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特許7033161リチウム二次電池用陽極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用陽極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220302BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220302BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220302BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/505
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020078294
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2020184534
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049393
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0058373
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039301
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】趙 廣煥
(72)【発明者】
【氏名】李 圭泰
(72)【発明者】
【氏名】金 ハンスル
(72)【発明者】
【氏名】杜 成旭
(72)【発明者】
【氏名】金 成▲ミン▼
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0029048(KR,A)
【文献】特開2014-049309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状結晶構造のニッケル系リチウム金属酸化物;および
前記ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物を含むコーティング層を含有し、
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は非凝集粒子で存在する、リチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項2】
前記非凝集粒子は、200nm~6μmの粒径を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項3】
前記非凝集粒子は、3μm~6μmの粒径を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項4】
前記リチウム-金属酸化物は、単斜晶系のC2/c空間群結晶構造を有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項5】
ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面とリチウム-金属酸化物の(00l)面(lは1,2または3である)の格子不整合比率が15%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項6】
前記リチウム-金属酸化物が下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質:
[化学式1]
LiMO
[化学式2]
LiMO
化学式1および化学式2において、
Mは酸化数が4の金属である。
【請求項7】
前記リチウム-金属酸化物は、LiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfO、LiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfO、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項8】
前記リチウム-金属酸化物の含有量は、ニッケル系リチウム金属酸化物とリチウム-金属酸化物の総含有量を基準に0.1モル%~5モル%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項9】
前記コーティング層の厚さは、1nm~100nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質。
【請求項10】
前記ニッケル系リチウム金属酸化物とニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物は、
同じc軸方向にエピタキシャルに成長した層状構造を有する、請求項1に記載の陽極活物質。
【請求項11】
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池用陽極活物質:
[化学式3]
LiNiCo 1-x-y
前記化学式3において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦0.98、0.01≦y≦0.40、Qは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素であり、
[化学式4]
LiNi 1-x
前記化学式4において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、Qは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
【請求項12】
リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を固体相粉末形態に混合する工程と;
前記混合された粉末の熱処理を600℃以上850℃以下の温度で実施する工程と、を含む、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記熱処理は、5℃/min以下の昇温速度実施される、請求項12に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記方法は前記熱処理後に冷却工程をさらに含み、前記冷却工程は1℃/min以下の冷却速度で実施する、請求項12に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記第1前駆体は、金属(M)-含有酸化物、金属(M)-含有ハロゲン化物、金属(M)-含有硫酸塩、金属(M)-含有水酸化物、金属(M)-含有硝酸塩、金属(M)-含有カルボン酸塩、金属(M)-含有シュウ酸塩、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項16】
リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を溶媒と混合して前駆体組成物を得る工程と;
前記前駆体組成物にキレート剤を付加して混合してゲルを形成する工程と;
前記ゲルを1次熱処理を実施して第1生成物を得る工程と;
前記第1生成物に対する2次熱処理を700℃以上850℃以下の温度で実施して第2生成物を得る工程と、を含む、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記1次熱処理は、250~400℃で実施される、請求項16に記載の陽極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記2次熱処理は、5℃/min以下の昇温速度実施される、請求項16に記載の陽極活物質の製造方法。
【請求項19】
前記方法は前記2次熱処理後に冷却工程をさらに含み、前記冷却工程は1℃/min以下の冷却速度で実施される、請求項16に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項20】
前記第1前駆体は、金属(M)-含有ハロゲン化物、金属(M)-含有硫酸塩、金属(M)-含有水酸化物、金属(M)-含有硝酸塩、金属(M)-含有カルボン酸塩、金属(M)-含有シュウ酸塩またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載のリチウム二次電池用陽極活物質の製造方法。
【請求項21】
前記第2金属前駆体は、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物の中から選ばれた一つ以上を含む、請求項12または16に記載の陽極活物質の製造方法。
【請求項22】
前記リチウム前駆体は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムまたはその混合物を含む、請求項12または16に記載の陽極活物質の製造方法。
【請求項23】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用陽極活物質を含む陽極を備えた、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用陽極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高電圧および高エネルギ密度を有することによって多様な用途に用いられる。例えば、電気自動車は高温で作動することができ、多量の電気を充電したり放電したりしなければならず長時間使われなければならないため、放電容量および寿命特性に優れたリチウム二次電池が求められる。
【0003】
リチウム二次電池用陽極活物質としてはニッケル系リチウム金属酸化物が容量特性が非常に優れ、陽極活物質として多く用いられている。しかし、このようなニッケル系リチウム金属酸化物は電解液との副反応によって電池特性が低下し、これに対する改善が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、リチウムの挿入/脱離が容易でかつ改善した出力特性を提供できる陽極活物質を提供することにある。
【0005】
他の実施形態は、陽極活物質の製造方法を提供することにある。
【0006】
また他の実施形態は、陽極活物質を含む陽極を採用して出力特性が向上したリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、層状結晶構造のニッケル系リチウム金属酸化物およびニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物を含むコーティング層を含有し、ニッケル系リチウム金属酸化物は単一粒子で存在するリチウム二次電池用陽極活物質を提供する。
【0008】
単一粒子は、200nm~6μmの粒径を有し得、例えば、3μm~6μmの粒径を有し得る。
【0009】
リチウム-金属酸化物は、単斜晶系のC2/c空間群結晶構造を有し得る。
【0010】
ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面とリチウム-金属酸化物の(00l)面(lは1,2または3である)の格子不整合比率が15%以下であり得る。
【0011】
リチウム-金属酸化物が下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
[化学式1]
LiMO
[化学式2]
LiMO
化学式1および化学式2において、
Mは酸化数が4の金属である。
【0012】
リチウム-金属酸化物は、LiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfO、LiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfOまたはこれらの組み合わせを含み得る。
【0013】
リチウム-金属酸化物の含有量は、ニッケル系リチウム金属酸化物とリチウム-金属酸化物の総含有量を基準に0.1モル%~5モル%であり得る。
【0014】
コーティング層の厚さは、1nm~100nmであり得る。
【0015】
ニッケル系リチウム金属酸化物とニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物は、同じc軸方向にエピタキシャルに成長した層状構造を有し得る。
【0016】
ニッケル系リチウム金属酸化物は、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物またはこれらの組み合わせを含み得る。
[化学式3]
LiNiCo 1-x-y
化学式3において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦0.98、0.01≦y≦0.40、QはMn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
[化学式4]
LiNi 1-x
化学式4において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、Qは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
【0017】
他の一実施形態は、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を固体相粉末形態に混合する工程と、混合された粉末の熱処理を実施する工程と、を含む、リチウム二次電池用陽極活物質を製造する製造方法を提供する。
【0018】
熱処理は、5℃/min以下の昇温速度で、600~950℃で実施され得る。
【0019】
本方法は熱処理後に冷却工程をさらに含み、冷却工程は1℃/min以下の冷却速度で実施され得る。
【0020】
第1前駆体は金属(M)-含有酸化物、金属(M)-含有ハロゲン化物、金属(M)-含有硫酸塩、金属(M)-含有水酸化物、金属(M)-含有硝酸塩、金属(M)-含有カルボン酸塩、金属(M)-含有シュウ酸塩、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
また他の一実施形態は、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を溶媒と混合して前駆体組成物を得る工程と、前駆体組成物にキレート剤を付加して混合してゲルを形成する工程と、ゲルを1次熱処理を実施して第1生成物を得る工程と、第1生成物に対する2次熱処理を実施して第2生成物を得る工程と、を含む、リチウム二次電池用陽極活物質を製造する製造方法を提供する。
【0022】
1次熱処理は、250~400℃で実施され得る。
【0023】
2次熱処理は、5℃/min以下の昇温速度で、700~950℃で実施され得る。
【0024】
本方法は2次熱処理後に冷却工程をさらに含み、冷却工程は1℃/min以下の冷却速度で実施され得る。
【0025】
第1前駆体は、金属(M)-含有酸化物、金属(M)-含有ハロゲン化物、金属(M)-含有硫酸塩、金属(M)-含有水酸化物、金属(M)-含有硝酸塩、金属(M)-含有カルボン酸塩、金属(M)-含有シュウ酸塩、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0026】
第2金属前駆体は、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物の中から選ばれた一つ以上を含み得る。
【0027】
リチウム前駆体は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、フッ化リチウムまたはその混合物を含み得る。
【0028】
また他の一実施形態は、リチウム二次電池用陽極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0029】
陽極活物質は、c軸方向の(003)結晶面にのみ選択的に形成されたコーティング層を含むことによってa軸およびb軸方向の結晶面にコーティング層が形成された場合と比較して、電荷伝達抵抗が増加せず出力特性が改善したリチウム二次電池を提供することができる。
【0030】
また、陽極活物質は、高電圧特性に優れ、このような陽極活物質を採用することにより、極板製造工程での陽極スラリー安定性および極板合剤密度が向上したリチウム二次電池用陽極極板を製作することができる。そして、陽極活物質を採用することにより、高電圧でのガス発生が減少し、信頼性および安全性が向上したリチウム二次電池を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に示す斜視図である。
図2】合成例1、合成例2、および比較合成例1による陽極活物質のX線回折分析(XRD)の分析結果を示す図である。
図3】合成例3および比較合成例3による陽極活物質のX線回折分析(XRD)の分析結果を示す図である。
図4a】合成例1による陽極活物質のSTEM-EDS(scanning transmission electron microscopy-energy dispersive X-ray spectroscopy)の分析結果を示す図である。
図4b】合成例1による陽極活物質のSTEM-EDS(scanning transmission electron microscopy-energy dispersive X-ray spectroscopy)の分析結果を示す図である。
図4c】合成例1による陽極活物質のSTEM-EDS(scanning transmission electron microscopy-energy dispersive X-ray spectroscopy)の分析結果を示す図である。
図4d】合成例1による陽極活物質のSTEM-EDS(scanning transmission electron microscopy-energy dispersive X-ray spectroscopy)の分析結果を示す図である。
図5a】合成例1による陽極活物質のLi[Ni0.8Co0.2]O-LiSnO間の界面を原子分解能(atomic resolution)で拡大したSTEM-HAADF(scanning transmission electron microscope-high-angle annular dark field)イメージの結果である。
図5b】合成例1による陽極活物質のFFTを用いた分析結果でLi[Ni0.8Co0.2]O及びLiSnOコーティング層の界面の拡大された原子配列を示すTEM(transmission electron microscopy)イメージである。
図6】実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2により製造されたコインセルの出力特性を示すグラフである。
図7】実施例3および比較例3により製造されたコインセルの出力特性を示すグラフである。
図8】実施例4および比較例4により製造されたコインセルの出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、例示的な実施形態によるリチウム二次電池用陽極活物質と、その製造方法および陽極活物質を含む陽極を備えたリチウム二次電池に関して、より詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限されるものではなく、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0033】
本明細書に記載されている「粒径」は、粒度分析器(particle size analyzer)を用いて測定された粒子大きさ分布の中間値、即ち平均粒径(D50)を意味し得る。一実施形態において球形でない粒子の「粒径」は粒子の最も長い長さ、または数値の平均値であり得る。
【0034】
本明細書において記載された「粒径」は、粒子大きさ分析装置を用いて測定された粒子大きさ分布の中間値をいう。一部実施形態で、「粒径」は粒子の最も長い長さや数値の平均値をいう。
【0035】
一実施形態によるリチウム二次電池用陽極活物質は、ニッケル系リチウム金属酸化物およびニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面(crystalline plane)に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物を含むコーティング層を含有し、この時、ニッケル系リチウム金属酸化物は単一粒子で存在する。
【0036】
ニッケル系リチウム金属酸化物の電気化学的特性を改善させるために、その表面に金属酸化物系またはリン酸化物系材料をコートする方法が知られている。しかし、この方法により実施する場合、ニッケル系リチウム金属酸化物のすべての表面に、上述した金属酸化物系またはリン酸化物系材料がコートされる。その結果、電荷伝達抵抗が増加して、それを用いた陽極を備えたリチウム二次電池の出力特性が低下し得る。
【0037】
上述した問題を解決するために、本発明では、ニッケル系リチウム金属酸化物でリチウムイオンの挿入/脱離が行われる結晶面を除いた残りの結晶面である(003)結晶面に選択的にリチウム-金属酸化物を含むコーティング層を形成して、ニッケル系リチウム金属酸化物の表面コートによってリチウムの挿入および脱離に全般的に何ら干渉を与えず電荷伝達抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【0038】
陽極活物質で、リチウム-金属酸化物を含むコーティング層は、ニッケル系リチウム金属酸化物でリチウムイオンの挿入および脱離が行われない面、すなわち(003)結晶面に選択的に配置される。
【0039】
ニッケル系リチウム金属酸化物の単一粒子の粒径は、例えば、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上、900nm以上、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上または3.0μm以上、および6μm以下、5μm以下、4.7μm以下、4.5μm以下、4.3μm以下、4.0μm以下、または3.5μm以下であり得る。単一粒子の粒径が上記の範囲であれば、それを用いたリチウム二次電池を実現した場合における高電圧でのガス発生量が減少し、リチウム二次電池の信頼性および安全性を確保することができる。
【0040】
リチウム-金属酸化物は、単斜晶系(monoclinic crystal system)のC2/c空間群(space group)結晶構造を有し得る。リチウム-金属酸化物がこのような結晶構造を有すると、ニッケル系リチウム金属酸化物との界面で格子不整合(lattice mismatch)を最小化することができる。
【0041】
具体的には、ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面とリチウム-金属酸化物の(00l)面(lは1,2または3である)の格子不整合(lattice mismatch)比率が15%以下、例えば13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下または3%以下であり得る。格子不整合が上記の範囲にある場合、ニッケル系リチウム金属酸化物のLi-O八面体(octahedron)構造の(003)面とリチウム-金属酸化物のLi-O八面体構造の(00l)面(lは1,2または3である)が互いによく共有され得、リチウム-金属酸化物を含むコーティング層が界面分離されず安定的に存在し得る。
【0042】
格子不整合比率(%)は、下記数式1で計算され得る。
[数式1]
|A-B|/B X 100
数式1において、Aはニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面の酸素-酸素結合の長さ(oxygen-oxygen bond length)を意味し、Bはリチウム-金属酸化物の(00l)面(lは1,2または3である)の酸素-酸素結合の長さを意味する。
【0043】
一実施形態で、ニッケル系リチウム金属酸化物がLiNiOであり、リチウム-金属(M)酸化物が化学式1のLiMOまたは化学式2のLiMOの場合、格子不整合比率は下記表1のとおりである。LiNiOの(003)面の酸素-酸素結合の長さは2.875Åである。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、LiMOとLiMOのようなリチウム-金属酸化物が15%以下の格子不整合比率を有することから、これらリチウム-金属酸化物がLiNiOの層状系ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面に選択的にコートされ得ることがわかる。
【0046】
リチウム-金属酸化物は、例えば下記化学式1、下記化学式2またはこれらの組み合わせで表される化合物であり得る。
[化学式1]
LiMO
[化学式2]
LiMO
化学式1および化学式2において、Mは酸化数(oxidation number)が4の金属である。
【0047】
リチウム-金属酸化物は、例えばLiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfO、LiSnO、LiZrO、LiTeO、LiRuO、LiTiO、LiMnO、LiPbO、LiHfO、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0048】
リチウム-金属酸化物の含有量は、ニッケル系リチウム金属酸化物とリチウム-金属酸化物の総含有量を基準に5モル%以下、例えば0.1モル%以上、0.2モル%以上、0.5モル%以上、1モル%以上、1.5モル%以上、または2モル%以上および5モル%以下、4.5モル%以下、4モル%以下または3モル%以下であり得る。リチウム-金属酸化物の含有量が上記の範囲である場合、ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)面に存在するコーティング層が、電荷伝達抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【0049】
一実施形態による陽極活物質は、層状結晶構造のニッケル系リチウム金属酸化物の一面に、リチウム-金属酸化物を含むコーティング層が積層された構造を有する。コーティング層は層状結晶構造のニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置される。
【0050】
コーティング層の厚さは、1nm以上、例えば、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上または90nm以上、および100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または10nm以下であり得る。コーティング層の厚さが上記範囲である場合、ニッケル系リチウム金属酸化物のコーティングによって電荷伝達抵抗が増加することを、効果的に遮断することができる。
【0051】
コーティング層は連続的であるかまたは不連続的な膜であり得る。
【0052】
一実施形態による陽極活物質では、ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に選択的に配置されたリチウム-金属酸化物とニッケル系リチウム金属酸化物は、同じc軸方向にエピタキシャルに成長した層状構造を有し得る。このようにc軸方向にエピタキシャルに成長した層状構造を有することは、TEM(transmission electron microscope)イメージおよびTEMイメージのFFT(fast fourier transformation)パターンにより確認することができる。
【0053】
コーティング層でコートされたニッケル系リチウム金属酸化物は、層状結晶構造を有し得る。このような層状結晶構造を有するニッケル系リチウム金属酸化物の例としては、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物またはこれらの組み合わせが挙げられる:
[化学式3]
LiNiCo 1-x-y
化学式3において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦0.98、0.01≦y≦0.40、Qは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
[化学式4]
LiNi 1-x
化学式4において、
0.9≦a≦1.05、0.6≦x≦1.0、Qは、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、La、Ce、Sn、Zr、Te、Ru、Ti、PbおよびHfより選ばれる少なくとも一つの金属元素である。
前記ニッケル系リチウム金属酸化物は化合物内に遷移金属を含む場合、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物となり得る。
【0054】
一実施形態で、ニッケル系リチウム金属酸化物は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ホウ素(B)、およびフッ素(F)の中から選ばれた一つ以上の元素をさらに含み得る。このような元素をさらに含有したニッケル系リチウム金属酸化物を用いて陽極を製造すると、リチウム二次電池の電気化学的特性がさらに向上することができる。上記元素の含有量は、金属1モルを基準に0.001モル~0.1モルであり得る。
【0055】
ニッケル系リチウム金属酸化物は、NiCo 1-x-yまたは 1-xとLi層が連続的に交差する層状のα-NaFeO構造を有し得、R-3m空間群を有し得る。
【0056】
一実施形態で、ニッケル系リチウム金属酸化物のX線回折分析スペクトル分析において、(003)ピークの半値幅が0.120°~0.125°であり得る。そして(10)ピークの半値幅が0.105°~0.110°であり得、(110)ピークの半値幅が0.110°~0.120°である陽極活物質が提供されることができる。このような半値幅数値はニッケル系リチウム金属酸化物の結晶性を示す。
【0057】
一般的なニッケル系リチウム金属酸化物の場合、X線回折分析スペクトル分析において、(003)ピークの半値幅数値は0.130°~0.150°程度の値を示す。半値幅数値が低いほど、ニッケル系リチウム金属酸化物の結晶性は高まることを意味する。したがって、本発明の一実施形態によるニッケル系リチウム金属酸化物は、一般的なニッケル系リチウム金属酸化物の場合と比較して結晶性が高まる。このように結晶性が高まったニッケル系リチウム金属酸化物を陽極活物質として用いると、高電圧での安全性が確保されたリチウム二次電池を製作することができる。
【0058】
上記ニッケル系リチウム金属酸化物で、リチウムサイトを占有しているニッケルイオンの占有率が2.0原子%以下、例えば0.0001原子%~1.5原子%であり得る。高温焼成工程でリチウムイオン拡散面にリチウムイオンLi(イオン半径:0.90Å)とイオン半径がほぼ同じNi2+(イオン半径:0.83Å)が混入されて、非化学量論組成である[Li1-xNi3b[Ni]3a[O6c(ここで、a、b、cは構造のサイト位置を表示するものであり、xはLiサイトに移動するNiイオンの数を示すものとして0≦x<1)になる傾向が高まり、リチウムサイトにNi2+が混入されるとその領域は局部的に不規則配列岩塩層(Fm3m)と見ることができ、この領域は電気化学的に不活性であるだけでなく、リチウム層のリチウムイオンの固相拡散を阻害するので電池反応を抑制する。
【0059】
上記陽極活物質は、XRD分析による結晶構造が六方晶系結晶構造を含み得、a軸の長さは2.867Å~2.889Åであり得、c軸の長さは14.228Å~14.270Åであり得、これによる単位格子(unit cell)体積は101.35Å~102.98Åであり得る。
【0060】
XRD分析時の光源としてCuK-アルファ線(例えば、X線波長1.541Å)を用いることができる。
【0061】
一実施形態による陽極活物質は、陽極活物質の製造工程で金属に対するリチウムの混合重量比を調節し、熱処理条件(熱処理温度、雰囲気および時間)を制御し、陽極活物質の単一粒子の大きさを調節し、比表面積を減少させ、残留リチウムを最大限除去して、残留リチウムと電解液の表面副反応を抑制することができる。そして、上記したように製造工程を制御することによって結晶性が向上し、高電圧での安定性が確保された陽極活物質を得ることができる。
【0062】
上記陽極活物質で残留リチウムの含有量は0.1重量%以下であり得る。例えばLiOHの含有量は0.01重量%~0.06重量%であり得、LiCOの含有量は0.05重量%~0.1重量%であり得る。ここで、LiOHおよびLiCOの含有量は滴定法により測定することができる。
【0063】
上記陽極活物質でGC-MS分析による炭酸リチウム(LiCO)の含有量は0.01重量%~0.05重量%であり得る。前述したように残留リチウムの含有量が少ないと、残留リチウムと電解液の副反応を抑制して高電圧および高温でのガス発生を抑制することができ、陽極活物質の安全性に優れる。またLiOHの含有量が少ないと、陽極スラリー製造工程でスラリーのpH値を低くし、陽極スラリーを安定した状態にして均一な極板コーティング作業が可能である。このようなLiOHの減少は、陽極極板コーティングのためのスラリーの製造工程でスラリーの安定性を確保することができる。
【0064】
上記陽極活物質は示差走査熱量計分析からオンセットポイント温度が250℃~270℃で、従来の商用NCMに比べてオンセットポイント温度が高く、主ピークの瞬間発熱量が減少した特性を有し得る。このような特性を示すことによって上記陽極活物質を使用したリチウムイオン二次電池の高温安全性に優れる。
【0065】
上述した陽極活物質を用いると、ニッケル系リチウム金属酸化物と電解液の副反応が抑制され得、ニッケル系リチウム金属酸化物の熱的安定性および構造的安定性が改善して、陽極活物質を含むリチウム二次電池の安定性および充放電特性を改善することができる。
【0066】
以下、一実施形態による陽極活物質の製造方法を調べる。
【0067】
一実施形態による陽極活物質の製造方法は、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を固体相粉末形態に混合し、混合された粉末を熱処理する工程を含む。
【0068】
まず、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を、溶媒なしに固体相粉末の形態に混合して混合物を得る。リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体の含有量は、目的とする陽極活物質の組成を得ることができるように適宜制御することができる。
【0069】
一例として、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体の含有量がxモル(0<x≦0.1、0<x≦0.09、0<x≦0.08、0<x≦0.07、0<x≦0.06、0<x≦0.05、0<x≦0.04、0<x≦0.03、0<x≦0.02、0<x≦0.01、0.01<x≦0.05、0.02<x≦0.05、または0.02<x≦0.03)の場合、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体の含有量は(1-x)モルであり、このとき、リチウム前駆体の含有量は1.03(1+x)モルになるように混合比を調節することができる。
【0070】
前駆体を混合する時、混合物を400~600rpmの条件で2時間~5時間ボールミル(Ball Milling)することで、均一に混合された混合物を得ることができる。
【0071】
以後、均一に混合された混合物を熱処理して、リチウム二次電池用陽極活物質を製造することができる。
【0072】
熱処理は、例えば、600℃以上、610℃以上、620以上、630℃以上、640℃以上、650℃以上、660℃以上、670℃以上、680℃以上、690℃以上、700℃以上、710℃以上、720℃以上、730℃以上、740℃以上または750℃以上、および950℃以下、940℃以下、930℃以下、920℃以下、910℃以下、900℃以下、890℃以下、880℃以下、870℃以下、860℃以下、850℃以下、840℃以下、830℃以下、820℃以下、810℃以下または800℃以下で行われ得る。このとき、熱処理は範囲の温度で5~15時間高圧で熱処理して混合固体粉末を焼成することであり得る。また、熱処理の昇温速度は、それぞれ独立して5℃/min以下、例えば4℃/min以下、例えば3℃/min以下、例えば2℃/min以下、例えば1℃/min以下であり得る。
【0073】
また、上記2次熱処理工程後に行われる冷却速度は1℃/min以下、例えば、0.7℃/min以下、例えば、0.5℃/min以下、例えば、0.3℃/min以下、例えば、0.1℃/min以下であり得る。
【0074】
上記範囲の温度で熱処理を実施する場合、リチウム-金属酸化物を含むコーティング層が、ニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に安定的に形成され得る。
【0075】
上述した製造方法で、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体は、金属(M)-含有酸化物、金属(M)-含有ハライド、金属(M)-含有スルファート、金属(M)-含有ヒドロキシド、金属(M)-含有ナイトレート、金属(M)-含有カルボキシレート、金属(M)-含有オキサラート、またはこれらの組み合わせを含み得る。これらの具体的な例としては例えば、酸化スズ(SnO)、酸化テルル(TeO)、酸化ルテニウム(RuO)、酸化チタン(TiO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化鉛(PbO)、塩化スズ(SnCl)、塩化ジルコニウム(ZrCl)、塩化テルル(TeCl)、塩化ルテニウム(RuCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化マンガン(MnCl)、塩化ハフニウム(HfCl)、塩化鉛(PbCl)、硫酸スズ(SnSO)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO)、硫酸テルル(Te(SO)、硫酸ルテニウム(Ru(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸マンガン(Mn(SO)、硫酸ハフニウム(Hf(SO)、硫酸鉛(Pb(SO)、水酸化スズ、水酸化ジルコニウム、水酸化テルル、水酸化ルテニウム、水酸化チタン、水酸化マンガン、水酸化ハフニウム、水酸化鉛、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、硝酸テルル、酢酸テルル、シュウ酸テルル、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、シュウ酸ルテニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、シュウ酸チタン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸ハフニウム、酢酸ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、およびその組み合わせの中から選ばれた一つ以上を含み得る。
【0076】
ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体は、例えばNi(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物の中から選ばれた少なくとも一つ以上を含み得る。
【0077】
ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体は、ニッケル前駆体を必須として含み、コバルト前駆体、マンガン前駆体およびアルミニウム前駆体の中から一つ以上選ばれる金属前駆体を選択的にさらに含み得る。
【0078】
コバルト前駆体としてはCo(OH)、CoOOH、CoO、Co、Co、Co(OCOCH・4HO、CoCl、Co(NO・6HO、及びCo(SO・7HOの中から選ばれた一つ以上が使用され得る。
【0079】
マンガン前駆体としてはMn、MnO、およびMn等のマンガン酸化物、MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、マンガンオキシ水酸化物および脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩、および塩化マンガンのようなハロゲン化物の中から選ばれた少なくとも一つ以上が使用され得る。
【0080】
アルミニウム前駆体としては硝酸アルミニウム(Al(NO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、硫酸アルミニウムなどを使用し得る。
【0081】
リチウム前駆体としてはリチウムヒドロキシド、リチウムナイトレート、リチウムアセテート、リチウムスルファート、リチウムクロリド、リチウムフルオライドまたはその混合物を使用し得る。
【0082】
以下、また他の一実施形態による陽極活物質の製造方法を調べる。
【0083】
また他の一実施形態による陽極活物質の製造方法は、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体およびリチウム前駆体を溶媒と混合して前駆体組成物を得て;前駆体組成物にキレート剤を付加して混合してゲルを形成し;ゲルを1次熱処理を実施して第1生成物を得て;第1生成物に対する2次熱処理を実施して第2生成物を得る工程を含む。
【0084】
まず、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体、およびリチウム前駆体を溶媒と混合して、陽極活物質前駆体組成物を得る。ここで溶媒としては水またはアルコールが使用され得、アルコールとしてはエタノール、メタノール、イソプロパノールなどを使用し得る。
【0085】
リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体、およびリチウム前駆体の含有量は、目的とする陽極活物質の組成を得ることができるように適宜制御される。
【0086】
このとき、リチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体の含有量がxモル(0<x≦0.1、0<x≦0.09、0<x≦0.08、0<x≦0.07、0<x≦0.06、0<x≦0.05、0<x≦0.04、0<x≦0.03、0<x≦0.02、0<x≦0.01、0.01<x≦0.05、0.02<x≦0.05、または0.02<x≦0.03)の場合、ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体の含有量は(1-x)モルであり、この時、リチウム前駆体の含有量は1.03(1+x)モルになるように混合比を調節し得る。
【0087】
次いで、陽極活物質前駆体組成物にキレート剤を添加し、陽極活物質前駆体組成物で溶媒がすべて除去されるまで攪拌して、陽極活物質前駆体をゲル(gel)形態で収得する。キレート剤の含有量は特に限定されず、例えば組成物内の陽イオンの総含有量とキレートのモル比が1:1になるように添加し得る。
【0088】
キレート剤(chelating agent)は、前駆体組成物内に存在する金属イオンを捕獲して、ゾルおよびゲルの形成時に金属イオンの偏在を防ぎ、混合を容易にする。キレート剤としては、例えば有機酸を使用し得る。有機酸としてはクエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、タルタル酸、グリコール酸、オキサル酸、エチレンジアミン酢酸、グリシン(glycine)の中から1種以上選ばれたものであり得る。
【0089】
1次熱処理は、例えば250℃以上、260℃以上、270℃以上、280℃以上、290℃以上、300℃以上、310℃以上または320℃以上、および400℃以下、390℃以下、380℃以下、370℃以下、360℃以下、350℃以下、340℃以下または330℃以下で行われ得る。この場合、1次熱処理は、上記範囲の温度で5~15時間高圧で熱処理して実施し得、このような熱処理によって、第1前駆体と第2前駆体が溶媒に分散した分散液を得ることができる。
【0090】
2次熱処理は、酸素(O)雰囲気で例えば、700℃以上、710℃以上、720℃以上、730℃以上、740℃以上、750℃以上、760℃以上、770℃以上、780℃以上、790℃以上または800℃以上、および950℃以下、940℃以下、930℃以下、920℃以下、910℃以下、900℃以下、890℃以下、880℃以下、870℃以下、860℃以下または850℃以下の温度で、5~15時間熱処理することもできる。
【0091】
2次熱処理時の温度は、ニッケル系リチウム金属酸化物のニッケル含有量により調節され得る。一実施形態でニッケル系リチウム金属酸化物の金属総量に対してニッケル含有量が70モル%以下の場合、700℃以上、750℃以上、800℃以上、850℃以上、または900℃以上の温度で2次熱処理を実施した方が良い。他の実施形態でニッケル系リチウム金属酸化物の金属総量に対してニッケル含有量が70モル%を超える場合、700℃以上、750℃以上、800℃以上または850℃以上および700℃以下、750℃以下、800℃以下、850℃以下または900℃以下の温度で2次熱処理を実施した方が良い。
【0092】
上記温度範囲で2次熱処理を実施する場合、リチウム-金属酸化物の相分離が容易に行われ得、リチウム-金属酸化物を含むコーティング層がニッケル系リチウム金属酸化物の(003)結晶面に安定的に形成され得る。
【0093】
この場合、2次熱処理の昇温速度は、5℃/min以下、例えば4℃/min以下、例えば3℃/min以下、例えば2℃/min以下、例えば1℃/min以下であり得る。
【0094】
2次熱処理工程後に行われる冷却速度は、1℃/min以下、例えば、0.7℃/min以下、例えば0.5℃/min以下、例えば0.3℃/min以下、例えば0.1℃/min以下であり得る。
【0095】
上記製造方法でリチウム-金属(M)酸化物形成用第1前駆体は、金属(M)-含有ハライド、金属(M)-含有スルファート、金属(M)-含有ヒドロキシド、金属(M)-含有ナイトレート、金属(M)-含有カルボキシレート、金属(M)-含有オキサラート、またはこれらの組み合わせを含み得る。これらの具体的な例としては、例えば塩化スズ(SnCl)、塩化ジルコニウム(ZrCl)、塩化テルル(TeCl)、塩化ルテニウム(RuCl)、塩化チタン(TiCl)、塩化マンガン(MnCl)、塩化ハフニウム(HfCl)、塩化鉛(PbCl)、硫酸スズ(SnSO)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO)、硫酸テルル(Te(SO)、硫酸ルテニウム(Ru(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸マンガン(Mn(SO)、硫酸ハフニウム(Hf(SO)、硫酸鉛(Pb(SO)、水酸化スズ、水酸化ジルコニウム、水酸化テルル、水酸化ルテニウム、水酸化チタン、水酸化マンガン、水酸化ハフニウム、水酸化鉛、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、硝酸テルル、酢酸テルル、シュウ酸テルル、塩化テルル、硝酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、シュウ酸ルテニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、シュウ酸チタン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、硝酸ハフニウム、酢酸ハフニウム、シュウ酸ハフニウム、およびその組み合わせの中から選ばれた一つ以上を含み得る。
【0096】
ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体は、例えばNi(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物の中から選ばれた少なくとも一つ以上を含み得る。
【0097】
ニッケル系リチウム金属酸化物形成用第2前駆体はニッケル前駆体を必須として含み、コバルト前駆体、マンガン前駆体およびアルミニウム前駆体の中から一つ以上選ばれる金属前駆体を選択的にさらに含み得る。
【0098】
コバルト前駆体としてはCo(OH)、CoOOH、CoO、Co、Co、Co(OCOCH・4HO、CoCl、Co(NO・6HO、およびCo(SO・7HOの中から選ばれた一つ以上が使用され得る。
【0099】
マンガン前駆体としてはMn、MnO、およびMn等のマンガン酸化物、MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガンおよび脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩、オキシ水酸化物、および塩化マンガンのようなハロゲン化物の中から選ばれた少なくとも一つ以上が使用され得る。
【0100】
アルミニウム前駆体としては硝酸アルミニウム(Al(NO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、硫酸アルミニウムなどを使用し得る。
【0101】
リチウム前駆体としては水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムまたはその混合物を使用し得る。
【0102】
以上、上述のように製造された陽極活物質を用いると、高温充放電の条件でも化学的安定性に優れる陽極を製造することができ、このような陽極を採用すると、出力特性が改善したリチウム二次電池を製造することができる。
【0103】
以下、上述した陽極活物質をリチウム二次電池用陽極活物質として用いたリチウム二次電池を製造する工程を調べるが、陽極、陰極、リチウム塩含有非水電解質、およびセパレータを有するリチウム二次電池の製造方法を記述する。
【0104】
陽極および陰極は、集電体上に陽極活物質層形成用組成物および負極活物質層形成用組成物をそれぞれ塗布および乾燥して製作される。
【0105】
陽極活物質形成用組成物は、陽極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒を混合して製造されるが、陽極活物質として一実施形態による陽極活物質を用いる。
【0106】
バインダーは、活物質と導電剤などの結合と集電体に対する結合に助力する成分として、陽極活物質の総重量100重量部を基準に1~50重量部で添加される。このようなバインダーの非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。その含有量は、陽極活物質の総重量100重量部を基準に1~5重量部を使用する。バインダーの含有量が上述の範囲である場合、集電体に対する活物質層の結着力が良好である。
【0107】
導電剤としては当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボン系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0108】
導電剤の含有量は、陽極活物質の総重量100重量部を基準に1~5重量部を使用する。導電剤の含有量が上述の範囲である場合、最終的に得られた電極の伝導度特性が優れる。
【0109】
溶媒の非制限的例として、N-メチルピロリドンなどを使用する。
【0110】
溶媒の含有量は、陽極活物質100重量部を基準に10~200重量部を使用する。溶媒の含有量が上述の範囲である場合、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0111】
陽極集電体は、3~500μmの厚さとして、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。集電体はそれの表面に微細な凹凸を形成して陽極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0112】
これと別に負極活物質、バインダー、導電剤、溶媒を混合して負極活物質層形成用組成物を準備する。
【0113】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出できる物質が使用される。負極活物質の非制限的な例として、黒鉛、炭素のような炭素系材料、リチウム金属、その合金、シリコンオキシド系物質などを使用し得る。本発明の一実施形態によればシリコンオキシドを使用する。
【0114】
バインダーは、負極活物質の総重量100重量部を基準に1~50重量部で添加される。このようなバインダーの非制限的な例は、陽極と同じ種類を使用し得る。
【0115】
導電剤は、負極活物質の総重量100重量部を基準に1~5重量部を使用する。導電剤の含有量が上述の範囲である場合、最終的に得られた電極の伝導度特性が優れる。
【0116】
溶媒の含有量は、負極活物質の総重量100重量部を基準に10~200重量部を使用する。溶媒の含有量が上述の範囲である場合、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0117】
導電剤および溶媒は、陽極製造時と同じ種類の物質を使用することができる。
【0118】
陰極集電体としては、一般的に3~500μmの厚さで作られる。このような陰極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、陽極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0119】
上述の工程により製作された陽極と陰極との間に、セパレータを介在させる。
【0120】
セパレータは、気孔直径が0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmであるものを使用する。具体的な例として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー;またはガラス繊維で作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0121】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解液とリチウム塩からなっている。非水電解質としては非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0122】
非水電解液としては、非制限的な例として、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、N,N-ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの、非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0123】
有機固体電解質としては、非制限的な例として、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用され得る。
【0124】
無機固体電解質としては、非制限的な例として、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiS等が使用され得る。
【0125】
リチウム塩は、非水系電解質に溶解しやすい物質として、非制限的な例として、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(FSONLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウムなどが使用され得る。
【0126】
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に示す斜視図である。
【0127】
図1を参照すると、リチウム二次電池10は、陽極活物質を含む陽極13と、陰極12および陽極13と陰極12との間に配置されたセパレータ14と、陽極13、陰極12およびセパレータ14に含浸した電解質(図示せず)と、電池ケース15と、電池ケース15を封入するキャップアセンブリ16と、を主な部分にして構成されている。このようなリチウム二次電池10は、陽極13、陰極12およびセパレータ14を順に積層した後、これを巻き取られた状態で電池ケース15に収納して構成され得る。電池ケース15は、キャップアセンブリ16とともにシーリングしてリチウム二次電池10を完成する。
【0128】
リチウム二次電池は出力特性に優れ、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されることができるだけでなく、中大型デバイスの電源として使用される多数の電池セルを含む中大型電池パックまたは電池モジュールにおいて、単位電池としても使用され得る。
【0129】
中大型デバイスの例としては電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)等を含む電気車、電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車、電動工具、電力貯蔵装置などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0130】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これにより本発明は制限されない。
【0131】
実施例
(リチウム二次電池用陽極活物質の製造)
【0132】
合成例1
LiOH・HO、Ni(OH)、Co(OH)、およびSnOを、固体相の粉末形態でそれぞれ1.08:0.76:0.19:0.05のモル比で乳鉢に混合し、混合された固体相粉末を500rpmで2時間ボールミル(ball-milling)して、固体相粉末が均一に混ざった混合物を合成する。
【0133】
温度を750℃まで昇温した後、得られた混合物をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、(003)面が面選択的にLiSnOでコートされた単一粒子(one body)Li[Ni0.8Co0.2]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、3.02μmであった。
【0134】
合成例2
LiOH・HO、Ni(OH)、Co(OH)、およびSnOを、固体相の粉末形態でそれぞれ1.08:0.76:0.19:0.05のモル比で乳鉢に混合し、混合された固体相粉末を500rpmで2時間ボールミル(ball-milling)して、固体相粉末が均一に混ざった混合物を合成する。
【0135】
温度を830℃まで昇温した後、得られた混合物をO雰囲気下で830℃で10時間焼成した後冷却して、(003)面が面選択的にLiSnOでコートされた単一粒子(one body)Li[Ni0.8Co]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、2.51μmであった。
【0136】
合成例3
LiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、Al(NO・9HO、およびSnClをLi:(Ni+Co+Al):Sn=1.08:0.95:0.05(Ni:Co:Al=0.80:0.15:0.05)のモル比でエタノール(10mL)に溶かして、前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0137】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌してゲル(gel)を収得する。
【0138】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0139】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、(003)面が面選択的にLiSnOでコートされた単一粒子(one body)Li[Ni0.80Co0.15Al0.05]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、1.68μmであった。
【0140】
合成例4
LiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、Mn(NO・4HO、およびSnClを1.13:0.46:0.19:0.26:0.05のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0141】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌して、ゲル(gel)を収得する。
【0142】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0143】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、(003)面が面選択的にLiSnOでコートされた単一粒子(one body)Li[Ni0.80Co0.20Mn0.30]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、1.84μmであった。
【0144】
合成例5
LiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、およびSnClを、1.13:0.76:0.19:0.05のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0145】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌して、ゲル(gel)を収得する。
【0146】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0147】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、(003)面が面選択的にLiSnOでコートされた単一粒子(one body)Li[Ni0.80Co0.20]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、1.35μmであった。
【0148】
比較合成例1
LiOH・HO、Ni(OH)、Co(OH)を、固体相の粉末形態でそれぞれ1.03:0.8:0.2のモル比で乳鉢に混合し、混合された固体相粉末を500rpmで2時間ボールミル(ball-milling)して、固体相粉末が均一に混ざった混合物を合成する。
【0149】
温度を750℃まで昇温した後、得られた混合物をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、単一粒子(one body)Li[Ni0.8Co0.2]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。上記陽極活物質の単一粒子の粒径大きさ(D50)を測定した結果、2.81μmであった。
【0150】
比較合成例2
LiNO、Ni(NO・6HO、およびCo(NO・6HOを、1.03:0.8:0.2のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0151】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌してゲル(gel)を収得する。
【0152】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0153】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、Li[Ni0.80Co0.20]Oを合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。
【0154】
LiNOとスズ(IV)-エチルヘキサノイソプロポキシド(ethyl hexanoisopropoxide)(Sn-(OOC15(OC)を、2:1のモル比で2-プロパノール(2-propanol;IPA)に溶かして溶液を作り、合成されたLi[Ni0.80Co0.20]Oを溶液に分散させた後、約20時間常温で攪拌して溶媒を蒸発させ、ゲルを収得する。
【0155】
収得されたゲルを150℃で10時間焼成した後、粉末を収得する。
【0156】
温度を700℃まで昇温した後、収得された粉末を700℃で5時間焼成した後冷却して、LiSnOがコートされたLi[Ni0.8Co0.2]O陽極活物質を収得する。このとき、昇温速度は10℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。
上記陽極活物質は、複数の一次粒子が凝集された二次粒子の形態を示し、上記一次粒子の粒径大きさは500nmであり、上記二次粒子の粒径大きさ(D50)は8.23μmであった。
【0157】
比較合成例3
LiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、およびAl(NO・9HOを、1.03:0.80:0.15:0.05のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤でクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0158】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌して、ゲル(gel)を収得する。
【0159】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0160】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、Li[Ni0.80Co0.15Al0.05]O陽極活物質を合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。
【0161】
上記陽極活物質は、複数の一次粒子が凝集された二次粒子の形態を示し、上記一次粒子の粒径大きさは125nmであり、上記二次粒子の粒径大きさ(D50)は7.78μmであった。
【0162】
比較合成例4
LiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、およびMn(NO・4HOを、1.03:0.5:0.2:0.3のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0163】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌して、ゲル(gel)を収得する。
【0164】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0165】
温度を800℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で800℃で10時間焼成した後冷却して、Li[Ni0.5Co0.2Mn0.3]Oを合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。
【0166】
上記陽極活物質は、複数の一次粒子が凝集された二次粒子の形態を示し、上記一次粒子の粒径大きさは125nmであり、上記二次粒子の粒径大きさ(D50)は4.20μmであった。
【0167】
比較合成例5
LiNO、Ni(NO・6HO、およびCo(NO・6HOを、1.03:0.8:0.2のモル比でエタノール(10mL)に溶かして前駆体組成物を作る。以後、キレート剤として使用されるクエン酸(citric acid)を、前駆体組成物に存在する陽イオンと1:1のモル比になるように添加する。
【0168】
前駆体組成物の溶媒がすべて除去されるまで溶液を攪拌して、ゲル(gel)を収得する。
【0169】
収得されたゲルを300℃で5時間空気中で焼成した後、粉末を収得する。
【0170】
温度を750℃まで昇温した後、収得された粉末をO雰囲気下で750℃で10時間焼成した後冷却して、Li[Ni0.80Co0.20]Oを合成する。このとき、昇温速度は5℃/minとし、冷却速度は1℃/minとする。
【0171】
上記陽極活物質は、複数の一次粒子が凝集された二次粒子の形態を示し、上記一次粒子の粒径大きさは500nmであり、上記二次粒子の粒径大きさ(D50)は7.56μmであった。
【0172】
(リチウム二次電池の製作)
【0173】
実施例1
合成例1により製造されたリチウム二次電池用陽極活物質を用いて、コインセルを次の通り製作した。
【0174】
合成例1により得たLi[Ni0.8Co0.2]O陽極活物質、導電剤としてSuper-p(TIMCAL)およびバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを0.80:0.10:0.10のモル比で混合し、ここにN-メチルピロリドン(NMP)を添加して、均一に分散した陽極活物質層形成用スラリーを製造する。
【0175】
上述の工程により製造されたスラリーを、ドクターブレードを用いてアルミニウム箔上にコートして薄い極板形態に作った後、これを100℃で3時間以上乾燥させ、再び水を除去するために真空オーブンで120℃で10時間以上乾燥させて陽極を製作する。
【0176】
陽極とリチウム金属陰極を用いて2032タイプのコインセル(coin cell)を製造する。この時、陽極とリチウム金属対極との間には多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレータ(厚さ:約20μm)を介在させて電解質を注入し、コインセルを製作する。
【0177】
このとき、電解質は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:4:3の体積比で混合した溶媒に溶解した、1.3M LiPF6が含まれた溶液を使用した。
【0178】
実施例2~実施例5
実施例1において、合成例1による陽極活物質の代わりに合成例2~合成例5により得た陽極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同じ工程で実施例2~実施例5によるリチウム二次電池を製作する。
【0179】
比較例1~比較例5
実施例1において、合成例1により得た陽極活物質の代わりに比較合成例1~比較合成例5により得た陽極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同じ工程で比較例1~比較例5によるリチウム二次電池を製作する。
【0180】
評価例1:XRD分析
合成例1、合成例2、合成例3、比較合成例1、および比較合成例3により製造された陽極活物質に対してXRD分析を実施した。XRD分析はBruker D8 advance X-ray diffractometer with Cu Kαradiation(λ=1.5406Å)を用い、XRD分析結果を図2および図3に示す。
【0181】
図2を参照すると、合成例1により製造された陽極活物質はLiSnO及びLiSnOが形成され、合成例2により製造された陽極活物質はLiSnOが形成されたが、比較合成例1により製造された陽極活物質はLiSnOおよびLiSnOに該当するピークを示さないので、LiSnOおよびLiSnOが形成されなかったことがわかる。
【0182】
図3を参照すると、合成例3により製造された陽極活物質はLiSnOが形成されたが、比較合成例3により製造された陽極活物質はLiSnOに該当するピークを示さないので、LiSnOが形成されなかったことがわかる。
【0183】
したがって、図2図3のXRD分析結果により、陽極活物質の製造工程において、第1前駆体の添加の有無および合成温度により母素材がコートされるリチウム-金属酸化物の組成を調節できることがわかる。
【0184】
評価例2:STEM-EDS分析
合成例1により製造された陽極活物質に対してSTEM-EDS(scanning transmission electron microscopy-energy dispersive X-ray spectroscopy)分析を行った。STEM-EDS分析はJEOL社のJEM-ARM200F microscopeを用い、その分析結果を図4a~図4dに示した。具体的には、図4aは陽極活物質のSTEM写真であり、図4b、図4c及び図4dはそれぞれNi、Co及びSnのEDS分析結果を示した写真である。
【0185】
コーティング形成の結果を確認するために、Arイオンスライサ(ion-slicer)を用いて粒子の断面を切ってサンプルを準備し、これをSTEMで観察した。その結果を図4aに図示した。
【0186】
図4a~図4dを参照すると、STEM-EDS分析の結果、ニッケル系リチウム金属酸化物に存在するNi元素とCo元素とリチウム-金属酸化物に存在するSn元素がそれぞれ分離された領域に存在することを確認することができる。これにより、コーティング層に含まれているLiSnOは、被コーティング素材であるLi[Ni0.8Co0.2]Oの特定面([003]面)のみにコーティングされていることが分かる。
【0187】
評価例3:走査透過電子顕微鏡(STEM-HAADF)及び高速フーリエ変換(FFT)分析
合成例1により合成された陽極活物質に対して、STEM-HAADF(Scanning Transmission Electron Microscope-high-Angle Annular Dark Field)及び高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation;FFT)分析を行った。STEM-HAADF及びFFT分析時の分析器としては、JEOL社のJEM-ARM200F microscopeを利用した。
【0188】
STEM-HAADF及びFFTの分析結果は、図5a及び図5bに示した。図5aは図4aに図示されているSTEMイメージのLi[Ni0.8Co0.2]O-LiSnO間の界面をatomic resolutionで拡大したHAADFイメージであり、図5bは上記イメージのFFTパターンを示したものである。
【0189】
図5a及び図5bを参照すると、コーティング層の成長方向を確認することができる。STEMイメージを通じて、Li[Ni0.8Co0.2]O及びLiSnOコーティング層の原子配列とFFTパターンを観察した結果、Li[Ni0.8Co0.2]O及びLiSnOコーティング層、いずれも同一のc軸方向に層状構造が成長したことを確認することができる。これによって層状構造のLi[Ni0.8Co0.2]Oの(003)結晶面と他の層状構造のLiSnOコーティング層の(002)面が互いに共有し、かつ両素材ともc-軸方向にエピタキシァル(epitaxial)に成長したことが分かる。
【0190】
評価例4-1:出力特性の評価
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2により製作されたコインセルの出力特性を下記方法により評価した。
【0191】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2により製作されたコインセルを、1次サイクルで0.1Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、0.1Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。この時、0.1C基準20mAg-1の電流密度で行った。1次サイクルと同じ条件で2次サイクルおよび3次サイクルを繰り返し実施した。
【0192】
4次サイクルは3次サイクルを経たコインセルを0.5Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、0.5Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。4次サイクルと同じ条件で5次サイクルおよび6次サイクルを繰り返し実施した。
【0193】
7次サイクルは6次サイクルを経たコインセルを1Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、1Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。7次サイクルと同じ条件で8次サイクルおよび9次サイクルを繰り返し実施した。
【0194】
10次サイクルは9次サイクルを経たコインセルを3Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、3Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。10次サイクルと同じ条件で11次サイクルおよび12次サイクルを繰り返し実施した。
【0195】
13次サイクルは12次サイクルを経たコインセルを5Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、5Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。13次サイクルと同じ条件で14次サイクルおよび15次サイクルを繰り返し実施した。
【0196】
16次サイクルは15次サイクルを経たコインセルを7Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、7Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。16次サイクルと同じ条件で17次サイクルおよび18次サイクルを繰り返し実施した。
【0197】
19次サイクルは18次サイクルを経たコインセルを10Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、10Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。19次サイクルと同じ条件で20次サイクルおよび21次サイクルを繰り返し実施した。
【0198】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2により製造されたコインセルの出力特性を下記表2および図4に示す。
【0199】
【表2】
【0200】
これを参照すると、比較例1および比較例2により製造されたコインセルに比べて、実施例1および実施例2により製造されたコインセルが、1C以上の高率でさらに高い放電容量維持率を示すことがわかった。したがって、実施例1および実施例2により製造されたコインセルは、比較例1および比較例2により製造されたコインセルに比べて出力特性が向上することが分かった。
【0201】
評価例4-2:出力特性の評価
実施例3および比較例3により製作されたコインセルの出力特性を下記方法により評価した。
【0202】
実施例3および比較例3により製作されたコインセルを1次サイクルで0.1Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、0.1Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。1次サイクルと同じ条件で2次サイクルおよび3次サイクルを繰り返し実施した。
【0203】
4次サイクルは3次サイクルを経たコインセルを0.5Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、0.5Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。4次サイクルと同じ条件で5次サイクルおよび6次サイクルを繰り返し実施した。
【0204】
7次サイクルは6次サイクルを経たコインセルを1Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、1Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。7次サイクルと同じ条件で8次サイクルおよび9次サイクルを繰り返し実施した。
【0205】
10次サイクルは9次サイクルを経たコインセルを3Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、3Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。10次サイクルと同じ条件で11次サイクルおよび12次サイクルを繰り返し実施した。
【0206】
13次サイクルは12次サイクルを経たコインセルを5Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、5Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。13次サイクルと同じ条件で14次サイクルおよび15次サイクルを繰り返し実施した。
【0207】
16次サイクルは15次サイクルを経たコインセルを7Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、7Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。16次サイクルと同じ条件で17次サイクルおよび18次サイクルを繰り返し実施した。
【0208】
19次サイクルは18次サイクルを経たコインセルを10Cの速度で4.3Vまで定電流充電して、10Cの速度で2.7Vまで定電流放電した。19次サイクルと同じ条件で20次サイクルおよび21次サイクルを繰り返し実施した。
【0209】
実施例3および比較例3により製造されたコインセルの出力特性を下記表3および図5に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
これを参照すると、比較例3により製造されたコインセルに比べて、実施例3により製造されたコインセルが、1C以上の高率でさらに高い放電容量維持率を示すことがわかった。したがって、実施例3により製造されたコインセルは、比較例3により製造されたコインセルに比べて出力特性が向上することが分かった。
【0212】
評価例2-3:出力特性の評価
実施例4および比較例4により製作されたコインセルの出力特性を下記方法により評価した。
【0213】
実施例4および比較例4により製作されたコインセルを1次サイクルで0.1Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、0.1Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。1次サイクルと同じ条件で2次サイクルおよび3次サイクルを繰り返し実施した。
【0214】
4次サイクルは3次サイクルを経たコインセルを0.5Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、0.5Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。4次サイクルと同じ条件で5次サイクルおよび6次サイクルを繰り返し実施した。
【0215】
7次サイクルは6次サイクルを経たコインセルを1Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、1Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。7次サイクルと同じ条件で8次サイクルおよび9次サイクルを繰り返し実施した。
【0216】
10次サイクルは9次サイクルを経たコインセルを5Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、5Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。10次サイクルと同じ条件で11次サイクルおよび12次サイクルを繰り返し実施した。
【0217】
13次サイクルは12次サイクルを経たコインセルを7Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、7Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。13次サイクルと同じ条件で14次サイクルおよび15次サイクルを繰り返し実施した。
【0218】
16次サイクルは15次サイクルを経たコインセルを10Cの速度で4.4Vまで定電流充電して、10Cの速度で3.0Vまで定電流放電した。16次サイクルと同じ条件で17次サイクルおよび18次サイクルを繰り返し実施した。
【0219】
実施例4および比較例4により製造されたコインセルの出力特性を下記表4および図6に示す。
【0220】
【表4】
【0221】
これを参照すると、比較例4により製造されたコインセルに比べて、実施例4により製造されたコインセルが、1C以上の高率でさらに高い放電容量維持率を示すことがわかった。したがって、実施例4により製造されたコインセルは、比較例4により製造されたコインセルに比べて出力特性が向上することが分かった。
【0222】
以上、前述したように本発明の好ましい実施例により説明したが、本発明はこれに限定されず、次に記載する特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない限り、多様な修正および変形が可能であることを本発明が属する技術分野に従事する者は簡単に理解するであろう。
【符号の説明】
【0223】
10:リチウム二次電池
12:陰極
13:陽極
14:セパレータ
15:電池ケース
16:キャップアセンブリ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6
図7
図8