(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】容器詰め生タマネギ含有食品、容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法、生タマネギの処理方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20220302BHJP
A23L 3/015 20060101ALI20220302BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20220302BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23L19/00 A
A23L3/015
A23L35/00
B65D85/50 120
(21)【出願番号】P 2020157593
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2021-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510299503
【氏名又は名称】デリア食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】相羽 孝亮
(72)【発明者】
【氏名】中本 大介
(72)【発明者】
【氏名】上地 利征
(72)【発明者】
【氏名】田中 由美
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 智子
(72)【発明者】
【氏名】多田 早紀
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000074(JP,A)
【文献】米国特許第05405640(US,A)
【文献】特開平05-168431(JP,A)
【文献】特開平03-266955(JP,A)
【文献】特開平05-123125(JP,A)
【文献】特開平03-183451(JP,A)
【文献】高圧処理による加工野菜の保存性向上の研究,農産物流通技術研究会報,1993年,Vol.15, No.8,p.28-31
【文献】業務スーパー@スライスたまねぎ(冷凍),[online],2019年4月17日,無理しすぎない節約と掃除日和,[令和3年8月19日検索],インターネット <URL:http://blog.livedoor.jp/mizuiblog/archives/31614569.html>
【文献】[カット野菜人気]ライフの玉ねぎサラダいつも品薄で栄養期待,[online],2019年5月7日,[スーパーライフ]大阪おすすめお惣菜野菜をブログでポイントも,[令和3年8月19日検索],インターネット <URL:http://superlifefanblog.seesaa.net/article/465542688.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
B65D
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧処理された生タマネギを含む食品を容器内に含み、
前記生タマネギを含む食品の材料が封入されており、かつ、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が、2体積%以上、40体積%以下であり、
前記高圧処理は、前記残存気体量の前記容器内に前記生タマネギを含んだ状態で行われ
(ただし、生タマネギを液体中に入れることによって圧力が均一に伝達される状態で高圧処理することを除く)
、
前記高圧処理の圧力は50MPa以上であることを特徴とする、容器詰め生タマネギ含有食品。
【請求項2】
前記高圧処理は、400MPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載の容器詰め生タマネギ含有食品。
【請求項3】
前記生タマネギはカットされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器詰め生タマネギ含有食品。
【請求項4】
前記食品は、前記生タマネギを含むサラダであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の容器詰め生タマネギ含有食品。
【請求項5】
容器に生タマネギを含む食品の材料を封入する工程と、
前記封入する工程の後に、前記生タマネギを含む食品
の材料が封入されている
前記容器内の気体量を、
前記生タマネギを含む食品の材料が封入されており、かつ、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、
調整する、気体量調整工程と、
前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程(ただし、生タマネギを液体中に入れることによって圧力が均一に伝達される状態で高圧処理することを除く)と、を含
み、
前記高圧処理の圧力は50MPa以上であることを特徴とする容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法。
【請求項6】
前記気体量調整工程は、生タマネギが封入されて密封されている容器を、0.0035MPa以上、0.012MPa以下で脱気処理することによって行うことを特徴とする、請求項5に記載の容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法。
【請求項7】
前記高圧処理工程は、400MPa以上の圧力で行なうことを特徴とする、請求項6に記載の容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法。
【請求項8】
容器に生タマネギを含む食品の材料を封入する工程と、
前記封入する工程の後に、前記生タマネギを含む食品
の材料が封入されている
前記容器内の気体量を、
前記生タマネギを含む食品の材料が封入されており、かつ、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、
調整する、気体量調整工程と、
前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程(ただし、生タマネギを液体中に入れることによって圧力が均一に伝達される状態で高圧処理することを除く)と、を含
み、
前記高圧処理の圧力は50MPa以上であることを特徴とする生タマネギの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め生タマネギ含有食品、容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法、生タマネギの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生タマネギを減圧処理することで辛味を抑制する処理方法が記載されている。特許文献2には、旨み成分を短時間で増加させたり、殺菌効果を高めて保存期間を長くさせたりすることを目的として、奈良漬け等の食品を調味液とともに容器内に入れて、脱気して、約300MPa以下且つ20℃以上90℃以下で所定時間処理する処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-74号公報
【文献】特開2017-79729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タマネギの生のままの食感を保ち、かつ、辛味を抑制することの両立が長年求められており、これを目的とする従来の技術には改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、生タマネギの良好な食感と辛味の抑制とを両立した、容器詰め生タマネギ含有食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、生タマネギが容器詰めされた容器について、特定量の気体を含む状態で、高圧処理を行なうことで、生タマネギの良好な食感と辛味の抑制とを両立した、容器詰め生タマネギ含有食品を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)高圧処理された生タマネギを含む食品を容器内に含み、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が、2体積%以上、40体積%以下であることを特徴とする、容器詰め生タマネギ含有食品、
(2)前記高圧処理は、400MPa以上であることを特徴とする、(1)の容器詰め生タマネギ含有食品、
(3)前記生タマネギはカットされていることを特徴とする、(1)又は(2)の容器詰め生タマネギ含有食品、
(4)前記食品は、前記生タマネギを含むサラダであることを特徴とする、(1)~(3)の容器詰め生タマネギ含有食品、
(5)生タマネギを含む食品が封入されている容器内の気体量を、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、調整する、気体量調整工程と、前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程と、を含むことを特徴とする容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法、
(6)前記気体量調整工程は、生タマネギが封入されて密封されている容器を、0.0035MPa以上、0.012MPa以下で脱気処理することによって行うことを特徴とする、(5)の容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法、
(7)前記高圧処理工程は、400MPa以上の圧力で行なうことを特徴とする、(6)の容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法、
(8)生タマネギを含む食品が封入されている容器内の気体量を、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、調整する、気体量調整工程と、前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程と、を含むことを特徴とする生タマネギの処理方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、生タマネギの良好な食感と辛味の抑制とを両立した、容器詰め生タマネギ含有食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の容器詰め生タマネギ含有食品の特徴>
本発明の一態様に係る容器詰め生タマネギ含有食品は、高圧処理された生タマネギを含む食品を容器内に含み、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が、2体積%以上、40体積%以下である。容器の残存気体率を前記の範囲とし、かつ、生タマネギが高圧処理されていることによって、原料の生タマネギの良好な食感が活かされており、かつ、生タマネギの辛味が抑制されている。
【0012】
その理由は次の通りである。つまり、容器の残存気体率が前記の範囲の状態で高圧処理をすることで、生タマネギの組織が破壊される。ただし、この組織の破壊は、良好な食感が活かされる状態が維持される程度であり、かつ、アリインとアリイナーゼとが接触し易くなる程度である。そして、アリインとアリイナーゼとが反応することによって辛味成分である硫化アリルが生成される。硫化アリルは不安定であるため、その後速やかに消失する。また、容器の残存気体率が前記の範囲であれば、仮にこの残存気体率を脱気処理によって実現するとしても、過度に減圧されないことから、離水が抑制される。以上により、本発明における生タマネギは、良好な食感を有し、辛味が抑制されていると考えられる。
また、ブランチング等の加熱処理を施さなくとも辛味を抑制できることも本発明の一態様における有利な点である。
【0013】
<生タマネギ>
「生タマネギ」は加熱処理されていない未加熱のタマネギが意図される。加熱処理とは、熱を加えることを目的とした処理を意図する。高圧処理によって、生タマネギの温度が数℃上昇することがある。しかし、熱を加えることを目的とした処理ではないので、高圧処理されたタマネギは「生タマネギ」の範疇である。
【0014】
生タマネギは、外皮(保護葉)が取り除いた状態であると好ましい。また、生タマネギの首部や茎盤(短縮茎)等の不可食部は切断して除去した状態であることがより好ましい。また、生タマネギはカットされていてもよい。カットの態様としては、例えば、薄切り(スライス)、輪切り、角切り、くし切り、みじん切り、ダイスカット等が挙げられる。また、カットする場合の大きさは生タマネギの用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、薄切りの場合、生タマネギの厚さが、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。また、ダイスカットの場合、生タマネギの一片が1mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。これらの範囲であれば、品質が低下しにくくなり、目的とする作用効果が得られやすくなる。
【0015】
<生タマネギ含有食品>
本発明における生タマネギ含有食品は、生タマネギを含有する食品であればよく、具体的な態様は限定されない。生タマネギを含有する食品としては、例えば、生タマネギのみのもの、ポテトサラダ及びマリネ等の惣菜類、ソース及びドレッシング等の調味料類等が挙げられる。
【0016】
<具材>
生タマネギを含有する食品は、生タマネギ以外の具材を含んでもよい。生タマネギ以外の具材としては、特に制限はない。例えば、タマネギ以外の野菜、果実、肉類、魚類等が挙げられる。例えば、食品がポテトサラダである場合など、食品の態様によっては、当該具材は、ジャガイモ等の根菜類を含んでもよい。また、本発明の一態様によれば、前述の通り生タマネギの辛味抑制のための加熱処理を施さなくともよいので、加熱処理によって風味、食感が劣化しやすい具材も好適に用いることができる。当該具材としては、例えば、果菜類、葉菜類等が挙げられる。
【0017】
<添加物>
生タマネギを含有する食品は、前述の具材以外にも添加物を含んでもよい。例えば、調味料、酸味料、呈味料、香辛料、増粘剤等が挙げられる。調味料としては、例えば、食塩、砂糖等が挙げられる。酸味料としては、例えば、柑橘類の果汁、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。呈味料としては、例えば、グルタミン酸ソーダ等が挙げられる。香辛料としては、例えば、辛子粉、オイルマスタード、コショウ等が挙げられる。増粘剤としては、大豆蛋白質、澱粉、デキストリン、セルロース、その他増粘多糖類等が挙げられる。
【0018】
<容器>
本発明において、高圧処理された生タマネギを含む食品は容器内に密封されている。容器としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂で製造された容器が挙げられる。容器の材質は、単層でもよく、複層でもよい。容器の形態としては、例えば、パウチ、カップ等が挙げられる。
【0019】
<高圧処理>
本発明において、生タマネギは高圧処理されている。残存気体率が所定の範囲であり、かつ、高圧処理されていることで、原料の生タマネギの良好な食感が活かされており、かつ、辛味が抑制された生タマネギを得ることができる。高圧処理の具体的な方法は、従来公知の高圧処理用の機器を用いればよい。
【0020】
<高圧処理における圧力>
高圧処理の圧力は、所望する辛味の抑制の程度に応じて適宜設定すればよい。例えば、辛味をより抑制する観点から、圧力は400MPa以上が好ましく、500MPa以上がより好ましい。また、圧力の上限は特に制限されないが、製造効率の観点から、700MPa以下が好ましい。
【0021】
<高圧処理の時間>
高圧処理を行う時間は、圧力に応じて適宜設定すればよい。当業者であれば、生タマネギの辛味、食感を確認しながら、圧力に応じた適切な時間を設定可能である。例えば、辛味を抑制する観点から、保持時間は、30秒以上が好ましく、1分以上がさらに好ましく、2分以上がより好ましく、また、原料のタマネギの良好な食感を活かす観点から10分以下が好ましい。
【0022】
<高圧処理のその他の条件>
高圧処理を行なうときの温度は特に限定されない。例えば、0℃以上、40℃以下で行ってもよく、常温(25℃)で行ってもよい。
【0023】
<不可能・非実際的事情>
本発明の一態様に係る容器詰め生タマネギ含有食品は、高圧処理された生タマネギを含む食品を含むものである。高圧処理された生タマネギには、その構造又は特性によって直接特定することが不可能、またはおよそ実際的でないという事情が存在する。本発明の一態様における高圧処理された生タマネギは、原料としての生のタマネギが持つ良好な食感が活かされた状態で、かつ、辛味成分が低減されている程度に組織が破壊されているという機能を有する。この機能は、生タマネギの構造、例えば、細胞の構造によって実現されている可能性はあるが、細胞の構造がどのような状態であれば、この機能をもたらすのかを一概に文言にて特定することは不可能である。また、この機能をもたらす細胞の構造を特定する作業は、多数且つ多様な状態のタマネギの構造を比較検討すると可能かもしれないが、膨大な時間とコストを要し、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みてもおよそ実際的ではない。
【0024】
<残存気体率>
「残存気体率」は、密封した状態の容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、容器内の残存気体量の割合である。当該最大容積は、容器に注射針等で穴をあけて加水して満注させて、その後に密封するときに、中に入り得る最大容積である。例えば、容器詰め生タマネギ含有食品に注射針を刺し、容器内に注射器で加水して満注し、再度密封したときに、当該容器内に入っている水の重量(加水前後の重量差)を測定し、体積換算することで求められる。また、残存気体量は、容器詰め生タマネギ含有食品の容器内に含まれる気体の量である。例えば、未開封の容器詰め生タマネギ含有食品を水中に沈め、容器を開封して、容器から出てきた気体を回収することで、その量を求めることができる。
【0025】
本発明において、残存気体率は2体積%以上、40体積%以下である。残存気体率が2体積%未満だと、脱気処理によって2体積%未満を実現すると離水してしまうので、食感が悪くなる。40体積%より多いと、高圧処理の際、昇圧まで時間がかかり、処理効率が悪くなる。また、残存気体率は2体積%以上、40体積%以下であることによって、離水が抑制されて、原料の生タマネギの良好な食感が活かされる。また、残存気体率が2体積%以上、40体積%以下の状態で高圧処理することで、原料の生タマネギの良好な食感が活かされた状態で、辛味を抑制することができる。
【0026】
<好ましい残存気体率>
残存気体率は、より食感を良好にする観点から、3.5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましい。また、残存気体率は、保存性をより高める観点から、18体積%以下が好ましく、12体積%以下がより好ましい。
【0027】
<容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法の特徴>
本発明の一態様に係る容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法は、生タマネギを含む食品が封入されている容器内の気体量を、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、調整する、気体量調整工程と、前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程と、を含む。これにより、原料の生タマネギの良好な食感が活かされており、かつ、生タマネギの辛味が抑制されている。よって、本発明の一態様に係る容器詰め生タマネギ含有食品の製造方法によれば、良好な食感と辛味の抑制とが両立した生タマネギを含む容器詰め食品を得ることができる。
【0028】
<容器詰め>
生タマネギの容器詰めは、常法により行えばよい。また、生タマネギを容器詰めした後、後述の気体量調整工程の後に、常法によって密封すればよい。容器内の気体は、空気でもよく、窒素ガスで置換してもよい。生タマネギは容器に詰められる際、予めカットされていてもよい。
【0029】
<気体量調整工程>
気体量調整工程は、生タマネギを含む食品が封入されている容器内の気体量を、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、調整する工程である。残存気体率が2体積%未満だと、脱気処理によって2体積%未満を実現しようとすると離水してしまい、食感が悪くなる。40体積%より多いと、高圧処理の際、昇圧まで時間がかかり、処理効率が悪くなる。気体量調整工程は、脱気処理によって行なってもよく、手で容器を押すなどして容器から気体を出すことによって行なってもよく、所望より低い残存気体率の容器の中に気体を入れることによって調整してもよい。
【0030】
<脱気処理>
本発明の一態様においては、容器の残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように脱気処理してもよい。脱気処理によって、より容易に容器の残存気体率を調整できる。この範囲になるように脱気処理するための脱気処理の圧力は0.002MPa以上、0.04MPa以下である。脱気処理は、従来公知の機器等を用いて行えばよい。
【0031】
<脱気処理の好ましい圧力>
脱気処理の圧力は、より食感を良好にする観点から、0.035MPa以上がより好ましく、0.01MPa以上がさらに好ましい。また、脱気処理の圧力は、保存性をより高める観点から、0.018MPa以下が好ましく、0.012体積%以下がより好ましい。
【0032】
<脱気処理のその他の条件>
また、脱気処理を行なうときの温度は特に限定されない。例えば、0℃以上、30℃以下で行ってもよく、常温(25℃)で行ってもよい。
【0033】
<高圧処理工程>
高圧処理については、前述した通りであるため、同じ説明は繰り返さない。
【0034】
<生タマネギの処理方法>
本発明の一態様に係る生タマネギの処理方法は、生タマネギを含む食品が封入されている容器内の気体量を、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が2体積%以上、40体積%以下となるように、調整する、気体量調整工程と、前記気体量調整工程後、密封された前記容器に高圧処理を施す高圧処理工程と、を含む。これにより、原料の生タマネギの良好な食感が活かされており、かつ、生タマネギの辛味が抑制されている。よって、本発明の一態様に係る生タマネギの処理方法によれば、良好な食感と辛味の抑制とが両立した生タマネギを得ることができる。
【0035】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0036】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0037】
[実施例1]
包丁にて5mmの厚さにスライスした生タマネギ55gを、パウチ(140mm×170mm、ナイロンと直鎖状低密度ポリエチレンの複層)に詰めた。次に、バキュームシーラー(株式会社古川製作所製、型式FVC-2-G)を用いて脱気した後、密封した。脱気条件は、設定値が0.005MPaとした。なお、残存気体量から換算した圧力の理論値は0.033MPaであった。次に、高圧処理装置(株式会社神戸製鋼所製、装置名Dr.CHEF)を用いて、高圧処理を行なった。圧力は600MPaとし、保持時間は3分間とした。これにより、容器詰め生タマネギ含有食品を得た。
【0038】
なお、同条件で生タマネギが入った状態で注射器で加水して満注させて密封したときに容器内に入った水の体積は280mlであった。当該体積は、密封した状態の容器に対して入れることのできる気体の最大容積に相当する。
【0039】
得られた容器詰め生タマネギ含有食品に対する官能評価を行なった。また、容器内の残存気体量及び離水量を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
<官能評価>
容器詰め生タマネギ含有食品から取り出した生タマネギを訓練されたパネラーが喫食して、各評価基準に基づいて評価した。
【0041】
<食感評価>
4:原料とした生タマネギと同じ食感であった。
3:原料とした生タマネギの食感に非常に近く、非常に好ましい食感であった。
2:原料とした生タマネギの食感に近く、好ましい食感であった。
1:原料とした生タマネギの食感に比べて非常に柔らかくなっており、好ましくなかった。
【0042】
<辛味評価>
4:辛味がとても抑制されていた。よって、生食用として価値がとても高い。
3:辛味が抑制されていた。よって、生食用として価値が高い。
2:辛味がやや抑制されていた。よって、生食用として価値がある。
1:辛味が抑制されていなかった。よって、生食用として価値がない。
【0043】
<総合評価>
4:生食用のタマネギとして価値がとても高いものであった。
3:生食用のタマネギとしての価値が高いものであった。
2:生食用のタマネギとしての価値を有しているものであった。
1:生食用のタマネギとしての価値の無いものであった。
【0044】
<残存気体量>
水を貯めたシンク内で、メスシリンダーにて水上置換法により空気を収集し、空気量を測定した。
【0045】
<離水量>
パウチにたまったタマネギからの離水をカップに注ぎ採取して、カップ内の水量を測定した。
【0046】
[実施例2~7、比較例1]
表1に示すとおりに減圧処理の条件を変更した以外は、実施例1と同じ操作を行ない、容器詰め生タマネギ含有食品を得た。
【0047】
[比較例2]
減圧処理、高圧処理を行わない、原料の生タマネギについて、実施例1と同じ官能評価を行なった。
【0048】
【0049】
[実施例8~16]
高圧処理の条件を表2に示す条件とした以外は、実施例4と同じ操作を行ない、容器詰め生タマネギ含有食品を得て、官能評価等を行なった。結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
[実施例17~23]
高圧処理の時間を表3に示す条件とした以外は、実施例15と同じ操作を行ない、容器詰め生タマネギ含有食品を得て、官能評価等を行なった。結果を表3に示す。
【0052】
【0053】
[実施例24~26、比較例3~6]
実施例24については、スライスした生タマネギをパウチに入れた後、脱気せずに手で軽くパウチを押して空気を出したこと以外は、実施例1と同じ操作を行ない、容器詰め生タマネギ含有食品を得た。実施例25~26、比較例3~6については、残存空気量が表4に示す値となるように脱気処理を行なって、容器詰め生タマネギ含有食品を得た。各実施例及び比較例の容器詰め生タマネギ含有食品について、実施例1と同じ官能評価等を行なった。結果を表4及び
図1に示す。
図1は、本発明の実施例の結果を示す図であり、具体的には、残存させた空気量と離水量との関係を示す図である。
【0054】
【0055】
実施例1~26から、高圧処理された生タマネギを含む食品を容器内に含み、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が、2体積%以上、40体積%以下であることによって、生タマネギの良好な食感と辛味の抑制とを両立した、容器詰め生タマネギ含有食品となることが示された。また、表4及び
図1に示すように、実施例25から、脱気処理をする場合においても、脱気処理を行なわない実施例24と同程度の離水量になることが示された。ゆえに残存気体量が30ml~50ml程度、つまり、残存気体率が10体積%以上、18体積%以下とすることで、より良好な食感の容器詰め生タマネギ含有食品が得られることが示された。
【要約】
【課題】生タマネギの良好な食感と辛味の抑制とを両立した、容器詰め生タマネギ含有食品を提供する。
【解決手段】本発明の容器詰め生タマネギ含有食品は、圧処理された生タマネギを含む食品を容器内に含み、密封した状態の前記容器に対して入れることのできる気体の最大容積に対する、前記容器内の残存気体量の割合である残存気体率が、2体積%以上、40体積%以下である。
【選択図】なし