(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】無線通信システム、基地局および制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/336 20150101AFI20220302BHJP
H04W 28/18 20090101ALI20220302BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20220302BHJP
【FI】
H04B17/336
H04W28/18 110
H04B17/318
(21)【出願番号】P 2018110149
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 衆太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】小野 優
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】前原 文明
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-277972(JP,A)
【文献】特開2010-258831(JP,A)
【文献】特表2009-544208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/336
H04W 28/18
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムであって、
前記基地局は、
前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の
直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させる制御部と、
前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の
前記通信環境を推定する推定部とを備え、
前記制御部は、推定された前記通信環境に応じて
前記データ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムであって、
前記基地局は、
前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させる制御部と、
前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の前記通信環境を推定する推定部とを備え、
前記制御部は、
推定された前記通信環境に応じて前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定し、決定した前記端チャンネルの前記ロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、前記データ信号の送受信に前記端チャンネルを使用しない
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を端末局との間で送受信する基地局であって、
前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の
直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させる制御部と、
前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の
前記通信環境を推定する推定部とを備え、
前記制御部は、推定された前記通信環境に応じて
前記データ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定する
ことを特徴とする基地局。
【請求項4】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を端末局との間で送受信する基地局であって、
前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させる制御部と、
前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の
前記通信環境を推定する推定部とを備え、
前記制御部は、推定された前記通信環境に応じて前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定
し、決定した前記端チャンネルの前記ロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、前記データ信号の送受信に前記端チャンネルを使用しない
ことを特徴とする基地局。
【請求項5】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムの制御方法であって、
前記基地局は、前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の
直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させ、
前記基地局は、前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の
前記通信環境を推定し、
前記基地局は、推定した前記通信環境に応じて
前記データ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムの制御方法であって、
前記基地局は、前記複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて前記端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、前記端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を前記端末局に送信させ、
前記基地局は、前記端末局から受信した前記トレーニング信号を用いて前記端末局との間の
前記通信環境を推定し、
前記基地局は、推定した前記通信環境に応じて前記端チャンネルの前記ロールオフ係数を決定
し、決定した前記端チャンネルの前記ロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、前記データ信号の送受信に前記端チャンネルを使用しない
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、大容量のデータを伝送するために広帯域化が図られている。しかしながら、無線通信システムは、広帯域化にあたり、周波数帯域が隣接する他の通信システムとの間の干渉を回避する必要がある。
【0003】
このため、無線通信システムは、複数の周波数帯域のチャンネルのうち、中心周波数が最小または最大の端に位置する端チャンネルにおいて、シンボルレートを下げて狭帯域信号とし他の通信システムとの間のガードバンドを確保する、あるいは送信電力を下げて他の通信システムとの間の干渉を回避する等の技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】斉藤洋一,“ディジタル無線通信の変復調”,電子情報通信学会,pp.47-51,1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、端チャンネルのシンボルレートを下げた場合には、送信できるデータ量が低下し、端チャンネルの送信電力を下げる場合には、送信できる距離が短くなるという問題がある。また、従来の技術では、各チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を、端チャンネルを含む全てのチャンネルにおいて同じ値に設定している。
【0006】
本発明は、送信できるデータ量および距離を低下させることなく、他の通信システムとの間の干渉を回避できる無線通信システム、基地局および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムであって、基地局は、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させる制御部と、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定する推定部とを備え、制御部は、推定された通信環境に応じてデータ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる端チャンネルのロールオフ係数を決定することを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムであって、基地局は、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させる制御部と、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定する推定部とを備え、制御部は、推定された通信環境に応じて端チャンネルのロールオフ係数を決定し、決定した端チャンネルのロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、データ信号の送受信に端チャンネルを使用しないことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を端末局との間で送受信する基地局であって、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させる制御部と、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定する推定部とを備え、制御部は、推定された通信環境に応じてデータ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる端チャンネルのロールオフ係数を決定することを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を端末局との間で送受信する基地局であって、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させる制御部と、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定する推定部とを備え、制御部は、推定された通信環境に応じて端チャンネルのロールオフ係数を決定し、決定した端チャンネルのロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、データ信号の送受信に端チャンネルを使用しないことを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムの制御方法であって、基地局は、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の直接波と遅延波に関する通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させ、基地局は、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定し、基地局は、推定した通信環境に応じてデータ信号の直接波と遅延波との符号間干渉の大きさが所定値以下となる端チャンネルのロールオフ係数を決定することを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、周波数帯域が異なる複数のチャンネルを用いてデータ信号を送受信する基地局と端末局とを有する無線通信システムの制御方法であって、基地局は、複数のチャンネルのうち中心周波数が最小および最大のチャンネルの少なくとも一方の端チャンネルにおいて端チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数を制御し、端末局との間の通信環境を推定するためのトレーニング信号を端末局に送信させ、基地局は、端末局から受信したトレーニング信号を用いて端末局との間の通信環境を推定し、基地局は、推定した通信環境に応じて端チャンネルのロールオフ係数を決定し、決定した端チャンネルのロールオフ係数が所定の閾値を超過する場合、データ信号の送受信に端チャンネルを使用しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、送信できるデータ量および距離を低下させることなく、他の通信システムとの間の干渉を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】無線通信システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した無線通信システムで送受信されるN個のチャンネルの一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した無線通信システムにおける制御処理の一例を示す図である。
【
図4】ロールオフ係数に応じたチャンネルのインパルス応答特性の一例を示す図である。
【
図5】無線通信システムの別の実施形態を示す図である。
【
図6】
図5に示した無線通信システムにおける制御処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。
【0018】
【0019】
図1に示した無線通信システムSYSは、例えば、通信路の時変動が少ない山岳地帯等に配置される無線通信システムであり、基地局100と端末局300とを有する。基地局100と端末局300とは、例えば、通信路応答の遅延の広がりが大きい60MHz等のVHF(Very High Frequency)帯において、周波数帯域が異なるN個のチャンネルで広帯域の無線通信を行う。
【0020】
基地局100は、例えば、無線通信の上流側の基地局であり、制御部110、情報挿入部120、変調部130、発振器140、送信部150、切替部160、受信部170、復調部180、推定部190、等化器200およびアンテナANT1を有する。
【0021】
制御部110は、プロセッサ等であり、基地局100に含まれるハードディスク装置等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、基地局100の各部を制御する。例えば、制御部110は、基地局100と端末局300との間の通信環境に応じて、チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数αをN個のチャンネル毎に制御する。制御部110の動作については、
図3で説明する。
【0022】
情報挿入部120は、例えば、基地局100に含まれるネットワークインタフェースや入出力インタフェース等のインタフェースを介して、基地局100に接続されたスマートフォンやコンピュータ装置等の外部装置からデータを受信する。そして、情報挿入部120は、基地局100が受信したデータを端末局300に送信するにあたり、制御部110により指示されたN個のチャンネルの各々におけるロールオフ係数αおよび中心周波数Fcを示す情報を、受信したデータに挿入する。なお、中心周波数Fcの情報は、チャンネルの区別に用いられる。
【0023】
また、情報挿入部120は、基地局100が新たに設置された場合や、N個のチャンネルの各々のロールオフ係数αを再設定する場合等により、制御部110による端末局300にトレーニング信号を送信させる送信指示もデータに挿入する。この場合、情報挿入部120が各チャンネルのロールオフ係数αおよび中心周波数Fcと、送信指示とを挿入するデータは、スマートフォン等からのデータでもよく、空データでもよい。
【0024】
変調部130は、例えば、制御部110から指示された各チャンネルのロールオフ係数αを用い、情報挿入部120から受信したデータに対してQAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の変調処理を実行し、データ信号を生成する。変調部130は、生成したデータ信号を送信部150に出力する。
【0025】
発振器140は、制御部110からの制御指示に基づいて各チャンネルの中心周波数Fcの信号を生成し、生成した中心周波数Fcの信号を送信部150および受信部170に出力する。
【0026】
送信部150は、変調部130により生成されたデータ信号を、発振器140により生成された各チャンネルの中心周波数Fcの信号で周波数変換する。送信部150は、切替部160およびアンテナANT1を介して、周波数変換したデータ信号の電磁波を各チャンネルで端末局300に送信する。
【0027】
切替部160は、スイッチ等であり、送信部150が電磁波を端末局300に送信、および受信部170が端末局300から電磁波を受信するに応じて切り替え動作する。
【0028】
受信部170は、アンテナANT1および切替部160を介して、端末局300により送信されたトレーニング信号またはデータ信号の電磁波を受信する。受信部170は、受信したトレーニング信号またはデータ信号を含む電磁波を発振器140により生成された各チャンネルの中心周波数Fcの信号でダウンコンバートする。そして、受信部170は、ダウンコンバートしたトレーニング信号またはデータ信号を復調部180に出力する。
【0029】
復調部180は、受信部170から受信したトレーニング信号またはデータ信号に対して復調処理を実行し、復調したトレーニング信号またはデータ信号を推定部190に出力する。
【0030】
推定部190は、復調部180から受信したトレーニング信号を用いて端末局300との間の通信環境を推定する。例えば、推定部190は、端末局300から直接受信したトレーニング信号(直接波)の受信時刻や受信強度等を基準にして、建物等により回折または反射して受信したトレーニング信号(遅延波)との遅延量や受信強度の減衰量等を、端末局300との間の通信環境として推定する。推定部190は、推定の結果を制御部110および等化器200に出力する。なお、推定部190は、復調部180から受信した信号がデータ信号の場合、受信したデータ信号を等化器200に出力する。
【0031】
等化器200は、トランスバーサル等化器や判定帰還型等化器等であり、受信したデータ信号に対して等化処理を実行し、データ信号における遅延を補償する。等化器200は、基地局100のインタフェースを介して、基地局100に接続されたスマートフォンやコンピュータ装置等の外部装置に、遅延を補償したデータ信号を出力する。
【0032】
なお、等化器200に含まれるタップの数は、“0.1”や“0.2”等のロールオフ係数αが小さい場合でも、データ信号の直接波と遅延波との符号間干渉を低減できる遅延波耐性を有するように、予め設定されていることが好ましい。
【0033】
端末局300は、例えば、無線通信の下流側の基地局等であり、アンテナANT2、切替部310、受信部320、復調部330、情報抽出部340、等化器350、発振器360、変調部370および送信部380を有する。
【0034】
切替部310は、スイッチ等であり、端末局300が電磁波を基地局100に送信、および端末局300が基地局100から電磁波を受信するに応じて切り替え動作する。
【0035】
受信部320は、アンテナANT2および切替部310を介して、基地局100により送信されたデータ信号に含む電磁波を受信する。受信部320は、発振器360により生成される各チャンネルの中心周波数Fcの信号を用いて、受信した電磁波をダウンコンバートする。受信部320は、ダウンコンバートしたデータ信号を復調部330に出力する。
【0036】
復調部330は、情報抽出部340により抽出される各チャンネルのロールオフ係数αに基づいて、受信部320から受信したデータ信号に対して復調処理を実行し、復調したデータ信号を情報抽出部340に出力する。
【0037】
情報抽出部340は、基地局100が挿入したN個のチャンネルの各々におけるロールオフ係数αおよび中心周波数Fcを示す情報を、復調部330により復調されたデータ信号から抽出する。情報抽出部340は、抽出した各チャンネルのロールオフ係数αを復調部330および変調部370に出力する。また、情報抽出部340は、抽出した各チャンネルの中心周波数Fcを発振器360に出力する。そして、情報抽出部340は、復調部330により復調されたデータ信号を等化器350に出力する。
【0038】
なお、情報抽出部340は、端末局300にトレーニング信号を送信させる送信指示をデータ信号から抽出した場合、抽出した送信指示を変調部370に出力する。
【0039】
等化器350は、トランスバーサル等化器や判定帰還型等化器等であり、受信したデータ信号に対して等化処理を実行し、データ信号における遅延を補償する。等化器350は、遅延を補償したデータ信号を、端末局300に含まれるネットワークインタフェースや入出力インタフェース等のインタフェースを介して、端末局300に接続されたスマートフォンやコンピュータ装置等の外部装置に出力する。
【0040】
なお、等化器350に含まれるタップの数は、
図1に示した等化器200と同様に、“0.1”や“0.2”等のロールオフ係数αが小さい場合でも、データ信号の直接波と遅延波との符号間干渉を低減できる遅延波耐性を有するように、予め設定されていることが好ましい。
【0041】
発振器360は、端末局300に含まれるプロセッサ等の制御部からの制御指示に基づいて各チャンネルの中心周波数Fcの信号を生成し、生成した中心周波数Fcの信号を受信部320および送信部380に出力する。
【0042】
変調部370は、例えば、端末局300のインタフェースを介して、端末局300に接続されたスマートフォンやコンピュータ装置等の外部装置からデータを受信する。変調部370は、情報抽出部340により抽出された各チャンネルのロールオフ係数αを用い、受信したデータに対してQAM等の変調処理を実行し、データ信号を生成する。変調部370は、生成したデータ信号を送信部380に出力する。
【0043】
また、変調部370は、情報抽出部340からトレーニング信号の送信指示を受けた場合、基地局100が端末局300との間における電磁波の遅延等の通信環境を推定するための所定のシンボル長を有したトレーニング信号を生成する機能を有する。変調部370は、生成したトレーニング信号を送信部380に出力する。
【0044】
送信部380は、例えば、変調部370により生成されたトレーニング信号またはデータ信号を、発振器360により生成された各チャンネルの中心周波数Fcの信号で周波数変換する。送信部380は、切替部310およびアンテナANT2を介して、周波数変換したトレーニング信号またはデータ信号の電磁波を各チャンネルで基地局100に送信する。
【0045】
図2は、
図1に示した無線通信システムSYSで送受信されるN個のチャンネルCH(CH(1)-CH(N))の一例を示す。
図2の横軸は周波数を示し、
図2の縦軸は電力を示す。そして、チャンネルCH(i)の周波数の帯域幅Wiは、ロールオフ係数αおよびシンボルレートFsを用いて、式(1)のように表される(iは1からNの整数)。
Wi=(1+α)Fs …(1)
なお、無線通信システムSYSは、隣接する周波数帯域で無線通信する他の通信システムとの間の干渉を回避するため、所定の帯域幅のガードバンドが設けられる。このため、制御部110は、中心周波数Fcが最小および最大の端チャンネルであるチャンネルCH(1)、CH(N)の帯域幅W1、WNを、ガードバンドに応じてチャンネルCH(2)-CH(N-1)と同じまたは狭く設定する。そこで、制御部110は、各チャンネルCHにおいて、送信電力およびシンボルレートFsを一定にして、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを調整する。すなわち、制御部110は、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを、チャンネルCH(2)-CH(N-1)のロールオフ係数αと比べて同じまたは小さな値に設定する。これにより、無線通信システムSYSは、各チャンネルCHの送信電力およびシンボルレートFsを一定することで、従来と比べてデータの送信速度および送信距離を変えることなく、他の通信システムへの与干渉を低減できる。
【0046】
図3は、
図1に示した無線通信システムSYSにおける制御処理の一例を示す。
図3に示した処理は、制御部110が、基地局100の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。すなわち、
図3に示した処理は、無線通信システムSYSの制御方法の一実施形態である。
【0047】
なお、
図3に示した処理では、端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを制御する場合について示す。この場合、チャンネルCH(2)-CH(N-1)のロールオフ係数αは、ガードバンドの存在により他の通信システムとの間の干渉を考慮しなくてもよいため、従来と同様に“0.5”や“0.7”等の大きな値に予め設定される。しかしながら、
図3に示した処理は、全てのチャンネルCHのロールオフ係数αを制御してもよい。
【0048】
また、他の通信システムが無線通信している周波数帯域が、例えば、チャンネルCH(1)(またはチャンネルCH(N))の周波数帯域と隣接している場合、
図3に示した処理は、チャンネルCH(1)(またはチャンネルCH(N))のロールオフ係数αのみ制御してもよい。この場合、チャンネルCH(N)(またはチャンネルCH(1))のロールオフ係数αは、チャンネルCH(2)-CH(N-1)と同様の値に設定されてもよい。
【0049】
ステップS100では、基地局100の制御部110は、“0.1”や“0.2”等の予め決められた最小のロールオフ係数αをチャンネルCH(1)、CH(N)に設定する。なお、最小のロールオフ係数αは、無線通信システムSYSが配置される場所や、他の通信システムの有無等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0050】
次に、ステップS110では、制御部110は、端末局300にトレーニング信号を送信させる送信指示を、各チャンネルCHのロールオフ係数αおよび中心周波数Fcとともに、端末局300に送信する。例えば、情報挿入部120は、制御部110により指示された各チャンネルCHのロールオフ係数αおよび中心周波数Fcを示す情報と、トレーニング信号の送信指示とを、スマートフォン等の外部装置から受信したデータに挿入する。変調部130は、例えば、制御部110から指示された各チャンネルCHのロールオフ係数αを用い、情報挿入部120から受信したデータに対してQAM等の変調処理を実行し、データ信号を生成する。そして、送信部150は、変調部130により生成されたデータ信号を、発振器140により生成された各チャンネルCHの中心周波数Fcの信号で周波数変換する。送信部150は、切替部160およびアンテナANT1を介して、周波数変換したデータ信号の電磁波を各チャンネルCHで端末局300に送信する。
【0051】
次に、ステップS120では、受信部170は、アンテナANT1および切替部160を介して、端末局300により送信されたトレーニング信号の電磁波を受信する。受信部170は、受信したトレーニング信号の電磁波を発振器140により生成された各チャンネルの中心周波数Fcの信号でダウンコンバートする。そして、復調部180は、受信部170から受信したトレーニング信号に対して復調処理を実行し、復調したトレーニング信号を推定部190に出力する。
【0052】
次に、ステップS130では、推定部190は、ステップS120で受信されたトレーニング信号を用いて端末局300との間の通信環境を推定する。例えば、推定部190は、端末局300から直接受信したトレーニング信号(直接波)の受信時刻や受信強度等を基準にして、建物等により回折または反射して受信したトレーニング信号(遅延波)の遅延量や受信強度の減衰量等を、端末局300との間の通信環境として推定する。そして、推定部190は、推定の結果を制御部110に出力する。
【0053】
次に、ステップS140では、制御部110は、ステップS130で推定された通信環境に基づいて、チャンネルCH(1)、CH(N)における符号間干渉の大きさが所定値以下か否かを判定する。
【0054】
図4は、ロールオフ係数αに応じたチャンネルCHのインパルス応答特性の一例を示す。
図4の横軸は時刻を示し、
図4の縦軸は振幅を示す。なお、Tは、シンボル周期を示す。
【0055】
図4では、例えば、ロールオフ係数αが“0.5”や“0.7”等の大きな値のインパルス応答を実線で示し、ロールオフ係数αが“0.1”や“0.2”等の小さな値のインパルス応答を破線で示す。
図4に示すように、ロールオフ係数αが小さくなるに従い、インパルス応答は、大きな振幅の時間変動を示す。このため、チャンネルCHのロールオフ係数αが小さい場合、チャンネルCHにおける直接波と遅延波との遅延量がわずかでも符号間干渉は大きくなる。
【0056】
そこで、制御部110は、ステップS130で求められたトレーニング信号の遅延量や受信強度の減衰量等に基づいて、チャンネルCH(1)、CH(N)における符号間干渉の大きさを算出する。算出したチャンネルCH(1)、CH(N)における符号間干渉の大きさが所定値以下の場合、基地局100の処理は、ステップS160に移る。一方、算出したチャンネルCH(1)、CH(N)における符号間干渉の大きさが所定値より大きい場合、基地局100の処理は、ステップS150に移る。
【0057】
なお、所定値は、無線通信システムSYSが配置される場所や、他の通信システムの有無等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0058】
ステップS150では、制御部110は、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを所定量(例えば、0.1等)増加させる。そして、基地局100は、ステップS150で設定されたチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを用いて、ステップS110からステップS140の処理を実行する。
【0059】
ステップS160では、制御部110は、端チャンネルであるチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが、チャンネルCH(1)、CH(N)の帯域幅やガードバンド等によって許容されている閾値を超過しているか否かを判定する。チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値を超過している場合、基地局100の処理は、ステップS170に移る。一方、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値以下の場合、基地局100の処理は、ステップS180に移る。
【0060】
ステップS170では、制御部110は、端チャンネルであるチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値を超過しているため、他の通信システムとの間の干渉を回避できないと判定し、チャンネルCH(1)、CH(N)を使用しないと決定する。
【0061】
ステップS180では、制御部110は、各チャンネルCHのロールオフ係数αを決定する。制御部110は、スマートフォン等の外部装置から受信するデータを、端末局300に送信する場合に、決定したロールオフ係数αを使用する。なお、制御部110は、ステップS170でチャンネルCH(1)、CH(N)を使用しないとした場合、チャンネルCH(1)、CH(N)の不使用を示すロールオフ係数αの値(例えば、負の値等)に決定してもよい。
【0062】
一方、ステップS200では、端末局300の受信部320は、ステップS110で基地局100から送信されたロールオフ係数α、中心周波数Fcおよび送信指示を含むデータ信号の電磁波を、アンテナANT2および切替部310を介して受信する。受信部320は、発振器360により生成される各チャンネルCHの中心周波数Fcの信号を用いて受信した電磁波をダウンコンバートする。復調部330は、情報抽出部340により抽出される各チャンネルCHのロールオフ係数αに基づいて、受信部320から受信したデータ信号に対して復調処理を実行し、復調したデータ信号を情報抽出部340に出力する。
【0063】
次に、ステップS210では、情報抽出部340は、ステップS110で挿入された各チャンネルCHのロールオフ係数αおよび中心周波数Fcを示す情報と送信指示とを、復調部330により復調されたデータ信号から抽出する。情報抽出部340は、抽出した各チャンネルのロールオフ係数αを復調部330および変調部370に設定する。また、情報抽出部340は、抽出した各チャンネルCHの中心周波数Fcを発振器360に設定する。また、情報抽出部340は、抽出した送信指示を変調部370に出力する。
【0064】
次に、ステップS220では、変調部370は、情報抽出部340からトレーニング信号の送信指示を受けた場合、所定のシンボル長を有したトレーニング信号を生成する。
【0065】
次に、ステップS230では、送信部380は、ステップS220で生成されたトレーニング信号を、発振器360により生成された各チャンネルCHの中心周波数Fcの信号で周波数変換する。送信部380は、切替部310およびアンテナANT2を介して、周波数変換したトレーニング信号の電磁波を各チャンネルCHで基地局100に送信する。
【0066】
そして、無線通信システムSYSは、制御処理を終了する。無線通信システムSYSは、例えば、半年や一年等の所定の期間毎に、ステップS100からステップS180およびステップS200からステップS230の処理を実行する。
【0067】
図1から
図4に示した実施形態では、基地局100は、端末局300から送信されるトレーニング信号を用いて、無線通信システムSYSにおける通信環境を推定する。基地局100は、推定した通信環境に基づいて、N個のチャンネルCHのうち端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)における送信電力およびシンボルレートFsを変えることなく一定にして、ロールオフ係数αを調整する。これにより、無線通信システムSYSは、従来のように全てのチャンネルCHのロールオフ係数αを同じ値に設定する場合と比べて、送信できるデータ量および距離を低下させることなく、他の通信システムとの間の干渉を回避できる。
【0068】
また、基地局100は、端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが、チャンネルCH(1)、CH(N)の帯域幅やガードバンド等によって許容されている閾値を超過している場合、チャンネルCH(1)、CH(N)を不使用とする。これにより、無線通信システムSYSは、他の通信システムとの間の干渉を確実に回避できる。
【0069】
なお、
図1に示した無線通信システムSYSでは、端末局300が、基地局100からの送信指示に基づいて、トレーニング信号を送信するとしたが、これに限定されない。例えば、基地局100は、制御部110からの送信指示に基づいて、端末局300にトレーニング信号を送信し、端末局300は、基地局100から受信したトレーニング信号をそのまま基地局100に送信するようにしてもよい。
【0070】
図5は、無線通信システムの別の実施形態を示す。
図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。
【0071】
図5に示した無線通信システムSYS1は、例えば、
図1に示した無線通信システムSYSと同様に、通信路の時変動が少ない山岳地帯等に配置され、基地局100aと端末局300とを有する。基地局100aと端末局300とは、例えば、通信路応答の遅延の広がりが大きい60MHz等のVHF帯において、周波数帯域が異なるN個のチャンネルCHで広帯域の無線通信を行う。
【0072】
基地局100aは、例えば、無線通信の上流側の基地局であり、制御部110a、情報挿入部120、変調部130、発振器140、送信部150、切替部160、受信部170a、復調部180a、等化器200、測定部210およびアンテナANT1を有する。
【0073】
制御部110aは、プロセッサ等であり、基地局100aに含まれるハードディスク装置等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、基地局100aの各部を制御する。例えば、制御部110aは、基地局100aと端末局300との間の通信環境に応じて、チャンネルの帯域幅を調整するロールオフ係数αをN個のチャンネルCH毎に制御する。制御部110aの動作については、
図6で説明する。
【0074】
受信部170aは、アンテナANT1および切替部160を介して、端末局300により送信されたデータ信号の電磁波を受信する。受信部170aは、受信したデータ信号の電磁波を発振器140により生成された各チャンネルCHの中心周波数Fcの信号でダウンコンバートする。受信部170aは、データ信号を復調部180aに出力する。
【0075】
また、受信部170aは、測定部210が無線通信システムSYS1の周波数帯域に隣接する帯域で無線通信する他の通信システムとの間の周波数間隔を測定するために、無線通信システムSYS1の周波数帯域より広い周波数帯域の電磁波を受信する。受信部170aは、端末局300からのデータ信号を含む信号を、測定部210に出力する。
【0076】
復調部180aは、
図1に示した復調部180と同様に、受信部170から受信したデータ信号に対して復調処理を実行し、復調したデータ信号を等化器200に出力する。
【0077】
測定部210は、スペクトルアナライザ等であり、制御部110aからの制御指示に基づいて、受信部170aが受信した電磁波の信号から無線通信システムSYS1の周波数帯域に隣接する帯域で無線通信する他の通信システムとの間の周波数間隔を測定する。測定部210は、測定の結果を制御部110aに出力する。そして、制御部110aは、測定部210による測定の結果に基づいて、各チャンネルCHのロールオフ係数αを制御する。
【0078】
図6は、
図5に示した無線通信システムSYS1における制御処理の一例を示す。
図6に示した処理は、制御部110aが、基地局100aの記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。すなわち、
図6に示した処理は、無線通信システムSYS1の制御方法の別の実施形態である。
【0079】
なお、
図6に示した処理では、端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを制御する場合について示す。この場合、チャンネルCH(2)-CH(N-1)のロールオフ係数αは、ガードバンドの存在により他の通信システムとの間の干渉を考慮しなくてもよいため、従来と同様に“0.5”や“0.7”等の大きな値に予め設定される。しかしながら、
図6に示した処理は、全てのチャンネルCHのロールオフ係数αを制御してもよい。
【0080】
ステップS300では、制御部110aは、他の通信システムとの間の周波数間隔を測定させる制御指示を測定部210に出力する。測定部210は、受信部170aが受信した電磁波の信号から他の通信システムとの間の周波数間隔を測定し、測定の結果を制御部110aに出力する。
【0081】
次に、ステップS310では、制御部110aは、ステップS300で測定された周波数間隔と、式(1)とを用いて、送信電力およびシンボルレートFsを変えることなく一定にして、他の通信システムとの間の干渉を回避できるチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを算出する。なお、制御部110aは、測定部210により他の通信システムの電磁波を検出できなかった、すなわち隣接する他の通信システムがない場合、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αをチャンネルCH(2)-CH(N-1)と同じ値に制御する。
【0082】
ステップS320では、制御部110aは、ステップS310で算出したチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが、チャンネルCH(1)、CH(N)の帯域幅やガードバンド等によって他の通信システムとの間の干渉を回避できる閾値を超過しているか否かを判定する。チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値を超過している場合、基地局100aの処理は、ステップS340に移る。一方、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値を超過していない場合、基地局100aの処理は、ステップS330に移る。
【0083】
ステップS330では、制御部110aは、端チャンネルであるチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが閾値以下であるため、符号間干渉を回避できないと判定し、チャンネルCH(1)、CH(N)を使用しないと決定する。
【0084】
ステップS340では、制御部110aは、各チャンネルCHのロールオフ係数αを決定する。制御部110aは、スマートフォン等の外部装置から受信するデータを、端末局300に送信する場合に、決定したロールオフ係数αを使用する。なお、制御部110aは、ステップS330でチャンネルCH(1)、CH(N)の不使用を示すロールオフ係数αの値(例えば、負の値等)に決定してもよい。
【0085】
そして、無線通信システムSYS1は、制御処理を終了する。無線通信システムSYS1は、例えば、半年や一年等の所定の期間毎に、ステップS300からステップS340の処理を実行する。
【0086】
図5および
図6に示した実施形態では、基地局100aは、無線通信システムSYSにおける通信環境として、端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)の周波数帯域に隣接する帯域で無線通信する他の通信システムとの間の周波数間隔を、測定部210を用いて測定する。基地局100aは、測定した周波数間隔と式(1)とに基づき、送信電力およびシンボルレートFsを変えることなく一定にして、チャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αを算出する。これにより、無線通信システムSYS1は、従来のように全てのチャンネルCHのロールオフ係数αを同じ値に設定する場合と比べて、送信できるデータ量および距離を低下させることなく、他の通信システムとの間の干渉を回避できる。
【0087】
また、基地局100aは、端チャンネルのチャンネルCH(1)、CH(N)のロールオフ係数αが、チャンネルCH(1)、CH(N)の符号間干渉を回避できる閾値以下である場合、チャンネルCH(1)、CH(N)を不使用とする。
【0088】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
100…基地局;110,110a…制御部;120…情報挿入部;130,370…変調部;140,360…発振器;150,380…送信部;160,310…切替部;170,170a,320…受信部;180,180a,330…復調部;190…推定部;200,350…等化器;210…測定部;300…端末局;340…情報抽出部;ANT1,ANT2…アンテナ;CH(1)-CH(N)…チャンネル;SYS,SYS1…無線通信システム