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特許7033651基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラム、および、基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、プログラム、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220303BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20220303BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220303BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220303BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220303BHJP
   H05B 6/68 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01L21/268 Z
H01L21/324 T
H01L21/20
H01L21/316 S
H01L21/31 E
H05B6/68 320M
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020510203
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018012175
(87)【国際公開番号】W WO2019186655
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸也
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-103726(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149663(WO,A1)
【文献】特開2009-301764(JP,A)
【文献】特開2017-063095(JP,A)
【文献】特開2013-058652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0135163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/324
H01L 21/20
H01L 21/316
H01L 21/31
H05B 6/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記処理室内へ冷却ガスを導入するガス導入部と、
前記処理室内へ供給された前記冷却ガスを排気する排気部と、
マイクロ波を発生させる複数のマイクロ波発生器と、
前記基板保持部に保持された前記基板の中央部の温度を測定する第1温度測定部と、エッジ部の温度を測定する第2温度測定部と、を備える温度測定部と、
前記温度測定部により測定された結果が、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合、前記ガス導入部から導入される前記冷却ガスの供給流量を増加させるとともに、前記基板の中央部の電界強度を前記基板のエッジ部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つを停止するようにし、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記ガス導入部から導入される前記冷却ガスの供給流量を低下させるとともに、前記基板のエッジ部の電界強度を前記基板の中央部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つを停止するように前記ガス導入部と前記複数のマイクロ波発生器を制御するよう構成される制御部と、を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部の電磁界強度が弱くなるように、前記複数のマイクロ波発生器からの出力を所定の出力値に維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止するように前記複数のマイクロ波発生器を制御するよう構成される請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記測定された基板の中央部の電磁界強度が弱くなるように、前記複数のマイクロ波発生器からの出力を所定の出力値に維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止するように前記複数のマイクロ波発生器を制御するよう構成される請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガス導入部は、前記処理室の上部であって前記基板保持部に保持された前記基板のエッジ部に対応する位置に設けられる請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記複数のマイクロ波発生器は、前記処理室の側面に設けられる請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理室に搬入する工程と、
前記基板に複数のマイクロ波発生器により発生させたマイクロ波を照射して前記基板を加熱する工程と、
前記基板の中央部の温度を測定する第1温度測定部と、エッジ部の温度を測定する第2温度測定部とを備える温度測定部により、前記基板の中央部及びエッジ部の温度を測定する工程と、
前記基板の温度測定の結果が、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される冷却ガスの供給流量を増加させるとともに、前記基板の中央部の電界強度を前記基板のエッジ部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させ、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される前記冷却ガスの供給流量を低下させるとともに、前記基板のエッジ部の電界強度を前記基板の中央部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させて、前記基板を改質する工程と、
改質後の前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記改質する工程では、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記測定した基板のエッジ部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記改質する工程では、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記測定した基板の中央部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
基板を基板処理装置の処理室にする手順と、
前記基板に複数のマイクロ波発生器により発生させたマイクロ波を照射して前記基板を加熱する手順と、
前記基板の中央部の温度を測定する第1温度測定部と、エッジ部の温度を測定する第2温度測定部とを備える温度測定部により、前記基板の中央部及びエッジ部の温度を測定する手順と、
前記基板の温度測定の結果が、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される冷却ガスの供給流量を増加させるとともに、前記基板の中央部の電界強度を前記基板のエッジ部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させ、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される前記冷却ガスの供給流量を低下させるとともに、前記基板のエッジ部の電界強度を前記基板の中央部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させて、前記基板を改質する手順と、
改質後の前記基板を前記処理室から搬出する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項10】
前記改質する手順では、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記測定した基板のエッジ部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記改質する手順では、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記測定した基板の中央部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項9又は10に記載のプログラム。
【請求項12】
基板を処理室に搬入する工程と、
前記基板に複数のマイクロ波発生器により発生させたマイクロ波を照射して前記基板を加熱する工程と、
前記基板の中央部の温度を測定する第1温度測定部と、エッジ部の温度を測定する第2温度測定部とを備える温度測定部により、前記基板の中央部及びエッジ部の温度を測定する工程と、
前記基板の温度測定の結果が、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される冷却ガスの供給流量を増加させるとともに、前記基板の中央部の電界強度を前記基板のエッジ部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させ、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記基板のエッジ部に供給される前記冷却ガスの供給流量を低下させるとともに、前記基板のエッジ部の電界強度を前記基板の中央部の電界強度より強くなるように、前記複数のマイクロ波発生器の照射位置を変更するように前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つのマイクロ波発生器を停止させて、前記基板を改質する工程と、
改質後の前記基板を前記処理室から搬出する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項13】
前記改質する工程では、前記基板の中央部の温度より前記基板のエッジ部の温度が高い場合に、前記測定した基板のエッジ部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記改質する手順では、前記基板のエッジ部の温度より、前記基板の中央部の温度が高い場合に、前記測定した基板の中央部の電磁界強度が弱くなるように、所定の出力値を維持しながら前記複数のマイクロ波発生器のうちの少なくとも1つを停止する請求項12又は13に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、例えば、加熱装置を用いて処理室内の基板を加熱し、基板の表面に成膜された薄膜中の組成や結晶構造を変化させたり、成膜された薄膜内の結晶欠陥等を修復するアニール処理などに代表される改質処理がある。近年の半導体デバイスにおいては、微細化、高集積化が著しくなっており、これに伴い、高いアスペクト比を有するパターンが形成された高密度の基板への改質処理が求められている。このような高密度基板への改質処理方法としてマイクロ波を用いた熱処理方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-070045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマイクロ波を用いた熱処理では、基板を均一に加熱することができず、対象膜の均一な処理ができない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、均一な基板処理を行うことが可能となる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記基板を保持する基板保持部と、前記処理室内へ冷却ガスを導入するガス導入部と、前記処理室内へ供給された冷却ガスを排気する排気部と、マイクロ波を発生させる複数のマイクロ波発生器と、前記基板保持部に保持された前記基板の中央部とエッジ部の温度を測定する温度測定部と、前記温度測定部により測定された前記基板の中央部及びエッジ部の温度に応じて、前記ガス導入部から導入される前記冷却ガスの供給流量を調整するとともに、前記複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つを停止するように前記ガス導入部と前記複数のマイクロ波発生器を制御するよう構成される制御部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一な基板処理を行うことが可能となる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明における一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明における一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の温度測定方法を示す図であり、サセプタの温度を測定する際の図である。
図3図1の基板処理装置において、ケースに6つの電磁波導入ポートを設けた場合の電磁波供給部の構成例を示す図である。
図4図3のケースの上面図である。
図5図3のケースの側面図である。
図6】本発明で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
図7】本発明における基板処理のフローを示す図である。
図8】本発明における一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の実施例1における温度制御方法の一例を示す図である。
図9】本発明における一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の実施例2における温度制御方法の一例を示す図である。
図10】本発明における一実施形態に好適に用いられる基板処理装置の実施例3における制御フローを説明するための図である。
図11】本発明における一実施形態に用いられるマイクロ波を照射したときの基板と断熱板の温度推移の一例を示す図である。
図12】本発明における一実施形態に用いられる基板のマイクロ波の吸収率とマイクロ波の反射率の温度依存性を示す図である。
図13】本発明における一実施形態に用いられる処理サンプルの断面図である。
図14】本発明における一実施形態に用いられる処理サンプルのシート抵抗値の面内分布のマイクロ波照射口との位置依存性を示す図である。
図15】本発明における他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図16】本発明における他の実施形態で好適に用いられる基板処理装置における処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
<本発明の一実施形態>
以下に本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
本実施の形態において、本発明に係る基板処理装置100は、ウエハに各種の熱処理を施す枚葉式熱処理装置として構成されている。本実施の形態において基板処理装置100は後述する電磁波を用いたアニール処理(改質処理)を行う装置として説明を行う。
【0012】
(処理室)
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、金属などの電磁波を反射する材料で構成されるキャビティ(上部容器)としてのケース102と、ケース102の内部に収容され、垂直方向の上下端部が開放された円筒形状の反応管103を有している。反応管103は、石英などの電磁波を透過する材料で構成される。また、金属材料で構成されたキャップフランジ(閉塞板)104が、封止部材(シール部材)としてのOリング220を介して反応管103の上端と当接されて反応管103の上端を閉塞する。主にケース102と反応管103、および、キャップフランジ104によってシリコンウエハ等の基板を処理する処理容器を構成し、特に反応管103の内側空間を処理室201として構成している。反応管103を設けずに、ケース102、キャップフランジ104により処理容器を構成するようにしてもよい。その場合、ケース102の内部空間が処理室201となる。また、キャップフランジ104を設けずに、天井が閉塞したケース102を用いて、ケース102と反応管103、または、ケース102によって処理容器を構成するようにしてもよい。
【0013】
反応管103の下方には載置台210が設けられており、載置台210の上面には、基板としてのウエハ200を保持する基板保持具(基板保持部)としてのボート217が載置されている。ボート217には、処理対象であるウエハ200と、ウエハ200を挟み込むようにウエハ200の垂直方向上下に載置されたサセプタ1011a、1011bと、サセプタ1011a、1011bを挟み込むように垂直方向上下に載置された断熱板としての石英プレート101a、101bとが所定の間隔で保持されている。すなわち、サセプタ101a、1011bは、ウエハ200の外側であって石英プレート101aと石英プレート101bの内側に載置される。サセプタ1011a、1011bは、ウエハ200を間接的に加熱する機能を有する輻射板または均熱板であり、シリコンプレート(Si板)や炭化シリコンプレート(SiC板)などの電磁波を吸収して自身が加熱される誘電体などの材質で形成される。このように構成することによってウエハ200をより効率的に均一に加熱することが可能となる。本実施形態において、石英プレート101a、101bは、同一の部品であり、以後、特に区別して説明する必要が無い場合には、石英プレート101と称して説明する。また、サセプタ1011a、1011bは、同一の部品であり、以後、特に区別して説明する必要が無い場合には、サセプタ1011と称して説明する。
【0014】
載置台210の側壁には、載置台210の径方向に向かって突出した図示しない突出部が載置台210の底面側に設けられる。この突出部が、後述する処理室201と搬送空間203との間に設けられる仕切り板204と接近または接触することで処理室201内の雰囲気が搬送空間203内へ移動することや、搬送空間203内の雰囲気が処理室201内へ移動することを抑制させる。
【0015】
上部容器としてのケース102は、例えば横断面が円形であり、平らな密閉容器として構成されている。また、下部容器としての搬送容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料、または、石英などにより構成されている。処理容器の下方には、シリコンウエハ等のウエハ200を搬送する搬送エリア203が形成されている。なお、ケース102に囲まれた空間、または、反応管103に囲まれた空間であって、仕切り板204よりも上方の空間を処理空間としての処理室201又は反応エリア201と称し、搬送容器202に囲まれた空間であって、仕切り板よりも下方の空間を搬送空間としての搬送エリア203と称する場合もある。なお、処理室201と搬送エリア203は、本実施例のように垂直方向に隣接させて構成することに限らず、水平方向に隣接させて構成したり、搬送エリア203を設けずに処理室201のみ有する構成としてもよい。
【0016】
搬送容器202の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入搬出口206が設けられており、ウエハ200は基板搬入搬出口206を介して図示しない基板搬送室との間を移動する。
【0017】
ケース102の側面には、後に詳述する加熱装置としての電磁波供給部が設置されており、電磁波供給部から供給されたマイクロ波等の電磁波が処理室201に導入されてウエハ200等を加熱し、ウエハ200を処理する。
【0018】
載置台210は回転軸としてのシャフト255によって支持される。シャフト255は、搬送容器202の底部を貫通しており、更には搬送容器202の外部で回転、昇降動作を行う駆動機構267に接続されている。駆動機構267を作動させてシャフト255及び載置台210を回転、昇降させることにより、ボート217上に載置されるウエハ200を回転または昇降させることが可能となっている。なお、シャフト255下端部の周囲はベローズ212により覆われており、処理室201および搬送エリア203内は気密に保持されている。
【0019】
載置台210は、ウエハ200の搬送時には、載置台上面が基板搬入搬出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるよう下降し、ウエハ200の処理時には図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。なお、上述したように処理室201と搬送エリア203を水平方向に隣接させて構成したり、搬送エリア203を設けずに処理室201のみ有する構成とした場合には、載置台を昇降させる機構を設けずに載置台を回転させる機構のみ設けるようにしてもよい。
【0020】
(排気部)
処理室201の下方であって、載置台210の外周側には、処理室201の雰囲気を排気する排気部が設けられている。図1に示すように、排気部には排気口221が設けられている。排気口221には排気管231が接続されており、排気管231には、処理室201内の圧力に応じて弁開度を制御するAPCバルブなどの圧力調整器244、真空ポンプ246が順に直列に接続されている。
【0021】
ここで、圧力調整器244は、処理室201内の圧力情報(後述する圧力センサ245からのフィードバック信号)を受信して排気量を調整することができるものであればAPCバルブに限らず、通常の開閉バルブと圧力調整弁を併用するように構成されていてもよい。
【0022】
主に、排気管231、圧力調整器244により排気部(排気系または排気ラインとも称する)が構成される。なお、載置台210を囲むように排気口を設け、ウエハ200の全周からガスを排気可能に構成してもよい。また、排気部の構成に、真空ポンプ246を加えるようにしてもよい。
【0023】
(ガス供給部)
処理室201の上部に設けられたキャップフランジ104には、ガス導入口(ガス導入部)222が設けられており、ガス導入口222には、不活性ガス、原料ガス、反応ガスなどの各種基板処理のための処理ガスを処理室201内に供給するためのガス供給管232が接続されている。ガス供給管232には、上流から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241、および、開閉弁であるバルブ243が設けられている。ガス供給管232の上流側には、例えば不活性ガスである窒素(N)ガス源が接続され、窒素(N)ガスがMFC241、バルブ243を介して、ガス導入口222から処理室201内へ供給される。
【0024】
本実施態様において、ガス導入口222は、ウエハ200のエッジ部を冷却ガス(例えば、Nガス)により冷却することを可能とするため、キャップフランジ104のウエハ200のエッジ部の上部に対応する箇所に設けられる。これにより、ガス導入口222から反応室201内へ供給された冷却ガスとしてのNガスが、ウエハ200のエッジ部の近傍に流れ、ウエハ200のエッジ部の温度を所望の温度へ冷却することが可能となる。ウエハ200のエッジ部の近傍に流れたNガスは、排気口221から排出される。なお、ウエハ200のエッジ部とは、ウエハ200の外周部または周縁部の部分を意味している。
【0025】
基板処理の際に複数種類のガスを使用する場合には、ガス供給管232のバルブ243よりも下流側に、上流方向から順に流量制御器であるMFCおよび開閉弁であるバルブが設けられたガス供給管が接続された構成を用いることで複数種類のガスを供給することができる。ガス種毎にMFC、バルブが設けられたガス供給管を設置してもよい。
【0026】
主に、ガス供給管232、MFC241、バルブ243、ガス導入口222によりガス供給系(ガス供給部)が構成される。ガス供給系に不活性ガスを流す場合には、不活性ガス供給系とも称する。不活性ガスとしては、Nガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0027】
本実施形態では、ガス供給部を1つ設置した構成例を示したが、それに限定されない。ガス供給部は、1つ以上設置すれば良く、複数設置してもよい。この場合においても、ガス導入口は、キャップフランジ104のウエハ200のエッジ部の上部に対応する箇所に設けられる。また、本実施形態では、ガス導入口222を処理室201の上部のキャップフランジ104に設置した構成例を示したが、それに限定されない。ガス導入口222は、処理室201の側壁(反応管103の側壁)に設けてもよい。
【0028】
(温度センサ)
キャップフランジ104には、非接触式の温度測定装置(温度測定部)として温度センサ263a、263bが設置されている。温度センサ263a、263bにより検出された温度情報に基づき後述するマイクロ波発生器655の出力を調整することで、基板を加熱し、基板温度が所望の温度分布となる。温度センサ263a、263bは、例えばIR(Infrared Radiation)センサなどの放射温度計で構成されている。
【0029】
温度センサ263aは、断熱板である石英プレート101aの中央部の表面温度、ウエハ200の中央部の表面温度、または、サセプタ1011aの中央部の表面温度を測定するように設置される。温度センサ263bは、サセプタ1011aのエッジ部の表面温度を測定するように設置される。サセプタ1011aのエッジ部とは、サセプタ1011aの外周部または周縁部の部分を意味している。
【0030】
発熱体としてサセプタ1011aの中央部とエッジ部の表面温度を温度センサ263a、263bにより測定するように構成する。この場合、温度センサ263a、263bで検知する波長は、断熱板である石英プレート101aを透過する波長、好ましくは、1.5μmの波長を利用するのが良い。サセプタ1011aの面内温度はウエハ200の面内温度とほぼ同等と考えられるため、サセプタ1011aの中央部の表面温度とエッジ部の表面温度を温度センサ263a、263bにより測定することにより、ウエハ200の中央部の表面温度とエッジ部の表面温度を推定することが可能できる。推測されたウエハ200の中央部の表面温度とエッジ部の表面温度を基に、マイクロ波発生器655の出力、すなわち加熱装置の制御、MFC241の流量調整の制御、バルブ243の開閉の制御が行われる。
【0031】
なお、本発明においてウエハ200の温度(ウエハ温度)と記載した場合は、後述する温度変換データによって変換されたウエハ温度、すなわち、推測されたウエハ温度のことを意味する場合と、温度センサ263aによって直接ウエハ200の温度を測定して取得した温度を意味する場合と、それらの両方を意味する場合を指すものとして説明する。温度センサ263a、263bは、特にそれぞれを区別して説明する必要のない場合には、温度センサ263として説明する。
【0032】
また、温度センサ263bを用いて石英プレート101a、ウエハ200のエッジ部の表面温度を測定する場合も、上述のように、温度センサ263bを用いて、石英プレート101aのエッジ部の温度を測定し、ウエハ200のエッジ部の温度を測定する場合にも、石英プレート101aに測定孔(図示せず)およびサセプタ1011aのエッジ部に測定孔(図示せず)を設け、温度センサ263bにより、ウエハのエッジ部の表面温度を測定する。
【0033】
図2に示すように、温度センサ263a、263bを利用して、サセプタ1011aの中央部の表面温度およびエッジ部の表面温度を測定する。先に述べた様に、温度センサ263a、263bの検出する波長を、石英プレート101aを透過する波長(例えば、1.5μm)として、それぞれの表面温度を測定する。本実施態様において、サセプタ1011aの中央部の表面温度およびエッジ部の表面温度の温度測定は、後述される基板処理工程(改質工程)において利用される。石英プレート101aの中央部の表面温度およびエッジ部の表面温度を測定する必要がある場合には、温度センサ263a、263bの検出する波長を、石英プレート101aを透過しない波長として、それぞれの表面温度を測定することも可能である。
【0034】
なお、ウエハ200の温度を測定する手段として、上述した放射温度計に限らず、サーモグラフィや熱電対を用いて温度測定を行ってもよいし、サーモグラフィ、熱電対と非接触式温度計を併用して温度測定を行ってもよい。ただし、熱電対を用いて温度測定を行った場合、熱電対をウエハ200の近傍に配置して温度測定を行う必要がある。すなわち、処理室201内に熱電対を配置する必要があるため、後述するマイクロ波発生器から供給されたマイクロ波によって熱電対自体が加熱されてしまうので正確に測温することができない。したがって、非接触式温度計を温度センサ263として用いることが好ましい。
【0035】
また、温度センサ263は、キャップフランジ104に設けることに限らず、載置台210に設けるようにしてもよい。また、温度センサ263は、キャップフランジ104や載置台210に直接設置するだけでなく、キャップフランジ104や載置台210に設けられた測定窓からの放射光を鏡等で反射させて間接的に測定するように構成されてもよい。さらに、温度センサ263a、263bは2つ設置することに限らず、複数設置するようにしてもよい。
【0036】
(電磁波供給部)
図3は、図面の複雑さを避けるため、マイクロ波発生器655の図示は省略されている。
【0037】
次に、図1および図3を用いて、電磁波供給部の構成を説明する。本実施形態においては、図3に示すように、電磁波供給部を6つ有する構造を例示して説明する。なお、図1において、便宜的に、側面から確認できる電磁波導入ポート653-1、653-4、導波管654-1、654-4、マイクロ波発生器655-1、655-4が例示的に示されている。電磁波導入ポートは、電磁波導入口と見做すことも可能である。
【0038】
図3に示すように、ケース102の1つの側壁には6つの電磁波導入ポート(第1導入ポート653-1、第2導入ポート653-2、第3導入ポート653-3、第4導入ポート653-4、第5導入ポート653-5、第6導入ポート653-6)が設置されている。第1導入ポート653-1~第6導入ポート653-6のそれぞれには処理室201内に電磁波を供給するための6つの導波管(第1導波管654-1、第2導波管654-2、第3導波管654-3、第4導波管654-4、第5導波管654-5、第6導波管654-6)のそれぞれの一端が接続されている。第1導波管654-1~第6導波管654-6のそれぞれの他端には処理室201内に電磁波を供給して加熱する加熱源としての6つのマイクロ波発生器(第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、第6マイクロ波発生器655-6)が接続されている。マイクロ波発生器を電磁波源(マイクロ波源)と称してもよい。なお、図4図5には図示されていないが、前述したように、第4導波管654-4、第5導波管654-5のそれぞれの他端には、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5が接続されている。
【0039】
図3図4図5に示されるように、ウエハ200は、この例では、ケース102のほぼ中央部分、すなわち、図4の側面図において、電磁波導入ポート653-3と653-6の間の高さ位置に配置され、また、図5の上面図において、ケース102のほぼ中央部分に配置される。これにより、6つの電磁波導入ポートから供給されるマイクロ波は、ウエハ200の上面及び下面または全体に、ほぼ均等に照射可能にされている。
【0040】
なお、図3には、6つの電磁波導入ポートを設けた電磁波供給部の一例を示したが、電磁波導入ポートは4つとしても良い。この場合、例えば、電磁波導入ポート653-2、653-5及びそれに関連する導波管654-2、654-5、マイクロ波発生器655-2、655-5を削除する。電磁波供給部は、4つの電磁波導入ポート654-1、654-3、654-4、654-6、4つの導波管654-1、654-3、654-4、654-6、4つのマイクロ波発生器655-1、655-3、655-4、655-6により、構成する。このように構成することにより、ケース102内または処理室201内のウエハ200に対する4つの電磁波導入ポート654-1、654-3、654-4、654-6の距離をほぼ均等にすることで、ウエハ200に各電磁波導入ポートからのマイクロ波をほぼ均等に作用させることが出来る。
【0041】
各マイクロ波発生器655-1~655-6はマイクロ波などの電磁波を各導波管654-1~654-6にそれぞれ供給し、各導波管654-1~654-6を介して各導入ポート653-1~653-6から処理室201内へ電磁波を供給する。また、各マイクロ波発生器655-1~655-6には、マグネトロンやクライストロンなどが用いられる。以降、電磁波導入ポート653-1~653-6、導波管654-1~654-6、マイクロ波発生器655-1~655-6は、特にそれぞれを区別して説明する必要のない場合には、電磁波導入ポート653、導波管654、マイクロ波発生器655と記載して説明する。
【0042】
マイクロ波発生器655によって生じる電磁波の周波数は、好ましくは13.56MHz以上24.125GHz以下の周波数範囲となるように制御される。さらに好適には、2.45GHzまたは5.8GHzの周波数となるように制御されることが好ましい。ここで、マイクロ波発生器655-1~655-6のそれぞれの周波数は同一の周波数としてもよいし、異なる周波数で設置されてもよい。
【0043】
また、本実施形態において、マイクロ波発生器655は、ケース102の側面に6つ配置されるように記載されているが、これに限定されない。また、マイクロ波発生器655は、ケース102の1側面に設けられているが、ケース102の対向する側面等の異なる側面に設けられるように配置してもよい。
【0044】
主に、マイクロ波発生器655―1~655-6、導波管654-1~654-6および電磁波導入ポート653-1~653-6によって加熱装置としての電磁波供給部(電磁波供給装置、マイクロ波供給部、マイクロ波供給装置とも称する)が構成される。
【0045】
マイクロ波発生器655-1~655-6のそれぞれには後述するコントローラ121が接続されている。コントローラ121には処理室201内に収容される石英プレート101aまたは101b、若しくはウエハ200の温度を測定する温度センサ263が接続されている。温度センサ263は、上述した方法によって石英プレート101、またはウエハ200の温度を測定してコントローラ121に送信し、コントローラ121によってマイクロ波発生器655-1~655-6の出力を制御し、ウエハ200の加熱を制御する。なお、加熱装置による加熱制御の方法としては、マイクロ波発生器655へ入力する電圧を制御することでウエハ200の加熱を制御する方法と、マイクロ波発生器655の電源をオン(ON)とする時間とオフ(OFF)とする時間の比率を変更することでウエハ200の加熱を制御する方法などを用いることができる。
【0046】
ここで、マイクロ波発生器655-1~655-6は、コントローラ121から送信される同一の制御信号によって制御される。しかし、これに限らず、マイクロ波発生器655-1~655-6それぞれにコントローラ121から個別の制御信号を送信することでマイクロ波発生器655-1~655-6が個々に制御されるように構成してもよい。
【0047】
(制御装置)
図6に示すように、制御部(制御装置、制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0048】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、アニール(改質)処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0049】
I/Oポート121dは、上述のMFC241、バルブ243、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、駆動機構267、マイクロ波発生器655等に接続されている。
【0050】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241による各種ガス(冷却ガス)の流量調整動作、バルブ243の開閉動作、圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくマイクロ波発生器655の出力調整動作、温度センサ263に基づくMFC241の流量調整動作およびマイクロ波発生器655の出力調整動作、駆動機構267による載置台210(またはボート217)の回転および回転速度調節動作、または、昇降動作等を制御するように構成されている。
【0051】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。このコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されるプログラムには、図9図10及び図11で説明されるマイクロ波発生器655の出力調整動作の制御に関する記述が含まれる。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0052】
(2)基板処理工程
次に、基板処理装置100の処理炉を用いた基板処理方法を説明する。ここ説明される基板処理方法では、上述の基板処理装置100の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程、例えば、基板上に形成されたシリコン含有膜としてのアモルファスシリコン膜の改質(結晶化)工程の一例について図7に示した処理フローに沿って説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0053】
ここで、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0054】
(基板搬入工程(S401))
図1に示されているように、所定枚数のウエハ200がボート217に移載されると、駆動機構267は、載置台210を上昇させることでボート217を反応管103内側の処理室201に搬入(ボートローディング)する(S401)。
【0055】
(炉内圧力(S402))
処理室201内へのボート217の搬入が完了したら、処理室201内が所定の圧力(例えば10~102000Pa)となるよう処理室201内の雰囲気を制御する。具体的には、真空ポンプ246により排気しつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整器244の弁開度をフィードバック制御し、処理室201内を所定の圧力とする。
【0056】
(不活性ガス供給工程(S403))
炉内圧力S402によって処理室201内の圧力を所定の値に制御すると、駆動機構267は、シャフト255を回転させ、載置台210上のボート217を介してウエハ200を回転させる。このとき、窒素ガス等の不活性ガスがガス供給管232を介して供給される(S403)。さらにこのとき、処理室201内の圧力は10Pa以上102000Pa以下の範囲となる所定の値であって、例えば101300Pa以上101650Pa以下となるように調整される。なお、シャフトは基板搬入工程S401時、すなわち、ウエハ200を処理室201内に搬入完了後に回転させてもよい。また、本工程は炉内圧力調整方法として炉内圧力S402と同時に実施されてもよい。
【0057】
(改質工程(S404))
処理室201内を所定の圧力となるように維持すると、マイクロ波発生器655は上述した各部を介して処理室201内にマイクロ波を供給する。処理室201内にマイクロ波が供給されることによって、ウエハ200が100℃以上、1000℃以下の温度、好適には400℃以上、900℃以下の温度となるように加熱し、さらに好適には、500℃以上、700℃以下の温度となるように加熱する。このような温度で基板処理することによって、ウエハ200が効率よくマイクロ波を吸収する温度下での基板処理となり、改質処理の速度向上が可能となる。換言すると、ウエハ200の温度を100℃よりも低い温度、または1000℃よりも高い温度下で処理してしまうと、ウエハ200の表面が変質してしまい、マイクロ波を吸収し難くなってしまうためにウエハ200を加熱し難くなってしまうこととなる。このため、上述した温度帯で基板処理を行うことが望まれる。このような基板処理の温度帯を維持するために、改質処理(アニール処理)中に冷却処理を行うことが好ましい。
【0058】
例えば、電磁波による加熱方式にて加熱を行う本実施形態では、処理室201に定在波が発生し、ウエハ200(サセプタが載置されている場合はサセプタもウエハ200と同様に)上に、局所的に加熱されてしまう加熱集中領域(ホットスポット)とそれ以外の加熱されない領域(非加熱領域)が生じ、ウエハ200(サセプタが載置されている場合はサセプタもウエハ200と同様に)が変形することを抑制するため、電磁波供給部の電源のオン/オフを制御することでウエハ200にホットスポットが生じることを抑制している。
【0059】
本実施形態において、特に、マイクロ波の照射初期のウエハ200の昇温時において、ウエハ200が反ることを防止するため、以下の1)、または、2)、または、1)および2)の組み合わせを実施する。
【0060】
1)ウエハ200にマイクロ波発生器655からマイクロ波の供給を開始するとともに、ガス供給部のガス導入口222から反応室201へ冷却ガスの供給を開始し、ウエハ200の中央部及びエッジ部の温度を温度センサ263a、263bにより測定する。ウエハ200の中央部よりウエハ200のエッジ部の温度が高い場合、ウエハ200のエッジ部の温度が低くなるように、(I)ガス供給部のガス導入口222から反応室201へ供給されている冷却ガスの供給流量を増加させる共に、(II)ウエハ200に対する電磁界強度が所定の電磁界強度となるように(ウエハ200のエッジ部の電磁界強度が弱くなるように)、複数のマイクロ波発生器(第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、第6マイクロ波発生器655-6)のうち少なくとも1つのマイクロ波発生器からのマイクロ波の発生を停止する。
【0061】
2)ウエハ200にマイクロ波発生器655からマイクロ波の供給を開始するとともに、ガス供給部のガス導入口222から反応室201へ冷却ガスの供給を開始し、温度センサ263a、263bにより、ウエハ200の中央部及びエッジ部の温度を測定する。ウエハ200のエッジ部よりウエハ200の中央部の温度が高い場合、ウエハ200の中央部の温度が低くなるように、(I)ガス供給部のガス導入口222から反応室201へ供給されている冷却ガスの供給流量を減少ないし低下させると共に、(II)ウエハ200に対する電磁界強度が所定の電磁界強度となるように(ウエハ200の中央部の電磁界強度が弱くなるように)、複数のマイクロ波発生器(第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、第6マイクロ波発生器655-6)のうち少なくとも1つのマイクロ波発生器からのマイクロ波の発生を停止する。
【0062】
つまり、改質工程(S404)中において、ウエハ200(断熱板101aまたはサセプタ1011a)の温度を温度センサ263a、263bにより測定する。測定の結果、ウエハ200の中央部の温度よりウエハ200のエッジ部の温度が高い場合、ガス供給部から供給されている冷却ガス(例えばNガス)の供給流量を調整(供給流量を増加)するとともに、基板200のエッジ部の温度が低下するように、複数のマイクロ波発生器からのマイクロ波の合計出力を所定の出力値に維持しながら、複数のマイクロ波発生器(第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、第6マイクロ波発生器655-6)のうちの少なくとも1つを停止して、ウエハ200へマイクロ波を供給する。例えば、第5マイクロ波発生器655-5を停止し、第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、および、第6マイクロ波発生器655-6から、ウエハ200へマイクロ波を供給する。
【0063】
また、改質工程中に、ウエハ200(断熱板101aまたはサセプタ1011a)の温度を温度センサ263a、263bにより測定し、ウエハ200のエッジ部の温度よりウエハ200の中央部の温度が高い場合に、ガス供給部から供給されている冷却ガス(例えばNガス)の供給流量を調整(供給流量を低下)するとともに、ウエハ200の中央部の温度が低下するように、複数のマイクロ波発生器からのマイクロ波の合計出力を所定の出力値に維持しながら、複数のマイクロ波発生器(第1マイクロ波発生器655-1、第2マイクロ波発生器655-2、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、第6マイクロ波発生器655-6)のうちの少なくとも1つを停止して、ウエハ200へマイクロ波を供給する。例えば、第2マイクロ波発生器655-2を停止し、第1マイクロ波発生器655-1、第3マイクロ波発生器655-3、第4マイクロ波発生器655-4、第5マイクロ波発生器655-5、および、第6マイクロ波発生器655-6から、ウエハ200へマイクロ波を供給する。
【0064】
これにより、マイクロ波照射の初期に発生するウエハ200の反りを防止することができるとともに、ウエハ200の面内の温度を均一にすることができるので、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【0065】
以上のようにマイクロ波発生器655を制御することによって、ウエハ200を加熱し、ウエハ200表面上に形成されているアモルファスシリコン膜をポリシリコン膜へと改質(結晶化)させる。すなわち、ウエハ200を均一に改質することが可能となる。
【0066】
なお、ウエハ200の測定温度が上述した閾値を超えて高くまたは低くなった場合、マイクロ波発生器655をオフとするのではなく、マイクロ波発生器655の出力を低くするように制御することでウエハ200の温度が所定の範囲の温度となるようにしてもよい。この場合、ウエハ200の温度が所定の範囲の温度に戻るとマイクロ波発生器655の出力を高くするように制御される。
【0067】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート217の回転、ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管の排気が停止する。そして、ウエハ200の温度が所定の温度になるまで、ウエハ200が冷却される。
【0068】
(搬出工程(S405))
処理室201内の圧力を大気圧復帰させた後に、駆動機構267は載置台210を下降させることにより、炉口を開口するとともに、ボート217を搬送空間203に搬出(ボートアンローディング)する。その後ボートに載置されているウエハ200を搬送空間23の外部に位置する搬送室に搬出する(S405)。
【0069】
以上の動作が繰り返されることにより、ウエハ200が改質処理されることとなる。
【0070】
(3)温度制御方法
以下に、改質工程S404における温度制御方法について、図面を用いて説明する。以下の説明において、マイクロ波発生器655の出力(POWER)とは、ケース102内または処理室201内に照射されるマイクロ波の入力電力を意味する。また、図1および図3に示されるように、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6が設けられる場合、特に記載がない場合、マイクロ波発生器655の出力とは、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6から照射される各マイクロ波の出力の合計を意味する。
【実施例1】
【0071】
実施例1について、図8を用いて説明する。実施例1では、改質工程(S404)の昇温期間において、複数のマイクロ波発生器655-1~665-6からのマイクロ波の照射位置の最適化による電磁界分布の変更により、ウエハ200反り量を低減する構成例を説明する。
【0072】
図9は、図8と同様に、基板処理工程として、基板搬入工程(S401)と、不活性ガス供給工程(S403)と、改質工程(S404)と、基板搬出工程(S405)と、が代表的に例示されている。また、改質工程(S404)は、例えば、昇温期間と、改質期間と、冷却期間と、とに分けられている。
【0073】
反応室201内へ供給されるマイクロ波発生器655の出力(POWER)は、改質工程(S404)の昇温期間および改質期間では、10kWとされており、それ以外の基板搬入工程(S401)、不活性ガス供給工程(S403)、改質工程(S404)の冷却期間、基板搬出工程(S405)では、マイクロ波発生器655の出力(POWER)は0kWである。
【0074】
改質工程(S404)の昇温期間において、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6の内、1つのマイクロ波発生器655-5からのマイクロ波の発生が停止(0kW)され、残りの5つのマイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-6)からマイクロ波が発生されている。各マイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-6)は、各々2kWのマイクロ波を発生しており、その合計出力(POWER)は10kWである。
【0075】
一方、改質工程(S404)の改質期間において、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6の内、1つのマイクロ波発生器655-6からのマイクロ波の発生が停止(0kW)され、残りの5つのマイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-5)からマイクロ波が発生されている。各マイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-5)は、各々2kWのマイクロ波を発生しており、その合計出力(POWER)は10kWである。
【0076】
このように、改質工程(S404)の昇温期間において、マイクロ波の照射位置の最適化によって、反応室201内の電磁界分布を適切に変更しすることで、改質工程(S404)の昇温期間におけるウエハ200の反り量を低減することが出来る。これにより、ウエハ200の面内温度を均一にすることができるので、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0077】
実施例2について、図9を用いて説明する。実施例2では、改質工程(S404)の昇温期間において、ウエハ200のエッジ部または外周部への冷却ガス(N2ガス)の供給と複数のマイクロ波発生器655-1~665-6からのマイクロ波の照射位置の最適化による電磁界分布の変更とを、ウエハ200のエッジ部および中央部の計測温度に基づいて適切に調整する。
【0078】
図9に示されるように、改質工程(S404)の昇温期間において、不活性ガスの供給流量を30slmとし、ウエハ200の回転数を5.0rpmとし、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6の内、1つのマイクロ波発生器655-5からのマイクロ波の発生が停止(0kW)され、残りの5つのマイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-6)からマイクロ波が発生されている。
【0079】
一方、改質工程(S404)の改質期間において、不活性ガスの供給流量を5slmとし、ウエハ200の回転数を2.5rpmとし、複数のマイクロ波発生器655-1~655-6の内、1つのマイクロ波発生器655-6からのマイクロ波の発生が停止(0kW)され、残りの5つのマイクロ波発生器(655-1、655-2、655-3、655-4、655-5)からマイクロ波が発生されている。
【実施例3】
【0080】
実施例3について、図10を用いて説明する。図10は、改質工程(S404)での制御フローを示している。この制御フローが開始(スタート)されると、反応室201内へのマイクロ波の供給と、ガス導入口222から反応室201内への冷却ガスの供給とが開始される(S90)。マイクロ波は、マイクロ波発生器655-1~655-5から発生(ON)された状態であり、マイクロ波発生器655-6は停止している。この時、冷却ガスとしての不活性ガスの供給流量は30slmであり、ウエハ200の回転数は5.0rpmである。
【0081】
次に、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)およびサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)が図2(C)で説明された様に、温度センサ263a、263bによって検出される(S91)。
【0082】
S91の後、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)がサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)より低い(Tc<Te)か否の判断が行われる(S92)。サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)がサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)より低い(Tc<Te)場合(Y)、S93へ移行する。一方、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)がサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)より高い(Tc>Te)場合(N)、S94へ移行する。
【0083】
S93では、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)がサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)より低い(Tc<Te)ので、同様に、ウエハ200の中心部の温度がウエハ200のエッジ部の温度より低いと考えられる。また、ウエハ200の中心部の電界強度がウエハ200のエッジ部の電界強度より弱いと考えられる。このため、ウエハ200のエッジ部をさらに冷却し、ウエハ200の面内温度を均一化する必要がある。また、ウエハ200の中心部の電界強度をウエハ200のエッジ部の電界強度より強くするような制御も必要である。よって、冷却ガス供給流量を調整する(増加させる)とともに、例えば、第5マイクロ波発生器655-5を停止し、第6マイクロ波発生器655-6を動作(ON)させる(655-1~655-4、655-6:ON)。
【0084】
一方、S94では、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)がサセプタ1011aのエッジ部の温度(Te)より高い(Tc>Te)ので、同様に、ウエハ200の中心部の温度がウエハ200のエッジ部の温度より高いと考えられる。また、ウエハ200の中心部の電界強度がウエハ200のエッジ部の電界強度より強いと考えられる。このため、ウエハ200のエッジ部の冷却を低減し、ウエハ200の面内温度を均一化する必要がある。また、ウエハ200の中心部の電界強度をウエハ200のエッジ部の電界強度より弱くするような制御も必要である。よって、冷却ガス供給流量を調整する(低下させる)とともに、例えば、第2マイクロ波発生器655-2を停止し、第6マイクロ波発生器655-6を動作(ON)させる(655-1,655-3~655-6:ON)。
【0085】
次に、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)を検出し、検出された温度が改質期間におけるウエハ200の最適な温度範囲内(Ta1<Tc<Ta2)か否かを判断する(S95)。サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)が改質期間におけるウエハ200の最適な温度範囲内(Ta1<Tc<Ta2)であれば(Y)、S96へ移行する。一方、サセプタ1011aの中心部の温度(Tc)が改質期間におけるウエハ200の最適な温度範囲内(Ta1<Tc<Ta2)でなければ(N)、再度、S91へ遷移し、S92,S93,S94およびS95が繰り返し実施される。
【0086】
S96では、予め設定された処理時間が経過したか否かを判断し、予め設定された処理時間が経過していれば(Y)、図11の改質工程の制御フローは終了する。一方、予め設定された処理時間が経過していなければ(N)、再度、S91へ遷移し、S92、S93、S94、S95、S96が繰り返し実施される。
【0087】
以上により、改質工程(S404)において、ウエハ200のエッジ部および中央部の計測温度に基づいて、冷却ガスの供給流量の調整及びマイクロ波の照射位置の最適化による反応室201内の電磁界分布を適切に調整することで、改質工程(S404)におけるウエハ200の反り量を低減することが出来る。これにより、ウエハ200の面内温度を均一にすることができるので、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【0088】
(実験例および考察例)
図11は、マイクロ波を照射したときの基板と断熱板の温度推移の一例を示す図である。基板としてリンがドープされた直径300mmのシリコン基板(以下、ウエハ200とも言う)、サセプタ1011aとして直径300mmのシリコン基板、断熱板101aとして透明石英を反応室201に設置し、マイクロ波を10kWで、300秒間照射したときのウエハ200と断熱板101aの温度推移である。
【0089】
図11は、ウエハ200と断熱板101aの温度はその中心部を測定したものである。図11に示すように、積層膜のないウエハ200においても、マイクロ波を照射すると、所定の温度まで加熱される。
【0090】
マイクロ波出力を10kWで基板処理を行うと、ウエハ200の温度が安定するまでに120秒程度時間がかかり、その後、800°C付近で、ウエハ200の温度が安定する。
【0091】
透明石英の断熱板101aは、マイクロ波に作用しにくく、サセプタ1011aからの輻射によって加熱されるため、断熱板101aの温度は300秒で350°Cに達するものの、断熱板101aの温度が安定するにはもう少し時間がかかる。
【0092】
ウエハ200の温度が上昇しているマイクロ波照射の初期(30秒)では、ウエハ200に反りが発生し、ウエハ200の温度が800°C付近の温度安定領域(150秒)では、ウエハ200の反りが低減し、マイクロ波の照射前(0秒)とほぼ同じ様子である。
【0093】
ウエハ200の反りは、マイクロ波の照射開始から約60秒間発生し、その後、反り量は小さくなる。
【0094】
このように、ウエハ200に所定の高いマイクロ波出力(POWER)を照射した場合、ウエハ200の基板温度が上昇しているマイクロ波照射の初期(30秒)において、ウエハ200に反りが発生する。この傾向は、ウエハ200の上に、マイクロ波に作用しやすい材料や膜があった場合でも同じである。ただし、この場合、材料や膜がマイクロ波に作用しやすい分だけ、ウエハ200よりも材料や膜の温度が高くなり、低いマイクロ波出力(POWER)でも所望の温度を得やすい。
【0095】
図12は、シリコン基板のマイクロ波の吸収率とマイクロ波の反射率の温度依存性を示す図である。マイクロ波の吸収率と反射率は、自由空間法により測定した。マイクロ波は、周波数8.2GHzと周波数12.4GHzの場合を測定した。
【0096】
周波数8.2GHzと12.4GHzのウエハ200の吸収率は、室温付近で、40%以上であるが、ウエハ200の温度が高くなるにつれ吸収率は低下し、ウエハ200の温度が600°Cより高い温度では吸収率は約13%となる。
【0097】
反射率は、低温領域(室温~200°C)では、20~50%ぐらいであるが、ウエハ200の温度が400°C以上では、約80%となる。
【0098】
ウエハ200の温度が上昇しているマイクロ波照射の初期(30秒)におけるウエハ200の温度は、マイクロ波を吸収しやすい室温~400°Cぐらいになる。
【0099】
ウエハ200の反りが発生するマイクロ波照射開始60秒の間のウエハ200の中心部の温度は、25°C~740°Cぐらいであり、ウエハ200の昇温の過程で、マイクロ波を吸収しやすい25°C~400°Cの温度帯も含まれる。
【0100】
一般的に、ウエハ200の中央部の温度Tcとウエハ200の外周部(エッジ部)の温度Teの温度差が「中央部の温度Tc<外周部の温度Te」であれば、ウエハ200は鞍型に反る。また、ウエハ200の温度差が「中央部の温度Tc>外周部の温度Te」であれば、ウエハ200はドーム型に反る。ウエハ200が5mm-10mm反るには、ウエハ200の温度が約300°C~500°Cのときは、ウエハ200の面内の温度差が約45°C~85°C必要になる。
【0101】
以上を考慮すると、ウエハ200に反りが発生するメカニズムは、以下の通りと考えられる。
【0102】
マイクロ波出力が10kWと比較的高出力でマイクロ波を照射した場合、マイクロ波出力照射開始から60秒までのウエハ200の昇温時の温度帯は、比較的ウエハ200がマイクロ波を吸収しやすい温度帯である。したがって、マイクロ波の少しの照射むらでも、ウエハ200の面内温度差が大きくなりやすい状態にある。
【0103】
ウエハ200の温度分布は、ウエハ200の中央部の温度Tcとウエハ200の外周部(エッジ部)の温度Teの温度差が、「中央部の温度Tc<外周部の温度Te」であり、その温度差が約45°C~85°Cとなり、ウエハ200が鞍型に反るものと考えられる。ウエハ200の面内温度差が大きくなると、ウエハ200がさらに大きく反るため、ウエハ200がサセプタ1011aと衝突する虞がある。
【0104】
図13に示される処理サンプルは、シリコン(Si)基板(Si-Sub)と、Si基板上に形成された熱酸化膜SiOと、この熱酸化膜SiO上に形成されたリンを含むシリコン膜(P-doped Si膜)を有する。熱酸化膜SiOの膜厚は、約1000Å程度である。この熱酸化膜SiOは、例えば、抵抗加熱ヒータを備えた縦型基板処理装置において、900℃酸素雰囲気でSi基板の表面に酸素Oを拡散させ形成したSi酸化膜である。P-doped Si膜は、その膜厚が約3000Åであり、リン(P)濃度は、1e21atoms/cmである。このP-doped Si膜は、例えば、抵抗加熱ヒータを備えた縦型基板処理装置において、反応室温度500~650℃で減圧下の反応室内にSiH4(モノシラン:Monosilane)とPH3(フォスフィン:Phosphine)を導入し、予め反応室内に搬送固定しておいた基板上に堆積・成膜し形成される。
【0105】
図13の処理サンプルに、マイクロ波照射を行うと、非晶質のP-doped Si膜は結晶化する。ただし、マイクロ波の照射時間が適度に中途半端であると処理むらが発生する。これは、マイクロ波処理したものの処理時間が十分でなかったため、結晶化できた箇所と結晶化が不十分な箇所が存在し、処理むらが同心円状の干渉縞となって表れる。
【0106】
反応室201内にマイクロ波を照射すると、マイクロ波発生器の周波数、反応室201の寸法、反応室201内の材料(ウエハ200、サセプタ1011a、断熱板101a等)等をパラメータとした固有の電磁界分布が反応室201内に形成される。この電磁界分布は、材料の温度にも依存する。
【0107】
このような電磁界分布が存在する中で、ウエハ200は回転しているので、電磁界の強弱がウエハ200上には同心円状の4~5個の輪模様となって表れる。マイクロ波の照射によって、特定箇所だけが作用して加熱されるが、時間を延ばして十分な処理時間を確保できた場合は、ウエハ200全体に熱が伝導し、ウエハ200全体において結晶化が完了する。
【0108】
つまり、処理時間が不十分であれば、その処理むらからどのような電磁界分布になっているか検証する手掛かりになることを意味する。
【0109】
この処理むらは、シート抵抗値(Rs)を測定することで数値化できる。四探針法により測定したシート抵抗値(Rs)は、一様の厚さを持つ薄い膜やフィルム状物質の電気抵抗を表す量の一つで、物質や材料の電気の通し難さを表す。結晶化・活性化していれば電気が流れやすいため、シート抵抗値(Rs)は小さくなり、非晶質であれば大きくなる。
非晶質のP-Doped Si膜は熱アニールによって550°C付近以上で結晶化・活性化することが知られている。したがって、非晶質P-Doped Si膜のウエハ200全面のシート抵抗値(Rs)のマップデータを取得することで、550°C付近での反応室201内の電磁界分布を把握することができる。
【0110】
図14は、シート抵抗値(Rs)の面内分布のマイクロ波照射口との位置依存性を示す図である。図13の構造の非晶質P-Doped Si膜を含むウエハ200に、マイクロ波照射(4kWで300秒+9kWで45秒)を行うと非晶質のP-Doped Si膜は一部結晶化するものの処理むらが発生する。
【0111】
反応室201におけるマイクロ波の照射口は、図3のようになるが、マイクロ波の照射口の照射位置を変更して、非晶質P-Doped Si膜を処理したときのシート抵抗値(Rs)の面内分布の傾向は、図14のMAP部分に示されるように、それぞれ異なる。
【0112】
例えば、マイクロ波発生器655-2をOFFし、マイクロ波発生器655-1、655-3~655-6を使用したとき、ウエハ200のシート抵抗値(Rs)の面内分布は、ウエハ200の中央付近のシート抵抗値(Rs)が高い傾向にある。これは、ウエハ200の中央付近の電磁界分布が弱かったせいであると考えられる。この場合のマイクロ波発生器655の照射口の照射位置は、図3において、653-1、653-3、653-4、653-5、653-6である。図10のS94は、この構成を利用したものである。
【0113】
同様に、例えば、マイクロ波発生器655-5をOFFし、マイクロ波発生器655-1~655-4、655-6を使用したとき、ウエハ200のシート抵抗値(Rs)の面内分布は、ウエハ200の外周付近(エッジ部)のシート抵抗値(Rs)が高い傾向にある。これは、ウエハ200の外周部の電磁界分布が弱かったせいであると考えられる。この場合のマイクロ波発生器655の照射口の照射位置は、図3において、653-1、653-2、653-3、653-4、653-6である。図10のS93は、この構成を利用したものである。
【0114】
同様に、例えば、マイクロ波発生器655-6をOFFし、マイクロ波発生器655-1~655-5を使用したとき、ウエハ200のシート抵抗値(Rs)の面内分布は、面内においてほぼ均一であり、ウエハ200の面内の電磁界分布がほぼ均一であると考えられる。この場合のマイクロ波発生器655の照射口の照射位置は、図3において、653-1、653-2、653-3、653-4、653-5である。図7の改質工程(S404)の昇温期間及び改質期間は、この構成を利用したものである。
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0115】
1)基板のエッジ部へ冷却ガスを反応室の上部から導入できる位置にガス導入口を設け、冷却ガスを反応室の下部から排気できる位置に排気口を設け、エッジ部分へ冷却ガスを供給し、基板の中央部よりエッジ部の温度を低くする。これにより、基板の面内温度を均一にすることができるので、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【0116】
2)マイクロ波を発生する複数のマイクロ波発生器と、このマイクロ波発生器が発生したマイクロ波を基板に照射する複数のマイクロ波照射口とを設け、基板内の電磁界強度がエッジ部よりも中央部が高くなるように複数のマイクロ波発生器のいずれかをOFFして、マイクロ波照射口の位置を変更する。これにより、基板の面内温度を均一にすることができるので、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【0117】
3)上記1)および上記2)を組み合わせて行う事により、マイクロ波照射の初期に発生する基板の反りを防止することができるとともに、基板面内の温度を均一にすることができる。
【0118】
4)基板にマイクロ波の供給を開始するとともに冷却ガスの供給を開始し、基板の中央部及びエッジ部の温度を測定し、中央部より流エッジ部の温度が高い場合に、エッジ部の温度が低くなるように、(I)冷却ガスの供給流量を増加すると共に、(II) 基板の電磁界強度が所定の電磁界強度となるように、複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つを停止する。
【0119】
5)また、基板にマイクロ波の供給を開始するとともに冷却ガスの供給を開始し、基板の中央部及びエッジ部の温度を測定し、エッジ部より中央部の温度が高い場合に、中央部の温度が低くなるように、(I)冷却ガスの供給流量を低下すると共に、(II) 基板の電磁界強度が所定の電磁界強度となるように、複数のマイクロ波発生器のうち少なくとも1つを停止する。
【0120】
6)上記4)および上記5)を組み合わせて実施することにより、マイクロ波照射の初期に発生する基板の反りを防止することができるとともに、基板面内の温度を均一にすることができる。これにより、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【0121】
<本発明の他の実施形態>
本発明の他の実施形態に係る基板処理装置を、図15を用いて説明する。図15に示される基板処理装置100aが、図1に示される基板処理装置100と異なる点は、ガス供給部として、さらに、ガス供給管232a、マスフローコントローラ(MFC)241a、開閉弁であるバルブ243a、およびガス導入口222aが設けられている点と、載置台210を囲むように排気口221が設けられている点と、である。その他の構成は、図1と同様であるので、説明は省略する。
【0122】
ガス導入口222aは、ガス導入口222と同様に、ウエハ200のエッジ部分へ冷却ガスを供給できるように、キャップフランジ104のウエハ200のエッジ部の上部に対応する箇所に設けられる。反応室201の上部に設けられたガス導入口222、222aから反応室201内へ供給された冷却ガスは、ウエハ200のエッジ部およびその近傍を通過して、載置台210を囲むように設けられた排気口221から搬送空間203内を経由して、排気管231へ排出される。
【0123】
これにより、ガス導入口222、222aから供給される冷却ガスの供給流量を多くしても、載置台210を囲むように設けられた排気口221から速やかに排出することが可能になる。
【0124】
図16に示すように本実施形態では、垂直方向多段に基板を複数枚保持可能な、いわゆる、縦型バッチ式の基板処理装置として構成している。ボート217には、処理対象である垂直方向多段に保持された複数のウエハ200と、この複数のウエハ200を挟み込むようにウエハ200の垂直方向上下に載置された断熱板としての石英プレート101a、101bおよび、サセプタ1011a、1011bが所定の間隔で保持されている。図16では、この複数のウエハ200間に、石英プレート101cが設けられていない構成例である。他の構成は、図1と同じであり、その説明は省略される。ボート217に保持するウエハ200を3枚として記載しているが、これに限らず、例えば25枚や50枚など多数枚のウエハ200を処理するようにしてもよい。
【0125】
以上、本発明を実施形態に沿って説明してきたが、上述の各実施形態や各変形例等は、適宜組み合わせて用いることができ、その効果も得ることができる。
【0126】
例えば、上述の各実施形態では、シリコンを主成分とする膜として、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に改質する処理について記載したが、これに限らず、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)のうち、少なくとも1つ以上を含むガスを供給させて、ウエハ200の表面に形成された膜を改質しても良い。例えば、ウエハ200に、高誘電体膜としてのハフニウム酸化膜(HfxOy膜)が形成されている場合に、酸素を含むガスを供給しながらマイクロ波を供給して加熱させることによって、ハフニウム酸化膜中の欠損した酸素を補充し、高誘電体膜の特性を向上させることができる。
【0127】
なお、ここでは、ハフニウム酸化膜について示したが、これに限らず、アルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の少なくともいずれかを含む金属元素を含む酸化膜、すなわち、金属系酸化膜を改質する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、上述の成膜シーケンスは、ウエハ200上に、TiOCN膜、TiOC膜、TiON膜、TiO膜、ZrOCN膜、ZrOC膜、ZrON膜、ZrO膜、HfOCN膜、HfOC膜、HfON膜、HfO膜、TaOCN膜、TaOC膜、TaON膜、TaO膜、NbOCN膜、NbOC膜、NbON膜、NbO膜、AlOCN膜、AlOC膜、AlON膜、AlO膜、MoOCN膜、MoOC膜、MoON膜、MoO膜、WOCN膜、WOC膜、WON膜、WO膜を改質する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0128】
また、高誘電体膜に限らず、不純物がドーピングされたシリコンを主成分とする膜を加熱させるようにしてもよい。シリコンを主成分とする膜としては、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸化膜(SiO膜)シリコン酸炭化膜(SiOC膜)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等のSi系酸化膜がある。不純物としては、例えば、臭素(B)、炭素(C)、窒素(N)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)、砒素(As)などの少なくとも1つ以上を含む。
【0129】
また、メタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェニール樹脂などの少なくともいずれかをベースとするレジスト膜であってもよい。
【0130】
また、上述では、半導体装置の製造工程の一工程について記したが、これに限らず、液晶パネルの製造工程のパターニング処理、太陽電池の製造工程のパターニング処理や、パワーデバイスの製造工程のパターニング処理などの、基板を処理する技術にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上述べたように、本発明によれば、基板の変形または破損を抑制し、均一な基板処理を行うことが可能となる電磁波熱処理技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0132】
101a、101b・・・石英プレート(石英板)、
121・・・コントローラ(制御部)、
200・・・ウエハ(基板)、
201・・・処理室、
221・・・排気口、
222・・・ガス導入口、
263・・・温度センサ、
655・・・マイクロ波発生器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16