(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】検知装置、画像形成装置、及び、保持部材
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20220303BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2017244056
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】青柳 広太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 英世
(72)【発明者】
【氏名】中山 聡
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-236415(JP,A)
【文献】特開平05-130330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024- 1/207
G06T 1/00
G03G 15/00
G01B 11/00 -11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの位置と、シートの表面に形成された画像の位置と、シートの表面に形成された画像と、のうち少なくとも1つを光学的に検知する検知器と、
前記検知器との間にシートが搬送されるように前記検知器に対向する位置に配置されて、支軸を中心に回動可能に構成された
円柱状の回動部材と、
前記回動部材の外周面の一部に軸方向に延在するように形成された溝部と、
前記溝部に嵌め込まれて、光を透過可能に形成された
長方体状の光透過性部材と、
を備え、
前記溝部は、
前記光透過性部材が当接する底面と、前記底面よりも深くなるように溝状に形成された段差部と、を具備し、
前記底面に、特定色からなる表面層が形成されたことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記溝部の前記表面層は、前記特定色の塗料が塗装されたものであることを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記段差部は、前記溝部において前記底面に対して
直交する方向に延在する内壁面と、前記底面に沿って広がる仮想平面と、が交差する仮想隅部に形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記段差部は、前記検知器によって検知されない位置に配置されたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の検知装置。
【請求項5】
前記光透過性部材は、透明なガラス材料又は樹脂材料で形成されたことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の検知装置。
【請求項6】
前記光透過性部材は、前記検知器に対向する対向面に、シートの搬送方向
に延在する線画が等間隔で複数形成されるとともに、前記搬送方向に直交する方向
に延在する線画が
等間隔で複数形成されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の検知装置。
【請求項7】
前記光透過性部材が前記検知器に対向するように前記回動部材が前記支軸を中心に回動されたときに、前記検知器によって、前記表面層を背景面として前記線画を検知して、前記検知器の姿勢を検知することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項8】
前記特定色は、白色であることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の検知装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の検知装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
光を透過可能に形成された光透過性部材が嵌合された溝部を備え、
前記溝部は、
前記光透過性部材が当接する底面と、前記底面よりも深くなるように溝状に形成された段差部と、を具備し、
前記底面に、特定色
の塗料が塗装された表面層が形成されたことを特徴とする保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートの位置やシート上の画像の位置や画像自体を検知する検知装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はそれらの複合機やオフセット印刷機等の画像形成装置と、光透過性部材を保持する保持部材と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、定着工程後のシートの表面に形成された画像などを検知する画像読取装置(検知装置)が設置されたものが広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
詳しくは、特許文献1における画像読取装置には、画像読取手段の補正などをおこなうために、白基準面などの複数の基準面が形成された多角柱状部材が回動可能に設置されている。そして、画像読取手段に対向する位置に所望の基準板が対向するように、多角柱状部材を回動させて、所望の基準板を画像読取手段で検知して、画像読取手段における所望の補正をおこなっている。
そして、補正がされた画像読取手段を用いて、画像読取装置の位置に搬送されるシート上に形成された画像などが検知されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の検知装置は、シート上の画像の位置などを検知する検知器に対向するように回動部材を設置して、回動部材に設けた溝部の底面が背景面となるように底面に特定色の表面層を形成して、その溝部にガラススケールなどの光透過性部材を嵌め込むように構成した場合に、溝部の底面に表面層が均一に形成されずに、溝部で光透過部材が浮いた状態や傾いた状態で嵌め込まれてしまうことがあった。
そして、そのような光透過部材の嵌め込み不良が生じると、検知器によって溝部の底面を背景面としてガラススケール上の線画を検知しても、検知器の姿勢を精度良く検知できない不具合などが生じてしまうことになる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、回動部材(保持部材)の溝部への光透過性部材の嵌め込み不良が生じにくい、検知装置、画像形成装置、及び、保持部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における検知装置は、シートの位置と、シートの表面に形成された画像の位置と、シートの表面に形成された画像と、のうち少なくとも1つを光学的に検知する検知器と、前記検知器との間にシートが搬送されるように前記検知器に対向する位置に配置されて、支軸を中心に回動可能に構成された円柱状の回動部材と、前記回動部材の外周面の一部に軸方向に延在するように形成された溝部と、前記溝部に嵌め込まれて、光を透過可能に形成された長方体状の光透過性部材と、を備え、前記溝部は、前記光透過性部材が当接する底面と、前記底面よりも深くなるように溝状に形成された段差部と、を具備し、前記底面に、特定色からなる表面層が形成されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回動部材(保持部材)の溝部への光透過性部材の嵌め込み不良が生じにくい、検知装置、画像形成装置、及び、保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図3】(A)シェーディング補正時の検知装置を示す概略図と、(B)白紙のシートが搬送されるときの検知装置を示す概略図と、(C)白色以外のシートが搬送されるときの検知装置を示す概略図と、である。
【
図4】リボルバの溝部にガラススケールを装着するときの状態を示す概略斜視図であって、第1、第2ローラ部材の図示を省略したものである。
【
図5】リボルバの溝部にガラススケールが嵌め込まれた状態を示す拡大側面図である。
【
図6】従来のリボルバの溝部にガラススケールが嵌め込まれた状態を示す拡大側面図である。
【
図7】変形例としての、リボルバの溝部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、
図1にて、画像形成装置における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基いた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は像担持体としての感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像をシートPに転写する転写部としての転写ローラ、を示す。
また、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部、12~14は用紙等のシートPが収納された給紙部(給紙カセット)、16は転写ローラ7(画像形成部)に向けてシートPを搬送するレジストローラ(タイミングローラ)、を示す、
また、20はシートP上の未定着画像を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、30は定着工程後のシートPの位置やシートP上の画像位置を検知するとともにシートP上の画像を読み取る画像読取装置としても機能する検知装置、を示す。
【0011】
図1を参照して、画像形成装置1における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいた露光光L(レーザ光)が、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0012】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図中の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5の表面に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5の表面に形成された画像は、転写ローラ7と感光体ドラム5とが当接する画像形成部(転写ニップ)で、レジストローラ16により搬送されたシートP上に転写される。
【0013】
一方、
図1を参照して、転写ローラ7の位置(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給紙部12~14のうち、1つの給紙部が自動又は手動で選択される(例えば、装置本体1に内設された給紙部12が選択されたものとする。)。
そして、給紙部12に収納されたシートPの最上方の1枚が、給紙ローラによって搬送経路に向けて給送される。
【0014】
その後、シートPは、レジストローラ16の位置に達する。そして、レジストローラ16によって、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて転写ローラ7の位置(画像形成部)に向けて搬送される。
そして、転写工程後のシートPは、転写ローラ7(転写部)の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達したシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによって画像が定着される。画像が定着されたシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(定着ニップ部である。)から送出された後に、検知装置30の位置に達する。そして、検知装置30の位置で、シートPの位置(姿勢)や、シートPの表面に形成された画像の位置や、シートPの表面に形成された画像が検知されることになるが、これについては後で詳しく説明する。
その後、検知装置30の位置を通過したシートPは、画像形成装置本体1から排出される。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0015】
以下、
図2~
図5等を用いて、本実施の形態における画像形成装置1において特徴的な、検知装置30について詳述する。
先に
図1を用いて説明したように、本実施の形態における画像形成装置1には、定着装置20の下流側に、検知装置30が設置されている。
この検知装置30は、定着装置20の下流側で、画像が形成されたシートPを搬送しながら、シートPの位置(姿勢)を検知したり、シートPの表面に形成された画像の位置を検知したり、シートPの表面に形成された画像(画像情報)を検知したり(読取ったり)するためのものである。
【0016】
詳しくは、
図2、
図3に示すように、検知装置30は、主として、検知器としてのCIS31(コンタクト・イメージ・センサ)と、回動部材としてのリボルバ35と、で構成されている。
CIS31(検知器)は、搬送されるシートPの画像面に対向するように、装置の筐体に固定して保持されている。CIS31は、幅方向(
図1~
図3の紙面垂直方向である。)に延在するように形成されていて、シートPの幅方向の範囲を含むように配置されている。CIS31は、幅方向に並設された複数のフォトセンサ(LED等の発光素子32とフォトダイオード等の受光素子33とからなる。)からなる。なお、本実施の形態では、幅方向に並設された複数の受光素子に対応して光源となる複数の発光素子32を幅方向に並設したものを用いたが、幅方向に並設された複数の受光素子に対応する光源を1つに共通化したものを用いることもできる。そして、CIS31(検知器)は、シートPの位置と、シートPの表面に形成された画像の位置と、シートPの表面に形成された画像と、のうち少なくとも1つを光学的に検知することになる。
【0017】
リボルバ35(回動部材)は、CIS31(検知器)との間にシートPが搬送されるように、CIS31に対向する位置に配置されている。すなわち、リボルバ35は、シートPの非画像面(両面プリントされたシートPに対してはシートPのオモテ面)に対向するように配置されている。リボルバ35とCIS31との隙間は、シートPがリボルバ35に密着しながら良好に搬送されるように、広すぎず狭すぎない最適な距離に設定されている。
【0018】
また、リボルバ35(回動部材)は、支軸35a(回転中心)を中心に回動可能に構成されている。具体的に、リボルバ35(回動部材)は、支軸35aを中心に回動可能に、装置の筐体に保持されている。支軸35aは、駆動モータ(正逆方向に回転可能なモータである。)のモータ軸に接続されている。そして、制御部による駆動モータの制御と、リボルバ35の回動方向の姿勢を検知するエンコーダの検知結果と、によって、リボルバ35が所望の回動方向の姿勢でCIS31に対向することになる。すなわち、
図2に示すように、リボルバ35のガラススケール36をCIS31に対向させたり、
図3(A)に示すように、リボルバ35の白色基準面35cをCIS31に対向させたり、
図3(B)に示すように、リボルバ35の第1ローラ部材37(黒色ローラ)をCIS31に対向させたり、
図3(C)に示すように、リボルバ35の第2ローラ部材38(白色ローラ)をCIS31に対向させたり、することが可能になる。
【0019】
ここで、本実施の形態におけるリボルバ35(回動部材)は、多角柱状ではなくて、略円柱状に形成されている。すなわち、リボルバ35の外周面には、大きな角部が存在せずに、外周面がほぼ曲面で形成されている。
これにより、リボルバ35を回動させても、リボルバ35とCIS31との間に搬送されるシートPが、リボルバ35に引っ掛かってジャム(紙詰り)してしまう不具合などが生じにくくなる。
【0020】
ここで、
図2、
図3に示すように、リボルバ35(回動部材)には、光透過部材としてのガラススケール36と、2つの第1ローラ部材37(黒色ローラ)と、2つの第2ローラ部材38(白色ローラ)と、が設置されている。また、リボルバ35の外周面の一部には、白色塗装が施されて、白色基準面35cが形成されている。
【0021】
詳しくは、
図2~
図5に示すように、リボルバ35(回動部材)には、その外周面の一部に、軸方向(
図2、
図3、
図5の紙面垂直方向であって、幅方向である。)に延在するように、略長方体状の溝部35bが形成されている。そして、その溝部35bに、透明なガラス材料で形成されて光を透過可能に形成された略長方体状のガラススケール36(光透過性部材)が、嵌め込まれている。具体的に、本実施の形態において、溝部35bは、ガラススケール36よりも僅かに大きく形成されている。そして、ガラススケール36は、溝部35bの搬送方向上流側の内壁面35b2(
図5参照)に突き当てられた状態で嵌め込まれて、通紙領域外で板バネなどの弾性部材が隙間に嵌合されてリボルバ35に固定設置されている。
【0022】
また、リボルバ35の溝部35bの底面35b1(
図4、
図5等参照)には、特定色(本実施の形態では、白色である。)からなる表面層Wが形成されている。この表面層Wは、白色(特定色)の塗料が塗装されたものである。ここで、表面層Wへの白色塗料の塗装方法としては、ブラシ塗装、スプレー塗装、粉体塗装、静電塗装、電着塗装など種々のものを用いることができる。
【0023】
また、本実施の形態において、ガラススケール36(光透過性部材)には、
図4に示すように、CIS31(検知器)に対向する対向面に、シートPの搬送方向(白矢印方向)に延在する複数の線画36a(縦線)が形成されるとともに、幅方向(搬送方向に直交する方向である。)に延在する複数の線画36b(横線)が形成されている。すなわち、縦線としての複数の線画36aは幅方向に等間隔に形成され、横線としての複数の線画36bは搬送方向に等間隔に形成されていて、ガラススケール36は、その対向面に縦横線からなるスケールが形成されていることになる。なお、本実施の形態において、線画36a、36bは、ガラススケール36上においてクロムを蒸着して黒色に形成されたものである。
そして、ガラススケール36(光透過性部材)がCIS31(検知器)に対向するようにリボルバ35(回動部材)が支軸35aを中心に回動されたときに(
図2の状態のときである。)、CIS31によって、溝部35bの底面35b1(表面層W)を背景色として線画36a、36bを検知して、CIS31の姿勢を検知することになる。
【0024】
具体的に、ガラススケール36とCIS31との間にシートPが介在されていない状態(例えば、画像形成動作が開始される直前である。)で、CIS31によってガラススケール36の縦線としての線画36aを検知することで、CIS31が狙いの幅方向の位置に対して、どれだけ位置ズレ(例えば、部品の寸法誤差や組付け誤差による位置ズレである。)しているかを把握することができる。したがって、そのような検知結果に基づいて、実際にシートPが搬送されたときのCIS31の検知結果を補正することで、CIS31によって検知されるシートPの幅方向端部の位置の検知精度や、CIS31によって検知されるシートP上の画像の幅方向の位置の検知精度を、高めることができる。
また、ガラススケール36とCIS31との間にシートPが介在されていない状態で、CIS31によってガラススケール36の横線としての線画36bを検知することで、CIS31が狙いの搬送方向の位置に対して、どれだけ位置ズレしているかを把握することができる。したがって、そのような検知結果に基づいて、実際にシートPが搬送されたときのCIS31の検知結果を補正することで、CIS31によって検知されるシートPの搬送方向の先端位置や後端位置の検知精度や、CIS31によって検知されるシートP上の画像の搬送方向の位置の検知精度を、高めることができる。
さらに、そのようにCIS31によってガラススケール36の縦横双方の線画36a、36bを検知することで、CIS31が狙いの姿勢(搬送面における回動方向の姿勢である。)に対して、どれだけ傾いているかを把握することができる。したがって、そのような検知結果に基づいて、実際にシートPが搬送されたときのCIS31の検知結果を補正することで、CIS31によって検知されるシートPの傾き(スキュー)の検知精度や、CIS31によって検知されるシートP上の画像の傾きの検知精度を、高めることができる。
【0025】
このようにガラススケール36は、CIS31の姿勢(位置)を検知するためのものであるが、線画36a、36bを検知するときの背景色となる表面層W(底面35b1)をキズなどから保護したり防塵したりする機能も有する。
なお、本実施の形態では、光透過性部材としてガラス材料からなるガラススケール36を用いたが、光透過性部材として透明な樹脂材料(例えば、透明フィルム)で形成されたものを用いることもできる。
また、CIS31によって線画36a、36bを光学的に検知するときの状態を、実際にシートPが搬送されたときのCIS31の検知の状態に近似させるために、CIS31とガラススケール36の対向面との距離は、CIS31と搬送されるシートPとの距離と同等に設定されている。
【0026】
ここで、リボルバ35の外周面の一部であって、ガラススケール36が配置された位置から約180度ずれた位置には、白色基準面35cが形成されている。
そして、白色基準面35cがCIS31(検知器)に対向するようにリボルバ35(回動部材)が支軸35aを中心に回動されたときに(
図3(A)の状態のときである。)、CIS31の発光素子から射出した光を白色基準面35cに照射して、白色基準面35cで反射した光をガラススケール36を介して受光素子で受光して、CIS31の出力調整(シェーディング補正)をおこなうことになる。
具体的に、白色基準面35cとCIS31との間にシートPが介在されていない状態(例えば、画像形成動作が開始される直前である。)で、CIS31によって白色基準面35cを検知したときの、複数の受光素子の出力値がそれぞれ閾値を超えた値で均一化されるように、各受光素子の出力が調整されることになる。このような出力調整(シェーディング補正)をおこなうことにより、CIS31によって実際にシートPの位置や、シートP上の画像の位置や画像情報を検知するときの、検知精度が高められることになる。
なお、CIS31によって白色基準面35cを光学的に検知するときの状態を、実際にシートPが搬送されたときのCIS31の検知の状態に近似させるために、CIS31と白色基準面35cとの距離は、CIS31と搬送されるシートPとの距離と同等に設定されている。また、CIS31によって白色基準面35cを検知してシェーディング補正をおこなうときに、リボルバ35の回動方向の姿勢(回動角度)が狙いのものから多少ずれてしまっても、CIS31と白色基準面35cとの距離が変化しないように、白色基準面35cはリボルバ35の外周面に沿った曲面となっている。
【0027】
ここで、第1ローラ部材37(黒色ローラ)は、そのローラ外周面が黒色に形成されたローラ部材であって、2つの第1ローラ部材37がリボルバ35における約180度ずれた位置にそれぞれ回転可能に保持されている。2つの第1ローラ部材37は、それぞれ、リボルバ35を回動する駆動モータとは別に独立したモータによって回転駆動されるように構成されている。また、第1ローラ部材37の黒色のローラ部は、シートPの幅方向の範囲を含むように、その幅方向の長さが設定されている。
そして、
図3(B)に示すように、第1ローラ部材37(黒色ローラ)とCIS31との間で、第1ローラ部材37の反時計方向に回転によって白色のシートPを搬送しながら、CIS31によって、黒色の第1ローラ部材37を背景として、シートPの位置(幅方向端部や先後端である。)が光学的に検知されたり、シートP上の画像の位置(画像位置)が光学的に検知されたりすることになる。そして、それらの検知結果に基づいて、露光部3(書込部)における、書込みタイミングや、主走査方向(幅方向)の書込み位置、などが調整されて、シートP上に形成される画像位置の精度が高められることになる。
また、
図3(B)に示す状態で、白色のシートPを搬送しながらCIS31でシートP上の画像位置を光学的に検知することにより、シートP上の種々の画像情報(例えば、画像濃度の情報である。)を読み取ることも可能になる。そして、画像読取装置としても機能する検知装置30によって検知された画像情報に基づいて、作像条件(例えば、画像濃度を調整するための現像バイアスなどである。)が調整されて、シートP上に形成される画像の品質が高められることになる。
【0028】
また、第2ローラ部材38(白色ローラ)は、そのローラ外周面が白色に形成されたローラ部材であって、2つの第2ローラ部材38がリボルバ35における約180度ずれた位置にそれぞれ回転可能に保持されている。2つの第2ローラ部材38は、それぞれ、リボルバ35を回動する駆動モータとは別に独立したモータによって回転駆動されるように構成されている。また、第2ローラ部材38の白色のローラ部は、シートPの幅方向の範囲を含むように、その幅方向の長さが設定されている。
そして、
図3(C)に示すように、第1ローラ部材37(黒色ローラ)とCIS31との間で、第1ローラ部材37の反時計方向に回転によって白色以外の色のシートPを搬送しながら、CIS31によって、黒色の第1ローラ部材37を背景として、シートPの位置(幅方向端部や先後端である。)が光学的に検知されたり、シートP上の画像の位置(画像位置)が光学的に検知されたりすることになる。そして、それらの検知結果に基づいて、露光部3(書込部)における、書込みタイミングや、主走査方向(幅方向)の書込み位置、などが調整されて、シートP上に形成される画像位置の精度が高められることになる。
また、
図3(C)に示す状態で、白色以外の色のシートPを搬送しながらCIS31でシートP上の画像位置を光学的に検知することにより、シートP上の種々の画像情報(例えば、画像濃度の情報である。)を読み取ることも可能になる。そして、画像読取装置としても機能する検知装置30によって検知された画像情報に基づいて、作像条件(例えば、画像濃度を調整するための現像バイアスなどである。)が調整されて、シートP上に形成される画像の品質が高められることになる。
【0029】
このように、本実施の形態では、白色以外の色のシートPが搬送されても、背景色がシート色と同じにならずに、CIS31によってシートPの位置(幅方向両端部や先後端である。)をはっきり検知できるように、適宜にリボルバ35を回動させて色の異なるローラ部材37、38をCIS31に対向させるようにしている。
そして、本実施の形態では、リボルバ35の周方向に沿って、ガラススケール36、第1ローラ部材37、第2ローラ部材38、白色基準面35c、第1ローラ部材37、第2ローラ部材38の順で配置されている。そのため、CIS31に対向する部材を、ガラススケール36から第1ローラ部材37(又は、第1ローラ部材37からガラススケール36)に切り替えたり、ガラススケール36から第2ローラ部材38(又は、第2ローラ部材38からガラススケール36)に切り替えたり、第1ローラ部材37から第2ローラ部材38(又は、第2ローラ部材38から第1ローラ部材37)に切り替えたり、白色基準面35cから第1ローラ部材37(又は、第1ローラ部材37から白色基準面35c)に切り替えたり、白色基準面35cから第2ローラ部材38(又は、第2ローラ部材38から白色基準面35c)に切り替えたりする、切替動作にかかる時間を短縮化することができる。
なお、CIS31に対向するローラ部材37、38の切り替え制御は、ユーザーによって操作パネル(画像形成装置本体1の外装部に設置されている。)に入力されるシートPの情報(シート色に関する情報である。)に基づいておこなうこともできるし、搬送されるシートPの色を直接的に検知する光学センサ(給紙部から検知装置30に至る搬送経路中に設置されている。)の検知結果に基づいておこなうこともできる。
【0030】
ここで、本実施の形態におけるリボルバ35(回動部材)は、
図4、
図5に示すように、ガラススケール36が装着される溝部35bに、段差部35b3が形成されている。
すなわち、回動部材としてのリボルバ35の溝部35bには、ガラススケール36(光透過性部材)が当接する底面35b1と、底面35b1よりも深くなるように溝状に形成された段差部35b3(第2の溝部)と、が設けられている。具体的に、
図2に示すようにガラススケール36(溝部35bの底面35b1)がCIS31に対向した状態で、段差部35b3は、底面35b1に比べてCIS31から離れた位置に形成されていることになる。
そして、溝部35bの底面35b1には、白色(特定色)からなる表面層W(塗装面)が形成されている。
なお、本願明細書等において、ガラススケール36(光透過性部材)が底面35b1に当接した状態とは、ガラススケール36(光透過性部材)が底面35b1に対して僅かな隙間をあけて対向したような状態(近接した状態)も含むものと定義する。
【0031】
換言すると、リボルバ35は、光を透過可能に形成されたガラススケール36(光透過性部材)が嵌合された溝部35bを備えた保持部材であって、その溝部35bには、ガラススケール36が当接する底面(特定色からなる表面層Wが形成されている。)と、底面35bよりも深くなるように溝状に形成された段差部35b3と、が設けられていることになる。
【0032】
さらに具体的に、段差部35b3は、
図4、
図5に示すように、溝部35bにおいて底面35b1に対して略直交する方向(深さ方向)に延在する内壁面35b2と、底面35b1に沿って広がる仮想平面と、が交差する仮想隅部(
図5にて破線で囲んだ部分である。)に形成されている。
特に、本実施の形態では、溝部35bが、リボルバ35の外周面の一部において、軸方向(幅方向)の全域にかけて形成されている。そして、段差部35b3は、底面35b1の回転方向上流側と回転方向下流側とに、軸方向(幅方向)の全域に延在するように、それぞれ形成されている。
【0033】
このように、本実施の形態では、リボルバ35においてガラススケール36が嵌合される溝部35bに、底面35b1よりも深くなる段差部35b3が設けられているため、溝部35bへのガラススケール36の嵌め込み不良が生じにくくなる。
詳しくは、底面35b1に表面層Wを形成するために、底面35b1への塗装処理が施されるときに、底面35b1と内壁面35b2とが直接的に交差する隅部はなく、その部分には段差部35b3が形成されているため、隅部に生じやすい表面層Wの塗装ムラWNが底面35b1に形成されにくくなる。
図5に示すように、塗装ムラWNが生じたとしても、塗装ムラWNは段差部35b3に形成されやすくなる。
すなわち、
図6に示すリボルバ135のように、溝部35bに段差部が形成されていない場合には、底面35b1と内壁面35b2とが交差する隅部に、表面層の塗装ムラ(破線で囲んだ部分である。)が形成されやすくなる。特に、隅部において塗料が盛り上がった状態になりやすい。そのため、その状態でガラススケール36を嵌合してしまうと、
図6(A)に示すように、溝部35bでガラススケール36が浮いた状態で嵌め込まれてしまったり、
図6(B)に示すように、溝部35bでガラススケール36が傾いた状態で嵌め込まれてしまったりすることになる。そして、そのようなガラススケール36の嵌め込み不良が生じると、CIS31によって溝部35bの底面35b1(表面層W)を背景面としてガラススケール36上の線画36a、36bを検知しても、CIS31の姿勢を精度良く検知できなくなってしまう。したがって、それらの補正や検知に基づいて、CIS31によってシートPの姿勢や画像位置や画像情報を検知して、書込み条件や作像条件などを調整しても調整精度が低下してしまうことになる。さらには、嵌め込み不良のガラススケール36に、シートPが引っ掛かってジャムが生じてしまう可能性もある。
これに対して、本実施の形態では、溝部35bに段差部35b3を設けて、底面35b1に形成する表面層Wに塗装ムラWNが生じることなく均一化されるようにしているため、それらの不具合が生じにくくなる。
【0034】
なお、本実施の形態において、段差部35b3は、ガラススケール36(溝部35bにおいて白色背景面となる表面層W)がCIS31に対向した状態で、CIS31によって検知されない位置に配置されている。
これにより、CIS31によって段差部35b3が検知されることによって、CIS31の姿勢検知が良好におこなわれなくなる不具合を抑止することができる。
【0035】
<変形例>
図7は、変形例としてのリボルバ35の溝部35bを示す上面図である。
図7に示すように、変形例では、リボルバ35の外周面の一部において、溝部35bが、軸方向(
図7の上下方向であって、幅方向である。)の全域に形成されているのではなくて、軸方向の両端部を除く部分に形成されている。すなわち、溝部35bには、底面35b1に略直交する4つの内壁面35b2、35b4が、底面35b1を四方で囲むように形成されている。そして、変形例では、段差部35b3が、四方の隅部に形成されている。すなわち、溝部35bの搬送方向上流側と搬送方向下流側とにおいて軸方向に延在するようにそれぞれ形成された2つの段差部35b3と、溝部35bの軸方向両端部において搬送方向に延在するようにそれぞれ形成された2つの段差部35b3と、が設けられている。
そして、このように構成した場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態における検知装置30(画像形成装置1)には、CIS31(検知器)との間にシートPが搬送されるようにCIS31に対向する位置に配置された略円柱状のリボルバ35(回動部材)に、外周面の一部に軸方向に延在するように形成された溝部35bと、溝部35bに嵌め込まれた略長方体状のガラススケール36(光透過性部材)と、が設けられている。そして、リボルバ35の溝部35bには、ガラススケール36が当接する底面35b1よりも深くなるように溝状に形成された段差部35b3が設けられ、底面35b1には白色(特定色)からなる表面層Wが形成されている。
これにより、リボルバ35(回動部材)の溝部35bへのガラススケール36(光透過性部材)の嵌め込み不良を生じにくくすることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される検知装置30に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される検知装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される検知装置30に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、オフセット印刷機などである。)に設置される検知装置であっても、溝部に光透過性部材が嵌合される検知装置であれば、それらのすべての検知装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、CIS31(検知器)によって、シートの位置と、シートの表面に形成された画像の位置と、シートの表面に形成された画像と、のすべてを光学的に検知するように構成したが、それらのうち少なくとも1つを光学的に検知するように構成することもできる。また、検知器はCISに限定されることなく、種々の形態のものを用いることができる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0039】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、通常の紙(用紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルム等のシート状部材のすべてを含むものと定義する。さらに、「シート」には、予め画像が形成されている原稿も含むものと定義する。
また、本願明細書等において、「A又は/及びB」なる表現は、「AとBとのうち少なくとも一方」と同義であるものと定義する。
【符号の説明】
【0040】
1 画像形成装置、
30 検知装置、
31 CIS(検知器)、
35 リボルバ(回動部材、保持部材)、
35a 支軸(回転中心)、
35b 溝部、
35b1 底面、
35b2 内壁面、
35b3 段差部、
35c 白色基準面、
36 ガラススケール(光透過性部材)、
36a、36b 線画、
37 第1ローラ部材、
38 第2ローラ部材、
W 表面層(塗装面)、
WN 塗装ムラ、
P シート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】