(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-02
(45)【発行日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ハニカム型メタル担体及び触媒コンバータ
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20220303BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220303BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220303BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220303BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B01J23/63 A
B01J35/04 311A
B01J37/02 301K
F01N3/28 301P
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
(21)【出願番号】P 2021151781
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2021-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 徹
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 省吾
(72)【発明者】
【氏名】村松 啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康秀
(72)【発明者】
【氏名】野澤 創平
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178647(JP,A)
【文献】特開2005-334757(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159556(WO,A1)
【文献】特開平11-257048(JP,A)
【文献】特開2006-142138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
F01N 3/28
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属平箔と金属波箔とが交互に積層されたハニカム型メタル担体であって、
前記金属平箔及び前記金属波箔には孔が複数形成されるとともに、各孔の縁には小高のカエリが形成されており、
前記金属平箔及び前記金属波箔のうち少なくとも前記カエリの表面はα-アルミナを含む酸化皮膜によって覆われており、
前記複数の孔の平均孔径をD、開孔率をR、カエリの平均高さをLとしたとき、以下の式(1)~式(3)を満足することを特徴とするハニカム型メタル担体。
0.2mm≦D≦4.0mm・・・・(1)
5%≦R≦70%・・・・・・・・・(2)
0.1μm≦L≦30μm・・・・・(3)
【請求項2】
前記小高のカエリは、先端面がカエリの突出方向に対して直交する方向に延在する形状であることを特徴とする請求項1に記載のハニカム型メタル担体。
【請求項3】
前記カエリは、前記先端面よりも幅が小さい絞り形状部を有することを特徴とする請求項2に記載のハニカム型メタル担体。
【請求項4】
カエリの平均高さLは、以下の式(4)を満足することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のハニカム型メタル担体。
0.5μm≦L≦20μm・・・・・(4)
【請求項5】
請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のハニカム型メタル担体と、
前記金属平箔及び前記金属波箔に担持される触媒層と、を有し、
前記カエリの平均高さLは、前記触媒層の厚みよりも小さいか或いは、前記触媒層よりも所定量だけ大きく、
前記所定量は10μm以下であることを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項6】
請求項4に記載のハニカム型メタル担体と、
前記金属平箔及び前記金属波箔に担持される触媒層と、を有し、
前記カエリの平均高さLは、前記触媒層の厚みよりも小さいことを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項7】
前記酸化皮膜は、厚みが0.05μm以上2μm以下であり、α-アルミナを少なくとも10質量%以上含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のハニカム型メタル担体。
【請求項8】
前記酸化皮膜は、厚みが0.05μm以上2μm以下であり、α-アルミナを少なくとも10質量%以上含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の触媒コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属平箔と金属波箔とが交互に積層されたハニカム型メタル担体の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関の排ガス浄化用触媒担体として、耐熱合金製の外筒に同合金製のハニカム体を嵌入してなる触媒コンバータが知られている。触媒コンバータのうち、特に金属製の箔から構成されるメタル担体においては、ハニカム体は厚さ50μm程度の金属製の平箔と、該平箔をコルゲート加工した波箔とを交互に積層したものや、帯状の平箔と波箔を重ねて渦巻状に巻き回したもの等が使用されている。
【0003】
近年、自動車排ガス規制が非常に厳しくなる傾向にあり、特に排出ガス測定モードにおけるコールドスタート時の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物などの有害物質の排出が総排出量のかなりの割合を占めており、触媒の早期活性化が求められている。そこでメタル担体を構成する平箔および波箔に孔開け加工を施して、乱流を生成することにより浄化性能を高めたメタル担体が種々提案されている。
【0004】
特許文献1には、孔の個数、寸法及び分布を適宜定めることによって、ハニカム体の内部における流れ特性の改善およびこれによって生ずる流れと表面との間の物質交換を改善し、浄化性能を向上させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、孔が多数形成された金属箔をベースとしてろう付け位置を工夫した高温耐久性に優れる触媒コンバータが開示されている。特許文献3には、波板と平板に複数のスリット孔が形成された金属製触媒担体において、スリット孔の開口縁部に波板と平板の面から突出する環状突起を形成し、環状突起に排ガスを衝突させて乱流を起こすことにより、浄化性能を高める技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、ステンレス箔を加工してなるメタルハニカム基材と、ステンレス箔上に形成した触媒層から構成される排気ガス浄化用触媒コンバータであって、前記ステンレス箔は少なくともFe、Cr、及びAlを含有し、前記ステンレス箔の表面にはステンレス箔成分が酸化してできた酸化物皮膜が形成されており、該酸化物皮膜の含有するFeの濃度が酸化物に対する質量%で0.1%以上7%以下である触媒コンバータが開示されている。また、この特許文献4には、酸化皮膜中にFeを含有させることによって箔中のFeの触媒層への移動が抑制され、Feによる触媒劣化が抑制されることが開示されている。
【0007】
特許文献1乃至3に記載されているようにハニカム体に用いられる金属箔に孔を形成すると、孔の縁にバリが形成される。このバリは、不要な突起物であるため、通常、バリ取り工程で取り除かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4975969号
【文献】特許第5199291号
【文献】特開2005-313083号公報
【文献】特開2007-203256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、孔の周囲に形成されたカエリを残すことにより、浄化性能が向上することを発見した。一方、カエリの周囲にある触媒がエイジングにより劣化する課題を発見した。
【0010】
本発明は、触媒コンバータの浄化性能の向上及び触媒劣化の抑制を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明に係るハニカム型メタル担体は、(A)金属平箔と金属波箔とが交互に積層されたハニカム型メタル担体であって、前記金属平箔及び前記金属波箔には孔が複数形成されるとともに、各孔の縁には小高のカエリが形成されており、前記金属平箔及び前記金属波箔のうち少なくとも前記カエリの表面はα-アルミナを含む酸化皮膜によって覆われており、前記複数の孔の平均孔径をD、開孔率をR、カエリの平均高さをLとしたとき、以下の式(1)~式(3)を満足することを特徴とする。
0.2mm≦D≦4.0mm・・・・(1)
5%≦R≦70%・・・・・・・・・(2)
0.1μm≦L≦30μm・・・・・(3)
【0012】
(B)前記小高のカエリは、先端面がカエリの突出方向に対して直交する方向に延在する形状であることを特徴とする上記(A)に記載のハニカム型メタル担体。
【0013】
(C)前記カエリは、前記先端面よりも幅が小さい絞り形状部を有することを特徴とする上記(B)に記載のハニカム型メタル担体。
【0014】
(D)カエリの平均高さLは、以下の式(4)を満足することを特徴とする上記(A)乃至(C)のうちいずれか一つに記載のハニカム型メタル担体。
0.5μm≦L≦20μm・・・・・(4)
【0015】
(E)上記(A)乃至(C)のうちいずれか一つに記載のハニカム型メタル担体と、前記金属平箔及び前記金属波箔に担持される触媒層と、を有し、前記カエリの平均高さLは、前記触媒層の厚みよりも小さいか或いは、前記触媒層よりも所定量だけ大きく、前記所定量は10μm以下であることを特徴とする触媒コンバータ。
【0016】
(F)上記(D)に記載のハニカム型メタル担体と、前記金属平箔及び前記金属波箔に担持される触媒層と、を有し、前記カエリの平均高さLは、前記触媒層の厚みよりも小さいことを特徴とする触媒コンバータ。
【0017】
(G)上記(A)乃至(F)において、前記酸化皮膜を、厚みが0.05μm以上2μm以下、α-アルミナを少なくとも10質量%以上含むように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、触媒コンバータの浄化性能の向上及び触媒劣化の抑制を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】孔の周囲に延在するカエリの先端面の模式図である。
【
図6】平均カエリ高さLの算出方法を説明するための触媒コンバータの平面図である。
【
図9】形状調整後のカエリ(変形例)の断面写真である。
【
図10】ハニカム体の一部における断面図である(第2実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は触媒コンバータ1の斜視図であり、触媒コンバータ1の軸方向を両矢印により示している。触媒コンバータ1は、平箔2と波箔3を渦巻状に巻き回して捲回体にしたハニカム体(ハニカム型メタル担体に相当する)4と、当該ハニカム体4の外周面を囲む外筒5とを有する。ただし、ハニカム体4は、平箔2と波箔3を交互に重ねた積層体であってもよい。捲回体であっても、積層体であっても、断面で視ると平箔2と波箔3とが積層された構造となっている。したがって、請求項に記載されたハニカム型メタル担体には、積層体は勿論のこと、捲回体も含まれる。
【0021】
平箔2及び波箔3には、耐熱合金からなる金属箔を用いることができる。金属箔の板厚は、好ましくは20μm以上100μm以下である。金属箔の板幅は、好ましくは10mm以上500mm以下である。金属箔のサイズは、触媒コンバータ1の用途に応じて適宜変更することができる。波箔3は、金属製の平箔を例えばコルゲート加工することによって製造することができる。
【0022】
ここで、耐熱合金としてアルミニウムを含むステンレス箔を用いることができる。この種のステンレス箔として、好ましくは、Cr:20質量%、Al:3~8質量%、残部がFe及び不可避的不純物からなるフェライト系ステンレスを用いることができる。ただし、本発明に適用可能な耐熱合金は前述のフェライト系ステンレスに限るものではなく、合金組成にAlを含む耐熱性の各種ステンレス鋼を広く用いることができる。すなわち、通常、ハニカム体4に用いられる金属箔は、Crを15-25質量%、Alを2-8質量%含有しており、Fe-18Cr-3Al合金や、Fe-20Cr-8Al合金なども耐熱合金として用いることができる。
【0023】
触媒は、ハニカム体4の金属箔表面に所定のウォッシュコート液を塗布して、それを乾燥、焼成することによって、金属箔に担持させることができる。ウォッシュコート液には、例えば、γアルミナ粉末、ランタン酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物を硝酸パラジウムの水溶液内で撹拌してスラリー状にしたものを用いることができる。
【0024】
外筒5には例えばステンレスを用いることができる。外筒5の肉厚は、好ましくは0.5mm以上3mm以下である。ハニカム体4のセル密度は、好ましくは1平方インチあたり100セルから600セルである。
【0025】
触媒コンバータ1は、軸方向における一端側から排ガスを流入させ、この流入した排ガスを他端側から排出し得るように、図示しない車両の排気管に設置される。触媒コンバータ1に担持された触媒と排ガスが反応することによって、触媒コンバータ1に流入した排気ガスを浄化することができる。
【0026】
図2は、径方向に切断したハニカム体4の一部における断面図である。平箔2と波箔3には、それぞれ厚さ方向に貫通する複数の孔8が形成されている。孔8の配置は特に限定しないが、例えば、ハニカム体4にする前の展開状態において、碁盤の目状又は千鳥状に孔8が形成された金属箔を用いることができる。通常、孔の開いていない平箔と波箔から構成されるメタル担体のガス流れは、層流である。しかしながら、金属箔に孔が開いていると、孔の部分では部分的にレイノルズ数が大きくなり乱流が生成されやすくなり、その結果浄化性能が向上する。ただし、過度な乱流は、圧力損失の増大を招くため好ましくない。本発明は、孔8の孔径及び開口率を所定範囲に制限したり、カエリの高さを小高に制限することによって、過度な乱流を抑制しており、乱流を抑制することによる浄化性能の低下をカエリの火種効果によって補っている。この点については、詳細を後述する。
【0027】
平箔2の各孔8の縁には、触媒層20に埋没するカエリ2Aが周方向に延びて形成されている。波箔3の各孔8の縁には、触媒層20に埋没するカエリ3Aが周方向に延びて形成されている。カエリ2A,3Aは、孔開け工具を用いて金属箔に孔を開ける際に自然に形成される突起であり、バリとも称される。カエリは、一般的には不要な突起物であるためバリ取り工程において除去されるが、本発明では形状調整工程を実施することによって、浄化性能を向上させるための構造物として残存させている。孔開け工具の種類は特に問わないが、パンチングプレス、ロータリーパンチングマシンなどの金型を用いて連続加工することができる。
【0028】
平箔2及び波箔3の表面には、α-アルミナを含む酸化皮膜が形成されている。この酸化皮膜は、カエリ2A、3Aの表面にも形成されている。酸化皮膜は、800℃超の酸化性雰囲気下でハニカム体4を加熱することにより、平箔2及び波箔3の表面(カエリの表面を含む)に形成される。平箔2及び波箔3に用いられる金属箔が、Cr:20質量%、Al:3~8質量%、残部がFe及び不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス箔の場合、ハニカム体4に対して上述の酸化処理(加熱処理)を施することにより、α-アルミナを少なくとも10質量%以上含む酸化皮膜がステンレス箔の表面に形成される。なお、酸化皮膜にはα-アルミナのほかに、Cr酸化物、Fe酸化物が含まれていてもよい。
【0029】
酸化皮膜の厚みは、好ましくは0.05μm以上2μm以下である。α-アルミナを少なくとも10質量%以上含む酸化皮膜の厚みが0.05μm以上あれば、エイジングによる触媒劣化を抑制できる。酸化皮膜の厚みを2μm以下に抑制することにより、平箔2及び波箔3の耐久性の低下を抑制できる。酸化皮膜の厚みは、ステンレス箔に含まれるアルミの含有量が高くなるほど、厚くなる。
【0030】
カエリ2A、3Aの構造について、
図3、
図4及び
図5を参照しながら詳細に説明する。
図3は形状調整前のカエリ(言い換えると、パンチング直後のカエリ)の断面写真である。
図4は形状調整後のカエリの断面写真である。
図5は、孔の周囲に延在するカエリの先端面を模式的に示した模式図である。
【0031】
図3を参照して、形状調整前のカエリは、先端が尖ったままであるため、平箔(波箔)に触媒層を形成すると、カエリが触媒層から過度に突出してしまう。この場合、触媒層から突出したカエリに排ガスが衝突することによって、過度な乱流が発生して、圧力損失が大きくなる。
【0032】
図4を参照して、カエリ2A、3Aの先端面は、カエリの突出方向(金属箔の厚み方向)に対して直交する方向に延在している。「延在」とは、
図5にハッチングで示すように、「孔8の縁から径方向に向かってカエリ2A、3Aの先端面が広がって存在する」の意であり、各周方向位置における広がり度合いは必ずしも一様とは限らない。また、カエリ2A、3Aの先端面はフラットであってもよし、微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0033】
また、
図4に図示するように、カエリ2A、3Aには絞り形状部50が形成されており、先端面の幅をP1、絞り形状部50の幅をP2としたとき、P1及びP2の大小関係はP1>P2である。幅とは、孔8の径方向における幅のことである。本実施形態では、符号50の形状が、絞り加工によって形成された形状に似ていることから、絞り形状部という名称を付したが、絞り形状部の加工工程は絞り加工に限定するものではない。絞り形状部50は、「括れ形状部」と言い換えることができる。
【0034】
小高のカエリ2A、3Aを設けることによって触媒コンバータ1の浄化性能を向上させることができる。その理由は、以下のように推察される。小高のカエリ2A、3Aは熱容量が小さく排ガス流入時に温度が上がりやすい一方で、触媒層20に埋没しているため、ため込んだ熱が空気によって抜熱されるにくい。したがって、カエリを起点とした触媒反応領域の広がりが低温化され、ハニカム体4全体としての触媒反応が活性化される。
【0035】
すなわち、カエリ及びその周辺に担持された触媒が触媒反応の開始、終了を決める火種的なものになり、火種の発生、消滅の低温化によって触媒反応を早期に活性化させることができる。なお、以下の説明において、このカエリ2A、3Aによる効果を火種効果ともいう。カエリ2A、3Aの先端面をカエリの突出方向に対して直交する方向に延在する形状に形成することによって、カエリ高さが同等で、かつ、先端が鋭利なカエリ(後述する第2実施形態のカエリを含む)と比較して触媒との接触面積が増大するため、上述の火種効果を高めることができる。
【0036】
一方、本発明者等は、平箔2及び波箔3の表面に酸化皮膜が形成されていない触媒コンバータ1(つまり、本発明の範囲外の触媒コンバータ)を用いて排ガスを浄化したときに、エイジングによる触媒劣化が大きくなる課題を発見した。この課題を詳細に検討した結果、カエリ2A、3A近傍の触媒が異常に温度上昇して、劣化するものと推察した。そして、この触媒劣化を抑制する手段として、カエリ2A、3Aの表面に、α-アルミナを含む酸化皮膜を形成することを知見した。すなわち、カエリ2A、3Aの表面に、α-アルミナを含む酸化皮膜を形成しておくことにより、カエリ2A、3Aと触媒との熱伝達が促進される。これにより、触媒の異常な温度上昇が防止され、エイジングによる触媒劣化を抑制できる。
【0037】
形状調整後のカエリ2A、3Aの平均高さ(以下、平均カエリ高さLともいう)は、0.1μm以上30μm以下であり、好ましくは0.5μm以上20μm以下である。カエリ2A、3Aを0.1μm以上30μm以下の高さに調整することにより、火種効果を発現させることができる。
【0038】
平均カエリ高さLが0.1μm未満に低下すると、カエリ2A、3Aに蓄える熱エネルギが過少となり、火種効果を十分に発現させることができない。平均カエリ高さLが30μmを超過すると、触媒層20を突き抜けたカエリ2A、3Aの先端部分が空気に触れて抜熱されるため、火種効果が発現しにくくなるとともに、排ガスがカエリ2A、3Aに接触することによって乱流が生成され、圧力損失が大きくなる。平均カエリ高さLを0.5μm以上20μm以下に制限することによって、上述の火種効果等がより得られやすくなる。
【0039】
図6は、触媒コンバータ1を軸方向から視た平面図である。同図を参照して、平均カエリ高さLは、中心軸を含む面(点線で示す「CS」)で触媒コンバータ1を切断し、その切断面に現れた個々のカエリの高さを画像解析によって測定した後、これらの測定値を合算し、この合算値を更に測定回数で除することによって求めることができる。なお、測定処理を行う際に、ハニカム体4のガス流路(空隙)を樹脂により埋めておくことが望ましい。カエリ高さは、金属箔の箔厚と金属箔の箔厚方向一端からカエリの先端までの長さとの差分から求めることができる。
【0040】
また、別の測定方法として、ハニカム体4を展開した後、金属箔(平箔2又は波箔3の母材)を、撮像素子(CMOSセンサ等)を備えた画像寸法測定器によって撮像して孔8の周方向に沿った画像を取得することにより、個々の孔8のカエリ高さを求めてもよい。この場合、測定したカエリ高さの合算値を、測定回数で除することによって平均カエリ高さLを求めることができる。
【0041】
また、ハニカム体4を展開した後、マイクロメータを用いて金属箔(平箔2又は波箔3の母材)に形成された各孔8のカエリ高さを求めてもよい。この場合も、測定したカエリ高さの合算値を、測定回数で除することによって平均カエリ高さLを求めることができる。
【0042】
図7を参照しながら、カエリ2A、3Aの形状を調整する調整方法について説明する。
図7は、金属箔の入側から視た形状調整装置の概略図である。形状調整装置100は、駆動ローラ101、従動ローラ102、駆動モータ103、伝達機構104、固定台105、油圧機構106、デジタルインジゲータ107を含む。駆動モータ103は伝達機構104を介して駆動ローラ101に接続されており、駆動モータ103が作動すると、駆動モータ103の駆動力が伝達機構104を介して駆動ローラ101に伝達され、駆動ローラ101は回転軸L1周りに回転動作する。
【0043】
従動ローラ102は、駆動ローラ101の直上に配設されており、油圧機構106によって駆動ローラ101に接近する側に押圧されている。したがって、従動ローラ102は、駆動ローラ101とともに回転する。駆動ローラ101と従動ローラ102の間(つまり、ニップ部)に、金属箔を滑り込ませることができる。
【0044】
油圧機構106によって、駆動ローラ101及び従動ローラ102のニップ圧を調整することができる。ニップ圧は、インジケータ107によって測定することができる。駆動ローラ101及び従動ローラ102の上流側には、図示しないガイドローラが配設されている。油圧機構106、伝達機構104のギアボックス及び駆動モータ103は、固定台105に対して固定されている。
【0045】
上述の構成において、パンチング装置によりカエリ付きの孔が形成された金属箔を準備し、これを図示しないガイドローラを介して、駆動ローラ101及び従動ローラ102のニップ部に送り込む。駆動ローラ101を駆動モータ103側から視て時計周りに方向に回転させると、金属箔が駆動ローラ101及び従動ローラ102のニップ部に引き込まれ、金属箔のカエリに駆動ローラ101(従動ローラ102)が接触する。
【0046】
駆動ローラ101及び従動ローラ102を更に回転させると、これらのローラによってカエリが押し潰され、絞り形状部50は有するカエリ2A、3Aが形成される。予め、所望のカエリ2A、3Aを形成するためのニップ圧を実験等で求めておくことが望ましい。なお、波箔3用の金属箔は、形状調整装置100による形状調整後に、波箔形成工程に移送される。波箔形成工程では、例えば、波箔の形状に対応したギアを金属箔に当接させて、金属箔を塑性変形させることにより、波箔3を製造することができる。
【0047】
カエリ2A、3Aの形状調整方法は、形状調整装置100に限るものではなく、例えば、金属箔をパンチングする際に、カエリの突出を抑制する邪魔板を設置することにより形状調整としてもよい。この場合、パンチングの際に形成されるカエリが邪魔板に当接して塑性変形することにより、孔8の縁に
図2に図示するカエリ2A、3Aを形成することができる。
【0048】
触媒層20の厚みは平均カエリ高さLとの関係で適宜設定することができる。すなわち、上述したように、触媒層20から突出するカエリ2A、3Aの突出量が大きくなると、火種効果の低下と乱流生成が顕著となる。したがって、触媒層20の厚みを平均カエリ高さL以上に設定するか、或いは平均カエリ高さLが触媒層20よりも大きい場合には、平均カエリ高さL及び触媒層20の厚みの差分(所定量に相当する)を10μm以下に制限することが望ましい。
【0049】
ここで、孔8の平均孔径をDと定義したときに、平均孔径Dは0.2mm以上4.0mm以下である。なお、孔8の孔径は、直径である。平均孔径Dが0.2mm未満に低下すると、触媒コンバータ1の生産性が低下する。平均孔径Dが4.0mmを超過すると、孔8の縁長さの総和量(つまり、ハニカム体4全体における孔8の縁の総長さ)が小さくなり、カエリを付与してもカエリの総長さが短いため、浄化性能を十分に向上させることができない。なお、平均孔径Dが1.1mm未満に低下すると、触媒によって孔8が閉塞して、浄化性能が低下するおそれがある。そのため、平均孔径Dが1.1mm未満の場合、粘性の低い触媒を用いることが望ましい。
【0050】
上述の実施形態では、孔8の形状を円形としたが、他の形状であってもよい。他の形状には、楕円、矩形等種々の形状を含めることができる。いずれの形状であっても、面積から円換算により孔径を求めることができる。
【0051】
孔8の孔径は、金型のパンチ径及びダイス径によって制御することができる。各孔8の孔径は必ずしも同一である必要はないが、加工容易性等の観点から、標準偏差σが0.001mm以上0.5mm以下となるように製造するのが好ましい。
【0052】
孔8の開口率をRと定義すると、開口率Rは5%以上70%以下であり、好ましくは20%以上70%以下である。ここで、開口率Rとは、
図8に示すように三角形で囲まれる全体面積に対する、黒く塗りつぶされた孔部の面積の総和の比として算出される値をいう。すなわち、隣接する三つの孔8の中心を線で結んで三角形を描くとともに、当該三角形の内側の面積を全体面積、当該三角形と孔8とが重なる部分の面積を孔面積と定義したとき、全体面積に対する孔面積の比を開口率Rと定義する。
【0053】
開口率Rが5%未満に低下すると、孔8の縁長さの総和量が小さくなり、カエリを付与しても浄化性能を十分に向上させることができない。開口率Rが70%を超過すると、ハニカム体4の剛性が下がり、平箔2及び波箔3の亀裂、破断により触媒コンバータ1が早期に使用できなくなるおそれがある。
【0054】
(変形例)
本発明の変形例について説明する。本変形例の触媒コンバータ1には、カエリ2A、3Aの中に絞り形状部を有しないカエリが含まれている。本変形例では、便宜上、絞り形状部を有するカエリ(つまり、
図4に図示するカエリ)をカエリV1と称し、絞り形状部を有しないカエリ(つまり、
図9に図示するカエリ)をカエリV2と称するものとする。本発明者等は、ロールプレスの圧が高まるとカエリV1が相対的に減少し、カエリV2が相対的に増大することを確認した。カエリV1及びV2が混在する触媒コンバータ1であっても、所定の数値条件を満足することにより、火種効果等第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
所定の数値条件は第1実施形態で説明しているが、重ねて説明すると、1.1mm≦D≦4.0mm、5%≦R≦70%、0.1μm≦L≦30μmである。
【0056】
図9は、カエリV2の写真である。同図を参照して、カエリV2は、先端面がカエリの突出方向に対して直交する方向に延在している点でカエリV1と共通し、絞り形状部50を有しない点でカエリV1と相違する。これは、油圧機構106の油圧を高めた状態で、針状のカエリを形状調整装置100でプレスすると、カエリV1のような括れが最初に形成され、更に圧が高まると括れが潰れて
図9に示すような絞り形状部50のない階段状のカエリが形成されたものと推察される。
【0057】
本実施形態のようにカエリV1及びV2が混在している場合には、これらを区別することなくカエリ高さを求め、平均カエリ高さLを算出するとよい。
【0058】
(変形例)
本発明の変形例について説明する。本変形例の触媒コンバータ1には、カエリ2A、3Aの中に絞り形状部を有しないカエリが含まれている。本変形例では、便宜上、絞り形状部を有するカエリ(つまり、
図4に図示するカエリ)をカエリV1と称し、絞り形状部を有しないカエリ(つまり、
図9に図示するカエリ)をカエリV2と称するものとする。本発明者等は、ロールプレスの圧が高まるとカエリV1が相対的に減少し、カエリV2が相対的に増大することを確認した。カエリV1及びV2が混在する触媒コンバータ1であっても、所定の数値条件を満足することにより、火種効果等第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
所定の数値条件は第1実施形態で説明しているが、重ねて説明すると、1.1mm≦D≦4.0mm、5%≦R≦70%、0.1μm≦L≦30μmである。
【0060】
図9は、カエリV2の写真である。同図を参照して、カエリV2は、先端面がカエリの突出方向に対して直交する方向に延在している点でカエリV1と共通し、絞り形状部50を有しない点でカエリV1と相違する。これは、油圧機構106の油圧を高めた状態で、針状のカエリを形状調整装置100でプレスすると、カエリV1のような括れが最初に形成され、更に圧が高まると括れが潰れて
図9に示すような絞り形状部50のない階段状のカエリが形成されたものと推察される。
【0061】
本実施形態のようにカエリV1及びV2が混在している場合には、これらを区別することなくカエリ高さを求め、平均カエリ高さLを算出するとよい。
【0062】
(第2実施形態)
図10を参照しながら、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、
図2に対応しており、ハニカム体の一部における断面図である。第1実施形態と機能が共通する構成要素には、同一符号を付している。本実施形態のカエリ2A、3Aは、形状調整工程を実施せずに、カエリ2Aの平均高さLを0.1μm以上、30μm以下に設定している。
具体的には、パンチングプレスの抜き速度を増速することにより、カエリ2Aの高さが抑えられ、カエリ2Aの平均高さLを0.1μm以上30μm以下に抑えることができる。パンチングプレスの抜き速度は、好ましくは100mm/sec以上である。
【0063】
したがって、本実施形態のカエリ2Aは、先端が鋭利(つまり、先端が針状)な一般的なカエリの形状を呈しており、先端面がカエリの突出方向に対して直交する方向に延在する第1実施形態のカエリとは形状が異なる。その他の構成は、第1実施形態で同様であるため詳細な説明を省略するが、要約すると下記の通りである。
【0064】
平箔2及び波箔3を構成する金属箔の板厚及び材料、触媒、外筒5は、第1実施形態と同様である。また、平箔2及び波箔3(カエリを含む)にα-アルミナを含む酸化皮膜が形成されている点も第1実施形態と同様である。
カエリ2A、3Aの平均カエリ高さLが、好ましくは0.5μm以上20μm以下である点も第1実施形態と同様である。平均カエリ高さLの測定方法も第1実施形態と同様である。
触媒層20から突出するカエリ2A、3Aの突出量が大きくなると、火種効果の低下と乱流生成が顕著となる。したがって、触媒層20の厚みを平均カエリ高さL以上に設定するか、或いは平均カエリ高さLが触媒層20よりも大きい場合には、平均カエリ高さL及び触媒層20の厚みの差分(所定量に相当する)を10μm以下に制限することが望ましい。
平均孔径Dは1.1mm以上4.0mm以下である点も第1実施形態と同様である。孔8の形状が円形に限定されない点も、第1実施形態と同様である。孔8の孔径の標準偏差σが0.001mm以上0.5mm以下となるように製造するのが好ましい点も第1実施形態と同様である。孔8の開口率Rは5%以上70%以下であり、好ましくは20%以上70%以下である点も、第1実施形態と同様である。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のカエリ2A、3Aを備えることにより、第1実施形態と同質の効果を得ることができる。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
本実施例では、平均カエリ高さLを種々変更して、浄化性能、触媒劣化及び圧損性能を評価した。表1はその評価結果である。浄化性能は、T80℃(言い換えると、エイジング前のT80℃)により評価した。T80℃とは、CO転化率-温度曲線に基づき算出されるCO転化率(%)が80%に達した時の温度である。CO転化率-温度曲線は、SV(空間速度):100,000h-1にて模擬ガスを触媒コンバータに流し、ヒーターを用いて模擬ガスを常温から徐々に加熱し、各温度におけるCO転化率(%)を測定することによって取得した。THC(プロパン、C3H6):550ppm(1650ppmC)、NO:500ppm、CO:0.5%、O2:1.5%、H2O:10%、N2:バランスガスを用いて、ディーゼル排ガスを模擬した。T80℃が低いほど、触媒担体の浄化性能は高いと評価することができる。
【0067】
触媒劣化は、「エイジング後のT80℃」と「エイジング前のT80℃」との差分に基づき評価した。加熱温度:980℃,加熱時間:20hourの加熱条件にて触媒コンバータを加熱し、常温まで冷却した後、既述の方法でT80℃を測定することにより「エイジング後のT80℃」を求めた。前記の差分が小さいほど、触媒劣化が低いと評価することができる。
【0068】
圧損性能は、25℃の乾燥したN2ガスを流量0.12Nm3/minで流して、触媒コンバータ前後の圧力差を測定することにより評価した。
【0069】
波箔及び平箔に用いられる金属箔として、Cr:20質量%、Al:5質量%、残部がFe及び不可避的不純物からなるフェライト系ステンレスを使用した。金属箔の板厚は30μmとした。パンチングプレスを使用して、ハニカム体の端部(入側、出側端面からそれぞれ5mmの範囲)を除いた領域に孔を形成した。形状調整装置による高さ調整は行わずに、パンチングプレスの抜き速度を調整することにより、平均カエリ高さLを制御した。平均カエリ高さLは、
図6を参照しながら説明した実施形態記載の方法によって測定した(後述する他の実施例も同様である)。
【0070】
金属箔における孔を空けた領域を金属箔の箔厚方向から撮像し、孔の輪郭をデータ化した後、コンピュータ処理により孔径を円換算により求めた。開口率Rは、上述の実施形態に記載した方法により求めた。
【0071】
上述の処理によって得られた金属箔をコルゲート加工により波箔とした後、適宜の位置にろう材が塗布された波箔と平箔とを重ね合わせて巻き回し、加熱処理(ろう付け処理)を施すことによってハニカム体を製造した。ハニカム体の直径は35mm、軸方向長さは80mmとした。セル密度は400cpsiとした。製造したハニカム体を外筒に装入し、ろう付け処理により固定することにより触媒コンバータとした。触媒コンバータの直径は38mm、軸方向長さは80mmとした。
【0072】
セリア―ジルコニア―ランタナ-アルミナを主成分とし、100gあたりパラジウムを1.25g含有するウォッシュコート液をハニカム体に通液させ、余分なウォッシュコート液を除去した後、180℃で1時間乾燥し、続いて500℃で2時間焼成することにより、厚さ20μmの触媒層を形成した。なお、触媒によって孔が閉塞されないように、ウォッシュコート液の粘度を適宜調整して使用した。
【0073】
No.3~10については、触媒層を形成する前にハニカム体を熱処理して、酸化皮膜を形成した。熱処理の条件は、加熱温度:900℃、加熱時間:2hourとした。
【表1】
No.1、No.3はカエリがなく、浄化性能(T80℃)が低くなった。No.2はカエリによって浄化性能(T80℃)は高くなったが、酸化皮膜がないため触媒劣化が著しく大きくなった。No.4~No.9は、カエリによって浄化性能(T80℃)が高くなり、触媒劣化も低く抑えることができた。また、圧力損失も低い値に維持することができた。No.10は、触媒層からカエリが大きく突出して(20μm触媒層から突出)、乱流が生成され圧力損失が増大するとともに、火種効果の低下により浄化性能(T80℃)が悪化した。
【0074】
(実施例2)
酸化皮膜の厚みやα-アルミナの含有量を種々変更して、浄化性能(T80℃)、触媒劣化及び圧損性能を評価した。酸化皮膜を形成する際の熱処理条件を加熱温度:1000℃~1100℃、加熱時間:5min~20hourの範囲で調整することにより、酸化皮膜の厚みやα-アルミナの含有量を調整した。実施例1と同様に、形状調整装置による高さ調整は行わずに、パンチングプレスの抜き速度を調整することにより、平均カエリ高さLを5μmに統一した。金属箔の箔厚は、40μmとした。ハニカム体の直径は40mm、軸方向長さは60mmとした。セル密度は400cpsiとした。製造したハニカム体を外筒に装入し、ろう付け処理により固定することにより触媒コンバータとした。触媒コンバータの直径は43mm、軸方向長さは60mmとした。孔径、開口率についてはそれぞれ2mm及び50%に統一した。その他の条件は、実施例1と同様にした。
【表2】
No.12では酸化皮膜の厚みが0.03μmしか得られなかったため、触媒劣化が大きくなった。No.18では酸化皮膜の厚みが2.0μmを超過したため、箔欠けが生じてエイジング後のT80℃を評価できなかった。No.19では酸化皮膜に含まれるα-アルミナが僅か5質量%であったため、触媒劣化が大きくなった。本実施例から、α-アルミナを少なくとも10質量%含む酸化皮膜を0.05μm以上2μm以下形成することによって、触媒劣化を効果的に抑制できることがわかった。
【0075】
(実施例3)
本実施例では、平均孔径D及び開口率Rを種々変化させたときの浄化性能(T80℃)、圧損性能及び触媒劣化を評価した。実施例1と同様に、形状調整装置による高さ調整は行わずに、パンチングプレスの抜き速度を調整することにより、平均カエリ高さLを8μmに統一した。金属箔の箔厚は、50μmとした。ハニカム体の直径は51mm、軸方向長さは120mmとした。セル密度は300cpsiとした。製造したハニカム体を外筒に装入し、ろう付け処理により固定することにより触媒コンバータとした。触媒コンバータの直径は54mm、軸方向長さは120mmとした。
【表3】
No.24~30を参照して、カエリを付与することによって平均孔径Dが小さくても、所望の浄化性能(T80℃)を確保できることがわかった。No.31は、平均孔径Dが過度に大きく、カエリの合計長さが短くなったため、浄化性能(T80℃)を向上させることができなかった。No.32では、開口率が過度に小さく、カエリの合計長さが短くなったため、浄化性能を向上させることができなかった。No.41では、開口率が70%を超過したため、エイジング後に金属箔に箔欠けが確認されたため、触媒劣化については評価しなかった。
【0076】
(実施例4)
本実施例は、形状調整装置により平均カエリ高さLを調整した点を除いて、実施例1と同様の条件で試験を行った。なお、No.45~46については、3割ほどにカエリV2が観察されたが、他の絞りのあるカエリV1であった。No.46~51については、絞りのあるカエリV1が支配的であった。
【表4】
No.42、No.44はカエリがなく、浄化性能(T80℃)が低くなった。No.43はカエリによって浄化性能(T80℃)は高くなったが、酸化皮膜がないため触媒劣化が著しく高くなった。No.45~No.50は、カエリによって浄化性能(T80℃)が高くなり、触媒劣化も低く抑えることができた。また、圧力損失も低い値に維持することができた。No.51は、触媒層からカエリが大きく突出して(20μm触媒層から突出)、乱流が生成され圧力損失が増大するとともに、火種効果の低下により浄化性能(T80℃)が悪化した。
【0077】
(実施例5)
本実施例は、形状調整装置により平均カエリ高さLを調整した点を除いて、実施例2と同様の条件で試験を行った。
【表5】
No.53では酸化皮膜の厚みが0.03μmしか得られなかったため、触媒劣化が大きくなった。No.59では酸化皮膜の厚みが2.0μmを超過したため、箔欠けが生じてエイジング後のT80℃を評価できなかった。α-アルミナを少なくとも10質量%含む酸化皮膜を0.05μm以上2μm以下形成することによって、浄化性能が高くなり、圧力損失及び触媒劣化を小さくできることがわかった。
【0078】
(実施例6)
本実施例は、形状調整装置により平均カエリ高さLを調整した点を除いて、実施例3と同様の条件で試験を行った。
【表6】
No.65~71を参照して、カエリを付与することによって平均孔径Dが小さくても、所望の浄化性能(T80℃)を確保できることがわかった。No.72は、平均孔径Dが過度に大きく、カエリの合計長さが短くなったため、浄化性能(T80℃)を向上させることができなかった。No.73では、開口率が過度に小さく、カエリの合計長さが短くなったため、浄化性能(T80℃)を向上させることができなかった。No.82では、開口率が70%を超過したため、エイジング後に金属箔に箔欠けが確認されたため、触媒劣化については評価しなかった。
【符号の説明】
【0079】
1 触媒コンバータ
2 平箔
3 波箔
4 ハニカム体
【要約】
【課題】触媒コンバータの浄化性能の向上及び触媒劣化の抑制を両立する。
【解決手段】 金属平箔と金属波箔とが交互に積層されたハニカム型メタル担体であって、前記金属平箔及び前記金属波箔には孔が複数形成されるとともに、各孔の縁には小高のカエリが形成されており、前記金属平箔及び前記金属波箔のうち少なくとも前記カエリの表面はα-アルミナを含む酸化皮膜によって覆われており、前記複数の孔の平均孔径をD、開孔率をR、カエリの平均高さをLとしたとき、0.2mm≦D≦4.0mm、5%≦R≦70%、0.1μm≦L≦30μmを満足する。
【選択図】
図2