(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】綴じ部材、シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B42B 5/00 20060101AFI20220301BHJP
B42C 19/02 20060101ALI20220301BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B42B5/00
B42C19/02
B65H37/04 Z
(21)【出願番号】P 2020117105
(22)【出願日】2020-07-07
(62)【分割の表示】P 2015236865の分割
【原出願日】2015-12-03
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】森永 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 勇介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 航
(72)【発明者】
【氏名】坂野 広樹
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特許第5361858(JP,B2)
【文献】特開2013-234068(JP,A)
【文献】特開2014-037309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00- 9/06
B42C 1/00-99/00
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束を圧着して綴じる一対の綴じ部材であって、
前記綴じ部材は、該綴じ部材の長手方向に併設された
複数の綴じ領域を有し、
当該綴じ領域は3つのみであり、当該綴じ部材が有する3つの綴じ領域の各々には前記シート束を圧着する圧着歯を備え、
前記3つの綴じ領域のうち、中央部の綴じ領域の圧着歯の歯丈は、両端部の綴じ領域の圧着歯の歯丈よりも長いことを特徴とする綴じ部材。
【請求項2】
前記3つの綴じ領域のうち、前記両端部の綴じ領域を構成する複数の歯の歯数は同数である請求項1に記載の綴じ部材。
【請求項3】
前記両端部の綴じ領域の圧着歯の歯丈は、同じである請求項1
又は2に記載の綴じ部材。
【請求項4】
前記3つの綴じ領域の全てにおいて、前記圧着歯は、前記シート束がない状態で前記綴じ部材が綴じ動作した場合に当接する圧着部を有する請求項1
ないし3のいずれか1項に記載の綴じ部材。
【請求項5】
前記圧着歯の歯丈は、前記シート束の綴じ枚数に対応して設定される請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の綴じ部材。
【請求項6】
前記圧着歯の歯丈は、前記シート束を構成するシートの種類に対応して設定される請求項1ないし
4のいずれか1項に記載の綴じ部材。
【請求項7】
前記一対の綴じ部材は対向して配置され、加圧手段により平面的に加圧される、請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の綴じ部材。
【請求項8】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されてきた前記シートを集積する集積手段と、
前記集積手段上に集積されたシートの端部を整合する整合手段と、
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の一対の綴じ部材を有し、
前記整合手段によって整合されたシート束を前記一対の綴じ部材の間に挟んで前記一対の綴じ部材を互いに近接する方向に加圧し、前記シート束を綴じる綴じ手段と、を備えたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されてきた前記シートを集積する集積手段と、
前記集積手段上に集積された前記シートの端部を整合する整合手段と、
前記請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の一対の綴じ部材を有し、
前記整合手段によって整合されたシート束を前記一対の綴じ部材の間に挟んで前記一対の綴じ部材を互いに近接する方向に加圧し、前記シート束を綴じる綴じ手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
シートに画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置と、
前記画像形成装置から搬送されたシートに対して予め設定された処理を施すシート処理装置と、を備え、
当該シート処理装置が請求項
8に記載のシート処理装置である、ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、綴じ部材、シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の少資源やリサイクル性の観点から、金属針を使用しない綴じ装置が知られている。この種の装置として、例えば凹凸の歯でシート束を上下から加圧してシート束を綴じる方式(圧着綴じ)を用いたシート処理装置が、例えば特開2014-168890号公報(特許文献1)あるいは特開2014-162106号公報(特許文献2)に開示されている。また、金属の針を使用しない綴じユニット(針なし綴じユニット)と、金属の針を使用する綴じユニット(針あり綴じユニット)の両方を搭載したフィニッシャも既に知られている。
【0003】
このうち、特許文献1には、綴じ枚数毎に最適な綴じ歯を選択してシート束を圧着綴じする目的で、凹凸の高さ(歯丈)が異なる2種類の綴じ歯を保持して、綴じ枚数や紙厚などの綴じ条件によって綴じ歯を切換える技術が開示されている。また、特許文献2には、綴じ処理部の「よれ」を低減させる目的で、綴じ歯の端部付近の歯幅が中央付近の歯幅に比べて短くされていて、かつ、端部付近の歯丈が中央付近の歯丈よりも低くされている綴じ歯についての技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の技術では、綴じ歯を2種類保有するため装置が大型化してしまう。また、特許文献2記載の技術では、綴じ枚数によって綴じ力が低下してしまうことがある。特に特許文献1記載の技術では、綴じ歯は歯丈に差があり、端部付近では綴じ歯の隙間が広がっていて、噛み合うようには構成されていないので、「よれ」の低減効果はあっても、歯丈の低い部分で十分な綴じ力を確保することまでは意図されていなかった。いずれにしても圧着綴じによって綴じる場合に、綴じ枚数によって綴じ力に差が発生し、綴じ可能枚数の上下限に近い枚数では綴じ力が低くなる、という問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、圧着綴じによって綴じる場合に、綴じ枚数に対して比較的均等、かつ、綴じ力を保持するのに十分な綴じ力を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、シート束を圧着して綴じる一対の綴じ部材であって、前記綴じ部材は、該綴じ部材の長手方向に併設された複数の綴じ領域を有し、当該綴じ領域は3つのみであり、当該綴じ部材が有する3つの綴じ領域の各々には前記シート束を圧着する圧着歯を備え、前記3つの綴じ領域のうち、中央部の綴じ領域の圧着歯の歯丈は、両端部の綴じ領域の圧着歯の歯丈よりも長いことを特徴とする綴じ部材。
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、また、綴じ枚数によらず、一定の綴じ力を確保することができる。なお、前記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】本実施形態における画像形成システムの電気的なシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】フィニッシャの綴じ処理部を示す図で、同図(a)は斜視図、同図(b)は平面図である。
【
図6】針なし綴じユニットによる綴じ動作を示す説明図である。
【
図8】針なし綴じユニットの上綴じ歯と下綴じ歯の噛み合わせ状態を示す図である。
【
図9】シート束の枚数と、針なし綴じユニットの歯丈の高さによる綴じ力の関係を示す特性図である。
【
図10】異なる高さの歯丈を組み合わせた綴じ歯を示す図である。
【
図11】綴じ領域を3領域設けた綴じ歯でシート束を圧着綴じするときの綴じ動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、圧着綴じに使用される綴じ歯が、1つの綴じ歯に、歯丈の高さが異なる複数の綴じ領域を有することが特徴になっている。
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成システムのシステム構成を示す図である。同図において、画像形成システム100は、シート処理装置としてのフィニッシャ101と、画像形成装置102とからなる。フィニッシャ101は画像形成装置102のシート搬送方向下流側に連結され、1つのシステムを構成している。フィニッシャ101は針なし綴じユニット201と.針あり綴じユニット202の両者を搭載している。両者は機械的に連結されていると共に、電気的(制御的)にも連結され、フィニッシャ101の各部は画像形成装置102の制御装置によって制御される。
【0012】
画像形成装置102は、例えば電子写真方式の画像形成エンジンを備え、自身若しくは外部から供給されるシート(用紙)に、入力された画像情報に基づいて画像を形成し、画像形成済みのシートをフィニッシャ101側に搬出する。
【0013】
なお、フィニッシャ101及び画像形成装置102の内部の機械的構成は公知のものなので、詳細な説明は、ここでは省略する。
図2は、本実施形態における画像形成システム100の電気的なシステム構成を示すブロック図である。
【0014】
画像形成システム100は
図1にも示したように画像形成装置102及びフィニッシャ101と、を備えている。画像形成装置102は図示しないCPUと通信ポートを備えている。フィニッシャ101も同様にCPU110及び画像形成装置102と通信を行うための通信ポートを備えている。これにより、画像形成装置102とフィニッシャ101は通信ポートを介して接続された通信線130によって相互の通信が可能となっている。そして、この通信線130によって綴じに関するモード情報、シート情報及び画像形成装置102に関する情報を取得し、フィニッシャ101からの情報を画像形成装置102に通知する。
【0015】
CPU110には、入口センサ、温度センサなどの各種センサやスイッチの信号が入力されており、これらの情報をもとに、モータドライバへの信号を制御し、用紙搬送や用紙後処理をする各モータを駆動する。また、入口センサによって、シートがフィニッシャ101に搬送されてきたことを検出することも可能である。
【0016】
CPU110はタイマ部113を備え、入口センサによってシートを検出してからの時間を検出することが可能である。また、通信線130を通じて、フィニッシャ101にシートが搬送されてきたことを検出することも可能である。CPU110は、また、制御部と演算部を含み、制御部が命令の解釈とプログラムの制御の流れを制御し、演算部が演算を実行する。また、プログラムは記憶部115に格納され、実行すべき命令(ある数値又は数値の並び)を前記プログラムの置かれたメモリから取り出し、前記プログラムを実行する。なお、
図2のブロック図では、CPU110内部に記憶部115が存在しているが、記憶部115はCPU110の外部に別途設けても良いことは言うまでもない。
【0017】
なお、CPU110は後述の搬送ローラ231、ジョガーフェンス204a,204b、綴じ歯223などの駆動を前記プログラムに基づいて制御する。
図3は、フィニッシャ101の綴じ処理部200を示す図で、同図(a)は斜視図、同図(b)は平面図である。
【0018】
図3において、装置奥側に針なし綴じユニット201が配置され、装置手前側に針あり綴じユニット202が配置されている。針なし綴じユニット201は、スティプル針を使用せずにシート束206を綴じる機能を有する綴じ装置である。針あり綴じユニット202は、スティプル針221によってシート束206を綴じる機能を有する装置である。
【0019】
シート205は、集積手段としての図示しないスティプルトレイ(シート205に隠れて図示されない)に排紙され、集積されてシート束206となる。スティプルトレイのシート搬送方向上流側(シート後端側)には、後端揃えストッパ203a,203bが設けられている。後端揃えストッパ203a,203bは、画像形成装置102から搬送されたシート205の後端が突き当てられ、整合する基準面として機能する。これにより、シート205若しくはシート束206のシート搬送方向の位置が整合される。
【0020】
スティプルトレイのシート搬送方向と平行にジョガーフェンス204a,204bが配置されている。ジョガーフェンス204a,204bは画像形成装置102から搬送されたシート205の幅方向を整合する整合板であり、シート205の両側端に突き当たり、例えばシート205を中央基準で整合する。
【0021】
シート205は画像形成装置102から搬送され、排出された紙葉体であって。本実施形態では、例えば記録媒体としての用紙である。その他、フィルム状のシート、厚紙状のシートなど、種々の紙葉体がシートとして取り扱われる。
【0022】
シート束206は、画像形成装置102から搬送された複数枚のシート205を揃えた束である。針なし綴じユニットホームポジションセンサ211は、針なし綴じユニット201の位置を検出し、このポジションを針なし綴じユニット201のホームポジションとする。針なし綴じユニット移動ガイドレール212は、針なし綴じユニット201がシート幅方向に安定して移動可能なように、その移動をガイドするレールである。針あり綴じユニットホームポジションセンサ213は、針あり綴じユニット202の位置を検出し、このポジションをホームポジションとする。針あり綴じユニット移動ガイドレール214は、針あり綴じユニット202がシート幅方向に安定して移動可能なように、その移動をガイドするレールである。搬送ローラ231は、画像形成装置102から送られてきたシート205を整合部まで搬送し、あるいは綴じ処理後のシート束206を排紙部へ搬送するためのローラである。
【0023】
図4は針あり綴じ処理を示す説明図である。同図(a)はシート束206と針あり綴じユニット202及び針なし綴じユニット201との関係を示す斜視図、同図(b)は綴じ状態を示す図である。
【0024】
針あり綴じユニット202による、シート束206の綴じ処理では、針あり綴じユニット202が、針あり綴じユニット移動ガイドレール214に案内され、
図4(a)に示すようにシート後端に沿って移動する。そして、整合されたシート束206の後端の予め設定された箇所をスティプル針221によって綴じる。綴じた状態を
図4(b)に示す。スティプル針221によって綴じる綴じ処理自体は公知なので、ここでは詳細についての説明は省略する。
【0025】
図5は針なし綴じ処理を示す説明図で、シート束206と針あり綴じユニット202及び針なし綴じユニット201との関係を示す斜視図である。
図6は針なし綴じユニットによる綴じ動作を示す説明図である。
【0026】
針なし綴じユニット201は綴じ歯223を備え、針なし綴じユニット移動ガイドレール212に沿って
図5において矢印方向にシート束206から離間した状態で移動する。そして、綴じ位置に達すると、上綴じ歯223aと下綴じ歯223bを図示しない公知の加圧手段、例えばモータ駆動の加圧レバー(特許文献1参照)によって平面的に加圧Pし、整合されたシート束206の後端を圧着して綴じ歯跡222を形成する。圧着されたシート束206は、シートの繊維同士が絡みあうことによって綴じられる。この絡み合った状態が綴じ歯跡222としてシート束206に形成される。
【0027】
図7はシートの整合動作を示す説明図、同図(a)はシートがトレイ上に排紙された状態を示す図、同図(b)はシート後端を揃えるときの動作を示す図、同図(c)はシート側端部を揃えるときの動作を示す図である。画像形成装置102からフィニッシャ101に搬送され、フィニッシャ101内の図示しないスティプルトレイ上に排紙されたシート205は、スティプルトレイ上でシート搬送方向及びシート搬送方向と直交する方向が整合される。シート搬送方向は、スティプルトレイ上に排紙されたシート205を搬送ローラ231によってシート搬送方向とは逆の方向に搬送し、スティプルトレイのシート搬送方向後端に設けられた後端揃えストッパ203a,203bに付き当てられることによって揃えることができる。
【0028】
シート搬送方向と直交する方向は、シート205が後端揃えストッパ203a,203bに付き当てられた後、シート205の側端部側に配置された一対のジョガーフェンス204a,204bを駆動させることにより揃えることができる。これにより、スティプルトレイ上に集積されたシート束206の上にさらにシート205が載せられた新たなシート束206が、整合された状態で形成される。
【0029】
なお、シート搬送方向はいわゆるシートの長さ方向であり、シート搬送方向と直交する方向はシート幅方向である。これにより、シート束206の長さ方向と幅方向の整合が完了する。
【0030】
図8は針なし綴じユニット201の上綴じ歯223aと下綴じ歯223bの噛み合わせ状態を示す図で、同図(a)は歯丈Hが高い綴じ歯223の噛み合わせ状態を、同図(b)は歯丈Hの低い綴じ歯223の噛み合わせ状態をそれぞれ示す。また、
図9はシート束206の枚数と、
図8に示した針なし綴じユニット201の歯丈Hの高さによる綴じ力の関係を示す特性図である。
図9では、横軸はシート束206の枚数を、縦軸は綴じ力をそれぞれ示す。
【0031】
図9からシート束206の枚数が少ない場合と、枚数が多い場合で、シート束206の綴じ力が高くなる歯丈Hの高さが異なることが分かる。
図9の例では、歯丈Hが高い綴じ歯223は4~5枚、歯丈Hが低い綴じ歯223は2~3枚の場合が最も綴じる力が強い。このような特性から、圧着綴じでシート束206を綴じる場合、シート束206のシート枚数によって、歯丈Hの高さを異ならせて綴じ処理を行えば平均した綴じ力を得ることができることが分かる。そこで、シート束206の枚数に対して最適な高さの綴じ歯223を使い分けるようにすれば、シート束206のシート枚数にかかわりなく一定以上の綴じ力を確保することができる。
【0032】
しかし、1つの針なし綴じユニット201に複数種類の綴じ歯223を保持させることは、装置の大型化やコストアップに繋がる要因となる。
【0033】
そこで、本実施形態では、上綴じ歯223aと下綴じ歯223bのそれぞれに歯丈Hの違う領域を設け、両者を噛み合わせることができるようにした。
図10は異なる高さの歯丈Hを組み合わせた綴じ歯223を示す図である。同図(a)は歯丈Hの高い第1綴じ領域Aと、歯丈Hの低い第2綴じ領域Bを横に並べた例であり、同図(b)は歯丈Hの高い第1綴じ領域Aを綴じ歯223の中央部に配置し、第1綴じ領域Aの両側に歯丈Hの低い第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dを配置した例である。
【0034】
図10(a)に示すように歯丈Hの高い第1綴じ領域Aと、歯丈Hの低い第2綴じ領域Bを横に並べた場合、シート束206を綴じた時の上綴じ歯223aと下綴じ歯223bの間の噛み合い具合が一定となるよう、綴じ歯223を圧着させたときに第1綴じ領域Aと第2綴じ領域Bの圧着部Gが接するように構成している。
【0035】
一方、
図10(b)に示すように歯丈Hの高い第1綴じ領域Aを綴じ歯223の中央部に配置し、第1綴じ領域Aの両側に歯丈Hの低い第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dを配置した場合、第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dでは歯丈Hの高さは同じである。そして、第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dを合わせて、
図10(a)の第2綴じ領域Bと同じ効果を得ることができるように第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dの長さ方向の寸法が設定されている。なお、
図10(b)に示した綴じ歯構成においても、図(a)に示した綴じ歯構成と同様に、綴じ歯223を圧着させたときに第1綴じ領域Aと第2綴じ領域Bの圧着部Gが接するように構成している。
【0036】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、歯丈Hの高い綴じ領域(第1綴じ領域A)と、歯丈Hの低い綴じ領域(第2綴じ領域Bあるいは第3綴じ領域C及び第4綴じ領域D)を上綴じ歯223aと下綴じ歯223bに形成し、これらを一対の綴じ歯223として構成することにより、綴じ枚数が多いときは第1綴じ領域Aの歯丈Hの高い凹凸部で形成された綴じ歯跡222が、高い綴じ力でシート束206を結合することができる。一方、綴じ枚数が少ないときは第2綴じ領域Bあるいは第3綴じ領域C及び第4綴じ領域Dの歯丈Hの低い凹凸部で形成された綴じ歯跡222が高い綴じ力でシート束206を結合する(絡み合わせる)ことができる。
【0037】
すなわち、1つの綴じ歯223に歯丈Hの高い部分と低い部分を組み合わせて構成することによって、針なし綴じユニット201の構成を変えることなく、綴じ枚数に影響されずにシート束206を綴じることができるようになる。
【0038】
また、2種類の歯丈Hの異なる綴じ領域を有するため、各歯丈Hが対応する適用枚数を調整し、これまでよりも多くのシート束206を綴じることができる。例えば、これまで1つの凹凸形状で2~5枚までの綴じに対応していた場合、歯丈Hの低い凹凸形状で2~4枚に対応させ、歯丈Hの高い凹凸形状で4~6枚に対応できるように凹凸形状を最適化すれば、2~6枚までのシート束206を有効に綴じることができる針なし綴じユニットとなる。なお、1つの綴じ歯223に形成する綴じ領域は3種類以上になっても良い。
【0039】
また、シート枚数のみならず、シートの厚さ、シートの材質、腰の強さなどのシート種に応じて
図9に示したような歯丈Hの高さと綴じ力との関係を得ることができる。そこで、シート種についても、シート枚数と同様に歯丈Hとシート種との関係を求め、1つの綴じ歯223で複数のシート種に対応するように歯丈Hの高低の領域を設定することもできる。
【0040】
図11は、
図10(b)に示した綴じ歯223でシート束206を圧着綴じするときの綴じ動作を示す説明図である。
図11では、歯丈Hの高い第1綴じ領域Aを綴じ歯223の中央部に配置し、第1綴じ領域Aの両側に歯丈Hの低い第2綴じ領域Cと第3綴じ領域Dを配置した構成でシート束206を綴じている。
【0041】
図11に示すように上綴じ歯223aと下綴じ歯223bの中央部にそれぞれ歯丈Hの高い凹凸を配置し、両側に歯丈Hの低い凹凸を配置した構成の場合、
図11(a)の初期状態から圧着動作を開始すると、
図11(b)に示すように、歯丈Hの高い中央部の第1綴じ領域Aからシート束206に接触して綴じ処理が行われる。このとき両側の歯丈Hの低い第3綴じ領域Cと第4綴じ領域Dの凹凸部はシート束206に届いていないため、歯丈Hの高い第1綴じ領域Aではシート束206を撓ませながら噛み込んでいくことができる。
【0042】
さらに上綴じ歯223aと下綴じ歯223bを近づけていくと、歯丈Hの低い第3綴じ領域C及び第4綴じ領域Dでもシート束206を綴じ始める。このとき第3綴じ領域C及び第4綴じ領域Dの綴じ歯223の両外側はシート束206を拘束していないため、そのまま撓ませながら噛み込んでいくことができる。
【0043】
もし、歯丈Hの高低を逆にして歯丈Hの低い凹凸を中央部に、歯丈Hの高い凹凸をその両側に配置した場合、両側の歯丈Hの高い凹凸が先にシート束206を噛み始めてしまい、シート束206を拘束することになる。その後、綴じ処理を続けていくと、中央部に配置した歯丈の低い凹凸でシート束206を噛み始めたときには、シート束206が撓むことができないので、シート束206は破断してしまう。そのため、
図10(b)に示したように歯丈Hの高い凹凸を綴じ歯223の中央部に設ける必要がある。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。なお、以下の説明では、特許請求の範囲における各構成要素と本実施形態の各部とを対応させ、用語が異なる場合には、後者をかっこ書きで示す。
【0045】
(1)シート束206を加圧し、圧着して綴じる一対の綴じ部材(223a、223b)であって、綴じ部材の長手方向に併設された3つの綴じ領域(第3綴じ領域C、第1綴じ領域A、第4綴じ領域D)を有し、当該綴じ領域の各々には、シート束206を圧着する圧着部としての圧着歯224を備え、3つの綴じ領域(第3綴じ領域C、第1綴じ領域A、第4綴じ領域D)のうち、中央部の綴じ領域(第1綴じ領域A)の圧着歯224の歯丈(H)は、両端部の綴じ領域(第3綴じ領域C、第4綴じ領域D)の圧着歯224の歯丈(H)よりも長いので、1つの圧着歯224に歯丈Hの高い部分と低い部分を組み合わせて構成することによって、針なし綴じユニット201の構成を変えることなく、綴じ枚数に影響されずにシート束206を綴じることができるようになる。シート束206のシート枚数によって綴じ歯を切替える機構が不要となる。これにより、小型化及び省スペース化を図ることができる。また、これらのことから低コスト化も図ることができる。さらに、綴じ枚数に対して比較的均等、かつ、綴じ力を保持するのに十分な綴じ力を確保することができる。
【0046】
(2)前記(1)において、前記両端部の綴じ領域(第3綴じ領域Cと第4綴じ領域D)の歯丈Hを同じにすることで、シート束206を綴じる際にシート束206に生じる撓みを左右で均等にしながら綴じ処理を行うことができる。これにより、ひずみの少ない見た目のきれいな綴じ歯跡222を形成することができる。
【0047】
(3)前記(1)又は(2)において、前記3つの綴じ領域(第3綴じ領域C、第1綴じ領域A、第4綴じ領域D)の全てにおいて、圧着歯224はシート束206がない状態で前記綴じ部材(223a、223b)に綴じ動作をさせた場合に当接する圧着部(G)を有するので、シート束206のシート枚数によって綴じ歯を切替える機構が不要となる。これにより、小型化及び省スペース化を図ることができる。
【0048】
(4)前記(1)ないし(3)において、圧着歯224の歯丈Hは、シート束206の綴じ枚数に対応して設定されるので、歯丈Hの異なる綴じ領域毎に最適な綴じ可能枚数を調整し、綴じ枚数に左右されずに一定以上の綴じ力を確保することができる。また、綴じ可能枚数を多くすることができる。
【0049】
(5)前記(1)ないし(3)のいずれかにおいて、圧着歯224の歯丈Hは、シート束206を構成するシートの種類に対応して設定されるので、1つの圧着歯224で複数のシート種に対して適切な綴じ処理を施すことができ、綴じ可能なシート種の種類を増やし、綴じ処理におけるシート種の多様化に対応することが可能となる。
【0050】
(6)前記(1)ないし(3)のいずれかにおいて、一対の綴じ部材(223a、223b)は対向して配置され、加圧手段により平面的に加圧されるので、簡単な機構で針なし綴じを行うことができる。
【0051】
(7)シート205を搬送する搬送手段(搬送ローラ231)と、搬送手段(搬送ローラ231)によって搬送されてきた前記シート205を集積する集積手段(スティプルトレイ)と、前記集積手段(スティプルトレイ)上に集積された前記シート205の端部を整合する整合手段(後端揃えストッパ203a,203b、ジョガーフェンス204a,204b)と、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の綴じ歯223と、前記整合手段(後端揃えストッパ203a,203b、ジョガーフェンス204a,204b)によって整合されたシート束206を前記綴じ歯223の間に挟んで一対の綴じ部材(223a、223b)を互いに近接する方向に加圧Pし、シート束を綴じる加圧手段と、を備えたので、前記(1)で挙げた効果を奏するシート処理装置(フィニッシャ101)を提供することができる。
【0052】
(8)シート205を搬送する搬送手段(搬送ローラ231)と、搬送手段(搬送ローラ231)によって搬送されてきた前記シート205を集積する集積手段(ステップSティプルトレイ)と、前記集積手段(スティプルトレイ)上に集積された前記シート205の端部を整合する整合手段(後端揃えストッパ203a,203b、ジョガーフェンス204a,204b)と、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の綴じ歯223と、前記整合手段(後端揃えストッパ203a,203b、ジョガーフェンス204a,204b)によって整合されたシート束206を一対の綴じ部材(223a、223b)の間に挟んで一対の綴じ部材(223a、223b)を互いに近接する方向に加圧Pし、シート束を綴じる綴じ手段と、を備えたので、前記(1)で挙げた効果を奏する画像形成装置102を提供することができる。
【0053】
(9)シート205に画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成装置102と、前記画像形成装置102から搬送されたシート205に対して予め設定された処理を施す前記(7)に記載のシート処理装置(フィニッシャ101)と、を備えたので、前記(1)で挙げた効果を奏する画像形成システム100を提供することができる。
【0054】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
100 画像形成システム
101 フィニッシャ(シート処理装置)
102 画像形成装置
205 シート
206 シート束
222 綴じ歯跡
223 綴じ歯
231 搬送ローラ(搬送手段)
204a,204b ジョガーフェンス(整合手段)
203a,203b 後端揃えストッパ(整合手段)
A 第1綴じ領域
B 第2綴じ領域
C 第3綴じ領域
D 第4綴じ領域
G 圧着部
H 歯丈
P 加圧
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【文献】特開2014-168890号公報
【文献】特開2014-162106号公報