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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】水系分散液、水系組成物、化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20220301BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220301BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220301BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220301BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220301BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/02
A61K8/04
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/81
A61K8/86
A61Q1/00
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017189332
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019064935
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩和
(72)【発明者】
【氏名】板垣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】藤橋 岳
(72)【発明者】
【氏名】森下 徳人
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125622(WO,A1)
【文献】特開2005-001999(JP,A)
【文献】特開2002-234827(JP,A)
【文献】特開2006-232740(JP,A)
【文献】特開2004-339326(JP,A)
【文献】特開平11-246356(JP,A)
【文献】特開2001-348317(JP,A)
【文献】特開2013-221148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、非イオン性界面活性剤と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子(酸化ケイ素被覆に加えてさらに疎水性有機表面処理された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を除く)と、を含有し、
前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の亜鉛溶出率は60質量%以下であり、
前記非イオン性界面活性剤がエーテル型であり、
カルボキシビニルポリマーを含有するジェルに配合した場合の凝集粒子径が60μm以下であり、
前記亜鉛溶出率は、前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記水溶液中に溶出する亜鉛イオンの溶出率であることを特徴とする水系分散液。
【請求項2】
前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する前記非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量部以上かつ10.0質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の水系分散液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水系分散液と、水溶性のビニルポリマーとを含有することを特徴とする水系組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の水系分散液および請求項3に記載の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項5】
請求項1または2に記載の水系分散液および請求項3に記載の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を水相に含有してなることを特徴とする水中油型の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系分散液、水系組成物および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線遮蔽機能を付与した化粧料は、レジャー用途に限らず、日常的に多用されている。そのため、化粧料には、毎日使用できるようにストレスを感じない感触が重視されている。このような感触を得るために、化粧料としては、みずみずしい使用感の水系のものが求められている。
【0003】
水系の化粧料は、油系の化粧料と比べてべたつきがなく、肌の負担が少ないため、近年、サンスクリーン剤、乳液、クリーム等の各種水中油型(O/W)の化粧料として使用されている。
【0004】
このような水系の化粧料に用いることができる紫外線遮蔽粒子としては、酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛粒子が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/171322号
【文献】国際公開第2015/072499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されている酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いて水系の化粧料を作製した場合には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士が凝集しやすいといった課題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、水系の化粧料に適用されても、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制でき、紫外線遮蔽性に優れる水系分散液、およびそれを含有する水系組成物、並びにそれらを含有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、非イオン性界面活性剤と、水と、を混合した水系分散液であれば、水系の化粧料に適用された場合でも、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の水系分散液は、水と、非イオン性界面活性剤と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子(酸化ケイ素被覆に加えてさらに疎水性有機表面処理された酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を除く)と、を含有し、前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の亜鉛溶出率は60質量%以下であり、前記非イオン性界面活性剤がエーテル型であり、カルボキシビニルポリマーを含有するジェルに配合した場合の凝集粒子径が60μm以下であり、前記亜鉛溶出率は、前記酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記水溶液中に溶出する亜鉛イオンの溶出率であることを特徴とする。
【0010】
本発明の水系組成物は、本発明の水系分散液と、水溶性のビニルポリマーとを含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の化粧料は、本発明の水系分散液および本発明の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の水中油型の化粧料は、本発明の水系分散液および本発明の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を水相に含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水系分散液によれば、水系の化粧料に適用されても、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制できるため、紫外線遮蔽性に優れる。
【0014】
本発明の水系組成物によれば、水系の化粧料に適用されても、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制できるため、紫外線遮蔽性に優れる。
【0015】
本発明の化粧料によれば、本発明の水系分散液および本発明の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含有しているため、紫外線遮蔽効果に優れた化粧料を得ることができる。
【0016】
本発明の水中油型の化粧料によれば、本発明の水系分散液および本発明の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含有しているため、紫外線遮蔽効果に優れた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の水系組成物の光学顕微鏡像を示す図である。
図2】実施例1~実施例3と比較例1の水系組成物の分光透過率を示す図である。
図3】実施例1、実施例4、実施例5および比較例2の水系組成物の40℃における粘度の経時変化を示す図である。
図4】実施例2の水系組成物の光学顕微鏡像を示す図である。
図5】実施例3の水系組成物の光学顕微鏡像を示す図である。
図6】比較例1の水系組成物の光学顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の水系分散液、およびそれを含有する水系組成物、、並びにそれらを含有する化粧料、水中油型の化粧料を実施するための好ましい形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
[水系分散液]
本実施形態の水系分散液は、水と、非イオン性界面活性剤と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、を含有し、カルボキシビニルポリマーを含有するジェルに配合した場合の凝集粒子径が60μm以下の分散液である。
本実施形態の水系分散液は、液体状であってもよく、ジェル状であってもよい。
【0020】
ここで、カルボキシビニルポリマーを含有するジェルとは、カルボキシビニルポリマーを0.2質量%含有し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5に調製したカルボキシビニルポリマージェルのことを意味する。すなわち、カルボキシビニルポリマージェルは、カルボキシビニルポリマーと、水酸化ナトリウムと、水のみから構成される。
また、カルボキシビニルポリマーを含有するジェルに配合したとは、カルボキシビニルポリマージェルを90質量部と、本実施形態の水系分散液10質量部とを混合することを意味する。
【0021】
凝集粒子径は、混合して得られた水系組成物を、スライドガラスに挟んで光学顕微鏡に観察する。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径の最大値は60μm以下であり、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。なお、凝集粒子径の最大値の下限は20μm程度である。
凝集粒子径の最大値が60μmを超える場合には、カルボキシビニルポリマーを含有する化粧料中で、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が凝集しやすいことを示している。このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が、カルボキシビニルポリマーを含む水系化粧料に配合された場合には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が肌に均一に塗布されることが難しくなる。その結果、所望の紫外線遮蔽性能(SPF)が得られない。また、肌に塗布した時の感触が悪化する。
【0022】
本実施形態の水系分散液中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒子径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒子径が10nm以上であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の結晶性が高いため、充分な紫外線遮蔽性を示すことができる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒径が2μm以下であれば、ぎらつき、きしみ等が生じることがなく、化粧料に処方した場合の使用の感触が向上するとともに、分散安定性が向上し、安定な化粧料が得られる。
なお、本実施形態において、平均分散粒子径とは、動的光散乱法によって測定される粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)を意味する。
【0023】
本実施形態の水系分散液では、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、アルコール、キレート剤、溶媒等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
例えば、pH安定剤として、水系分散液中に、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有させてもよい。
【0024】
本実施形態の水系分散液において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量部以上かつ10.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上かつ9.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上かつ8.0質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、水系の化粧料に適用した場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集を抑制することができる。そのため、肌に塗布した時にも酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性が低下することを抑制することができる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する非イオン性界面活性剤の含有量が10.0質量部以下であれば、粘度が高くなり過ぎず適度な範囲となり、容易に撹拌することができるため、均一な分散液が得られる。
【0025】
また、本実施形態の水系分散液において、非イオン性界面活性剤の含有量は、0.05質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上かつ7質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上かつ5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態の水系分散液において、各成分の合計含有量は100質量%であり、各成分の合計含有量が100質量%を超えることはない。
【0026】
非イオン性界面活性剤は、水に溶けたときに、イオン化しない親水基を有する界面活性剤であり、水の硬度や電解質の影響を受け難い。
非イオン性界面活性剤としては、水と任意の割合で混合でき、化粧料に使用できるものであれば特に限定されない。
このような非イオン性界面活性剤としては、エステル型界面活性剤、エーテル型界面活性剤、エステル・エーテル型界面活性剤等を用いることができる。これらの非イオン性界面活性剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エステル型界面活性剤は、グリセリン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持つ。エステル型界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
エーテル型界面活性剤は、高級アルコールやアルキルフェノール等の水酸基を有する物質に、主として酸化エチレンを付加させてなるものである。エーテル型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等が挙げられる。
【0029】
エステル・エーテル型界面活性剤は、グリセリンやソルビトール等の多価アルコールと脂肪酸からなるエステルに、酸化エチレンを付加させてなるものである。エステル・エーテル型界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0030】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの非イオン性界面活性剤中でも、粘度低下や増粘、他成分への影響が少なく、化粧料を容易に作製することができる点から、エーテル型界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態の水系分散液において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子は、30質量%以上かつ90質量%以下含有されていることが好ましく、40質量%以上かつ85質量%以下含有されていることがより好ましく、45質量%以上かつ80質量%以下含有されていることがさらに好ましい。
分散液における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の含有量が上記範囲であることにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が高濃度で含有されているため、処方の自由度を向上することができるとともに、分散液の粘度が容易な程度とすることができる。
【0032】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子は、酸化亜鉛粒子の表面が酸化ケイ素被膜により被覆されており、カルボキシビニルポリマーおよび水と混合された場合に、その混合液の粘度の増減やpHの変動を抑制できるものであれば特に限定されない。例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、水と、カルボキシビニルポリマーが混合されたときに、亜鉛イオンの溶出が抑制できるほど、酸化ケイ素被膜が緻密であるものを用いると、水系化粧料に配合された場合の品質がより安定するため好ましい。また、アルカリ金属の含有量が少ない酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いると、水系化粧料に配合された場合の品質がより安定するため好ましい。
以下、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の例について、具体的に説明する。
【0033】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の例1)
酸化ケイ素被膜が緻密な酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の一例としては、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子であって、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ環境における存在比をQ、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ環境における存在比をQとしたとき、Q+Q≧0.6かつQ/(Q+Q)≧0.5である酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が挙げられる。さらに、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下となる程度に、酸化亜鉛粒子全体を酸化ケイ素被膜が均一に被覆していることが好ましい。
【0034】
酸化ケイ素被膜は、「酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ環境における存在比をQ、酸化ケイ素被膜中のケイ素のQ環境における存在比をQとしたとき、Q+Q≧0.6かつQ/(Q+Q)≧0.5」を満たすほど、縮合度の高いものであればよい。
なお、緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密さ」と酸化ケイ素の「縮合度」との間には密接な関係があり、酸化ケイ素の縮合度が高くなればなるほど酸化ケイ素被膜の緻密性が高まることとなる。
すなわち、ここでいう緻密な酸化ケイ素被膜の「緻密な」とは、Q+Q≧0.6かつQ/(Q+Q)≧0.5を満たすほど、酸化ケイ素の縮合度が高い状態の酸化ケイ素被膜のことを意味する。
【0035】
酸化ケイ素の縮合度については、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を、固体29Si MAS-核磁気共鳴(NMR)分光法によりNMRスペクトルを測定し、このNMRスペクトルのピーク面積比からQ、Q、Q、Q、Qそれぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を測定することで容易に知ることができる。
ここで、Q(n=0~4)とは、酸化ケイ素の構成単位であるSiO四面体単位の酸素原子のうちの架橋酸素原子、すなわち、2つのSiと結合している酸素原子の数に応じて決まる化学的構造のことである。
これらQ、Q、Q、Q、Qそれぞれの環境に帰属されるシグナルの面積比を、Q、Q、Q、Q、Qと表記する。ただし、Q+Q+Q+Q+Q=1である。
【0036】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下であることが好ましいとした理由を以下に述べる。その理由は、このブリリアントブルーの分解率が3%以下であれば、酸化亜鉛粒子の光触媒活性が抑制されていることとなるので、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性も高いことを意味するからである。ここで、酸化亜鉛粒子を覆っている酸化ケイ素被膜の均質性が高いとは、被覆むらがないこと、被膜が局在化していないこと、ピンホール等がないことを示す。ブリリアントブルーの分解率は、酸化亜鉛粒子の光触媒活性の指標として用いられる。酸化亜鉛粒子の光触媒反応は、基本的に酸化亜鉛粒子の表面にて起こる。すなわち、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が低いということは、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の表面に、酸化亜鉛粒子が露出している箇所が少ないことを示す。
【0037】
ブリリアントブルーの分解率の測定方法は、次の通りである。
まず、ブリリアントブルーを所定の含有量(例えば、5ppm)にしたブリリアントブルー水溶液を調製し、このブリリアントブルー水溶液からスクリュー管に所定量採取し、この採取したブリリアントブルー水溶液に、酸化亜鉛粒子換算で、この水溶液の質量の1質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を投入し、超音波分散して懸濁液を調製する。
次いで、この懸濁液に、紫外線照射ランプを用いて、所定の波長の紫外線を所定距離(例えば、10cm)から所定時間(例えば、6時間)照射する。
紫外線照射ランプとしては、例えば、殺菌ランプGL20(波長253.7nm、紫外線出力7.5W:東芝社製)を用いることができる。
【0038】
次いで、この紫外線が照射された懸濁液から上澄み液を採取し、原子吸光光度法により、上記のブリリアントブルー水溶液および上澄み液それぞれの吸光光度スペクトルを測定する。
そして、これらの測定値を用いて、下記の式(1)によりブリリアントブルーの分解率Dを算出する。
D=(A0-A1)/A0 ・・・(1)(但し、A0はブリリアントブルー水溶液(5ppm)の吸光光度スペクトルの吸収極大波長(630nm)における吸光度、A1は上記の上澄み液の吸光光度スペクトルの吸収極大波長における吸光度である。)
【0039】
なお、通常の酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)について、上記の方法に基づいてブリリアントブルーの分解率を測定した結果、90%であった。これにより、この酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント社製)では、光触媒活性があるとブリリアンブルーの分解率が高いことが確認された。
【0040】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、3nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、水系分散液が所望の透明性と紫外線遮蔽性を得るために、前記の範囲内で適宜調整される。透明性の高い水系分散液を得たい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、水系分散液の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、50nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、50nm以上かつ500nm以下であることがより好ましい。
【0041】
なお、本実施形態の水系分散液を構成する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における「平均一次粒子径」とは、以下の方法で求められる数値である。すなわち、本実施形態の水系分散液を構成する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて観察した場合に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を加重平均する。
なお、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0042】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量は、50質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましい。ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量が50質量%以上であれば、所望の紫外線遮蔽効果が得られる。すなわち、所望の紫外線遮蔽効果を得るために、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を使用する必要がない。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量が90質量%以下であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎることがなく、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができる。
【0043】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を水素イオン指数5の水溶液に0.05質量%となるように1時間浸漬したとき、前記の水溶液中に溶出する亜鉛イオンの溶出率は60質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、亜鉛イオンの溶出率が60質量%以下であることが好ましいとした理由は、亜鉛イオンの溶出率が60質量%以下であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子自体の安定性が向上し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を化粧料に適用した場合に、溶出する亜鉛イオンが、有機系紫外線遮蔽剤、増粘剤等の水溶性高分子等と反応することが抑制され、その反応によって、化粧料としての性能が低下したりすることが抑制され、変色したりすることも抑制され、粘度の増減を生じることも抑制されるためである。
【0044】
亜鉛イオンの溶出率は、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子をpH=5の緩衝液に0.05質量%となるように分散し、1時間撹拌した後、固液分離を行い、液相の亜鉛濃度をICP発光分析装置にて測定することにより測定することができる。
pH=5の緩衝液としては、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を分散させることができる緩衝液であれば特に限定されず、例えば、0.1Mフタル酸水素カリウム水溶液500mlと、0.1M水酸化ナトリウム水溶液226mlとを混合した後、水を加えて全体量を1000mlとした緩衝液が好適に用いられる。
【0045】
このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の製造方法は、国際公開第2014/171322号に詳述されている。この製造方法によれば、酸化亜鉛粒子を、アルコキシシラン、または、ケイ酸ナトリウムおよびアルコキシシランを用いて、酸化亜鉛の表面を酸化ケイ素被膜で被覆し、200℃~600℃で焼成することにより、緻密な酸化ケイ素被膜を有する、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が得られる。
なお、平均一次粒子径が50nm以上の酸化亜鉛粒子を用いる場合には、150℃~600℃で焼成してもよい。
【0046】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化ケイ素の含有量は、酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径に応じて適宜調整される。例えば、平均一次粒子径が50nm以下の酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましい。また、平均一次粒子径が50nmを超える酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は1質量%以上かつ35質量%以下であることが好ましい。
【0047】
(酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の例2)
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の他の例としては、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜により被覆してなる酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子であって、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有する酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が挙げられる。この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を用いることが好ましい理由は、次の通りである。
【0048】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率が3%以下になるよう、酸化亜鉛粒子の表面全体を均一にシリカ被膜で被覆するには、ケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属を含む材料を用いて酸化ケイ素被膜を形成することが好ましい。しかし、このアルカリ金属が酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子に残存していると、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を水相に分散させたときにアルカリ金属イオンが溶出し、pHや粘度を大きく変動させてしまい、化粧料としての品質安定性が損なわれてしまう。
【0049】
そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属を、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種にて置換することにより、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜から除去される。
一方、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属と置換されたMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種は、置換後には、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜中に存在する。これらの置換されたMg、Ca、Baは、水への溶解度が低いケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム等として存在する。
【0050】
置換の結果、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大となる。そのため、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を水相に混合しても、アルカリ金属の溶出が抑制され、pHや粘度の変動を抑制することができ、化粧料としての品質安定性を維持することができる。
【0051】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、必要に応じて選択されるが、2nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、5nm以上かつ500nm以下であることがより好ましく、10nm以上かつ400nm以下であることがさらに好ましい。
透明性の高い水系分散液を得たい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ50nm以下であることが好ましい。一方、水系分散液の紫外線遮蔽性を向上させたい場合、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、50nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、50nm以上かつ500nm以下であることがより好ましい。
【0052】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は小さいほど、化粧料に配合した場合に使用時の透明性を高くするのに適している。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径が大きいほど、紫外線の散乱強度も高くなり、長波長までの紫外線を遮蔽することができる。そこで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、目的とする化粧料の透明性および紫外線の遮蔽性に合わせて適宜選択される。
【0053】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量は、必要に応じて選択されるが、50質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上かつ90質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量が50質量%以上であれば、所望の紫外線遮蔽効果が得られる。そのような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を含む化粧料において、所望の紫外線遮蔽効果を得ようとした場合、大量の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を使用する必要がない。
一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の含有量が99質量%以下であれば、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化亜鉛粒子の割合が高くなり過ぎることがない。そのため、酸化亜鉛粒子の表面を酸化ケイ素被膜で充分に覆うことができ、酸化亜鉛粒子の光触媒活性や亜鉛イオンの溶出を充分に抑制することができる。
【0054】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化ケイ素の含有量は、酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径に応じて適宜調整される。例えば、平均一次粒子径が50nm以下の酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は3質量%以上かつ45質量%以下であることが好ましい。また、平均一次粒子径が50nmを超える酸化亜鉛粒子に関しては、酸化ケイ素の含有量は1質量%以上かつ35質量%以下であることが好ましい。
【0055】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子は、Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含有している。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大であることが好ましい。さらに、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率に対する比(アルカリ金属の質量百分率/Mg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率)は、0.001以上かつ0.6以下であることが好ましく、0.01以上かつ0.5以下であることがより好ましく、0.1以上かつ0.4以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、アルカリ金属とは、一般的に知られているものを指し、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)およびフランシウム(Fr)からなる群から選択される少なくとも1種を意味する。
【0056】
ここで、酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率を、酸化ケイ素被膜に含まれるアルカリ金属の質量百分率より大とした理由は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の初期における水素イオン指数(pH)の変動要因は、酸化亜鉛粒子から溶出される亜鉛イオンではなく、酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属イオンの溶出が主要因だからである。
【0057】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率は、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被膜中に含まれるアルカリ金属の質量百分率の下限値は任意に選択できる。アルカリ金属の質量百分率は0%でもよく、他の例を挙げれば、例えば、0.0001質量%以上や0.001質量%以上などであってもよい。
【0058】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子における酸化ケイ素被膜中に含まれるMg、CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種の合計の質量百分率は、0.01質量%以上かつ1質量%以下であることが好ましい。
【0059】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子(酸化ケイ素被膜)に含まれるアルカリ金属、Mg、CaおよびBaの質量百分率(質量%)は、原子吸光分析法により測定することができる。
【0060】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子では、酸化亜鉛粒子の光触媒活性によって生じるブリリアントブルーの分解率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
さらに、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の酸化ケイ素被膜は、「ケイ素のQ環境における存在比をQ、Q環境における存在比をQとしたとき、Q+Q≧0.6かつQ/(Q+Q)≧0.5」を満たすことが好ましい。
【0061】
このような酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の製造方法は、国際公開第2015/072499号に詳述されている。
【0062】
水は、化粧料に一般的に使用される水であれば特に限定されず、純水、イオン交換水、蒸留水、精製水、超純水、天然水、アルカリ金属イオン水、深層水等が用いられる。
本実施形態の水系分散液における水の含有量は、所望の特性に応じて適宜調整される。水系分散液の処方の自由度向上の観点から、水の含有量は、5質量%以上かつ70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ65質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上かつ60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
[水系分散液の製造方法]
本実施形態の水系分散液の製造方法は、所定量の非イオン性界面活性剤と、水と、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、を均一に混合できる方法であれば、特に限定されない。
例えば、本実施形態の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、非イオン性界面活性剤と、水と、を公知の分散装置で、機械的に分散する方法が挙げられる。
分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機、サンドミル、ボールミル、ロールミル等が挙げられる。
【0064】
[水系組成物]
本実施形態の水系組成物は、本実施形態の水系分散液と、水溶性のビニルポリマーとを含有する組成物である。
本実施形態の水系組成物は、液体状であってもよく、ジェル状であってもよい。
【0065】
本実施形態の水系組成物は、BII型回転粘度計を用い、20℃、30回転(rpm)の条件下で測定した場合の粘度が、0.1Pa・s以上かつ15Pa・s以下であることが好ましく、0.2Pa・s以上かつ13Pa・s以下であることがより好ましく、0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
水系組成物の粘度が上記範囲内であることにより、水系組成物を水中油型の化粧料に好適に用いることができる。
【0066】
また、本実施形態の水系組成物は、40℃で1ヶ月間保管した後の粘度が0.1Pa・s以上かつ15Pa・s以下であることが好ましく、0.2Pa・s以上かつ13Pa・s以下であることがより好ましく、0.3Pa・s以上かつ10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
40℃で1ヶ月間保管しても、水系組成物の粘度が上記範囲内であることにより、水中油型の化粧料としての性能を保持できていることになるため好ましい。
【0067】
本実施形態の水系組成物は、水素イオン指数(pH)が6.0以上かつ9.0以下であることが好ましく、6.5以上かつ9.0以下であることがより好ましく、7.0以上かつ9.0以下であることがさらに好ましい。
pHが上記範囲内であることにより、水中油型の化粧料に好適に用いることができる。
【0068】
また、本実施形態の水系組成物は、40℃で1ヶ月間保管した後の水素イオン指数(pH)が6.0以上かつ9.0以下であることが好ましく、6.5以上かつ9.0以下であることがより好ましく、7.0以上かつ9.0以下であることがさらに好ましい。
40℃で1ヶ月間保管しても、水素イオン指数が上記範囲内であることにより、化粧料の水素イオン指数として使用できる性能を保持できていることになるため好ましい。
【0069】
本実施形態の水系組成物は、促進条件下で保管した場合の粘度が、例えば、40℃にて保管した場合であって、かつ、1ヶ月間経過後に測定した粘度を、初期条件下での粘度低下後の粘度、例えば、40℃で720時間経過後に測定した粘度にて割った値が、0.7以上かつ1.0以下であることが好ましい。
このように、促進条件下、すなわち、1ヶ月間経過後の粘度を、初期条件下での粘度低下後の粘度にて割った値を、上記範囲内とすることにより、本実施形態の水系組成物の粘度を中長期に亘って維持することができる。上記のような水系組成物は、本明細書で述べられる条件を制御(調整)することで得られる。
【0070】
本実施形態の水系組成物を必要に応じてアルコール類で希釈し、水系組成物における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の含有量を5質量%とし、この組成物を用いて厚み12μmの塗膜(水系組成物)を形成した場合、その薄膜塗膜の波長450nmの光に対する透過率は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。透過率は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を5質量%含有する水系組成物を、石英基板上に厚み12μmとなるように塗膜を形成し、その塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV-1000S(Labsphere社製)にて測定することにより求めることができる。
【0071】
水溶性のビニルポリマーとしては、化粧料で使用されるものであれば特に限定されず、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体等が挙げられる。
これらの水溶性のビニルポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)940、Carbopol(登録商標)941 、Carbopol(登録商標)980、Carbopol(登録商標)981、Carbopol(登録商標)Ultrez10(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0073】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、Carbopol(登録商標)1342、PEMULEN(登録商標)TR-1、PEMULEN(登録商標)TR-2(Lubrizol Advanced Materials社製)の商品名で知られているものが挙げられる。
【0074】
アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体としては、例えば、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス-25)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)クロスポリマーが挙げられる。また、アクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体として、ローム&ハース社から市販されているアキュリン(登録商標)22、アキュリン(登録商標)28、アキュリン(登録商標)88を用いてもよい。
【0075】
本実施形態の水系組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ6.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上かつ5.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上4.5質量部以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対する水溶性のビニルポリマーの含有量が0.02質量部以上かつ6.0質量部以下であれば、水系の化粧料に適用された場合にでも、紫外線遮蔽性の向上効果が得られやすいため好ましい。
【0076】
また、本実施形態の水系組成物において、水溶性のビニルポリマーの含有量は、0.02質量%以上かつ6.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上かつ5.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上かつ4.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
本実施形態の水系組成物において、本実施形態の水系分散液は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が1質量%以上かつ80質量%以下となるように含有されていることが好ましく、5質量%以上かつ70質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上かつ70質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上かつ65質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0078】
本実施形態の水系組成物は、水に対する、水溶性のビニルポリマーと酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性を向上させるために、アルコール類を含有することが好ましい。
【0079】
本実施形態の水系組成物において、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上かつ100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上かつ50質量部以下であることがより好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が10質量部以上であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の分散性をより向上させることができる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子100質量部に対するアルコール類の含有量が100質量部以下であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子含有水系組成物を化粧料に配合した場合におけるべたつきや感触の悪化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態の水系組成物において、アルコール類の含有量は、0.1質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上かつ25質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上かつ20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0081】
アルコール類としては、化粧料に使用できるものであれば特に限定されず、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、オクタノール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の炭素原子数1~6の一価アルコールまたは多価アルコール等を用いることができる。
これらのアルコール類の中でも、グリセリンは化粧料の感触改善や保湿効果で、化粧料に汎用されている点で好ましい。
【0082】
本実施形態の水系組成では、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、アルコール、キレート剤、溶媒等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0083】
本実施形態の水系組成では、水系分散液中に含まれる水を含めて、水の含有量は、10質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ95質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上かつ94質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態の水系組成物において、各成分の合計含有量は100質量%であり、各成分の合計含有量が100質量%を超えることはない。
【0084】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種と、化粧品基剤原料と、を含有してなる。
【0085】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料を意味し、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0086】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を、乳液、クリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品基剤原料に、公知の方法で配合することにより得られる。
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を油相または水相に配合して、O/W型またはW/O型のエマルションとしてから、化粧品基剤原料と配合することによっても得られる。
【0087】
化粧料における酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の含有量は所望の特性に応じて適宜調整すればよく、例えば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0088】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含有しているため、紫外線遮蔽性に優れる。
【0089】
[水中油型の化粧料]
本実施形態の水中油型の化粧料は、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を水相に含有してなる。
【0090】
本実施形態の水中油型の化粧料は、水相に本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、油相には油成分が含有された水中油型のエマルションである。
水相には、必要に応じて、分散剤、安定剤、水溶性バインダー(水溶性高分子)、増粘剤、アルコール等、一般的に水系の化粧料で用いられる添加剤を含んでいてもよい。
油相には、必要に応じて、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油、動物油、溶媒等、一般的に化粧料で用いられる添加剤を適宜含んでいてもよい。
【0091】
油成分は、化粧料に用いられものであれば特に限定されず、所望の有機系紫外線遮蔽剤を溶解することができるものが適宜選択される。
このような油成分としては、高級アルコール、高級脂肪酸、および、高級アルコールと高級脂肪酸が結合してなる脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。油成分がこれらの成分を含有することで、ハリ感や保湿感が向上するとともに、これらの効果の持続性が向上する。また、メトキシ桂皮酸エチルヘキシルのように液体の有機系紫外線吸収剤を油成分として用いることもできる。
【0092】
高級アルコールとしては、例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール等が好適に用いられる。これらの高級アルコールは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
高級脂肪酸としては、例えば、炭素原子数12~24の飽和または不飽和の脂肪酸を用いることが好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸等が好適に用いられる。これらの高級脂肪酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、ジステアリン酸グリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸ステアリル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、オレイン酸エチル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、オクタン酸セチル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等が好適に用いられる。これらの脂肪酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、水相と油相の分離を抑制する観点から、脂肪酸エステルのエステル価は低い方が好ましい。具体的には、脂肪酸エステルとしては、エステル価が95~170のものを用いることが好ましい。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル(エステル価100~111)、2-エチルヘキサン酸セチル(エステル価135~160)等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の水中油型の化粧料は、キレート剤を含有することが好ましい。キレート剤を含有することにより、水中油型の化粧料の経時による水素指数変動をより抑制することができる。
キレート剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、フィチン酸、ポリリン酸、メタリン酸等が用いられる。これらの中でも、汎用性が高い点から、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。
【0096】
水中油型の化粧料におけるキレート剤の含有量は、所望の性能に合わせて適宜調整されるが、例えば、0.01質量%以上かつ1.0質量%以下であることが好ましい。
ここで、キレート剤の含有量が0.01質量%以上であれば、水中油型の化粧料において、所望の特性が得られる。一方、キレート剤の含有量が1.0質量%以下であれば、水中油型の化粧料を安全に使用できる。例えば、化粧料においてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の配合量は、医薬部外品原料規格において1.0%以下に規制されている。
【0097】
本実施形態の水中油型の化粧料は、油相に有機系紫外線遮蔽剤を含有することが好ましい。
有機系紫外線遮蔽剤としては、化粧料に用いられものであれば特に限定されない。有機系紫外線遮蔽剤としては、例えば、アントラニラート類、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、ショウノウ誘導体、ベンゾフェノン誘導体、β,β’-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロナート誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、イミダゾリン類、ビスベンゾアゾリル誘導体、p-アミノ安息香酸(PABA)誘導体、メチレンビス(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール)誘導体等が挙げられる。有機系紫外線遮蔽剤としては、前記の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0098】
本実施形態の水中油型の化粧料中の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒子径は、10nm以上かつ2μm以下であることが好ましく、20nm以上かつ800nm以下であることがより好ましく、25nm以上かつ500nm以下であることがさらに好ましい。
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒子径が10nm以上であれば、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の結晶性が低くなることがないため、充分な紫外線遮蔽性を示すことができる。一方、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の平均分散粒子径が2μm以下であれば、ぎらつき、きしみ等が生じることがなく、使用の感触が向上するとともに、分散安定性が向上し、安定な水中油型の化粧料が得られる。なお、本実施形態において、分散粒子径とは、複数の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が集まって分散している状態の粒子径(二次粒子径)を意味する。
【0099】
本実施形態の水中油型の化粧料は、上記の成分に加えて、他の成分を適宜添加すること等により、乳液、クリーム、日焼け止め料、ファンデーション、美容液、化粧下地料、口紅等の形態にして用いてもよい。
他の成分としては、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子等の無機系紫外線遮蔽剤、有機系紫外線遮蔽剤、美白剤、増粘剤等、化粧料に一般的に用いられる添加剤や化粧品基剤原料等が挙げられる。
【0100】
本実施形態の水中油型の化粧料によれば、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種を含有するため、紫外線遮蔽性と使用感に優れた化粧料を得ることができる。
【0101】
[水中油型の化粧料の製造方法]
本実施形態の水中油型の化粧料の製造方法は、本実施形態の水系分散液および本実施形態の水系組成物からなる群から選択される少なくとも1種が水相に含有され、油成分が油相に含有された水中油型(O/W)の化粧料を作製できる方法であれば特に限定されない。
【0102】
例えば、水と、本実施形態の水系組成物と、pH調整剤と、乳化剤と、をあらかじめ混合して水相用の混合物とする。そして、この水相用の混合物に油成分を加えて混合し、水中油型のエマルションとすることで、本実施形態の水中油型の化粧料を作製することができる。
【0103】
なお、本実施形態の水系組成物に、アルキル変性カルボキシビニルポリマーやアクリル酸アルキル/メタクリル酸/ポリオキシエチレン共重合体が含有されている場合には、アルキル部分が乳化剤の役割を果たすため、乳化剤を添加しなくてもよい。
【0104】
乳化剤としては、水中油型のエマルションを作製するのに、化粧料で使用できるものであれば特に限定されない。例えば、親水性の界面活性剤を好適に用いることができ、親水性の界面活性剤としては、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略す。)ソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POEヒマシ油、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0105】
有機系紫外線遮蔽剤を含有させる場合には、油成分と有機系紫外線遮蔽剤をあらかじめ混合しておいてから、水相用の混合物に混合して乳化させればよい。
【実施例
【0106】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
[酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の作製]
酸化亜鉛粒子(平均粒子径35nm;住友大阪セメント製)と水を混合し、次いで、超音波分散を行い、酸化亜鉛粒子の含有量が20質量%の酸化亜鉛水系懸濁液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛水系懸濁液を、この酸化亜鉛水系懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量に対して、酸化ケイ素換算で20質量%のケイ酸ソーダを含むケイ酸ソーダ水溶液に加え、強く撹拌し、懸濁液とした。
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながら希塩酸を徐々に添加してpHを6.5~7に調整した。その後、2時間静置し、その後、さらに、この懸濁液中の酸化亜鉛粒子の質量と同質量の塩化カルシウム水溶液(塩化カルシウム2水和物50質量%)を加えて撹拌し、さらに2時間静置した。
次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を水にて洗浄した。その後、この固形物を150℃にて乾燥し、さらに500℃にて15時間、熱処理(焼成)を行い、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を作製した。
【0108】
次いで、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と2-プロパノールを混合し、次いで、その混合物を超音波分散し、この酸化ケイ素被覆酸化亜鉛の含有量が10質量%の酸化ケイ素被覆酸化亜鉛2-プロパノール懸濁液を調製した。
次いで、この懸濁液を60℃に加温し、この懸濁液を撹拌しながらアンモニア水および水を添加して、懸濁液のpHを10~11に調整した。なお、水の添加量は、後に添加するテトラエトキシシラン2-プロパノール溶液中のテトラエトキシシランに対して120質量%となるようにした。
さらに、この懸濁液に、テトラエトキシシラン2-プロパノール溶液を、テトラエトキシシランの滴下量が、酸化ケイ素に換算して酸化亜鉛の全質量に対して15質量%(ケイ酸ソーダ由来の酸化ケイ素量も含めた合計)となるように、ゆっくり滴下し、6時間攪拌を継続した。次いで、この懸濁液を遠心分離機により固液分離し、得られた固形物を120℃にて乾燥した。次いで、この乾燥物を500℃で3時間熱処理(焼成)を行い、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛を得た。
【0109】
[水系分散液の作製]
純水35.6質量部と、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(商品名:エマルゲン2025G、花王社製)を23質量%含む水溶液14.4質量部とをホモディスパーにより混合した。
次いで、この混合液に得られた酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子50.0質量部を混合し、卓上型超音波洗浄機(商品名:W-113MK-II、本多電子社製)により10分間、分散処理し、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子を50質量%およびポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを3.3質量%含有する実施例1の水系分散液を得た。
【0110】
[水系組成物の作製]
カルボキシビニルポリマー(商品名:Carbopol Ultrez 10 polymer、Lubrizol Advanced Materials社製)を純水に溶解し、次いで、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、カルボキシビニルポリマーを0.2質量%含有するpH7.5のカルボキシビニルポリマージェルを得た。
得られた0.2質量%カルボキシビニルポリマージェル90質量部と、実施例1の水系分散液10質量部とを混合し、実施例1の水系組成物を得た。
【0111】
[凝集粒子径の評価]
実施例1の水系組成物を2枚のスライドガラスではさみ、光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡象を図1に示す。
光学顕微鏡の観察により計測した凝集粒子径の最大値は30μmであった。
【0112】
[SPFの評価]
実施例1の水系組成物を用いて、石英基板上に厚み12μmとなるように塗膜を形成し、その塗膜の分光透過率をSPFアナライザー UV-1000S(Labsphere社製)にて測定した。結果を図2に示す。SPF値は7であった。
【0113】
[水系組成物の粘度の安定性評価]
実施例1の水系組成物を作製した後(0時間)の粘度を、BII型回転粘度計(東機産業社製)で、20℃、30回転の条件下で測定した。この組成物を40℃で保管し、所定の時間毎に粘度を測定した。結果を図3に示す。
なお、リファレンスとして、カルボキシビニルポリマーを0.2質量%含有するpH7.5のカルボキシビニルポリマージェルについても、同様に粘度を測定した。結果を図3に示す。
【0114】
[実施例2]
実施例1において、純水35.6質量部と、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを23質量%含む水溶液14.4質量部を用いる替わりに、純水42.8質量部とポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを23質量%含む水溶液7.2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の水系分散液を得た。
【0115】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、実施例2の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の水系組成物を得た。
【0116】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径を、実施例1と同様に評価した。光学顕微鏡像を図4に示す。
光学顕微鏡観察により計測した凝集粒子径の最大値は40μmであった。
【0117】
水系組成物を用いて形成した塗膜の分光透過率を実施例1と同様に測定した。結果を図2に示す。SPF値は5であった。
【0118】
[実施例3]
実施例1において、純水35.6質量部と、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを23質量%含む水溶液14.4質量部を用いる替わりに、純水48.6質量部とポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを23質量%含む水溶液1.4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の水系分散液を得た。
【0119】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、実施例3の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の水系組成物を得た。
【0120】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径を、実施例1と同様に評価した。光学顕微鏡像を図5に示す。
光学顕微鏡観察により計測した凝集粒子径の最大値は50μmであった。
【0121】
水系組成物を用いて形成した塗膜の分光透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を図2に示す。SPF値は4であった。
【0122】
[実施例4]
実施例1において、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを用いる替わりに、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(製品名:レオドールTW-P120、花王社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の水系分散液を得た。
【0123】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、実施例4の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の水系組成物を得た。
【0124】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径を、実施例1と同様に評価した。
光学顕微鏡観察により計測した凝集粒子径の最大値は60μm以下であった。
【0125】
水系組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を図3に示す。
【0126】
[実施例5]
実施例1において、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを用いる替わりに、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(製品名:レオドールTW-O120V、花王社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の水系分散液を得た。
【0127】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、実施例5の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の水系組成物を得た。
【0128】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径を、実施例1と同様に評価した。
光学顕微鏡観察により計測した凝集粒子径の最大値は60μm以下であった。
【0129】
水系組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を図3に示す。
【0130】
[比較例1]
実施例1において、純水35.6質量部と、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを23質量%含む水溶液14.4質量部を用いる替わりに、純水50.0質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例のポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを含まない水系分散液を得た。
【0131】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、比較例1の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の水系組成物を得た。
【0132】
酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子の凝集粒子径を、実施例1と同様に評価した。光学顕微鏡像を図6に示す。
光学顕微鏡観察より計測した凝集粒子径の最大値は130μmであった。
【0133】
水系組成物を用いて形成した塗膜の分光透過率を実施例1と同様にして測定した。結果を図2に示す。SPF値は1であった。
【0134】
[比較例2]
実施例1において、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルを用いる替わりに、イオン性界面活性剤であるPOE(3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム(製品名:NIKKOL ECT-3NEX、日光ケミカルズ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の水系分散液を得た。
【0135】
実施例1の水系分散液を用いる替りに、比較例2の水系分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の水系組成物を得た。
【0136】
水系組成物の粘度を実施例1と同様にして測定した。結果を図3に示す。
比較例2の水系組成物は、水系分散液とカルボキシビニルポリマージェルを混合するとすぐに粘度の低下が観察されたため、凝集粒子径の測定はしなかった。
【0137】
実施例1~実施例5と比較例1、2を比較すると、酸化ケイ素被膜酸化亜鉛粒子と非イオン性界面活性剤を含有する水系分散液は、水系化粧料で広く用いられているカルボキシビニルポリマージェルと混合した時に、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子が凝集することが抑制されることが確認された。また、凝集粒子径が60μm以下である水系組成物を塗膜にした場合、SPF値が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の水系分散液は、酸化ケイ素被覆酸化亜鉛粒子と、非イオン性界面活性剤を含有しているため、水系の化粧料に含有されても所望の紫外線遮蔽性が得られる。そのため、紫外線遮蔽能が必要とされ、使用感に優れる水系の化粧料や水中油型の化粧品への適用はもちろんのこと、化粧料以外の分野で用いる場合においては、分散剤や樹脂の選択の幅が広がり、塗料等の設計配合の自由度を高めることができ、その工業的価値は大きい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6