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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220304BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20220304BHJP
   B24B 41/047 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B24B37/005 A
B24B41/047
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018041350
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019160848
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智彦
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-83856(JP,A)
【文献】国際公開第2009/35073(WO,A1)
【文献】特開2017-94448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/005
B24B 7/22
B24B 41/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの研磨装置であって、
前記ウェハを吸着保持するチャックと、
前記ウェハより大径に形成されて前記ウェハを覆った状態で前記ウェハの上面を研磨する研磨パッドを備え、前記チャックの上方に配置された研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドを回転させるスピンドルシャフトと、
前記研磨ヘッドを前記スピンドルシャフトに傾斜自在に接続する傾き許容接続手段と、
前記スピンドルシャフトを介して前記研磨ヘッドを下方に押圧する中央押圧手段と、
前記スピンドルシャフトの外周側に設けられて、前記研磨ヘッドをチャックに向けて押圧する外側押圧手段と、
を備えていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記研磨ヘッドは、
前記傾き許容接続手段を介して前記スピンドルシャフトに接続され、下端に前記研磨パッドが取り付けられた回転体と、
前記回転体の内側に配置され、前記外側押圧手段が取り付けられた固定体と、
前記回転体と固定体との間に介装され、前記外側押圧手段の押圧力を前記回転体に伝達する加圧伝達手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記チャック及び研磨パッドは、平面から視て同方向に回転することを特徴とする請求項1又は2記載の研磨装置。
【請求項4】
前記外側押圧手段は、平面から視て前記研磨ヘッドの回転中心及び前記ウェハの中心を結ぶ直線を挟んで対称な位置に設けられ、
前記研磨ヘッドの回転中心及び前記外側押圧手段は、平面から視て正多角形の頂点上に1つずつ設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェハを研磨する研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)に残存するクラックを除去するためにウェハを研磨する研磨装置が知られている。
【0003】
特許文献1記載の研磨装置は、研磨加工に際して研磨パッドをウェハに着座させ、ウェハ及び研磨パッドを回転させながら、ウェハより大径に形成された研磨パッドをウェハに押圧することによりウェハの上面を研磨する研磨装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-134383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の研磨装置では、ウェハの一部が露出するように研磨パッドをオフセットして配置して研磨パッドをウェハに押圧する際に、研磨パッドのウェハからはみ出した部分が落ち込むように研磨パッドがウェハに対して傾き、ウェハの研磨量にバラつきが生じる虞があるという問題があった。
【0006】
また、研磨パッドをウェハに押圧させる場合に、研磨パッドの中心付近には大きな押圧力が作用する一方で、研磨パッドの外周側には十分な押圧力が作用せず、ウェハ面内の押圧力に大きなバラつきが生じる虞があるという問題があった。
【0007】
さらに、ウェハの研磨レートを増大させるために、ウェハと研磨パッドとを互いに対向するように回転させる場合、研磨レートは、研磨パッドに対するウェハの相対速度、研磨パッドがウェハを押圧する押圧量及び研磨パッドがウェハに接触する研磨時間の積に比例するところ、ウェハ面内では相対速度及び研磨時間が一定ではなく、ウェハ全体での研磨精度が落ちるという問題があった。
【0008】
そこで、ウェハ全体を高精度に研磨するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る研磨装置は、ウェハの研磨装置であって、前記ウェハを吸着保持するチャックと、前記ウェハより大径に形成されて前記ウェハを覆った状態で前記ウェハの上面を研磨する研磨パッドを備え、前記チャックの上方に配置された研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを回転させるスピンドルシャフトと、前記研磨ヘッドを前記スピンドルシャフトに傾斜自在に接続する傾き許容接続手段と、前記スピンドルシャフトを介して前記研磨ヘッドを下方に押圧する中央押圧手段と、前記スピンドルシャフトの外周側に設けられて、前記研磨ヘッドをチャックに向けて押圧する外側押圧手段と、を備えている。
【0010】
この構成によれば、中央押圧手段が研磨ヘッドの中央を押圧するとともに、外側押圧手段がスピンドルシャフトの外周側で研磨ヘッドをチャックに向けて押圧することにより、研磨パッドがウェハの上面に追従するように研磨ヘッドがスピンドルシャフトに対して傾くため、ウェハ全面に研磨パッドを当接させた状態で研磨を行うことができる。また、外側押圧手段がスピンドルシャフトの外周側を押圧することにより、研磨パッドの外周側で生じがちな加圧逃げを抑制して、研磨パッドの中央に集中しがちな押圧力分布のバラつきを緩和することができる。さらに、研磨パッドがウェハを覆った状態でウェハを研磨することにより、ウェハ全面で研磨時間が略一定になるため、研磨レートが均一化されて、研磨精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る研磨装置は、前記研磨ヘッドは、前記傾き許容接続手段を介して前記スピンドルシャフトに接続され、下端に前記研磨パッドが取り付けられた回転体と、前記回転体の内側に配置され、前記外側押圧手段が取り付けられた固定体と、前記回転体と固定体との間に介装され、前記外側押圧手段の押圧力を前記回転体に伝達する加圧伝達手段と、を備えていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、外側押圧手段の押圧力が、固定体、加圧伝達手段、回転体の順に伝達するため、外側押圧力手段の直下において研磨パッドをウェハの上面に押し付ける押圧力を局所的に付与することができる。
【0013】
また、本発明に係る研磨装置は、前記チャック及び研磨パッドは、平面から視て同方向に回転することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、研磨パッドとウェハとが同方向に回転することにより、ウェハ面内で研磨パッドに対するウェハの相対速度が略一定になるため、研磨レートが均一化されて、研磨精度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る研磨装置は、前記外側押圧手段は、平面から視て前記研磨ヘッドの回転中心及び前記ウェハの中心を結ぶ直線を挟んで対称な位置に設けられ、前記研磨ヘッドの回転中心及び前記外側押圧手段は、平面から視て正多角形の頂点上に1つずつ設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、複数の外側押圧手段が研磨パッドをバランス良く押し付けることにより、研磨パッドがウェハに追従するように研磨ヘッドの姿勢がスムーズに補正されるため、ウェハ全面に研磨パッドを当接させた状態で研磨を行うことができるとともに、研磨パッドの外周側の加圧逃げを抑制して押圧力分布のバラつきを緩和することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ウェハ全面に研磨パッドを当接させた状態で研磨を行い、ウェハ全面に略均一な押圧力を作用させ、研磨レートが均一化されて、研磨精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る研磨装置を適用した加工装置を模式的に示す平面図。
図2】研磨装置を示す斜視図。
図3】研磨装置の内部構造を示す模式図。
図4】エアパッドの設置位置を示す平面図。
図5】従来の研磨装置における、研磨パッド及びウェハの位置関係を示す平面図及び側面図。
図6】従来の研磨装置における、研磨パッドに対するウェハの相対速度又は接触時間を示す図。
図7】本実施形態に係る研磨装置における、研磨パッド及びウェハの位置関係を示す平面図及び側面図。
図8】本実施形態に係る研磨装置における、研磨パッドに対するウェハの相対速度又は接触時間を示す図。
図9】エアシリンダによる圧力分布を示す模式図。
図10】ウェハ内のエアシリンダによる圧力分布を示す図。
図11】エアシリンダ及びエアパッドによる圧力分布を示す模式図。
図12】ウェハ内のエアシリンダ及びエアパッドによる圧力分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0020】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0021】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0022】
図1は、加工装置1の基本的構成を示す平面図である。加工装置1は、ウェハWの研削加工及び研磨加工を連続して行うものである。
【0023】
加工装置1には、プラットフォーム(ウェハ受け渡し)ステージST1、粗研削ステージST2、精研削ステージST3及び研磨ステージST4の4つのステージが設けられている。
【0024】
加工装置1は、図1の紙面を反時計回りに回動可能なインデックステーブル2と、インデックステーブル2の回転軸を中心に同心円上で等間隔に離間して配置された4つのチャック3と、を備えている。インデックステーブル2が、90°ずつステップ回転することにより、チャック3は、プラットフォーム(ウェハ受け渡し)ステージST1、粗研削ステージST2、精研削ステージST3、研磨ステージST4の順に移動する。
【0025】
チャック3は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャック3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャック3に載置されたウェハWがチャック3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ウェハWとチャック3との吸着が解除される。
【0026】
プラットフォーム(ウェハ受け渡し)ステージST1には、ウェハアライメントユニット4と、第1の搬送アーム5と、を備えている。ウェハアライメントユニット4には、第2の搬送アーム6によってロードポート7から取り出された研削前のウェハWが載置されて、ウェハWの位置出しが行われる。第1の搬送アーム5は、位置出しされたウェハWをウェハアライメントユニット4からチャック3に搬送する。
【0027】
ウェハWは、バッググラインドテープや、ガラス基板、シリコン基板等のサポート基板にマウントされた状態でチャック3に吸着保持される。特に、ウェハWが薄く、大口径化するにつれて、サポート基板が用いられることが多い。
【0028】
粗研削ステージST2には,図示しない粗研削砥石と、粗研削砥石送り機構8と、が設けられている。粗研削砥石には、例えば#600のカップ型砥石が用いられる。粗研削砥石送り機構8は、粗研削砥石を下端に取り付けるとともに粗研削砥石を回転可能に支持するスピンドル8aと、スピンドル8aを鉛直方向に昇降させるスピンドル送り機構8bと、を備えている。
【0029】
精研削ステージST3には、図示しない精研削砥石と、精研削砥石送り機構9と、が設けられている。精研削砥石には、例えば#4000のカップ型砥石が用いられる。精研削砥石送り機構9は、精研削砥石を下端に取り付けるとともに精研削砥石を回転可能に支持するスピンドル9aと、スピンドル9aを鉛直方向に昇降させるスピンドル送り機構9bと、を備えている。
【0030】
上述した各スピンドル送り機構は、公知の構成であり、例えば、2本のリニアガイドとボールネジスライダ機構とで構成されている。
【0031】
研磨ステージST4には、後述する研磨装置10が設けられている。研磨装置10の具体的構成については後述する。
【0032】
加工装置1は、1次洗浄ユニット11と、2次洗浄ユニット12と、を備えている。1次洗浄ユニット11は、第3の搬送アーム13によってチャック3から搬送された研削・研磨後のウェハWの裏面(非加工面)を洗浄する。
【0033】
2次洗浄ユニット12は、第3の搬送アーム13によって1次洗浄ユニット11から搬送された1次洗浄後のウェハWの表面(加工面)及び裏面を洗浄する。例えば、ウェハW裏面(非加工面)の全面又は中心の一部を吸着保持し、ウェハWの表面に純水又は純水及びミストから成る2流体ミストを吹き付ける等しながら、スピン回転によって純水を吹き飛ばすことにより洗浄を行う。または、ウェハWの周縁を3本又は4本のコマで支持しながら、ウェハWの表面及び裏面に純水とミストから成る2流体ミストを吹き付けることにより洗浄を行う。2次洗浄後のウェハWは、第2の搬送アーム6によってロードポート7に格納させる。
【0034】
加工装置1の動作は、制御装置14によって制御される。制御装置14は、加工装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置14は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置14の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0035】
次に、研磨装置10の具体的構成について、図面に基づいて説明する。図2は、研磨装置10を示す斜視図である。図3は、研磨装置10の内部構造を示す模式図である。図4は、エアパッド70の設置位置を示す平面図である。
【0036】
研磨装置10は、チャック3に吸着保持されたウェハWの上面を研磨して、粗研削ステージST2又は精研削ステージST3での研削加工時に発生したマイクロクラックを含むダメージ層を除去するものである。
【0037】
研磨装置10は、スピンドル20と、研磨ヘッド30と、を備えている。
【0038】
スピンドル20は、モータ21と、モータ21に接続された円筒状のスピンドルシャフト22と、スピンドルシャフト22を収容するケーシング23と、スピンドルシャフト22とケーシング23との間に介装されたベアリング24と、を備えている。スピンドルシャフト22は、モータ21によって回転軸a1を中心として回転する。
【0039】
スピンドルシャフト22内部の空洞には、スラリーを流す螺旋状の配管が設けられている。配管の上端は、ロータリージョイント25を介して外部のスラリー供給源に接続されている。配管の下端は、後述する回転体31の表面に開口する図示しない供給孔に接続されている。ウェハWの上面に供給されたスラリーは、ウェハWの回転に伴う遠心力でウェハW全面に拡散する。
【0040】
研磨ヘッド30は、回転体31と、固定体32と、ベアリング33と、を備えている。
【0041】
回転体31は、断面コ字状に形成されており、スピンドルシャフト22の下端に搖動機構34を介して連結されている。回転体31の下端には、研磨パッド35が水平に取り付けられている。研磨パッド35は、ウェハWよりも大径に形成されており、例えば、直径300mmのウェハWに対して、研磨パッド35の直径は450mmに設定される。
【0042】
固定体32は、円盤状に形成されており、ベアリング33を介して回転体31内に収容されている。これにより、スピンドルシャフト22の回転に伴い、回転体31及び搖動機構34は一体となって固定体32に対して相対的に回転する。
【0043】
搖動機構34は、回転体31がスピンドルシャフト22に対して垂直方向に搖動するように傾くことを許容する。搖動機構34は、例えば公知のジンバル機構等であっても構わない。
【0044】
研磨装置10は、スピンドル20及び研磨ヘッド30をコラム40に対して昇降させる送り機構50を備えている。但し、スピンドル20及び研磨ヘッド30は、送り機構50と直接連結された構成ではなく、ウェハWにスピンドル20及び研磨ヘッド30が着座したときには分離するように構成されている。送り機構50は、図示しないモータ及びベルトと、プーリ51と、図示しないボールネジと、スライダ52と、を備えている公知のボールネジスライダ機構である。ボールネジは、プーリ51によって回転し、スライダ52は、ボールネジの回転方向に応じて鉛直方向に昇降する。
【0045】
研磨ヘッド30は、中央押圧手段としてのエアシリンダ60と、外側押圧手段としてのエアパッド70と、を備えている。
【0046】
エアシリンダ60は、シリンダ61がコラム40に取り付けられ、ピストン62がケーシング23の上面に取り付けられ、シリンダ61内に給気された圧縮空気によってピストン62が進退移動する公知の空気圧制御機器である。また、エアシリンダ60は、回転軸a1上に配置されており、ケーシング23全体を均等に下方に押し付けるように構成されている。
【0047】
エアパッド70は、固定体32に2つ設けられている。具体的には、エアパッド70が、固定体32とベアリング33との間に介装されるように設けられている。エアパッド70は、外部の図示しない圧縮空気源に接続されており、エアパッド70内に圧縮空気が供給されることにより、ベアリング33を介してウェハWに押圧力を付与する。
【0048】
2つのエアパッド70は、平面から視て研磨ヘッド30の回転中心とウェハWの中心を結ぶ直線を挟んで対称な位置に1つずつ設けられている。また、回転軸a1と2つのエアパッド70とが、平面から視て正三角形の頂点を形成するように配置されている。なお、エアパッド70の配置は上述したものに限定されるものではない。
【0049】
なお、中央押圧手段及び外側押圧手段は、上述したようなエアシリンダ又はエアパッドの構成に限定されず、ウェハWに押圧力を付与できるものであれば如何なる構成であっても構わない。
【0050】
このようにして、ウェハW及び研磨パッド35が回転しながら、研磨パッド35が、エアシリンダ60及びエアパッド70によって研磨パッド35の研磨面35aが下方に押し付けられることにより、ウェハWの上面が研磨される。研磨パッド35による研磨量は、例えばウェハWの上面から2μmに設定される。
【0051】
次に、研磨パッド35とウェハWとの配置関係について説明する。
【0052】
まず、本実施形態の比較例として、ウェハWと略同じ径の研磨パッド81を用いた研磨装置80について説明する。図5は、研磨装置80におけるウェハWと研磨パッド81との配置関係を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0053】
研磨装置80では、ウェハWと研磨パッド81とはオフセットした状態で対向して配置されている。したがって、ウェハWの一部が研磨パッド81から露出した状態で研磨加工が行われる。また、研磨装置80では、研磨レートを増大させる為に、ウェハWと研磨パッド81とが向い合う向きに回転している。
【0054】
研磨パッド81に対するウェハWの相対速度又は接触時間を図6に示す。図6は、縦軸を相対速度又は接触時間、横軸をウェハ位置に設定している。なお、図6中の符号は、図5(a)中の符号に対応する。図6によれば、研磨装置80では、ウェハW内において常に研磨パッドに接触している領域(図5中のA-A’を両端とする円内)と、その他の領域とで研磨時間にバラつきが生じている。また、ウェハWと研磨パッド81とが対向して回転するため、ウェハWの研磨パッド81に対する相対速度は、ウェハW内で均一ではないことが分かる。
【0055】
研磨量は、Prestonの式により、研磨パッド81に対するウェハWの相対速度、研磨パッド81がウェハWを押圧する押圧量及び研磨パッド81がウェハWに接触する研磨時間の積に比例することから、研磨装置80では、ウェハW内で相対速度及び研磨時間にバラつきが存在しており、ウェハW内において研磨量が均一でない。
【0056】
図7は、研磨装置10におけるウェハWと研磨パッド35との配置関係を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0057】
研磨装置10では、研磨パッド35がウェハWよりも大径に形成されており、且つ研磨パッド35とウェハWの回転方向が一致して、研磨パッド35の外周とウェハWの外周とが1点で重なっている。これにより、ウェハW面内の速度ベクトルが一致する。また、研磨パッド35は、加工中にウェハW全面を常に覆うことにより、ウェハW全面を均一に研磨することができる。
【0058】
研磨パッド35に対するウェハWの相対速度又は接触時間を図8に示す。図7は、縦軸を相対速度又は接触時間、横軸をウェハ位置に設定している。なお、図8中の符号は、図7(a)中の符号に対応する。図8によれば、研磨装置10では、ウェハW内で研磨時間及びウェハWの研磨パッド81に対する相対速度は、ウェハW内で均一である。
【0059】
したがって、Prestonの式によれば、研磨装置10では、ウェハW内において研磨量の均一性が優れている。
【0060】
次に、エアシリンダ60及びエアパッド70の作用について図面に基づいて説明する。図9は、エアシリンダ60による圧力分布を示す模式図である。図10は、ウェハW内のエアシリンダ60による圧力分布を示す図である。
【0061】
研磨加工時には、エアシリンダ60が所定の押圧力F1で研磨パッド35を下方に押圧する。具体的には、エアシリンダ60による押圧力F1は、ケーシング23、ベアリング24、スピンドルシャフト22、搖動機構34、回転体31の順に伝達することにより、エアシリンダ60の直下において研磨パッド35がウェハWの上面に押し付けられる。
【0062】
これにより、エアシリンダ60による押圧力F1は、図9中の矢印に示すように、研磨パッド35の中心が最も高く、研磨パッド35の径方向に向かって徐々に低くなっている。具体的には、図10に示すように、エアシリンダ60で研磨パッド35を押圧する場合、ウェハWに作用する押圧力は、研磨パッド35の中心付近は大きくなる一方で、研磨パッド35の外周側では小さくなり、研磨パッドの外周部分ではいわゆる加圧逃げが生じがちである。なお、図10では、紙面右側の濃色部分が最も押圧力が大きい領域であり、紙面左側に向かう薄色部分、濃色部分の順に押圧力が小さくなっている。
【0063】
図11は、エアシリンダ60及びエアパッド70による圧力分布を示す模式図である。図12は、ウェハW内のエアシリンダ60及びエアパッド70による圧力分布を示す図である。
【0064】
エアパッド70による押圧力F2は、固定体32、ベアリング33、回転体31の順に伝達することにより、エアパッド70の直下において研磨パッド35がウェハWの上面に押し付けられる。
【0065】
これにより、エアシリンダ60が研磨パッド35の中心付近を押圧しながら、エアパッド70が研磨ヘッド30の回転中心と研磨パッド35の外周縁との間を局所的に押圧することにより、すなわち研磨パッド35を中央及び回転軸a1の外側の複数点で加圧することにより、図11中の矢印に示すように、研磨パッド35の外周部分での加圧逃げが抑制され、図12に示すように、ウェハW面内の圧力分布のバラつきを緩和することができる。なお、図12では、紙面の濃色部分は押圧力が大きい領域であり、薄色部分は押圧力が小さい領域である。
【0066】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0067】
1 ・・・加工装置
2 ・・・インデックステーブル
3 ・・・チャック
4 ・・・ウェハアライメントユニット
5 ・・・第1の搬送アーム
6 ・・・第2の搬送アーム
7 ・・・ロードポート
8 ・・・粗研削砥石送り機構
8a ・・・スピンドル
8b ・・・スピンドル送り機構
9 ・・・精研削砥石送り機構
9a ・・・スピンドル
9b ・・・スピンドル送り機構
10 ・・・研磨装置
11 ・・・1次洗浄ユニット
12 ・・・2次洗浄ユニット
13 ・・・第3の搬送アーム
14 ・・・制御装置
20 ・・・(研磨装置の)スピンドル
21 ・・・モータ
22 ・・・スピンドルシャフト
23 ・・・ケーシング
24 ・・・ベアリング
25 ・・・ロータリージョイント
30 ・・・研磨ヘッド
31 ・・・回転体
32 ・・・固定体
33 ・・・ベアリング(加圧伝達手段)
34 ・・・搖動機構(傾き許容接続手段)
35 ・・・研磨パッド
35a・・・研磨面
40 ・・・コラム
50 ・・・送り機構
51 ・・・プーリ
52 ・・・スライダ
60 ・・・エアシリンダ(中央押圧手段)
61 ・・・シリンダ
62 ・・・ピストン
70 ・・・エアパッド(外側押圧手段)
W ・・・ウェハ
a1 ・・・回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12