(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】位置出し用部材、画像付与装置、印刷対象をセットする方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20220301BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B41J11/02
B41J2/01 125
B41J2/01 305
(21)【出願番号】P 2018103117
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】田邉 英章
(72)【発明者】
【氏名】中鉢 耕平
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202681(JP,A)
【文献】特開2016-107474(JP,A)
【文献】特開2017-014670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象に印刷を施す印刷装置、及び、前記印刷が施された前記印刷対象を加熱する加熱装置に対し、前記印刷対象を保持したまま出し入れ可能なプラテン部材に、前記印刷対象の印刷を施す部分を平坦な状態で保持するときに使用する位置出し用部材であって、
前記印刷対象に印刷領域を示すマーキングを施すときに使用する複数のマーキング用穴が設けられ、
前記複数のマーキング用穴は、前記加熱装置における加熱範囲内に配置されている
ことを特徴とする位置出し用部材。
【請求項2】
前記複数のマーキング用穴は、少なくとも、異なる大きさの印刷領域を示す位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の位置出し用部材。
【請求項3】
前記位置出し用部材には目印が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置出し用部材。
【請求項4】
前記目印は、十字線、グリッド及び十字マークの少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項3に記載の位置出し用部材。
【請求項5】
前記目印は、印刷されている
ことを特徴とする請求項4に記載の位置出し用部材。
【請求項6】
前記目印は、凹部又は凸部で形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の位置出し用部材。
【請求項7】
印刷対象に印刷を施す印刷装置、及び、前記印刷が施された前記印刷対象を加熱する加熱装置と、
請求項1ないし6のいずれかに記載の位置出し用部材
と、
前記位置出し用部材でマーキングが施された前記印刷対象の前記印刷を施す部分を平坦な状態で保持可能なプラテン部材を含む印刷対象保持部材と、を備え、
前記印刷対象保持部材は、前記プラテン部材に前記印刷対象を保持したまま前記印刷装置及び前記加熱装置に出し入れ可能である
ことを特徴とする画像付与装置。
【請求項8】
印刷対象に印刷を施す印刷装置、及び、前記印刷が施された前記印刷対象を加熱する加熱装置に対し、前記印刷対象を保持したまま出し入れ可能なプラテン部材に、前記印刷対象の印刷を施す部分を平坦な状態でセットする方法であって、
前記印刷対象に印刷領域を示すマーキングを施すときに使用する複数のマーキング用穴が設けられ、
前記複数のマーキング用穴が前記加熱装置における加熱範囲内に配置されている位置出し用部材を使用と、
熱消去型筆記具と、を使用し、前記印刷対象の前記マーキング用穴に対応する位置にマークを付ける工程と、
前記印刷対象に付されたマークで示される領域が前記プラテン部材上に位置するように前記印刷対象を前記プラテン部材にセットする工程と、を行う
ことを特徴とする印刷対象をセットする方法。
【請求項9】
印刷対象に印刷を施す印刷装置、及び、前記印刷が施された前記印刷対象を加熱する加熱装置に対し、前記印刷対象を保持したまま出し入れ可能なプラテン部材に、前記印刷対象の印刷を施す部分を平坦な状態で保持し、前記印刷を行うときの印刷画像を画面上に表示させる制御をコンピュータに行わせるためのプログラムであって、
印刷対象に印刷領域を示すマーキングを施すときに使用する複数のマーキング用穴が設けられ、
前記複数のマーキング用穴が前記加熱装置における加熱範囲内に配置されている位置出し用部材に対応する画像と前記印刷画像とを重ね合わせて前記画面上に表示させる制御をコンピュータに行わせることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置出し用部材、画像付与装置、印刷対象をセットする方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
布地に印刷を行う装置として、布地を保持したままで、布地に印刷する装置と布地を加熱する装置との両方に共用される印刷対象保持部材を使用して印刷を行うものが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、インクジェット捺染装置として、布地を支持する支持部は、該支持部に対する布地の位置合わせのために、少なくとも一部が支持された布地の外形線より外側にはみ出た位置合わせ用基準部を有するものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-202681号公報
【文献】特開2013-22858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2に開示の構成にあっては、布地の印刷を施す部分(領域)を正確に支持部(プラテン部材)にセットすることができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、印刷を施す部分を正確にセットできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る位置出し用部材は、
印刷対象に印刷を施す印刷装置、及び、前記印刷が施された前記印刷対象を加熱する加熱装置に対し、前記印刷対象を保持したまま出し入れ可能なプラテン部材に、前記印刷対象の印刷を施す部分を平坦な状態で保持するときに使用する位置出し用部材であって、
前記印刷対象に印刷領域を示すマーキングを施すときに使用する複数のマーキング用穴が設けられ、
前記複数のマーキング用穴は、前記加熱装置における加熱範囲内に配置されている
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷を施す部分を正確にセットできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像付与装置(画像付与システム)の使用形態の一例の示す斜視説明図である。
【
図2】印刷装置の一例の機構部の全体構成を説明する斜視説明図である。
【
図3】同じく
図2と異なる方向から見た斜視説明図である。
【
図5】同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図である。
【
図6】同じく
図5の面S1における断面に相当するカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図8】同加熱装置の前扉を開いた状態の斜視説明図である。
【
図9】同加熱装置の長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図である。
【
図10】同加熱装置の使用形態の説明に供する長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図である。
【
図11】同加熱装置の短手方向(カセット出し入れ方向と直交する方向)に沿う模式的断面説明図である。
【
図12】本発明の第1実施形態における印刷対象をカセットにセットするときに使用する位置出し用部材(位置出し用治具)の平面説明図である。
【
図13】本発明の第2実施形態における印刷対象をカセットにセットするときに使用する位置出し用部材(位置出し用治具)の平面説明図である。
【
図14】印刷対象である布地の印刷を施す部分にマーキングする方法の説明に供する説明図である。
【
図15】マーキングした布地をカセットにセットするときの説明に供する斜視説明図である。
【
図16】同じく
図15に続く工程の説明に供する斜視説明図である。
【
図17】同じく
図16に続く工程の説明に供する斜視説明図である。
【
図18】同じく
図17に続く工程の説明に供する斜視説明図である。
【
図19】布地への画像付与工程の一例の説明に供する斜視説明図である。
【
図20】同じく
図19に続く工程の説明に供する斜視説明図である。
【
図21】同じく
図20に続く工程の説明に供する斜視説明図である。
【
図22】位置出し用部材のマーキング用穴の位置の説明に供する説明図である。
【
図23】本発明に係るプログラムである印刷アプリケーションによる画面表示と印刷対象における位置出し部材との関係の説明に供する説明図である。
【
図24】位置出し用部材をカセットの上面に取り付けた状態の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る画像付与装置(画像付与システム)について
図1を参照して説明する。
図1は同画像付与装置の使用形態の一例の示す斜視説明図である。
【0011】
画像付与装置(画像付与システム)1000は、印刷対象保持部材としてのカセット200と、印刷装置1と、加熱装置500とを備えている。印刷装置1は、カセット200が着脱可能で、カセット200に保持された印刷対象(被印刷部材)でもある布地400に画像を印刷する。加熱装置500は、カセット200を収容可能であり、布地400を保持したカセット200ごと収容して、布地400を加熱して画像を定着する。
【0012】
この画像付与装置1000の印刷装置1と加熱装置500とは別体であり、印刷装置1と加熱装置500を並べて配置する形態で使用することも、印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねる形態で使用することもできる。なお、印刷装置1と加熱装置500とは離れた位置に配置することもできる。印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねて設置することによって設置面積の効率化を図ることができる。
【0013】
この画像付与装置1000によって布地400に画像を付与するときには、布地400を保持したカセット200を印刷装置1にセット(装着)し、印刷装置1によって布地400に画像を印刷する。
【0014】
印刷装置1による布地400への画像の印刷が終了したときには、印刷装置1から布地400を保持したままのカセット200を取り出す。そして、加熱装置500の扉部材である前扉(前カバー、前ドア)502を開き、印刷された布地400を保持したままのカセット200を加熱装置500内に収容し、前扉502を閉じて、加熱装置500でカセット200ごと布地400を加熱する。布地400を加熱することによって布地400に印刷された画像が布地400に定着する。
【0015】
このように、印刷対象保持部材であるカセット200を印刷装置1と加熱装置500の両方で共用できる。これにより、印刷した布地400を印刷したときの状態のまま保持して加熱装置500にセットすることができ、布地400を持ち運んでも皺が寄ったり、一部が重なったりして印刷面が乱れることはなく、布地400に対する画像付与の作業性が向上する。
【0016】
次に、印刷装置の一例について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図、
図3は同じく
図2と異なる方向から見た斜視説明図である。
【0017】
印刷装置1は、装置本体100内に、布地400を保持するカセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
【0018】
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地も用いることができる。
【0019】
ステージ111は、装置本体100に対して矢印Y方向(送り方向)に移動可能に保持された搬送構造体113上に設けられている。
【0020】
ここでは、装置本体100の底部筐体部114に矢印Y方向に沿って搬送ガイド部材115が配置され、搬送構造体113のスライダ部116が搬送ガイド部材115によって移動可能に保持されている。
【0021】
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載されたヘッド122とを備えている。
【0022】
キャリッジ121は、矢印X方向に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持され、駆動モータ124によってタイミングベルト125などの走査機構部を介して矢印X方向に往復移動される。ヘッド122は液体吐出ヘッドを用いて、インクを布地表面に吐出して画像の形成を行っているが、これに限るものではない。
【0023】
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動とヘッド122の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
【0024】
この場合、ステージ111は矢印Z方向にも昇降可能とし、布地400の厚さに応じてステージ111を昇降させることで、布地400とヘッド122とのギャップを所定のギャップに調整可能としている。なお、印刷手段112を昇降可能とすることもできる。
【0025】
次に、カセットの一例について
図4ないし
図6も参照して説明する。
図4は同カセットの斜視説明図、
図5は同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図、
図6は同じく
図5の面S1における断面に相当するカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
【0026】
カセット200は、ベース部材201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300とを有している。
【0027】
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面を構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置500による加熱に対して耐熱性を有する。
【0028】
そして、ベース部材201には、外周カバー部材202の一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、外周カバー部材202はベース部材201に対して矢印方向に開閉可能に設けられている。
【0029】
外周カバー部材202は、プラテン部材300に対応する部分に開口部202aを有する枠部202bを備え、枠部202bとプラテン部材300の外周部分のフランジ部300aとの間で布地400を押さえる。
【0030】
プラテン部材300はベース部材201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とベース部材201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
【0031】
ここで、プラテン部材300はベース部材201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
【0032】
このカセット200に布地400をセットするときには、
図5に示すように、外周カバー部材202を開いて、プラテン部材300上に布地400をセット(保持)する。このとき、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを
図7に示すように、収容空間312内に収容した状態で、
図4に示すように、外周カバー部材202を閉じる。
【0033】
そして、布地400に印刷するときには、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。
【0034】
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
【0035】
このようなカセット200は印刷装置1で印刷が完了した後、布地400を保持したまま、加熱装置500にセットし(移して)、画像が印刷された布地400を加熱して定着する。
【0036】
また、このカセット200において、プラテン部材300を支持する支持部311は、ベース部材201側の中空支柱部231と、中空支柱部231に移動可能に嵌め合わされたプラテン部材300側の中空支柱部331と、中空支柱部231と中空支柱部331との間に配置した圧縮スプリング313とを備えている。
【0037】
これにより、プラテン部材300はベース部材であるベース部材201に対して変位可能に支持される。
【0038】
また、外周カバー部材202にロック爪部材204aを備えている。ロック爪部材204aは、外周カバー部材202のヒンジ203でベース部材201に対して開閉可能に保持された側と反対側に配置されている。
【0039】
一方、ベース部材201にはロック爪部材204aを保持し、あるいは、ロック爪部材204aの保持を解除するロック爪保持部材204bを備えている。
【0040】
これらのロック爪部材204aとロック爪保持部材204bでプラテン部材300の周縁部を覆う外周カバー部材202のベース部材201に対する高さを規制するロック手段204を構成している。
【0041】
このように構成したので、布地400の厚みが変化したときにプラテン部材300がスプリング313の復元力に抗して下降してベース部材201との間隔が変化し、異なる厚みの布地400にも対応することができる。
【0042】
そして、プラテン部材300は常に外周カバー部材202に一定の力で押し付けられることになるので、カセット200を持ち運びしたときでも布地400のずれが起き難い。
【0043】
また、布地400の厚みが変わった場合でも、プラテン部材300が下がることで、プラテン部材300と外周カバー部材202の隙間を確保するため、布地400の厚みを変えても外周カバー部材202のベース部材201に対する高さは変わらない。
【0044】
次に、加熱装置の一例について
図7ないし
図11を参照して説明する。
図7は同加熱装置の外観斜視説明図、
図8は同加熱装置の前扉を開いた状態の斜視説明図である。
図9は同加熱装置の長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図、
図10は同加熱装置の使用形態の説明に供する長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図である。
図11は同加熱装置の短手方向(カセット出し入れ方向と直交する方向)に沿う模式的断面説明図である。
【0045】
この加熱装置500は、装置本体501と、装置本体501の前面側に設けられ、カセット200を出し入れする装置本体501の開口部511を開閉する扉部材である前扉(前カバー)502を備えている。
【0046】
前扉502は、
図9に示す矢印方向に開閉可能であって、
図8に示すように開いて倒すことが可能に設けられている。前扉502を開くことで、開口部511を通じて、加熱対象である(印刷対象でもある。)布地400を保持したカセット200を、装置本体501内に対して出し入れすることができる。
【0047】
装置本体501の内部(装置本体内)には、布地400を着脱可能に保持する印刷対象保持部材としてのカセット200を出し入れ可能に保持する受け部材(テーブル)503が配置されている。
【0048】
受け部材503は、印刷装置1のステージ111と同様に、カセット200が着脱可能に装着されることで保持する部材、あるいは、カセット200を単に載置することで保持するテーブルなどで構成できる。ここでは、テーブルで構成している。
【0049】
そして、受け部材503の上方には、カセット200に保持された布地400を加熱する加熱手段504が配置されている。
【0050】
加熱手段504は、カセット200に保持されている布地400に対向する発熱手段であるヒータ542と、ヒータ542による受け部材503側と反対側への熱を断熱する断熱部材543とを備えている。断熱部材543と装置本体501の内壁面との間には空間506が設けられている。
【0051】
ヒータ542の受け部材503との対向面は、装置本体501内にセットされたカセット200に保持された布地400の露出した面に略平行に位置するよう構成されている。ヒータ542による加熱範囲(加熱領域)は長手方向で長さL1、短手方向で幅W1とする。
【0052】
なお、ヒータ542の受け部材503側には、例えばアルミなどの熱伝導性に優れた材料で形成した平面部材を設け、ヒータ542による発熱で面温度がほぼ均一になるように加熱する構成とすることもできる。このようにすれば、ヒータ542の加熱位置にかかわらず、面内でほぼ同じ温度で加熱することができる。
【0053】
加熱手段504は、装置本体501の開口部511側では保持部材508で保持されている。本実施形態では、保持部材508の下方がカセット200を挿入する挿入開口部512となる。ただし、装置本体501の開口部511の上端が保持部材508の下端よりも下方に位置する構成としたときには、開口部511が挿入開口部512となる。
【0054】
受け部材503は、上下動機構(位置切替機構)507によって保持されて、加熱手段504に対して3段階で上下方向(相対距離が変化する方向)に相対移動可能に配置されている。
【0055】
上下動機構507の操作レバー558を
図7の中立位置、矢印A方向、矢印B方向に移動することで、受け部材503を上下動させることができる。
【0056】
ここでは、加熱手段504に対する受け部材503の相対位置は、操作レバー558を中立位置にしたときに
図9に示す待機位置(第1位置)、操作レバー558を矢印A方向に回動操作したときに
図10(a)に示す非接触加熱位置(第2位置)、操作レバー558を矢印B方向に回動操作したときに
図10(b)に示す接触加熱位置(第3位置)に移動する。
【0057】
図9の待機位置は、カセット200を出し入れするときの位置である。
図10(a)の非接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に非接触で加熱される加熱位置である。
図10(b)の接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に接触されて加熱される加熱位置(プレス位置)である。
【0058】
また、
図7を参照して、操作パネル520には、予熱動作の開始を指示する自照式予熱開始キー(ボタン)521a、加熱動作の停止を指示するストップキー521b、加熱中を表示する加熱中表示部521cなどが設けられている。
【0059】
次に、本発明の第1実施形態における印刷対象をカセットにセットするときに使用する位置出し用部材(位置出し用治具)について
図12を参照して説明する。
図12は同位置出し用部材の平面説明図である。
【0060】
位置出し用部材700は、印刷対象のどこに印刷するかを位置出しするときに使用する部材(治具)であり、本体部となるほぼ透明な調整板701を有している。
【0061】
調整板701は、プラテン部材300よりも大きいサイズであり、異なる大きさの印刷領域に対応してそれぞれ4個のマーキング用穴702、703が設けられている。例えば、マーキング用穴702はA4サイズの印刷領域に対応して設けられ、マーキング用穴703はA5サイズの印刷領域に対応して設けられている。
【0062】
なお、矩形状の印刷領域であれば対角点を設定することで印刷領域を規定できるので、マーキング用穴702、703はそれぞれ2個以上であればよい。また、マーキング用穴702、703によって規定する印刷領域のサイズは、A4、A5サイズに限るものでもなく、更にマーキング用穴で示す印刷領域にサイズは1つでもよい。
【0063】
ここで、マーキング用穴702、703は、加熱装置500における加熱範囲、本実施形態では、
図9及び
図11に示すヒータ542による加熱領域(長さL1×幅W1の範囲)内に設けている。
【0064】
これにより、例えば60°C以上の熱をかけることで消去するインクを使用した熱消去型筆記具750によってマーキング用穴702、703を介して印刷対象である布地400に印刷領域を示すマーキングを行い、印刷後に、加熱装置500で加熱することにより、マーキングを確実に消去することができる。
【0065】
また、調整板701には、目印として、プラテン部材300の中心位置に対応して十字線704が設けられている。例えば、A4サイズに対して真ん中の小さな領域内に印刷する場合など、印刷対象の目標とする印刷位置に十字線704を合わせることで、小さな領域であっても目標とする位置に印刷することができる。
【0066】
また、調整板701には、目印として、等間隔なドット705aで構成されるグリッド705、及び、十字マーク706が設けられている。グリッド705及び十字マーク706は、印刷アプリケーションよって画面上に表示される等間隔なドット(グリッド)及び十字マークとリンクした位置に設けられており、さらに細かく印刷対象への印刷位置を合わせることができる。
【0067】
ここで、目印としての、十字線704、グリッド705を構成している等間隔なドット705a、十字マーク706は、調整板701に凸形状又は凹形状を設けて形成することもでき、あるいは、調整板701に印刷して形成することもできる。
【0068】
また、位置出し用部材700の調整板701の周囲には、カセット200の外周カバー部材202の外周面に着脱可能に嵌め込む枠部710を有している。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態における印刷対象をカセットにセットするときに使用する位置出し用部材(位置出し用治具)について
図13を参照して説明する。
図13は同位置出し用部材の平面説明図である。
【0070】
位置出し用部材700の調整板701のマーキング用穴703は、マーキング用穴702と対になってA5サイズの印刷領域を横向き(カセット出し入れ方向と直交する方向)で設定可能な位置に設けられている。
【0071】
次に、本発明に係る印刷対象をカセットにセットする方法について
図14ないし
図18を参照して説明する。
図14は印刷対象である布地の印刷を施す部分にマーキングする方法の説明に供する説明図である。
図15ないし
図18はマーキングした布地をカセットにセットするときの説明に供する斜視説明図である。
【0072】
まず、
図14(a)に示すように、印刷対象となる布地400の印刷を施す部分に位置出し用部材700を載せ置き、マーキング用の熱消去型筆記具750によってマーキング用穴702(又は703)を介して、
図14(b)に示すように4カ所にマーク801を付ける(マーキングする)。なお、ここでは、位置出し用部材700は第2実施形態のものを使用しているが、これに限るものではない。
【0073】
次いで、カセット200に布地400をセットするときには、
図15に示すように、外周カバー部材202を開いて、プラテン部材300上にマーキングされた布地400の印刷する部分を載せ置く。
【0074】
このとき、マーク801の位置とプラテン部材300の四隅の角の位置を合わせるようにする。これにより、布地400に付けた4点のマーク801がプラテン部材300の四隅の角位置に重なることで、正確に印刷したい任意の場所に位置出しをすることができる。
【0075】
その後、
図16に示すように、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを矢印方向から収容空間312内に押し込み、
図17に示すように、余剰部分400aを収容空間312内に収容する。そして、
図18に示すように、外周カバー部材202を閉じる。
【0076】
これにより、プラテン部材300によって布地400の印刷する部分が平坦な状態で保持され、外部に余剰部分400aがはみ出すことなく、カセット200内に収容される。
【0077】
次に、布地への画像付与工程の一例について
図19ないし
図21を参照して説明する。
図19ないし
図21は同工程の説明に供する斜視説明図である。なお、加熱装置については、上下動機構が前記加熱装置と異なる構成のものを使用している。
【0078】
この画像付与装置1000によって布地400に画像を付与するときには、
図19(a)に示すカセット挿入方向Cから印刷装置1に布地400を保持したカセット200を挿入し、
図19(b)に示すようにカセット200を印刷装置1のステージ111にセットする。
【0079】
そして、印刷装置1を作動させて、印刷装置1によって布地400に画像を印刷する。
【0080】
印刷装置1による布地400への画像の印刷が終了したときには、
図20(a)に示すように、加熱装置500の前扉502を開き、
図20(b)に示すように、印刷装置1から布地400を保持したままのカセット200を取り出して、そのまま、カセット200を加熱装置500に挿し入れる。
【0081】
そして、
図21(a)に示すように、カセット200を加熱装置500内に収容した後、
図21(b)に示すように、加熱装置500の前扉502を閉じて、加熱装置500でカセット200ごと布地400を加熱する。布地400を加熱することによって布地400に印刷された画像が布地400に定着する。
【0082】
このとき、前述したように、筆記具750によるマーク801は加熱によって消去され、印刷物(布地400)には残らない。
【0083】
次に、位置出し用部材のマーキング用穴の位置について
図22を参照して説明する。
図22は同説明に供する説明図である。
【0084】
熱消去型筆記具750を使用してマーキングを行う場合、印刷後に加熱によってマーク801を消去する必要がある。
【0085】
ここで、一般的な捺染プリンタのように印刷された布地400だけを取り出してアイロン装置のアイロン台に布地400を載せ置いて加熱する場合、アイロン台の加熱範囲から布地400のマーク801が外れていると、マーク801がそのまま残り、仕上がり品質が低下することになる。
【0086】
この場合、マーキング範囲がA4サイズの4隅の場合であるとしたとき、
図22(a)に示すように、A4サイズの略全域の画像802の場合はマーク801の消し忘れは発生しにくい。
【0087】
これに対し、
図22(b)に示すように、A4サイズに対して画像802の範囲が狭い場合には、画像802から離れた位置にあるマーク801は消し忘れ易くなる。
【0088】
そこで、前述したように、マーキング用穴702、703の位置は加熱装置500における加熱範囲内とすることで、加熱装置500で加熱を行うことによって、筆記具750によるマーク801は必ず消去され、印刷物(布地400)に残ることが防止される。
【0089】
次に、本発明に係るプログラムである印刷アプリケーションについて
図23を参照して説明する。
図23は同印刷アプリケーションによる画面表示と印刷対象における位置出し部材との関係の説明に供する説明図である。
【0090】
印刷アプリケーションは、情報処理装置の画面に、
図23(a)に示すように、位置出し用部材700のマーキング用穴702、703で示される印刷領域、十字線704、等間隔なドット705aで構成されるグリッド705、十字マーク706にリンクした位置に、印刷領域902、903、十字線904、等間隔なドット905aで構成されるグリッド905、十字マーク906を表示させる制御をコンピュータに行わせるためのプログラムである。
【0091】
そして、印刷アプリケーションは、上記表示画面上に、印刷する画像(印刷画像)805を重ね合わせて表示させる制御もコンピュータに行わせる。
【0092】
これにより、
図22(b)に示すように、布地400における画像805の印刷位置を細かく合わせることができる。
【0093】
次に、位置出し用部材のカセットへの取付けについて
図24を参照して説明する。
図24は位置出し用部材をカセットの上面に取り付けた状態の斜視説明図である。
【0094】
位置出し用部材700は、前述したように調整板701の周囲にカセット200の外周カバー部材202の外周面に着脱可能に嵌め込む枠部710を有している。
【0095】
カセット200の布地400への印刷が終了した後、すぐに加熱装置500に入れない場合などには、印刷直後の布地400のインクが乾ききっていないため、位置出し用部材700をカセット200に取付けることで、印刷面を保護することができる。
【0096】
また、位置出し用部材700をカセット200に取り付けることで、布地400をカセット200にセット後に、印刷アプリケーション内での印刷イメージの位置調整の確認や補助をすることができる。
【0097】
なお、カセットなどの印刷対象保持部材は、印刷装置、或いは、加熱装置ないし定着装置とに着脱できる構成を備えていれば、形状等は上記実施形態のカセットのような箱状の形態に限られるものではない。具体的には、印刷装置と加熱装置とに挿入可能に形成された一枚の板状のプラテン部材であってもよい。
【0098】
また、より作業性を向上するために、このような印刷対象保持部材に対し、印刷時に作業者が毎回布地(Tシャツ等)をトレイにセットする工程をなくすために、布地(Tシャツ等)をセット済みの印刷対象保持部材を利用することもできる。この場合、使用後の印刷対象保持部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
【0099】
さらに、同様の効果を奏するために、印刷対象保持部材に着脱可能に形成されたプラテン部材に布地(Tシャツ等)をセットした布地セット済みのプラテン部材を利用することもできる。使用する場合は、この布地セット済みのプラテン部材をそのまま印刷対象保持部材に装着し、印刷、定着が完了したあとに、印刷対象保持部材からプラテン部材を取り外し、次の布地セット済みのプラテン部材を印刷対象保持部材に装着し、印刷、定着が行われる。この場合、使用後のプラテン部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
【0100】
このようにすることで、作業者が毎回布地(Tシャツ等)をセットする必要がなく、複数枚の連続処理が容易になり、複数枚の連続処理を自動化することも可能となる。
【0101】
また、上記実施形態では、印刷対象が布地である場合について説明しているが、これに限るものではない。布地以外の印刷対象をプラテン部材にセットして印刷する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 印刷装置
100 印刷装置の装置本体
111 ステージ(受け部材)
112 印刷手段
200 カセット(印刷対象保持部材)
300 プラテン部材
400 布地
500 加熱装置
501 装置本体
700 位置出し用部材
701 調整板
702、703 マーキング用穴
704 十字線
705 グリッド、
706 十字マーク