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特許7033259保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法
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  • 特許-保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法 図1
  • 特許-保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法 図2
  • 特許-保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20220303BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L29/78 618B
H01L29/78 627F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018552996
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2017042381
(87)【国際公開番号】W WO2018097284
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2016230560
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 行治
(72)【発明者】
【氏名】石河 泰明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 克人
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146332(JP,A)
【文献】特開2011-100980(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187507(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/075233(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152090(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/013986(WO,A1)
【文献】特開2008-248239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを被覆するシロキサン組成物の硬化物からなる保護膜と
を含んでなる薄膜トランジスタ基板であって、
前記薄膜トランジスタが酸化物半導体からなる半導体層を有し、
前記シロキサン組成物が、
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが、以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
は、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含むポリシロキサンであり、
前記フッ素含有化合物が、下記式(M):
Si(OR (M)
式中、R は、炭素数1~8の完全にまたは部分的にフッ素置換された炭化水素基であり、R は、炭素数1~5のアルキル基を表す)
である
ことを特徴とする、薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが、以下の一般式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化2】
をさらに含むものである、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記シロキサン組成物において、前記ポリシロキサンに由来するケイ素原子の数に対する、前記フッ素含有化合物に由来するフッ素原子の数の比が、0.002~0.4である、請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、
下記式(ia)で表わされるシラン化合物と、下記式(ib)で表わされるシラン化合物とを塩基性触媒の存在下で加水分解及び縮合して得られるポリシロキサンであって、プリベーク後の膜が5質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が1000Å/秒以下であるポリシロキサン(I)と、
1’[Si(OR・・・(ia) Si(OR・・・(ib)
(式中、
pは1~3であり、
1’は、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、Rは炭素数1~10のアルキル基を表す)
少なくとも前記一般式(ia)のシラン化合物を酸性若しくは塩基性触媒の存在下で加水分解及び縮合して得られるポリシロキサンであって、プリベーク後の膜が2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が100Å/秒以上であるポリシロキサン(II)と、
を含んでなる、請求項1~のいずれか1項に記載の基板。
【請求項5】
前記シロキサン組成物が、アルカリ溶解速度の異なる少なくとも2種類のポリシロキサン、ジアゾナフトキノン誘導体、フッ素含有化合物及び溶剤を含有するポジ型感光性シロキサン組成物である、請求項1~のいずれか1項に記載の基板。
【請求項6】
前記保護膜上に第二の保護膜を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ基板の製造方法において、
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化3】
(式中、Rは、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含むものであるシロキサン組成物を用意する工程と、
前記シロキサン組成物を薄膜トランジスタに塗布して保護膜前駆体層を形成する工程と、
前記保護膜前駆体層を加熱硬化させて保護膜を形成する工程と、
形成された保護膜をさらに追加加熱する工程と、
前記保護膜を具備する薄膜トランジスタをアニーリング処理する工程とを含んでなる製造方法。
【請求項8】
前記追加加熱が、前記加熱硬化の温度と同じまたはそれより高い温度で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記追加加熱が、前記アニーリング処理の温度と同じまたはそれより高い温度で行われる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記アニーリング処理が、250℃以上450℃以下で行われる、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アニーリング処理が、酸素雰囲気下で行われる、請求項~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化4】
(式中、Rは、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含み、
前記フッ素含有化合物が、下記式(M):
Si(OR (M)
式中、R は、炭素数1~8の完全にまたは部分的にフッ素置換された炭化水素基であり、R は、炭素数1~5のアルキル基を表す)
であることを特徴とする、薄層トランジスタ基板製造用シロキサン組成物。
【請求項13】
前記ポリシロキサンに由来するケイ素原子の数に対する、前記フッ素含有化合物に由来するフッ素原子の数の比が、0.002~0.4である、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高解像度ディスプレイ向けに、アモルファスInGaZnOに代表される酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの開発が活発に行われている。酸化物半導体は、液晶ディスプレイに使用されているアモルファスシリコン薄膜トランジスタと比較して、電子移動度が大きく、大きなON/OFF比など優れた電気特性を示すことから、有機ELディプレイの駆動素子や、省電力素子として期待されている。ディスプレイ向けの開発においては、特にトランジスタとしての素子動作安定性と大面積基板上での均一性を保つことが重要な課題となっている。素子動作安定性に極めて重要な要素としては、酸化物半導体層を外部雰囲気から保護する絶縁膜がある。しかし、このような絶縁膜としては、従来のアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタに利用されてきた保護用絶縁膜が主に使用されており(特許文献1および2)、酸化物半導体が本質的に持つ物性を十分活かせていない虞がある。そして、このことが酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの性能が制限される要因の一つとなっていると考えられている。
【0003】
酸化物半導体における保護膜は、水分や水素、酸素等の侵入を抑制するものでなければならない。これら不純物の侵入は、酸化物半導体の導電性を著しく変化させ、閾値の変動など動作安定性を阻害する。このような点から従来の保護用絶縁膜は、主に化学気相成長法(CVD)やスパッタリングなどの物理気相成長法(PVD)を利用したSiOx、SiNx、SiONxなどが、単層あるいは複層で適用される。これら高バリア性の無機膜を成膜するためのCVD等の製造プロセスは、酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタの下地層である酸化物半導体にダメージが与えられる虞がある。具体的には、真空蒸着装置を利用して形成させた従来の保護膜として、SiO膜やSiN膜があるが、これらの膜は原料ガスをプラズマなどにより分解して成膜するため、この作製プロセスにおいて、プラズマにより発生するイオン種が酸化物半導体表面にダメージを与え、膜特性を劣化させる場合がある。また、酸化物半導体素子の製造の際には、さまざまな薬液やドライエッチング等のプロセスで酸化物半導体がさらに劣化することが懸念される。したがって、工程からの保護として、エッチストッパー等の保護膜が併せて適用されたりしている(特許文献3)。また、このようなガスを原料とする成膜方法を用いた場合、大画面のディスプレイを作成する際に、均一な保護膜を成膜することが困難であった。そのため、このような点を解消するために、塗布法で保護膜を成膜することが提案されている例えば、シロキサン樹脂を用いた塗布型保護膜も提案されている(特許文献1)が、駆動安定性については、さらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-146332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは上記のような課題を解決する方法について検討し、フッ素含有化合物を含む特定のシロキサン組成物を用いて保護膜を形成させ、加熱硬化後に適切な追加加熱およびアニーリングを行うと、薄膜トランジスタ基板により高い駆動安定性を付与することができるとの知見を得た。本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、フッ素を含む保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板であって、高い駆動安定性を付与することができる薄膜トランジスタ基板を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、フッ素を含む保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、より簡便に、より高い駆動安定性を付与することができる製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、その製造方法に用いるシロキサン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による薄膜トランジスタ基板は、
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを被覆するシロキサン組成物の硬化物からなる保護膜と
を含んでなる薄膜トランジスタ基板であって、
前記薄膜トランジスタが酸化物半導体からなる半導体層を有し、
前記シロキサン組成物が、
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが、以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(式中、
は、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含むポリシロキサンである
ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明による薄膜トランジスタ基板の製造方法は、前記薄膜トランジスタ基板の製造方法であって、
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化2】
(式中、
は、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含むものであるシロキサン組成物を用意する工程と、
前記シロキサン組成物を薄膜トランジスタに塗布して保護膜前駆体層を形成する工程と、
前記保護膜前駆体層を加熱硬化させて保護膜を形成する工程と、
形成された保護膜をさらに追加加熱する工程と、
前記保護膜を具備する薄膜トランジスタをアニーリング処理する工程と
を含んでなることを特徴とするものである。
【0011】
さらに本発明による薄層トランジスタ基板製造用シロキサン組成物は、
ポリシロキサンと、
フッ素含有化合物と、
溶剤と
を含有し、
前記ポリシロキサンが以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化3】
(式中、Rは、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンが、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する)
を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電圧ストレス、光ストレス、光・電圧ストレスに対して高い安定性を示す、薄膜トランジスタ基板を提供することができる。また、本発明の方法によれば、従来の塗布型保護膜では達成することが困難であった、ストレスに対する高い安定性を有する薄膜トランジスタを簡便に製造することができ、さらに製造工程において真空装置等が必要ないため、生産性も大幅に向上させることができる。さらに本発明の組成物によれば、従来の塗布型保護膜より安定性が高い保護膜を形成させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板の一態様(実施例1)を示す模式図である。
図2】本発明による保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板の他の一態様を示す模式図である。
図3】本発明による保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板の他の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明すると以下の通りである。
【0015】
まず、図1に本発明による製造方法によって形成した保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板1の一態様を示した。図1において、ゲート層2の上にゲート絶縁層3が形成され、その上に金属酸化物半導体層4が形成されている。さらに金属酸化物半導体層4の両端にソース電極5とドレイン電極6がゲート絶縁層3と接するようにそれぞれ形成される。
また、図示していないが、金属酸化物半導体層4の上にはエッチストッパーが形成されていてもよい。保護膜7はこれらの金属酸化物半導体層4、ソース電極5、およびドレイン電極6を覆うように形成される。他の態様としては、例えば、保護膜7上のコンタクトホール9を介して、酸化物半導体層4とコンタクトするソース電極5、およびドレイン電極6を形成させた構造を有する薄膜トランジスタ基板(図2)、あるいはトップゲート構造の薄膜トランジスタ基板についても同様に適用することができる。なお、ここに示した構造は単に例示したものであり、本発明による製造方法によってここに示した以外の構造を有する薄膜トランジスタ基板を製造することもできる。
【0016】
図3に保護膜上7に画素電極8を形成した薄膜トランジスタ基板の一態様を示した。保護膜に形成されたコンタクトホール9を介して画素電極8とドレイン電極6がコンタクトしている。
【0017】
[薄膜トランジスタ基板]
本発明による薄膜トランジスタ基板は、薄膜トランジスタと、その薄膜トランジスタを被覆するシロキサン組成物の硬化物からなる保護膜とを含む。本発明による薄膜トランジスタ基板は、保護膜を複数具備していてもよく、薄膜トランジスタを被覆する保護膜の上に、第二の保護膜を有していてもよい。本明細書において、薄膜トランジスタとは、たとえば表面に電極、電気回路、半導体層及び絶縁層などを具備した基板など、薄膜トランジスタ基板を構成する素子全般をいう。また、基板上に配置される配線としては、ゲート配線、データ配線、2種類以上の配線層接続のためのビア配線等が挙げられる。酸化物半導体層としてはインジウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物からなる酸化物半導体が一般的であるが、半導体特性を示すものであれば、その他の酸化物でもよい。本発明による薄膜トランジスタ基板は、特に酸化物半導体とアニーリングプロセスによって高い保護特性を得ることができる点で好ましい。従来は、高温アニーリングを可能にするために、保護膜としてPE-CVD法で形成されたシリコン酸化膜や窒化シリコンなどの無機膜が適用されてきたが、これら無機膜にコンタクトホールを形成するためには反応性イオンエッチング等が必要であった。しかし、反応性イオンエッチングは酸化物半導体への劣化を著しく促進させるため、加工後に半導体の性能を回復させるためには後述のアニーリング温度を高くする必要があった。本発明では、保護膜が半導体の劣化を抑え、薄膜トランジスタに高い駆動安定性を付与することができる。
【0018】
本発明による薄膜トランジスタ基板における保護膜は、ポリシロキサンと、フッ素含有化合物と、溶剤とを含有するシロキサン組成物から形成される。この組成物を構成する成分について、以下に詳細に説明する。
【0019】
<ポリシロキサン>
ポリシロキサンとは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主鎖とするポリマーのことを言う。また本明細書において、ポリシロキサンには、一般式(RSiO1.5で表わされるシルセスキオキサンポリマーも含まれるものとする。
【0020】
本発明によるポリシロキサンは、以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位を有する。
【化4】
式中、Rは、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
が2価または3価である場合、Rは複数の繰り返し単位に含まれるSi同士を連結する。
【0021】
一般式(Ia)において、Rが1価基である場合、Rとしては、例えば、(i)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、およびデシルなどのアルキル、(ii)フェニル、トリル、およびベンジルなどのアリール、(iii)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフルオロアルキル、(iv)フルオロアリール、(v)シクロヘキシルなどのシクロアルキル、(vi)イソシアネート、およびアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、トリル、グリシジル、イソシアネートである。フルオロアルキルとしては、ペルフルオロアルキル、特にトリフルオロメチルやペンタフルオロエチルが好ましい。Rがメチルの化合物は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有するため好ましい。また、フェニルは、当該ポリシロキサンの溶剤への溶解度を高め、硬化膜がひび割れにくくなるため、好ましい。Rがヒドロキシ、グリシジル、イソシアネート、またはアミノを有していると、基板との密着性が向上するため、好ましい。
【0022】
また、Rが2価基または3価基である場合、Rは、例えば、(i)メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびデカンなどのアルカンから2つまたは3つの水素を除去した基、(ii)シクロヘプタン、シクロヘキサン、およびシクロオクタンなどのシクロアルカンから、2つまたは3つの水素を除去した基、(iii)ベンゼン、ナフタレン、およびベンゼンなどの炭化水素のみで構成された芳香族化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、および(iv)ピペリジン、ピロリジン、およびイソシアヌレートなどのアミノ基、イミノ基および/またはカルボニル基を含む、窒素および/または酸素含有環状脂肪族炭化水素化合物から2つまたは3つの水素を除去した基、であることが好ましい。パターンだれを改善し、また基板との密着性が向上するため、(iv)であることがより好ましい。
【0023】
好ましくは、Rは、1つ以上のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい、炭素数1~20の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、アルキル基もしくはフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基もしくはフルオロアリール基である。ここで、本明細書でいうフルオロアルキル基とは、アルキル基中の1つ以上の水素原子がフッ素原子に置き換えられたものをいい、フルオロアリール基とは、アリール基中の1つ以上の水素原子がフッ素原子に置き換えられたものをいう。
【0024】
としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、フェニル基、ベンジル基ならびにそれらのフッ素置換されたフルオロアルキル基またはフルオロアリール基が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。フルオロアルキル基としては、ペルフルオロアルキル基、特にトリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0025】
また、本発明によるポリシロキサンは、必要に応じて、以下の一般式(Ib)で示される繰り返し単位を有していてもよい。
【化5】
【0026】
このようなポリシロキサンは、下記式(ia)で表わされるシラン化合物を、必要に応じて酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、加水分解及び縮合して得ることができる。
1’[Si(OR (ia)
(式中、
pは1~3であり、
1’は、水素、1~3価の、炭素数1~30の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、飽和または不飽和の、脂肪族炭化水素基、または1~3価の、炭素数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレン基が、非置換、またはオキシ基、イミド基もしくはカルボニル基で置換されており、1つ以上の水素が、非置換、またはフッ素、ヒドロキシ基もしくはアルコキシ基で置換されており、かつ1つ以上の炭素が、非置換、またはケイ素で置換されており、
は炭素数1~10のアルキルを表す)
【0027】
一般式(ia)において、好ましいR1’は、上述で記載の好ましいRと同様である。
一般式(ia)において、Rとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびn-ブチルなどが挙げられる。一般式(ia)において、Rは複数含まれるが、それぞれのRは、同じでも異なっていてもよい。
【0028】
一般式(ia)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、その中でもメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
【0029】
上記一般式(ia)は、好ましくは以下の式(ia)’である。
Si(OR3 ・・・(ia)’
(式中、Rは、1つ以上のメチレンが酸素で置き換えられていてもよい、炭素数1~20の、直鎖状、分岐状もしくは環状の、アルキル基もしくはフルオロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基もしくはフルオロアリール基であり、Rは炭素数1~5のアルキル基を表す)
【0030】
シラン化合物として、式(ia)のものを用いた場合には、繰り返し単位(Ia)のみを含むポリシロキサンを得ることができる。なお、上記式(ia)で表されるシラン化合物に、下記式(ib)で表わされるシラン化合物を組み合わせてポリシロキサンを得ることもできる。このように式(ib)を用いると、繰り返し単位(Ia)および(Ib)を含むポリシロキサンを得ることができる。
Si(OR・・・(ib)
(式中、Rは炭素数1~10のアルキル基、好ましくは炭素数1~5のアルキル基、である)
【0031】
ここで、シラン化合物(ia)および(ib)は、それぞれ2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ポリシロキサンの質量平均分子量は、通常800以上15,000以下であり、有機溶剤への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から1,000以上10,000以下であることが好ましく、より好ましくは1,000以上4,000以下であり、さらにより好ましくは1000以上3000以下である。ここで質量平均分子量とは、ポリスチレン換算質量平均分子量であり、ポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0033】
本発明の組成物は、後述する感光剤を組合せることによって、感光性シロキサン組成物とすることができる。この場合には、アルカリ溶解速度の異なる少なくとも2種類のポリシロキサンを組合せて用いるのが好ましい。このようなアルカリ溶解速度の異なるポリシロキサンとしては、下記のポリシロキサン(I)および(II)を用いることが好ましい。ポリシロキサン(I)は、一般式(ia)で表わされるシラン化合物と、必要に応じて一般式(ib)で表わされるシラン化合物とを塩基性触媒の存在下で加水分解及び縮合して得られるポリシロキサンである。ポリシロキサン(I)のプリベーク後の膜は5質量%TMAH溶液に可溶であり、その溶解速度が1000Å/秒以下、好ましくは10~700Å/秒である。溶解性が10Å/秒以上の場合、現像後に不溶物が残存する可能性が極めて低くなり、断線などを防止する上で好ましい。
【0034】
ポリシロキサン(II)は、一般式(ia)のシラン化合物と、必要に応じて一般式(ib)で表わされるシラン化合物とを酸性若しくは塩基性触媒の存在下で加水分解及び縮合して得られるポリシロキサンである。ポリシロキサン(II)のプリベーク後の膜は、2.38質量%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が100Å/秒以上、好ましくは100~15,000Å/秒である。ポリシロキサン(II)の溶解速度は、目的とする保護膜の厚みによって、100Å/秒から15,000Å/秒の範囲で選定することができる。さらに好ましくは、100Å/秒から10,000Å/秒である。15,000Å/秒以下とすることで、ポリシロキサン(I)との溶解速度差が大きすぎず、均一な現像を行うことができる。
【0035】
ポリシロキサン(I)は、現像後のパターンが加熱硬化時に「パターン」だれを起こしづらいが、アルカリ溶解性が極めて小さいため、単独で使用することができない。また、ポリシロキサン(I)あるいは、ポリシロキサン(II)を、単独で使用するためにアルカリ溶解性を調整しても、本発明において保護膜を形成するのに用いるシロキサン組成物が示すようなパターンの安定性は得られないため、ポリシロキサン(I)および(II)を組み合わせて用いるのが好ましい。なお、溶解速度差が大きい場合は、溶解速度の異なる複数のポリシロキサン(II)を使用することが好ましい。
【0036】
上記ポリシロキサン(I)およびポリシロキサン(II)における前記一般式(ib)のシラン化合物の含有量は、用途に応じて適宜設定することができるが、それぞれのポリシロキサン中、3モル%~40モル%であるのが好ましく、5モル%から30モル%であるのが、膜の硬度やパターンの熱安定をコントロールする上でより好ましい。この含有量を3モル%以上とすることで、高温でのパターン安定性がより良好となり、40モル以下とすることで反応活性が抑えられ、貯蔵時の安定性がより良好となる。
【0037】
本発明に用いられるポリシロキサンは、原料として一般式(ia)または(ib)を用いたことによって、分岐構造を有するものである。ここで、必要に応じて、ポリシロキサンの原料として2官能シラン化合物を組合せることによって、ポリシロキサンを部分的に直鎖構造とすることができる。ただし、高温耐性が要求される用途では、直鎖構造部分は少ないことが好ましい。具体的にはポリシロキサンの2官能性シランに由来する直鎖構造は、全ポリシロキサンの構造の30モル%以下であることが好ましい。
【0038】
<アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法>
ポリシロキサン(I)および(II)のTMAH水溶液に対する溶解速度は、次のようにして測定し、算出する。
【0039】
まず、ポリシロキサンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に35質量%程度になるように溶解する。この溶液をシリコンウエハ上に乾燥膜厚が約2μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で60秒間加熱することによりさらに溶剤を除去する。分光エリプソメーター(Woollam社)で、塗布膜の膜厚測定を行う。次に、この膜を有するシリコンウエハを、ポリシロキサン(I)については5%TMAH水溶液、ポリシロキサン(II)については、2.38%TMAH水溶液に室温(25℃)で浸漬し、被膜が消失するまでの時間を測定する。溶解速度は、初期膜厚を被膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、一定時間浸漬した後の膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除し、溶解速度を算出する。
【0040】
ポリシロキサン(I)、(II)どちらのポリマーにおいても、ポリスチレン換算の質量平均分子量は一般に800~15,000、好ましくは1,000~10,000、より好ましくは1,000~4,000、さらにより好ましくは1,000~3,000である。分子量が上記の範囲内であれば、現像残差が生じるのを防止して十分な解像度が得られ、感度も良好となるため、分子量を上記範囲内に調整することが好ましい。
【0041】
ポリシロキサン(I)、(II)の混合割合は、層間絶縁膜の膜厚や組成物の感度、解像度等によって任意の割合で調整することが可能であるが、ポリシロキサン(I)を10質量%以上含むことで加熱硬化中の「パターン」だれ防止効果があるため好ましい。ここで「パターン」だれとは、パターンを加熱した際にパターンが変形し、例えば断面が矩形であり、稜線が明確であったパターンが、加熱後に稜線部分が丸くなったり、垂直に近かった矩形形状の側面が傾斜したりする現象をいう。
【0042】
<フッ素含有化合物>
本発明に用いられるシロキサン組成物は、フッ素含有化合物を含む。ここで、フッ素化合物は、シロキサン組成物を加熱して硬化させた後、さらに追加加熱することによって、フッ素原子を放出すると考えられている。そして、そのフッ素原子は、主として追加加熱の過程で保護膜中および半導体層の表面または層中に拡散し、その結果、半導体素子の特性が著しく改善されるものと推定されている。
【0043】
このようなフッ素含有化合物のうち、好ましいものはフッ素含有界面活性剤である。フッ素含有界面活性剤は、各種のものがしられており、いずれもフッ素化された炭化水素基と、親水性基とを有するものである。このようなフッ素含有界面活性剤としては、メガファック(商品名:DIC株式会社製)フロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)などが挙げられる。
【0044】
また、フッ素含有化合物として好ましいもののもうひとつは下記式(M):
Si(OR (M)
(式中、Rは、炭素数1~8の完全にまたは部分的にフッ素置換された炭化水素基であり、Rは、炭素数1~5のアルキル基を表す。)
で表される化合物である。この化合物は、前記したシラン化合物(ia)に包含されるもののうち、フルオロアルキル基を有するものに重複する。具体的には、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ペルフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロー1,1,2,2-テトラヒドロオクチルトリメトキシシランなどが挙げられる。なお、一般式(M)で表されるフッ素含有化合物の分子量は、1000以下であることが好ましい。
【0045】
また、後述する感光剤や硬化助剤が構造中にフッ素原子を含む場合、それはフッ素含有化合物とみなすことができる。このような感光剤または硬化助剤としては、スルホニウム塩やホスホニウム塩などが用いられることがあるが、これらの対イオンとしてフッ素化された炭化水素基などを有するものがある。このような感光剤または硬化助剤もフッ素含有化合物として機能する。
【0046】
これらのフッ素含有化合物の添加量は、シロキサン組成物の総質量を基準として、0.05~10質量%であり、好ましくは0.1~1質量%である。
【0047】
なお、本発明において、ポリシロキサンはフッ素を含むことができるが、このようなフッ素含有ポリシロキサンは、フッ素含有化合物には包含されない。これは、硬化の際に加熱処理およびその後の追加加熱処理によって、フッ素含有ポリシロキサンからフッ素が放出されにくいためと考えられる。
【0048】
シロキサン組成物において、ポリシロキサンに由来するケイ素原子の数に対する、フッ素含有化合物に由来するフッ素原子の数の比が、0.002~0.4であることが好ましい。この比が0.002以上であると本発明の効果が十分発揮される。一方で、半導体の性能を維持するには0.4以下であることが好ましい。
【0049】
<感光剤>
本発明において、シロキサン組成物に感光剤を組み合わせて、感光性シロキサン組成物とすることもできる。このようなシロキサン組成物を用いることで、露光現像により保護膜の加工が可能であり、ドライエッチング等でパターン加工を行わずに済むため、薄膜トランジスタ性能へのダメージが比較的小さく、アニーリング時間が短くて済むという利点がある。このような感光性シロキサン組成物について、以下に詳細に説明する。
【0050】
感光性シロキサン組成物は、感光剤の種類によってポジ型感光性シロキサン組成物と、ネガ型感光性シロキサン組成物とに分類される。本発明による薄膜トランジスタ基板における保護膜を形成するのに用いる好ましいポジ型感光性シロキサン組成物は、ポリシロキサン、感光剤としてのジアゾナフトキノン誘導体、溶剤、および必要に応じ硬化助剤、を含有する。このようなポジ型感光性シロキサン組成物は、露光部が、アルカリ現像液に可溶になることにより現像によって除去されるポジ型感光層を形成する。一方、本発明による薄膜トランジスタ基板における保護膜を形成するのに用いる好ましいネガ型感光性シロキサン組成物は、ポリシロキサン、光で酸あるいは塩基を発生させることができる硬化助剤、ならびに溶剤を含んでなることを特徴とする。このようなネガ型感光性シロキサン組成物は、露光部が、アルカリ現像液に不溶になることにより現像後に残るネガ型感光層を形成する。以下、それぞれの感光剤について説明する。なお、これらの感光剤が、フッ素を含む化合物である場合、それらは上記のフッ素含有化合物として機能することができる。
【0051】
<ジアゾナフトキノン誘導体>
本発明における組成物がポジ型感光性組成物である場合、感光剤としてジアゾナフトキノン誘導体を用いることができる。このときジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、特に構造について制限されないが、好ましくはフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4-ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5-ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0052】
フェノール性水酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、以下の化合物が挙げられる(商品名、本州化学工業株式会社製)。
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度、露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、本発明の層間絶縁膜として、好ましくはポリシロキサン100質量部に対して3~20質量部であり、さらに好ましくは5~15質量部である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が3質量部以上であると、露光部と未露光部との溶解コントラストが高くなり、良好な感光性を有する。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには5質量部以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が20質量部以下であると、硬化膜の無色透明性が向上する。
【0056】
<硬化助剤>
本発明による組成物がネガ型感光性組成物である場合、また組成物がポジ型感光性組成物である場合は必要に応じ硬化助剤を含むことができる。用いられる硬化助剤としては、光により酸または塩基を発生する化合物である。これらは、硬化膜製造プロセスにおいて利用する重合反応や架橋反応に応じて選択される。ここで、光としては、可視光、紫外線、または赤外線等を挙げることができる。特に、薄膜トランジスタの製造に用いられる紫外線によって、酸あるいは塩基を発生させるものが好ましい。
【0057】
硬化助剤の添加量は、硬化助剤が分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度、露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、ポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部であり、さらに好ましくは0.01~5質量部である。添加量が0.001質量部以上であると、露光部と未露光部との溶解コントラストが高くなり、添加効果が良好となる。一方、硬化助剤の添加量が10質量部以下であれば、形成される被膜へのクラックが抑制され、硬化助剤の分解による着色も抑制されるため、被膜の無色透明性が向上する。
【0058】
光酸発生剤の例としては、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。これら光酸発生剤のうち、好ましいものの構造は、一般式(A)で表すことができる。
(A)
ここで、Rは水素、炭素原子もしくはその他ヘテロ原子で修飾されたアルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、およびアルコキシル基からなる群から選択される有機イオン、例えばジフェニルヨードニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオンを表す。
【0059】
また、Xは、下記一般式で表されるいずれかの対イオンであるものが好ましい。
SbY
AsY
PY6-p
BY4-q
GaY4-q
SO
(RSO
(RSO
COO
SCN
(式中、Yはハロゲン原子であり、Rは、フッ素、ニトロ基、およびシアノ基から選択された置換基で置換された、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~20のアリール基であり、Rは、水素または炭素数1~8のアルキル基であり、pは0~6の数であり、qは0~4の数である。)
【0060】
具体的な対イオンとしてはBF 、(C、((CF、PF 、(CFCFPF 、SbF 、(CGa、((CFGa、SCN、(CFSO、(CFSO、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ブタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、およびスルホン酸イオンからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0061】
本発明に用いられる光酸発生剤の中でも特に、スルホン酸類またはホウ酸類を発生させるものが良く、例えば、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸(ローディア社製PHOTOINITIATOR2074(商品名))、ジフェニルヨードニウムテトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸、カチオン部がスルホニウムイオン、アニオン部がペンタフルオロホウ酸イオンから構成されるものなどが挙げられる。
【0062】
そのほか、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロヒ酸、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸、1-(4,7-ジブトキシ-1-ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロヒ酸などが挙げられる。さらには、下記式で表される光酸発生剤も用いることができる。
【0063】
【化9】
式中、Aはそれぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、水酸基、およびアミノ基から選ばれる置換基であり、pはそれぞれ独立に0~5の整数であり、Bは、フッ素化されたアルキルスルホネート基、フッ素化されたアリールスルホネート基、フッ素化されたアルキルボーレート基、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基などが挙げられる。これらの式に示されたカチオンおよびアニオンを相互に交換した化合物や、これらの式に示されたカチオンまたはアニオンと、前記した各種のカチオンまたはアニオンとを組み合わせた光酸発生剤を用いることもできる。例えば、式により表されたスルホニウムイオンのいずれかとテトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸イオンとを組み合わせたもの、式により表されたヨードニウムイオンのいずれかとテトラ(パーフルオロフェニル)ホウ酸イオンとを組み合わせたものも光酸発生剤として用いることができる。
【0064】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルーp-トルエンスルホナート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジルトリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
【0065】
光塩基発生剤の例としては、アミド基を有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくは該構造を含むものが挙げられる。
【0066】
これらのうち、以下の一般式(A)で表される光塩基発生剤の水和物または溶媒和物は組成物の経時安定性を改良することができるので好ましい。
【化10】
ここで、x1は、1以上6以下の整数であり、
11~R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモウム基、置換基を含んでもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよい炭素数6~22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよい炭素数1~20のアルコキシ基、または置換基を含んでもよい炭素数6~20のアリールオキシ基である。
【0067】
これらのうち、R11~R14は、特に水素原子、水酸基、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、または炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、R15およびR16は、特に水素原子が好ましい。
【0068】
11~R14のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよい。このとき、その環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0069】
Nは含窒素複素環の構成原子であり、その含窒素複素環は1つ以上のヒドロキシアルキル基を有する。このヒドロキシアルキル基は、環のいずれの位置に結合していてもよいが、パラ位またはオルト位に結合していることが好ましい。その含窒素複素環は1つ以上の、前記ヒドロキシアルキルと異なる、置換基を含んでもよい炭素数1~20、特に1~6の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい。含窒素複素環においては、置換基に水酸基を有すると溶解性が上がり沸点が上がるので好ましい。
【0070】
11~R14は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル基、アルキニル基などの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ基、ニトロ基などが用いられ、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0071】
前記した、式(A)で表される光塩基発生剤の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。
【化11】
【0072】
また、硬化助剤として、熱酸発生剤または熱塩基発生剤を用いることができる。熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。
【0073】
好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0074】
熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0075】
これらの熱酸発生剤および熱塩基発生剤は、組成物が感光性であっても、非感光性であっても用いることができるが、非感光性である場合には十分に硬化した膜を得るために、用いることが好ましい。
【0076】
なお、これらの感光剤または硬化助剤のうち、構造中にフッ素原子を含むものは、前記したフッ素化合物としても機能する。
【0077】
<溶剤>
溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、PGMEA、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤の配合比は、塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。例えば、スプレーコートの場合は、ポリシロキサンと任意の成分との総質量を基準として、90質量%以上になったりするが、ディスプレイの製造で使用される大型ガラス基板のスリット塗布では、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下とされる。
【0078】
<その他の任意成分>
また、本発明によるシロキサン組成物は必要に応じてその他の任意成分を含んでいてもよい。そのような任意成分としては、界面活性剤などが挙げられる。なお、界面活性剤のうち、フッ素を含むものは、前記したフッ素含有化合物としても機能する場合がある。
【0079】
界面活性剤は塗布性を改善することができるため、用いることが好ましい。本発明におけるシロキサン組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0080】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0081】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0082】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0083】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、シロキサン組成物の総質量に対し、通常50~10,000ppm、好ましくは100~5,000ppmである。
【0084】
[薄膜トランジスタの製造方法]
シロキサン組成物を、薄膜トランジスタに塗布し、加熱することによって保護膜(硬化膜)を形成させ、さらに追加加熱を行った後、保護膜を有する薄膜トランジスタをアニーリング処理することによって、目的の薄膜トランジスタ基板が得られる。その際、シロキサン組成物に感光剤が組み合わされている場合には、所望のマスクを介して露光、現像を行うことによりコンタクトホールなどのパターンを形成させることもできる。
【0085】
酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタ基板の製造方法として、図1に示すボトムゲート型のTFTを例に挙げて説明する。ガラス等によりなる基板上にゲート電極2をパターン形成する。ゲート電極材としては、モリブデン、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、チタンなどの材料が単層あるいは2種類以上の積層膜として構成される。ゲート電極上にゲート絶縁膜3を形成する。ゲート絶縁膜としては、一般にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜などが、PE-CVD法により形成される。ゲート絶縁膜の厚みは、通常100から300nmである。ゲート絶縁膜上の酸化物半導体層4は、酸化物半導体と同じ組成のスパッタリングターゲットをDCスパッタリングあるいはRFスパッタリングで成膜するスパッタリング法や、金属アルコキシド、金属有機酸塩、塩化物などのプレカーサー溶液や酸化物半導体ナノ粒子の分散液を塗布して焼成することよって酸化物半導体層を形成する液相法がある。酸化物半導体層4のパターン形成をした後、ソース・ドレイン電極5および6をパターン形成する。ソース・ドレイン電極材料としては、モリブデン、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、チタンなどの材料が単層あるいは2種類以上の積層膜として構成される。
【0086】
本発明において用いられるシロキサン組成物が感光性組成物である場合、薄膜トランジスタ基板の製造方法は、上記酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタ上に感光性シロキサン組成物を塗布しプリベーク等で乾燥後、露光し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(一般に、2.38%水溶液が使用される)で現像してコンタクトホールなどのパターンを形成した後、塗布した感光性シロキサン組成物(保護膜前駆体層)を硬化させて保護膜7を形成し、次いで、追加加熱処理を行い、さらに酸化物半導体のアニーリング処理を行う。さらに、保護膜上に例えばスパッタリング法によりITO膜を形成し、パターニングすることにより図3の素子を形成する。また、この保護膜上に、CVDやPVDで無機膜を形成したり、塗布法により有機材料を保護膜や平坦化の目的で有することも可能である。アニーリング処理は、ITO膜等を形成した後に行ってもよい。
【0087】
本発明による製造方法の各工程について、以下に説明する。
【0088】
(1)シロキサン組成物を用意する工程
本発明による薄膜トランジスタ基板の製造方法において、ポリシロキサンと、フッ素含有化合物と、溶剤とを含有するシロキサン組成物を用意する。シロキサン組成物の各構成成分の詳細については、上述の通りである。
【0089】
(2)保護膜前駆体層を形成する工程
保護膜前駆体層は、上記のシロキサン組成物を塗布することによって形成される。本発明における塗布工程は、上記のシロキサン組成物を薄膜トランジスタ表面に塗布することで行われる。この塗布工程は、一般的な塗布方法、即ち、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、スリット塗布等、従来組成物の塗布方法として知られた任意の方法により行うことができる。必要に応じて1回又は2回以上繰り返して塗布することにより、保護膜前駆体層を所望の膜厚とすることができる。
【0090】
保護膜前駆体層は溶剤残存量を減少させるため、該層をプリベーク(予備加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~150℃、好ましくは90~130℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~90秒間、クリーンオーブンによる場合には1~5分間実施することができる。プリベークの前にスピンや真空による溶剤除去工程が含まれることが好ましい。
【0091】
(3)保護膜前駆体層を加熱硬化させて保護膜を形成する工程
保護膜前駆体層の硬化温度は特に限定されず、シロキサンの脱水縮合が進行する温度であれば任意に選択できる。焼成温度が低すぎると反応が十分に進行せず保護膜中にシラノール基が残存しトランジスタ性能の安定性に影響することがある。このために焼成温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましい。
【0092】
また、温度が過度に高いと製造コストが上昇すること、ポリマーが分解することがあることなどから500℃以下であることが好ましく。400℃以下がより好ましい。また、硬化時間は特に限定されないが、一般に10分以上、好ましくは20分以上である。硬化は不活性ガスまたは大気中などの酸素含有雰囲気下において行われる。
【0093】
このような加熱硬化処理によって、保護膜前駆体層に含まれるポリシロキサンが硬化して保護膜が形成される。
【0094】
(4)形成された保護膜をさらに追加加熱する工程
ポリシロキサンを硬化させて保護膜を形成させた後、追加加熱工程を行う。追加加熱は、加熱硬化後、アニーリング処理の前であればいつでもよい。シロキサンの化学変化(ポリマー化)がアニーリング処理の段階で起こると、水が発生しトランジスタ性能に影響を及ぼすため、アニーリング処理温度以上の温度で行うことが好ましい。また、追加加熱は、上記の硬化膜形成工程における加熱温度と同じか、またはそれより高い温度で加熱することにより行うことができる。特に有機材料を用いる場合は、分解しないよう加熱硬化を一旦追加加熱温度以下で行うことが好ましい。但し追加加熱温度の上限は、硬化工程と同様に、製造コストやポリマー分解防止の観点から500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましい。さらに、追加加熱時間は、一般に20分以上、好ましくは40分以上である。追加加熱処理の雰囲気は、加熱硬化と同様に不活性ガス雰囲気、または酸素含有雰囲気下において行われる。ただし、加熱硬化工程と異なる雰囲気で追加加熱を行うこともできる。
【0095】
(5)保護膜を形成させた薄膜トランジスタをアニーリング処理する工程
最後に、薄膜トランジスタのアニーリング処理を行う。酸化物半導体を具備した素子において、保護膜形成は、PVDやCVDによる膜形成、ドライエッチングやウエットエッチングによるパターン加工、レジストの剥離工程などを含むが、この際薄膜トランジスタ性能の劣化が発生することがあるため、アニーリング処理によって性能を回復することが望ましい。本発明において、例えば250℃以上でアニーリング処理を行うことにより、パターニングの際に薄膜トランジスタの性能が一旦低下した場合でも、その性能を回復させることができる。特に、本発明においては、薄膜トランジスタの特性が著しく低下した場合であっても、酸素存在下でのアニーリングによって大幅な性能回復が起こるという特徴がある。また、酸化物半導体の劣化の度合いによっては、アニーリング温度を上げたり、アニーリング時間を長くすることにより薄膜トランジスタの性能回復と素子の信頼性を向上させることができる。アニーリング温度は、250℃以上450℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下である。アニーリング時間は、30分以上、好ましくは60分以上である。アニーリングは、酸素の存在下で行うことが好ましい。ただし、酸素存在下でのアニーリングでは、電極の酸化や本発明の保護膜の酸化による着色等の影響を考慮して、400℃以下で行うのが好ましい。
なお、上記の追加加熱処理とアニーリング処理とを、一連の処理として行うことができる。具体的には、追加加熱工程からアニーリング工程までを同じ条件で引き続き加熱を行うことができる。このような場合には、一般的に行われているアニーリング処理に対して、長時間の加熱が為されることになる。
【0096】
なお、保護膜形成を形成する工程、追加加熱する工程、アニーリング処理をする工程は連続して行うこともできるが、これらの工程の間に別の工程を実施することもできる。たとえば、前記したように、追加加熱とアニーリング処理との間に、保護膜上に別の層を形成することも可能である。
【0097】
以上の方法によって、薄膜トランジスタ基板を製造することができる。
【0098】
なお、シロキサン組成物に感光剤を加えてパターンを有する保護膜を形成させることもできる。このような保護膜を形成させるために、以下の工程を追加することができる。以下の工程は、プリベークの後に行うことが好ましい。
【0099】
<露光工程>
保護膜前駆体層を形成させた後、その表面に光照射を行う。光照射に用いる光源は、パターン形成方法に従来使用されている任意のものを用いることができる。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を挙げることができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360~430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。照射光のエネルギーは、光源や保護膜前駆体層の膜厚にもよるが、一般にジアゾナフトキノン誘導体のポジ型の場合、20~2000mJ/cm、好ましくは50~1000mJ/cmとする。照射光エネルギーが20mJ/cmよりも低いと十分な解像度が得られないことがあり、反対に2000mJ/cmよりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。また、ネガ型の場合、1~500mJ/cm、好ましくは10~100mJ/cmとする。照射光エネルギーが1mJ/cmよりも低いと膜べりが大きく、反対に500mJ/cmよりも高いと、露光過多となり、解像度が得られなくなることがある。
【0100】
光をパターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用することができる。そのようなフォトマスクは周知のものから任意に選択することができる。照射の際の環境は、特に限定されないが、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、基板表面全面に膜を形成する場合には、基板表面全面に光照射すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような基板表面全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0101】
<露光後加熱工程>
露光後、露光個所に発生した反応開始剤により膜内のポリマー間反応を促進させるため、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Baking)を行うことができる。この加熱処理は、保護膜前駆体層を完全に硬化させるために行うものではなく、現像後に所望のパターンだけが基板上に残し、それ以外の部分が現像により除去することが可能となるように行うものである。
【0102】
<現像工程>
露光後、必要に応じて露光後加熱を行ったあと、保護膜前駆体層を現像処理する。現像の際に用いられる現像液としては、従来知感光性シロキサン組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、TMAH水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。現像方法も従来知られている方法から任意に選択することができる。具体的には、現像液への浸漬(ディップ)、パドル、シャワー、スリット、キャップコート、スプレーなどの方法挙げられる。この現像によって、パターンを得ることができる。現像液により現像が行われた後には、水洗がなされることが好ましい。なお、本発明による製造方法においては、図3に示すように、現像によって形成したコンタクトホール9を介して、ドレイン電極6と保護膜7の上に形成した透明電極(画素電極8)とを導通させることもできる。
【0103】
<現像後照射工程>
ポジ型の組成物を使用し、形成される保護膜を透明膜として使用する場合は、ブリーチング露光と呼ばれる光照射を行うことが好ましい。ブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が光分解して、膜の光透明性がさらに向上する。ブリーチング露光の方法としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯などを用い、膜厚によって100~2,000mJ/cm程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。また、ネガ型の場合光照射によって、現像後残膜中の硬化助剤を活性化させることにより、後の加熱硬化をより容易に行うことができる。膜厚によって100~2,000mJ/cm程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。
【実施例
【0104】
本発明を諸例により具体的に説明すると以下の通りである。
【0105】
合成例(ポリシロキサン(P1)の合成)
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液24.5g、イソプロピルアルコール(IPA)300ml、水2.0gを仕込み、次いで滴下ロートにフェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン40.8gの混合溶液を調製した。その混合溶液を60℃にて滴下し、同温で3時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン200ml、水300mlを添加し、2層に分離させ、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度40質量%なるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を添加調製した。得られたポリシロキサン(P1)の分子量(ポリスチレン換算)は質量平均分子量(Mw)=2,000であった。得られた樹脂溶液をシリコンウエハにプリベーク後の膜厚が2μmになるように塗布し、5%TMAH水溶液に対する溶解速度を測定したところ、950Å/秒であった。
【0106】
合成例(ポリシロキサン(P2~P4)の合成)
ポリシロキサン合成に用いるシラン化合物を変更した他はP1の合成例と同様にして、ポリシロキサンP2~P4を得た。ポリシロキサンP2~P4の詳細は以下の表1に示す通りであった。
【表1】
表中、P3は、P3-1とP3-2とを90:10(質量比)で混合した混合物である。
【0107】
シロキサン組成物の調製
ポリシロキサンP1~P4に対して、各種の添加剤を組み合わせて、実施例1~5および比較例1~3のシロキサン組成物を調製した。各組成物の組成は表2に示すとおりであった。なお、表中、ジナフトキノン化合物および硬化助剤の添加量は、ポリシロキサン100質量部に対する量であり、その他の添加剤は、組成物全体の質量を基準とする量である。
【0108】
薄膜トランジスタ基板の作成
nドープしたシリコンウエハ上に、100nmのシリコン酸化膜をゲート絶縁膜として設置した。ゲート絶縁膜上にアモルファスInGaZnOをRFスパッタリング法により成膜した(70nm)。アモルファスInGaZnO膜のパターン形成後、ソース・ドレイン電極をパターン形成した。ソース・ドレイン電極材料としては、モリブデンを利用した。その後、300℃、1時間、該薄膜トランジスタのアニーリングを行った。次に、調製されたシロキサン組成物をスピンコート法により塗布した。100℃、90秒間プリベークした。
【0109】
次いで、酸素雰囲気下、300℃、60分硬化させて保護膜を形成した。さらに、追加加熱処理とアニーリング処理を合わせて、酸素雰囲気下、300℃、120分行って、保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板を得た。保護膜厚は1000nmであった。
【0110】
得られた基板について、その特性値を測定した。得られた結果は、表2に示すとおりであった。
【0111】
【表2】
表中
DNQ: 4-4’-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェノール)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体、添加量はポリシロキサン100質量部を基準とする。
TBG:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7-オルソフタル酸塩、添加量はポリシロキサン100質量部を基準とする。
DTS-200: 商品名、みどり化学製、スルホニウム塩タイプ光酸発生剤、対イオンB(C 、添加量はポリシロキサン100質量部を基準とする。
TPS-1000: 商品名、みどり化学製、スルホニウム塩タイプ光酸発生剤、対イオンCHSO 、添加量はポリシロキサン100質量部を基準とする。
AKS10: 商品名、信越化学工業株式会社製、フッ素非含有界面活性剤
R-2011: 商品名、DIC株式会社製、フッ素系界面活性剤
F-558: 商品名、DIC株式会社製、フッ素系界面活性剤
NFH: ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン
【0112】
半導体パラメーターアナライザー、Agilent4156Cを用いて下記デバイス特性の測定を行った。
【0113】
キャリア移動度の測定方法
ドレイン電圧0.1V、TFTのサイズはチャンネル幅90μm、チャンネル長10μmにてゲート電圧-20Vから20Vにおけるドレイン電流の変化を測定し、キャリア移動度の算出(単位:cm/V・sec)を行った。
【0114】
バイアスストレスの測定方法
ゲート電圧-20V、ドレイン電圧0V、印加時間10000秒間ストレス印加を行った後にデバイス特性の測定を行った。その後、その後、ドレイン電圧を5Vに変更した以外は上記キャリア移動度と同様に測定を行い、オフからオンへの立ち上がりゲート電圧Vthが初期状態からどの程度変化したかを評価した。上記立ち上がりゲート電圧Vthはドレイン電流1nAに到達した値とした。
【0115】
ハンプ現象の評価
オフからオンへの立ち上がり付近に出現するハンプの大きさが、上記ストレス印加を行った後に初期状態からどの程度変化するかを以下の基準で評価した。これが小さいほどスイッチング特性が良好であると判断できる。
A: 無し
B: 小さい
C: 大きい
D: 測定不能
【符号の説明】
【0116】
1 保護膜を具備する薄膜トランジスタ基板
2 ゲート層
3 ゲート絶縁層
4 金属酸化物半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜
8 画素電極
9 コンタクトホール
図1
図2
図3