(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】新規ベンズイミダゾール誘導体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20220302BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20220302BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220302BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220302BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220302BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220302BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220302BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220302BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220302BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220302BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20220302BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20220302BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
C07D471/04 106H
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P25/00
A61P9/10 101
A61P13/08
A61P1/18
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/437
A61K31/4184
A61K31/454
(21)【出願番号】P 2017175221
(22)【出願日】2017-09-12
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】辻川 和丈
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】中山 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 明人
(72)【発明者】
【氏名】所 美雪
(72)【発明者】
【氏名】清水 忠
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/127345(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/118790(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/129674(WO,A1)
【文献】DATABASE REGISTRY on STN,2017年08月30日,RN 2122378-82-7
【文献】DATABASE REGISTRY on STN,2014年02月26日,RN 1556425-06-9
【文献】DATABASE REGISTRY on STN,2013年11月19日,RN 1476799-38-8
【文献】DATABASE REGISTRY on STN,2006年08月22日,RN 903460-06-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】
で表され
る化合物又はその医薬上許容され得る塩。
【請求項2】
式(I-a):
【化2】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子
、置換されていてもよいC
7-12
アラルキル基又は置換されていてもよいC
1-6
アルキル基を示し;
R
2aはC
1-6アルキル基を示し;
R
3aはC
7-12アラルキル基を示す]で表される化合物
又はその医薬上許容され得る塩を含む、PCA-1阻害剤。
【請求項3】
式
(I-a)で表される化合物が、下記式:
【化3】
で表される化合物である、請求項
2記載のPCA-1阻害剤。
【請求項4】
下記式:
【化4】
で表される化合物
又はその医薬上許容され得る塩を含む、PCA-1阻害剤。
【請求項5】
式(I-a):
【化5】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子
、置換されていてもよいC
7-12
アラルキル基又は置換されていてもよいC
1-6
アルキル基を示し;
R
2aはC
1-6アルキル基を示し;
R
3aはC
7-12アラルキル基を示す]で表される化合物
又はその医薬上許容され得る塩を含む、
PCA-1が関与している疾患の予防及び/又は治療薬。
【請求項6】
式
(I-a)で表される化合物が下記式:
【化6】
で表される化合物である請求項
5記載の予防及び/又は治療薬。
【請求項7】
下記式:
【化7】
で表される化合物
又はその医薬上許容され得る塩を含む、PCA-1が関与している疾患の予防及び/又は治療薬。
【請求項8】
PCA-1が関与する疾患が、がん、脳神経変性疾患、及び動脈硬化症からなる群より選択される、請求項
5~
7のいずれか1項に記載の予防及び/又は治療薬。
【請求項9】
がんが、前立腺がん、膵臓がん及び非小細胞肺がんからなる群より選択される少なくとも1種である、上記のがんに対して抗がん作用を有する、請求項
8記載の予防及び/又は治療薬。
【請求項10】
請求項
1に記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩と少なくとも1種の抗がん剤とを含んでなる抗がん用併用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ベンズイミダゾール誘導体及びその用途に関する。より詳細には、本発明は、Prostate Cancer Antigen-1(PCA-1)阻害活性を有する新規ベンズイミダゾール誘導体及び当該化合物を含有するPCA-1阻害剤、医薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
欧米において罹患率、死亡率のトップを占める前立腺がんは、本邦においても食生活の欧米化により急激な罹患率の上昇が認められている。この前立腺がんの早期がんは手術療法等で根治可能となっているが、手術療法が難しい高齢者の前立腺がんや進行がんに対してはホルモン療法が行われる。しかし、この治療中に、ホルモン療法抵抗性前立腺がんの出現が認められ、従って前立腺がんに対しては現在有効な治療法が確立されていないのが現状である。
【0003】
一方、膵臓がんは現在治療がもっとも困難ながんの一つとされている。膵臓がんにおいて腫瘍切除手術が行われても約9割が再発を来して死亡する。局所進行切除不能膵がんにはゲムシタビン塩酸塩や5-FUを、遠隔転移が認められた場合、ゲムシタビン塩酸塩を中心として多剤併用療法等が進められているが、それでも予後は中央値で4~6ヶ月である。
【0004】
また、肺がんは本邦におけるがん死亡者数のトップを占めている。なかでも非小細胞肺がんは肺がんの中でも最も患者数が多い。治療薬としてはタキサン系等の化学療法剤が使用されているが、約30%の退縮しか認められないとされる。また、分子標的薬としてゲフィチニブがEGFRに変異が認められる患者には適応となっている。
【0005】
よってこれらのがんに対する有効な治療薬の開発が切望され、早期に創薬基盤を確立する必要がある。
【0006】
前立腺がんで高発現し、正常前立腺上皮細胞や良性腫瘍である前立腺肥大では高発現が認められない新規遺伝子(Prostate Cancer Antigen-1:PCA-1)が報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。PCA-1の発現状況を前立腺がんの診断に用いる方法(特許文献1)やPCA-1の発現又は機能を抑制する化合物を有効成分として含むアポトーシス促進剤、細胞増殖阻害剤、がんの予防・治療剤等(特許文献2)が報告されている。またPCA-1は膵臓がん(特許文献3)や非小細胞肺がん(非特許文献3)においても高発現している。これらのがん細胞におけるPCA-1発現をsiRNAを用いて抑制した結果、前立腺がん細胞(特許文献2)、膵臓がん細胞(特許文献3)、非小細胞肺がんの顕著な増殖抑制作用が認められた(非特許文献3)。また、がん細胞をマウスに移植して形成させた腫瘍は、PCA-1に対するsiRNA投与により退縮が認められた。これらの結果より、PCA-1が前立腺がん、膵臓がん等のがん治療の新たな分子標的となることが示唆されている。
【0007】
また、PCA-1より脱メチル化されたtRNAは蛋白翻訳効率を上昇させることから、PCA-1は異常タンパク質がその発症原因となり得る疾患(例、脳神経変性疾患、動脈硬化)に対しても有用である。
【0008】
一方、下記構造を有するベンズイミダゾール誘導体が報告されている(特許文献4、5)が、いずれも、PCA-1の酵素活性に及ぼす作用については知られていない。
【0009】
【0010】
また、本発明者らは、下記構造を有するベンズイミダゾール誘導体が優れたPCA-1阻害活性を有することを報告している(特許文献6)。
【0011】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2006/098464号パンフレット
【文献】国際公開第2007/015587号パンフレット
【文献】特開2011-1286号公報
【文献】米国特許第2895955号明細書
【文献】英国特許第813866号明細書
【文献】日本国特許5854390号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】第123回日本薬学会年会要旨集4、p.15,2003
【文献】Konishi N et al., Clin Cancer Res. 2005 Jul 15;11(14):5090-7.
【文献】Tasaki M et al., Br J Cancer. 2011 104(4):700-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、がん、特に前立腺がん、膵臓がん、非小細胞肺がんといった有効な治療方法が確立されていない、及び/又は予後不良ながんに有効な化合物を提供すること、及び当該化合物を有効成分として含有する抗がん剤等を提供することを目的とする。さらに、本発明は、種々の疾患に対する新規な治療方法の標的となり得るPCA-1を阻害し得る化合物を提供すること、及び当該化合物の医薬用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。具体的には、PCA-1が有するメチル化シトシンを脱メチル化する酵素活性を測定するスクリーニング系を用いて当該酵素活性を測定するのに加え、前立腺がん細胞の増殖に対する抑制効果の測定、Xenograftモデルを用いた腫瘍体積の経時変化の測定、経口吸収性といったインビトロ及びインビボの両面からの活性を調べ有益な一連の化合物を創製することに成功して本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、以下を提供する。
[1]式(I):
【0017】
【0018】
[式中、
R1は水素原子、-SO2NR’R’’(式中、R’及びR’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
R2は置換基を示し;
R3は水素原子又は置換基を示し;
R2とR3は一緒になって環を形成してもよい;
但し、R2とR3が環を形成しない場合は、R1は-SO2NR’R’’を示す]で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[2]式(I-a):
【0019】
【0020】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し;
R2aはC1-6アルキル基を示し;
R3aはC7-12アラルキル基を示す]で表される、
上記[1]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[3]Ra’及びRa’’が同一又は異なって水素原子、置換されていてもよいC7-12アラルキル基又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である、
上記[2]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[4]下記式:
【0021】
【0022】
で表される上記[1]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[5]式(I-b):
【0023】
【0024】
[式中、
R1bは水素原子、-SO2NRb’Rb’’(式中、Rb’及びRb’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
Xは-N(R)-、C1-6アルキレン基、-O-、-S-又は-S(O)2-を示し;
Rは置換基を示す]で表される上記[1]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[6]R1bが水素原子である、上記[5]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[7]R1bが-SO2NRb’Rb’’であって、Rb’及びRb’’が同一又は異なって水素原子、C1-6アルキル基、又はC3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基で置換されていてもよいC7-12アラルキル基である、上記[5]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[8]R1bがハロゲン原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、又はニトロ基である、上記[5]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[9]RがC1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C7-12アラルキル基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C3-6シクロアルキル-カルボニル基、C6-10アリール-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-10アリールスルホニル基である、上記[5]~[8]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[10]下記式:
【0025】
【0026】
で表される上記[1]記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩。
[11]式(I):
【0027】
【0028】
[式中、
R1は水素原子、-SO2NR’R’’(式中、R’及びR’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
R2は置換基を示し;
R3は水素原子又は置換基を示し;
R2とR3は一緒になって環を形成してもよい;
但し、R2とR3が環を形成しない場合は、R1は-SO2NR’R’’を示す]で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を含む、PCA-1阻害剤。
【0029】
[12]式(I)で表される化合物が、式(I-a):
【0030】
【0031】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し;
R2aはC1-6アルキル基を示し;
R3aはC7-12アラルキル基を示す]で表される化合物である、上記[11]記載のPCA-1阻害剤。
[13]Ra’及びRa’’が同一又は異なって水素原子、置換されていてもよいC7-12アラルキル基又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である、
上記[12]記載のPCA-1阻害剤。
[14]式(I)で表される化合物が、下記式:
【0032】
【0033】
で表される化合物である、上記[11]記載のPCA-1阻害剤。
[15]式(I)で表される化合物が、式(I-b):
【0034】
【0035】
[式中、
R1bは水素原子、-SO2NRb’Rb’’(式中、Rb’及びRb’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
Xは-N(R)-、C1-6アルキレン基、-O-、-S-又は-S(O)2-を示し;
Rは置換基を示す]で表される化合物である、上記[11]記載のPCA-1阻害剤。
[16]R1bが水素原子である、上記[15]記載のPCA-1阻害剤。
[17]R1bが-SO2NRb’Rb’’であって、Rb’及びRb’’が同一又は異なって水素原子、C1-6アルキル基、又はC3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基で置換されていてもよいC7-12アラルキル基である、上記[15]記載のPCA-1阻害剤。
[18]R1bがハロゲン原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、又はニトロ基である、上記[15]記載のPCA-1阻害剤。
[19]RがC1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C7-12アラルキル基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C3-6シクロアルキル-カルボニル基、C6-10アリール-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-10アリールスルホニル基である、上記[15]~[18]のいずれかに記載のPCA-1阻害剤。
[20]式(I)で表される化合物が下記式:
【0036】
【0037】
で表される化合物である上記[11]記載のPCA-1阻害剤。
[21]式(I):
【0038】
【0039】
[式中、
R1は水素原子、-SO2NR’R’’(式中、R’及びR’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
R2は置換基を示し;
R3は水素原子又は置換基を示し;
R2とR3は一緒になって環を形成してもよい;
但し、R2とR3が環を形成しない場合は、R1は-SO2NR’R’’を示す]で表される化合物又はその医薬上許容され得る塩を含む、
PCA-1が関与している疾患の予防及び/又は治療薬。
[22]式(I)で表される化合物が、式(I-a):
【0040】
【0041】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し;
R2aはC1-6アルキル基を示し;
R3aはC7-12アラルキル基を示す]で表される化合物である、
上記[21]記載の予防及び/又は治療薬。
[23]Ra’及びRa’’が同一又は異なって水素原子、置換されていてもよいC7-12アラルキル基又は置換されていてもよいC1-6アルキル基である、
上記[22]記載の予防及び/又は治療薬。
[24]式(I)で表される化合物が下記式:
【0042】
【0043】
で表される化合物である上記[21]記載の予防及び/又は治療薬。
[25]式(I)で表される化合物が式(I-b):
【0044】
【0045】
[式中、
R1bは水素原子、-SO2NRb’Rb’’(式中、Rb’及びRb’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
Xは-N(R)-、C1-6アルキレン基、-O-、-S-又は-S(O)2-を示し;
Rは置換基を示す]で表される化合物である、上記[21]記載の予防及び/又は治療薬。
[26]R1bが水素原子である、上記[25]記載の予防及び/又は治療薬。
[27]R1bが-SO2NRb’Rb’’であって、Rb’及びRb’’が同一又は異なって水素原子、C1-6アルキル基、又はC3-6シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基で置換されていてもよいC7-12アラルキル基である、上記[25]記載の予防及び/又は治療薬。
[28]R1bがハロゲン原子、C1-6アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、又はニトロ基である、上記[25]記載の予防及び/又は治療薬。
[29]RがC1-6アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C7-12アラルキル基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C3-6シクロアルキル-カルボニル基、C6-10アリール-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、又はC1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-10アリールスルホニル基である、上記[25]~[28]のいずれかに記載の予防及び/又は治療薬。
[30]式(I)で表される化合物が、下記式:
【0046】
【0047】
で表される化合物である上記[21]記載の予防及び/又は治療薬。
[31]PCA-1が関与する疾患が、がん、脳神経変性疾患、及び動脈硬化症からなる群より選択される、上記[21]~[30]のいずれかに記載の予防及び/又は治療薬。
[32]がんが、前立腺がん、膵臓がん及び非小細胞肺がんからなる群より選択される少なくとも1種である、上記のがんに対して抗がん作用を有する、上記[31]記載の予防及び/又は治療薬。
[33]上記[1]~[10]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容され得る塩と少なくとも1種の抗がん剤とを含んでなる抗がん用併用剤。
以下、式(I)で表される化合物(化合物(I)とも称する)及びその医薬上許容される塩を本発明化合物と総称する場合がある。
【発明の効果】
【0048】
本発明化合物は優れたPCA-1の酵素活性阻害作用を有しPCA-1が関与している疾患の予防及び/又は治療に有用である。さらに本発明化合物は、in vitroで前立腺がん細胞の増殖を抑制し、Xenograftモデルにおいて腫瘍体積の増加を抑制することができるので、抗がん剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】試験例3の結果を示す。DU145細胞xenograftモデルにおける本発明化合物(実施例1及び実施例2)の抗腫瘍作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味を有する。
本明細書において使用する用語を以下に定義する。
【0051】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル等が挙げられる。
【0053】
「C3-6シクロアルキル基」としては、炭素数3~6の環状のアルキル基を意味し、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0054】
「C6-10アリール基」とは、炭素数6~10のアリール基を意味し、具体的には、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0055】
「C7-12アラルキル基」とは、炭素数7~12のアリールアルキル基(アリール基で置換されているアルキル基)を意味し、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0056】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1~6の直鎖又は分岐状のアルコキシ基を意味し、具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、2-ペンチルオキシ、3-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、2-ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0057】
「C1-6アルキル-カルボニル基」とは、C1-6アルキル基(上述)で置換されたカルボニル基を意味し、具体的には、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert-ブチルカルボニル等が挙げられる。
【0058】
「C3-6シクロアルキル-カルボニル基」とは、C3-6シクロアルキル基(上述)で置換されたカルボニル基を意味し、具体的には、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等が挙げられる。
【0059】
「C6-10アリール-カルボニル基」とは、C6-10アリール基(上述)で置換されたカルボニル基を意味し、具体的には、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル等が挙げられる。
【0060】
「C1-6アルコキシ-カルボニル基」とは、C1-6アルコキシ基(上述)で置換されたカルボニル基を意味し、具体的には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0061】
「C1-6アルキルスルホニル基」とは、C1-6アルキル基(上述)で置換されたスルホニル基を意味し、具体的には、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル等が挙げられる。
【0062】
「C6-10アリールスルホニル基」とは、C6-10アリール基(上述)で置換されたスルホニル基を意味し、具体的には、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル等が挙げられる。
【0063】
「C1-6アルキレン基」とは、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、エチルエチレン、イソプロピレン、イソブチレン、s-ブチレン、t-ブチレン、イソペンチレン、ネオペンチレンの直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6のアルキレンを挙げることができる。
【0064】
「C1-6アルキル基」、「C6-10アリール基」、及び「C7-12アラルキル基」が有しても良い置換基としては、
(1)ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素;好ましくはフッ素)、
(2)ハロゲン原子で置換されていてもよい、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1-6アルキル基など)、
(3)シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-6シクロアルキル基など)、
(4)低級アルキニル基(例えば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギルなどのC2-6アルキニル基など)、
(5)低級アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニルなどのC2-6アルケニル基など)、
(6)C1-6アルコキシ基(例えば、メトキシ)で置換されていてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、フェネチルなどのC7-12アラルキル基など)、
(7)アリール基(例えば、フェニル、ナフチルなどのC6-10アリール基など、好ましくはフェニル基)、
(8)ハロゲン原子で置換されていてもよい、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシなどのC1-6アルコキシ基、トリフルオロメトキシなど)、
(9)アリールオキシ基(例えば、フェノキシなどのC6-10アリールオキシ基など)、
(10)ハロゲン原子で置換されていてもよい、ホルミル基または低級アルカノイル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルなどのC1-6アルキル-カルボニル基、シクロアルキルカルボニルなどのC3-6シクロアルキル-カルボニル基など)、
(11)アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル、ナフトイルなどのC6-10アリール-カルボニル基など)、
(12)ホルミルオキシ基または低級アルカノイルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシなどのC1-6アルキル-カルボニルオキシ基など)、
(13)アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシなどのC6-10アリール-カルボニルオキシ基など)、
(14)カルボキシル基、
(15)低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニルなどのC1-6アルコキシ-カルボニル基など)、
(16)アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニルなどのC7-12アラルキルオキシ-カルボニル基など)、
(17)カルバモイル基、
(18)モノ-、ジ-またはトリ-ハロゲノ-低級アルキル基(例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチルなどのモノ-、ジ-またはトリ-ハロゲノ-C1-6アルキル基など)、
(19)オキソ基、
(20)アミジノ基、
【0065】
(21)イミノ基、
(22)アミノ基、
(23)モノ-低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノなどのモノ-C1-6アルキルアミノ基など)、
(24)ジ-低級アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノなどのジ-C1-6アルキルアミノ基など)、
(25)置換基を有していてもよい、炭素原子と1個の窒素原子に加えて窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれたヘテロ原子を1~3個含んでいてもよい3~8員の含窒素複素環基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、アミノ基、モノ-C1-6アルキルアミノ基、ジ-C1-6アルキルアミノ基、カルボキシル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、カルバモイル基、モノ-C1-6アルキル-カルバモイル基、ジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、C6-10アリール-カルバモイル基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、およびハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニルアミノ基、オキソ基などから選ばれる1~5個の置換基を有していてもよい、炭素原子と1個の窒素原子に加えて窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれたヘテロ原子を1~3個含んでいてもよい3~8員の含窒素複素環基;例えば、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピリジル、ピロリニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イミダゾリジニル、ピペリジル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニルなど)、
(26)アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなどのC1-3アルキレンジオキシ基など)、
(27)ヒドロキシ基、
(28)ニトロ基、
(29)シアノ基、
(30)メルカプト基、
(31)スルホ基、
(32)スルフィノ基、
(33)ホスホノ基、
(34)スルファモイル基、
(35)モノ-低級アルキルスルファモイル基(例えば、N-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N-プロピルスルファモイル、N-イソプロピルスルファモイル、N-ブチルスルファモイルなどのモノ-C1-6アルキルスルファモイル基など)、
(36)ジ-低級アルキルスルファモイル基(例えば、N,N-ジメチルスルファモイル、N,N-ジエチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N,N-ジブチルスルファモイルなどのジ-C1-6アルキルスルファモイル基など)、
(37)低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオなどのC1-6アルキルチオ基など)、
(38)アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオなどのC6-10アリールチオ基など)、
(39)低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニルなどのC1-6アルキルスルフィニル基など)、
(40)アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなどのC6-10アリールスルフィニル基など)、
【0066】
(41)置換基(例、ハロゲン原子)を有していてもよい低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニルなどのC1-6アルキルスルホニル基など)、
(42)置換基(例、C1-6アルキル基)を有していてもよいアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニルなどのC6-10アリールスルホニル基など)、
(43)低級アルキルカルボニルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノなどのC1-6アルキルカルボニルアミノ基など)、
(44)アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノなどのC7-12アラルキルアミノ基など)、
(45)置換基(例、ハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキル基)を有していてもよいアルキルスルホニルアミノ基(例えば、フェニルスルホニルアミノ、ナフチルスルホニルアミノなどのC6-10アリールスルホニルアミノ基など)、
などからなる群(本明細書中、置換基群Aという)から選択される置換基が用いられる。
【0067】
以下、式(I)で表される化合物について説明する。尚、特に記載のない限り、各基の定義は上述したものと同義である。
【0068】
【0069】
式(I)において、R1は水素原子、-SO2NR’R’’(式中、R’及びR’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;R2は置換基を示し;R3は水素原子又は置換基を示し;R2とR3は一緒になって環を形成してもよい;
但し、R2とR3が環を形成しない場合は、R1は-SO2NR’R’’を示す。
ここで「置換基」としては上記置換基群Aとして例示されたものが挙げられる。
R2とR3が環を形成しない場合、式(I)で表される化合物の好ましい一態様は下記式(I-a)で表わすことができる。
【0070】
【0071】
[式中、
Ra’及びRa’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し;
R2aはC1-6アルキル基を示し;
R3aはC7-12アラルキル基を示す]。
Ra’及びRa’’における「置換基」としては、上記置換基群Aとして例示されたものが挙げられるが、好ましくは置換されていてもよいC7-12アラルキル基(例、ベンジル、メトキシベンジル)、又は置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、tert-ブチル)である。
R2aは好ましくはメチルである。
R3aは好ましくはベンジルである。
【0072】
式(I-a)で表される化合物の好ましい例としては下記化合物が挙げられる。
【0073】
【0074】
R2とR3が環を形成する場合、式(I)で表される化合物の好ましい一態様は下記式(I-b)で表わすことができる。
【0075】
【0076】
[式中、
R1bは水素原子、-SO2NRb’Rb’’(式中、Rb’及びRb’’は同一又は異なって水素原子又は置換基を示し、一緒になって環を形成してもよい)又は置換基を示し;
Xは-N(R)-、C1-6アルキレン基、-O-、-S-又は-S(O)2-を示し;
Rは置換基を示す]
Rb’及びRb’’における「置換基」としては、上記置換基群Aとして例示されたものが挙げられるが、好ましくはC1-6アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル)、C3-6シクロアルキル基(例、シクロヘキシル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)で置換されていてもよいC7-12アラルキル基(例、ベンジル)が挙げられる。
Rb’及びRb’’が一緒になって形成する環としてはピペリジン環が挙げられる。
R1bにおける「置換基」としては、上記置換基群Aとして例示されたものが挙げられるが、好ましくはハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、C1-6アルキル基(例、メチル)、ハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)及びニトロ基が挙げられる。
Xにおける「C1-6アルキレン基」としては、好ましくは、メチレン、エチレン、イソプロピレンが挙げられる。
Rにおける「置換基」としては、上記置換基群Aとして例示されたものが挙げられるが、好ましくは、C1-6アルキル基(例、イソプロピル)、C3-6シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、C7-12アラルキル基(例、ベンジル)、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基(例、アセチル、tert-ブチルカルボニル)、C3-6シクロアルキル-カルボニル基(例、シクロヘキシルカルボニル)、C6-10アリール-カルボニル基(例、フェニルカルボニル)、C1-6アルコキシ-カルボニル基(例、tert-ブトキシカルボニル)、ハロゲン原子(例、塩素原子、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル)又はC1-6アルキル基(例、メチル)で置換されていてもよいC6-10アリールスルホニル基(例、フェニルスルホニル)が挙げられる。
【0077】
式(I-b)で表される化合物の好ましい例としては下記化合物が挙げられる。
【0078】
【0079】
式(I-a)で表される化合物、及び式(I-b)で表される化合物を含め式(I)で表される化合物を化合物(I)と称する場合がある。
【0080】
化合物(I)の塩としては、医薬上許容され得る塩等が挙げられ、例えば、トリフルオロ酢酸、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ホスホン酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、硫酸等の酸との酸付加塩;例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩;例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0081】
化合物(I)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も、異性体の混合物も化合物(I)に包含される。例えば、化合物(I)に光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も化合物(I)に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単品として得ることができる。また、化合物(I)には、互変異性体等の構造異性体及び幾何異性体が存在し、かかる異性体も本発明の範囲内である。
【0082】
互変異性体としては、例えば、下記の構造が挙げられる。
【0083】
【0084】
(式中、各記号の定義は前述と同義)
【0085】
化合物(I)は、結晶であっても無晶形であってもよい。化合物(I)が結晶である場合、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても化合物(I)に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
【0086】
化合物(I)は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、無溶媒和物であってもよく、いずれも化合物(I)に包含される。
【0087】
化合物(I)は、同位元素(例、3H,14C,35S,125I等)等で標識されていてもよい。
【0088】
本発明化合物は、Prostate Cancer Antigen-1(PCA-1)結合活性を有し、PCA-1の酵素活性を阻害する作用を有する。PCA-1は、前立腺がんで特異的に高発現し、PCA-1遺伝子はDNA,RNAアルキル化損傷修復酵素である大腸菌蛋白質AlkBと高い相同性を有することから、ヒトAlkBホモログ3(human AlkB homolog 3:hALKBH3)とも呼ばれ、AlkB同様DNA,RNA脱メチル化を触媒することが確認されている。PCA-1の酵素活性を阻害するとは、PCA-1が有するDNA,RNA脱メチル化反応を直接的及び/又は間接的に阻害することであり、例えばPCA-1に特異的に結合することによって、酵素活性を阻害する。当該酵素活性は、当分野で通常実施されている方法に準じて、あるいは当該方法を必要に応じて改変することによって測定することができる。例えば、メチル化された基質DNAを用いてその脱メチル化の程度を測定することによって評価することができる。
【0089】
さらに、本発明化合物は、細胞(特にがん細胞)に対して増殖阻害活性を有する。本発明化合物が阻害作用を示すがん細胞としては前立腺がん細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん細胞、腎がん細胞、膀胱がん細胞等が挙げられるが、それらに限定されない。好ましくはDU145(前立腺がん細胞)、PC-3(前立腺がん細胞)、Panc-1(膵臓がん細胞)、Mia-Paca-2(膵臓がん細胞)、A549(非小細胞肺がん細胞)、H520(非小細胞肺がん細胞)等である。
【0090】
本発明化合物の有する優れたPCA-1阻害活性及び/又はがん細胞増殖阻害活性により、本発明化合物は、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等)に対し、PCA-1がその発症や進行に関与する疾患(発症又は進行が促進される疾患)の予防又は治療薬として有用である。
このような疾患としては、例えば、がん(例、前立腺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん)、脳神経変性疾患(例、アルツハイマー、パーキンソン)、動脈硬化症等が挙げられる。
【0091】
本発明化合物を有効成分として含有する医薬(例えば抗がん剤等)中における本発明化合物の含有量は製剤全体に対して通常、約0.01~約99.9重量%、好ましくは約0.1~約50重量%である。
【0092】
本発明化合物の投与量は、年令、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
投与量は対象疾患、症状、投与対象、投与方法等によって異なるが、例えば、本発明化合物を化合物(I)の量として、1日量約0.1~100mg/kg(体重)程度、好ましくは約1~10mg/kg(体重)程度、更に好ましくは約1~3mg/kg(体重)程度を1回又は2ないし3回に分けて投与するのが好ましい。
【0093】
本発明化合物は、対象となる疾患に応じて、他の薬剤と組み合せて用いることができる。これらの併用薬剤は低分子化合物であっても良く、また高分子の蛋白、ポリペプチド、抗体あるいはワクチンなどでも良い。この場合、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、投与時に本発明化合物と併用薬剤とが組み合わされていればよい。例えば、シスプラチン、ゲムシタビン、カルボプラチン、タキソール、タキソテール、メトトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン等、本発明化合物とは異なる作用機序によって抗がん作用を示す他の抗がん剤と併用が可能である。
【0094】
本発明化合物は、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤;シロップ剤、注射剤等の液状製剤;貼付剤、軟膏剤、硬膏剤等の経皮吸収剤;吸入剤;坐剤として、適宜製剤化することができる。
本発明化合物を含有する医薬は、経口又は非経口投与され、上記した化合物を1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0095】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用されている各種有機あるいは無機担体物質を用いることができる。具体的には、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等を配合することができる。又、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0096】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0097】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
【0098】
結合剤の例としては、結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0099】
崩壊剤の例としては、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
【0100】
溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。
【0101】
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0102】
懸濁化剤の例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0103】
等張化剤の好適な例として、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。
【0104】
緩衝剤の好適な例として、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤の好適な例として、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
【0105】
防腐剤の好適な例として、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
着色剤の好適な例として、例えばタール色素、カラメル、三二酸化鉄、酸化チタン、リボフラビン類等が挙げられる。
甘味剤の好適な例として、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップ等が挙げられる。
【0106】
製造法
本発明の式(I)で表される化合物、その異性体、溶媒和物及びそれらの医薬上許容され得る塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。例えば以下の合成法に従って製造することができるが、これらに限定されるものではなく、所望に応じて適宜修飾できる。かかる修飾としては、アルキル化、アシル化、アミノ化、イミノ化、ハロゲン化、還元、酸化等が挙げられ、通常当分野で用いられる反応又は方法が利用される。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料もしくは中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。保護基の化学的特性、その導入の手法、及びその除去は例えばT. Greene and P. Wuts “Protective Groups in Organic Synthesis” (3rded.), John Wiley & Sons NY (1999)に詳述されている。
【0107】
原料化合物は、特に述べない限り、市販されているものを容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法又はこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
【0108】
又、各反応および原料化合物合成の各反応において、反応中に一般的に知られる溶媒を用いる場合がある。
一般的に知られる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ピリジン、ルチジン等の芳香族へテロ環化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化物、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2,2-ジメチルエタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の炭化水素化合物、ギ酸、酢酸等のカルボン酸類、あるいは、水等が挙げられる。
又、反応において用いられる溶媒は、単一の溶媒を用いる場合も、2種類から6種類の溶媒を混合して用いる場合もある。
又、反応において、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等のアミン類や水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等の塩基を共存させて行なう場合がある。
又、反応において、例えば、塩酸、硫酸、酢酸等の酸を共存させて行なう場合がある。
【0109】
本発明化合物の合成スキームを以下に示す(詳細な反応は実施例に準じる)。尚、スキーム中、具体的な基、化合物で記載されている場合があるが、代替可能な基、化合物が用いられ得ることは当業者には明らかである。
製法1:式(I)で表される化合物が式(I-a)で表される化合物である場合
【0110】
【0111】
式中、Etはエチルを意味し、それ以外の各記号の定義は上述の通りである。
工程1はスルホニル基を導入する工程である。当該工程はハロゲン化スルホン酸(例、塩化スルホン酸)等の試薬を作用させることにより実施することができる。
工程2は工程1で得られたスルホニル基との反応を介して置換アミノ基を導入する工程である。当該工程は所望の置換アミンを塩基の存在下作用させることにより実施することができる。
工程3及び4は、ベンズイミダゾール骨格にヒドラジノ基を導入する工程である。当該反応は塩化ホスホリル等の塩素化剤を用いて塩素化した後、ヒドラジンを作用させることにより実施することができる。
工程5は、ヒドラジン誘導体とケトンとの反応よりさらに環を形成する工程である。
いずれも当分野で通常実施される方法及びそれらを適宜組み合わせて実施される。
製法2:式(I)で表される化合物が式(I-b)で表される化合物である場合
【0112】
【0113】
式中、Etはエチルを意味し、それ以外の各記号の定義は上述の通りである。
工程1は、環化反応を経てベンズイミダゾロン骨格を形成する工程である。当該環化反応にはカルボニルジイミダゾール(CDI)等の試薬を作用させることにより実施することができる。
工程2及び3は、ベンズイミダゾール骨格にヒドラジノ基を導入する工程である。当該反応は塩化ホスホリル等の塩素化剤を用いて塩素化した後、ヒドラジンを作用させることにより実施することができる。
工程4は、ヒドラジン誘導体とケトンとの反応よりさらに環を形成する工程である。
いずれも当分野で通常実施される方法及びそれらを適宜組み合わせて実施される。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。また、使用する試薬及び材料は特に限定されない限り商業的に入手可能である。物理化学的特性のデータは以下の方法、装置によって測定した。
1H-NMRスペクトルは、重クロロホルム(CDCl3)、ジメチルスルホキシド-d6(DMSO-d6)、重メタノール(CD3OD)又はacetオン-d6を溶媒として用いJEOL JNM-ECX400スペクトルメーター(400MHz)又はAgilent NMR system PS 600システム(600MHz)で記録した。
化学シフトは、テトラメチルシラン(δ=0.00)を内部標準としてδ値(ppm)で示し、カップリング定数(J)をHzで示す。
本明細書中で用いられるシグナル多重度の略号は下記の意味を示す。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
q:カルテット(quartet)
m:マルチプレット(multiplet)
br:ブロード(broad)
dd:ダブル ダブレット(double doublet)
IRスペクトルは、JEOL FT-IR 4100スペクトルメーターで記録した。
ESI-MSスペクトルはBruker micrOTOF-Q質量分析計で測定した。
全ての反応は、薄層クロマトグラフィーでモニタリングした。薄層クロマトグラフィーは、厚さ0.25mmのシリカゲルプレート(E. Merck silica gel plates 60 F254)上で実施し、発色試薬としてUV光照射、ヨード処理あるいは加熱条件下での5%リンモリブデン酸エタノール溶液処理を用いた。
合成させて化合物の純度は、以下の条件で実施したTOSOH LC-8020システムによって測定した:YMC-Pack Pro C18逆相カラム、150mm x 4.6mm(5μm);溶媒:メタノール/0.1%TFA水溶液(適当な勾配条件)、流速:1mL/min;カラム温度:25℃;UV検出器:254nm
【0115】
実施例1
(1)5-メチル-1,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-オン
【0116】
【0117】
4-メチル-1,2-フェニルジアミン(16 g, 0.205 mol)のテトラヒドロフラン(160 mL)溶液に1,1’-カルボニルジイミダゾール(23.4 g, 0.225 mol)のジクロロメタン(160 mL)溶液を滴下して加えた。周囲温度で8時間撹拌後、反応混合物にジイソプロピルエーテル(300 mL)を添加した。得られた沈殿を濾過により回収した。沈殿をジイソプロピルエーテルで洗浄し真空中で乾燥して標題化合物(17.3 g, 89%)を得た。
ESI-HRMS calcd. for C8H8N2ONa ([M+Na]+) 171.0529; found:171.0529.
1H-NMR (DMSO-d6) δ 2.27(3H, s), 6.70-6.81(3H, m), 10.46(2H, br. s).
(2)2-クロロ-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール
【0118】
【0119】
5-メチル-1,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-オン(17.3 g, 116 mmol)及びオキシ塩化リン(108 mL, 1.16 mol)の混合物を90℃で3時間撹拌した。周囲温度まで冷却した後、反応混合物をクロロホルム(100 mL)に注意深く添加し生じた沈殿を濾過により回収した。沈殿物を飽和NaHCO3 aq.(50 mL)及び酢酸エチル(50 mL)の混合物に添加した。分離した有機相を水及び食塩水で洗浄しMgSO4で乾燥した。濾過後、濾液を減圧蒸留した。得られた沈殿物を濾過により回収し、首尾よくイソプロピルエーテルで洗浄して標題化合物(12.4 g, 64 %)を得た。
ESI-HRMS calcd. for C8H8ClN2 ([M+H]+) 167.0371; found 167.0390.
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 2.40 (3H, s), 7.00-7.06 (1H, m), 7.29 (1H, s), 7.39 (1H, d, J = 8.2 Hz).
(3)2-ヒドラジニル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール
【0120】
【0121】
2-クロロ-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(12.4 g, 74.3 mmol)及びヒドラジン1水和物(37 mL, 743 mmol)の混合物を100℃で6時間撹拌した。周囲温度まで冷却後、反応混合物に水(40 mL)を添加した。氷冷下撹拌した後、生じた沈殿物を濾過により回収した。沈殿物を水で5回洗浄し、次いで真空中で乾燥して2-ヒドラジニル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(10.3 g, 85%)を得た。
ESI-HRMS calcd. for C8H11N4([M+H]+) 163.0978; found m/z 163.0985.
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 2.30 (3H, s), 4.39 (2H, br. s), 6.63-6.70 (1H, m), 6.91-6.94 (1H, m), 6.97-7.01 (1H, m), 7.69 (1H, br. s), 10.87 (1H, br. s).
(4)5-ベンジル-2-(5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3-オール
【0122】
【0123】
2-ヒドラジニル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(1.37 g, 8.40 mmol)及び1-ベンジル-4-オキソピペリジン-3-カルボン酸エチル塩酸塩(2.50 g, 8.40 mmol)の酢酸(10 mL)中の混合物を周囲温度で12時間撹拌した。反応混合物を水(30 mL)に注ぎ、周囲温度で撹拌した。生じた沈殿を濾過により回収し、水で洗浄した。沈殿物をエタノール/水(1/1)の混液で洗浄して標題化合物(1.12 g, 37%)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 2.47 (3H, s), 3.03 (2H, t, J = 6.4 Hz), 4.03 (2H, br. s), 4.48 (2H, s), 7.24 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.42 (1H, s), 7.48 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.50-7.59 (5H, m);
IR (KBr): 3389, 3208, 1654, 1617, 1562, 1515, 1489, 1456, 1139, 1005 cm-1;
ESI-HRMS (negative ion): calcd for C21H20N5O ([M-H]-) 358.1668 ; found 358.1672;
Melting point: 145-148℃.
【0124】
【0125】
実施例2
(1)2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホニルクロライド
【0126】
【0127】
クロロスルホン酸(13 mL)の溶液に2-ヒドロキシベンゾイミダゾール(8.00 g, 41.2 mmol)を10回に分けて氷冷下1時間にわたって添加した。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を氷冷下、水に添加した。反応混合物を濾過し水で洗浄し減圧乾燥して標題化合物(10.8 g, 77%)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 6.84 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.17 (1H, d, J = 1.4 Hz), 7.23 (1H, dd, J = 8.3 and 1.4 Hz), 10.64 (1H, s), 10.68 (1H, s).
(2)N-シクロヘキシル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド
【0128】
【0129】
2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホニルクロライド(5.00 g, 21.5 mmol)のDMF(50 mL)溶液にトリエチルアミン(6.00 mL, 43.0 mmol)及びシクロヘキシルアミン(4.90 mL, 43.0 mmol)を氷冷下で添加した。室温で2時間撹拌後、反応混合物を氷冷下、1N HCl(100 mL)に添加し、生じた沈殿を濾過により回収した。沈殿物を水で洗浄し、次いで、真空中で乾燥して標題化合物(4.63 g, 73%)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 0.85-1.15 (5H, m), 1.34-1.43 (1H, m), 1.44-1.60 (4H, m), 2.75-2.90 (1H, m), 7.04 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.32 (1H, d, J = 1.4 Hz), 7.42 (1H, dd, J = 8.4 and 1.4 Hz), 7.44 (1H, d, J = 7.6 Hz), 10.96 (1H, s), 11.04 (1H, s).
(3)2-クロロ-N-シクロヘキシル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド
【0130】
【0131】
N-シクロヘキシル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド(2.63 g, 11.3 mmol)、塩化ホスホリル(10 mL, 113 mmol)及びDMF(0.5 mL)の混合物を110℃で24時間撹拌した。周囲温度まで冷却した後、混合物に1N NaOH水溶液を添加してpH8にした。水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相をあわせて水及び食塩水で洗浄し、次いで無水MgSO4で乾燥、濾過して、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製して標題化合物(1.15 g,32%)を淡黄色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 0.85-1.15 (5H, m), 1.34-1.43 (1H, m), 1.44-1.60 (4H, m), 2.80-3.00 (1H, m), 7.50-7.56 (1H, br.), 7.60-7.67 (2H, br.), 7.88-7.92 (1H, br.).
(4)N-シクロヘキシル-2-ヒドラジニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド
【0132】
【0133】
2-クロロ-N-シクロヘキシル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド(1.15 g, 3.66 mmol)及びヒドラジン1水和物(3.52 mL, 73.3 mmol)を120℃で12時間撹拌した。周囲温度まで冷却した後、反応混合物に水を添加した。混合物にNaClを添加し周囲温度で撹拌した。生じた沈殿を濾過により回収した。沈殿物を水で洗浄し、次いで真空中で乾燥して標題化合物(960 mg, 85%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 0.90-1.10 (5H, m), 1.34-1.42 (1H, m), 1.46-1.59 (4H, m), 2.74-2.86 (1H, m), 4.42-4.65 (2H, br.), 7.05-7.45 (4H, br.), 8.00-8.25 (2H, br.).
(5)N-シクロヘキシル-2-(3-ヒドロキシ-4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-2-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド
【0134】
【0135】
N-シクロヘキシル-2-ヒドラジニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-スルホンアミド(960 mg, 3.06 mmol)及び2-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(524 mg, 3.06 mmol)の酢酸(7 mL)中の混合物を周囲温度で12時間撹拌した。反応混合物を水(30 mL)に注ぎ周囲温度で撹拌した。生じた沈殿を濾過により回収し、水で洗浄した。沈殿物をエタノール/水(1/1)の混合物で洗浄して標題化合物(1.08 g, 85%)を得た。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 0.92-1.18 (5H, m), 1.35-1.45 (1H, m), 1.46-1.60 (4H, m), 1.63-1.78 (4H, m), 2.22 (2H, t, J = 6.0 Hz), .2.51 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.90 (br. s), 7.51 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.61 (1H, dd, J = 8.4 and 1.6 Hz), 7.65 (1H, d, J = 8.4 Hz), 7.96 (1H, br. s);
IR (KBr): 3275, 3166, 2936, 2852, 1659, 1623, 1553, 1428, 1322, 1159, 1150 1104, 984 cm-1;
ESI-MS (negative ion, sodium formate): calcd for C20H24N5O3S ([M-H]-) 414.1600; found 414.1549;
Melting point: 175-177℃.
【0136】
【0137】
対応する原料化合物を用いて実施例1又は実施例2と同様にして、実施例3~44の化合物を合成した。下記表1に実施例1~44の構造とその物理化学的特性についてまとめる。
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
試験例1:PCA-1阻害活性の評価方法
80fmolの3-メチルシトシン含有オリゴDNAを基質として含む酵素反応溶液(50mMトリス塩酸バッファー(pH8.0)、2mMアスコルビン酸、100μMオキソグルタル酸、40μM硫酸鉄)に、被検化合物(10μM、1μM)及び4ngの蚕リコンビナントPCA-1を添加し、37℃で1時間インキュベートした。反応終了後、酵素反応溶液を水で20倍希釈して反応を停止させ、その2μLを用いて20μL反応系でのreal-time PCR(Bio-Rad iQ SYBR Green Supermix)を行った。検量線は非メチル化オリゴDNAの希釈系列を用いて作成した。使用したプライマーは、forward primer 24base、reverse primer 22baseとし、反応条件:95℃10秒→95℃5秒、61℃30秒、72℃15秒を40サイクル→95℃1分→55℃1分→55℃10秒から0.5℃ずつ上昇させ95℃10秒→25℃保存とした。
所定濃度の被検化合物の存在下及び非存在下での脱メチル化の程度を比較し阻害活性を評価した。
本発明化合物のPCA-1阻害活性(%)を表4に示す。
【0145】
【0146】
【0147】
試験例2:がん細胞増殖抑制作用の評価
使用細胞株:DU145(前立腺がん細胞:東北大学加齢医学研究所医用細胞資源センター)
96穴プレートに細胞を5x103個/穴/90μLで播種し、一晩培養した。被検化合物(10μM)を添加し、48時間培養後、1-methoxy-5-メチルphenazinium メチルsulfate(PMS)水溶液と2-(4-iodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt(WST-1)/20mM4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid(HEPES)溶液(DOJIN)を1:9で混合したもの、あるいはCell Counting Kit-8 (同仁化学研究所)を10μL添加し、2時間後に450nmの吸光度を測定した。対照波長として630nmを使用した。
所定濃度の本発明化合物のがん細胞増殖阻害活性(%)を表5に示す。
【0148】
【0149】
【0150】
試験例3:前立腺がんxenograftモデルを用いた抗腫瘍作用の評価
前立腺がんxenograftモデルの作製は下記に従った。
8×10
6個のDU145細胞を、BD Matrigel Basememt Membrane Matrix High Concentration (Becton, Dickinson and Company)と混合して、BALB/c nu/nuマウスの背部皮下に移植した。移植後、腫瘍体積が約200mm
3になった時点で摘出し、約10mm
3に細断して別のBALB/c nu/nuマウスの背部皮下に移植することにより化合物の評価用のモデルマウスとした。
試験化合物は0.5w/v%滅菌カルボキシセルロース(和光純薬)に懸濁し、10mg/10mL/kgにて1日2回18日間経口投与した。ドセタキセル(DTX)については同じ溶媒を用いて、2.5mg/5mL/kgにて週1回合計3回皮下投与を行った。なお腫瘍体積は(長径)×(短径)
2×0.5の式を用いて計算した。腫瘍体積変化について経時的に評価した結果を
図1に表す。
同じxenograftモデルを用いて、腫瘍体積変化の測定の最終日に、体重及び肝臓、腎臓、脾臓の重量を測定し、さらに、GOT、GPT、クレアチニン、BUNといった血液パラメーターの変化を測定した。いずれも本発明化合物の投与による影響は確認されなかったことから、本発明化合物には副作用がないことがわかった。
【0151】
試験例4:経口吸収性
評価は試験化合物を0.5% メチルセルロース(MC)懸濁液でNa塩とし、10mg/kgにて一晩絶食下ラットに強制経口投与後、30分および60分に採血し、化合物濃度をHPLCで測定した。本発明化合物に良好な経口吸収性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明化合物は優れた、PCA-1の酵素活性を阻害する作用を有するので、PCA-1が関与している疾患の予防及び/又は治療に有用である。特に本発明化合物は、前立腺がん、膵臓がん及び非小細胞肺がん等に対する抗がん剤として有用である。