(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20220302BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F3/34 230
(21)【出願番号】P 2018027621
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 敦
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05294892(US,A)
【文献】特開平02-260712(JP,A)
【文献】特開平06-048246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0267687(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、
前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け
、
前記電圧クランプ素子は、前記位相補償容量の前記一端と前記電源端子との間に、前記電源端子の側がカソードとなるように接続された第1ダイオードであることを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、
前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け、
前記差動増幅回路が第1及び第2NPNトランジスタで構成され、前記ベース接地回路が前記第1NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1PNPトランジスタと前記第2NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第2PNPトランジスタで構成され、該第2PNPトランジスタのコレクタに前記位相補償容量の前記一端が接続され、前記第2PNPトランジスタをVPNP構造とし、前記第2PNPトランジスタのコレクタと前記電源端子の間に寄生する第2ダイオードを前記電圧クランプ素子としたことを特徴とする演算増幅器。
【請求項3】
接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、
前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け、
前記差動増幅回路が第1及び第2NPNトランジスタで構成され、前記ベース接地回路が前記第1NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1PNPトランジスタと前記第2NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第2PNPトランジスタで構成され、該第2PNPトランジスタのコレクタに前記位相補償容量の前記一端が接続され、前記電圧クランプ素子は、前記第2PNPトランジスタのベースと前記電源端子の間に、前記電源端子の側がカソードとなるように接続された第3ダイオードであることを特徴とする演算増幅器。
【請求項4】
請求項1、2
又は3に記載の演算増幅器において、
前記電流出力回路は、前記第1入力端子に入力する電流を前記電圧増幅回路により制御して前記出力端子に出力する第5及び第6PNPトランジスタで構成したことを特徴とする演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は差動入力端子間の電圧を電流信号で出力する電流センス回路として好適な演算増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に、モータ、インバータその他の測定対象物に流れる電流を検出する電流センス回路として機能する演算増幅器10Dを示す。測定対象物20は電圧源21の電圧Vaで動作し検出抵抗Rsが直列接続される。検出抵抗Rsにはそこを流れる電流Isによって電圧Vsが発生する。演算増幅器10Dはこの電圧Vsを入力抵抗Rinを介在して取り込み、入力抵抗Rinに流れる電流を内部で制御して出力電流Ioutとして出力する。
【0003】
演算増幅器10Dにおいて、11は反転入力端子、12は非反転入力端子、13は出力端子、14は電源端子、15は接地GNDに接続される接地端子、16は電圧V2の内部電圧源、17は内部基準電圧ライン、18は経路である。NPNトランジスタQn1,Qn2、抵抗R1,R2、電流源I1は折返しカスコード回路型差動増幅回路の入力段の差動回路を構成する。PNPトランジスタQp3、抵抗R3、電流源I2は、バイアス回路を構成する。PNPトランジスタQp1,Qp2はそのバイアス回路でベースバイアスされるベース接地回路、NPNトランジスタQn3,Qn4と抵抗R4,R5はベース接地回路の能動負荷としてのカレントミラー回路であり、これらベース接地回路とカレントミラー回路は折返しカスコード回路型差動増幅回路の出力段を構成する。PNPトランジスタQp4、NPNトランジスタQn5,Qn6、抵抗R6、電流源I3,I4は電圧出力回路を構成する。位相補償容量C1は、トランジスタQp2のコレクタのノードAとトランジスタQn6のコレクタのノードBとの間に接続されている。PNPトランジスタQp5,Qp6と抵抗R7,R8は、入力抵抗Rinから経路18を経由して流れる電流を電圧増幅回路によって制御して出力電流Ioutとして出力する電流出力回路を構成する。Routは出力抵抗である。そして、この演算増幅器10Dは電源端子14の電圧V1と内部基準電圧ライン17の電圧V2aの差分、つまり内部電圧源16の電圧V2によって動作する。位相補償容量と電流出力端子をもつ演算増幅器に類似の演算増幅器としては、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、演算増幅器10Dの使用条件が入力端子11に36Vの電圧まで印加される条件である場合において、電圧源30の電圧V1が36Vであるとする。この場合は各素子には耐圧が40Vのものが使用される。そして、この電圧源30の電圧V1の変動の影響を防止するために、電源端子14と内部基準電圧ライン17との間に電圧源16によって電圧V2が印加される。この電圧源16の電圧V2は例えば4Vである。この結果、この演算増幅器10Dの内部基準電圧ライン17に加わる電圧V2aは、
V2a=V1-V2
=36-4=32(V) (1)
となる。
【0006】
よって、このときのトランジスタQp4のベース・エミッタ間電圧をVbe(Qp4)、トランジスタQn5のベース・エミッタ間電圧をVbe(Qn5)、トランジスタQn6のベース・エミッタ間電圧をVbe(Qn6)とし、それらを0.7(V)とすれば、位相補償容量C1のノードAの電圧VAは、
VA=V2a+Vbe(Qn5)+Vbe(Qn6)-Vbe(Qp4)
=32+0.7+0.7-0.7=32.7
≒32(V) (2)
となる。
【0007】
次に、入力端子11が接地GNDに短絡した場合を考える。この場合、演算増幅器10Dの内部基準電圧ライン17の電圧V2aは0(V)ではなく、式(1)のように32(V)であるために、太線で示す経路で内部基準電圧ライン17から、抵抗R6、トランジスタQn6のベース・コレクタ間のPN接合部、抵抗R7、トランジスタQp6のコレクタ・ベースのPN接合部、抵抗R8、経路18を経由して、入力端子11から接地GNDに短絡電流が流れる。このため、ノードBの電圧VBは、トランジスタQn6のコレクタ・ベースのPN接合部の電圧をVcb(Qn6)、トランジスタQp6のコレクタ・ベースのPN接合部の電圧をVcb(Qp6)とすれば、
VB=[(V2a-Vcb(Qn6)-Vcb(Qp6)]×(R7+R8)/
[(R6+R7+R8)]+Vcb(Qp6)≒8(V) (3)
程度となる。ただし、Vcb(Qn6)=Vcb(Qp6)=0.7(V)、R6=10(kΩ)、R7=3(kΩ)、R8=0.2(kΩ)である。
【0008】
よってこの場合は、ノードAの電圧VA=32(V)、ノードBの電圧VB=8(V)であるので、位相補償容量C1の両端間の電圧VC1は、
VC1=VA-VB
=32-8=24(V) (4)
となる。
【0009】
次に、入力端子11と接地GNDの間の短絡状態が解消されると、ノードBの電圧VBが8(V)から電圧源30の電圧である36(V)に上昇する。このため、位相補償容量C1のノードAの電圧VAは、
VA=32+(36-8)=60(V) (5)
となって素子耐圧40Vを超えるため、各素子が破壊してしまう。
【0010】
接地GNDの電圧よりも高い電圧V2aを内部基準電圧ライン17に印加して電圧源30の電圧V1の変動の影響を抑制することは、位相補償容量C1を備えた他の演算増幅器にも適用されている。このため、上記の例のように位相補償容量の一方のノードAの電圧が大きく変化する事態が発生し、大きな問題が発生する。
【0011】
本発明の目的は、内部基準電圧ラインに接地の電圧よりも高い電圧が印加される演算増幅器において、入力端子が接地に短絡しその後に短絡が解消した場合に上記したような問題が発生することを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け、前記電圧クランプ素子は、前記位相補償容量の前記一端と前記電源端子との間に、前記電源端子の側がカソードとなるように接続された第1ダイオードであることを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け、前記差動増幅回路が第1及び第2NPNトランジスタで構成され、前記ベース接地回路が前記第1NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1PNPトランジスタと前記第2NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第2PNPトランジスタで構成され、該第2PNPトランジスタのコレクタに前記位相補償容量の前記一端が接続され、前記第2PNPトランジスタをVPNP構造とし、前記第2PNPトランジスタのコレクタと前記電源端子の間に寄生する第2ダイオードを前記電圧クランプ素子としたことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、接地端子との間に電源電圧が印加される電源端子と、前記電源電圧より低く前記接地端子の電圧よりも高い電圧が印加される内部基準電圧ラインと、第1及び第2入力端子を有する差動回路で構成された入力段並びにベース接地回路とカレントミラー回路で構成された出力段からなる折返しカスコード型の差動増幅回路と、該差動増幅回路の前記出力段に接続される電圧増幅回路と、前記第1入力端子に流れる電流を前記電圧増幅回路の出力信号に応じて制御して出力端子から出力する電流出力回路と、一端が前記電圧増幅回路の入力側に接続され他端が前記電圧増幅回路の出力側に接続される位相補償容量とを備え、前記差動増幅回路と前記電圧増幅回路が前記電源端子と前記内部基準電圧ラインとの間に接続されている演算増幅器において、前記位相補償容量の前記一端を所定電圧にクランプする電圧クランプ素子を設け、前記差動増幅回路が第1及び第2NPNトランジスタで構成され、前記ベース接地回路が前記第1NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第1PNPトランジスタと前記第2NPNトランジスタのコレクタにエミッタが接続される第2PNPトランジスタで構成され、該第2PNPトランジスタのコレクタに前記位相補償容量の前記一端が接続され、前記電圧クランプ素子は、前記第2PNPトランジスタのベースと前記電源端子の間に、前記電源端子の側がカソードとなるように接続された第3ダイオードであることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載の演算増幅器において、前記電流出力回路は、前記第1入力端子に入力する電流を前記電圧増幅回路により制御して前記出力端子に出力する第5及び第6PNPトランジスタで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、位相補償容量の一端の電圧を電圧クランプ素子によってクランプできるので、第1入力端子が接地に短絡しその後に短絡が解消した際に位相補償容量の他端の電圧が変動しても、位相補償容量の一端の電圧が大きく変動することを防止でき、素子破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例の演算増幅器の回路図である。
【
図2】本発明の第2実施例の演算増幅器の回路図である。
【
図3】本発明の第3実施例の演算増幅器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施例>
図1に本発明の第1実施例の演算増幅器10Aを示す。
図1の演算増幅器10Aにおいて、
図4で説明した演算増幅器10Dと同じものには同じ符号を付けて重複説明は省略する。
【0016】
モータ、インバータ等の測定対象物20は、電圧源21の電圧Vaが検出抵抗Rsを介して印加されることで、その測定対象物20本来の動作を行い、その動作中に流れる電流Isによって、検出抵抗Rsに検出電圧Vsが発生する。
【0017】
この検出電圧Vsは、入力抵抗Rinを経由して反転入力端子11と非反転入力端子12の間に印加され、トランジスタQn1~Qn4、Qp1~Qp3,抵抗R1~R5、電流源I1,I2で構成される折返しカスコード型差動増幅回路によって増幅され、ノードAに出力される。ノードAの電圧信号は、トランジスタQp4,Qn5,Qn6、抵抗R6、電流源I3,I4で構成される電圧増幅回路によって電圧増幅され、ノードBに出力される。ノードBの電圧信号は、位相補償容量C1によってノードAに帰還される。また、ノードBの電圧信号は、トランジスタQp5,Qp6、抵抗R7,R8で構成される電流出力回路によって、入力端子11から出力端子13に流れる出力電流Ioutを制御する。
【0018】
この演算増幅器10Aでは、トランジスタQn1のベース電流を無視すれば、検出抵抗Rsに発生する電圧Vsによって入力抵抗Rinに流れる電流が制御されて出力電流Ioutとなる。このとき、そのトランジスタQp5は入力端子11、12の間に入力している電圧Vsに応じて制御されるので、出力電流Ioutは入力端子11,12の電圧が同じになるように帰還制御される。このため、抵抗R8の抵抗値を無視すれば、出力電流Ioutは、
Iout=Vs/Rin (6)
として出力端子13に流れる。よって出力電圧Voutは、
Vout=Iout・Rout
=Vs・Rout/Rin (7)
となる。
【0019】
本実施例の演算増幅器10Aでは、
図4で説明した演算増幅器10Dと異なって、ノードAと電源端子14の間にダイオードD1を電圧クランプ素子として接続している。ダイオードD1のアノードはノードAに、カソードは電源端子14に接続されている。このため、ダイオードD1の順方向電圧をVf1=0.7(V)とすると、ノードAの電圧VAは、
VA=V1+Vf1
=36+0.7=36.7(V) (8)
にクランプされる。
【0020】
したがって、入力端子11が接地GNDに短絡し、その後その短絡が解消されたとしても、ノードBの電圧VBは前記したように8(V)から36(V)に上昇するものの、ノードAの電圧VAは式(8)で与えられる電圧でクランプされるため、内部回路の素子に高電圧が印加する惧れは無い。
【0021】
<第2実施例>
図1の演算増幅器10Aでは、ダイオードD1によってノードAの電圧VAをクランプすることはできるものの、ダイオードD1で発生するリーク電流によって入力オフセット電圧などの特性に影響を与えてしまう。また、ダイオードD1の寄生容量によって周波数特性が劣化する惧れもある。
【0022】
そこで、
図2に示す本発明の第2実施例の演算増幅器10Bでは、PNPトランジスタQp1~Qp6をVPNP構造(縦PNP構造)で製造している。NPNトランジスタを製造する工程をそのまま利用してPNPトランジスタを製造する場合には、通常ではラテラルPNP構造(横PNP構造)を採用することが行われるが、本実施例ではPNPトランジスタをVPNP構造で製造する。このVPNPのトランジスタは、そのコレクタと電源端子14に接続される埋込層(図示せず)の間のPN接合に寄生ダイオードが生成する。PNPトランジスタQp2についても同様であり、そのコレクタと電源端子14の間の寄生ダイオードD2の順方向電圧をVf2=0.7(V)とすると、ノードAの電圧VAは、
VA=V1+Vf2
=36+0.7=36.7(V) (9)
にクランプされる。
【0023】
このように第2実施例では寄生ダイオードD2を電圧クランプ素子として使用し、特別なダイオードを使用しないので、第1実施例における上記した問題を防ぐことができる。
【0024】
<第3実施例>
図2の演算増幅器10Bでは、VPNPのための特別な製造プロセスを採用する必要があるので、ウエハプロセス工程が増大するという問題がある。
【0025】
そこで、
図3に示す本発明の第3実施例の演算増幅器10Cでは、トランジスタQp2(ラテラル構造)のベースと電源端子14の間にダイオードD3を電圧クランプ素子として接続している。ダイオードD3のアノードはトランジスタQp3のベースに、カソードは電源端子14に接続されている。このため、ダイオードD3の順方向電圧をVf3、トランジスタQp2のコレクタ・ベースのPN接合部の電圧をVcb(Qp2)とし、それらを0.7(V)とすると、ノードAの電圧VAは、
VA=V1+Vf3+Vcb(Qp2)
=36+0.7+0.7=37.4(V) (10)
にクランプされる。
【0026】
本実施例によれば、ダイオードD3で発生するリーク電流は電流源I2に流れるため、入力オフセット電圧に影響を与えない。また、ダイオードD3の容量も、折返しカスコード回路を構成するトランジスタQp2,Qp3のベースに接続されるため、周波数特性に悪影響を与えない。さらに、VPNPの製造プロセスを採用しないので、コスト増を招くこともない。
【0027】
<その他の実施例>
なお、以上の第1乃至第3実施例では電圧源16を電源端子14と内部基準電圧ライン17の間に接続した場合について説明したが、接地GNDと内部基準電圧ライン17の間に別の電圧源を接続した場合の演算増幅器についても、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10A~10D:演算増幅器、11:反転入力端子、12:非反転入力端子、13:出力端子、14:電源端子、15:接地端子、16:内部電圧源、17:内部基準電圧ライン、18:経路
20:測定対象物、21:電圧源
30:電圧源