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特許7031161不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いた電気機器絶縁物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】不飽和ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いた電気機器絶縁物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/01 20060101AFI20220301BHJP
   H01B 3/42 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C08F283/01
H01B3/42 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017150707
(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2019026804
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】小幡 康裕
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231724(JP,A)
【文献】特開2010-116461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0264896(US,A1)
【文献】特開2014-132802(JP,A)
【文献】特開2015-147918(JP,A)
【文献】特開2015-002095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
C08F 290/00 - 290/14
C08F 299/00 - 299/08
C08L 67/00 - 67/08
C08G 4/00 - 16/06
H01B 3/16 - 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-不飽和二塩基酸と1個以上の水酸基を持つアルコールとを必須成分として使用する不飽和ポリエステル(A); 20℃の蒸気圧が0.15mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤(B); アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂(C); 分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族の単官能(メタ)アクリレート又は分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族で分子末端にアリル基を有する化合物(D); 2又は3個のメチルオキシ基を含有し、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基をそれぞれ有するシランカップリング剤(E)、(F)、(G); 金属石鹸(H); 金属石鹸との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤(I); 80℃未満で硬化反応を開始する有機過酸化物(J);を含有し、
(A)100質量部に対して、(B)を50~400質量部; (A)と(B)の総量100質量部に対して、(C)を0.1~15質量部、(D)を1~[(60220)×100]質量部、(E)、(F)、(G)をそれぞれ0.01~3.0質量部、(H)を0.01~3.0質量部、(J)を0.05~10質量部; (H)1質量部に対して、(I)を0.01~2.0質量部; 含有し、
(B)が、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのみからなり、
(D)が、2-ヒドロキシエチルアクリレート又はトリメチロールプロパンジアリルエーテルのみからなる不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
不飽和ポリエステル(A)の数平均分子量が、1000~10000の範囲である請求項1に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物により被覆し、硬化する電気機器絶縁物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁用樹脂組成物に特定配合の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用い、この電気絶縁用樹脂組成物を用いて、含浸、浸漬処理などで被覆し、硬化する電気機器絶縁物の製造方法に関する。
さらに、詳しくは、発電機、誘導コイル等のモータ、変圧トランス、アーマチュア(回転子)、ステ-タ(固定子)などの電気機器用コイルの含浸性を低下することなく、柔軟な硬化皮膜を持ち、短時間で硬化可能で、各部材、特にナイロン(ポリアミド)等副資材にも高固着性を有し、かつ作業時の臭気が少なく、作業環境が良好な電気機器絶縁処理用樹脂組成物である不飽和ポリエステル樹脂組成物と、それを用いた電気機器絶縁物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転機、変圧器等の機器には、固着、絶縁補強、防振、防錆等の目的でコイル含浸ワニスが用いられている。上記コイル含浸ワニスは、大別すると溶剤型ワニスと無溶剤型ワニスの二つに分けられ、機器の種類、処理方法等により適宜に選択される。
上記溶剤型ワニスは、アルキッド樹脂をナフサ等で溶解したものであって、このため加熱硬化処理時には当然大量の溶剤飛散が伴うという問題が生じる。また、上記無溶剤型ワニスは、一般にスチレン等の反応性モノマに不飽和基を有する樹脂を溶解させたものであって、加熱硬化処理時に上記溶剤型ワニスほど溶剤が飛散することはないが、スチレンの持つ刺激特性のために少量の飛散量にもかかわらず取り扱い作業者に及ぼす影響は大きく、作業環境の劣化が生じるという問題を有している。このように、作業者および作業環境問題に関してはいずれのワニスにおいても何ら解決されていない。そして、最近では、高作業性(短処理時間)、省資源、防錆性能等の理由から、溶剤型から無溶剤型への検討が進められている。この無溶剤型ワニスのひとつに、不飽和ポリエステルワニスが挙げられる。不飽和ポリエステルワニスは、不飽和ポリエステルと架橋性単量体からなり、機械的、電気的及び熱的特性、作業性、経済性などの点で調和がとれているため、FRP積層板やライニング等の建築機材をはじめ多くの用途に使用されている。
【0003】
この無溶剤型含浸ワニスの要望事項としては、低温短時間硬化及びワニスからの溶剤揮発量の減少(無溶剤化)や高固着性の付与があげられる。
この要求に対応する方法として、スチレンの含有量を低減する方法や添加剤の配合によるスチレン揮発量を低減するなど方法が採られている。しかしながら、これらの方法は、基本的にスチレンを含有する樹脂であることに変わりなくその臭気対策としては不十分なものである。スチレンに替えて他の重合性不飽和モノマーを使用する方法も多く報告されている。例えば、重合性不飽和モノマーとしてジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレートのようなオリゴエチレングリコールアルキルエーテルメタクリレートを必須成分として含有するモノマー(特許文献1)や、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルメタクリレートのようなオリゴエーテルモノアルキルエーテルメタクリレートを必須成分として含有するモノマーを使用した樹脂組成物(特許文献2)、重合性不飽和モノマーとしてオリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよび/またはオリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを必須成分として使用した樹脂組成物(特許文献3)、また、重合性不飽和モノマーとしてアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレートを必須成分として含有する樹脂組成物(特許文献4)がある。
【0004】
また、例えば、重合性不飽和結合基を有するマクロモノマーと重合性不飽和単量体として炭素数2~4のジオールのオリゴエーテルモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物(特許文献5)や、分子末端に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、(メタ)アクリレート基を有する単量体およびアセチルラクトン化合物を含有する樹脂組成物(特許文献6)、さらに、ジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステルオリゴマー、シクロヘキセン環およびアリルエーテル基を有するエステル化合物、およびヒドロキシアルキルメタクリレートを必須成分とする不飽和ポリエステル樹脂組成物(特許文献7)等、種々報告されている。
【0005】
また、高固着性については、エポキシ樹脂をフェノール類ジメチロ-ル化物とナフトール類との縮合物のエポキシ化物とビスフェノールF型エポキシ樹脂を50~95:50~5(質量比)の割合で含むエポキシ樹脂混合物や、該エポキシ樹脂混合物と硬化剤と硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を用いる方法(特許文献8)や、エポキシ樹脂、ニトリルゴムの混合物、硬化剤、イミダゾール化合物、硼弗化物及びオクチル酸塩より選択された1種又は2種以上の硬化促進剤からなる熱硬化性固着剤を用いる方法(特許文献9)、エポキシ樹脂、酸無水物、アンモニウム塩を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物を使用する方法(特許文献10)等種々報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-216040号公報
【文献】特開平9-151225号公報
【文献】特開平10-87770号公報
【文献】特開2002-114829号公報
【文献】特開平10-36461号公報
【文献】特開2003-268054号公報
【文献】特開2003-89709号公報
【文献】特開平5-140261号公報
【文献】特開平11-131042号公報
【文献】特開2005-139289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑み、作業環境が良好な電気機器用の含浸ワニスの提供を目的に、ワニス皮膜を柔軟化でき、低温で硬化が可能で、かつ従来の液状タイプの樹脂組成物と同等以上の良好な他部材との固着性や電気絶縁性などの硬化物特性を低温度で硬化できるうえ、良好な安定性を示すことができる不飽和ポリエステル樹脂組成物を提供するものであり、さらに、本発明は、この電気絶縁用樹脂組成物を用いた電気機器絶縁物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、α,β-不飽和二塩基酸と1個以上の水酸基を持つアルコールとを必須成分として使用する不飽和ポリエステル(A)、20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤(B)、アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂(C)、分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族の単官能(メタ)アクリレート又は分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族で分子末端にアリル基を有する化合物(D)、2又は3個のメチルオキシ基を含有し、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基を其々有するシランカップリング剤(E)、(F)、(G)、金属石鹸(H)、金属石鹸との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤(I)及び80℃未満で硬化反応を開始する有機過酸化物(J)を含有し、(A)100質量部に対して、(B)を50~400質量部、(A)と(B)の総量100質量部に対し、(C)を0.1~50質量部、(D)を1~100質量部、(E)、(F)、(G)をそれぞれ0.01~5.0質量部、(H)を0.01~3.0質量部、(J)を0.05~10質量部含有し、さらに(H)1質量部に対して(I)を0.01~2.0質量部含有する不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。
また、本発明は、不飽和ポリエステル(A)の分子量が、1000~10000の範囲である上記に記載の不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。
さらに、本発明は、上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物により被覆し、硬化する電気機器絶縁物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、低臭気で作業環境が良好であり、ワニス硬化物の柔軟性に優れるため、応力が加わっても、クラック等が起こりにくい皮膜を提供できる。また、樹脂組成物の粘度、表面乾燥性は従来品と同等であるため、含浸作業方法に幅広く対応可能である。さらに、従来の液状タイプの樹脂組成物と同等以上の電気絶縁性、固着性等の硬化物特性が可能で、常温(25℃)で乾燥(硬化)ができ良好な安定性を示すため、信頼性の高い電気機器絶縁物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリレート等の他の類似表現についても同様である。
【0011】
[不飽和ポリエステル(A)]
本発明におけるα,β-不飽和二塩基酸と1個以上の水酸基を持つアルコールを必須成分として使用する不飽和ポリエステル(A)は、α,β-不飽和二塩基酸を必須成分とする酸成分及び1個以上の水酸基を持つアルコール成分、さらに必要に応じて変性成分を反応させて得られる。
不飽和二塩基酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが用いられ、これらは単独で用いても併用してもよい。
酸成分としては、上記記載の不飽和二塩基酸のほか飽和酸及びこの飽和酸低級アルキルのジエステル等併用することも出来る。
例えば、テレフタル酸モノメチル、テレフタル酸の低級アルキルのジエステル等のテレフタル酸ジエステル、例えば、テレフタル酸ジメチルなどが用いられる。また、イソフタル酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸などを用いることもできる。
飽和酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸等の飽和二塩基酸などが挙げられる。飽和酸低級アルキルのジエステルとしては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどが用いられる。これらは単独で用いても併用してもよい。
さらに、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、トール油脂肪酸等の食用油脂肪酸などを併用することもできる。不飽和酸の量は、全酸成分中50~90当量%の範囲で選択されることが好ましい。
【0012】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が用いられ、これらは単独で用いても併用してもよい。必要に応じて用いられる変性成分としては、例えば、アマニ油、大豆油、トール油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン等が挙げられる。
【0013】
本発明の不飽和ポリエステル(A)の数平均分子量(ゲルパーミッションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値、以下も同じ)は、1000~10000とされる。好ましくは、1500~5000である。1000未満では、樹脂組成物の硬化性および樹脂硬化物特性が極端に劣り、10000を超えると粘度が高すぎ含浸作業性が悪化する。
【0014】
本発明に使用される不飽和ポリエステル(A)の製造方法としては、従来から公知の方法によることができる。例えば、必須成分であるα,β-不飽和二塩基酸と1個以上の水酸基を持つアルコールのみ、または多塩基酸成分、多価アルコール成分を併用し、縮合反応させ、両成分が反応するときに生じる縮合水を系外に除きながら進められる。全酸成分1当量に対して全アルコール成分は1~2当量の範囲で使用することが好ましい。
縮合水を系外に除去することは、好ましくは不活性気体を通じることによる自然留出又は減圧留出によって行われる。縮合水の留出を促進するため、トルエン、キシレンなどの溶剤を共沸成分として系中に添加することもできる。反応の進行は、一般に反応により生成する留出分量の測定、末端の官能基の定量、反応系の粘度の測定などにより知ることができる。
合成反応を行うための反応温度は150~250℃とすることが好ましい。このことから、反応装置としては、ガラス、ステンレス製等のものが選ばれ、撹拌装置、水とアルコール成分の共沸によるアルコール成分の留出を防ぐための分留装置、反応系の温度を高める加熱装置、この加熱装置の温度制御装置等を備えた反応装置を用いるのが好ましい。
合成における重縮合反応を行うために調整する反応装置内圧力は、常圧でも全く問題なく反応を進めることができるが、加圧し、多価アルコ-ルの沸点をあげることにより、反応を促進することができる。この場合、常圧~0.1MPaの範囲で行うことが好ましい。
【0015】
[反応性希釈剤(B)]
本発明で使用する20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤(B)としては、低臭気性の樹脂組成物を得るとする目的から、蒸気圧が0.1mmHg(20℃)以下であるもので、さらに不飽和ポリエステル樹脂(A)、アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂(C)、分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族の単官能(メタ)アクリレート又は分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族で分子末端にアリル基を有する化合物(D)を溶解するものが選択される。この要件を満足する重合性単官能(メタ)アクリレートとして、具体的には、例えばジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プラクセルFA1、FA2D、FA3、FM1D、FM2D、FM3(株式会社ダイセル)などの(ポリ)カプロラクトンモノエトキシ(メタ)アクリレートなどの水酸基を持つ(メタ)アクリレートを使用することができる。また分子中に1個の水酸基を有する単官能(メタ)アクリレートと飽和二塩基酸との反応物である不飽和一塩基酸も使用することが可能である。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和ポリエステル(A)と20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤(B)の使用量は、不飽和ポリエステル(A)100質量部に対して、20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤(B)が50~400質量部の範囲とするのが好ましい。50質量部未満の場合、得られる樹脂組成物の粘度が高すぎてしまい、トランス表面に厚く付着するばかりでなく、内部浸透性も悪くなる。また、20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤を400質量部を超えて入れてしまうと、樹脂組成物の外観が濁るうえ、ワニス粘度が低すぎて、内部に浸透した樹脂付着物が加熱硬化時に流れ出してしまう不具合が発生する。
【0016】
[アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂(C)]
本発明に用いられる(C)成分のアルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂は、トルエン・キシレン等のアルキルベンゼンとホルムアルデヒドをアルカリ触媒、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、トリエルアミンなどの存在下で反応させて得られるレゾールタイプの樹脂である。キシレン・ホルムアルデヒド樹脂の市販品としては、ゼネラル石油化学工業株式会社のゼネライト30、ゼネライト50、ゼネライト100、三菱ガス化学株式会社製のニカノールL、ニカノールLL、ニカノールLLLなどがある。
本発明に用いられる(C)成分のアルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂の使用量は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂(C)0.1~50質量部であるのが好ましく、1~15質量部であるのがより好ましいく、さらに好ましくは5~10質量部である。アルキルベンゼン・ホルムアルデヒド樹脂が50質量部を超えて配合してしまうと、表面乾燥時間及び樹脂組成物の硬化時間が延長し、硬化しづらくなる。また、配合量を0.1質量部未満にすると、樹脂組成物の硬化皮膜が柔軟にならない不具合が発生する。
【0017】
[単官能(メタ)アクリレート又はアリル基を有する化合物(D)]
本発明に用いられる(D)成分の分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族の単官能(メタ)アクリレートとして、1,4-ブタンジオールモノメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノメタクリレート、1,9-ノナンジオールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、炭素数12~15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物(例えば、共栄社化学株式会社製のライトエステルL-7、ライトエステルL-8、日油株式会社製のブレンマーSLMA、ブレンマーCMAなど)も使用できる。これらの中からモノマーの臭気を考慮して選定して使用することが好ましい。好ましくは、(メタ)アクリル酸ラウリル、炭素数12~15の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの混合物を使用するなどの長鎖アルキルアルコールモノメタクリレート類が使用でき、これらは単独または2種以上併用で使用することもできる。
また、分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族で分子末端にアリル基を有する化合物としては、例えば、1,5-ペンタンジオールモノアリルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテルなどの多価アルコールのアリルエーテル化合物が例示される。これらは単独又は2種以上併用で使用することもできる。
上記記載の主鎖が脂肪族の単官能(メタ)アクリレート又は分子中に1個の水酸基を有する主鎖が脂肪族で分子末端にアリル基を有する化合物(D)の使用量は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し1~100質量部の範囲とするのが好ましい。1質量部未満の場合、得られる樹脂組成物の粘度が高すぎてしまい、得られる樹脂組成物外観が濁る上、含浸する電気機器表面に厚く付着するばかりでなく、内部浸透性も悪くなる。また、100質量部を超えて入れてしまうと、樹脂組成物の外観が濁るうえ、ワニス粘度が低すぎて、内部に浸透した樹脂付着物が加熱硬化時に流れ出してしまう不具合が発生する。
【0018】
[シランカップリング剤(E)、(F)、(G)]
本発明に用いられる、(E)成分の2又は3個のメチルオキシ基と、エポキシ基を含有するシランカップリング剤は、メチルオキシ基とエポキシ基を官能基に有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、例えば、式(1)又は(2)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
R1-R2-SiX …………(1)又は
R1-R2-Si(CH)X …………(2)
(ここで、R1はエポキシ基、R2は有機官能基であり、Xは、メトキシ基である。)
具体的には、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが使用可能である。また、これらは単独又は2種以上併用で使用することもできる。
【0019】
本発明に用いられる、(F)成分の2又は3個のメチルオキシ基とメタクリル基を含有するシランカップリング剤は、メチルオキシ基とメタクリル基を官能基に有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、例えば、式(1)又は(2)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
R1-R2-SiX …………(1)又は
R1-R2-Si(CH)X …………(2)
(ここで、R1はメタクリル基、R2は有機官能基であり、Xは、メトキシ基である。)
具体的には、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが使用可能である。また、これらは単独又は2種以上併用で使用することもできる。
【0020】
本発明に用いられる、(G)成分の2又は3個のメチルオキシ基とアミノ基を含有するシランカップリング剤は、メチルオキシ基とアミノ基を官能基に有するシランカップリング剤であれば特に限定されないが、例えば、式(1)又は(2)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。
R1-R2-SiX …………(1)又は
R1-R2-Si(CH)X …………(2)
(ここで、R1はアミノ基、R2は有機官能基であり、Xは、メトキシ基である。)
具体的には、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩が使用可能である。また、これらは単独または2種以上併用で使用することもできる。
【0021】
本発明に用いられる(E)成分の2又は3個のメチルオキシ基とエポキシ基を含有するシランカップリング剤の使用は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、2又は3個のメチルオキシ基とエポキシ基を含有するシランカップリング剤(E)を0.01~5.0質量部であり、0.05~3.0質量部であるのがより好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0質量部である。
2又は3個のメチルオキシ基とエポキシ基を含有するシランカップリング剤を、5質量部を超えて配合しても、揮発量は少なくなるが、固着性が逆に低下し、かつ、表面乾燥時間および樹脂組成物の硬化時間が延長し、硬化しづらくなる。また、配合量を0.01質量部未満にすると、得られる樹脂組成物の固着力が低下する不具合が発生する。
【0022】
本発明に用いられる(F)成分の2又は3個のメチルオキシ基とメタクリル基を含有するシランカップリング剤の使用は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、2又は3個のメチルオキシ基とメタクリル基を含有するシランカップリング剤(F)を0.01~5.0質量部であり、0.05~3.0質量部であるのがより好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0質量部である。
2又は3個のメチルオキシ基とエポキシ基を含有するシランカップリング剤を、5.0質量部を超えて配合しても、揮発量は少なくなるが、固着性が逆に低下し、かつ、表面乾燥時間および樹脂組成物の硬化時間が延長し、硬化しづらくなる。また、配合量を0.01質量部未満にすると、得られる樹脂組成物の固着力が低下する不具合が発生する。
【0023】
本発明に用いられる(G)成分の2又は3個のメチルオキシ基とアミノ基を含有するシランカップリング剤の使用は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、2又は3個のメチルオキシ基とアミノ基を含有するシランカップリング剤(G)を0.01~5.0質量部であり、0.05~3.0質量部であるのがより好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0質量部である。
2又は3個のメチルオキシ基とアミノ基を含有するシランカップリング剤を、5質量部を超えて配合しても、揮発量は少なくなるが、固着性が逆に低下し、かつ、表面乾燥時間および樹脂組成物の硬化時間が延長し、硬化しづらくなる。また、配合量を0.01質量部未満にすると、得られる樹脂組成物の固着力が低下する不具合が発生する。
【0024】
本発明に係る不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化するための硬化方法としては、金属石鹸(H)との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤(I)、ならびに80℃未満で硬化反応を開始する有機過酸化物(J)が配合される。
【0025】
[金属石鹸(H)]
本発明に用いられる金属石鹸(H)としては、酢酸、オクチル酸、ステアリン酸等の脂肪酸、ナフテン酸のMg、Ca、Zn、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pb、Cu、Zr等の金属の金属塩、特に好ましくは、コバルト塩、マンガン塩等が挙げられる。これらの金属石鹸は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
金属石鹸(H)の使用量は、(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、0.01~3.0質量部であり、0.05~2.5質量部とすることが好ましく、0.07~2質量部とすることがより好ましい。0.01質量部未満では、硬化剤(I)と組み合わせたレドックス反応の進行が遅くなり、硬化性が低下する傾向があり、また、3.0質量部部を超えて添加しても、硬化性が促進せず、かつ得られる硬化皮膜の色相が濃く変色する恐れがある。
【0026】
[硬化剤(I)]
本発明に用いられる金属石鹸(H)との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤(I)としては、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、クメンヒドロロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
この金属石鹸との組み合わせでレドックス反応を開始する硬化剤(I)の使用量は、金属石鹸(H)1質量部に対して、0.01~2.0質量部であり、0.1~1.5質量部とすることが好ましく、0.2~1.0質量部とすることがより好ましい。
0.01質量部未満では、レドックス反応の進行が遅く、硬化性が低下する傾向がある。また、2.0質量部を超えて添加しても、硬化性が促進せず、かつ得られる硬化部との固着力が低下する不具合が発生するおそれがある。
【0027】
[有機過酸化物(J)]
80℃未満で硬化反応を開始する有機過酸化物(J)としては、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-2-メトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ-2-メチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-イソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルカーボネート類;1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、α-クメンペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ヘキシルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシジ-2-エチルヘキサノエート、tert-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル類;イソブチロイルペルオキシド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類といった有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
80℃未満で硬化反応を開始する有機過酸化物(J)の使用量は(A)成分の不飽和ポリエステルと(B)成分の20℃の蒸気圧が1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤の総量100質量部に対し、0.05~10質量部であり、0.1~8質量部とすることが好ましく、0.5~5質量部とすることがより好ましい。0.05質量部未満では、硬化反応が遅くなり、硬化性が低下する傾向がある。また、10質量部を超えて添加しても、硬化性が促進せず、かつ得られる硬化部との固着力が低下する不具合が発生するおそれがある。
【0029】
[重合禁止剤]
本発明で必要に応じて使用する重合禁止剤としては、p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、ナフトキノン、p-トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジアセトキシ-p-ベンゾキノン、p-tertert-ブチルカテコール、2,5-ジ-tertert-ブチルハイドロキノン、ジ-tertert-ブチル-p-クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-tertert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。その配合量は、得られる不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化性により便宜決定されるが、その配合量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、0.01~5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0030】
[添加剤]
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて硬化物表面の空気遮断効果を持つ公知の市販の各種添加剤などを添加することが好ましい。これらの添加剤を配合することにより、表面硬化(表面乾燥)時間を短縮することができる。表面硬化性を短縮させるための添加剤としてその一例を挙げれば、各種融点のパラフィンワックス類、BYK-S740やBYK-S750(ビックケミー・ジャパン株式会社製)などの低揮散剤などが挙げられる。ワックス類の配合量としては、樹脂組成物100質量部に対して、0.05~1質量部、好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0031】
[絶縁処理]
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いた絶縁処理は、公知の方法で処理されるが、本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物中に電気機器を2~20分間浸漬または滴下した後、引き上げ、常温で12時間または、80~160℃で0.5~3時間(好ましくは1時間)加熱して不飽和ポリエステル樹脂組成物を硬化させる方法で行われることが望ましい。
本発明の不飽和ポリエステル樹脂組成物は、臭気が少なく、良作業性を有するだけではなく、放熱性を有し、かつ得られるワニス皮膜が柔軟性を有するため、トランスやモ-タ等の代表される電気機器含浸処理用に好適である。とくに、高電圧で使用するため、高温になりやすいフェライト等非金属材料を使用した高周波トランス・スイッチングトランスなどの電気機器の絶縁処理に最適である。
【実施例
【0032】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」は特に断らない限り「質量部」を意味する。
【0033】
(1) 不飽和ポリエステル(A-1)の合成
温度計、チッ素吹き込み管、精留塔及び撹拌装置を備えた3リットルのフラスコに、ジプロピレングリコール1474部(11モル)、イソフタル酸498部(3モル)、無水マレイン酸392部(4モル)、テトラヒドロ無水フタル酸456部(3モル)及びハイドロキノン0.22部を入れ、210℃で10時間加熱縮合し、数平均分子量3500、酸価21.5mgKOH/gの不飽和ポリエステル(A-1)を合成した。
【0034】
(実施例1)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレート(20℃の蒸気圧:0.15mHg)を120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂(三菱ガス化学株式会社製、商品名ニカノ-ルLL)20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製、ライトエステルHAO(N))60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-403)0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-503)0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM-603)0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト(DIC株式会社製、Co-OCTOATE)1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、パーメックN)3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(化薬アクゾ株式会社製、製品名トリゴノックス22E-70)4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-1を得た。
【0035】
(実施例2)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(株式会社大阪ソーダ製、商品名ネオアリルT-20)60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-2を得た。
【0036】
(比較例1)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを40部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.1部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド2.2部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを3.3部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-3を得た。
【0037】
(比較例2)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを450部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト3.2部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド6.3部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを9.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-4を得た。
【0038】
(比較例3)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分としてスチレン(20℃の蒸気圧5mmHg(0.67kPa)を120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-5を得た。
【0039】
(比較例4)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.4部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド2.8部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.2部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-6を得た。
【0040】
(比較例5)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂110部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト2.0部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.9部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを5.9部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-7を得た。
【0041】
(比較例6)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.2部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド2.4部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを3.6部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-8を得た。
【0042】
(比較例7)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート120部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.8部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.6部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを5.4部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-9を得た。
【0043】
(比較例8)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-10を得た。
【0044】
(比較例9)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-11を得た。
【0045】
(比較例10)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-12を得た。
【0046】
(比較例11)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-13を得た。
【0047】
(比較例12)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-14を得た。
【0048】
(比較例13)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-15を得た。
【0049】
(比較例14)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-16を得た。
【0050】
(比較例15)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン10部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン10部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.7部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.3部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを5.0部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-17を得た。
【0051】
(比較例16)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-18を得た。
【0052】
(比較例17)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト12部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-19を得た。
【0053】
(比較例18)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-20を得た。
【0054】
(比較例19)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド6.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを4.5部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-21を得た。
【0055】
(比較例20)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部及び(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイドを3.0部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-22を得た。
【0056】
(比較例21)
上記で合成した不飽和ポリエステル(A-1)100部に、(B)成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレートを120部、(C)成分として、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂20部、(D)成分として、2-ヒドロキシエチルアクリレート60部、(E)成分として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(F)成分として、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、(G)成分として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3部、(H)成分として6質量%オクチル酸コバルト1.5部、(I)成分としてメチルエチルケトンパーオキサイド3.0部及び(J)成分として1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを25部配合し、不飽和ポリエステル組成物a-23を得た。
【0057】
実施例及び比較例の樹脂組成物について、粘度測定、ゲル化時間測定、臭気試験、揮発量測定、表面乾燥性、硬化物の硬さ、固着力試験を下記により実施した。
[1]粘度測定:JIS C 2105(電気絶縁用無溶剤液状レジン試験方法)に準拠して、ブルックフィ-ルド型粘度計法で測定した(測定温度25℃)。
[2]ゲル化時間測定:JIS C 2105に準拠して、試験管法にてゲル化時間を測定した。
[3]臭気試験:直径70mm、高さ140mmのポリビーカに実施例及び比較例の樹脂組成物をそれぞれ100gずつ入れ、ふたをして、25℃の恒温槽内で1時間放置後の臭気を官能試験で評価した。臭気の官能試験は表1に示す評価基準を用いて4段階評価で実施した。
[4]揮発量の測定:直径60mmの金属シャーレに実施例及び比較例の樹脂組成物をそれぞれ10gずつ入れ120℃の恒温槽中に2時間静置し、質量変化により揮発量を測定した。
[5]表面乾燥性:JIS C 2105に準拠し、縦50mm、横180mmのブリキ板に塗布し、120℃の恒温槽中に静置し表面のベタツキがなくなる時間を測定した。
[6]硬化物の硬さ:直径60mmの金属シャーレに樹脂組成物を20gを入れ、130℃で1.5時間加熱して硬化物を作製する。この硬化物を23℃に保ち、ショアD硬度計を用いて測定した。
[7]固着力:JIS C 2105に準拠し、日立マグネットワイヤ株式会社製直径2mmのPEW電線を使用し、ストラッカ試験片を作製した。これに、樹脂組成物を含浸させ、130℃、1.5時間硬化させ試験片を作製した。この試験片を用い、支点間距離を80mmにし、株式会社島津製作所製オートグラフを用いて5mm/minの速さで、試験片の中央部に荷重を加えた。試験片が破壊する荷重をもって固着力とした。
[8]ポリアミド板との固着:縦20mm、横10mm、厚み1mmのポリアミド板に縦10mm、横10mmの面積で実施例及び比較例の樹脂組成物をそれぞれ2g塗布し、その上に珪素鋼鈑を置き130℃、1時間で硬化した。硬化後、常温(25℃)に冷却後、ポリアミド板と珪素鋼鈑をはがし、ワニス塗布部分の状態を観察した。
【0058】
【表1】
【0059】
得られた測定、評価結果を表2、表3、表4に示した。上記の各測定値に対して良好である場合を「○」、好適な範囲を外れている場合(不具合がある場合など)を「×」として評価した。
【0060】
【表2】
注 ○;良好 ×;不具合有
【0061】
【表3】
注 ○;良好 ×;不具合有
【0062】
【表4】
注 ○;良好 ×;不具合有
【0063】
(B)成分の20℃の蒸気圧が0.1mmHg以下である不飽和基を有する反応性希釈剤が規定量より少ない比較例1では、ワニス粘度が高く、表面乾燥性が長く、硬化物の硬さが高く、固着力が低下する。逆に、反応性希釈剤が規定量より多い比較例2では、100℃でのゲル化時間が長く、揮発量が多く、表面乾燥性が長く、また、固着力が低下する。
比較例3は、20℃の蒸気圧が0.1mmHgを超えて高いスチレンモノマを用いた例であるが、臭気試験では強臭で、揮発量が高く、硬化物の硬さが高い傾向にある。
比較例4、5は、(C)成分のアルキルベンゼン・ホルムアルデヒドの規定量を外れた場合で、多いと粘度が高く、揮発量が高く、表面乾燥時間が長く、ポリアミド板との固着力に劣る。少ないと、100℃のゲル化時間が長く、硬化物の硬さが高くなる。
比較例6、7は、(D)成分の単官能メタアクリレート又は分子末端にアリル基を有する化合物の規定量を外れた場合で、多いと、揮発量が高く、固着力が低くなり、ポリアミド板との固着も劣る。少ないと、表面乾燥時間が長くなる。
比較例8~15は、(E)、(F)、(G)成分のシランカップリング剤の規定量を外れた場合や、いずれかの成分が欠けた場合であり、シランカップリング剤を用いない比較例8では、固着力やポリイミド板との固着に劣る。一方、規定量を外れて多い場合の比較例15では、揮発量が多く、表面乾燥時間が長くなる。(E)、(F)、(G)成分のいずれかが欠けた場合(比較例9~14)、固着力やポリイミド板との固着に劣る。
比較例16、17は、(H)成分の金属石鹸の規定量を外れた場合で、少ないと、25℃のゲル化時間や表面乾燥性が相当に長く、多すぎると揮発量が多くなる。
比較例18、19は、(I)成分の金属石鹸と組み合わせてレドックス反応を開始する硬化剤の規定量を外れた場合で、少ないと25℃、100℃のゲル化時間や表面乾燥性が相当に長く、多すぎると揮発量が多くなる。
比較例20、21は、(J)成分の有機過酸化物の規定量を外れた場合で、少ないと25℃、100℃のゲル化時間や表面乾燥性が相当に長く、多すぎると揮発量が多くなる。
これらの比較例に対し(A)~(J)成分が規定量の範囲内にある実施例1、2は、ワニス粘度が適度であり、ゲル化時間も適度で、取り扱いやすい硬化を示す。臭気は少なく、揮発量も少ない。表面乾燥時間も適度であり、硬化物の硬さにも優れる。そして、固着力に優れ、ポリイミド板との固着にも優れる。