(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220301BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20220301BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G15/01 Z
G03G21/00 310
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2018061390
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋子
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 隆介
(72)【発明者】
【氏名】浦山 太一
(72)【発明者】
【氏名】金谷 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 加余子
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-184178(JP,A)
【文献】特開2015-105966(JP,A)
【文献】特開2007-171429(JP,A)
【文献】特開2015-212770(JP,A)
【文献】特開2010-224375(JP,A)
【文献】特開2006-154579(JP,A)
【文献】特開2016-035533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/01
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を備え、該像担持体にトナーを形成して、トナー像を記録媒体に転写する画像形成装置において、
前記像担持体のスラスト方向に対向して配置され、前記像担持体のスラスト方向におけるトナーが付着可能な領域の全域の表面状態を検知可能である検知手段と、
履歴データを記憶する記憶部と、
前記検知手段による前記スラスト方向の検知範囲を、前記履歴データに基づき選択的に設定する検知範囲設定部と、
検知結果により、前記像担持体の前記検知範囲の表面状態が要回復か否かを判定する回復要否領域判断部と、
要回復と判定された領域に対して状態回復動作を実施させる回復制御部と、を備え、
前記履歴データは、前記記録媒体の幅の履歴情報を含む履歴データであり、
前記検知手段は前記像担持体表面の光沢度を検知し、
前記回復要否領域判断部は経時における前記光沢度の差によって回復要否を判断すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像担持体を備え、該像担持体にトナーを形成して、トナー像を記録媒体に転写する画像形成装置において、
前記像担持体のスラスト方向に対向して配置され、前記像担持体のスラスト方向におけるトナーが付着可能な領域の全域の表面状態を検知可能である検知手段と、
履歴データを記憶する記憶部と、
前記検知手段による前記スラスト方向の検知範囲を、前記履歴データに基づき選択的に設定する検知範囲設定部と、
検知結果により、前記像担持体の前記検知範囲の表面状態が要回復か否かを判定する回復要否領域判断部と、
要回復と判定された領域に対して状態回復動作を実施させる回復制御部と、を備え、
前記履歴データは、前記像担持体のフィルミング発生位置の履歴情報を含む履歴データであり、
前記検知手段は前記像担持体表面の光沢度を検知し、
前記回復要否領域判断部は経時における前記光沢度の差によって回復要否を判断すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
像担持体を備え、該像担持体にトナーを形成して、トナー像を記録媒体に転写する画像形成装置において、
前記像担持体のスラスト方向に対向して配置され、前記像担持体のスラスト方向におけるトナーが付着可能な領域の全域の表面状態を検知可能である検知手段と、
履歴データを記憶する記憶部と、
前記検知手段による前記スラスト方向の検知範囲を、前記履歴データに基づき選択的に設定する検知範囲設定部と、
検知結果により、前記像担持体の前記検知範囲の表面状態が要回復か否かを判定する回復要否領域判断部と、
要回復と判定された領域に対して状態回復動作を実施させる回復制御部と、を備え、
前記履歴データは、前記状態回復動作の実施位置の履歴情報を含む履歴データであり、
前記検知手段は前記像担持体表面の光沢度を検知し、
前記回復要否領域判断部は経時における前記光沢度の差によって回復要否を判断すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記履歴データは、前記像担持体のフィルミング発生位置の履歴情報又は前記状態回復動作の実施位置の履歴情報のいずれか一方、または、その両方を更に含んでいることを特徴とする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記履歴データは、更に前記状態回復動作の実施位置の履歴情報を含んでいる
ことを特徴とする
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
検知範囲設定部は、前記検知範囲に加えて前記像担持体表面の光沢度を検知する検知頻度を設定すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記状態回復動作は、要回復と判定された領域に対し、トナーを付着させることである
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
互いに異なる色のトナーを、前記像担持体に供給する複数の現像手段を備えており、
前記状態回復動作で使用されるトナーは、トナー使用履歴に基づく最も使用量が少ない色のトナーである
請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
互いに異なる色のトナーを、前記像担持体に供給する複数の現像手段を備えており、
モノクロ印刷を実行しているとき、前記状態回復動作で使用されるトナーは、ブラックトナーである
請求項7に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる画像濃度調整や色ずれ補正制御では、感光体ドラム上や中間転写ベルト上に作成された検知用のトナーパターンの濃度や位置を光学センサで読み取って補正している。
【0003】
しかしながら、経時により中間転写ベルト上にトナーや紙等の添加物が薄い膜状に堆積するフィルミングが発生すると、中間転写ベルトの光沢度が低下し、センサの出力が上昇する。そこで、例えば、特許文献1では、ベルト上のフィルミングを、初期と現在のベルト表面の差によって検知してベルトリフレッシュ動作を実施している。
【0004】
しかし、特許文献1では、ベルト上所定のセンサ位置での検知結果によって、ベルト全域のフィルミングを予測するため、フィルミング抑制のためのトナー付着もベルトスラスト方向全域に実施するため、効率が悪い。ベルトスラスト方向位置によりフィルミング発生に差がある場合、検知に誤差が生じやすい。実際ベルトフィルミングは、ベルトの周方向に延びた縞状となることが多く、スラスト方向の検知位置による程度差は大きい。
【0005】
そこで、ベルト上のフィルミング状態を検知する手段として、ベルトのスラスト方向全領域を検知する、ラインセンサを使用する方法がある(特許文献2)。
【0006】
しかし、ラインセンサを使用する場合、データ量が膨大となるため、コスト、処理時間等が問題となる。そのため、特許文献3では、全面を検出した上で、異常値であると判断された部分のみ記憶する方法を実施している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3では、異常時の長期記憶は部分的であるが、検知、判断については全域に対して実施するため、相当の一次記憶容量および、処理時間が必要という課題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、像担持体上のフィルミング発生可能性が高い領域を確実に検知し、記憶容量の増大及び処理速度の遅延を回避することができる、画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様では、像担持体を備え、該像担持体にトナーを形成して、トナー像を記録媒体に転写する画像形成装置において、前記像担持体のスラスト方向に対向して配置され、前記像担持体のスラスト方向におけるトナーが付着可能な領域の全域の表面状態を検知可能である検知手段と、履歴データを記憶する記憶部と、前記検知手段による前記スラスト方向の検知範囲を、前記履歴データに基づき選択的に設定する検知範囲設定部と、検知結果により、前記像担持体の前記検知範囲の表面状態が要回復か否かを判定する回復要否領域判断部と、要回復と判定された領域に対して状態回復動作を実施させる回復制御部と、を備え、前記履歴データは、前記記録媒体の幅の履歴情報を含む履歴データであり、前記検知手段は前記像担持体表面の光沢度を検知し、前記回復要否領域判断部は経時における前記光沢度の差によって回復要否を判断すること、を特徴とする画像形成装置、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
一態様によれば、画像形成装置において、像担持体上のフィルミング発生可能性が高い領域を確実に検知し、記憶容量の増大及び処理速度の遅延を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタを示す概略全体構成図。
【
図2】
図1の画像形成装置における、トナー像を生成するための画像形成ユニットの1つの断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る中間転写ユニットの構成及び検知手段の位置を説明する斜視図。
【
図4】本発明に係るラインセンサの支持構造の一例を示す断面図。
【
図5】本発明に係るラインセンサの第1の構成例を示す図。
【
図6】本発明に係るラインセンサの第2の構成例を示す図。
【
図7】本発明に係るラインセンサの第3の構成例を示す図。
【
図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系のハードウェアブロック図。
【
図9】本発明の実施形態における中間転写ベルトの検知・回復に係る制御部の機能ブロック図。
【
図10】本発明のラインセンサによる、中間転写ベルト上の検知対象範囲を示す図。
【
図11】本発明の中間転写ベルトの検知・回復に係る制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるプリンタを示す概略全体構成について説明する図である。なお、
図1では、本発明を適用可能な画像形成装置の一例として、画像データを受信するプリンタの例を示しているが、本発明が適用可能な画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であって、複製を実施する複写機(コピー機)や、コピー、プリンタ、スキャナー、FAX等の機能を盛り込んだ複合機(MFP:Multi‐Function Peripheral)であってもよい。
【0014】
図1のプリンタである画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)のトナー像を生成するための4つの画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kを備えている。
【0015】
これら画像形成ユニット1は、画像を形成する画像形成物質として互いに異なる色のYトナー,Cトナー,Mトナー,Kトナーを用いるが、それ以外は同じ構成になっている。
【0016】
図2は、Yトナー像を生成するための画像形成ユニット(プロセスユニット)1Yの構成を示す概略図である。Yトナー像を生成するための画像形成ユニット1Yを例として、画像形成ユニット1Yは、感光体ユニット2Yと現像装置(現像手段)7Yとを有している。これら感光体ユニット2Y、現像装置7Yは、画像形成ユニット1Yとして一体的に画像形成装置本体に対して着脱可能なものである。但し、画像形成装置本体から取り外した状態では、現像装置7Yを感光体ユニット2Yに対して着脱することができる。
【0017】
図1において、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの図中下方には、光書込装置20が配設されている。光書込装置20は、潜像形成手段であって、画像情報に基づいてレーザ光Lを、各画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの感光体3Y,3C,3M,3Kに照射する。これにより、感光体3Y,3C,3M,3K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。
【0018】
光書込装置20は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー21によって偏向させながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,3C,3M,3Kに照射するものである。光書込装置は、この構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
【0019】
光書込装置20の下方には、第一給紙カセット31、第二給紙カセット32が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体(記録紙)である用紙Pが複数枚重ねられた用紙束の状態で収容されており、一番上の用紙Pには、第一給紙ローラ31a、第二給紙ローラ32aがそれぞれ当接している。第一給紙ローラ31aが不図示の駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動させられると、第一給紙カセット31内の一番上の用紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路33に向けて排出される。また、第二給紙ローラ32aが不図示の駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動させられると、第二給紙カセット32内の一番上の用紙Pが、給紙路33に向けて排出される。給紙路33内には、複数の搬送ローラ対34が配設されており、給紙路33に送り込まれた用紙Pは、これら搬送ローラ対34のローラ間に挟み込まれながら、給紙路33内を図中下側から上側に向けて搬送される。
【0020】
給紙路33の末端には、レジストローラ対35が配設されている。レジストローラ対35は、搬送ローラ対34から送られてくる用紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、用紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップへ向けて送り出す。
【0021】
各画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの図中上方には、中間転写ベルト41を張架しながら図中反時計回りに無端移動させられる転写装置である中間転写ユニット40が配設されている。中間転写ユニット40は、中間転写ベルト41の他、ベルトクリーニングユニット42、第一ブラケット43、第二ブラケット44などを備えている。また、4つの一次転写ローラ45Y,45C,45M,45K、二次転写バックアップローラ46、駆動ローラ47、補助ローラ48、テンションローラ49なども備えている。中間転写ベルト41は、これら8つのローラに張架されながら、駆動ローラ47の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動させられる。
【0022】
4つの一次転写ローラ45Y,45C,45M,45Kは、このように無端移動させられる中間転写ベルト41を感光体3Y,3C,3M,3Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト41の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト41は、その無端移動に伴ってY,C,M,K各色用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,3C,3M,3K上のYトナー像,Cトナー像,Mトナー像,Kトナー像が重ね合わせられるように一次転写される。これにより、中間転写ベルト41上に四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
【0023】
二次転写バックアップローラ46は、中間転写ベルト41のループ外側に配設された二次転写ローラ50との間に中間転写ベルト41を挟み込んで二次転写ニップを形成している。レジストローラ対35が、ローラ間に挟み込んだ用紙Pを、中間転写ベルト41上の四色トナー像に同期させるタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト41上の四色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ50と二次転写バックアップローラ46との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で用紙Pに一括して二次転写される。そして、用紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0024】
二次転写ニップを通過しても用紙Pに転写されずに中間転写ベルト41に残った転写残トナーは、ベルトクリーニングユニット42によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット42は、クリーニングブレード42aを中間転写ベルト41のおもて面に当接させ、これによってベルト上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
【0025】
二次転写ニップの図中上方には、定着装置60が配設されている。
図1に示す定着装置は、ベルト定着構成である。ベルトの内部にヒータを備えており、その熱でベルトの温度を上げることでニップ部に搬送される未定着画像を定着させている。なお、定着装置の例は、
図1のベルト定着方式に限られず、ニップがローラで構成されるローラ定着構成であってもよい。
【0026】
中間転写ベルト41上に付着したトナー状態、および中間転写ベルト表面状態を検知し、作像の状態をコントロールするプロセスコントロールを実施する。中間転写ベルト上には、検知手段であるラインセンサ610が配置されている。このプロセスコントロール時、前記二次転写バックアップローラ46と二次転写ローラ50は、離間した状態となり、中間転写ベルト上に付着したトナー像は、用紙Pに転写されたり、二次転写ローラに接触したりしないままラインセンサ610の位置に移動し、検知される。
【0027】
ラインセンサ610(検知手段)は、例えば、図中奥行き方向に長く、中間転写ベルト41の幅に対応する光照射装置、反射光検出装置を備えている。検知手段の配置と内部構成について、下記
図3~
図7を用いて説明する。
【0028】
<中間転写ベルトの表面検出>
次に
図3を用いて中間転写ユニットの駆動系と中間転写ベルト上のおもて面に作像される各種トナー像の検出について説明する。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る中間転写ユニットの構成及びラインセンサの位置を説明する斜視図である。なお、
図3に示す中間転写ユニット200の構成と、
図1に示した中間転写ユニット40の構成は転写位置やローラの数や配置が異なっているが、本発明を実現可能な構成として、いずれの構成を用いてもよい。なお、
図1の中間転写ユニットと
図3の中間転写ユニットでは配置や構成が異なるため、異なる符号を付しているが、機能は同一である。また、
図3では、
図1に示した4つの一次転写ローラ45Y,45C,45M,45Kについては図示を省略している。
【0030】
中間転写ベルト206の周方向における全域のうち、駆動ローラ201とクリーニングバックアップローラ202に巻き掛けられた上部張架面の上方には、検知手段(光学検出手段)としてのラインセンサ610が中間転写ベルト206のおもて面206aと対向配置されている。
【0031】
また、クリーニングバックアップローラ202で張力を付与された中間転写ベルト206の外側には、クリーニングブレード210が配置されている。
【0032】
ラインセンサ610は、符号Wで示す主走査方向(ベルト幅方向)に延びていて、光源と集光レンズと受光素子とが主走査方向Wに複数直線状に配置されたアレイ構造である。また、主走査方向Wは、中間転写ベルト206の回転方向(移動方向M)に対して、スラスト方向に相当する。
【0033】
図3の符号W1は、主走査方向Wと直交する副走査方向を示す。図中、斜線部は、中間転写ベルト206のおもて面206aにおける画像形成可能領域IEを示し、そのうち206bは地肌部を示す。
【0034】
また、
図3に示すように、中間転写ユニット200は、駆動ローラ201を回転駆動して中間転写ベルト206を無端移動するための駆動源としてのベルト駆動モータ211を備えている。駆動ローラ201の近傍には、副走査方向W1への中間転写ベルト206やトナー像の位置を検出する位置情報検出手段としての位置情報検出センサ213が配置されている。
【0035】
図4は、本発明のラインセンサ610の支持構造の一例を示す断面図である。
【0036】
図4に示すラインセンサ610の構成例では、白色の光を照射する発光素子としてLEDからなる1つの光源611と、主走査方向Wに延伸して配置され、赤、緑、青色の反射光を受光する3つの受光素子612R、612G、612Bと、受光レンズ613とが、1つのセルとしてケーシング614によって支持されている。本例では、例えば
図3で示す所定長の単位セルを、複数個、
図3の主走査方向Wに直線的に並べることによって、ラインセンサ610が構成されている。
【0037】
本実施形態において、ラインセンサ610の各センサを構成する素子として、カラーセンサの1つである密着イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)を用いている。ラインセンサ610としては、CISではなく、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ(カメラ)を用いてもよい。
【0038】
ラインセンサの構成として、
図3では、所定長の単位セルを複数個、主走査方向Wに直線的に並べたもので構成されているが、ラインセンサは他の形状として、
・1本のライン・アレイ状のセンサ(
図7参照)
・所定長のアレイセンサを複数個、直線的に並べたもの
・所定長の光学センサ(セル)を複数列に連続的に配置したもの(例えば千鳥状)
・所定長の光学センサを移動させ、検知領域を確保しているもの
などで構成されてもよい。
【0039】
いずれの形状であっても、本発明で使用されるラインセンサは、対向となる中間転写ベルト206(像担持体)の主走査方向の画像形成可能領域IE(
図3の斜線部全域)を検知できるような構成をとっている光学センサ(光センサ)である。すなわち、中間転写ベルト206が回転して周長方向へ駆動することで、検知手段であるラインセンサは、画像形成可能領域全面を検出可能となる。
【0040】
ラインセンサ610のセンサ色は、白色光光源で、受光側でRGB受光できるものである。また、光源としては、白色の光源(LED)の1色ではなく、3色(赤、緑、青色)の光源又は任意の発光光源を用いたカラーセンサであってもよい。あるいは、従来の赤外領域の受発光センサであってもよい。
【0041】
例えば、CISであるラインセンサ610は、主走査方向Wに直線状に並んだ単位セル毎に増幅器を有し、受光素子132で光変換された電気信号の読み出しによる電気ノイズの発生が抑えられている。この電気信号は、
図8に示す制御部500に入力される。
【0042】
ここで、一般的な画像濃度調整について説明する。画像濃度調整(プロセスコントロール)では、反射型の光学センサの発光素子から発した光を中間転写ベルト表面のトナーが付着していない地肌部で反射させ、その反射光を受光素子で受光し反射光に応じた受光量を得る。
【0043】
次に、予め定められた形状の基準トナー像(濃度調整用トナーパターン)を感光体ドラムの表面に形成し、その基準トナー像を中間転写ベルト上に転写して、発光素子から発した光を基準トナー像で反射させ、その反射光を受光素子で受光し反射光に応じた受光量を得る。
【0044】
中間転写ベルト表面の地肌部における受光量を基準値として、この基準値と基準トナー像における受光量とを比較し、基準トナー像の単位面積あたりにおけるトナー付着量を把握する。
【0045】
把握したトナー付着量に基づいてトナー付着量が所望のものとなるように、感光体ドラムの帯電電位、現像バイアス、感光体ドラムに対する光書き込み強度及び現像剤のトナー濃度の制御目標値などといった作像条件を調整する。
【0046】
色ずれ補正では、主走査方向に対して角度を有するトナーパターンを形成し、主走査方向と副走査方向の位置ずれを検知して補正するようになっている。
【0047】
下記、濃度調整や色ずれ補正を適切に実施するためのラインセンサの具体的な構成例について説明する。
【0048】
<検知手段の構成>
図5は、本発明に係るラインセンサ610の第1の構成例を示す図である。
図5において、ラインセンサ610は、光反射型センサ(フォトリフレクタ)110と、増幅回路120と、演算回路130と、信号生成回路140とを備えている。増幅回路120は、光反射型センサ110からの電気信号を増幅する。演算回路130は、増幅回路120によって増幅された信号に基づいて所定の演算処理を行う。信号生成回路140は、演算回路130からの演算出力に基づいて光書き込み制御のための信号を生成して、画像形成装置100の制御部500の制御回路CONに出力する。
【0049】
光反射型センサ110は、光源としてのLED(発光ダイオード)101と、集光レンズ102と、光電変換素子103と、結像レンズ104とを備えている。集光レンズ102は、LED101からの出射光を所定のビーム径の光ビームに集光する。光電変換素子103は、受光素子であり、中間転写ベルト206上の画像パターン151からの反射光を受光して電気信号に変換する。結像レンズ104は、光電変換素子103の結像面に画像パターン151からの反射光を結像させる。
【0050】
図6は、本発明に係るラインセンサ610の第2の構成例を示す図である。上記の
図5の例では、投光スポットを集光レンズ102によって十分に小さく絞って照射し、その反射光を検出する光電変換素子103からなるセンサによって画像濃度ムラを検出していた。
図6の例では、投光領域が広範囲を照明できる光源(LED101)を使用し、その画像パターン151から反射して光電変換素子103に入射する画像上反射光を微小領域にする。
【0051】
図7は、本発明に係るラインセンサの第3の構成例を示す図である。
図7の例では、ラインセンサ610は、結像レンズ104、光電変換素子103に代えて、等倍結像素子160及びアレイ状受光素子161を備えている。等倍結像素子160は、例えば、日本板硝子社製セルフォック(登録商標)レンズアレイである。アレイ状受光素子161は、アレイ状に受光素子が配列しており、例えば、CMOS受光素子が300dpiで数十~数百ピクセル配列されたもの(TAOS社製CMOSリニアセンサアレイ)などである。
【0052】
図7に示すように広範囲に照明された検知用の画像パターン151の各微小領域からの反射光を、等倍結像素子160を介してアレイ状受光素子161へ入光させるように構成すると、スポット光の走査を行うことなく2次元画像情報を取り込むことができる。2次元画像情報を利用すれば、1次元画像情報に比べて非常に正確な画像濃度ムラ情報を得ることができる点でメリットがある。
【0053】
また、
図5、
図6の様な構成の場合であっても、図示しない駆動ミラー等により画像担持体の移動方向と交差する方向へスポット光を走査することによっても二次元画像情報が採取できる。
【0054】
これらの構成のラインセンサを用いて、濃度調整や色ずれ補正をする際には、中間転写ベルト表面の地肌部において、所定の受光量が得られるように光学センサの出力を調整している。すなわち、発光素子の出力(電流値)を調整して所定の受光量が得られるように光学センサの校正を行っている。
【0055】
しかしながら、経時で中間転写ベルト上にトナーや紙等の添加物が薄い膜状に堆積するフィルミングが発生すると、ベルトの光沢度が低下し、センサの出力が上昇する。即ち、フィルミングによって反射光量が低下するため、所定の受光量が得られるようにするためには、LED等の発光素子に流す電流値(順電流If)を上げなければならず、電力の消費量が増大してしまう。そこで、本発明では、下記の制御を実施する。
【0056】
<制御ブロック>
次に画像形成装置100の制御系について説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の制御系のブロック図である。
【0057】
画像形成装置100は、
図8に示す制御部500を備えている。制御部500は、CPU(Central Processing Unit)501と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)502と、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)503を備えている。制御部500には、各種の周辺機器が信号線510を介して接続されている。
図8においては、それら周辺機器のうち、主要なものだけを示している。
【0058】
また、制御部500には、各色のトナー濃度センサ108Y,108C,108M,108K、ラインセンサ610、ベルト駆動モータ211、位置情報検出センサ213、各現像装置7の駆動部511、光書込装置20の駆動部512、各トナー補給装置の駆動部513、各種電源部514が信号線510を介して接続されている。各種センサ類は、検出した検出値を制御部500に出力し、制御部500は、出力された各種検出値をRAM502に一時保存する。
【0059】
(フィルミング)
一般的に、中間転写ベルトのフィルミングは、中間転写ベルトの部分の使われ方等により異なっており、従来の2個~数個のセンサによる検知によりベルト表面状態を部分的に判断する方法では、センサ部分以外でのフィルミング発生を検知できない問題があった。また、ラインセンサにより、全域を、頻繁に状態検知していたのでは、情報蓄積のためのメモリ容量が莫大になってしまう。
【0060】
ここで、フィルミングは経時で発生するため、中間転写ベルト上の使われ方等の傾向により、発生しやすい部分と発生しにくい部分ができる。発生しやすい部分を選択的に検知すれば、中間転写ベルトのフィルミング発生を早期に発見し、軽減することが可能である。
【0061】
初期のフィルミングを検知した場合、検知した部分の中間転写ベルト上にトナーを供給し、中間転写ベルトに当接して配置されるクリーニングブレードにてトナーがクリーニングされるときに、トナーとともに、フィルミング物質も軽減される。検知した部分の中間転写ベルト上へのトナー供給は、現像装置で感光体にトナーを供給し、一次転写を経て中間転写体に付着させることで、状態回復動作(リフレッシュ動作)として行われる。
【0062】
<制御部>
図9に、本発明の実施形態における中間転写ベルト(像担持体)の検知・回復に係る制御部の機能ブロック図を示す。
【0063】
本発明の制御部70は、検知範囲設定部71と、フィルミング有無判定部72と、回復要否領域判断部73と、トナー付着制御部74と、用紙幅履歴記憶部75と、用紙種類履歴記憶部76と、検知範囲履歴記憶部77と、フィルミング発生位置履歴記憶部78と、回復動作履歴記憶部79と、を実行可能に有している。
【0064】
検知範囲設定部71、フィルミング有無判定部72、回復要否領域判断部73、及びトナー付着制御部74は、
図8のCPU501によって実現される。用紙幅履歴記憶部75、用紙種類履歴記憶部76と、検知範囲履歴記憶部77と、フィルミング発生位置履歴記憶部78と、回復動作履歴記憶部79は、書き換え可能な記憶媒体であるRAM502あるいはNVRAMによって実現される。
【0065】
検知範囲設定部71は、ラインセンサ(検知手段)610による中間転写ベルト206,41のスラスト方向の検知範囲を、履歴データに基づき選択的に設定する。履歴データ(知見データ)は、用紙幅履歴記憶部75、用紙種類履歴記憶部76、検知範囲履歴記憶部77と、フィルミング発生位置履歴記憶部78、回復動作履歴記憶部79のいずれかに記憶された情報である。
【0066】
詳しくは、検知範囲設定部71は、中間転写ベルトにおける使われ方等でフィルミングが発生しやすい部分と、発生しにくい部分について、使用履歴情報(履歴データ)より判断し、検知対象範囲(検知範囲)を決定する。フィルミングの発生しやすさは主に該当部分へのトナーの付着量に依存し、トナー付着が多い部分はフィルミングが発生し難くい傾向がある。また、使用する用紙Pの種類によっては、紙に含まれる填料等によりフィルミング発生状況が異なる場合がある。これらの情報に基づいて、画像形成可能領域(範囲IE)を分割して、検知する部分の検知対象範囲の選択をおこなう。詳細は、
図10とともに説明する。
【0067】
フィルミング有無判定部72は、設定された検知範囲での、ラインセンサ610による検知結果を基に、フィルミングが発生しているかどうか判定する。
【0068】
ここで、ラインセンサ610での検知を実施する検知範囲は、領域分割の中から選択されるが、フィルミング検知自体は、センサの解像度に依存し、分割幅より細かい単位で実施される。そのため、フィルミングが発生した位置(領域)を画素単位で詳しく判定できる。
【0069】
回復要否領域判断部73は、検知が実行された検知対象範囲の表面状態が、状態回復を必要とする領域(要回復領域)が存在するかどうかを、判断することで、位置ごとにリフレッシュ(状態回復動作)が必要かどうかを、判断する。
【0070】
例えば、回復動作の判断例として、ノイズの影響を回避するため、今回のフィルミング発生結果と、フィルミング発生位置・回数履歴とを参照して、検査において、所定の連続数以上、同じ位置にフィルミングの発生が検知された場合、状態回復動作の必要あり、と判断する。あるいは、1回フィルミングが検知されたらすぐに、状態回復動作の必要あり、と判断してもよい。
【0071】
トナー付着制御部74は、回復制御部であって、回復要否領域判断部73によって、中間転写ベルト206,41上で状態回復が必要と判断された部分(領域)に、どの色の現像装置に状態回復動作(トナー付着動作)を実施させるか、設定する。
【0072】
ここで、画像形成装置において、現像装置からのトナーの消費量が極端に少ないと、長時間現像器内にトナーが滞留してしまい現像特性に悪影響を及ぼすことがある。そのため、このような現像装置では、長時間画像形成のない場合に、トナーを放出する動作を実行することが望まれる。
【0073】
そこで、本発明では、状態回復動作として、中間転写ベルト上へのトナーの供給を、使用量の少ない色のトナーで実施することで、中間転写ベルト表面のフィルミング抑制のためのトナー付着動作と、現像装置内のトナーリフレッシュ(入れ替え)動作とを同時に実施できる。
【0074】
一方、システム負荷の観点から、モノクロ印刷の場合は、中間転写ベルト上へのトナー供給に使用するトナーをブラックトナーとする。モノクロ印刷中においてブラック作像部が動作中は、カラー感光体および現像は停止しているため、回復動作もブラックトナーで実施することで、カラー感光体および現像を、本動作のために余計に動作させることなく経時劣化することを抑制することが可能である。
【0075】
また、フィルミングの検知部位は、センサの解像度に依存して細かい単位で実施されるため、フィルミング除去のためのトナー付着は、フィルミング発生が検知されたセンサ部(検知範囲の一部の位置)に対応する、フィルミングが実際に発生したいくつかの画素に限定して、実施することができる。
【0076】
用紙幅履歴記憶部75は、使用された用紙Pの用紙幅の情報を蓄積して格納している。検知領域選択のための履歴データとして、用紙Pが通った幅である通紙幅の履歴に基づくデータを使用することで、通紙幅によりフィルミングが発生しやすいと予想される部分の検知を確実に行うことが可能となる。
【0077】
用紙種類履歴記憶部76は、使用された用紙Pの用紙種類の情報を蓄積して格納している。検知領域選択のための履歴データとして、通った用紙Pの種類である通紙の紙種履歴に基づくデータを使用することで、通紙の紙種によりフィルミングが発生しやすいと予想される部分の検知を確実に行うことが可能となる。
【0078】
検知範囲履歴記憶部77は、検知を行った領域を、蓄積して記憶する。
【0079】
フィルミング発生位置履歴記憶部78は、発生したフィルミング位置の情報を蓄積して格納している。例えば、検知対象領域内のそれぞれの位置におけるフィルミング発生の発生検知回数をカウントして格納しており、今回フィルミングを検知した位置に対して、その位置のカウント数を増やす。この累積されたフィルミングの位置と発生検知回数の情報が、回復動作有無の判断に利用される。
【0080】
回復動作履歴記憶部79は、実施した状態回復動作の色の情報及び状態回復動作を実施したスラスト方向の範囲の情報を蓄積して格納している。
【0081】
下記、本発明における、検知範囲設定部71で設定する、ラインセンサ610による中間転写ベルト206のスラスト方向の検知範囲の分割について説明する。
【0082】
<領域分割例>
本発明のラインセンサによって選択される検知領域分割例を
図9に示す。
図9は、ラインセンサ610による、中間転写ベルト206の検知対象範囲を示す図である。
図9において、303、304、305、306はそれぞれ通紙幅を示し、この例では303がA5短端幅、304がA4短端幅、305がB4短端幅、306がA3短端幅を示し、IEは、画像形成可能領域(全域)の範囲を示している。
【0083】
分割領域としては、
図10の例では、
A:A3短端幅306の外側の領域
B:A3短端幅306の内側であってB4短端幅305の外側の領域
C:B4短端幅305の内側であってA4短端幅304の外側の領域
D:A4短端幅304の内側であってA5短端幅303の内側の領域
E:A5短端幅303の内側の領域(中央領域)
と設定している。
【0084】
検知範囲設定部71は、通紙される用紙Pの幅と頻度により、フィルミング検知を実施する、検知対象となる検知範囲を決定する。
図10の例では、中央領域Eは通紙時必ず用紙が通過し、画像が形成されていればトナーも付着するので、トナー付着頻度が最も高いため、フィルミングを実施する頻度が最も低いことになる。一方、最も外側の領域Aは、画像が形成される機会が少ないためトナー付着頻度が低いため、フィルミングを実施する頻度が最も高いことになる。
【0085】
例えば、主にB4を使用しているマシンの場合、B4用紙が接触しない領域Aと領域Bのフィルミング発生可能性が、他の領域より高くなるため、検知の頻度を他の領域と比較して高くしている。検知タイミングは、プロセスコントロールを実施した時に同時に実施している。用紙幅の使用割合と、判定の割合の設定例を表1に示す。
【0086】
【表1】
また、通紙される用紙Pの種類によっては、用紙が通過することで、中間転写ベルトがフィルミングしやすくなる場合がある。そのような、性質の用紙の使用が明らかな場合には、該当の用紙の通紙幅に合わせて、フィルミング検知を行う。
【0087】
フィルミングが発生しやすい用紙が、A5サイズであった場合、表1のような設定を実施したうえで、中央領域Eの頻度を上げて検知回数を増加させる。このようにすることで、全域を同時に検知しない構成とすることで、記憶容量の軽減が可能となり、且つ、効率よくフィルミングを検知することができる。
【0088】
フィルミングを検知した場合、その情報に基づき、フィルミング検知した領域に対応する感光体上にトナー像を形成する。トナー像を形成するタイミングは、フィルミングが検知された次のジョブの終了時から、毎ジョブ後に、トナーを付着させた量が狙いの値となるまで、実施する。
【0089】
このようにラインセンサの検知の領域分割は、用紙幅に対応しあらかじめ設定されている場合、領域分割を任意に行う場合を比較して、ソフト構成が簡易となり、処理の負荷が低減できる。
【0090】
なお、領域分割は、あらかじめ設定せず、状況により変更することも可能である。検知を実施する以前に履歴として、フィルミングが検知された部分に対して、検知範囲を割り当て、検知の頻度を増加させることで、ユーザーの使用モードなどによる傾向を検知範囲の選択に反映し、より確実な検知が可能である。
【0091】
<制御フロー>
図11は、本発明の中間転写ベルトの検知・回復に係る制御フローである。
【0092】
S1(ステップ1)では、検知範囲設定部71は、履歴データに基づいて、検知対象範囲を選択する。このとき使用するデータは、上述のように、用紙幅履歴、用紙種類、フィルミング発生位置履歴、状態回復動作履歴等の一つ、あるいは複数を組み合わせて、選択の基準にする。
【0093】
S2で、ラインセンサ610は、選択された検知対象範囲に対してフィルミング検知を実施する。
【0094】
S3で、フィルミング有無判定部72は、設定された検知対象範囲にフィルミングが発生しているかどうかの有無を判定する。
【0095】
S3でフィルミングが、無しと判定された場合(No)、S4で検知対象範囲を記憶して、フローを終了する。
【0096】
一方、S3で検知対象範囲(検知範囲)の少なくとも一部にフィルミングが有りと判定された場合(Yes)、S5で検知対象範囲を記憶するとともに、フィルミング発生位置履歴記憶部78においてフィルミング発生位置での発生検知回数に1を加算して、その位置でのフィルミング発生履歴として記憶する。
【0097】
そして、S6で、回復要否領域判断部73は、カウントされたフィルミング発生履歴を参照して、中間転写ベルト206,41で検知が実行された検知対象範囲のうちの少なくとも一部で、表面状態が状態回復を必要とする領域が存在するかどうか、判断する。
【0098】
今回検知した検知対象範囲のすべての領域について状態回復動作が不要であると判断された場合(S6でNo)、検査フローを終了する。
【0099】
状態回復動作が必要であると判断された領域が存在する場合(S6でYes)、S7でトナー付着制御部74が状態回復動作で用いるトナーの色を設定する。
【0100】
状態回復動作では、中間転写ベルト上へ、トナーが供給されればよいので、その色は問われない。そのため、例えば、S7で状態回復動作に使用する色を設定する際に、複数色のトナーを使用する画像形成装置において、状態回復動作に使用するトナーは、トナー使用履歴に基づく最も使用量が少ない色のトナーとすることで、各色トナーの現像装置内部での劣化も同時に軽減することが可能となる。
【0101】
一方、モノクロ印刷の場合は、状態回復動作に使用するトナーをブラックトナーとすることで、カラー画像形成ユニットを動作させずに状態回復動作を実施し、カラー画像形成ユニットの劣化を進めずにフィルミングを抑制することが可能となる。
【0102】
そして、S8において、状態回復動作が必要と判断された領域に、トナー付着させ、その後クリーニングブレード210,42aで拭き取る、状態回復動作を行う。
【0103】
ここで、S8における、状態回復動作として、転写ベルト206,41の表面のうち、要状態回復と判断された領域に対して、選択的にトナーを付着させることで、トナーの消費を最小限にして、ベルト表面のフィルミング発生を軽減することが可能となる。
【0104】
そして、S9で状態回復動作を実施した領域を、回復動作実施履歴として記憶する。
【0105】
上記の制御により、ラインセンサによる検知対象範囲を履歴データに基づき選択して設定することで、像担持体においてフィルミング発生可能性が高い部分の検知が確実に実行できる。そして、検知対象範囲が選択により限定されるため、データ保持のための記憶容量の増大、処理速度の増大を回避することが可能となる。
【0106】
そして、像担持体表面状態が状態回復「要」と判定された場合、判定された領域に対して、トナーを付着して状態回復動作を実施することで、経時に安定な画像を提供することが可能となる。
【0107】
上記のように、本発明の画像形成装置において、像担持体上のフィルミング発生可能性が高い領域を確実に検知し、記憶容量の増大及び処理速度の遅延を回避することができる。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
7 現像装置(現像手段)
40,200 中間転写ユニット(転写装置)
41,206 中間転写ベルト(像担持体)
42a,210 クリーニングブレード
71 検知範囲設定部
72 フィルミング有無判定部
73 回復要否領域判断部
74 トナー付着制御部(回復動作制御部)
75 用紙幅履歴記憶部
76 用紙種類履歴記憶部
77 検知範囲履歴記憶部
78 フィルミング発生位置履歴記憶部
79 回復動作履歴記憶部
90,610 ラインセンサ(検知手段)
100 プリンタ(画像形成装置)
500 制御部
W 主走査方向(スラスト方向)
P 用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0110】
【文献】特開2016-20970号公報
【文献】特開2005-106919
【文献】特開2016-148781