれらの任意の組み合わせを含む、任意の形式の投影システムを包含するもの広く解釈されるべきである。本書での「投影レンズ」の用語の任意の使用は、より一般的な用語である「投影システム」と同義とみなしてもよい。
【0022】
図示されるように、装置は透過型である(例えば透過型マスクを用いる)。代わりに、装置が反射型であってもよい(例えば上述のような形式のプログラマブルミラーアレイを用いるか、反射型マスクを用いる)。
【0023】
リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有するタイプのものであってもよい。このような「多段の」マシンでは、追加のテーブルを並行して使用したり、1つ以上の他のテーブルを露出に使用しながら、1つ以上のテーブルで準備ステップを実行したりできる。
図1の例の2つの基板テーブルWTaとWTbは、これを図示したものである。本明細書で開示される本発明は、スタンドアロン方式で使用することができるが、特に、シングルまたはマルチステージ装置のいずれかの露光前測定段階で追加の機能を提供することができる。
【0024】
リソグラフィ装置は、基板Wの少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)でカバーされ、投影システムPSと基板Wの間の空間が満たされる形式であってもよい。液浸液はリソグラフィ装置の他の空間、例えばパターニングデバイスMAと投影システムPSの間に適用されてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増大するための技術として周知である。本書で用いられる「液浸」の用語は、基板Wなどの構造が流体中に水没しなければならないこと意味するのではなく、むしろ露光中に投影システムPSと基板Wの間に流体が配置されることを意味するのみである。
【0025】
図1を参照すると、照明システムILは放射ビームを放射源SOから受ける。放射源SOおよびリソグラフィ装置は、例えば放射源SOがエキシマレーザである場合、別体であってもよい。このような場合、放射源SOはリソグラフィ装置の一部を形成するとみなされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILに向けて、例えば適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDの助けを借りて通過する。別の場合、例えば放射源が水銀ランプの場合、放射源がリソグラフィ装置の一体的な部分であってもよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じて、ビームデリバリシステムBDとともに放射システムと称されてもよい。
【0026】
イルミネータILは、放射ビームの角度および/または空間強度分布を調整するためのアジャスタADを含んでもよい。一般に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側半径範囲および/または内側半径範囲(通常それぞれσアウタ、σインナと呼ばれる)を調整できる。また、イルミネータILは、インテグレータINやコンデンサCOなどの様々な他の要素を含んでもよい。イルミネータは、ビーム断面における所望の均一性及び強度分布を有するように放射ビームを調整するために用いられてもよい。
【0027】
放射ビームBは、サポート構造MT(例えばマスクテーブル)上に保持されるパターニングデバイスMA(例えばマスク)に入射し、パターニングデバイスMAによりパターン化される。パターニングデバイスMAを通過すると、放射ビームBは、基板Wのターゲット部分Cにビームを合焦させる投影システムPSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば干渉計装置、リニアエンコーダまたは静電容量センサ)の助けを借りて、例えば放射ビームBの経路上に異なるターゲット部分Cが位置するように基板テーブルWTa/WTbを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMおよび別の位置センサ(これは
図1に明示されていない)を用いて、例えばマスクライブラリからの機械検索後またはスキャン中に、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。一般に、サポート構造MTの移動は、第1位置決め装置PMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗い位置決め)およびショートストロークモジュール(細かい位置決め)の助けにより実現することができる。 同様に、基板テーブルWTa/WTbの移動は、第2位置決め装置PWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。(スキャナとは対照的に)ステッパの場合、サポート構造MTはショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよく、または固定されてもよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1,M2および基板アライメントマークP1,P2を用いてアライメントされうる。基板アライメントマークが専用のターゲット部分を占めるように描かれているが、それらがターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブラインアライメントマークとして知られる)。同様に、パターニングデバイスMAに二以上のダイが設けられる場合には、マスクアライメントマークM1,M2がダイの間に配置されてもよい。
【0028】
図示される装置は、少なくともスキャンモードで使用されることができる。スキャンモードでは、サポート構造MTおよび基板テーブルWTa/WTbが同期してスキャンされる間、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(つまり、単一動的露光)。サポート構造MTに対する基板テーブルWTa/WTbの速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性および像反転特性により決定されうる。スキャンモードにおいて、露光フィールドの最大サイズは、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向の)幅を制限する一方で、スキャン動作の長さは、ターゲット部分の(スキャン方向の)高さを決定する。
【0029】
スキャンモードに加えて、図示される装置は以下のモードのうち少なくとも一つで使用することができる。
1.ステップモードでは、サポート構造MTおよび基板テーブルWTa/WTbが実質的に静止状態とされる間、放射ビームに付与されたパターンの全体が目標部分Cに一度で投影される(つまり、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTa/WTbがX方向および/またはY方向にシフトされ、その結果、異なる目標部分Cを露光できる。ステップモードにおいて、露光フィールドの最大サイズは、単一静的露光にて結像される目標部分Cのサイズを制限する。
2.別のモードでは、サポート構造MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態を維持し、基板テーブルWTa/WTbが移動またはスキャンされる間、放射ビームに付与されるパターンが目標部分Cに投影される。このモードにおいて、一般にパルス放射源が用いられ、基板テーブルWTa/WTbの移動後またはスキャン中の一連の放射パルスの間に必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この動作モードは、上述のタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用可能である。
【0030】
上述の使用モードを組み合わせてもよいし、および/または、上述の使用モードに変更を加えてもよく、または完全に異なる使用モードを用いてもよい。
【0031】
リソグラフィ装置LAは、二つの基板テーブルWTaおよびWTbおよび二つのステーションを有するいわゆるデュアルステージ形式のものであり、露光ステーションおよび測定ステーションの間で基板テーブルを交換できる。一方の基板テーブル上の一方の基板が露光ステーションにて露光されている間、別の基板が測定ステーションにて他方の基板テーブル上に装填されることができ、様々な準備ステップが実行される。準備ステップは、レベルセンサLSを用いて基板の表面をマッピングすること、および、アライメントセンサASを用いて基板上のアライメントマーカの位置を測定することを含んでもよい。これは、装置のスループットの実質的な増大を可能にする。仮に位置センサIFが測定ステーションまたは露光ステーションにある間に基板テーブルの位置を測定できなければ、双方のステーションにて基板テーブルの位置の追跡を可能にするように第2位置センサが設けられてもよい。
【0032】
装置は、記載された様々なアクチュエータおよびセンサのすべての動きおよび測定を制御するリソグラフィ装置制御ユニットLACUをさらに含む。制御ユニットLACUはまた、装置の動作に関連する所望の計算を実施するための信号処理およびデータ処理能力を含む。実際には、制御ユニットLACUは多くのサブユニットのシステムとして実現され、各サブユニットは、装置内のサブシステムまたはコンポーネントのリアルタイムのデータ取得、処理、および制御を処理する。例えば、1つの処理サブシステムは、基板位置決め装置PWのサーボ制御専用にすることができる。別々のユニットで、粗いアクチュエータと細かいアクチュエータ、または異なる軸を扱うこともできる。別のユニットが位置センサIFの読み出し専用になっていてもよい。装置の全体的な制御は、中央処理装置によって制御され、これらのサブシステム処理ユニット、オペレータ、およびリソグラフィ製造プロセスに関与する他の装置と通信してもよい。
【0033】
図2は、矢印MDによって示される方向に移動可能な物体OBの位置を測定するための
図1のリソグラフィ装置の位置測定システムを概略的に示す。可動物体OBは、ここでは例として一般的に説明されているが、実際には、リソグラフィ装置の任意の可動コンポーネント、例えば、パターニングデバイスMA、基板テーブルWT、または投影システムPSの光学素子を支持するように構成されたサポート構造MTであり得る。
【0034】
図2の位置測定システムは、第1偏光を有する第1放射ビームRB1と、第1偏光とは異なる第2偏光を有する第2放射ビームRB2とを出力する光源LS、この例ではヘテロダイン光源LSを含む。第1および第2放射ビームRB1、RB2は、第1ビームスプリッタBS1を使用して互いに分離され、第1および第2放射ビームRB1、RB2の周波数を調整するために音響光学変調器AOMを通過する。したがって、第1放射ビームRB1は第1周波数を有し、第2放射ビームRB2は第1周波数とは異なる第2の周波数を有する。
【0035】
位置測定システムは、第1光学素子OE1、第2ビームスプリッタBS2、第2光学素子OE2、第1検出器D1、第2検出器D2、および処理ユニットPUをさらに含む。第1光学素子OE1、第2ビームスプリッタBS2、および第2光学素子OE2は、ヘテロダイン光源LS、第1ビームスプリッタBS1および音響光学変調器AOMも含む光学システムの一部である。
【0036】
光学系は、第1放射ビームRB1から第1測定ビームMB1を取得し、第1光学素子OE1から始まり、第2ビームスプリッタBS2を過ぎて第2光学素子OE2に向かい、そしてその後、物体OBと相互作用することなく第1検出器D1に向かう第1光路に沿って第1測定ビームMB1を導く。
【0037】
光学システムはさらに、第2放射ビームRB2から第2測定ビームMB2を取得し、第1光学素子OE1で始まり、第2ビームスプリッタBS2および第2光学素子OE2を通過して、物体上の反射器REと相互作用し、そしてその後、再び第2光学素子OE2を通過して第1検出器D1に向かう第2光路に沿って第2の測定ビームMB2を導く。反射器REはここでは再帰反射器として具体化されているが、平面鏡を反射器REとして使用することも可能である。
【0038】
第2光学素子OE2と第1検出器D1との間で、第1および第2測定ビームMB1、MB2は、少なくとも部分的に互いに干渉して、第1検出器D1によって受信される第1検出ビームDB1を形成する。
【0039】
第1および第2測定ビームMB1、MB2が互いに干渉する方法は、第1および第2測定ビームMB1、MB2の間の位相差に依存し、これは第1光路と第2光路との間の長さの差に依存する。長さの違いは、物体OB上の反射器REの位置に依存する。したがって、第1検出器D1の出力OD1は、物体OBの位置を表す。
【0040】
また、光学システムは、第1放射ビームRB1から第3測定ビームMB3を取得し、第1光学素子OE1で始まり第2ビームスプリッタBS2を介して第2検出器D2に向かう第3光路に沿って第3測定ビームMB3を導く。
【0041】
光学システムはさらに、第2放射ビームRB2から第4測定ビームMB4を取得し、第3測定ビームと同じ第3光路に沿って第4測定ビームMB4を導く。
【0042】
第2ビームスプリッタBS2と第2検出器D2との間で、第3および第4測定ビームMB3、MB4は、少なくとも部分的に互いに干渉して、第2検出器D2によって受信される第2検出ビームを形成する。
【0043】
第3および第4測定ビームMB3、MB4の干渉は、第1および第2測定ビームMB1、MB2間の光路差に関連する位相を、第2ビームスプリッタBS2の上流の光学システムの変動、光源LSの変動を含む、によって生じる誤差として正確に決定し、その後第1および第2測定ビームMB1,MB2の干渉と第3および第4測定ビームMB3,MB4の干渉を比較するときに相殺するための基準を形成できる。
【0044】
位置測定システムは、第2放射ビームRB2を位相変調または振幅変調または偏光変調する変調器MOをさらに備える。変調された第2放射ビームRB2は、第2および第4測定ビームMB2、MB4の基礎を形成する。第2測定ビームMB2は、第2光路に沿って導かれ、物体OB上の基準REと相互作用し、第1検出器D1によって受け取られる。第4測定ビームMB4は、第3光路に沿って導かれ、第2検出器D2によって受け取られる。したがって、第2測定ビームMB2および第4測定ビームMB4に与えられる変調信号は、第1および第2検出器D1、D2の両方によって検出可能であり、変調信号が第1検出器D1で検出される瞬間と変調信号が第2検出器D2で検出される瞬間の時間差は、第2光路と第3光路との間の光路長の差に依存し、したがって方向MDにおける物体OBの位置に依存する。言い換えれば、第1および第2検出器D1、D2で検出された変調信号間の位相差は、第2光路と第3光路との間の光路長の差、したがって方向MDにおける物体OBの位置に依存する。
【0045】
したがって、位置測定システムは、物体OBの位置が干渉に基づいて測定される変位干渉計と、物体OBの位置が飛行時間に基づいて測定される飛行時間型センサとを備える。
図2によるこの位置測定システムの利点は、変位干渉計と飛行時間型センサが光学部品を共有することで統合されていることである。変位干渉計と飛行時間型センサは、飛行時間測定に使用される変調信号が干渉測定に使用される測定ビームに重畳される多くの光学部品を共有するため、両方の測定に同じ検出器を使用できる。
【0046】
位置測定システムは、第1検出器D1の出力OD1および第2検出器D2の出力OD2を受信する処理ユニットPUをさらに含み、出力OD1、OD2は、飛行時間型センサからの情報、すなわち第1出力、および変位干渉計からの情報、すなわち第2出力を含む。
【0047】
変位干渉計と飛行時間型センサの組み合わせを使用する利点は、変位センサの比較的高い精度であるが比較的小さな第1キャプチャ範囲が、飛行時間型センサの比較的低い精度であるが比較的大きいキャプチャ範囲と組み合わされることである。飛行時間型センサの誤差が第1キャプチャ範囲よりも小さい場合、飛行時間型センサをゼロ調整モードで使用して、最初に第1出力から物体OBの粗い位置を決定し、その後、変位干渉計を使用して、第2出力と決定された粗い位置に基づいて物体OBの細かい位置を決定できる。飛行時間型センサの誤差は、飛行時間型センサでの測定の不完全性により、物体OBの特定の位置の測定値が変化する可能性がある範囲である。誤差が小さいほど、飛行時間型センサはより正確になる。飛行時間型センサの誤差が第1キャプチャ範囲よりも小さい場合、飛行時間型センサが物体OBの粗い位置を決定できる不確実性は、第1キャプチャ範囲よりも小さい範囲内にある。
【0048】
従って、位置測定システムは、処理ユニットPUが飛行時間型センサから第1出力を受け取り、第2キャプチャ範囲内の第1出力OD1から物体OBの粗い位置を表す第1信号を決定するように構成されるゼロ調整モードを有する。位置測定システムは、処理ユニットPUが変位干渉計から第2出力OD2を受け取り、第2出力OD2および第1信号から物体OBの細かい位置を表す第2信号を決定するように構成される測定モードを有する。
【0049】
飛行時間型センサと変位干渉計を同時に使用できるという事実により、この実施形態では、変調器MOによって導入される変調周波数は、音響光学変調器AOMの下流の第1および第2放射ビームRB1、RB2間の周波数の差と実質的に異なることが好ましい。これにより、処理ユニットが第1出力OD1と第2出力OD2を区別しやすくなる。
【0050】
これまで、変位干渉計は単一波長干渉計として説明されてきたが、破線では、変位干渉計を多波長干渉計に変える変位干渉計の拡張が示されている。
【0051】
拡張は、第3放射ビームRB3および第4放射ビームRB4を提供する第2光源LS2および第3ビームスプリッタBS3を示す。第3および第4放射ビームRB3、RB4の両方は、音響光学変調器AOM2の下流で第3および第4放射ビームRB3、RB4の周波数が互いに異なるように、音響光学変調器AOM2を通過する。好ましくは、音響光学変調器AOM2の下流の第3および第4放射ビームRB3、RB4間の周波数差は、処理ユニットが異なる波長を簡単に区別できるように、音響光学変調器AOMの下流第1および第2放射ビームRB1、RB2間の周波数差と実質的に異なる。
【0052】
次いで、第3放射ビームRB3は、第3放射ビームRB3の一部が第1光路に沿って導かれ、第3放射ビームRB3の別の部分が第3光路に沿って導かれるように第1放射ビームRB1と組み合わされる。第4放射ビームRB4は、第4放射ビームRB4の一部が第2光路に沿って導かれ、第4放射ビームRB4の別の部分が第3光路に沿って導かれるように第2放射ビームRB2と組み合わされる。
【0053】
第3および第4放射ビームRB3、RB4に対する干渉計の動作原理は、第1および第2放射ビームRB1、RB2に類似しているため、第1および第2検出器D1、D2の出力OD1、OD2は、今度は、第1検出器D1における第2光源LS2からの放射の干渉と、第2検出器D2における第2光源LS2からの放射の干渉との位相差に関する情報も含み、これは物体OBの位置も表す。
【0054】
変位干渉計が多波長干渉計である場合、異なる波長からの情報を組み合わせて有効な波長を形成できる。例として、2つの異なる波長λ1、λ2を使用すると、以下の有効波長Λ
effを形成できる。
【数1】
【0055】
次に、変位干渉計の第1キャプチャ範囲は、有効波長に対応するキャプチャ範囲に拡張される。これは、個々の波長、つまり2つの異なる波長の場合の異なる波長が用いられる場合には異なる波長λ1、λ2の一つに対応する第3キャプチャ範囲よりも大きい。次に、物体OBの細かい位置の決定は、2段階プロセスであり、最初に、決定された粗い位置と有効波長に関連する変位干渉計からの第2出力に基づいて、第1キャプチャ範囲内の物体OBのリファインされた位置が処理ユニットPUによって決定され、その後、決定されたリファインされた位置および個々の波長に関連する変位干渉計からの第3出力に基づいて、物体BOの細かい位置が処理ユニットPUによって決定される。決定されたリファインされた位置の誤差は、個々の波長の第3キャプチャ範囲よりも小さい。
【0056】
処理ユニットPUは、飛行時間型センサから第1出力を受け取り、ゼロ調整モードで第1出力から物体OBの粗い位置を表す第1信号SI1を決定するように構成される。さらに、処理ユニットPUは、変位干渉計から第2出力および第3出力を受け取り、第2出力および第3出力からの情報を組み合わせて、第2キャプチャ範囲よりも小さく第1キャプチャ範囲よりも大きい対応する第3キャプチャ範囲を持つ有効波長を形成し、そして、粗い位置およびリファインモードでの第2および第3出力からの組み合わされた情報に基づいて、第3キャプチャ範囲内の物体の位置を表す第3信号SI3を決定するよう構成される。測定モードでは、処理ユニットPUは、第2出力および第3信号SI3から物体OBの細かい位置を表す第2信号を決定するように構成される。
【0057】
既に述べたように、
図2の位置測定システムの利点は、飛行時間型センサと変位干渉計が同時に動作することである。しかしながら、位置測定システムが飛行時間型センサとしてまたは変位干渉計として動作するように調整可能であるため、粗い位置測定では、位置測定システムが飛行時間型センサとして動作し、続いて細かい位置測定では、位置測定システムは変位干渉計として動作することも可能である。そのような位置測定システムの例を、
図3を参照して以下に説明する。
【0058】
図3は、物体OBの位置を測定するための本発明の別の実施形態による位置測定システムを示す。この位置測定システムは、
図2の位置測定システムと多くの類似点を有し、例えば、光源LS、第1ビームスプリッタBS1、音響光学変調器AOM、第1光学素子OE1、第2ビームスプリッタBS2、第2光学素子OE2、第1検出器D1、および第2検出器D2を備える。物体OBには同様の基準REが提供され、物体の位置を測定するために、位置測定システムが物体と相互作用することを可能とする。位置測定システムは、同様の処理ユニットPUをさらに備えている。
【0059】
図2の位置測定システムと
図3の位置測定システムとの主な違いは、
図3の位置測定システムに変調器MOが存在せず、2つの偏光子PO1、PO2が存在することである。
【0060】
両方の偏光子PO1、PO2は、偏光子PO1、PO2を通過する第1および第2放射ビームRB1、RB2と相互作用するか、または相互作用することなく第1および第2放射ビームRB1、RB2を通過させるように動作可能であるため、位置測定システムは、飛行時間型センサとして動作するか、代わりに変位干渉計として動作するように調整可能である。
【0061】
偏光子PO1、PO2が、第1および第2放射ビームRB1、RB2と相互作用しない場合、例えば、偏光子PO1、PO2が光路から外れるように移動されると、位置測定システムは変位干渉計として動作する。したがって、変位干渉計の動作原理は、
図2の変位干渉計の動作原理(単一波長の実施形態)に類似しており、ここでは必要以上に繰り返さない。
【0062】
偏光子PO1、PO2が第1および第2放射ビームRB1、RB2と相互作用することを可能にすることにより、位置測定システムは、飛行時間型センサとして動作するように切り替えられる。
【0063】
第1偏光子PO1は、第1放射ビームRB1と第2放射ビームRB2とを混合して、第1放射ビームRB1と第2放射ビームRB2との間の周波数差に等しい変調周波数で変調測定ビームが生成されるように構成される。
【0064】
第2偏光子PO2は、変調された測定ビームが第1光路に沿ってのみ、または第2光路に沿ってのみ誘導されることを保証するように構成される。変調された測定ビームが第1光路に沿って誘導されるように偏光子PO2が設定されているとき、第1検出器への変調された測定ビームの飛行時間は、原則として静的な第1光路の長さに依存する。したがって、この測定値は基準として使用できる。偏光子PO2が変調測定ビームを第2光路に沿って誘導できるように設定されているとき、第1検出器への変調測定ビームの飛行時間は第2光路の長さに依存し、これは同様に物体OBの位置に依存する。
【0065】
示された実施形態は、多くの光学部品を共有することにより、飛行時間型センサと変位干渉計との間の比較的高度な統合を示すが、これは、組み合わせに必要な追加のスペースが限られているため有利であるが、飛行時間型センサと変位干渉計の統合に限定されない。したがって、統合はまったく必要ない。
【0066】
例えば、代替実施形態では、飛行時間型センサおよび変位干渉計は光源を共有せず、別個の光源を使用する。変位干渉計はヘテロダイン光源または干渉計の目的に適した他の光源を使用し、飛行時間型センサは別の光源を使用して、干渉計に使用される異なる波長の変調測定ビームを提供する。例えば、赤外線波長を使用するためにLEDまたはレーザを使用する。
【0067】
別の代替実施形態では、飛行時間型センサと変位干渉計は検出器を共有しないが、例えば飛行時間型センサが異なる波長、例えば赤外線、の放射を使用する場合、別々の検出器を使用するか、変調周波数は、干渉計に使用される検出器が適切ではないようにされる。
【0068】
上述の変調は常に詳細に説明されているわけではないが、飛行時間測定には位相変調、振幅変調、偏光変調のいずれの種類の変調も使用できることに留意されたい。
【0069】
示された実施形態は、単一パス変位干渉計、すなわち、物体上の基準REとの単一の相互作用のみを示しているが、本発明は、例えば二重パス、四重パス、4パスなどのマルチパス変位干渉計にも適用できる。
【0070】
図示の実施形態はヘテロダイン変位干渉計に関するが、本発明はホモダイン干渉計にも適用することができる。
【0071】
示された実施形態は、飛行時間測定を検出器への2つの異なる変調測定ビームの飛行時間の時間差として説明しているが、変調器MOに印加される信号を、飛行時間とその後の物体の位置を決定するための基準として使用することも可能である。
【0072】
図2の実施形態を参照すると、例えば、別の変調器を第1放射ビームに配置して第1および第3測定ビームMB1、MB3に影響を与え、それにより第2検出器D2に対する第2光学素子OE2内の基準の位置の測定が可能となる。したがって、検出器D2に対する第2光学素子OE2内の基準の位置およびD2に対する反射器REの位置は、飛行時間測定によって導出することができ、その後の第2光学素子OE2内の基準と反射器REの光路長差は、そこから導出できる。
【0073】
一実施形態では、多波長干渉計が使用される場合、処理ユニットPUで波長ドリフトを検出して補償できるよう、波長トラッカーを干渉計に追加してもよい。
【0074】
再び
図2を参照すると、光源LSおよび第2光源LS2は、実質的に固定された波長、少なくとも調整不可能な波長を有する放射を出力する光源として説明されてきた。しかしながら、いくつかの目的においては、光源LSおよび/または第2光源LS2が、所定の波長範囲内の任意の波長の放射を出力するように光源を設定することを可能にする波長可変光源である場合に有利であり得る。その利点は、単一の波長可変光源を使用して、同じ機能と精度を維持しながら、多数の固定波長光源を置換できることである。その別の利点は、このシステムを、いわゆる連続光源波の周波数変調を使用してゼロ調整を可能にする絶対距離測定システムに変換できることである。
【0075】
波長可変光源が使用される実施形態を
図4に見ることができる。
図4は、本発明のさらなる実施形態による位置測定システムの一部を概略的に示す。位置測定システムは、
図1によるリソグラフィ装置の一部であり、
図2の実施形態と同様に物体の位置を測定することができる。
図4に示す部分は、
図2における第1光学素子OE1の左側の部分に類似している。
【0076】
図4の位置測定システムは、光源LS、この例では例えばヘテロダインレーザ光源などの波長可変ヘテロダイン光源LSを含む。この光源は、第1偏光を有する第1放射ビームRB1と、第1偏光とは異なる第2偏光を有する第2放射ビームRB2とを出力する。第1および第2放射ビームRB1、RB2は、対応する音響光学変調器AOMを通過して第1および第2放射ビームRB1、RB2の周波数を調整するために、第1ビームスプリッタBS1を使用して互いに分離される。したがって、変調器AOMを通過した後、第1放射ビームRB1は第1周波数を有し、第2放射ビームRB2は第1周波数とは異なる第2周波数を有する。変調器AOMは、第1放射ビームRB1と第2放射ビームRB2の周波数差を設定するために使用され、波長可変光源LSは、それぞれの所定の範囲から選択できる所定の基本波長または周波数の放射を出力するように設定され得る。
【0077】
位置測定システムは、
図2と同様に、光学システムの残りの部分に放射ビームRB1、RB2を向ける第1光学素子OE1をさらに含む。この部分は、再び詳細には説明せず、
図2におけるこの部分に対応する記載が参照される。
【0078】
位置測定システムは、任意選択で、第2放射ビームRB2を位相変調または振幅変調する変調器MOを備える。変調器MOの使用法と利点は、
図2のシステムと同様である。
【0079】
位置測定システムは、第3放射ビームRB3および第4放射RB4を提供する第2光源LS2および第3ビームスプリッタBS3を備える。この実施形態における第2光源LS2は、実質的に固定された波長または周波数を有する放射を出力する固定波長光源である。
【0080】
第3および第4放射ビームRB3、RB4の両方は、音響光学変調器AOM2の下流で第3および第4放射ビームの周波数が互いに異なるように、音響光学変調器AOM2を通過する。好ましくは、変調器AOM2の下流の第3および第4放射ビームRB3、RB4間の周波数の差は、システム、例えばその処理ユニットが異なる波長を容易に区別できるように、変調器AOMの下流の第1および第2放射ビームRB1、RB2間の周波数の差と実質的に異なる。
【0081】
この実施形態では、第1放射ビームRB1および第3放射ビームRB3は、第1光ファイバOF1に提供され、第1光ファイバOF1は、次々に放射ビームRB1、RB3を第1光学素子OE1に提供する。同様に、第2放射ビームRB2および第4放射ビームRB4は、第2光ファイバOF2に提供され、第2光ファイバOF2は、次々に放射ビームRB2、RB4を第1光学素子OE1に提供する。
【0082】
図4の実施形態では、波長可変光源LSは、音響光学変調器AOMと組み合わされる。音響光学変調器は、音響光学変調器を通過する際に波長依存性の角偏向を導入する。これは、第1および第2光ファイバOF1、OF2の両方のファイバ結合変動をもたらす可能性がある。ファイバ結合効率は、使用する波長範囲の幅が広くなると低下する可能性がある。場合によっては、ファイバ結合効率の損失は、ナノメートルの数十分のいくつかのオーダの非常に小さな同調範囲でしか許容できない場合があるが、5ナノメートル以上のオーダのより大きな同調範囲が好ましい。あるいは、波長依存性の角偏向は、波長依存性の角分散または要するに分散と呼ばれてもよい。
【0083】
音響光学変調器AOMによって引き起こされる分散を補償するために、
図4のシステムは、追加の光学素子OE3およびOE4を備える。これらは、ここではプリズムとして具体化され、反対の角分散、好ましくは波長可変光源LSの波長範囲内の少なくとも1つの波長に対して反対の角分散を有する。
【0084】
分散補償光学素子OE3、OE4は、プリズムとして具体化されているが、これらの光学素子は、音響光学変調器AOMに起因する分散を少なくとも部分的に補償することを可能とする反対の分散を有している限りは、例えば反射型格子や透過型格子の形で、異なるように具体化されてもよい。
【0085】
反射型または透過型格子を使用する場合、格子のピッチは、音響光学変調器AOMの定常波のピッチと同一であることが好ましい。屈折プリズムを使用する場合、プリズムの材料とくさび角を適切に選択することにより、プリズムの分散を音響光学変調器AOMの分散に合わせることができる。
【0086】
光学素子OE3、OE4と同様の分散補償光学素子は、例えば光学素子OE5およびOE6を破線で
図4に示すように、光路内の他の位置で使用されてもよい。光学素子OE5、OE6は、例えば、第1光学素子OE1によって引き起こされる分散を補償するために使用されてもよい。第1光ファイバOF1から生じる放射に対して第1光学素子OE1によって生じる分散は、第2光ファイバOF2から生じる放射に対して生じる分散と異なる場合があるため、光学素子OE5、OE6は、第1光路の上流のそれぞれの光路に配置されることが好ましい。それによって、それぞれの光路の分散を補償するよう各光学素子OE5、OE6を適合させることができる。
【0087】
したがって、本発明は、飛行時間測定原理を含む
図2の実施形態に関して説明されたが、分散補償は、他のタイプの位置測定システムにも適用される。その結果、本発明は、物体の位置を測定するように構成された位置測定システムにも関連し、
例えば波長可変ヘテロダインレーザ光源などの波長可変光源と、
波長可変光源から放出される放射に作用する音響光学変調器と、
音響光学変調器と同じ放射に作用する例えば屈折プリズム、反射型格子または透過型格子等の分散補償器と、を備える。
【0088】
一実施形態では、分散補償器によって引き起こされる分散は、少なくとも波長可変光源の1つの波長に対して、音響光学変調器によって引き起こされる分散と実質的に反対である。
【0089】
一実施形態では、位置測定システムは、本発明の他の実施形態または態様に関連して説明された特徴のうちの1つまたは複数を備える。
【0090】
一実施形態では、位置測定システムは、絶対距離計測のために波長可変光源によって放出される放射の波長をスイープするように構成される。これは、代替的に、連続レーザ波の周波数変調と呼ばれてもよい。
【0091】
光学素子OE3およびOE4は、第1ビームスプリッタBS1と音響光学変調器AOMとの間に配置されているが、光学素子は、光源と光ファイバOF1、OF2の間の他の位置にも配置できることは当業者には明らかであろう。
【0092】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に具体的に言及しているかもしれないが、本書に説明されたリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造など他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。当業者であればこれらの他の適用に際して、本書における「ウェハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。本書に言及される基板は、露光前または露光後において例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本書における基板という用語は処理済みの多数の層を既に含む基板をも意味する。
【0093】
上記では光学リソグラフィの文脈で本発明の実施の形態の使用について特定の言及がなされたが、本発明はインプリントリソグラフィなどの他の用途に用いることもでき、文脈上許されれば光学リソグラフィに限定されない。インプリントリソグラフィにおいて、パターニングデバイスの形状は、基板上に形成されるパターンを定義する。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されるレジスト層に押し付けされてもよく、その後、レジストは、電磁放射、熱、圧力またはこれらの組み合わせを加えることにより硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化された後、パターンが残るレジストから除去される。
【0094】
以上では本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明は、説明したものとは異なる方式で実施されうることが理解される。例えば、本発明は、上述の方法を記載する1つ以上の一連の機械可読命令を含むコンピュータプログラム、またはそのようなコンピュータプログラムを記憶したデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスク又は光ディスク)の形態をとってもよい。
【0095】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。