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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220301BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220301BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20220301BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220301BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/36
C09J7/40
C09J7/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018547714
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2017038499
(87)【国際公開番号】W WO2018079596
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2016208937
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】開 俊啓
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-052553(JP,A)
【文献】特開2013-010880(JP,A)
【文献】特開2013-010181(JP,A)
【文献】特開2013-010280(JP,A)
【文献】特開2013-001046(JP,A)
【文献】特開2004-255704(JP,A)
【文献】特開平09-011424(JP,A)
【文献】特開平11-320524(JP,A)
【文献】特開2014-152275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子から形成された硬化物からなる離型層を有し、走査型電子顕微鏡を用いた該離型層表面の不活性粒子の占有面積率が5%以上12%以下であり、かつ、以下の方法で測定した該離型層とアクリル系粘着剤との剥離力が、50g/25mm以上150g/25mm以下である、離型フィルム。
<測定方法>
離型フィルムの離型層面に、下記粘着剤組成から構成されるアクリル系粘着剤を塗布量(乾燥前)が2milになるように塗布し、150℃、3分間熱処理する。熱処理後の粘着剤面を、未処理のポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(厚さ188μm)と荷重2kgのゴムローラーで貼り合わせ、粘着剤付き離型フィルムを作製する。
次に、貼り合わせた粘着剤付き離型フィルムを、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は引張速度300mm/分の条件下で180°剥離を行う。
<粘着剤組成>
主剤:AT352(サイデン化学(株)製) 100重量部
硬化剤:AL(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-375SK(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-352S(サイデン化学(株)製) 0.4重量部
トルエン 40重量部
【請求項2】
前記硬化型シリコーン樹脂は、アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂を含む、請求項に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記硬化型シリコーン樹脂は、SiH基を含む硬化型シリコーン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記硬化物に白金触媒を含む、請求項1~のいずれか1つに記載の離型フィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルムと離型層との間に機能性層が介在されてなる、請求項1~のいずれか1つに記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記機能性層形成に用いるポリマーが、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記機能性層形成に用いるポリマーが、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記機能性層形成に用いる架橋剤が、メラミン化合物、エポキシ化合物、及びシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5~7のいずれか1つに記載の離型フィルム。
【請求項9】
光学部材の保護フィルムとして用いる、請求項1~のいずれか1つに記載の離型フィルム。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1つに記載の離型フィルムの前記離型層面上にアクリル系粘着剤層を有する粘着剤付き離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関するものであり、更に詳しくは剥離力の調整が容易で、且つ長期間に渡り粘着剤と貼り合わされた状況においても離型性が安定している、離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは機械的強度、耐熱性、熱寸法安定性、耐薬品性及び経済性の観点から各種用途に使用されており、例えばタッチパネルに用いられるオプティカルクリアーアドヒーシブ(OCA)製造用、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられる偏光板/位相差板等のLCD構成部材製造用、プラズマディスプレイパネル(PDP)構成部材製造用、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)構成部材製造用等の各種ディスプレイ構成部材製造用途や、湿布薬/貼付薬等の医療用粘着フィルム用途、セラミックシート用途、ポリ塩化ビニルシート、炭素繊維等の成形工程用途、ラベル、粘着テープ、化粧板、トランスファーテープ等の工業用途等が例示される。
【0003】
LCD構成部材の製造においては、偏光板メーカーが裁断された偏光板をパネルメーカーに納入する方法や、偏光板メーカーよりパネルメーカーに偏光板をロール状態で納入するRoll to Panelと呼ばれる方法により商流が構成されている。ここで離型フィルムは、例えば偏光板を製造工程で部材に組み込む迄の間、偏光板を保護するためにその表面に被覆されている。近年、偏光板の在庫調整等の関係により、いずれの方法においても、偏光板を製造してから部材に組み込むために離型フィルムを剥がすまでの期間が長期化している。そのため、離型フィルムには長期間に渡り粘着剤と貼り合わされた状況においても離型性が安定していることが求められてきている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-246880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の離型フィルムは、長期に亘る粘着剤との貼合せにおいて、離型フィルムの離型層に含まれるシリコーン樹脂と粘着剤との反応が離型層表面で進行するため、時間経過と共に剥離力が大きくなり、剥がれにくくなることがあった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、長期間にわたって粘着剤と貼り合わされた状況においても、経時剥離力が大きく変化せず、離型性(剥離力)が安定している離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有する離型フィルムを用いれば、粘着剤と貼り合わされた状況における剥離力の経時安定性を従来技術から大きく改良できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子から形成された硬化物からなる離型層を有し、かつ、以下の方法で測定した該離型層とアクリル系粘着剤との剥離力が、50g/25mm以上150g/25mm以下である、離型フィルムに存する(第1の好ましい実施態様)。
<測定方法>
離型フィルムの離型層面に、下記粘着剤組成から構成されるアクリル系粘着剤を塗布量(乾燥前)が2milになるように塗布し、150℃、3分間熱処理する。熱処理後の粘着剤面を、未処理のポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(厚さ188μm)と荷重2kgのゴムローラーで貼り合わせ、粘着剤付き離型フィルムを作製する。
次に、貼り合わせた粘着剤付き離型フィルムを、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は引張速度300mm/分の条件下で180°剥離を行う。
<粘着剤組成>
主剤:AT352(サイデン化学(株)製) 100重量部
硬化剤:AL(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-375SK(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-352S(サイデン化学(株)製) 0.4重量部
トルエン 40重量部
【0009】
または、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子から形成された硬化物からなる離型層を有し、かつ、走査型電子顕微鏡を用いた該離型層表面の不活性粒子の占有面積率が4%以上12%以下である、離型フィルムに存する(第2の好ましい実施態様)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記構成によれば、従来技術の課題であった、長期間にわたって粘着剤と貼り合わされた状況においても経時剥離力が大きく変化せず、離型性が安定している離型フィルムを得ることができ、例えば、液晶偏光板製造用やタッチパネル製造用等の各種光学部材の製造用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像である。
図2】実施例9の離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像である。
図3】比較例3の離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための好ましい形態等について詳細に説明する。
【0013】
(ポリエステルフィルム)
離型フィルムに用いられる、ポリエステルフィルムにおけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましく、1種の芳香族ジカルボン酸と1種の脂肪族グリコールとからなるポリエステルであってもよく、1種以上の他の成分を共重合させた共重合ポリエステルであってもよい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルの成分として用いるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。またp-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸も用いることができる。更にその他の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて従来公知の色剤(染料/顔料)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、導電剤、熱安定剤、潤滑剤等の各種機能化成分や添加剤を含有していてもよい。
【0014】
また、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにおいては、フィルム加工中の熱履歴等により、フィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出又は結晶化する量を低減するために、多層構造フィルムの最外層にオリゴマー量を低減させたポリエステルを用いることも可能である。ポリエステル中のオリゴマー量を低減する方法としては、例えば、固相重合法等を用いることができる。
【0015】
離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには、易滑性の付与及び各工程でのフィルムの走行性確保、傷発生防止を主たる目的として、粒子を含有させる事ができる。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、シュウ酸カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、リン酸マグネシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、硫化モリブデン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59-5216号公報、特開昭59-217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0016】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0017】
粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、光学用途で用いる場合の粒子の平均粒径は、通常0.01~5μm、好ましくは0.01~2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0018】
さらに、光学用途で用いる場合の粒子含有量は、通常0.001~5重量%、好ましくは0.005~3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えるとフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0019】
粒子がない場合、あるいは少ない場合はフィルムの透明性が高くなり良好なフィルムとなるが、すべり性が不十分となる等、取り扱いが難しくなる場合があるため、ナーリングや塗布層中に粒子を入れる等の工夫が必要になることがある。
【0020】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0021】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコール又は水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、又は混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法等によって行われる。
【0022】
離型フィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても2層以上の積層構成であってもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
離型フィルムはフィルムの耐候性の向上のために、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0024】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等が挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0025】
離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚さは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常400μm以下、好ましくは5~250μm、更に好ましくは12~200μmの範囲である。
【0026】
ポリエステルフィルムの透明度は特に制限されないが、透明性が必要とされる光学用途の場合等は、ヘーズとして1.8%以下が好ましく、1.2%以下がより好ましい。
【0027】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は特に制限されないが、透明性が必要とされる光学用途の場合等は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。
【0028】
離型フィルムを構成する、ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではなく、通常知られているポリエステルフィルムの製膜法を採用できる。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0029】
ポリエステルフィルムの製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向及び幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、更に好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0030】
(機能性層)
本発明の離型フィルムは、ポリエステルフィルムと離型層との間に機能性層が介在されてもよい。機能性層としては、易接着層、帯電防止層、導電層、防汚層、ブリードアウト成分封止層、屈折率調整層、光線透過率向上層、光吸収層、防曇層、バリアコート層、ハードコート層、粘着剤層及びこれら機能性を複合させた層等を挙げることができる。また前記機能性層は単層でもよいが、2層以上の構成にしてもよい。前記機能性層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布するオフラインコーティングを採用してもよい。
【0031】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に流れ方向に延伸が終了した後、すなわち幅方向に延伸する前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に機能性層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に機能性層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0032】
インラインコーティングによって機能性層を設ける場合は、後述の一連の化合物を水溶液又は水分散体として、塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0033】
塗布液の有機溶剤含有量は10重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以下である。具体的な有機溶剤の例としては、n-ブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族又は脂環族アルコール類;プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;n-ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
【0034】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
【0035】
機能性層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、カーテンコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方式を用いることができる。
【0036】
機能性層形成に用いるポリマーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、アミド樹脂、アラミド樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよく、複合構造を持つポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0037】
機能性層形成に用いる架橋剤としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、メラミン化合物、グアナミン系化合物、アルキルアミド系化合物、ポリアミド系化合物、グリオキサール系、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、ジアルコールアルミネート系カップリング剤、ジアルデヒド化合物、ジルコアルミネート系カップリング剤、過酸化物、熱又は光反応性のビニル化合物や感光性樹脂等が挙げられる。
【0038】
機能性層には滑り性改良を目的として粒子を含有してもよい。その平均粒径に特に制限はないが、例えば光学用途に用いる場合はフィルムの透明性の観点から好ましくは1.0μm以下の範囲であり、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。粒子の具体例としてはシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の不活性無機粒子やポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂から得られる微粒子あるいはこれらの架橋粒子に代表される有機粒子等が挙げられる。
【0039】
その他、機能性層には目的に応じて界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、離型剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、屈折率調整剤、紫外線等光吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0040】
機能性層中の成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0041】
本発明においてポリエステルフィルム上に設けられる機能性層の厚さは、最終的な被膜としてみた際に、通常0.01~3g/m2、好ましくは0.02~1g/m2、更に好ましくは0.03~0.3g/m2の範囲である。機能性層の厚さが0.01g/m2未満の場合は離型層への易接着性能において十分な性能が得られない恐れがあり、3g/m2を超える機能性層は、外観又は透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、ライン速度低下によるコストアップを招きやすい。なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液重量(乾燥前)、塗布液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求めることができる。
【0042】
ポリエステルフィルムには、前記機能性層とは別に各種表面処理を施してもよい。各種表面処理については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、マイクロ波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0043】
(離型層)
離型フィルムを構成する離型層に関して、以下に説明する。
【0044】
本発明の離型フィルムは、良好な離型性能を得る観点から、硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子を含有することが重要である。ただ粘着剤層との剥離時において、良好な離型性能を有していれば、硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子を除く離型層の構成成分に特に制限はない。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。また粘着剤層がシリコーン粘着剤等である場合はフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
【0045】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型又は縮合型等のいずれの硬化反応タイプでも用いることができる。また、熱硬化型、紫外線硬化型等の電子線硬化型のいずれの硬化反応タイプでも用いることができる。また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用してもよい。更に離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態のいずれであってもよい。
硬化型シリコーン樹脂を複数種類併用する具体的な態様として、後述する通り、例えばアルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂と、SiH基を含む硬化型シリコーン樹脂とを併用することで、離型フィルムの剥離力を適当な範囲に調整することができる場合や、剥離力の経時変化を抑制することができる場合がある。
また、離型層に用いる塗布液として、不活性粒子を含む硬化型シリコーン樹脂含有塗布液と、不活性粒子を含まない硬化型シリコーン樹脂含有塗布液とを併用することで、離型フィルムの剥離力を適当な範囲に調整することができる場合や、剥離力の経時変化を抑制することができる場合がある。
【0046】
硬化型シリコーン樹脂の種類には制限はないが、剥離性等の優れた離型特性の観点から本発明においてはアルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂の使用が好ましい。アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
(3-a)aSiO-(RXSiO)m-(R2SiO)n-SiXa(3-a) …(1)
【0047】
一般式(1)において、Rは炭素数1~10の一価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0~3の整数で、1が好ましく、mは0以上の整数であるが、a=0の場合、mは2以上であり、m及びnはそれぞれ100≦m+n≦20000を満足する整数であり、また上記式はランダム共重合体を含み、ブロック共重合体を意味している訳ではない。
Rは炭素数1~10の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリル基等が挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2~10のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基が好ましい。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。
【0048】
次に硬化型シリコーン樹脂に含まれるアルケニル基と反応し、より強固なシリコーン離型層を形成するために、硬化型シリコーン樹脂にSiH基が含まれていることが好ましい。例えばSiH基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のもの等を使用することができ、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
b1 (3-b)SiO-(HR1SiO)x-(R1 2SiO)y-SiR1 (3-b)b …(2)
【0049】
一般式(2)において、R1は炭素数1~6の脂肪族不飽和結合を含有しない一価炭化水素基である。bは0~3の整数、x、yはそれぞれ整数である。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
【0050】
次に本発明に用いる硬化型シリコーン樹脂の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製のKS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、KS-856、X-62-2422、X-62-2461、X-62-1387、X-62-5039、X-62-5040、KNS-3051、X-62-1496、KNS320A、KNS316、X-62-1574A/B、X-62-7052、X-62-7028A/B、X-62-7619、X-62-7213、X-41-3035;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製のYSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56-A2775、XS56-A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605;東レ・ダウコーニング(株)製のSRX357、SRX211、SD7220、SD7292、LTC750A、LTC760A、LTC303E、SP7259、BY24-468C、SP7248S、BY24-452、DKQ3-202、DKQ3-203、DKQ3-204、DKQ3-205、DKQ3-210;旭化成ワッカーシリコーン(株)製のDEHESIVEシリーズのうち、DEHESIVE 636、919、920、921、924、929等が例示される。
【0051】
離型層を構成する組成物中には、強度を確保するため、付加型の反応を促進する白金系触媒を用いることが好ましい。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。離型層を構成する組成物中の白金系触媒含有量は、0.3~3.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5~2.0重量%の範囲である。離型層を構成する組成物中の白金系触媒含有量が0.3重量%よりも低い場合、剥離力の不具合や、離型層での硬化反応が不十分になるため、面状悪化等の不具合を生じることある。一方、離型層を構成する組成物中の白金系触媒含有量が3.0重量%を超える場合には、反応性が高まり、ゲル異物が発生する等の工程上で不具合が生じることがある。
【0052】
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、付加反応抑制剤として、アセチレンアルコールを添加することがある。その成分は炭素-炭素三重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール及びフェニルブチノールからなる群から選択される化合物であることが好ましい。
【0053】
離型層を構成する組成物中には、加水分解及び縮合反応促進を目的として、上記の白金系触媒以外の触媒を併用することが可能である。触媒の具体例としては、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸等の有機酸類;塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;トリエチルアミン等の塩基性化合物類;テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジオレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ジブチル錫ベンジルマレート等の有機金属塩類;KF、NH4F等のフッ素元素含有化合物等を挙げることができる。上記触媒は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。その中でも、特に塗膜耐久性が良好となる点で有機金属塩類が好ましい。
【0054】
本発明の第2の好ましい実施態様においては、離型層の剥離力を所望の剥離力に調整し、且つ長期に渡る粘着剤との貼合せにおいても所望の剥離力を安定的に維持させるために、離型層に硬化型シリコーン樹脂及び不活性粒子を含有し、更に以下の条件により走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて該離型層表面を観測した際の不活性粒子の占有面積率が4%以上12%以下であることを必須要件とする。
《走査型電子顕微鏡観測条件》
・使用装置:S-3400N((株)日立製作所製)
・観察モード:二次電子(観察)モード
・加速電圧:15kV
・プローブ電流:30
・対物絞り:3
・作動距離(WD):10mm
・倍率 :20000倍
【0055】
本発明の離型フィルムのように不活性粒子の占有面積率が4%以上であることによって、不活性粒子が離型層表面の反応を阻害又は抑制させることができ、所望の剥離力を安定的に維持させることが可能である。不活性粒子の占有面積率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。
一方、不活性粒子の占有面積率の上限は12%以下である。不活性粒子の占有面積率が12%を超える場合、離型フィルムの作成直後の時点で剥離力が非常に大きくなり、離型フィルムと粘着剤との剥離が困難になる。経時剥離力も非常に大きいままである。
【0056】
本発明における不活性粒子の占有面積率は、離型層の表面近傍における不活性粒子が存在し得る面積の割合を指す。不活性粒子の占有面積率は、離型層を形成する際の塗工方式や硬化条件によって制御される。後述の塗工方式や硬化条件で離型層を形成させることで、不活性粒子が離型層表面に現れ、不活性粒子の占有面積率が規定された範囲内を満たすことができる。
したがって、不活性粒子の占有面積率は、離型層の塗布液における不活性粒子の含有量のみによって決定されるものではない。たとえ離型層に不活性粒子が多量に含まれていても、離型層表面に不活性粒子が現れず、不活性粒子の占有面積率が4%未満であれば、不活性粒子が離型層表面で粘着剤との反応を阻害または抑制させることができず、経時剥離力が大きくなる。また、離型層に不活性粒子が少量しか含まれていなくても、離型層表面に不活性粒子が現れ、不活性粒子の占有面積率が規定された範囲内であれば、不活性粒子が離型層表面で粘着剤との反応を阻害または抑制させ、経時剥離力の増加を抑えることができる。
なお、上記の規定で測定される限り、離型層に含まれる不活性粒子のみを対象とする必要は無い。例えば、ポリエステルフィルムの表層に不活性粒子を含有する場合や、任意に設けることができる機能性層に不活性粒子を含有する場合において、これら各層に含有する不活性粒子の識別を行う必要は無い。
【0057】
離型層に用いる不活性粒子は、どのような物質を用いても構わないが、具体的には、前記したポリエステルフィルムの易滑性付与のために用いることができる粒子を同様に用いることができる。中でも、無機粒子が好ましく、汎用性の観点からシリカ粒子がより好ましい。具体的には、東レ・ダウコーニング(株)製のBY24-312、BY24-4980、日産化学工業(株)製の「スノーテックス」、日揮触媒化成(株)製の「OSCAL」等が例示される。
【0058】
シリカ粒子の表面は、離型層中のシリコーン樹脂との相溶性及び離型層中におけるシリカ粒子の分布の観点から、一般式(3)の構造を有することがより好ましく、全てメチル基であるトリメチルシリル化されている構造は特に好ましい。
Si-O-Si-(Rα)c(Rβ)d(Rγ)e …(3)
(一般式(3)において、Rα、Rβ、Rγはそれぞれ独立に、炭素数が1~6のアルキル基又はフェニル基であり、c,d,eは整数で、c+d+e=3である。)
【0059】
離型層に用いる不活性粒子の平均粒径は、通常0.01~5μm、好ましくは0.01~2μmの範囲である。不活性粒子の平均粒径が規定された範囲内であることによって、離型層表面の占有面積率が満たされ、剥離力を適当な範囲に調整したり、剥離力の経時変化を抑制したりすることができる。
【0060】
離型層に用いる不活性粒子の含有量は、通常1~50重量%、好ましくは2~40重量%、さらに好ましくは3~30重量%の範囲である。不活性粒子の含有量が規定された範囲内であることによって、離型層表面の占有面積率が満たされ、剥離力を適当な範囲に調整したり、剥離力の経時変化を抑制したりすることができる。
【0061】
不活性粒子以外に、剥離力調整剤を併用して使用してもよい。剥離力を大きくさせる場合は、一般的にオルガノポリシロキサンや剥離力が大きくなるシリコーン種等の重剥離化剤を離型層が構成される組成物中に適当な含有量で添加する。重剥離化剤の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS-3800、X-92-183等が例示される。
剥離力を小さくさせる場合は、低分子シロキサン化合物を種々選択し、離型層に適当な含有量添加し、シロキサン移行成分が離型性能を発揮するようにする。低分子シロキサン化合物の例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。また、前記低分子シロキサン化合物の他の化合物としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー等があり、必要に応じて前記化合物は混合して使用してもよい。これら低分子シロキサン化合物は、シリコーン樹脂中に通常0.1~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.1~5重量%含有することで所望の剥離性を達成することができる。低分子シロキサン化合物の含有量が0.1重量%よりも小さいと、移行性成分が少ないために離型性が発揮されにくくなる。一方、低分子シロキサンの含有量が15重量%よりも大きいと、移行性成分が過剰に析出するために、工程汚染を引き起こす傾向にある。
【0062】
離型フィルムを構成する離型層中には離型層とポリエステルフィルムとの塗膜密着性を良好とするために有機珪素化合物を併用してもよく、中でも下記一般式(4)で表される有機珪素化合物を併用することが好ましい。
Si(X)f(Y)g(R2h …(4)
(上記式(4)中、Xはエポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、ハロアルキル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有する有機基、Yは加水分解性基、R2は炭素数が1~10の一価炭化水素基であり、fは1又は2の整数、gは2又は3の整数、hは0又は1の整数であり、f+g+h=4である。)
【0063】
前記一般式(4)で表される有機珪素化合物は、加水分解及び縮合反応によりシロキサン結合を形成しうる加水分解性基Yを2個有するもの、あるいは3個有するものを使用することができる。
【0064】
一般式(4)において、加水分解性基Yとしては、以下のものを例示できる。すなわち、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基及びアミノ基等である。これらの加水分解性基は、単独あるいは複数種を使用してもよい。メトキシ基あるいはエトキシ基を適用すると、コーティング材に良好な保存安定性を付与でき、また適当な加水分解性があるため、特に好ましい。
【0065】
一般式(4)において、一価炭化水素基R2は、炭素数が1~10のもので、特にメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0066】
離型層中に含有する有機珪素化合物の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等を例示することができる。
【0067】
離型層中に有機珪素化合物の含有量としては、硬化型シリコーン樹脂100重量部に対して0.5~5.0重量部であるのがより好ましく、更に好ましくは0.5~2.0重量部である。当該範囲が0.5重量部未満の場合、所望する密着性を確保するのが困難な場合があり、一方、5.0重量部を超える場合、貼り合わせる相手方樹脂層に対する接着性が強すぎて、本来剥離する必要がある場面において、容易に剥離できない等の不具合を生じる場合がある。
【0068】
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、離型層には必要に応じて界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0069】
離型層の形成は、塗布液をフィルムにコーティングすることにより設けられ、フィルム製造工程内で行うインラインコーティングにより設けられても、また、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよい。
【0070】
占有面積率を制御する方法として、離型層の塗工方式や硬化条件を調整することが挙げられる。
離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、前述記載の従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては、「コーティング方式」(槇書店、原崎勇次著、1979年発行)に記載例がある。
【0071】
離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
離型層を硬化させる際に用いる熱源として、熱ロール接触、空気等の熱媒接触、赤外線加熱、マイクロ波加熱等が挙げられる。中でも、短時間で溶媒除去及び硬化ができる赤外線加熱を用いることによって、不活性粒子が離型フィルム表面に現れやすくなり、所定の範囲の不活性粒子の占有面積率が得られるため好ましい。
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置,エネルギー源を用いることができる。
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m2、好ましくは0.005~1g/m2、更に好ましくは0.005~0.1g/m2の範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0072】
かくして得られた離型フィルムについて、以下の方法で測定した離型層とアクリル系粘着剤層との剥離力が50g/25mm以上であることが好ましい。本発明の離型フィルムは、前記剥離力が50g/25mm以上であることによって、特に経時での剥離安定性を発揮するものである。
本発明の離型フィルムは、離型層に含まれる不活性粒子の占有面積率を調整することによって、離型層とアクリル系粘着剤層との剥離力を所定の範囲内に包含することができる。但し、上記の剥離力とするための手段は、離型層に含まれる不活性粒子の占有面積率を調整する方法のみに限定されるものではない。
【0073】
<測定方法>
離型フィルムの離型層面に、下記粘着剤組成から構成されるアクリル系粘着剤を塗布量(乾燥前)が2milになるように塗布し、150℃、3分間熱処理する。熱処理後の粘着剤面を、未処理のポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(厚さ188μm)と荷重2kgのゴムローラーで貼り合わせ、粘着剤付き離型フィルムを作製する。
次に貼り合わせた粘着剤付き離型フィルムを、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は引張速度300mm/分の条件下で180°剥離を行う。
<粘着剤組成>
主剤:AT352(サイデン化学(株)製) 100重量部
硬化剤:AL(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-375SK(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-352S(サイデン化学(株)製) 0.4重量部
トルエン 40重量部
なお、上記の粘着剤組成と同一の粘着特性を有するものであれば、他の粘着剤組成に置換して測定することができる。
【0074】
一方、離型層とアクリル系粘着剤層との剥離力の上限は150g/25mm以下であることが好ましい。本発明の離型フィルムは、前記剥離力が150g/25mm以下であることによって、特に経時での剥離安定性を発揮でき、長期間にわたる輸送や在庫を行うにあたり、剥離力が安定的に維持させることができる。
【0075】
本発明の第1の好ましい実施態様においては、離型層とアクリル系粘着剤層との剥離力が50g/25mm以上150g/25mm以下であることを必須要件とする。
【0076】
経時剥離力に関して、本発明の離型フィルムは、23℃、50%RH雰囲気下の恒温恒湿槽内に2ヵ月間放置後の剥離力が150g/25mm以下が好ましく、100g/25mm以下がより好ましい。前記剥離力が150g/25mm以下であることによって、長期間にわたる輸送や在庫を行うにあたり、剥離力が安定的に維持させることができる。
また剥離力の経時変化の観点から、離型フィルムを23℃、50%RH雰囲気下の恒温恒湿槽内に3ヵ月間放置後の剥離力は100g/25mm以下が更に好ましく、85g/25mm以下が特に好ましい。ここで、剥離力の測定方法は前記と同様である。
【0077】
本発明の離型フィルムは、離型フィルムの離型層面上にアクリル系粘着剤層を有する粘着剤付き離型フィルムとして利用することができる。
また、本発明の離型フィルムは、例えば、液晶偏光板、タッチパネル等の光学部材の保護フィルムとして好適に利用することができる。
【0078】
本発明の離型フィルムに貼り合わせるアクリル系粘着剤は、構成成分としてアクリル系モノマーを含む樹脂である。アクリル系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。またアクリル系モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アクリル系樹脂は、樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素数6~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0079】
また、アクリル系樹脂の構成成分には、アクリル系樹脂に架橋構造を導入することができ、適切な凝集力が得られるという観点から、例えば、多官能モノマーが含まれていてもよい。
具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。多官能モノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【実施例
【0080】
以下に実施例、比較例及び製造例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例、比較例及び製造例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例及び製造例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。
【0081】
(1)ポリエステルの極限粘度(固有粘度)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0082】
(2)平均粒径(d50:μm)
遠心沈降式粒度分布測定装置((株)島津製作所製「SA-CP3型」)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0083】
(3)離型フィルムの経時剥離力の評価
離型フィルムの離型層面に、下記粘着剤組成から構成されるアクリル系粘着剤を塗布量(乾燥前)が2milになるようにベーカー式アプリケータを用いて塗布し、熱風式循環炉により、150℃、3分間熱処理した。熱処理後の粘着剤面を、未処理のポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム(厚さ188μm)と荷重2kgのゴムローラーで貼り合わせ、粘着剤付き離型フィルムを作製した。
次に貼り合わせた粘着剤付き離型フィルムを各放置条件下で放置後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行い、下記評価基準により経時剥離力の評価を行った。この評価では剥離力プロファイルにおいて、剥離開始時に記録される最大の剥離力値の部位を評価の対象とした。
【0084】
《粘着剤組成》
主剤:AT352(サイデン化学(株)製) 100重量部
硬化剤:AL(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-375SK(サイデン化学(株)製) 0.25重量部
添加剤:X-301-352S(サイデン化学(株)製) 0.4重量部
トルエン 40重量部
【0085】
《粘着剤付き離型フィルムの放置条件》
条件1:離型フィルムを作成直後
条件2:離型フィルムを23℃、50%RH雰囲気下の恒温恒湿槽内に1ヵ月間放置
条件3:離型フィルムを23℃、50%RH雰囲気下の恒温恒湿槽内に2ヵ月間放置
条件4:離型フィルムを23℃、50%RH雰囲気下の恒温恒湿槽内に3ヵ月間放置
【0086】
《経時剥離力の評価基準》
A:条件4での剥離力が85g/25mm以下
B:条件4での剥離力が85g/25mmを超え100g/25mm以下
C:条件3での剥離力が100g/25mmを超え150g/25mm以下
D:条件3での剥離力が150g/25mmを超える
【0087】
(4)シリカ粒子の占有面積率の評価
作製した離型フィルムの離型層表面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、S-3400N)により観察し、得られた5平方μmのSEM画像を、二次元画像解析ソフトウェア(三谷商事(株)製、WinRoof)を用いて自動二値化処理を行い、その後5平方μmのSEM画像におけるシリカ粒子の占有面積率を求めた。
【0088】
《走査型電子顕微鏡観測条件》
・使用装置:S-3400N
・観察モード:二次電子(観察)モード
・加速電圧:15kV
・プローブ電流:30
・対物絞り:3
・作動距離(WD):10mm
・倍率 :20000倍
【0089】
下記製造例中で使用したポリエステルフィルムの原料は次のとおりである。
<ポリエステル(I)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度が0.63dL/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(I)の極限粘度は0.63dL/gであった。
【0090】
<ポリエステル(II)の製造方法>
ポリエステル(I)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒径1.6μmのシリカ粒子を0.3重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、極限粘度が0.65dL/gに相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(I)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(II)を得た。得られたポリエステル(II)は、極限粘度が0.65dL/gであった。
【0091】
また、ポリエステルフィルム表面に形成した機能性層の組成物としては以下を用いた。
(A1)縮合多環式芳香族構造を有する酸成分と脂肪族酸成分を有する共重合ポリエステル樹脂:下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6-ナフタレンジカルボン酸/セバシン酸/5-スルホイソフタル酸ナトリウム//(ジオール成分)エチレングリコール/ヘキサンジオール/ジエチレングリコール=37/11/3//27/17/5(mol%)
(A2)アクリル樹脂:下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
(B1)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(B2)エポキシ化合物:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
(B3)ヘキサメトキシメチロールメラミン
【0092】
[実施例1]
ポリエステル(I)、(II)をそれぞれ90重量%、10重量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(I)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出しし、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で流れ方向(縦方向)に3.4倍延伸した後、テンターに導き、幅方向(横方向)に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、厚さ38μm(表層5μm、中間層28μm)の積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムは、オフラインにより、離型剤組成Aからなる塗布液を塗布量(乾燥後)が0.13g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、赤外線ドライヤーで最高温度が166℃で、ライン速度が50m/minで乾燥させた後に離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表2に示す。また、離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像を図1に示す。
【0093】
<離型剤組成A>
(i)付加型硬化シリコーン樹脂(X62-5039、信越化学工業(株)製):15重量部
(ビニル基を含有する硬化型シリコーン樹脂とSiH基を含有する硬化型シリコーン樹脂との混合物)
(ii)シリカ粒子含有付加型硬化シリコーン樹脂(BY24-312、東レ・ダウコーニング(株)製):5重量部
(シリカ粒子を含有し、アルケニル基を含有する硬化型シリコーン樹脂とSiH基を含有する硬化型シリコーン樹脂との混合物)
(iii)付加型白金触媒(CAT-PL-50T、信越化学工業(株)製):0.5重量部
(iv)メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒(混合体積比率は1:1)
【0094】
[実施例2]~[実施例8]
実施例1と同様に未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸した後、下表1の組成からなる塗布液1~7を、塗布量(乾燥後)が所定量となるようにフィルム片面にそれぞれ塗布した後にテンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、厚さ38μm(表層5μm、中間層28μm)の機能性層が設けられた積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムは、機能性層上に実施例1と同様に離型層を設け、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表2に示す。
【0095】
[実施例9]
実施例1で得られた積層ポリエステルフィルムは、オフラインにより、離型剤組成Aからなる塗布液を塗布量(乾燥後)が0.13g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、180℃で10秒間熱処理した後、離型フィルムを得た。
得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表2に示す。また、離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像を図2に示す。
【0096】
[比較例1]
ポリエステル(I)を最外層(表層)及び中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、実質単層の層構成で共押出しし、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムは、オフラインにより、不活性粒子が含まれていない離型剤組成Bからなる塗布液を塗布量(乾燥後)が0.13g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、180℃で10秒間熱処理した後、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表2に示す。
【0097】
<離型剤組成B>
(i)付加型硬化シリコーン樹脂(X62-5039、信越化学工業(株)製):15重量部
(ビニル基を含有する硬化型シリコーン樹脂とSiH基を含有する硬化型シリコーン樹脂との混合物)
(ii)オルガノポリシロキサンレジン(KS-3800、信越化学工業(株)製):5重量部
(iii)付加型白金触媒(CAT-PL-50T、信越化学工業(株)製):0.5重量部
(iv)メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒(混合体積比率は1:1)
【0098】
[比較例2]
比較例1と同様に未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸した後、下表1の塗布剤組成からなる塗布液1を塗布量(乾燥後)が所定量となるように、フィルム片面に塗布した後に、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、厚さ38μm(表層5μm、中間層28μm)の機能性層が設けられた積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層ポリエステルフィルムは、機能性層上に比較例1と同様に離型層を設け、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表2に示す。
【0099】
[比較例3]
オフラインにより、離型剤組成Cからなる塗布液を塗布量(乾燥後)が0.10g/m2になるように塗布し、130℃で10秒間熱処理した後、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの離型層表面に分布しているシリカ粒子の占有面積率及び経時剥離力の評価結果を表3に示す。また、離型フィルムの離型層表面を撮影したSEM画像を図3に示す。
【0100】
<離型剤組成C>
(i)シリカ粒子含有付加型硬化シリコーン樹脂(BY24-312、東レ・ダウコーニング(株)製):5.3重量部
(シリカ粒子を含有し、アルケニル基を含有する硬化型シリコーン樹脂とSiH基を含有する硬化型シリコーン樹脂との混合物)
(ii)付加型白金触媒(CAT-PL-50T、信越化学工業(株)製):0.11重量部
(iii)メチルエチルケトン/トルエン混合溶媒(混合重量部は70:30)
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
実施例1~8の離型フィルムは、粘着剤と貼り合わせた後、3カ月経過後も剥離力が大きくなりすぎることなく剥離力を維持しており、実用上有益な離型フィルムであった。実施例9の離型フィルムは、粘着剤と貼り合わせた後、2カ月経過後も問題の起こるような重剥離化を起こしておらず、実用上使用できる離型フィルムであった。
一方、比較例1~2の離型フィルムは、粘着剤と貼り合わせた後、1カ月経過後に剥離力が大きくなり、長期間にわたる輸送や在庫等のケースにおいて問題が生じ得る性能であった。また比較例3の離型フィルムは、作成直後から粘着剤と剥離力が大きくなり、離型フィルムとして問題が生じ得る性能であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、例えば、液晶偏光板製造用、タッチパネル製造用等の光学部材の製造用に好適に利用することができる。
図1
図2
図3