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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】切断用ブレード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/34 20060101AFI20220302BHJP
   B24D 3/18 20060101ALI20220302BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220302BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B24D3/34 A
B24D3/18
B24D3/00 340
H01L21/78 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017041847
(22)【出願日】2017-03-06
(65)【公開番号】P2018144173
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】星 純二
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-154425(JP,A)
【文献】特開2008-018479(JP,A)
【文献】特開平06-320430(JP,A)
【文献】特開昭50-103785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0009026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/34
B24D 3/18
B24D 3/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転させられ、被切断材を切断加工する切断用ブレードであって、
円板状をなし、外周縁部に切れ刃が形成され、砥粒が分散された多孔質体のビトリファイドボンド相と、
前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上に形成された目止め膜と、
前記目止め膜の前記中心軸方向の外側に配置される導電性のめっき層と、を備え
前記切れ刃は、
前記切断用ブレードの前記中心軸方向を向く一対の面における各外周縁部と、
前記切断用ブレードの外周面と、
前記各外周縁部と前記外周面との交差稜線をなす一対のエッジと、によって形成され、
前記目止め膜および前記めっき層は、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上の前記外周縁部を含む全体に成膜される、切断用ブレード。
【請求項2】
請求項1に記載の切断用ブレードであって、
前記目止め膜は、蒸着膜である切断用ブレード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の切断用ブレードであって、
前記中心軸方向の厚さが、150μm以下である切断用ブレード。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記めっき層に砥粒が分散された切断用ブレード。
【請求項5】
中心軸回りに回転させられ、被切断材を切断加工する切断用ブレードの製造方法であって、
ビトリファイド粉末及び砥粒を混合し、圧力を加えて円板状に成型し、焼結して
前記切断用ブレードの前記中心軸方向を向く一対の面における各外周縁部と、
前記切断用ブレードの外周面と、
前記各外周縁部と前記外周面との交差稜線をなす一対のエッジと、
に切れ刃を有する多孔質体のビトリファイドボンド相を形成するボンド相形成工程と、
前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上に、目止め膜を形成する目止め膜形成工程と、
前記目止め膜の前記中心軸方向の外側に、導電性のめっき層を形成するめっき層形成工程と、を備え、
前記目止め膜および前記めっき層は、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上の前記各外周縁部を含む全体に成膜される、切断用ブレードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビトリファイドボンド相を有する切断用ブレード、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビトリファイドボンド相を有する切断用ブレードが知られている。ビトリファイドボンド相を備えた切断用ブレード(ビトリファイドブレード)は、例えばメタルボンド相を備えた切断用ブレード(メタルブレード)やレジンボンド相を備えた切断用ブレード(レジンブレード)に比べて硬度が高く、摩耗が進行しにくい。また、ビトリファイドボンド相は多孔質体であり、ボンド相に形成された多数の気孔によって、切屑排出性が良好に維持され、冷却効果が高められ、自生発刃作用が促されることから、高精度で安定した切断加工を行うことが可能である。
【0003】
ところで、一般に切断用ブレードには、切断加工時の切れ刃位置を正確に管理する目的で、通電機能(導電性)が要求される場合がある。つまり、切断用ブレードに通電機能を付与し、該切断用ブレードを介して、切断加工装置(ダイサー)の主軸と、切断用ブレードにより切断加工される被切断物(又は被切断物と同じ厚さの導電体)との間の通電を検出することにより、切断用ブレードの切れ刃位置(Z方向位置)を測定し管理することが行われている。
【0004】
しかしながら、ビトリファイドボンド相は不導体であり通電機能を有していない。従って、上述のように電気的に接点をとって(つまり電気式手法で)切れ刃位置を管理することができない。切断加工装置には、電気式手法を用いる代わりに、光学式手法を用いて切断用ブレードの切れ刃位置を管理する機能を有するものもある。しかしながら、光学式手法に比べて電気式手法の方が、切れ刃位置の測定精度に優れている。
【0005】
例えば、下記特許文献1に記載されたビトリファイドボンド相を有する切断用ブレードは、無電解めっきによりボンド相を金属被覆して通電機能を付与している。これにより、ビトリファイドボンド相を有する切断用ブレードであっても、電気式手法によって切れ刃位置を管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-18479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の切断用ブレードは、ビトリファイドボンド相に無電解めっきを施す際に、ボンド相内にめっき液が含浸されていき、めっきによって気孔が埋められてしまう。このため、気孔により得られるはずの上述の各種機能が損なわれる。また、ボンド相内にめっきが含浸されていく分だけ、ボンド相に十分な導電性を付与するために要するめっき時間が長くかかっていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、多孔質体であるビトリファイドボンド相の機能を良好に維持しつつ導電性を安定して付与することができ、かつ製造が容易な切断用ブレード、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る切断用ブレードは、中心軸回りに回転させられ、被切断材を切断加工する切断用ブレードであって、円板状をなし、外周縁部に切れ刃が形成され、砥粒が分散された多孔質体のビトリファイドボンド相と、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上に形成された目止め膜と、前記目止め膜の前記中心軸方向の外側に配置される導電性のめっき層と、を備え、前記切れ刃は、前記切断用ブレードの前記中心軸方向を向く一対の面における各外周縁部と、前記切断用ブレードの外周面と、前記各外周縁部と前記外周面との交差稜線をなす一対のエッジと、によって形成され、前記目止め膜および前記めっき層は、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上の前記外周縁部を含む全体に成膜されることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、中心軸回りに回転させられ、被切断材を切断加工する切断用ブレードの製造方法であって、ビトリファイド粉末及び砥粒を混合し、圧力を加えて円板状に成型し、焼結して、前記切断用ブレードの前記中心軸方向を向く一対の面における各外周縁部と、前記切断用ブレードの外周面と、前記各外周縁部と前記外周面との交差稜線をなす一対のエッジと、に切れ刃を有する多孔質体のビトリファイドボンド相を形成するボンド相形成工程と、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上に、目止め膜を形成する目止め膜形成工程と、前記目止め膜の前記中心軸方向の外側に、導電性のめっき層を形成するめっき層形成工程と、を備え、前記目止め膜および前記めっき層は、前記ビトリファイドボンド相の前記中心軸方向を向く面上の前記各外周縁部を含む全体に成膜されることを特徴とする。
【0010】
本発明の切断用ブレード、及びその製造方法により製造された切断用ブレードは、多孔質体のビトリファイドボンド相を有するビトリファイドブレードである。そして、ビトリファイドボンド相の中心軸方向を向く面上には、目止め膜が形成され、この目止め膜上に、導電性のめっき層が形成されている。
つまり、ビトリファイドボンド相の中心軸方向を向く面上に、まず目止め膜を形成することにより、ボンド相を目止めして気孔を覆った状態とし、この目止め膜上にめっき層を形成している。
【0011】
このため、切断用ブレードの製造時において、めっき層を形成する際に、めっき液がボンド相内に含浸されていくことを防止できるとともに、ボンド相の気孔がめっきで埋められてしまうことを防止できる。従って、切断加工時において、ビトリファイドボンド相の外周縁部に形成された切れ刃による切断能力が、安定して高められる。具体的には、ボンド相に形成された多数の気孔によって、切屑を一時的に保持して排出させることで切屑排出性を良好に維持する機能や、冷却水を取り込んで冷却効果を高める機能や、適度に自生発刃作用を促す機能等が存分に発揮されて、高精度で安定した切断加工を行うことができる。
【0012】
また、ボンド相内にめっきが含浸されないので、目止め膜上にめっき層を形成するためのめっき時間を短くすることができる。しかも、ブレード外面に露出するめっき層によって切断用ブレードに確実に導電性を付与することができ、該切断用ブレードを切断加工装置に装着して被切断材を切断加工する際に、電気的な接点をとって(つまり電気式手法で)切れ刃位置を正確に管理することができる。
【0013】
また、ビトリファイドボンド相の中心軸方向の外側にめっき層が配置されているため、切断用ブレード全体としての靱性を向上させることができ、ブレード強度が高められる。従って、工具寿命を延ばすことができ、切断効率が向上する。
また、上記配置とされためっき層によって、切れ刃の刃痩せを抑制することができる。つまり、切れ刃の刃先が、その断面視で径方向外側へ向けた凸V字状となるように摩耗進行する不具合を抑制できる。従って、切断の加工品位を良好に維持することができる。
【0014】
以上より本発明によれば、多孔質体であるビトリファイドボンド相の機能を良好に維持しつつ、切断用ブレードに安定して導電性を付与することができ、かつ切断用ブレードの製造が容易である。
【0015】
また、上記切断用ブレードにおいて、前記目止め膜は、蒸着膜であることが好ましい。
【0016】
この場合、目止め膜が蒸着膜であるので、該目止め膜によって、ビトリファイドボンド相の気孔を確実に目止めする(覆う)ことができる。また、ボンド相の中心軸方向を向く面上に目止め膜を形成するにあたり、全体にムラなく成膜でき、膜厚を均一化することが容易であり、切断用ブレードを精度よく安定して製造できる。
【0017】
また、上記切断用ブレードにおいて、前記中心軸方向の厚さが、150μm以下であることが好ましい。
【0018】
従来では、脆性材料であるビトリファイドボンド相を有する切断用ブレードを、150μm以下の厚さまで薄肉化することは困難であった。すなわち、切断用ブレードの厚さを150μm以下とすると、切断用ブレードを切断加工装置の主軸にフランジでセットする際や、切断加工時の負荷や外力等により、ビトリファイドブレードは破損しやすかった。
一方、本発明の切断用ブレードは、ビトリファイドボンド相の中心軸方向の外側に、めっき層及び目止め膜が形成されているので、切断用ブレードの厚さを150μm以下にまで薄肉化した場合であっても、ブレード強度が十分に確保される。
【0019】
従って、切断加工時(ダイシング時)のカーフ幅(切断加工により被切断材に形成される切断ラインの幅)を小さく抑えることができ、その分被切断材の材料歩留まりを向上でき、かつ、例えば化合物半導体素子や電子部品基板等のさらなる小型化への要求に容易に対応可能である。
【0020】
また、上記切断用ブレードにおいて、前記めっき層に砥粒が分散されたことが好ましい。
【0021】
すなわち、ビトリファイドボンド相を有する上記切断用ブレードにおいて、通電目的だけではなく強度不足を補う場合には、めっき層に砥粒が分散されることが好ましい。
上記構成によれば、ビトリファイドボンド相に砥粒が分散されているのみならず、めっき層にも砥粒が分散されている。これにより、めっき層の強度が高められる結果、ブレード全体としての剛性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の切断用ブレード及びその製造方法によれば、多孔質体であるビトリファイドボンド相の機能を良好に維持しつつ導電性を安定して付与することができ、かつ製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る切断用ブレードを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る切断用ブレードの断面を模式的に表す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る切断用ブレードの製造方法を説明する図である。
図4】従来の切断用ブレードの製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る切断用ブレード10について、図面を参照して説明する。なお、本発明の実施形態の説明に用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、要部となる部分を拡大、強調、抜粋して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際のものと同じであるとは限らない。
【0025】
本実施形態の切断用ブレード10は、化合物半導体素子や電子部品基板等の被切断材の精密切断加工に用いられる。
具体的に、この切断用ブレード10は、被切断材として、例えば、パワーデバイスに用いられる炭化ケイ素(SiC)や車載用LEDのベース材となる高純度アルミナ(Al)や窒化アルミ(AlN)、LEDチップのベース材となるサファイアなど、非常に硬度が高く、所謂難削材と称される材料の精密切断加工に特に適している。
【0026】
図1及び図2に示されるように、切断用ブレード10は、円板状をなし、外周縁部に切れ刃1Aが形成され、砥粒2が分散された多孔質体のビトリファイドボンド相1と、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に形成された目止め膜3と、目止め膜3上に形成された導電性のめっき層4と、を備えている。この切断用ブレード10は、中心軸O方向の外側を向く端面(外面)にめっき層4を備えたことにより、通電機能(導電性)を有している。
【0027】
本実施形態の切断用ブレード10は、図示しない切断加工装置(ダイサー)の主軸にフランジを用いて取り付けられる、ワッシャタイプ(平円板形)の薄刃ブレードである。切断用ブレード10は、切断加工装置の主軸によって中心軸O回りに回転させられつつ、被切断材に対して中心軸Oに垂直な方向(具体的には、高さ方向であるZ方向)に移動させられることにより、切断用ブレード10のうちフランジよりも径方向外側に突出させられた外周縁部(切れ刃1A)で、被切断材を切断加工する。
【0028】
また切断加工装置は、電気式手法により、切断用ブレード10の切れ刃1AのZ方向位置を検出する。つまり、切断用ブレード10を介して、切断加工装置の主軸と、被切断物(又は被切断物と同じ厚さの導電体)との間の通電を検出することで、切断用ブレード10の切れ刃位置(Z方向位置)を測定し、ゼロ点(切断基準位置)を補正することが可能である。
【0029】
本実施形態においては、切断用ブレード10(のビトリファイドボンド相1)の中心軸Oが延在する方向(中心軸Oに沿う方向)を、中心軸O方向という。中心軸O方向は、切断用ブレード10の厚さ方向に相当する。また、中心軸O方向に沿ってブレード外部から内部へ向かう方向を中心軸O方向の内側といい、中心軸O方向に沿ってブレード内部から外部へ向かう方向を中心軸O方向の外側という。
また、中心軸Oに直交する方向を径方向という。径方向のうち、中心軸Oに接近する向きを径方向の内側といい、中心軸Oから離間する向きを径方向の外側という。
また、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0030】
切断用ブレード10の外径は、例えば54mm程度であり、内径(後述する取付孔1Bの内径)は、例えば40mm程度である。切断用ブレード10の中心軸O方向に沿う厚さは、例えば200μm以下であり、好ましくは150μm以下である。
【0031】
切れ刃1Aは、切断用ブレード10の中心軸O方向を向く一対の面(一対の端面(外面)であり、表面及び裏面であり、切断加工装置に取り付けられた状態では一対の側面である)における各外周縁部と、切断用ブレード10の外周面と、前記各外周縁部と前記外周面との交差稜線をなす一対のエッジと、によって形成されている。切れ刃1Aの刃幅は、切断用ブレード10の前記厚さに対応している。
【0032】
ビトリファイドボンド相1は、切断用ブレード10の基材であり、ブレード本体と言い換えることができる。ビトリファイドボンド相1は、例えば、AlやSiOを主成分とした材質により形成されている。ビトリファイドボンド相1は、多孔質状をなすガラス状結合相であり、該ボンド相1には複数の気孔5が形成されている。つまり、ビトリファイドボンド相1は、硬質材料である砥粒2同士をガラス結合橋により結合し、砥粒2間に気孔5を有する構造である。ビトリファイドボンド相1に占める気孔5の体積率は、例えば、20~30%である。ビトリファイドボンド相1の内部において、複数の気孔5同士は互いに連通している。つまり、これらの気孔5は連続気孔である。
【0033】
ビトリファイドボンド相1の径方向の中央部(中心軸O上)には、該ビトリファイドボンド相1を中心軸O方向に貫通する円孔状の取付孔1Bが形成されている。このためビトリファイドボンド相1は、具体的には円形リング板状をなしている。つまり、本実施形態でいう「円板状のビトリファイドボンド相1」には、円形リング板状のビトリファイドボンド相1が含まれる。切断用ブレード10の取付孔1B内には、切断加工装置の主軸が挿通される。
【0034】
ビトリファイドボンド相1に分散される砥粒2は、例えばダイヤモンド砥粒である。砥粒2の平均粒径は、切断用ブレード10の中心軸O方向の厚さに応じて適宜選択されることが好ましい。具体的に、本実施形態の一例としては、切断用ブレード10の厚さに対し、1/4~1/5程度の平均粒径を有する砥粒2を使用するのが砥粒限界粒径(上限)であり、所期する加工品位に応じて、これより細かな(小さな)平均粒径を有する砥粒2を使用する。つまり、ブレード厚さが200μmの場合、砥粒2の平均粒径は40~50μmが最大であり、加工品位により、平均粒径10μmを使用するなどは任意となる。
【0035】
上記「平均粒径」とは、多数の砥粒2の粒径の平均値を表しており、例えば、ある粒径範囲をもった砥粒2をマイクロトラック(登録商標)などにより測定し、平均粒径を算出する等の方法が取られる。
【0036】
気孔5は、ビトリファイドボンド相1内において隣り合う砥粒2同士の間に形成されている。ビトリファイドボンド相1に分散される砥粒2の含有率(ボンド相1に占める砥粒2の体積率)は、例えば、12.5~25%である。ビトリファイドボンド相1には、砥粒2以外に、砥粒2よりも平均粒径の小さいフィラーが分散されていてもよい。フィラーの材質は、例えばSiCである。
【0037】
目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く一対の面(一対の端面(外面)であり、表面及び裏面である)上にそれぞれ形成されており、ボンド相1の気孔5を中心軸O方向から目止めしている。つまり、目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向の両外側に配置され、該ボンド相1を中心軸O方向から覆っている。目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面を被覆する被覆膜と言い換えることができる。目止め膜3によって、ビトリファイドボンド相1の気孔5と、ブレード外部と、の中心軸O方向(ブレード厚さ方向)の連通が遮断されている。目止め膜3は、気孔5全体を埋めてしまうことはなく、気孔5のうちブレード外部への開口部のみを塞いでいる。
【0038】
本実施形態の例では、目止め膜3が、蒸着膜である。目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の表面及び裏面に、片面ずつ蒸着により形成される。目止め膜3の材質は、ビトリファイドボンド相1に蒸着可能なものであり、例えばAu、Ag、Cu、Co、Al、Ni等であって、酸化防止の観点からは、好ましくはAu又はAgである。目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の気孔5を目止め可能な厚さに形成されていればよく、具体的に本実施形態の例では、非常に薄膜に形成されていて、一般的な手法で測定できる厚み範囲ではない。
【0039】
めっき層4は、目止め膜3の中心軸O方向の外側に配置されている。具体的に、めっき層4は、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向の両外側に配置された一対の目止め膜3上に、それぞれ形成されている。
【0040】
めっき層4は、通電機能(導電性)を有する材質により形成されている。めっき層4の材質は、例えばNi、Cu等である。本実施形態のめっき層4は、無電解めっきにより、一対の目止め膜3上に一対形成されている。
めっき層4の厚さは、目止め膜3の厚さより厚く、ビトリファイドボンド相1の厚さよりは薄い。めっき層4は、切断用ブレード10に導電性を付与することが可能な厚さに形成される。具体的に、めっき層4の厚さは、例えば0.5~10μmである。より詳しくは、通電だけを可能にする場合には、0.5~2μmであることが好ましく、通電に加え強度向上を目的とする場合には、1~10μmであることが好ましい。切断用ブレード10の中心軸O方向の厚さが150μm以下である場合には、めっき層4の厚さは、例えば5μm程度である。
【0041】
めっき層4が形成された切断用ブレード10の電気抵抗値(めっき層4上における径方向内端と外端との間の抵抗値)は、常温(20℃±15℃)において例えば、10~500Ωである。めっき層4には、例えばダイヤモンド砥粒やcBN砥粒等の砥粒が分散されていてもよい。
【0042】
次に、切断用ブレード10の製造方法について、図3(a)~(c)を参照して説明する。
本実施形態の切断用ブレード10の製造方法は、ボンド相形成工程と、目止め膜形成工程と、めっき層形成工程と、をこの順に備えている。
【0043】
〔ボンド相形成工程〕
ボンド相形成工程では、ビトリファイドボンド相1の材料であるビトリファイド粉末及び砥粒2を混合したものを金型にセットし、圧力を加えて円板状に成型し、この円板成形体を焼結することにより、図3(a)に示されるような、複数の気孔5を有する多孔質体のビトリファイドボンド相1を形成する。なお、ビトリファイドボンド相1に砥粒2及びフィラーを分散させる場合には、上述の混合時において、ビトリファイド粉末、砥粒2及びフィラーを混合する。
【0044】
上記円板成形体の外形寸法は、焼結後の収縮量及び研削・ラップ処理代等を考慮して設定する。具体的に、上記円板成形体の外径は、製造する切断用ブレード10の外径よりも大きく設定する。また、上記円板成形体の内径は、製造する切断用ブレード10の内径よりも小さく設定する。また、上記円板成形体の厚さは、製造する切断用ブレード10(の少なくともビトリファイドボンド相1)の厚さよりも大きく設定する。
【0045】
焼結は、上記円板成形体を焼結炉に入れて加熱することにより行う。
上記円板成形体を焼結した後は、焼結により得られた切断用ブレード中間体の外径及び内径を、所定の大きさに研削する。また、切断用ブレード中間体の厚さを、所定の厚さにラップ処理する。研削・ラップ処理後は、切断用ブレード中間体を洗浄し乾燥する。
【0046】
〔目止め膜形成工程〕
次に、目止め膜形成工程において、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に、目止め膜3を形成する。本実施形態の例では、目止め膜3を蒸着により形成する。具体的には、図3(b)に示されるように、ビトリファイドボンド相1の表面及び裏面に、上述した目止め膜3の材質を片面ずつ蒸着して、一対の目止め膜3を形成する。なお、この際、目止め膜3がビトリファイドボンド相1の外周面(径方向外側を向く周面)に形成されてもよい。
【0047】
〔めっき層形成工程〕
次に、めっき層形成工程において、目止め膜3上に、通電機能を有する導電性のめっき層4を形成する。本実施形態の例では、めっき層4を無電解めっきにより形成する。具体的には、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に目止め膜3を形成して得られた上記切断用ブレード中間体を、めっき液中に配置し、図3(c)に示されるように、一対の目止め膜3上にそれぞれめっき層4を析出させる。この際、めっき層4の厚さが、目止め膜3の厚さよりも厚く、ビトリファイドボンド相1の厚さよりも薄い所定厚さの範囲となるように、めっき層4を形成する。なお、めっき層4は、ビトリファイドボンド相1の外周面に形成された目止め膜3上に形成されてもよい。
【0048】
めっき層4が形成された上記切断用ブレード中間体に対して、必要に応じて、ツルーイング(形直し)及びドレッシング(目立て)が施される。
最後に検査が行われて、切断用ブレード10が製造される。なお、切断用ブレード10の外周面(切れ刃1A上)に形成された目止め膜3及びめっき層4については、ツルーイング及びドレッシング等により切れ刃1Aから取り除かれるか、又は切断加工時の摩擦抵抗等により自然に切れ刃1Aから除去される。
【0049】
以上説明した本実施形態の切断用ブレード10、及びその製造方法により製造された切断用ブレード10は、多孔質体のビトリファイドボンド相1を有するビトリファイドブレードである。そして、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上には、目止め膜3が形成され、この目止め膜3上に、導電性のめっき層4が形成されている。
つまり、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に、まず目止め膜3を形成することにより、ボンド相1を目止めして気孔5を覆った状態とし、この目止め膜3上にめっき層4を形成している。
【0050】
このため、切断用ブレード10の製造時において、めっき層4を形成する際に、めっき液がボンド相1内に含浸されていくことを防止できるとともに、ボンド相1の気孔5がめっきで埋められてしまうことを防止できる。従って、切断加工時において、ビトリファイドボンド相1の外周縁部に形成された切れ刃1Aによる切断能力が、安定して高められる。具体的には、ボンド相1に形成された多数の気孔5によって、切屑を一時的に保持して排出させることで切屑排出性を良好に維持する機能や、冷却水を取り込んで冷却効果を高める機能や、適度に自生発刃作用を促す機能等が存分に発揮されて、高精度で安定した切断加工を行うことができる。
【0051】
また、ボンド相1内にめっきが含浸されないので、目止め膜3上にめっき層4を形成するためのめっき時間を短くすることができる。しかも、ブレード外面に露出するめっき層4によって切断用ブレード10に確実に導電性を付与することができ、該切断用ブレード10を切断加工装置に装着して被切断材を切断加工する際に、電気的な接点をとって(つまり電気式手法で)切れ刃1A位置を正確に管理することができる。
【0052】
また、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向の外側にめっき層4が配置されているため、切断用ブレード10全体としての靱性を向上させることができ、ブレード強度が高められる。従って、工具寿命を延ばすことができ、切断効率が向上する。
また、上記配置とされためっき層4によって、切れ刃1Aの刃痩せを抑制することができる。つまり、切れ刃1Aの刃先が、その断面視で径方向外側へ向けた凸V字状となるように摩耗進行する不具合を抑制できる。従って、切断の加工品位を良好に維持することができる。
【0053】
以上より本実施形態によれば、多孔質体であるビトリファイドボンド相1の機能を良好に維持しつつ、切断用ブレード10に安定して導電性を付与することができ、かつ切断用ブレード10の製造が容易である。
【0054】
ここで、本実施形態による作用効果をより理解しやすくするため、図4(a)、(b)を参照して、従来の切断用ブレード20及びその製造方法について説明する。
図4(a)に示されるように、従来においても、まずボンド相形成工程にてビトリファイドボンド相1が形成される。しかしながら次の工程では、図4(b)に示されるように、ビトリファイドボンド相1に対して直接的にめっき処理工程が施される。
【0055】
つまり、ブレード外部に気孔5が開口された状態のビトリファイドボンド相1に対してめっきが施されるため、ビトリファイドボンド相1内にめっき液が含浸されていき、該ボンド相1の多数の気孔5がめっき部14によって埋められてしまう(気孔5がめっき部14によって置換される)。このため、ビトリファイドボンド相1の多数の気孔5によって得られるべき上述の各種機能が損なわれる。また、ボンド相1内にめっきが含浸されていく分だけ、切断用ブレード20に十分な導電性を付与するために要するめっき時間が長くかかってしまい、生産効率が低下する。
このような従来の問題点を、本実施形態によれば解決できるのである。
【0056】
また本実施形態では、目止め膜3が蒸着膜であるので、該目止め膜3によって、ビトリファイドボンド相1の気孔5を確実に目止めする(覆う)ことができる。また、ボンド相1の中心軸O方向を向く面上に目止め膜3を形成するにあたり、全体にムラなく成膜でき、膜厚を均一化することが容易であり、切断用ブレード10を精度よく安定して製造できる。
【0057】
また本実施形態では、切断用ブレード10の中心軸O方向の厚さが、200μm以下であり、好ましくは150μm以下である。
従来では、脆性材料であるビトリファイドボンド相を有する切断用ブレードを、200μm以下、特に150μm以下の厚さまで薄肉化することは困難であった。すなわち、切断用ブレードの厚さを200μm以下とすると、切断用ブレードを切断加工装置の主軸にフランジでセットする際や、切断加工時の負荷や外力等により、ビトリファイドブレードは破損しやすかった。そして、切断用ブレードの厚さを150μm以下とした場合には、この問題がより生じやすかった。
一方、本実施形態の切断用ブレード10は、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向の外側に、めっき層4及び目止め膜3が形成されているので、切断用ブレード10の厚さを200μm以下、特に150μm以下にまで薄肉化した場合であっても、ブレード強度が十分に確保される。
【0058】
従って、切断加工時(ダイシング時)のカーフ幅(切断加工により被切断材に形成される切断ラインの幅)を小さく抑えることができ、その分被切断材の材料歩留まりを向上でき、かつ、化合物半導体素子や電子部品基板等のさらなる小型化への要求に容易に対応可能である。
【0059】
また本実施形態において、めっき層4にも砥粒を分散させた場合には、該めっき層4の強度がより高められる結果、ブレード全体としての剛性をさらに向上させることができる。
【0060】
また本実施形態では、めっき層4の厚さを、0.5~10μmとした。具体的には、通電用には、めっき層4の厚さを0.5~2μmとし、通電及び強度向上用には、めっき層4の厚さを1~10μmとした。これにより、下記の作用効果が得られる。
すなわち、めっき層4の厚さが、0.5μm以上であるので、該めっき層4によって切断用ブレード10に十分な導電性(通電機能)を付与することができ、かつ、切れ刃1Aの刃幅方向の両端における摩耗を抑制して、刃痩せを防止することができる。
また、めっき層4の厚さが、10μm以下であるので、めっき層形成工程において、めっき層4を形成するためのめっき時間が長くかかり過ぎることがなく、切断用ブレード10の生産効率を確実に向上させることができる。
【0061】
なお、通電だけを可能にする場合には、めっき層4に砥粒が分散されていない(めっき層4に砥粒を含まない)ことが好ましい。これにより、砥粒を保持する目的でめっき層4を厚く形成する必要がなくなり、めっき層4を確実に薄くしてめっき効率を高めることができ、また製造コストを削減できる。
また、通電に加え強度向上を目的とする場合には、めっき層4に砥粒が分散されていることが好ましい。これにより、切断用ブレード10の剛性を確実に高めることができる。
【0062】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
前述の実施形態では、被切断材として、例えば化合物半導体素子や電子部品基板等を例に挙げたが、それ以外の電子材料部品の個片化において切断用ブレード10を用いてもよい。
【0064】
また、前述の実施形態では、切断用ブレード10がワッシャタイプ(平円板形)であるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、切断用ブレード10は、ビトリファイドボンド相1が台金に設けられ、この台金ごと切断加工装置の主軸に取り付けられるハブタイプの薄刃ブレード(ハブ付きブレード)であってもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では、ビトリファイドボンド相1に分散される砥粒2としてダイヤモンド砥粒を用いることとしたが、これに代えて、又はこれとともに、cBN砥粒を用いてもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、目止め膜3が蒸着膜であるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、目止め膜3は、スパッタリングによってビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に形成されたスパッタ膜であってもよい。また、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に塗布により形成された塗布膜であってもよい。
つまり、目止め膜3は、ビトリファイドボンド相1の気孔5を目止め可能な膜であればよく、具体的には、気孔5へのめっき液の浸入を防止できる膜であればよい。従って、目止め膜3の材質は、金属材料に限定されるものではなく、それ以外の例えば樹脂材料等であってもよい。
【0067】
また、前述の実施形態では、めっき層4が、無電解めっきにより目止め膜3上に形成されているとしたが、電解めっきにより目止め膜3上に形成されてもよい。
【0068】
また本発明は、前述の実施形態で説明した切断用ブレード10の外径、内径、中心軸O方向の厚さ、目止め膜3の厚さ、めっき層4の厚さ、ビトリファイドボンド相1に占める気孔5の体積率及び砥粒2の体積率等の各数値範囲に、限定されるものではない。
【0069】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0070】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0071】
〔切断用ブレードの製造例〕
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明した切断用ブレード10を下記の手順で製造した。
【0072】
まず、ビトリファイドボンド相1の原料であるビトリファイド粉末、平均粒径20~30μmのダイヤモンド砥粒2、及びフィラー(#3000のSiC等)を混合し、これを金型にセットし、圧力を加えて、外径55mm、内径39mm、厚さ250μmの円板成形体とした。
【0073】
次に、上記円板成形体を焼結炉に投入し、炉内温度800℃にて1時間保持し焼結した。
次に、焼結により得られた切断用ブレード中間体の内外径を研削して、外径54mm、内径40mmとした。また、この切断用ブレード中間体をラップ処理して、厚さ200μmとした。
【0074】
この切断用ブレード中間体を十分に洗浄し乾燥した後、ビトリファイドボンド相1の中心軸O方向を向く面上に金(Au)蒸着を行い、目止め膜3を形成した。
蒸着条件は、下記の通りである。
・使用機械 島津製作所製 真空蒸着装置E-25OA型
・到達圧力 9×10-3Pa
・電流値 10A
また蒸着は、ボンド相1の表面及び裏面に対して、片面1分程度ずつ行った。
【0075】
次に、目止め膜3が形成された上記切断用ブレード中間体をめっき液に投入し、無電解めっきにより目止め膜3上にめっき層4を析出させた。
めっき条件は、下記の通りである。
・めっき液 日本カニゼン社 ブルーシューマー(登録商標)20%めっき液
・めっき温度 80℃
まためっき時間は、10分程度とした。
【0076】
めっき層4が形成されて得られた切断用ブレード10の電気抵抗値(切断用ブレード10の表面又は裏面における径方向内端と外端との間の抵抗値)は、常温で100Ωであった。つまり、切断用ブレード10に対して十分な導電性が付与されていることが確認された。
【0077】
従来例の切断用ブレード20を、下記の手順により製造した。
まず、ビトリファイドボンド相1の原料であるビトリファイド粉末、平均粒径20~30μmのダイヤモンド砥粒2、及びフィラー(SiC等)を混合し、これを金型にセットし、圧力を加えて、外径55mm、内径39mm、厚さ250μmの円板成形体とした。
【0078】
次に、上記円板成形体を焼結炉に投入し、炉内温度800℃にて1時間保持し焼結した。
次に、焼結により得られた切断用ブレード中間体の内外径を研削して、外径54mm、内径40mmとした。また、この切断用ブレード中間体をラップ処理して、厚さ200μmとした。
【0079】
この切断用ブレード中間体を十分に洗浄し乾燥した後、めっき液に投入し、無電解めっきを行う。ただし、従来例の切断用ブレード中間体は、非導電体のために、めっき前処理が必要である。
めっき前処理の条件は、下記の通りである。
・前処理液 日本カニゼン社 レッドシューマー(登録商標)5%めっき液
切断用ブレード中間体を上記前処理液に常温にて5分浸漬し、純水に浸漬した後、下記のめっき処理を行う。
めっき条件は、下記の通りである。
・めっき液 日本カニゼン社 ブルーシューマー(登録商標)20%めっき液
・めっき温度 80℃
まためっき時間は、10分程度とした。
【0080】
めっき処理により得られた切断用ブレード20の電気抵抗値(切断用ブレード20の表面又は裏面における径方向内端と外端との間の抵抗値)は、常温で100kΩ以上であった。つまり、切断用ブレード20に対して導電性が付与されているとは到底いえなかった。
なお、従来例の切断用ブレード20において、上述した本発明の実施例の切断用ブレード10と同等の導電性を付与するには、めっき時間が20~30倍(つまり200分から5時間)必要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の切断用ブレード及びその製造方法によれば、多孔質体であるビトリファイドボンド相の機能を良好に維持しつつ導電性を安定して付与することができ、かつ製造が容易である。従って、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0082】
1 ビトリファイドボンド相
1A 切れ刃
2 砥粒
3 目止め膜
4 めっき層
10 切断用ブレード
O 中心軸
図1
図2
図3
図4