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  • 特許-光変調器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
G02F1/035
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018065363
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019174749
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-08-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 平成29年度、国立研究開発法人情報研究通信機構「高度通信・放送研究開発委託研究/高い環境耐性を有するキャリアコンバータ技術の研究開発」
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】釘本 有紀
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋一
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-133135(JP,A)
【文献】特開2012-119177(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117554(WO,A1)
【文献】特開2003-215519(JP,A)
【文献】特開2007-304424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0048728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝播する光波を変調するために該基板に形成された進行波型電極とを有する光変調器において、
該基板の厚さは、30μm以下であり、
該基板を接着層を介して保持する補強基板を備え、
該接着層は、接着剤中に中空微粒子を分散することで、接着剤が存在しない空隙部分を形成していることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、該空隙部分の割合が、全体の25容量%以上から60容量%以下であることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光変調器において、該接着層の厚みは、50μm以下であることを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光変調器において、該中空微粒子は、中空シリカ、メソポーラス系シリカ、中空アルミナ、中空樹脂ビーズのいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光変調器において、該中空微粒子の表面は表面処理剤で表面修飾されていることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、電気光学効果を有すると共に、30μm以下の厚さを有する基板を用いた光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムの高速大容量化が進んでおり、例えば、1波長当たり100GHz以上の通信速度を有するものも実用化されている。今後は、基幹部品で光変調器の広帯域化がより一層求められている。
【0003】
進行波型光変調器は、光導波路を伝播する光波と、光導波路に沿って設けた電極(進行波型電極)を伝播するマイクロ波とが電気光学効果による相互作用をすることで、光波を変調している。特に、光波とマイクロ波との速度整合をとることにより、広帯域化を実現することができる。
【0004】
速度整合を実現する方法として、従来、光導波路基板上に設けた低誘電率のバッファ層の上に電極を形成した構成が用いられてきたが、この構成では、光導波路に印加される電界がバッファ層の存在により小さくなってしまうため、駆動電圧を低電圧化できないという問題を生じている。
【0005】
この問題を解消するため、図1のような光導波路基板を薄板化した進行波型光変調器が提案されている(特許文献1参照)。図1において、光導波路が形成された光導波路基板は、接着層により補強基板に固着されている。光導波路基板としては、ニオブ酸リチウムなどの電気光学効果を有する基板が利用される。補強基板としては、光導波路基板と同じかもしくは近い線膨張係数を有する材料、例えば、ニオブ酸リチウムや、石英ガラスなどで構成されている。光導波路基板の厚さは30μm以下であり、通常の光変調器に使用される基板の厚さ500μm程度よりも遥かに薄く形成されている。
【0006】
接着層については、使用する接着剤は誘電率が光導波路基板よりも低いものを用いる必要がある。また、接着層の厚さは、電極(信号電極と接地電極)から印加される電界の接着層への漏れが大きくなるように、十分に厚く(例えば、50μm~200μm)する。このように電極からの電界が低誘電率の接着層の内部に漏れ出すことにより、マイクロ波に対する等価屈折率(その値は、光波に対する等価屈折率より大きい)が、光導波路基板の厚さが厚い場合と比べて小さくなる。
【0007】
このように、光波の等価屈折率とマイクロ波の等価屈折率との値の差が小さくなるため、光波とマイクロ波の速度が整合した状態に近づき、広帯域化が実現される。しかも、この構成では光導波路基板上にバッファ層を設けることなく速度整合が可能なため、光導波路に印加される電界強度の低下を抑制できる。その結果、速度整合と駆動電圧の低電圧化を同時に実現することが可能となる。
【0008】
ここで図1の接着層については、次のような問題点が顕在化している。一般的に接着層に用いる材料(例えば、ガラスフリットなどの接着用ガラスやアクリル、エポキシなどの樹脂材料)は誘電率が3~8程度であるため、等価屈折率の差を十分に小さくするためには、例えば、50μm~200μm程度の一定の厚さが必要となる。
【0009】
このように接着層の厚みが厚くなると、第1に、接着強度が低下するという問題を生じる。第2に、接着剤の硬化時に紫外線照射や加熱によって温度が上昇し、その後硬化して温度が下がると、光導波路基板や補強基板と接着剤(接着層)の線膨張係数の差による応力が発生し、接着層が厚いと発生する応力も大きくなる。第3に、接着層を厚く形成したものは、チップに切断することが難しくなり、歩留まりが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-301612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、広帯域化や低電圧駆動を実現しながら、接着層の厚みを薄くでき、信頼性の高い光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は、以下の技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝播する光波を変調するために該基板に形成された進行波型電極とを有する光変調器において、該基板の厚さは、30μm以下であり、該基板を接着層を介して保持する補強基板を備え、該接着層は、接着剤中に中空微粒子を分散することで、接着剤が存在しない空隙部分を形成していることを特徴とする。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該空隙部分の割合が、全体の25容量%以上から60容量%以下であることを特徴とする。
【0014】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光変調器において、該接着層の厚みは、50μm以下であることを特徴とする。
【0015】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該中空微粒子は、中空シリカ、メソポーラス系シリカ、中空アルミナ、中空樹脂ビーズのいずれか、又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【0016】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光変調器において、該中空微粒子の表面は表面処理剤により表面修飾されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝播する光波を変調するために該基板に形成された進行波型電極とを有する光変調器において、該基板の厚さは、30μm以下であり、該基板を接着層を介して保持する補強基板を備え、該接着層は、接着剤中に中空微粒子を分散することで、接着剤が存在しない空隙部分を形成しているため、接着層全体の平均誘電率を低下させることが可能となり、結果として、接着層の厚みを従来よりも薄く形成することが可能となる。
【0018】
これにより、接着層の厚みが厚い場合に発生していた、接着強度の低下や、線膨張係数の差に起因する応力の増加、更には、チップに切断する際の歩留まりの低下などを、改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が適用される光変調器の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の光変調器について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明は、図1に示すように、電気光学効果を有する基板(光導波路基板)と、該基板に形成された光導波路と、該光導波路を伝播する光波を変調するために該基板に形成された進行波型電極(信号電極と接地電極)とを有する光変調器において、該基板の厚さは、30μm以下であり、該基板を接着層を介して保持する補強基板を備え、該接着層は、接着剤が存在しない空隙部分を有することを特徴とする。また、該空隙部分の割合が、全体の25容量%以上から60容量%以下であることを特徴とする。
【0021】
光導波路基板としては、ニオブ酸リチウム(LN)などの電気光学効果を有する基板が好適に利用可能である。基板の厚さも30μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下である。
【0022】
接着層に空隙部分を設ける方法として、接着層内に接着剤を設けない空間(領域)を形成することが考えられるが、接着剤がある部分と無い部分とでは光導波路基板に加わる応力が異なり、光導波路基板内に内部歪を生ずることとなる。
【0023】
これに対し、本発明の接着層内の空隙を形成する方法としては、中空微粒子を接着剤中に分散して形成する。これにより、空隙は中空微粒子の内部に形成されているため、中空微粒子の形状が変化しない限り、または、中空微粒子内の空気が接着剤中に大量に入り込まない限り、接着層の形状は安定的に維持できる。
【0024】
本発明で使用する中空微粒子は、殻が中の空洞を取り囲むように構成した微粒子Aや、多孔質のように外部に通じる多くの内部空洞を有する微粒子Bのいずれのタイプの微粒子を用いることが可能である。多孔質の微粒子Bでは、温度変化により空洞内の空気が膨張又は収縮し、微粒子の周囲(接着剤中)に出入りする可能性がある。このため、温度変化で接着層の体積が微妙に変化する可能性があるため、微粒子Aの方が微粒子Bよりも本発明に適した微粒子と言える。
【0025】
また、中空微粒子を構成する素材として、シリカやアルミナなどの無機質材料を用いる場合と樹脂で構成する場合がある。中に空洞を有する樹脂は、空洞の空気が膨張又は収縮すると微粒子の体積が変化するため、使用する材料としては、温度変化の影響を受け難い無機質材料が好ましい。
【0026】
本発明でより好適に使用できる中空微粒子としては、中空シリカ、メソポーラス系シリカ、中空アルミナ、中空樹脂ビーズのいずれか、又はこれらの混合物が好ましい。
【0027】
中空微粒子の粒径としては、接着層の厚みを好ましくは50μm以下に設定することを考慮すると、1~5μm以下、好ましくは100~300nm以下であることが好ましい。中に空洞を有する殻の場合は、殻の厚みは、粒径の5分の1以下、より好ましくは10分の1以下がより大きな空隙を形成できる上で好ましい。
【0028】
接着層に使用される接着剤としては、誘電率が低(例えば、誘電率が5以下)く、中空微粒子を分散状態で保持できるビヒクルが好ましい。具体的には、アクリル、エポキシ、シリコンなどの樹脂材料系の接着剤が好適に利用可能である。
【0029】
また、接着剤中に分散させる中空微粒子の容量は多いほど良いが、中空微粒子の量を多くすると、逆に接着剤の容量が減少し、接着強度が低下することが懸念される。このため、中空微粒子と接着剤との接着強度を強化するため、中空微粒子の表面をビヒクルに用いる樹脂と反応性もしくは親和性の良い官能基を有する表面処理剤を用いて表面修飾することがより好ましい。
【0030】
以下では、本発明の構成を用いた場合、接着層の特性がどのように変化するかを示す。
例えば、光導波路基板としてLNを用い、基板の厚みを10μmに設定する。接着層がアクリル系接着剤(誘電率3.5)である場合、光波とマイクロ波の等価屈折率がほぼ等しくなる(Δ≦0.03)ために必要な接着層の厚みの条件は以下の表1のとおりである。なお、接着層中の空隙率が上がることで、接着層の誘電率が低下し、接着層厚が薄くても光波とマイクロ波の等価屈折率を整合させることが出来る。
【0031】
【表1】
【0032】
接着層中に空隙を存在させる方法として、接着剤ビヒクル(バインダー)中に中空シリカを混合させた例を示す。表2では、アクリル系接着剤(誘電率3.5)をビヒクルとし、そこに中空シリカ(粒径100nm、外殻厚10nm)を混合した場合の接着層中の空隙率と誘電率を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
ビヒクル中に50~90容量%の中空シリカを配合することで、接着層の空隙率を十分に上げることが出来る。
【0035】
ただし、中空シリカを単純に接着剤(ビヒクル)に混合した場合、中空シリカの配合比が多くなるに従い、十分な接着強度が得られなくなる問題が発生することがある。これを改善させるため、ビヒクルに用いる樹脂と反応性もしくは親和性の良い官能基を有する表面処理剤で中空シリカ表面を修飾することが好ましい。表面処理剤については、ビヒクルに用いる樹脂と反応性もしくは親和性の良い官能基を有するものであれば特に限定されないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤やイソシアネート系処理剤等が好適に使用される。特に、シランカップリング剤などのシリコンアルコキシド系修飾剤を用いることにより、表面修飾を容易に行うことが出来る。
【0036】
以上のように、接着層の中に空隙を有することで誘電率<3.0とした低誘電率な接着層を提供することができる。しかも、低誘電率な接着層中で空隙が大きくなった場合でも、中空微粒子と接着剤との接着強度を高めることで、接着層としても十分な接着強度を維持すること出来る。
【0037】
このように、接着層の誘電率を低く抑えることが出来るため、広帯域化と駆動電圧の低電圧化を実現することができるとともに、従来の樹脂系接着剤よりも誘電率が低いことにより、接着層の厚みを薄くてることができるため、硬化の際に発生する応力が低減されて、光導波路デバイス(光変調器)としての信頼性を向上させることができる。また、接着剤層を薄く形成した場合、チップ切断などが容易になるため、歩留まりが向上し、製造コストも抑制することができる。
【0038】
以下では、本発明の光変調器で使用可能な接着層について、具体的な製造方法を例示する。
以下では、ビヒクル樹脂にアクリル系接着剤を使用するため、中空シリカの表面修飾はアクリロイル基を有するシランカップリング剤で行った。
【0039】
(中空シリカ表面修飾No.1の作製)
中空シリカ40質量部と、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10質量部と、硝酸1.5質量部と、水1.5質量部と、イソプロピルアルコール47質量部と、を混合し、常温にて6時間撹拌して、表面修飾中空シリカ分散を得た。
【0040】
(中空シリカ表面修飾No.2の作製)
表面修飾剤を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに変えた以外は中空シリカ表面修飾No.1と同じにして、中空シリカ表面修飾No.2を得た。
【0041】
中空シリカの修飾状態を29SiNMR法を用いて測定したところ、シランカップリング剤は中空シリカと反応していることが確認された。いずれの表面修飾剤でも類似の結果が得られたため、よりアクリルとの反応性の高い、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたNo.1の分散液を以降の実験に使用した。
【0042】
(実施例1)表面修飾中空シリカ50容量%入り接着剤の作製
得られた表面修飾中空シリカ分散液No.1 100質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート35質量部、N-ビニルピロリドン15質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、エバポレータによって中空シリカ分散液No.1に含まれるイソプロピルアルコールを除去したのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は28%であった。
【0043】
(実施例2)表面修飾中空シリカ70容量%入り接着剤の作製
得られた表面修飾中空シリカ分散液No.1 140質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート21質量部、N-ビニルピロリドン9質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、エバポレータによって中空シリカ分散液No.1に含まれるイソプロピルアルコールを除去したのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は40%であった。
【0044】
(実施例3)表面修飾中空シリカ90容量%入り接着剤の作製
得られた表面修飾中空シリカ分散液No.1 180質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート7質量部、N-ビニルピロリドン3質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、エバポレータによって中空シリカ分散液No.1に含まれるイソプロピルアルコールを除去したのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は53%であった。
【0045】
(比較例1)中空シリカを含まない接着剤の作製
2-エチルヘキシルアクリレート70質量部、N-ビニルピロリドン30質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は
0%であった。
【0046】
(比較例2)未修飾中空シリカ50容量%入り接着剤の作製
得られた中空シリカ50質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート35質量部、N-ビニルピロリドン15質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、ボールミルで6時間分散処理を行ったのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は33%であった。
【0047】
(比較例3)未修飾中空シリカ70容量%入り接着剤の作製
得られた中空シリカ 70質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート21質量部、N-ビニルピロリドン9質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、ボールミルで6時間分散処理を行ったのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は46%であった。
【0048】
(比較例4)未修飾中空シリカ90容量%入り接着剤の作製
得られた中空シリカ90質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート7質量部、N-ビニルピロリドン3質量部、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルを混合し、ボールミルで6時間分散処理を行ったのち、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 1.0質量部を加えて中空シリカ入り接着剤を得た。この接着剤を塗布した際の接着層の空隙率は59%であった。
【0049】
得られた接着剤を用いて図1の構成(光導波路基板がLNで厚さ10μm)の光導波路デバイスを作製した際の誘電率と、光波の等価屈折率とマイクロ波の等価屈折率の差分を整合度(ΔNm)として測定した。また、接着強度に関しては厚さ1mmの2枚の青板ガラスの間に得られた接着層をそれぞれ70μm、
35μm形成し、高圧水銀灯にて10mJ/cmUV照射して硬化させた構造物のせん断接着力を測定した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
(表3内の各記号の説明)
ΔNmについて、「○」は0.05以下、「△」は0.05~0.10、「×」0.10以上を示す。
接着強度について、「◎」は7MPa以上、「○」7~5MPa、「△」は5以下~3MPa、「×」は3MPa以下を示す。
【0052】
実施例1~3は空隙率が高くなっても接着強度を保つことが出来る一方、比較例2~3は空隙率が高くなると接着強度が極端に低下することが分かる。
実施例1~3に用いた中空シリカ分散液は、粒子表面にアクリロイル基が修飾されているため、硬化時にビヒクルに用いた樹脂と架橋し、樹脂-粒子の結合度が高くなったため、十分な接着強度を得ることが出来たと考えられる。
この手法によれば、接着層中の空隙率を上げることが出来、接着層厚が薄くても光波とマイクロ波の等価屈折率を整合させることが出来る。また、空隙率が大きくなった際に発生する接着強度の低下も防止することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、広帯域化や低電圧駆動を実現しながら、接着層の厚みを薄くでき、信頼性の高い光変調器を提供することができる。
図1