(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】光学積層体、液晶表示装置および有機電界発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220302BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220302BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220302BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20220302BHJP
C07D 339/02 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
G02F1/13363
C07D339/02
(21)【出願番号】P 2018183945
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 亮
(72)【発明者】
【氏名】村松 彩子
(72)【発明者】
【氏名】野尻 真裕美
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104317(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/088384(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/008773(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/174015(WO,A1)
【文献】特開2014-063143(JP,A)
【文献】特開2009-242717(JP,A)
【文献】特開2009-265317(JP,A)
【文献】特開2009-179563(JP,A)
【文献】特開2008-273925(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017444(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155498(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0091707(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0059300(US,A1)
【文献】特開2015-163934(JP,A)
【文献】特開2017-167517(JP,A)
【文献】特開2010-084032(JP,A)
【文献】特開2007-304287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H05B 33/02
H01L 51/50
G02F 1/13363
C07D 339/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相差層と、光吸収異方性層とを有する光学積層体であって、
前記位相差層が、下記式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる層であり、
前記光吸収異方性層が、モルホリン環を有する化合物を含有する、光学積層体。
【化1】
ここで、前記式(I)中、
D
1、D
2、D
3およびD
4は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR
1R
2-、-CR
1=CR
2-、-NR
1-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
SP
1およびSP
2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
1およびL
2の少なくとも一方は重合性基を表す。
Arは、芳香環を表す。
【請求項2】
前記重合性液晶化合物が、逆波長分散性を示す化合物である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記式(I)中のArが、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す、請求項2に記載の光学積層体。
【化2】
ここで、前記式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、D
1またはD
2との結合位置を表す。
Q
1は、NまたはCHを表す。
Q
2は、-S-、-O-、または、-N(R
3)-を表し、R
3は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y
1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
4、-NR
5R
6、または、-SR
7を表し、R
4~R
7は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
A
1およびA
2は、それぞれ独立に、-O-、-N(R
8)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R
8は、水素原子または置換基を表す。
Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表す。
D
5およびD
6は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR
1R
2-、-CR
1=CR
2-、-NR
1-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
SP
3およびSP
4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
3およびL
4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
3および
L
4
の少なくとも1つが重合性基を表す。
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する炭素数2~30の有機基を表す。
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
Q
3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【請求項4】
前記式(I)中のArが、ClogP値が4.3以上7.0未満の芳香環を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記光吸収異方性層が、二色性物質を含有する層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記位相差層が、下記式(II)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学積層体。
0.50<Re(450)/Re(550)<1.00 ・・・(II)
ここで、前記式(II)中、Re(450)は、前記位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re(550)は、前記位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表す。
【請求項7】
前記位相差層が、ポジティブAプレートである、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記ポジティブAプレートがλ/4板である、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
円偏光板である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光学積層体を有する、液晶表示装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の光学積層体を有する、有機電界発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、液晶表示装置および有機電界発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差層と偏光子とを有する偏光板が、光学補償や反射防止などを目的として、液晶表示装置や有機電界発光装置などに用いられている。
近年、可視光域の光線が混在している合成波である白色光に対して、全ての波長の光線に対応して同様の効果を与えることができる偏光板(いわゆる広帯域偏光板)の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材と位相差層と偏光層とを有し、位相差層の波長λnmの光に対する複屈折率Δn(λ)が、式(1)および式(2)を満たし、位相差層と偏光層が共にコーティング層であり、位相差層と偏光層の厚さの合計が10μm以下であり、かつ、偏光層が二色性色素を含有することを特徴とする円偏光板が記載されている([請求項1])。
Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (1)
1.00≦Δn(650)/Δn(550) (2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1について検討したところ、位相差層を形成する重合性液晶化合物の種類によっては、形成される光学異方性膜を有する光学積層体(例えば、円偏光板など)が高温高湿下に晒された場合において複屈折率が変化してしまうという湿熱耐久性の問題があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、湿熱耐久性に優れた光学積層体、液晶表示装置および有機電界発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の構造で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる位相差層と、モルホリン環を有する化合物を含有する光吸収異方性層とを有する光学積層体が、湿熱耐久性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 位相差層と、光吸収異方性層とを有する光学積層体であって、
位相差層が、後述する式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる層であり、
光吸収異方性層が、モルホリン環を有する化合物を含有する、光学積層体。
[2] 重合性液晶化合物が、逆波長分散性を示す化合物である、[1]に記載の光学積層体。
[3] 後述する式(I)中のArが、後述する式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す、[2]に記載の光学積層体。
[4] 後述する式(I)中のArが、ClogP値が4.3以上7.0未満の芳香環を表す、[1]~[3]のいずれかに記載の光学積層体。
【0009】
[5] 光吸収異方性層が、二色性物質を含有する層である[1]~[4]のいずれかに記載の光学積層体。
[6] 位相差層が、下記式(II)を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の光学積層体。
0.50<Re(450)/Re(550)<1.00 ・・・(II)
ここで、上記式(II)中、Re(450)は、位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re(550)は、位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表す。
[7] 位相差層が、ポジティブAプレートである、[1]~[6]のいずれかに記載の光学積層体。
[8] ポジティブAプレートがλ/4板である、[7]に記載の光学積層体。
[9] 円偏光板である、[1]~[8]のいずれかに記載の光学積層体。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の光学積層体を有する、液晶表示装置。
[11] [1]~[9]のいずれかに記載の光学積層体を有する、有機電界発光装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿熱耐久性に優れた光学積層体、液晶表示装置および有機電界発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、表記される二価の基(例えば、-O-CO-)の結合方向は、結合位置を明記している場合を除き、特に制限されず、例えば、後述する式(I)中のD1が-CO-O-である場合、シクロヘキサン環に結合している位置を*1、Ar側に結合している位置を*2とすると、D1は、*1-CO-O-*2であってもよく、*1-O-CO-*2であってもよい。
【0012】
[光学積層体]
本発明の光学積層体は、位相差層と、光吸収異方性層とを有する光学積層体である。
また、本発明の光学積層体は、位相差層が、後述する式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる層である。
また、本発明の光学積層体は、光吸収異方性層が、モルホリン環を有する化合物を含有する。
【0013】
本発明においては、上述した通り、後述する式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる位相差層と、モルホリン環を有する化合物を含有する光吸収異方性層とを有することにより、光学積層体の湿熱耐久性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、本発明者らは、位相差層と光吸収異方性層とを有する公知の光学積層体について、湿熱耐久性が劣る原因について検討したところ、光吸収異方性層に、モルホリン環を有する化合物(例えば、モルホリン系の重合開始剤の残存物など)が存在していることにより、これが位相差層にも層間移動し、位相差層に存在している重合後の液晶化合物の加水分解を促進したためであると推察している。
そのため、本発明においては、後述する式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる位相差層を有することにより、位相差層の疎水性が強くなり、光吸収異方性層がモルホリン環を有する化合物を含有する場合であっても、加水分解の進行を抑制することができたため、湿熱耐久性が良好になったと考えられる。
【0014】
〔位相差層〕
本発明の光学積層体が有する位相差層は、後述する式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物(以下、形式的に「本発明の重合性液晶組成物」とも略す。)を重合して得られる層である。
以下、本発明の重合性液晶組成物の各成分について詳細に説明する。
【0015】
<重合性液晶化合物>
本発明の重合性液晶組成物が含有する重合性液晶化合物は、下記式(I)で表される化合物である。
【化1】
【0016】
上記式(I)中、D1、D2、D3およびD4は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR1=CR2-、-NR1-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
また、上記式(I)中、SP1およびSP2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(I)中、L1およびL2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L1およびL2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、後述する式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、L1およびL2ならびに下記式(Ar-3)中のL3およびL4の少なくとも1つが重合性基を表す。
また、上記式(I)中、Arは、芳香環を表す。
【0017】
上記式(I)中、D1~D4が示す2価の連結基としては、例えば、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR1R2-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR1R2-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-CO-O-CR1R2-、-NR1-CR1R2-、および、-CO-NR1-などが挙げられる。なかでも、-CO-O-であることが好ましい。
【0018】
上記式(I)中、SP1およびSP2が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、へプチレン基等が好適に挙げられる。なお、SP1およびSP2は、上述した通り、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、後述する式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0019】
上記式(I)中、L1およびL2が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができる。アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10が更に好ましい。また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0020】
上記式(I)中、L1およびL2の少なくとも一方が示す重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイル基またはメタクリロイル基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。なお、下記式中、*は、重合性基の結合位置を表す。
【0021】
【0022】
上記式(I)中のL1およびL2は、得られる位相差層を有する光学積層体の湿熱耐久性がより良好となる理由から、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることがより好ましい。
【0023】
上記式(I)中、Arが示す芳香環としては、具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記式(I)で表される重合性液晶化合物は、逆波長分散性を示す化合物であることが好ましく、具体的には、上記式(I)中のArが、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す化合物であることがより好ましい。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-5)中、*は、上記式(I)中のD1またはD2との結合位置を表す。
ここで、「逆波長分散性を示す化合物」とは、これを用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
【0025】
【0026】
上記式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R3)-を表し、R3は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
R3が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
Y1が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
また、Y1が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0027】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-5)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR4、-NR5R6、または、-SR7を表し、R4~R7は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基;等が挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子、臭素原子であるのが好ましい。
一方、R4~R7が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0028】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、-O-、-N(R8)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R8は、水素原子または置換基を表す。
R8が示す置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0029】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14~16族の非金属原子を表す。
また、Xが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、水酸基等が挙げられる。
【0030】
また、上記式(Ar-3)中、D5およびD6は、それぞれ独立に、単結合、または、-CO-、-O-、-S-、-C(=S)-、-CR1R2-、-CR1=CR2-、-NR1-、もしくは、これらの2つ以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
ここで、2価の連結基としては、上記式(I)中のD1~D4において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
また、上記式(Ar-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0032】
また、上記式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L3およびL4ならびに上記式(I)中のL1およびL2の少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(I)中のL1およびL2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(I)中のL1およびL2において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Q3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の[0039]~[0095]段落に記載されたものが挙げられる。
また、Q3が示す炭素数1~6のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられ、置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0034】
このような重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(1)~(12)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(1)~(12)中のK(側鎖構造)として、下記表1および表2に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下記表1および表2中、Kの側鎖構造に示される「*」は、芳香環との結合位置を表す。
また、下記表1中の1-2および下記表2中の2-2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【化4】
【0035】
【0036】
【0037】
本発明においては、得られる位相差層を有する光学積層体の湿熱耐久性がより良好となる理由から、上記式(I)中のArで表される基(芳香環)のClogP値は、4.3以上7.0未満であることが好ましく、4.4以上6.9以下であることがより好ましい。
ここで、「ClogP値」とは、1-オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、特に断らない限り、本発明ではCambridge soft社の ChemBioDraw Ultra 13.0に組み込まれたClogPプログラムを用いることとする。
【0038】
<重合開始剤>
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。
使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)等が挙げられる。
また、本発明においては、重合開始剤がオキシム型の重合開始剤であることも好ましく、その具体例としては、国際公開第2017/170443号の[0049]~[0052]段落に記載された開始剤が挙げられる。
【0039】
<溶媒>
本発明の重合性液晶組成物は、位相差層を形成する作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<レベリング剤>
本発明の重合性液晶組成物は、位相差層の表面を平滑に保ち、配向制御を容易にする観点から、レベリング剤を含有することが好ましい。
このようなレベリング剤としては、添加量に対するレベリング効果が高い理由から、フッ素系レベリング剤またはケイ素系レベリング剤であることが好ましく、泣き出し(ブルーム、ブリード)を起こしにくい観点から、フッ素系レベリング剤であることがより好ましい。
レベリング剤としては、具体的には、例えば、特開2007-069471号公報の[0079]~[0102]段落の記載に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0020]~[0032]段落に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された一般式(I)で表される化合物(特に[0022]~[0029]段落に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された一般式(I)で表される液晶配向促進剤(特に[0076]~[0078]および[0082]~[0084]段落に記載された化合物)、特開2005-099248号公報に記載された一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物(特に[0092]~[0096]段落に記載された化合物)などが挙げられる。なお、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0041】
<配向制御剤>
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含有することができる。
配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、コレステリック配向等の種々の配向状態を形成することができ、また、特定の配向状態をより均一かつより精密に制御して実現することができる。
【0042】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤や、高分子の配向制御剤を用いることができる。
低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002-20363号公報の[0009]~[0083]段落、特開2006-106662号公報の[0111]~[0120]段落、および、特開2012-211306公報の[0021]~[0029]段落の記載を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004-198511号公報の[0021]~[0057]段落、および、特開2006-106662号公報の[0121]~[0167]段落を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0043】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、オニウム塩化合物が挙げられ、具体的には、特開2008-225281号公報の[0023]~[0032]段落、特開2012-208397号公報の[0052]~[0058]段落、特開2008-026730号公報の[0024]~[0055]段落、特開2016-193869号公報の[0043]~[0055]段落などに記載された化合物を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0044】
一方、コレステリック配向は、本発明の重合性組成物にキラル剤を加えることにより実現することができ、そのキラル性の向きによりコレステリック配向の旋回方向を制御できる。なお、キラル剤の配向規制力に応じてコレステリック配向のピッチを制御することができる。
【0045】
配向制御剤の含有する場合の含有量は、重合性液晶組成物中の全固形分質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましい。含有量がこの範囲であると、望む配向状態を実現しつつ、析出や相分離、配向欠陥等が無く、均一で透明性の高い位相差層を得ることができる。
これらの配向制御剤は、さらに重合性官能基、特に、本発明の重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物と重合可能な重合性官能基を付与することができる。
【0046】
<その他の成分>
本発明の重合性液晶組成物は、上述した成分以外の成分を含有してもよく、例えば、上述した重合性液晶化合物以外の液晶化合物、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0047】
<形成方法>
上述した本発明の重合性液晶組成物を用いた位相差層の形成方法は特に限定されず、例えば、上述した本発明の重合性液晶組成物を用いて、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法などが挙げられる。
ここで、重合条件は特に限定されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm2~50J/cm2であることが好ましく、20mJ/cm2~5J/cm2であることがより好ましく、30mJ/cm2~3J/cm2であることが更に好ましく、50~1000mJ/cm2であることが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0048】
本発明においては、位相差層の厚みについては特に限定されないが、0.1~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。
【0049】
本発明においては、位相差層が、下記式(II)を満たしていることが好ましい。
0.50<Re(450)/Re(550)<1.00 ・・・(II)
ここで、上記式(II)中、Re(450)は、位相差層の波長450nmにおける面内レターデーションを表し、Re(550)は、位相差層の波長550nmにおける面内レターデーションを表す。なお、本明細書において、レターデーションの測定波長を明記していない場合は、測定波長は550nmとする。
また、面内レターデーションおよび厚み方向のレターデーションの値は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用い、測定波長の光を用いて測定した値をいう。
具体的には、AxoScan OPMF-1にて、平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0050】
本発明においては、位相差層が、ポジティブAプレートまたはポジティブCプレートであることが好ましく、ポジティブAプレートであることがより好ましい。
【0051】
ここで、ポジティブAプレート(正のAプレート)とポジティブCプレート(正のCプレート)は以下のように定義される。
フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、ポジティブAプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示し、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(C1) nz>nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。
「実質的に同一」とは、ポジティブAプレートでは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「nx≒nz」に含まれる。また、ポジティブCプレートでは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0052】
位相差層がポジティブAプレートである場合、λ/4板として機能する観点から、Re(550)が100~180nmであることが好ましく、120~160nmであることがより好ましく、130~150nmであることが更に好ましく、130~140nmであること特に好ましい。
ここで、「λ/4板」とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
【0053】
〔光吸収異方性層〕
本発明の光学積層体が有する光吸収異方性層は、モルホリン環を有する化合物(以下、「モルホリン誘導体」とも略す。)を含有する層である。
【0054】
<モルホリン誘導体>
モルホリン誘導体としては、例えば、光吸収異方性層の形成時に用いるモルホリン系光重合開始剤の残存物、および、この分解物であってモルホリン環を有するもの等が挙げられる。
【0055】
モルホリン系光重合開始剤としては、例えば、下記式(M-1)~(M-3)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
【0056】
上記式(M-1)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、炭素数1~7のアルキル基、または、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を含む1価の有機基を表す。
上記式(M-2)中、R13は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を含む1価の有機基を表す。
上記式(M-3)中、R14は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を含む2価の有機基を表す。
【0057】
ここで、炭素数1~7のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基などが挙げられる。
また、芳香族炭化水素環としては、具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などが挙げられる。
なお、芳香族炭化水素環が有していてもよい置換基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、アルキルチオ基、水酸基等が挙げられる。
【0058】
モルホリン系光重合開始剤としては、市販品を用いることができ、その具体例としては、IRGACURE369〔化合物名:2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、BASF社製〕、IRGACURE379〔化合物名:2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、BASF社製〕、IRGACURE907〔化合物名:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン、BASF社製〕などが挙げられる。
【0059】
本発明においては、光吸収異方性層に含まれるモルホリン誘導体の含有量は特に限定されないが、光吸収異方性層の総質量(固形分)に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。
【0060】
<二色性物質>
本発明の光学積層体が有する光吸収異方性層は、二色性物質を含有していることが好ましい。
上記二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特願2015-001425号公報の[0022]~[0080]段落、特願2016-006502号公報の[0005]~[0051段落]、WO2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、特願2016-044909号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-044910号公報の[0014]~[0033]段落、特願2016-095907号公報の[0013]~[0037]段落、特願2017-045296号公報の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
【0061】
本発明においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、光吸収異方性層を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
【0062】
上記二色性物質は、架橋性基を有していることが好ましい。
上記架橋性基としては、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0063】
本発明において、二色性物質を含有する場合に含有量は、光吸収異方性層の総質量(固形分)に対して、2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0064】
<形成方法>
本発明の光学積層体が有する光吸収異方性層は、塗布方式で形成される層であることが好ましく、具体的には、上述したモルホリン誘導体、および、任意の二色性物質などを含有する組成物(以下、「光吸収異方性層形成用組成物」とも略す。)を用いて塗布により形成する層であることがより好ましい。
【0065】
(液晶化合物)
光吸収異方性層形成用組成物は、上述した二色性物質を含有する場合、二色性物質を配向させる観点から、液晶化合物を含有することが好ましい。
液晶化合物は、二色性を示さない液晶化合物である。
液晶化合物としては、低分子液晶化合物および高分子液晶化合物のいずれも用いることができる。ここで、「低分子液晶化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶化合物のことをいう。また、「高分子液晶化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶化合物のことをいう。
低分子液晶化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶化合物が挙げられる。
高分子液晶化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
液晶化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性物質の含有量100質量部に対して、25~2000質量部が好ましく、33~1000質量部がより好ましく、50~500質量部がさらに好ましい。
【0066】
(その他の成分)
光吸収異方性層形成用組成物は、上述したモルホリン系光重合開始剤以外の重合開始剤、溶媒などを含有していてもよい。
これらの具体例は、上述した本発明の重合性液晶組成物において説明したものが挙げられる。
【0067】
(塗布方法)
光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0068】
(配向処理)
光吸収異方性層形成用組成物は、塗布後において、上述した二色性物質および液晶化合物を含有する場合、これらを配向させる配向処理を施してもよい。
配向処理は、乾燥工程を有していてもよい。乾燥工程によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥工程は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
また、配向処理は、加熱工程を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる二色性物質がより配向し、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる。加熱工程は、製造適性などの面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
また、配向処理は、加熱工程後に実施される冷却工程を有していてもよい。冷却工程は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含有される二色性物質の配向がより固定され、得られる光吸収異方性層の配向度がより高くなる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
【0069】
本発明においては、光吸収異方性層の厚みについては特に限定されないが、0.1~5.0μmであることが好ましく、0.3~1.5μmであることがより好ましい。
【0070】
〔層構成〕
本発明の光学積層体は、上述した位相差層および光吸収異方性層を有する積層体であれば、具体的な層構成は特に限定されないが、例えば、位相差層と光吸収異方性層とが直接接する態様;位相差層と光吸収異方性層との間に粘着剤層を設ける態様;位相差層と光吸収異方性層との間に基材を設ける態様;位相差層と光吸収異方性層との間に基材および配向膜を設ける態様;などが挙げられる。
【0071】
<粘着剤層>
上記粘着剤層としては、例えば、動的粘弾性測定装置で測定した貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(tanδ=G”/G’)が0.001~1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。
本発明に用いることのできる粘着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
<基材>
上記基材は、透明であることが好ましく、具体的には、可視光の透過率が80%以上の基材であることが好ましい。
また、上記基材は、透湿度が高いことが好ましく、具体的には、透湿度が200g/m2/24h以上の基材であることが好ましい。ここで、透湿度とは、JIS Z 0208:1976の「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に記載された手法に従い、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間に通過した水蒸気の量(g/m2/24h)をいう。
【0073】
このような基材としては、例えば、ポリマーフィルムが挙げられ、ポリマーフィルムの材料としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体等のアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;、塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
【0074】
本発明においては、上記基材の厚みについては特に限定されないが、5~80μmであるのが好ましく、10~40μmであるのがより好ましい。
【0075】
<配向膜>
配向膜としては、ポリマー等の有機化合物を含む層のラビング処理膜や無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、あるいはω-トリコサン酸やジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルの如き有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett)膜を累積させた膜などが挙げられる。さらに光の照射で配向機能が生じる配向膜なども挙げられる。
配向膜としては、ポリマーなどの有機化合物を含む層(ポリマー層)の表面をラビング処理して形成されたものを好ましく用いることができる。ラビング処理は、ポリマー層の表面を紙や布で一定方向(好ましくは支持体の長手方向)に数回こすることにより実施される。配向膜の形成に使用するポリマーとしては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特許第3907735号公報の段落番号[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー等を用いることが好ましい。
【0076】
配向膜としては、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向層とした、いわゆる光配向膜を用いることも好ましい態様である。光配向膜には、垂直方向または斜め方向から偏光照射する工程、または、斜め方向から非偏光照射する工程により配向規制力を付与することが好ましい。
光配向膜を利用することで、特定液晶化合物を優れた対称性で水平配向させることが可能である。そのため、光配向膜を利用して形成されたポジティブAプレートは、特にIPS(In-Place-Switching)モード液晶表示装置のように駆動液晶のプレ傾斜角が必要無い液晶表示装置における光学補償に有用である。
【0077】
光配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、またはエステル、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報、特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物、クマリン化合物が挙げられる。特に好ましい例としては、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、エステル、シンナメート化合物、カルコン化合物が挙げられる。
【0078】
本発明においては、上記配向膜の厚さは特に限定されないが、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~1μmであることがより好ましく、0.01~0.5μmであることがさらに好ましい。
【0079】
<その他の層>
本発明の光学積層体は、光吸収異方性層の表面に、偏光子保護フィルムが配置されていてもよい。
偏光子保護フィルムは、光吸収異方性層の片面上(位相差層側とは反対側の表面上)にのみ配置されていてもよいし、光吸収異方性層の両面上に配置されていてもよい。
偏光子保護フィルムの構成は特に制限されず、例えば、いわゆる透明支持体やハードコート層であっても、透明支持体とハードコート層との積層体であってもよい。
ハードコート層としては、公知の層を使用することができ、例えば、多官能モノマーを重合硬化して得られる層であってもよい。
また、透明支持体としては、公知の透明支持体を使用することができ、例えば、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、「セルロースアシレート」という。)や、熱可塑性ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等)、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂を使用することができる。熱可塑性ノルボルネン系樹脂やポリスチレン系樹脂等の含水しにくい樹脂は、偏光板のトータル含水量を抑制するためには好ましい。
偏光子保護フィルムの厚みは特に限定されないが、薄型化等の理由から40μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。
【0080】
[偏光板]
本発明の光学積層体は、偏光板として用いることができる。
特に、上述した位相差層がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、円偏光板として用いることができる。また、上述した位相差層がλ/4板(ポジティブAプレート)である場合、λ/4板の遅相軸と上述した光吸収異方性層の吸収軸とのなす角が30~60°であることが好ましく、40~50°であることがより好ましく、42~48°であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
ここで、λ/4板の「遅相軸」は、λ/4板の面内において屈折率が最大となる方向を意味し、光吸収異方性層の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。
【0081】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、画像表示装置の一例であり、本発明の光学積層体と、液晶セルとを有する。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の光学積層体を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の光学積層体を用いるのがより好ましい。
また、偏光板に含まれる位相差層は、液晶セル側に配置されることが好ましい。
すなわち、本発明の光学積層体は、光学補償フィルムとして好適に使用できる。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0082】
<液晶セル>
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Vertical Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPS(In-Place-Switching)モード、又はTN(Twisted Nematic)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60~120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2-176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n-ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58~59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006-215326号公報、及び特表2008-538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シート(光学補償フィルム)を用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10-54982号公報、特開平11-202323号公報、特開平9-292522号公報、特開平11-133408号公報、特開平11-305217号公報、特開平10-307291号公報などに開示されている。
【0083】
[有機電界発光装置]
本発明の有機電界発光装置の一例である有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置としては、例えば、視認側から、本発明の光学積層体と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が好適に挙げられる。光学積層体に含まれる位相差層は、有機EL表示パネル側に配置されることが好ましい。
すなわち、本発明の光学積層体は、いわゆる反射防止フィルムとして使用される。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0084】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
[実施例1]
〔酸素遮断層形成用組成液A1の調製〕
下記の組成にて、酸素遮断層形成用組成液A1を調製し、攪拌しながら95℃で1時間加熱溶解し、0.45μmフィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
酸素遮断層形成用組成液A1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記変性PVA1 2.0質量部
・純水 70.0質量部
・イソプロピルアルコール 20.0質量部
・メタノール 8.0質量部
・光重合開始剤
(IRGACURE2959、BASF社製) 0.06質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記変性PVA1は、PVA103を原料として、特開平9-152509号公報に記載の方法にて合成した。
【0086】
【0087】
〔光配向膜形成用組成液E1の調製〕
下記の組成にて、光配向膜形成用組成液E1を調製し、攪拌しながら1時間溶解し、45μmフィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光配向膜形成用組成液E1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記光配向材料E-1 5.0質量部
・シクロペンタノン 95.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0088】
光配向材料E-1(平均分子量:51000)
【化7】
【0089】
〔光吸収異方性層形成用組成液P1の調製〕
下記の組成にて、光吸収異方性層形成用組成液P1を調製し、攪拌しながら80℃で2時間加熱溶解し、0.45μmフィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成液P1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性アゾ色素化合物D1 2.7質量部
・下記二色性アゾ色素化合物D2 2.7質量部
・下記二色性アゾ色素化合物D3 2.7質量部
・下記液晶化合物M1 73.0質量部
・重合開始剤IRGACURE369(BASF社製) 3.0質量部
・BYK361N(ビックケミージャパン社製) 0.9質量部
・シクロペンタノン 925.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
液晶化合物M1(下記化合物A/下記化合物B=75/25で混合)
【0094】
【0095】
【0096】
〔積層体1-1の作製〕
<酸素遮断層の形成>
厚み40μmのTAC基材(TG40、富士フイルム社製)の表面に鹸化処理を行った上に、上記酸素遮断層形成用組成液A1をワイヤーバーで塗布した。その後、100℃の温風で2分間乾燥することにより、TAC基材上に厚み1.5μmのポリビニルアルコール(PVA)透明酸素遮断層が形成された透明支持体1が得られた。
【0097】
<光配向膜の形成>
上記透明支持体1上に、上記光配向膜用塗布液E1を塗布し、60℃で2分間乾燥した。その後、得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度4.5mW、照射量500mJ/cm2)を照射し、光配向膜E1を作製した。
【0098】
<光吸収異方性層の形成>
得られた光配向膜E1上に、上記光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで塗布した。
次いで、120℃で60秒間加熱し、室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、厚み1.7μmの光吸収異方性層P1を形成した。
【0099】
<保護層の形成>
形成した光吸収異方性層P1上に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM-403、東亞合成株式会社製)50部、アクリレート樹脂(エベクリル4858 ダイセルユーシービー株式会社製)50部および2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(IRGACURE907、BASF社製)3部をイソプロパノール250部に溶解することにより調製した溶液(保護層形成用組成物)をバーコート法により塗布し、50℃の乾燥オーブンで1分間加熱乾燥した。
得られた乾燥被膜に、紫外線(UV)照射装置(SPOT CURE SP-7、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を、露光量400mJ/cm2(365nm基準)で照射することにより、光吸収異方性層P1上に保護層を形成し、光吸収異方性層P1を含む積層体1-1を作製した。
【0100】
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記の化合物G 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶媒) 64質量部
─────────────────────────────────
【0101】
【0102】
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0103】
上記コア層セルロースアシレートドープおよび上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
溶剤含有率略20質量%の状態でフィルムをドラム上から剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み40μmのセルロースアシレートフィルム1を作製した。セルロースアシレートフィルム1のコア層は厚み36μm、コア層の両側に配置された外層はそれぞれ厚み2μmであった。得られたセルロースアシレートフィルム1のRe(550)は0nmであった。
【0104】
〔ポジティブAプレートA1の作製〕
後述する配向層形成用塗布液1を、#2.4のワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム1上に塗布した。
塗膜が形成されたセルロースアシレートフィルム1を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、配向層P-1を形成し、配向層付きTACフィルムを得た。
─────────────────────────────────
(配向層形成用塗布液1)
─────────────────────────────────
・下記重合体PA-1 100.00質量部
・下記酸発生剤PAG-1 1.00質量部
・イソプロピルアルコール 16.50質量部
・酢酸ブチル 1072.00質量部
・メチルエチルケトン 268.00質量部
─────────────────────────────────
【0105】
【0106】
【0107】
後述する組成の組成物A1を、バーコーターを用いて配向層P-1上に塗布した。
配向層P-1上に形成された塗膜を温風にて120℃に加熱し、その後60℃に冷却した後に、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmにて100mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、続いて120℃に加熱しながら500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射することで、液晶化合物の配向を固定化し、ポジティブAプレートA1を有するTACフィルムを作製した。
ポジティブAプレートA1の厚みは2.5μmであり、Re(550)は144nmであった。また、ポジティブAプレートA1は、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たしていた。Re(450)/Re(550)は、0.82であった。
【0108】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶化合物L-1 42.00質量部
・下記重合性液晶化合物L-2 42.00質量部
・下記重合性液晶化合物L-3 11.00質量部
・下記重合性液晶化合物L-4 5.00質量部
・下記重合開始剤PI-1 0.50質量部
・下記レベリング剤T-1 0.15質量部
・シクロペンタノン 300.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0109】
重合性液晶化合物L-1(上記式(I)中のArのClogP値:4.44)
【化16】
【0110】
重合性液晶化合物L-2(上記式(I)中のArのClogP値:2.62)
【化17】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
〔ポジティブCプレートC1の作製〕
仮支持体として、上記セルロースアシレートフィルム1を用いた。
セルロースアシレートフィルム1を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、フィルム上に純水を3ml/m2塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、フィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1を作製した。
【0116】
─────────────────────────────────
(アルカリ溶液)
─────────────────────────────────
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・含フッ素界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0117】
下記の組成の配向層形成用塗布液2を、#8のワイヤーバーを用いて上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム1上に連続的に塗布した。
塗膜が形成されたセルロースアシレートフィルム1を60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向層を形成した。
─────────────────────────────────
(配向層形成用塗布液2)
─────────────────────────────────
・ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103) 2.4質量部
・イソプロピルアルコール 1.6質量部
・メタノール 36質量部
・水 60質量部
─────────────────────────────────
【0118】
後述するポジティブCプレート形成用塗布液C1を配向層上に塗布し、得られた塗膜を60℃で60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、液晶化合物を垂直配向させ、ポジティブAプレートC1を有するTACフィルムを作製した。
得られたポジティブCプレートC1のRth(550)は、-60nmであった。
【0119】
─────────────────────────────────
(ポジティブCプレート形成用塗布液C1)
─────────────────────────────────
・下記液晶化合物L-11 80質量部
・下記液晶化合物L-12 20質量部
・下記垂直配液晶化合物向剤(S01) 1質量部
・エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
・IRGACURE907(BASF社製) 3質量部
・カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
・下記化合物B03 0.4質量部
・メチルエチルケトン 170質量部
・シクロヘキサノン 30質量部
─────────────────────────────────
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
〔粘着剤付きフィルムの作製〕
特開2017-134414号公報の実施例1の手順に従って、粘着剤付きフィルムを作製した。
【0124】
〔UV接着剤組成物の調製〕
下記UV接着剤組成物を調製した。
─────────────────────────────────
UV接着剤組成物
─────────────────────────────────
・CEL2021P(ダイセル社製) 70質量部
・1、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル 20質量部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 10質量部
・下記CPI-100P 2.25質量部
─────────────────────────────────
【0125】
【0126】
〔積層体1-2の作製〕
上記ポジティブAプレートA1を有するTACフィルムの位相差層(ポジティブAプレートA1)側に、上記UV接着剤組成物を用いて、上記で作製したポジティブCプレートC1を有するTACフィルムの位相差層(ポジティブCプレートC1)を張り合わせ、ポジティブAプレート側の配向層とセルロースアシレートフィルム1を除去して、位相差層(ポジティブAプレートA1およびポジティブAプレートC1)を含む積層体1-2を得た。
【0127】
〔光学積層体1の作製〕
積層体1-2のポジティブAプレートA1側に、上記粘着剤付きフィルムを用いて、上記で作製した積層体1-1の保護層側を貼り合わせ、配向層とセルロースアシレートフィルム1(仮支持体)とを除去して、光学積層体1を作製した。
このとき、光吸収異方性層の吸収軸と、ポジティブAプレートA1の遅相軸とのなす角度が45°となるように貼り合わせた。
【0128】
[実施例2]
光吸収異方性層形成用組成液P1で用いた重合開始剤IRGACURE369(BASF社製)を「重合開始剤IRGACURE379(BASF社製)」に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層体2を作製した。
【0129】
[実施例3]
光吸収異方性層形成用組成液P1で用いた重合開始剤IRGACURE369(BASF社製)を「重合開始剤IRGACURE907(BASF社製)」に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層体3を作製した。
【0130】
[実施例4~6]
組成物A1に配合している重合性液晶化合物L-1、重合性液晶化合物L-2、重合性液晶化合物L-3、および、重合性液晶化合物L-4の配合量を下記表3に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で光学積層体4~6を作製した。
【0131】
[実施例7]
組成物A1に配合している重合性液晶化合物L-1に代えて、下記重合性液晶化合物L-5を用いた以外は、実施例1と同様の方法で光学積層体7を作製した。
【0132】
【0133】
[実施例8]
光学積層体1の作製工程において、粘着材付きフィルムの代わりに上記UV接着剤組成物を用いてポジティブAプレートA1側と積層体1-1の保護層側を貼り合わせた以外は、光学積層体1の作製方法と同様にして、光学積層体8を作製した。
【0134】
[実施例9]
〔光配向膜形成用組成液E2の調製〕
下記の組成にて、光配向膜形成用組成液E2を調製し、攪拌しながら1時間溶解し、45μmフィルターでろ過した。
【0135】
─────────────────────────────────
光配向膜形成用組成液E2
─────────────────────────────────
・下記記重合体PA-1 100.00質量部
・下記酸発生剤PAG-1 1.00質量部
・サイクロマーM100(ダイセル社製) 3.00質量部
・イソプロピルアルコール 16.50質量部
・酢酸ブチル 1072.00質量部
・メチルエチルケトン 268.00質量部
─────────────────────────────────
【0136】
【0137】
【0138】
〔光吸収異方性層形成用組成液P4の調製〕
下記の組成にて、光吸収異方性層形成用組成液P4を調製し、攪拌しながら50℃で3時間加熱溶解し、0.45μmフィルターでろ過した。
【0139】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成液P4
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記二色性アゾ色素化合物D4 2.5質量部
・下記二色性アゾ色素化合物D5 2.6質量部
・下記二色性アゾ色素化合物D6 6.5質量部
・下記高分子液晶化合物M2 37.1質量部
・重合開始剤IRGACURE907(BASF社製) 2.8質量部
・下記界面改良剤F-1 0.3質量部
・シクロペンタノン 457.5質量部
・テトラヒドロフラン 457.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
高分子液晶化合物M2(平均分子量16000)
【化32】
【0144】
【0145】
〔積層体9-1の作製〕
以下の方法で、光配向膜および光吸収異方性層を形成した以外は、積層体1-1と同様の方法で、積層体9-1を作製した。
<光配向膜の形成>
上記透明支持体1上に、上記光配向膜用塗布液E2を塗布し、140℃の温風で120秒間乾燥した。その後、得られた塗布膜に、偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜E2を作製した。
<光吸収異方性層の形成>
得られた光配向膜E2上に、上記光吸収異方性層形成用組成物P4をワイヤーバーで塗布した。
次いで、140℃で90秒間加熱し、室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、厚み0.3μmの光吸収異方性層P4を形成した。配向度は、0.95であった。
【0146】
〔光学積層体9の作製〕
積層体1-1に代えて積層体9-1を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、光学積層体9を作製した。
【0147】
[比較例1]
組成物A1に配合している重合性液晶化合物L-1に代えて、下記重合性液晶化合物L-6を用い、重合性液晶化合物L-2に代えて、下記重合性液晶化合物L-7を用いた以外は、実施例1と同様の方法で光学積層体10を作製した。
なお、下記合性液晶化合物L-6および下記重合性液晶化合物L-7中のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記合性液晶化合物L-6および下記重合性液晶化合物L-7は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0148】
【0149】
【0150】
[湿熱耐久性]
作製した各光学積層体を、85℃85%の環境下で500時間保持した後のRe(550)を下記の基準で評価した。結果を下記表3に示す。
A:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が95%以上である場合
B:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が90%以上95%未満である場合
C:85℃85%で保持前のRe(550)に対し、保持後のRe(550)の割合が90%未満である場合
【0151】
【0152】
上記表3に示す結果から、上記式(I)で表される重合性液晶化合物を配合していない重合性液晶組成物を重合して得られる位相差層と、モルホリン環を有する化合物を含有する光吸収異方性層とを有する光学積層体は、湿熱耐久性が劣ることが分かった(比較例1)。
これに対し、上記式(I)で表される重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物を重合して得られる位相差層と、モルホリン環を有する化合物を含有する光吸収異方性層とを有する光学積層体は、湿熱耐久性が良好となることが分かった(実施例1~9)。
特に、実施例1と実施例6との対比から、上記式(I)中のArのClogP値が4.3以上となる重合性液晶化合物L-1を配合すると、光学積層体の湿熱耐久性がより良好となることが分かった。