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特許7033906タラコ含有食品及びタラコ含有食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】タラコ含有食品及びタラコ含有食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/30 20160101AFI20220304BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20220304BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220304BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220304BHJP
【FI】
A23L17/30 Z
A23L23/00
A23L17/00 A
A23L27/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017244863
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019110775
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】笹原 祥吾
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-284535(JP,A)
【文献】特開2004-290065(JP,A)
【文献】特開2011-155931(JP,A)
【文献】特開昭57-152868(JP,A)
【文献】特開平03-035776(JP,A)
【文献】特開2015-156816(JP,A)
【文献】特許第6426321(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00-17/00
A23L 17/10-17/50
A23L 23/00-25/10
A23L 27/00-27/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タラコ粒と、
ペースト状のタラコ外皮と、
油脂と、
を含み、
前記ペースト状のタラコ外皮は、前記タラコ粒に対して0.8質量%~23.2質量%含まれる
タラコ含有食品。
【請求項2】
ソース又は調味料である、
請求項1に記載のタラコ含有食品。
【請求項3】
前記タラコ外皮は、目開き4mmの篩を通過可能に細分化される、
請求項1又は2に記載のタラコ含有食品。
【請求項4】
タラコからタラコ外皮を分離するステップと、
分離された前記タラコ外皮をペースト化するステップと、
少なくとも、ペースト化されたタラコ外皮、タラコ粒、及び油脂を混ぜ合わせるステップと、
を含み、
前記混ぜ合わせるステップにおいて、前記ペースト状のタラコ外皮は、前記タラコ粒に対して0.8質量%~23.2質量%含まれる
タラコ含有食品の製造方法。
【請求項5】
前記タラコ外皮をペースト化するステップにおいて、前記タラコ外皮を、目開き4mmの篩を通過可能に細分化する、
請求項に記載のタラコ含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タラコ含有食品及びタラコ含有食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タラコの魚卵粒を含有させたパスタソースやマヨネーズ調味料等の食品が提供されている。タラコ含有食品は、パスタ麺、その他の食品・食材に和えて混合されるものが一般的であり、混合された後、上記他の食品等に対してタラコ魚卵粒の食感(以下、この食感を「粒々感」と言う。)やタラコから醸し出される香りや味わい(以下、これを「タラコ風味」と言う。)を付加する。ここで、タラコは、スケトウダラやマダラの卵巣(魚卵)であり、いわゆるバラコと呼ばれる魚卵粒部分(以下、「タラコ粒」と言う。)と、魚卵粒を被覆する卵巣外皮(卵巣膜)部分(以下、「タラコ外皮」と言う。)と、を含む。
【0003】
このようなタラコ含有食品において、粒々感やタラコ風味を向上させるための開発が多くなされている。これまで、粒々感やタラコ風味の向上を図るために、タラコ含有食品中のタラコ粒の割合を増やすことが行われていた。しかしながら、この手法によると、タラコ含有食品中の油脂の割合が相対的に低下してしまう。それに伴い、タラコ含有食品を内包するパウチ等の包装体から、タラコ含有食品を押し出して取り出す際、油脂の割合が少ない分、タラコ粒に対して過度に押圧力が加わり、タラコ粒を潰してしまうという不具合が生じていた。それによって、タラコ含有食品が食される際、本来得られるはずの粒々感やタラコ風味が減少するという課題があった。
【0004】
上記とは異なる手法により、タラコ含有食品の粒々感やタラコ風味の向上を図る技術として、下記の特許文献に記載の技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、魚卵粒(タラコ粒)と、魚卵を磨り潰したもの(タラコペースト)と、油脂と、を所定量配合させた魚卵粒入りソース類に関する。特許文献1に記載の技術によれば、タラコ粒、タラコペースト、油脂の適切な配合に基づき、タラコ粒がソース中に好適に分散され、かつタラコ粒特有の風味と粒々感を有する魚卵粒入りソース類を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3798329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、タラコ含有食品中のタラコペーストの割合を増やすことでタラコ風味を向上させることから、相対的にタラコ粒の割合が大きく低下する。従って、タラコ含有食品における、タラコ風味の向上と粒々感の向上とが相反する関係となっており、粒々感を保ったままタラコ風味を向上させることができない。また、タラコペーストの原料は、主にタラコ粒であるところ、タラコペーストの使用に伴い、より多くのタラコ粒を用いなければならない。すなわち、従来のタラコペーストを含まないタラコ含有食品に比べて、原料コストが増加し得るという課題を有する。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、粒々感を損なうことなく、且つ従来のタラコ含有食品に比べて大幅にタラコ風味を向上させることが可能なタラコ含有食品の提供を目的とする。
【0008】
これまで、タラコのタラコ外皮部分は、一定の形態を保ちにくい薄膜であることに加えて、ヌルヌルとした表面状態や弾力等の独特の特性によって、細かく均一に切り刻む(磨り潰す)ことが難しかった。すなわち、タラコ外皮をペースト化するなど、所望の加工を施すことが困難であった。従って、仮にタラコ外皮をタラコ含有食品に含ませようとしても、大きさがバラバラで不均一な状態でしかタラコ外皮を混合することができなかった。また、ある程度タラコ外皮を細分化しなければ、タラコ外皮をタラコ含有食品に含ませたとしても、口当たりや食感がよくない。
【0009】
そのような観点から、タラコ含有食品の製造工程において、タラコ外皮がタラコから取り除かれ、残ったタラコ粒のみがタラコ含有食品に使用されていた。これに対して、取り除かれたタラコ外皮は、他の食品等に利用されることなく、廃棄されることが一般であった。
【0010】
しかしながら、近年、タラコ外皮を含む魚卵卵巣膜(卵巣外皮)成分として、人体に好ましい栄養素が含まれていることが次々判明している。それに加え、食品製造において、タラコ等の卵巣外皮が利用価値の高いものであるにも関わらず無駄になっていることが環境面からも問題視されている。一般に廃棄される卵巣外皮は、焼却処分されることがほとんどであるが、焼却ガスや焼却処理物が環境汚染の一因であるとの指摘もある。このような点に鑑み、タラコ外皮を初めとする魚卵の卵巣外皮に関しても、食品成分として十分に活用することが検討されている。
【0011】
後述するように、本発明に係るタラコ含有食品は、タラコ外皮を含む。従って、前述の粒々感及びタラコ風味の向上に加えて、従来のタラコ含有食品に比べて、人体にとって好影響に作用する栄養素を多分に含み、且つタラコ外皮に関する上記諸問題の解決にも資する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明に係るタラコ含有食品は、
タラコ粒と、ペースト状のタラコ外皮と、油脂と、を含み、前記ペースト状のタラコ外皮は、前記タラコ粒に対して0.8質量%~23.2質量%含まれることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るタラコ含有食品は、ソース又は調味料であることが好ましい。更に、本発明に係るタラコ含有食品は、前記タラコ外皮が、目開き4mmの篩を通過可能に細分化されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るタラコ含有食品の製造方法は、
タラコからタラコ外皮を分離するステップと、
分離された前記タラコ外皮をペースト化するステップと、
少なくとも、ペースト化されたタラコ外皮、タラコ粒、及び油脂を混ぜ合わせるステップと、
を含み、
前記混ぜ合わせるステップにおいて、前記ペースト状のタラコ外皮は、前記タラコ粒に対して0.8質量%~23.2質量%含まれることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明に係るタラコ含有食品の製造方法は、
前記混ぜ合わせるステップにおいて、前記タラコ外皮をペースト化するステップにおいて、前記タラコ外皮を、目開き4mmの篩を通過可能に細分化することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ペースト状のタラコ外皮を含むため、タラコ含有食品の粒々感を損なうことなくタラコ風味の向上を図ることが可能であることに加え、従来のタラコ含有食品に比べて、人体に好影響な栄養素を多分に含み、且つタラコ外皮に関する上記問題の解決にも資するタラコ含有食品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係るタラコ含有食品およびその製造方法の詳細について、以下説明する。ここで、後述の本実施形態に係るタラコ含有食品は、パスタソースに代表されるソースや、マヨネーズに代表される調味料であることが好ましいが、それに限られない。
【0018】
[タラコ含有食品]
初めに、本実施形態に係るタラコ含有食品の詳細を説明する。本実施形態に係るタラコ含有食品は、タラコ粒と、ペースト状のタラコ外皮と、油脂と、を含む。また、本実施形態に係るタラコ含有食品は、調味料等の他の原料を更に含むものであってよい。本実施形態に係るタラコ含有食品に含まれる各原料は、撹拌等の手段によって均一に混合されることが好ましい。
【0019】
タラコ粒は、いわゆるバラコと呼ばれるタラコの魚卵粒部分であり、卵巣外皮(タラコ外皮)部分を有さず、各魚卵粒がばらけた状態にあるものである。タラコ粒は、タラコ外皮に包まれた状態で塩漬けにされることが一般であるが、これに限定されるものではない。また、タラコ外皮と切離されたタラコ粒は、未乾燥状態など特段の処理が施されないものであってもよいし、乾燥、炙り等、各種処理が施されたものであってもよい。
【0020】
タラコ外皮(タラコの卵巣膜部分)は、タラコ含有食品内での均一混合の観点から、ペースト化される。ペースト化されたタラコ外皮の諸特性に関しては、特に限定されるものではないが、目開き4mmの篩を通過可能に細分化することが、均一混合の観点に加え、これを含むタラコ含有食品の食感、見た目、タラコ風味向上の観点から望ましい。
【0021】
また、後述の実施例に示されるように、タラコ外皮ペーストをタラコ含有食品に混合させることで、食品全体のタラコ風味を大幅に向上させることができる。更に、後述の実施例に示されるように、極めて微量のタラコ外皮ペーストを含むものであっても、タラコ風味が著しく向上することが判明した。従って、相対的にタラコ粒や油脂の割合をほとんど低下させることなく、タラコ風味を向上させるため、粒々感が犠牲にされることがない。粒々感を損なわず、且つタラコ風味を向上させる点で、タラコ外皮は、タラコ粒に対して、0.5質量%以上であることが好ましい。また、タラコ外皮は、タラコ粒に対して、0.5質量%~25質量%であることがより好ましい。更に、タラコ外皮は、タラコ粒に対して、2.5質量%~6.0質量%であることが、より好ましい。
【0022】
ここで、タラコ粒の魚種とタラコ外皮の魚種は、同種であってもよいし、異種であってもよい。同種の例として、タラコ粒及びタラコ外皮の夫々が、スケトウダラ又はマダラから得られる場合が挙げられる。また、異種の例として、タラコ粒はスケトウダラから得ると共に、タラコ外皮はマダラから得る場合が挙げられる。若しくはその逆の場合が挙げられる。
【0023】
ただし、マダラ由来のタラコ外皮は、黒ずんだ色を呈する。そのため、見た目の点において、マダラ由来のタラコ外皮を選択することが避けられる傾向にある。その点を考慮すれば、上記の例において、少なくともタラコ外皮の魚種として、スケトウダラが選択されてもよい。これに対して、マダラは、スケトウダラに比べて安価であるため、原料コストの点を考慮すれば、タラコ含有食品の半分以上を占め得るタラコ粒の魚種として、マダラが選択されてもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0024】
上記では、タラコ粒とタラコ外皮とが、単一の魚種より得られる場合を例示したが、タラコ粒は、スケトウダラ及びマダラの夫々から得られたタラコ粒の混合物であってもよい。同様に、タラコ外皮は、スケトウダラ及びマダラの夫々から得られたタラコ外皮の混合物であってもよい。その他のバリエーションとして、タラコ粒が、スケトウダラ及びマダラの混合物であり、タラコ外皮が、スケトウダラ又はマダラの一方から得られるようにしてもよい(その逆に、タラコ粒が、スケトウダラ又はマダラの一方から得られ、タラコ外皮が、スケトウダラ及びマダラの混合物であってもよい。)。ただし、上記に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態における油脂は、特に限定されるものではない。ただし、常温で相応の流動性を有すると共に、例えば、タラコ含有食品がパウチ等の包装体から取り出される際であっても、混合されるタラコ粒を潰さない程度の弾力を備え得る点で、常温で半固形状(例えば、常温でクリーム状となるような、半固形油脂)のものが好ましい。半固形油脂として、ショートニングが好ましいが、これに限定されるものではない。その他の半固形油脂として、マーガリン、ファットスプレッド、モーラバター、コクム油脂、サル油脂、マンゴー核油脂等が挙げられる。これらの油脂の一種を用いてもよいし、複数種を用いてもよい。更に、半固形油脂に液体油脂を混合させてもよい。
【0026】
なお、主に固形油脂が用いられる場合、タラコ含有食品が喫食される際、喫食者の口内においても、油脂内にタラコ粒が埋没した状態が継続してしまう。そのため、タラコ粒の粒形状は保持されているにも関わらず、油脂の食感が主となってしまう。すなわち、この場合、油脂が固形であるが故に、タラコ粒の粒々感が失われてしまう。また、主に液体油脂が用いられる場合、タラコ含有食品の包装体内で油脂が沈殿し、原料の均一混合が損なわれる。そのため、包装体から取り出されたタラコ含有食品が、例えばパスタ等の食品に混ざりにくい状態が形成されてしまう。半固形油脂が用いられる場合、前述の不具合は生じない(又は生じにくい)。そのような観点から、本実施形態のタラコ含有食品に用いられる油脂は、半固形油脂であることが好ましい。
【0027】
油脂の含有量は、タラコ粒及びタラコ外皮の均一混合に資すると共に、タラコ含有食品がパウチ等の包装体から取り出される際にタラコ粒を潰さないものであれば、特に限定されるものではない。ただし、タラコ粒を潰さず、且つタラコ風味と粒々感を損なわないことの全てを満たすために、油脂の含有量は、タラコ含有食品全体の質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましい。また、油脂の含有量は、25質量%~40質量%であることが、より好ましい。
【0028】
本実施形態に係るその他の原料として、調味料、添加物(着色料)、水分を含んでもよい。ここで、その他の原料として、砂糖、食塩、酢、各種アミノ酸、各種ペプチド、各種エキス、各種香辛料、バター、生クリームが例示される。前述のその他の原料は、これらの一種又は複数種が適宜配合されたものであることが好ましい。また、本実施形態に係るタラコ含有食品は、前記されていない原料を含むものであってもよい。
【0029】
[タラコ含有食品の製造方法]
次に、本実施形態に係るタラコ含有食品の製造方法の詳細を説明する。具体的には、まず、例えば所定条件で塩漬けにされたタラコから、タラコ外皮を分離する。この段階で、一度タラコ粒が、タラコ外皮から切り離される。
【0030】
次に、分離されたタラコ外皮を所定の大きさになるまで切り刻む及び/又は磨り潰すことにより、これをペースト化する。タラコ外皮を切り刻む又は磨り潰す手段は、任意である。機械的手段によってタラコ外皮を切り刻む又は磨り潰してもよいし、酵素等の分解促進剤を添加するような化学的手段を施した後、機械的手段によってタラコ外皮を切り刻む又は磨り潰してもよい。
【0031】
ここで、ペースト化する際、タラコ外皮に水分や各種添加物をまぶしてもよいが、原料自体から奏されるタラコ風味をより多く残存させるよう、本実施形態の前記ペースト化ステップにおいて、タラコ外皮のみから前記ペーストを得ることが好ましい。
【0032】
前述のように、ペースト化されたタラコ外皮に関する諸特性は特に限定されるものではないが、少なくとも目開き4mmの篩を通過可能となるまで、タラコ外皮を細分化することが、タラコ含有食品にタラコ外皮を均一に混合させる点に加え、これを含むタラコ含有食品の食感、見た目、タラコ風味向上の点で好ましい。また、タラコ外皮は、目開き2mmの篩を通過可能に細分化されることがより好ましく、更に、目開き850μmの篩を通過可能に細分化されることがより好ましい。このように、タラコ外皮が細分化されることで、見た目のペースト感を損なわず、且つタラコ外皮由来の食感の違和感を無くす(又はこれが感じられない程度に少なくする)ことができる。更には、タラコ外皮が細分化されることで、十分なタラコ風味を提供することができる。
【0033】
次に、ペースト化されたタラコ外皮、タラコ粒、油脂を混ぜ合わせる。更に、これらの原料に加えて、調味料、添加物(着色料)、水分等、その他の原料を混ぜ合わせることが好ましい。上記各種原料の混合手段は、均一混合可能なものであれば特に限定されるものではない。混合手段として、例えばフードプロセッサやビーター等の撹拌手段等が挙げられる。
【0034】
最後に、上記各原料の混合物を、パウチ等の包装体に充填する。これにより、タラコ含有食品の製造が完了する。なお、前述のタラコ含有食品の製造方法において、タラコや他の原料に対する滅菌処理や加熱処理等に関するステップを示していないが、これらのステップを適宜含ませるようにしてもよいことはもちろんである。
【実施例
【0035】
以上説明したタラコ含有食品及びタラコ含有食品の製造方法において、具体的な実施の例とそれについてのタラコ風味等の評価結果を以下に示す。以下述べる実施例は、パスタソースとして用いるタラコ含有食品に関する(タラコ粒及びタラコ外皮は、スケトウダラから得た。)。なお、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0036】
[タラコ外皮含有率(タラコ粒に対するタラコ外皮ペーストの質量%)の変化]
表1は、異なるタラコ外皮含有率におけるタラコ風味の違いを示すものである。より詳しくは、表1は、実施例1から実施例9(タラコ外皮ペーストを含むタラコ含有食品の試料)及び比較例1(タラコ外皮ペーストを含まないタラコ含有食品の試料、すなわち、通常のタラコ含有食品)の試料で用いられた各原料の分量(単位は「質量%」)、タラコ粒に対するタラコ外皮ペーストの含有率(単位は「質量%」、以下「タラコ外皮含有率」という。)、並びに各試料のタラコ風味に関する評価点を示す。なお、表1に示される、いずれの実施例及び比較例の全体量は、全て同じである。また、以下の実施例に含まれるタラコ外皮ペーストは、別途水分や他の添加物を加えずに作製したものである。
【0037】
ここで、表1におけるタラコ風味を示す評価点は、下記の基準に基づいた6名の各パネラーによる評価点の平均値である。
評価基準は、下記の通りである。
(1-1)タラコ風味が非常に強く感じられた:5点
(1-2)タラコ外皮ペーストを含んでいないタラコ含有食品に比べてタラコ風味が向上したが、それが強く感じられる程度ではなかった:4点
(1-3)タラコ外皮ペーストを含んでいないタラコ含有食品と同程度にタラコ風味を感じた:3点
(1-4)タラコ風味が感じられたが、タラコ外皮ペーストを含んでいないタラコ含有食品に比べて減少した:2点
(1-5)タラコ風味が感じられなかった:1点
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるように、タラコ外皮含有率が0.4%の試料(実施例1)におけるタラコ風味は、タラコ外皮含有率が0%の試料(比較例1)とほぼ同程度であったが、タラコ外皮含有率が0.8%の試料(実施例2)におけるタラコ風味は、比較例1のそれに比べて向上した。その後、タラコ外皮含有率を増やすことで、タラコ風味が更に向上し、タラコ外皮含有率が、3.9%の試料(実施例5)及び5.9%の試料(実施例6)におけるタラコ風味が、最も向上した(タラコ外皮含有率が、2.4%の試料(実施例4)は、実施例5、実施例6のタラコ風味に比べて、0.1点低い評価点である。しかしながら、これを誤差範囲と見れば、実施例4のタラコ風味は、実施例5及び実施例6のそれと同じであると評価してもよい。)。これに対して、それ以上にタラコ外皮含有率を増やした試料(実施例7、実施例8、実施例9)において、タラコ風味が減少した。なお、いずれの実施例においても、タラコの粒々感は維持されていた。
【0040】
この結果から、たとえ微量であったとしてもタラコ外皮ペーストを含むことで、タラコ含有食品におけるタラコ風味の向上が示された。表1に示されるように、タラコ由来原料(タラコ粒及びタラコ外皮ペースト)の合計量は、いずれの実施例及び比較例の試料で全て同じである。それにも関わらず、実施例1を除く全ての実施例で、タラコ風味が比較例1より向上した。このことから、タラコ外皮ペーストは、それと等量のタラコ粒に比べて、タラコ風味向上に寄与することが示された。
【0041】
[タラコ外皮ペーストの細分度の変化]
次に、表2は、異なる細分度(タラコ外皮の細分化の度合い)のタラコ外皮ペーストを含む試料に用いられた各原料の分量(単位:質量%)、及び各試料におけるタラコ含有食品の食感、見た目、タラコ風味の各々の評価点を示すものである。ここで、表2に示される実施例10の試料が、最も粗いタラコ外皮を含み、実施例の番号が増える程、タラコ外皮が細分化されていく。なお、表2に示されるいずれの実施例の全体量は、全て同じである。
【0042】
タラコ含有食品の食感、見た目、タラコ風味を示す点数は、下記の基準に基づいた6名の各パネラーによる評価点の平均値である。
【0043】
まず、タラコ含有食品の食感に関する評価基準は、下記の通りである。
(2-1)喫食時・喫食後共に、通常のタラコ含有食品と同程度の食感であった:3点
(2-2)喫食時の違和感はほとんどなかったが、喫食後の口残りが気になった:2点
(2-3)喫食時の違和感があった:1点
【0044】
次に、タラコ含有食品の見た目に関する評価基準は、下記の通りである。
(3-1)喫食時・喫食後共に、通常のタラコ含有食品と同程度の見た目であった:3点
(3-2)見た目が悪かった:2点
(3-3)見たときに違和感があった:1点
【0045】
次に、タラコ風味に関する評価基準は、下記の通りである。
(4-1)タラコ風味が十分発揮されていた:3点
(4-2)タラコ風味を感じにくかった:2点
(4-3)タラコ風味が感じられなかった:1点
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、表2に記載の目開きに関する標識は、下記を意味する。
(5-1)目開き5.6mmオン:目開き5.6mmの篩を通過できなかったタラコ外皮ペースト。
(5-2)目開き4mmオン:目開き5.6mmの篩を通過したタラコ外皮ペーストであるが、目開き4mmの篩を通過できなかったタラコ外皮ペースト。
(5-3)目開き2.36mmオン:目開き4mmの篩を通過したタラコ外皮ペーストであるが、目開き2.36mmの篩を通過できなかったタラコ外皮ペースト。
(5-4)目開き850μmオン:目開き2.36mmの篩を通過したタラコ外皮ペーストであるが、目開き850μmの篩を通過できなかったタラコ外皮ペースト。
(5-5)目開き850μmパス:目開き850μmの篩を通過したタラコ外皮ペースト。
なお、上記目開きは、日本工業規格 JIS Z8801-1に基づき規定される篩網の公称目開きである。
【0048】
表2に示されるように、より細かいタラコ外皮ペーストを含むタラコ含有食品ほど、食感及び見た目において高い評価が得られることが示された。特に、実施例12に係る試料(目開き4mmの篩を通過したタラコ外皮ペーストであるが、目開き2.36mmの篩を通過できなかったタラコ外皮ペーストを含むタラコ含有食品)における食感・見た目の評価が、それより粗いタラコ外皮ペーストを含む試料(実施例10、実施例11)に比べて大幅に向上した。更に細かいタラコ外皮ペーストを含む試料(実施例13、実施例14)における食感・見た目の評価が、実施例12の試料より向上した。更に、実施例13、実施例14に係る試料において、食感・見た目に加えて、タラコ風味の評価も向上した。
【0049】
これらの結果から、タラコ外皮ペーストが細分化される程、タラコ含有食品の食感、見た目、タラコ風味の評価が向上することが示された。すなわち、タラコ外皮ペーストが細分化される程、味に加えて、視覚的な印象や食べやすさの点も向上し、より消費者に好まれるタラコ含有食品を提供可能であることが示された。