(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20220304BHJP
【FI】
A61B6/02 301H
(21)【出願番号】P 2018005702
(22)【出願日】2018-01-17
【審査請求日】2020-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 航
【審査官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-154647(JP,A)
【文献】特表2017-510323(JP,A)
【文献】特開2013-154162(JP,A)
【文献】特表2014-534042(JP,A)
【文献】特開2017-143943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、前記放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して前記放射線検出器により前記照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得する取得部と、
スラブ画像上における注目画素について、前記放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における前記注目画素と前記第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、前記第1の高さと異なる第2の高さの断層面における前記注目画素と前記第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、
前記スラブ画像上における前記注目画素の画素値として画素値を導出し、前記第1の高さから前記第2の高さまでの範囲の前記被写体の情報を有するスラブ画像を前記複数の投影画像から生成する生成部と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記スラブ画像における前記注目画素の画素値を、前記第1の画素の画素値と、前記第2の画素の画素値とに基づいて導出し、前記注目画素の位置を異ならせて、前記スラブ画像の各画素の画素値を導出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第1の高さと前記第2の高さとの間の少なくとも一箇所の第3の高さの断層面における前記注目画素と前記第3の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第3の画素の画素値をさらに用いて、前記スラブ画像を生成する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記スラブ画像における前記注目画素の画素値を、前記第1の画素の画素値と、前記第2の画素の画素値と、前記第3の画素の画素値とに基づいて導出し、前記注目画素の位置を異ならせて、前記スラブ画像の各画素の画素値を導出する
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記複数の投影画像各々の前記第1の画素の画素値、前記複数の投影画像各々の前記第2の画素の画素値、及び前記複数の投影画像各々の前記第3の画素の画素値の平均値、最小値、最大値、及び最頻値の少なくとも1つを用いて前記スラブ画像を生成する、
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記複数の投影画像各々における前記第1の画素から前記第2の画素までに位置する画素の画素値を用い、前記スラブ画像を生成する、
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記複数の投影画像各々の前記第1の画素から前記第2の画素までに位置する画素の画素値の平均値、最小値、最大値、及び最頻値の少なくとも1つを用いて前記スラブ画像を生成する、
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記平均値、前記最小値、前記最大値、及び前記最頻値のいずれを用いるかを、前記被写体の関心物の大きさに基づいて決定する、
請求項5または請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の高さが前記高さ方向の最下部であり、前記第2の高さが前記高さ方向の最上部である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記第1の高さ及び前記第2の高さを前記高さ方向に変化させて複数の前記スラブ画像を生成し、生成した複数の前記スラブ画像を合成して2次元相当画像をさらに生成する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記複数の投影画像の各々を異なる帯域の空間周波数を表す複数の周波数画像に分解して、前記複数の周波数画像毎に異なる画像処理を行った後、前記複数の周波数画像を合成して複数の投影画像とし、合成した複数の投影画像に基づいて前記スラブ画像を生成する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、前記放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して前記放射線検出器により前記照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得し、
スラブ画像上における注目画素について、前記放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における前記注目画素と前記第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、前記第1の高さと異なる第2の高さの断層面における前記注目画素と前記第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、
前記スラブ画像上における前記注目画素の画素値として画素値を導出し、前記第1の高さから前記第2の高さまでの範囲の前記被写体の情報を有するスラブ画像を前記複数の投影画像から生成する、
処理を含む画像処理方法。
【請求項13】
コンピュータに、
放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、前記放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して前記放射線検出器により前記照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得し、
スラブ画像上における注目画素について、前記放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における前記注目画素と前記第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、前記第1の高さと異なる第2の高さの断層面における前記注目画素と前記第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する前記複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、
前記スラブ画像上における前記注目画素の画素値として
画素値を導出し、前記第1の高さから前記第2の高さまでの範囲の前記被写体の情報を有するスラブ画像を前記複数の投影画像から生成する、
処理を実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像の撮影方法として、照射角度が異なる複数の照射位置の各々から放射線を順次照射して照射位置毎に放射線検出器によって複数の投影画像を撮影する、いわゆるトモシンセシス撮影が知られている。また、トモシンセシス撮影により得られた複数の投影画像から再構成処理により断層画像を生成する技術が知られている。
【0003】
また、放射線検出器の検出面からの高さが異なる複数の断層画像を生成し、生成した複数の断層画像を合成等することにより、高さ方向のある範囲の情報を含む、いわば厚み分の情報を有するスラブ画像を生成する技術が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、例えば、高さ方向に1mmの間隔で10枚の断層画像を生成し、生成した10枚の断層画像を合成等することにより、厚さが1mmのスラブ画像を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/099924号
【文献】特開2015-159961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、スラブ画像を生成するために、まず、複数の断層画像を生成しなければならないため、生成に要する演算処理の負荷が比較的大きいという問題があった。
【0006】
本開示は、上記事情を考慮して成されたもので、スラブ画像の生成に要する演算処理の負荷を軽減することができる、画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本開示の第1の態様の画像処理装置は、放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して放射線検出器により照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得する取得部と、スラブ画像上における注目画素について、放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における注目画素と第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、第1の高さと異なる第2の高さの断層面における注目画素と第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、スラブ画像上における注目画素の画素値として画素値を導出し、第1の高さから第2の高さまでの範囲の被写体の情報を有するスラブ画像を複数の投影画像から生成する生成部と、を備えた。
本開示の第2の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、生成部は、スラブ画像における注目画素の画素値を、第1の画素の画素値と、第2の画素の画素値とに基づいて導出し、注目画素の位置を異ならせて、スラブ画像の各画素の画素値を導出する。
【0008】
本開示の第3の態様の画像処理装置は、第1の態様の画像処理装置において、生成部は、第1の高さと第2の高さとの間の少なくとも一箇所の第3の高さの断層面における注目画素と第3の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第3の画素の画素値をさらに用いて、スラブ画像を生成する。
本開示の第4の態様の画像処理装置は、第3の態様の画像処理装置において、生成部は、スラブ画像における注目画素の画素値を、第1の画素の画素値と、第2の画素の画素値と、第3の画素の画素値とに基づいて導出し、注目画素の位置を異ならせて、スラブ画像の各画素の画素値を導出する。
【0009】
本開示の第5の態様の画像処理装置は、第4の態様の画像処理装置において、生成部は、複数の投影画像各々の第1の画素の画素値、複数の投影画像各々の第2の画素の画素値、及び複数の投影画像各々の第3の画素の画素値の平均値、最小値、最大値、及び最頻値の少なくとも1つを用いてスラブ画像を生成する。
【0010】
本開示の第6の態様の画像処理装置は、第1の態様または第2の態様の画像処理装置において、生成部は、複数の投影画像各々における第1の画素から第2の画素までに位置する画素の画素値を用い、スラブ画像を生成する。
【0011】
本開示の第本開示の第7の態様の画像処理装置は、第6の態様の画像処理装置において、の態様の画像処理装置は、第本開示の第5の態様の画像処理装置は、第4の態様の画像処理装置において、の態様の画像処理装置において、生成部は、複数の投影画像各々の第1の画素から第2の画素までに位置する画素の画素値の平均値、最小値、最大値、及び最頻値の少なくとも1つを用いてスラブ画像を生成する。
【0012】
本開示の第8の態様の画像処理装置は、第5の態様または第7の態様の画像処理装置において、生成部は、平均値、最小値、最大値、及び最頻値のいずれを用いるかを、被写体の関心物の大きさに基づいて決定する。
【0013】
本開示の第9の態様の画像処理装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、第1の高さが高さ方向の最下部であり、第2の高さが高さ方向の最上部である。
【0014】
本開示の第10の態様の画像処理装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、生成部は、第1の高さ及び第2の高さを高さ方向に変化させて複数のスラブ画像を生成し、生成した複数のスラブ画像を合成して2次元相当画像をさらに生成する。
【0015】
本開示の第11の態様の画像処理装置は、第1の態様から第10の態様のいずれか1態様の画像処理装置において、 生成部は、複数の投影画像の各々を異なる帯域の空間周波数を表す複数の周波数画像に分解して、複数の周波数画像毎に異なる画像処理を行った後、複数の周波数画像を合成して複数の投影画像とし、合成した複数の投影画像に基づいてスラブ画像を生成する。
【0016】
また、上記目的を達成するために本開示の第12の態様の画像処理方法は、放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して放射線検出器により照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得し、スラブ画像上における注目画素について、放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における注目画素と第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、第1の高さと異なる第2の高さの断層面における注目画素と第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、スラブ画像上における注目画素の画素値として画素値を導出し、第1の高さから第2の高さまでの範囲の被写体の情報を有するスラブ画像を複数の投影画像から生成する、処理を含む。
【0017】
また、上記目的を達成するために本開示の第13の態様の画像処理プログラムは、コンピュータに、放射線源と放射線検出器との間に配置された被写体に対して、放射線源により異なる照射角度から放射線を照射して放射線検出器により照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得し、スラブ画像上における注目画素について、放射線検出器の検出面からの高さが第1の高さの断層面における注目画素と第1の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、第1の高さと異なる第2の高さの断層面における注目画素と第2の高さの断層面に沿った方向の位置が同一な画素に対応する複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、スラブ画像上における注目画素の画素値として画素値を導出し、第1の高さから第2の高さまでの範囲の被写体の情報を有するスラブ画像を複数の投影画像から生成する、処理を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、スラブ画像の生成に要する演算処理の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の放射線画像撮影システムの全体の構成の一例を表す構成図である。
【
図2】第1実施形態の放射線画像撮影装置によるトモシンセシス撮影を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態のコンソール及び放射線画像撮影装置の構成の一例を表すブロック図である。
【
図4】第1実施形態のコンソールにおける断層画像の生成方法の一例について説明するための図である。
【
図5】第1実施形態のコンソールにおけるスラブ画像の生成方法の一例について説明するための図である。
【
図6】第1実施形態のコンソールにおけるスラブ画像の生成方法の他の例について説明するための図である。
【
図7】第1実施形態のコンソールで実行される画像処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【
図8】第1実施形態のコンソールで実行される画像処理における2次元相当画像生成処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【
図9】
図8に示した2次元相当画像生成処理による2次元相当画像の生成方法を説明するための図である。
【
図10】第1実施形態のコンソールで実行される画像処理における2次元相当画像生成処理の他の例を表したフローチャートである。
【
図11】第2実施形態のコンソールで実行される画像処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【
図12】第2実施形態のコンソールで実行される画像処理における生成方法決定処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【
図13】第3実施形態のコンソールで実行される画像処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明を限定するものではない。
【0021】
[第1実施形態]
まず、本実施形態の放射線画像撮影システムの全体の構成の一例について説明する。
図1には、本実施形態の放射線画像撮影システム1の全体の構成の一例を表す構成図を示す。また、
図2には、本実施形態の放射線画像撮影装置10によるトモシンセシス撮影(詳細後述)を説明するための図を示す。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6及び放射線画像撮影装置10を備えている。本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール6を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された指示(撮影オーダ)に基づいて、医師や放射線技師等のユーザの操作に応じて放射線画像撮影装置10により被写体Wの放射線画像の撮影を行う。
【0023】
図3には、本実施形態のコンソール6及び放射線画像撮影装置10の構成の一例を表すブロック図を示す。以下、
図1~
図3を参照して本実施形態のコンソール6及び放射線画像撮影装置10について説明する。本実施形態のコンソール6が、本開示の画像処理装置の一例である。
【0024】
本実施形態の放射線画像撮影装置10は、被写体Wに放射線R(例えば、X線)を照射させて被写体Wの放射線画像を撮影する装置である。なお、本実施形態の放射線画像撮影装置10は、いわゆるトモシンセシス撮影(詳細後述)と、単純撮影とを行う機能を有している。
【0025】
撮影台12の内部には、被写体W及び撮影台12の撮影面14を通過した放射線Rを検出する放射線検出器20が配置されている。放射線画像撮影装置10では、放射線検出器20が検出した放射線Rに基づいて放射線画像が生成される。放射線検出器20の種類は、特に限定されず、例えば、放射線Rを光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器であってもよいし、放射線Rを直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出器であってもよい。本実施形態では、放射線画像撮影装置10の放射線検出器20から出力された放射線画像を表す画像データは、コンソール6に送信される。
【0026】
放射線画像撮影装置10の放射線照射部16に設けられた放射線源18は、撮影台12の撮影面14と、換言すると放射線検出器20の検出面22と、予め定められた間隔離した状態に支持されている。
【0027】
放射線画像撮影装置10においてトモシンセシス撮影を行う場合、放射線照射部16の放射線源18は、線源駆動部19により連続的に、照射角度(投影角度)が異なる複数の照射位置の各々に移動される。本実施形態では、
図2に示すように放射線源18は、予め定められた角度θずつ照射角度が異なる照射位置9t(t=0、1、・・・T、
図2ではT=5)、換言すると放射線検出器20の検出面22に対する放射線Rの入射角度が異なる位置に移動される。各照射位置において、コンソール6の指示により放射線源18から放射線Rが照射され、放射線検出器20により放射線画像が撮影される。なお、以下では、トモシンセシス撮影において、照射角度が異なる複数の照射位置において放射線検出器20により撮影された放射線画像を「投影画像」という。放射線画像撮影システム1では、放射線源18を照射位置9tの各々に移動させて、各照射位置9tで投影画像の撮影を行うトモシンセシス撮影を行った場合、T枚の投影画像が得られる。
【0028】
なお、
図2に示すように、放射線Rの入射角度とは、放射線検出器20の検出面22の法線CLと、放射線軸RCとがなす角度αのことをいう。また、ここでは、放射線検出器20の検出面22は、撮影面14に略平行な面とする。以下では、
図2に示すように、トモシンセシス撮影における入射角度を異ならせる所定範囲を「入射角度範囲」という。入射角度範囲の具体的一例としては、放射線検出器20の検出面22の法線CLに対して±10度や±20度の範囲が挙げられる。
【0029】
一方、放射線画像撮影装置10において単純撮影を行う場合、放射線照射部16の放射線源18は、照射角度αが0度である照射位置(法線方向に沿った照射位置)のままとされる。コンソール6の指示により放射線源18から放射線Rが照射され、放射線検出器20により放射線画像が撮影される。なお、以下では、単純撮影において放射線検出器20により撮影された放射線画像を「2次元画像」という。
【0030】
また、
図3に示すように、本実施形態の放射線画像撮影装置10は、上述した放射線検出器20、放射線照射部16、及び線源駆動部19と、制御部30と、記憶部32と、I/F(Interface)部34と、操作パネル36と、を備える。放射線検出器20、放射線源18、制御部30、記憶部32、I/F部34、操作パネル36、及び線源駆動部19は、システムバスやコントロールバス等のバス39を介して相互に接続されている。
【0031】
本実施形態の制御部30は、CPU(Central Processing Unit)30A、ROM(Read Only Memory)30B、及びRAM(Random Access Memory)30Cを備える。CPU30Aは、コンソール6の指示に応じて、放射線画像撮影装置10の全体の動作を制御する。ROM30Bには、CPU30Aで実行される、後述する画像処理プログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM30Cは、各種データを一時的に記憶する。
【0032】
記憶部32には、放射線検出器20により撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部32の具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等が挙げられる。I/F部34は、無線通信及び有線通信の少なくとも一方により、コンソール6との間で各種情報の送受信を行う。操作パネル36は、例えば、放射線画像撮影装置10の撮影台12に複数のスイッチとして設けられている。なお、操作パネル36は、タッチパネルとして設けられてもよい。
【0033】
一方、本実施形態のコンソール6は、無線通信LAN(Local Area Network)等を介してRIS等の外部システム等から取得した撮影オーダや、その他の各種情報等を用いて、放射線画像撮影装置10の制御を行う。また、本実施形態のコンソール6は、投影画像から詳細を後述する断層画像、スラブ画像(詳細後述)、及び2次元相当画像(詳細後述)の生成が可能である。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のコンソール6は、制御部40、記憶部42、I/F部44、表示部46、及び操作部48を備えている。制御部40、記憶部42、I/F部44、表示部46、及び操作部48はシステムバスやコントロールバス等のバス49を介して相互に接続されている。
【0035】
本実施形態の制御部40は、コンソール6の全体の動作を制御する。本実施形態の制御部40は、CPU40A、ROM40B、及びRAM40Cを備える。CPU40Aは、コンソール6の全体の動作を制御する。ROM40Bには、CPU40Aで実行される、後述する画像処理プログラムを含む各種のプログラム等が予め記憶されている。RAM40Cは、各種データを一時的に記憶する。本実施形態のCPU40Aが画像処理プログラムを実行することにより、制御部40が本開示の取得部及び生成部の一例として機能する。
【0036】
記憶部42には、放射線画像撮影装置10で撮影された放射線画像の画像データや、その他の各種情報等が記憶される。記憶部42の具体例としては、HDDやSSD等が挙げられる。
【0037】
I/F部44は、無線通信及び有線通信の少なくとも一方により、放射線画像撮影装置10やRIS及びPACS(Picture Archiving and Communication System:画像保存通信システム)等の外部のシステムとの間で各種情報の通信を行う。
【0038】
表示部46は、撮影に関する情報等及び撮影により得られた放射線画像等を表示する。操作部48は、放射線画像の撮影の指示操作及び撮影された放射線画像の画像処理に関する指示等を、ユーザが入力するために用いられる。操作部48は、一例としてキーボードの形態を有するものであってもよいし、表示部46と一体化されたタッチパネルの形態を有するものであってもよい。
【0039】
次に、本実施形態の放射線画像撮影システム1におけるコンソール6の作用について説明する。上述したように本実施形態のコンソール6は、トモシンセシス撮影により撮影された一連の投影画像から断層画像及びスラブ画像を生成することができる。なお、本実施形態において「断層画像」とは、放射線検出器20の検出面22を基準とした高さ方向の、ある高さにおける被写体Wの断面(断層面)を表す放射線画像である。また、「スラブ画像」とは、高さ方向のある範囲内の被写体Wの情報を有する放射線画像である。また、本実施形態のコンソール6は、照射角度αが0度である照射位置(法線方向に沿った照射位置)から放射線Rを照射して撮影した場合と同等の放射線画像を一連の投影画像から生成することができる。なお、この場合、コンソール6が生成する放射線画像は、単純撮影において撮影された2次元画像に相当するため、「2次元相当画像」という。なお、以下では、投影画像、2次元画像、断層画像、スラブ画像、及び2次元相当画像等の各種放射線画像を区別せずに総称する場合は、単に「放射線画像」という。
【0040】
まず、本実施形態のコンソール6における、断層画像の生成方法について説明する。
【0041】
放射線画像撮影システム1では、放射線源18を照射位置9tの各々に移動させて、各照射位置9tで投影画像の撮影を行うトモシンセシス撮影を行った場合、T枚の投影画像が得られる。
【0042】
図4に示すように、放射線検出器20の検出面22からの高さ(以下、単に「高さ」という)がzの位置の被写体Wの要部50zは、放射線源18と要部50zとを結ぶ直線が検出面22と交わる位置に投影される。すなわち、高さがz(z>0)の位置の断層画像60zの要部50zに対応する画素62zは、放射線源18と画素62zとを結ぶ直線が投影画像70tと交わる位置の画素72zに対応する。なお、本実施形態において放射線画像における画素の「位置」とは、放射線画像における画素の位置を示す座標のことをいう。本実施形態の画素62zが、本開示の注目画素の一例に対応する。
【0043】
FBP(Filter Back Projection)法や逐次近似再構成法等の再構成処理方法では、一連の投影画像70tの各々の画素72zの画素値pt(px
t,py
t)を加算した後、一連の投影画像70tの枚数Tで除算して平均値を導出することにより、断層画像60zの画素値Rec(x,y,z)を導出する。具体的には、放射線源18の位置を(sx
t、sy
t、sz
t)とし、画素62zの位置を(x,y,z)とし、画素72zの位置を(px
t,py
t)とすると、断層画像60zの画素値Rec(x,y,z)は、下記(1)式により導出される。
【数1】
【0044】
コンソール6は、画素の位置(x,y)を異ならせて、上記(1)式により断層画像60zの各画素の画素値を導出することにより、高さzにおける断層画像60zの全体を生成する。
【0045】
次に、本実施形態のコンソール6において、スラブ画像を生成する方法について説明する。本実施形態では、高さがz-dから、z+d(0<d<z)までの範囲で、スラブ厚が2dのスラブ画像を生成する方法について、下記実施例1及び実施例2の2通りの方法を説明する。なお、本実施形態の高さz-dが本開示の第1の高さの一例であり、高さz+dが本開示の第2の高さの一例であり、高さzが本開示の第3の高さの一例である。
【0046】
(実施例1)
まず、
図5に示すように、高さがz+dの断層画像60z+d、高さがzの断層画像60z、及び高さがz-dの断層画像60z-dの3枚の断層画像からスラブ画像を生成する場合について説明する。
【0047】
図5に示すように、断層画像60z+dの画素62z+d、及び断層画像60z-dの画素62z-dは、断層画像60zの画素62zと、x方向及びy方向(断層画像60zの面に沿った方向)の位置が同じで、高さが異なっている。換言すると、画素62z+d、画素62z、及び画素62z-dは、x座標の値、及びy座標の値が同一である。画素62z+dは、放射線源18と画素62z+dとを結ぶ直線が投影画像70tと交わる位置の画素72z+dに対応する。同様に、画素62z-dは、放射線源18と画素62z-dとを結ぶ直線が投影画像70tと交わる位置の画素72z-dに対応する。なお、本実施形態の画素72z-dが本開示の第1の画素の一例であり、画素72z+dが本開示の第2の画素の一例であり、画素72zが本開示の第3の画素の一例である。
【0048】
上記(1)式に基づくと、画素62z+dの画素値Rec(x,y,z+d)は、下記(2)式により導出され、画素62z-dの画素値Rec(x,y,z-d)は、下記(3)式により導出される。
【数2】
【0049】
従って、本実施形態のコンソール6では、断層画像60z+d、断層画像60z、及び断層画像60z-dから生成されるスラブ画像は、下記(4)式により導出される。
【数3】
【0050】
なお、上記(4)式は、断層画像の数(本実施例では「3」)で除算することにより、画素値の平均値を用いる場合を示しているが、画素値の平均値を用いることに限定されない。例えば、画素値の最大値、最小値、及び最頻値のいずれかを使用してもよいし、画素値の平均値、最大値、最小値、及び最頻値を2つ以上組み合わせて、例えば、画素の位置等に応じて組み合わせて用いてもよい。また、断層画像の画素値に対して統計解析等の手法を適用して導出された画素値を用いてスラブ画像を生成してもよい。この場合の統計解析の例として、回帰分析等が挙げられる。回帰分析を画素値に対して適用しスラブ画像を生成する方法は、例えば特許第618503号公報に記載されている。また、スラブ画像を生成する断層画像の数も本実施例で用いた「3」に限定されないことはいうまでもない。
【0051】
(実施例2)
次に、実施例1より細かい間隔の断層画像によりスラブ画像を生成した場合と同等のスラブ画像を生成する場合について
図6を参照して説明する。
図6に示すように、断層画像60zと断層画像60z+dとの間の高さが60z+e(0<e<d)の断層画像61z+eにおける、画素62z-d、62z、62z+dとx座標の位置及びy座標の位置が同一の画素63z+eは、放射線源18と画素63z+eとを結ぶ直線が投影画像70tと交わる位置の画素73z+eに対応する。従って、画素73z+eは、画素72zと画素72z+dとの間に位置する。また、断層画像60zと断層画像60z-dとの間の高さが60z-eの断層画像61z-eにおける、画素62z-d、62z、62z+dとx座標の位置及びy座標の位置が同一の画素63z-eは、放射線源18と画素63z-eとを結ぶ直線が投影画像70tと交わる位置の画素73z-eに対応する。従って、画素73z-eは、画素72z-dと画素72zとの間に位置する。
【0052】
このように、断層画像60z-dと断層画像60z+dとの間の断層画像の画素は、投影画像70tの画素72z-dと画素72z+dとの間(
図6、間隔L参照)に位置している。そのため、画素72z-dから画素72z+dまでの画素の画素値を加算すれば、複数の断層画像によりスラブ画像を生成したことと同義となる。例えば、間隔Lに含まれる全ての画素の画素値を加算することにより、原理的には、深さ方向(高さ方向)に最も細かくした断層画像を生成してからスラブ画像を生成したことと同義となる。
【0053】
具体的には、次の範囲に含まれる画素の画素値を、スラブ画像の生成に用いる。
【数4】
【0054】
なお、上記の範囲に含まれる画素の数(画素数)は、投影画像70t毎に異なる。t枚目の投影画像70tに含まれる画素の範囲を(k
x,k
y)∈Rtと表現し、この範囲に含まれる画素の数をMtと表現すると、±dmm(2×dmm)の厚みを有するスラブ画像は、下記(5)式により導出される。
【数5】
【0055】
なお、上記(5)式は、投影画像70tの枚数で除算することにより、画素値の平均値を用いる場合を示しているが、画素値の平均値を用いることに限定されない。実施例1と同様に、例えば、画素値の最大値、最小値、及び最頻値のいずれかを使用してもよいし、これらの値を、画素値の平均値、最大値、最小値、及び最頻値を2つ以上組み合わせて、例えば、画素の位置等に応じて組み合わせて用いてもよい。また、断層画像の画素値に対して統計解析等の手法を適用して導出された画素値を用いてスラブ画像を生成してもよい。
【0056】
次に、本実施形態のコンソール6が、スラブ画像または2次元相当画像を生成する画像処理動作について説明する。
図7には、本実施形態のコンソール6の制御部40が実行する、画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0057】
本実施形態のコンソール6では、一例として、コンソール6の操作部48を介してユーザからスラブ画像または2次元相当画像を表示する旨の指示を受け付けた場合に、制御部40のCPU40AがROM40Bに記憶されている画像処理プログラムを実行することにより、
図7に示した画像処理を実行する。
【0058】
図7に示すように、ステップS100で制御部40は、1回のトモシンセシス撮影により得られた一連の投影画像を取得する。なお、投影画像の取得先は所望の投影画像が記憶されている装置等であれば特に限定されず、自装置内の記憶部42、放射線画像撮影装置10、及びPACS等のいずれでもよい。
【0059】
次のステップS102で制御部40は、取得した一連の投影画像の撮影条件を取得する。本ステップで取得する撮影条件は、スラブ画像の生成に必要なパラメータに応じた撮影条件であり、本実施形態では一例として放射線検出器20の検出面22と放射線源18との距離、及び各投影画像の投影角度である。制御部40が撮影条件を取得する取得先の場所や取得方法は、任意であり、例えば、上記ステップS100で取得した投影画像に対応付けられて撮影条件も記憶されている場合は、制御部40は、投影画像を取得するとともに、撮影条件も取得すればよい。
【0060】
次のステップS104で制御部40は、2次元相当画像の表示を指示されたか否かを判定する。2次元相当画像の表示を指示されていない場合、換言するとスラブ画像の表示を指示された場合、ステップS104の判定が否定判定となり、ステップS106へ移行する。
【0061】
ステップS106で制御部40は、生成(表示)するスラブ画像のスラブ位置及びスラブ厚を取得する。制御部40がスラブ位置及びスラブ厚を取得する方法は特に限定されない。例えば、スラブ厚が予め定められている場合、制御部40は、被写体Wの厚さをスラブ厚で除算して、生成するスラブ画像の枚数を導出し、スラブ厚とスラブ画像の枚数とに応じてスラブ位置を導出することにより、スラブ位置及びスラブ厚を導出してもよい。また例えば、生成するスラブ画像の枚数が予め定められている場合、被写体Wの厚さをスラブ画像の枚数で除算した値をスラブ厚として導出し、スラブ画像の枚数とスラブ厚とに応じてスラブ位置を導出することにより、スラブ位置及びスラブ厚を導出してもよい。
【0062】
また例えば、制御部40は、ユーザが操作部48等により指示したスラブ位置及びスラブ厚を取得してもよい。
【0063】
なお、本ステップで生成するスラブ画像の数は特に限定されず、1枚であってもよいし、複数枚であってもよいことはいうまでもない。
【0064】
次のステップS108で制御部40は、スラブ画像を生成する。制御部40は、上記ステップS102で取得した撮影条件、及び上記ステップS106で取得したスラブ位置及びスラブ厚に応じて、上記ステップS100で取得した一連の投影画像から、上記実施例1の(4)式または上記実施例2の(5)式を用いてスラブ画像を生成する。なお、上記(4)式を用いるか、上記(5)式を用いるかは、任意である。例えば、上記(4)式を用いた場合、(5)式を用いる場合に比べて、演算に要する処理負荷が軽減され、上記(5)式を用いた場合、(4)式を用いる場合に比べて、精度が高くなる傾向がある。そのため、処理負荷及び精度のいずれを重視するかにより、スラブ画像の生成に用いる式を定めてもよい。
【0065】
一方、2次元相当画像の表示を指示された場合、上記ステップS104の判定が肯定判定となり、ステップS110へ移行する。
【0066】
ステップS110で制御部40は、2次元相当画像生成処理を実行し、上記ステップS100で取得した一連の投影画像から2次元相当画像を生成する。
図8には、本実施形態の制御部40が実行する、2次元相当画像生成処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
図8に示した一例の2次元相当画像処理では、
図9に示すように、複数(
図9では5つ)のスラブ画像80(80
1~80
5)を一旦生成し、生成した複数のスラブ画像80を加算することにより、2次元相当画像84を生成する。
【0067】
そのため、
図8に示したステップS150で制御部40は、生成するスラブ画像80の枚数nを取得する。制御部40がスラブ画像80の枚数nを取得する方法は特に限定されない。例えば、制御部40は、生成するスラブ画像80の枚数が予め定められている場合は、予め定められている枚数nを取得すればよい。また例えば、制御部40は、生成するスラブ画像80のスラブ厚が予め定められている場合は、被写体Wの厚さ(
図9の厚さeに相当)をスラブ厚で除した値を生成するスラブ画像nの枚数として取得すればよい。
【0068】
次のステップS152で制御部40は、生成するスラブ画像80の枚数を管理するための変数mを、「0」とする(m=0)。次のステップS154で制御部40は、変数mに「1」を加算する。次のステップS156で制御部40は、上記ステップS102で取得した撮影条件に応じて、上記ステップS100で取得した一連の投影画像から、上記(4)式を用いてm枚目のスラブ画像80を生成する。
【0069】
次のステップS158で制御部40は、変数mが、上記ステップS150で取得した枚数nと等しいか(m=n)否かを判定する。変数mと枚数nとが等しくない場合、すなわち、生成すべきスラブ画像80が残っている場合、ステップS158の判定が否定判定となり、ステップS154に戻り、上記ステップS154及びS156の処理を繰り返す。換言すると、生成するスラブ画像80の厚さ方向の位置を変更してスラブ画像80を生成する処理を繰り返す。
【0070】
一方、変数mと枚数nとが等しい場合、すなわち、生成すべきスラブ画像80を全て生成した場合、
図9に示した例では、5枚のスラブ画像80(80
1~80
5)を生成した場合、ステップS158の判定が肯定判定となり、ステップS160へ移行する。
【0071】
ステップS160で制御部40は、上記ステップS156の処理で生成した全てのスラブ画像80を合成することにより、2次元相当画像84を生成した後、本2次元相当画像生成処理を終了する。
【0072】
なお、画像処理のステップS110における2次元相当画像生成処理、すなわち2次元相当画像を生成する方法は、
図8に例示した方法に限定されない。例えば、生成する2次元相当画像84を、1枚のスラブ画像80とみなし、1枚のスラブ画像80を生成する方法と同様に2次元相当画像84を生成してもよい。
図10には、この場合の本実施形態の制御部40が実行する、2次元相当画像生成処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0073】
ステップS170で制御部40は、2次元相当画像84(スラブ画像80)を生成するのに要する各断層画像の高さを導出する。上述したように、3枚の断層画像60(60z-d、60z、60z+d)からスラブ画像80を生成する場合、制御部40は、z及びdを被写体Wの厚さの1/2とし、各断層画像の高さとして、0、被写体Wの厚さの1/2、及び被写体Wの厚さの3つを導出する。
【0074】
次のステップS172で制御部40は、上記ステップS102で取得した撮影条件に応じて、上記ステップS100で取得した一連の投影画像から、上記(4)式を用いてスラブ画像を生成するのと同様にして、2次元相当画像を生成した後、本2次元相当画像生成処理を終了する。
【0075】
本実施形態の画像処理では、このようにしてステップS110の2次元相当画像生成処理が終了した場合、及びステップS108の処理が終了した場合、ステップS112へ移行する。
【0076】
ステップS112で制御部40は、生成した放射線画像(スラブ画像または2次元相当画像)を出力し、表示部46に表示させた後、本画像処理を終了する。
【0077】
このように本実施形態のコンソール6の制御部40は、放射線検出器20の検出面22からの高さが第1の高さの断層面における注目画素の座標に対応する複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、第1の高さと異なる第2の高さの断層面における注目画素の座標に対応する複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、第1の高さから第2の高さまでの厚みのスラブ画像を生成する。
【0078】
また、本実施形態のコンソール6の制御部40は、スラブ画像を生成する場合と同様に、もしくは、一旦、生成した複数のスラブ画像を合成することにより2次元相当画像を生成する。
【0079】
これにより、本実施形態のコンソール6によれば、スラブ画像及び2次元相当画像の生成に要する演算処理の負荷を軽減することができる、
【0080】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態で説明した構成及び作用と同一の構成及び作用については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0081】
放射線画像撮影システム1の構成と、コンソール6及び放射線画像撮影装置10の構成とは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、コンソール6の制御部40が実行する画像処理の一部の処理が第1実施形態における画像処理(
図7参照)と異なるため、異なる処理について説明する。
【0082】
図11には、本実施形態のコンソール6における、画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
図11に示した画像処理は、第1実施形態の画像処理(
図7参照)のステップS108の処理に替わり、ステップS108Aの処理を実行し、ステップS106とステップS108Aとの間にステップS107の処理を実行する点が異なっているため、異なる処理について説明する。
【0083】
ステップS107で制御部40は、生成方法決定処理を実行し、複数の生成方法のうちからスラブ画像を生成する生成方法を決定する。
図12には、本実施形態の制御部40が実行する、生成方法決定処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
【0084】
ステップS200で制御部40は、関心物の大きさが予め定められた大きさ以下であるか否かを判定する。ユーザが観察等を行う関心物が石灰化や骨の微細構造等の比較的小さな関心物である場合、これらの画像は画素値が小さくなる傾向がある。この場合、第1実施形態において上述した(4)式または(5)式において、画素値の最小値を用いることにより、例えば平均値を用いる場合よりもスラブ画像のボケが抑制される。
【0085】
そこで、本実施形態では、最小値を用いることが好ましい関心物の大きさとなる閾値を予め定めておき、関心物の大きさが予め定められた大きさ以下の場合、画素値の最小値を用いてスラブ画像を生成する。
【0086】
そのため、関心物の大きさが予め定められた大きさ以下である場合、ステップS200の判定が肯定判定となり、ステップS202へ移行する。なお、関心物の大きさを特定する方法は特に限定されず、例えば、石灰化や骨の微細構造等の関心物の種類を表す情報に基づいて特定してもよい。
【0087】
ステップS202で制御部40は、後の処理であるステップS108Aにおいて、第1実施形態において上述した(4)式または(5)式によりスラブ画像を生成する場合に、画素値の最小値を用いる方法に決定し、本生成方法決定処理を終了する。
【0088】
一方、関心物の大きさが予め定められた大きさ以下ではない場合、換言すると関心物の大きさが予め定められた大きさを超える場合、ステップS200の判定が否定判定となり、ステップS204へ移行する。
【0089】
ステップS204で制御部40は、スラブ画像におけるノイズの抑制を重視するか否かを判定する。第1実施形態において上述した(4)式または(5)式において、画素値の最頻値を用いることにより、スラブ画像におけるノイズを抑制することができる。そこで、本実施形態では、スラブ画像におけるノイズの抑制を重視する場合、画素値の最頻値を用いてスラブ画像を生成する。
【0090】
そのため、スラブ画像におけるノイズの抑制を重視する場合、ステップS204の判定が肯定判定となり、ステップS206へ移行する。なお、スラブ画像におけるノイズの抑制を重視するか否かを判定する方法は特に限定されず、関心物の種類、及び読影目的等に応じて判定してもよいし、ユーザ等から受け付けた指示に基づいて判定してもよい。
【0091】
ステップS206で制御部40は、後の処理であるステップS108Aにおいて、第1実施形態において上述した(4)式または(5)式によりスラブ画像を生成する場合に、画素値の最頻値を用いる方法に決定し、本生成方法決定処理を終了する。
【0092】
一方、スラブ画像におけるノイズの抑制を重視しない場合、ステップS204の判定が否定判定となり、ステップS208へ移行する。ステップS208で制御部40は、後の処理であるステップS108Aにおいて、第1実施形態において上述した(4)式または(5)式によりスラブ画像を生成する場合に、画素値の平均値を用いる方法に決定し、本生成方法決定処理を終了する。
【0093】
本実施形態の画像処理では、このようにしてステップS107の生成方法決定処理が終了した場合、
図11に示すように、ステップS108Aへ移行する。
【0094】
ステップS108Aでは、上記ステップS107で決定した生成方法、具体的には上述したように画素値の最小値、最頻値、及び平均値の何れを用いるかの決定に応じて、第1実施形態の画像処理におけるステップS108で説明したのと同様に、スラブ画像を生成する。
【0095】
このように本実施形態のコンソール6の制御部40は、画素値の平均値、最小値、最大値、及び最頻値のいずれを用いるかを、被写体Wの関心物の大きさに基づいて決定するため、スラブ画像の画質が低下することを抑制することができる。
【0096】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態で説明した構成及び作用と同一の構成及び作用については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0097】
放射線画像撮影システム1の構成と、コンソール6及び放射線画像撮影装置10の構成とは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、コンソール6の制御部40が実行する画像処理の一部の処理が第1実施形態における画像処理(
図7参照)と異なるため、異なる処理について説明する。
【0098】
図13には、本実施形態のコンソール6における、画像処理の流れの一例を表したフローチャートが示されている。
図13に示した画像処理は、第1実施形態の画像処理(
図7参照)のステップS106とステップS108との間にステップS107A~S107Cの処理を実行する点が異なっているため、異なる処理について説明する。
【0099】
ステップS107Aで制御部40は、上記ステップS100で取得した一連の投影画像の各々を周波数分解し、異なる帯域の空間周波数を表す複数の周波数画像を導出する。
【0100】
なお、制御部40が、投影画像を周波数分解する方法は特に限定されず、例えば、ラプラシアンピラミッド分解、ウェーブレット変換、及びアンシャープマスク等の方法を適用することができる。
【0101】
次のステップS107Bで制御部40は、上記ステップS107Aで導出した周波数画像に対し、周波数毎に予め定められた画像処理を行う。本ステップにおいて行われる画像処理は特に限定されず、例えば、周波数に応じた周波数のフィルタ(ローパスフィルタ等)を用いたフィルタ処理等が挙げられる。
【0102】
次のステップS107Cで制御部40は、上記ステップS107Bにより画像処理が施された周波数画像を投影画像に合成する。
【0103】
このように本実施形態のコンソール6の制御部40は、複数の投影画像の各々を異なる帯域の空間周波数を表す複数の周波数画像に分解して、複数の周波数画像毎に異なる画像処理を行った後、複数の周波数画像を合成して投影画像とし、合成した投影画像に基づいてスラブ画像を生成する。そのため、本実施形態のコンソール6によれば、スラブ画像の画質をより向上させることができる。
【0104】
以上説明したように上記各実施形態のコンソール6では、制御部40が本開示の取得部及び生成部として機能する。取得部は、放射線源29と放射線検出器20との間に配置された被写体Wに対して、放射線源29により異なる照射角度から放射線Rを照射して放射線検出器20により照射角度毎に撮影された複数の投影画像を取得する。生成部は、放射線検出器20の検出面22からの高さが第1の高さの断層面における注目画素の座標に対応する複数の投影画像各々の第1の画素の画素値と、第1の高さと異なる第2の高さの断層面における注目画素の座標に対応する複数の投影画像各々の第2の画素の画素値とを用いて、第1の高さから第2の高さまでの厚みのスラブ画像を生成する。
【0105】
従って、上記各実施形態のコンソール6によれば、スラブ画像の生成に要する演算処理の負荷を軽減することができる。特に、上記各実施形態のコンソール6によれば、特許文献1及び特許文献2等に記載されている従来の技術と比べて、同様の枚数の断層画像を用いてスラブ画像を生成する場合でも、スラブ画像の生成に要する演算処理の負荷を軽減することができる。
【0106】
これにより、上記各実施形態のコンソール6によれば、スラブ画像の生成に要する時間を短縮することができる。また、上記各実施形態のコンソール6によれば、演算処理に要するメモリの量等を抑制することができる。
【0107】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を実行することにより実行した画像処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(field-programmable gate array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、画像処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0108】
また、上記各実施形態では、放射線画像撮影装置10の制御部30及びコンソール6の制御部40に格納される各種プログラムは、予め制御部30及び制御部40のROM(30B、40B)に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。画像処理プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、画像処理プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0109】
また、上記各実施形態における放射線Rは、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0110】
その他、上記各実施形態で説明した放射線画像撮影システム1、コンソール6、及び放射線画像撮影装置10等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。また、上記各実施形態を適宜組み合わせてもよいこともいうまでもない。
【符号の説明】
【0111】
1 放射線画像撮影システム
6 コンソール
9t 照射位置
10 放射線画像撮影装置
12 撮影台
14 撮影面
16 放射線照射部
18 放射線源
19 線源駆動部
20 放射線検出器
22 検出面
30、40 制御部
30A、40A CPU
30B、40B ROM
30C、40C RAM
32、42 記憶部
34、44 I/F部
36 操作パネル
39、49 バス
46 表示部
48 操作部
50z 要部
60z-d、60z、60z+d、61z-e、61z+e 断層画像
62z-d、62z、62z+d、63z-e、63z+e、72z-d、72z、72z+d、73z-e、73z+e 画素
70t 投影画像
80、801~805 スラブ画像
84 2次元相当画像
CL 法線
R 放射線
RC 放射線軸
W 被写体
α、θ 角度