(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ワイヤーシールの装着方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20220301BHJP
H01R 13/56 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H01R43/00 B
H01R13/56
(21)【出願番号】P 2018040903
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘志
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-75182(JP,A)
【文献】実開平5-11717(JP,U)
【文献】特開平6-246554(JP,A)
【文献】特開2006-220696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0239437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着装置により電線にワイヤーシールを装着するワイヤーシールの装着方法であって、
中心軸方向に貫通する中空部が形成された管状の
前記ワイヤーシールを前記中心軸回りに回転させる
回転工程と、
前記ワイヤーシールを回転させながら前記ワイヤーシール及び電線の少なくとも一方を移動させて前記中空部に前記電線を挿入する
挿入工程と、
を備
え、
前記装着装置は、前記中心軸回りに回転可能に設けられており前記ワイヤーシールを把持する把持部を備え、
前記回転工程は、前記中空部に前記電線が挿入される側とは反対側の前記ワイヤーシールの端部を前記把持部に把持させながら前記ワイヤーシールを前記中心軸回りに回転させる
ワイヤーシールの装着方法。
【請求項2】
前記ワイヤーシールは、円筒状の本体部と、前記本体部から径方向外側に突出する複数の突起部と、を備えており、
前記本体部は、前記中空部に前記電線が挿入される側とは反対側の前記ワイヤーシールの端部である大径本体部と、前記大径本体部よりも径が小さく前記大径本体部と前記複数の突起部との間に配置されている小径本体部と、を備え、
前記把持部は、前記大径本体部を把持しており、前記大径本体部と篏合する凹状の篏合部を有している、
請求項1に記載のワイヤーシールの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーシールの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線にワイヤーシールを装着する方法として、例えば、特許文献1に記載されている装着装置を用いてワイヤーシールに電線を挿入して装着する方法がある(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の電線用ワイヤーシールの装着装置は、電線の先端部を被包して挟持する把持手段と、この把持手段に向かってワイヤーシールを挿入する装着手段とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装着装置を用いてワイヤーシールに電線を挿入する方法では、電線が有する波状の微小な曲がり癖によって、ワイヤーシールに電線を挿入するときにワイヤーシールと電線との間に発生する摩擦により、電線をワイヤーシールに挿入しにくくなる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、ワイヤーシールと電線との間に発生する摩擦を低減して電線を挿入しやすいワイヤーシールの装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、下記の[1]のワイヤーシールの装着方法、及び[2]の装着装置を提供する。
[1]中心軸方向に貫通する中空部が形成された管状のワイヤーシールを前記中心軸回りに回転させる工程と、前記ワイヤーシールを回転させながら前記ワイヤーシール及び電線の少なくとも一方を移動させて前記中空部に前記電線を挿入する工程と、を備える、ワイヤーシールの装着方法。
[2]ワイヤーシールの端部を把持する把持部であって、前記把持部が前記ワイヤーシールの中心軸回りに回転可能に設けられている、装着装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ワイヤーシールと電線との間に発生する摩擦を低減して電線に挿入しやすいワイヤーシールの装着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態で用いられるワイヤーシールの一例を示す概略図であり、(a)は、右側面図であり、(b)は、上面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るワイヤーシールの装着冶具の一例を示す右側面図である。
【
図3】
図3は、ワイヤーシールに電線を挿入する工程の概略を示す図であり、(a)は、挿入前の状態を示す図、(b)は、挿入後の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、ワイヤーシールの挿入方法における工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、
図1から
図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
(ワイヤーシール)
図1は、本発明の実施の形態で用いられるワイヤーシールの一例を示す概略図であり、(a)は、右側面図であり、(b)は、上面図であり、(a)の図示右側から見た図である。ワイヤーシール1は、管状の形状を有するゴム栓である。ワイヤーシール1は、例えば、シリコンゴムにより形成される。ワイヤーシール1は、例えば、4.0mm~6.0mmの長さlを有する。なお、4.0mm~6.0mmは、一例であり、ワイヤーシール1の長さがこの範囲に限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、ワイヤーシール1は、略円筒状の形状を有する本体部11と、この本体部11から径方向外側に突出する複数の突起部12とを備えている。本体部11は、小径本体部11a及び大径本体部11bを含んで構成されている。本体部11には、電線2(
図3各図参照)を挿入するための本体部11の中心軸方向Оに貫通する中空部111が形成されている。なお、本体部11の外周面には、例えば、圧着端子(不図示)を接続してもよい。
【0013】
(装着冶具)
次に、
図2を参照して、装着冶具について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るワイヤーシールの装着冶具の一例を示す右側面図である。なお、装着冶具は、装着装置の一例である。
図2に示すように、装着冶具4は、本体部41と、ワイヤーシール1の本体部11の大径部11bを把持する把持部42と、この把持部42を本体部41に対してワイヤーシール1の中心軸回りに回転させる回転部43とを備えている。換言すれば、把持部42は、本体部41に対して回転可能に取り付けられている。ワイヤーシール1の本体部11の大径部11bは、ワイヤーシール1の端部の一例である。
【0014】
把持部42の先端部42aは、好ましくは、ワイヤーシール1の本体部11の大径部11bの外側形状に嵌合する形状を有している。回転部43には、例えば、公知の駆動装置を用いることができる。
【0015】
(ワイヤーシール1の装着方法)
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明に係るワイヤーシール1の装着方法について説明する。
図3は、ワイヤーシール1に電線2を挿入する工程の概略を示す図であり、(a)は、挿入前の状態を示す図、(b)は、挿入後の状態を示す図である。
図4は、ワイヤーシール1の挿入方法における工程の一例を示すフローチャートである。
【0016】
電線2は、例えば、導体21とこの導体21の周囲を被覆する絶縁体22とを含んで構成された絶縁電線とすることができる。電線2は、例えば、1.5mmの直径を有する。また、電線2の断面積は、例えば、0.3~2.0mm2とすることができる。なお、ワイヤーシール1を電線2の絶縁体22に装着するとき、電線2は、所定の冶具(不図示)に支持されていてもよい。
【0017】
図4に示すように、まず、電線2の中心軸と、ワイヤーシール1の中心軸、具体的には、中空部111の中心軸とが略一致するように互いの位置を調整する位置合せを行う(S1)。
【0018】
次に、
図3(a)に示すように、ワイヤーシール1を中心軸方向Оを回転軸として回転させる(S2)(
図3(a)破線矢印参照)。具体的には、装着冶具4の把持部42でワイヤーシール1の本体部11の大径部11bを把持し、ワイヤーシール1の本体部11の大径部11bを把持した状態の把持部42を回転部43で回転させる。なお、作業者は、装着冶具4の本体部41を掴んで保持することができる。
【0019】
次に、ワイヤーシール1を回転させながら、電線2にワイヤーシール1の中空部111を被嵌し(
図3(a)の実線矢印参照)、ワイヤーシール1を電線2の所望の位置まで移動する。その結果、電線2は、ワイヤーシール1の中空部111に挿入される(S3)。
【0020】
以上のようにして、
図3(b)に示すように、ワイヤーシール1が電線2に装着された電線セット10を作成することができる。
【0021】
なお、ワイヤーシール1の回転方向は、
図3(a)に示すものに限定されるものではなく、
図3(a)に示した方向と反対方向に回転させてもよい。また、ワイヤーシール1を固定して電線2を回転させてもよい。また、回転の速さ(例えば、単位時間当たりの回転回数や角速度)は、目的に応じて適宜調整することができる。また、ワイヤーシール1は、回転と停止とを交互に行ってもよい。
【0022】
また、電線2をワイヤーシール1に挿入するとき、電線2をワイヤーシール1に移動するようにして挿入してもよく、逆にワイヤーシール1を電線2に移動するようにして挿入してもよく、双方を互いに移動するようにして挿入してもよい。
【0023】
また、
図3(a)では、図示の右側からワイヤーシール1を装着する例を示したが、左側から装着してもよい。また、電線2が装着冶具4が接触してワイヤーシール1を電線2の所望の位置まで移動する作業が妨げられないように、例えば、装着冶具4の本体部41に、電線2を通す貫通孔(不図示)を形成してもよい。
【0024】
[実施の形態の作用及び効果]
以上説明した本発明の実施の形態によれば、ワイヤーシール1を回転させながらワイヤーシール1に電線2を挿入するため、ワイヤーシール1と電線2との間に発生する摩擦が低減され、電線2を挿入しやすくすることができる。このようにすることで、電線2に所定の大きさの波状の曲がり癖が生じていたとしても、電線2をワイヤーシール1に挿入しやすくすることができる。
【0025】
また、電線2をワイヤーシール1に挿入しやすくすることによって、挿入する作業を手作業で行う場合であっても、作業者間の技能の差によって発生し得る所要時間のバラツキを緩和することができ、その結果、組立作業のサイクルタイムを一定化することができる。また、挿入し易くなることにより、作業者の作業の負担を低減することができる。
【0026】
また、ワイヤーシール1を回転させながらワイヤーシール1に電線2を挿入することにより電線の中心軸とワイヤーシールの中心軸とのずれを補正することができるため、電線の中心軸とワイヤーシールの中心軸との間に所定のずれがある場合であっても、挿入の失敗の発生を抑制することができる。
【0027】
さらに、本発明に係る装着装置は、従来技術における装着装置と比較して小型であるため、作業用の卓上等狭いスペースでの作業にも適している。また、本発明に係る装着装置は、従来技術における装着装置と比較して安価であるため、コストの抑制にも資する。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0029】
1:ワイヤーシール、10:電線セット、11:本体部、111:中空部、12:突起部、2:電線、21:導体、22:絶縁体、4:装着冶具、41:本体部、42:把持部、43:回転部