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特許7034169樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
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  • 特許-樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220304BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20220304BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220304BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/3435
H01L31/02 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019544428
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031266
(87)【国際公開番号】W WO2019065021
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017188024
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】北島 峻輔
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227851(JP,A)
【文献】特開2016-153474(JP,A)
【文献】特開2010-209205(JP,A)
【文献】特開2016-204593(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052091(WO,A1)
【文献】特開2009-139892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
G02B 5/20- 5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収色素と、酸化防止剤と、重量平均分子量が2000~100000の樹脂とを含む樹脂組成物であって、
近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記近赤外線吸収色素の含有量が前記樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上であり、
前記酸化防止剤がヒンダードアミン化合物を含み、
前記ヒンダードアミン化合物が、式(3)で表される化合物であり、
前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、前記近赤外線吸収色素の100質量部に対して、0.1~10質量部であり、
前記樹脂は酸基を有する樹脂を含み、
前記樹脂の含有量が樹脂組成物の全固形分に対し、1~80質量%である、
樹脂組成物。
【化1】
(式(3)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表す;
6重合性基を表す;
m1は1であり、nは1であり、L 1 は水素原子を表す。)
【請求項2】
近赤外線吸収色素と、酸化防止剤と、重量平均分子量が2000~100000の樹脂とを含む樹脂組成物であって、
近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記近赤外線吸収色素の含有量が前記樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上であり、
前記酸化防止剤がヒンダードアミン化合物を含み、
前記ヒンダードアミン化合物が、式(I1)~(I10)で表される化合物の少なくとも1種であり、式(I8)で表される化合物の重量平均分子量は2600~3400であり、式(I9)で表される化合物の重量平均分子量は3100~4000であり、
前記ヒンダードアミン化合物の含有量が、前記近赤外線吸収色素の100質量部に対して、0.1~10質量部であり、
前記樹脂は酸基を有する樹脂を含み、
前記樹脂の含有量が樹脂組成物の全固形分に対し、1~80質量%である、
樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
前記酸化防止剤は、更に、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物の含有量は、前記ヒンダードアミン化合物の100質量部に対して10~90質量部である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更に界面活性剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂の重量平均分子量が5000~40000である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
更に、硬化性化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化性化合物がラジカル重合性化合物を含み、更に光ラジカル重合開始剤を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
更に、シランカップリング剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物から得られる膜。
【請求項11】
請求項10に記載の膜を有する光学フィルタ。
【請求項12】
前記光学フィルタが近赤外線カットフィルタまたは赤外線透過フィルタである、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
請求項10に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項14】
請求項10に記載の膜を有する画像表示装置。
【請求項15】
請求項10に記載の膜を有する赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物に関する。また、前述の樹脂組成物を用いた膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用している。このために、近赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を行うことがある。
【0003】
近赤外線カットフィルタは、近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を用いて製造されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-284630号公報
【文献】特開2017-116776号公報
【文献】特開2014-149514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を用いて膜を製造する場合、調製直後の樹脂組成物を用いて膜を製造する場合もあれば、調製後長期間保管された樹脂組成物を用いて膜を製造することもある。このため、このような樹脂組成物においては、保存安定性に優れることが望まれている。
【0006】
また、近年では、近赤外線カットフィルタについての薄膜化が望まれている。しかしながら、樹脂組成物の全固形分中における近赤外線吸収色素の含有量を高めて製造した膜は、加熱によって分光特性が変動し易く、熱信頼性について十分満足するものではなかった。また、本発明者の検討によれば、樹脂組成物の全固形分中における近赤外線吸収色素の含有量が5質量%以上である場合、このような加熱による分光変動が特に生じやすいことが分かった。
【0007】
なお、特許文献1の実施例においては、樹脂組成物の全固形分中における近赤外線吸収色素の含有量が5質量%未満であり、樹脂組成物の全固形分中における近赤外線吸収色素の含有量を5質量%以上とした際における樹脂組成物の保存安定性と、得られる膜の熱信頼性の両立についての記載はない。
また、本発明者が特許文献2、3に記載された組成物について検討したところ、保存安定性と得られる膜の熱信頼性は満足できるレベルではなく、さらなる改善が必要であった。
【0008】
よって、本発明の目的は、保存安定性に優れ、かつ、熱信頼性に優れた膜を形成できる樹脂組成物を提供することにある。また、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる状況のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記の樹脂組成物を用いることで上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下を提供する。
<1> 近赤外線吸収色素と、酸化防止剤と、樹脂とを含む樹脂組成物であって、
近赤外線吸収色素の含有量が樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上であり、
酸化防止剤がヒンダードアミン化合物を含む、樹脂組成物。
<2> ヒンダードアミン化合物は、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を有する化合物である、<1>に記載の樹脂組成物:
【化1】

式中、波線は連結手を表し、
1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表し、
2~R5はそれぞれ独立してアルキル基を表し、
6は置換基を表し、
nは1~3の整数を表し、
nが1の場合、mは0~3の整数を表し、nが2の場合、mは0~5の整数を表し、nが3の場合、mは0~7の整数を表し、
mが2以上の整数の場合、m個のR6はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
<3> R2~R5がそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり、nが1または2である、<2>に記載の樹脂組成物。
<4> mが1以上であり、m個のR6のうち1個以上のR6が重合性基である、<2>または<3>に記載の樹脂組成物。
<5> ヒンダードアミン化合物は、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を1分子中に2個以上有する、<2>~<4>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<6> ヒンダードアミン化合物は、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を有するポリマーである、<2>~<4>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<7> ヒンダードアミン化合物は、下記式(1a)で示される部分構造または式(2a)で示される部分構造を有する化合物である、<1>に記載の樹脂組成物;
【化2】

式中、波線は連結手を表し、R1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表し、R6は置換基を表し、m1は0~5の整数を表し、m1が2以上の整数の場合、m1個のR6はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
<8> 酸化防止剤は、更に、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物を含む、<1>~<7>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<9> 更に界面活性剤を含む、<1>~<8>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<10> 樹脂の重量平均分子量が5000~40000である、<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<11> 近赤外線吸収色素が、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、ピロロピロール化合物、およびイミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<10>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<12> 更に、硬化性化合物を含む、<1>~<11>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<13> 更に、ラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤とを含む、<1>~<11>のいずれかにに記載の樹脂組成物。
<14> 更に、シランカップリング剤を含む、<1>~<13>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<15> <1>~<14>のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる膜。
<16> <15>に記載の膜を有する光学フィルタ。
<17> 光学フィルタが近赤外線カットフィルタまたは赤外線透過フィルタである、<16>に記載の光学フィルタ。
<18> <15>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<19> <15>に記載の膜を有する画像表示装置。
<20> <15>に記載の膜を有する赤外線センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性に優れ、かつ、熱信頼性に優れた膜を形成できる樹脂組成物を提供することができる。また、膜、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、近赤外線とは、波長700~2500nmの光(電磁波)をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素と、酸化防止剤と、樹脂とを含み、
近赤外線吸収色素の含有量が樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上であり、
酸化防止剤がヒンダードアミン化合物を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素を樹脂組成物の全固形分に対して5質量%以上含有する組成物でありながら、保存安定性に優れ、かつ、熱信頼性に優れた膜を形成できる。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。樹脂組成物において、ヒンダードアミン化合物は近赤外線吸収色素の近傍に存在し易いが、ヒンダードアミン化合物は比較的かさ高い構造を有しているので、このかさ高い構造による立体障害によって近赤外線吸収色素の凝集などを抑制でき、優れた保存安定性を達成できたと推測される。また、膜中においては、ヒンダードアミン化合物は近赤外線吸収色素の近傍に偏在し易く、熱励起した酸素ラジカルなどによる近赤外線吸収色素への攻撃を効果的に抑制でき、熱信頼性に優れた膜を形成できたと推測される。
【0015】
また、本発明の樹脂組成物が更に界面活性剤を含有する場合においては、より熱信頼性に優れた膜を形成し易い。本発明の樹脂組成物に更に界面活性剤を含有させることにより、膜表面に界面活性剤が偏在されるとともに、膜中においては、近赤外線吸収色素の近傍にヒンダードアミン化合物を存在させやすい。このため、膜表面に偏在した界面活性剤によって近赤外線吸収色素の空気界面への露出を抑制できるとともに、近赤外線吸収色素近傍に存在するヒンダードアミン化合物によって、熱励起した酸素ラジカルなどによる近赤外線吸収色素への攻撃を効果的に抑制できる。このため、より優れた熱信頼性を有する膜を形成することができる。
【0016】
また、本発明の樹脂組成物に用いられる酸化防止剤が、ヒンダードアミン化合物の他に、更に、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物を含む場合においては、より優れた熱信頼性を有する膜を形成することができる。また、製膜後の膜を加熱処理などを行わない状態で長期間保存した場合であっても、異物の発生を効果的に抑制できる。更には、膜をダイシングした際において、欠けの発生などを効果的に抑制できる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、膜中に、ヒンダードアミン化合物と、上記フェノール構造を含む化合物とが共存することにより、ヒンダードアミン化合物の結晶性が低下したためであると推測される。
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。
【0018】
<<酸化防止剤>>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含む。本発明の樹脂組成物に用いられる酸化防止剤は、ヒンダードアミン化合物を含む。ヒンダードアミン化合物のpKbは、得られる膜の熱信頼性の観点から5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。ここでpKbは塩基性解離定数であり、本発明におけるヒンダードアミン化合物のpKbは、構造式から算出した計算値である。本発明では、pKbの算出にあたり、pKa DB(Advanced Chemistry Development Inc.)のソフトウエアを用いた。
【0019】
本発明で用いられるヒンダードアミン化合物は、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
【化3】
【0020】
式中、波線は連結手を表し、R1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表し、R2~R5はそれぞれ独立してアルキル基を表し、R6は置換基を表し、nは1~3の整数を表し、nが1の場合、mは0~3の整数を表し、nが2の場合、mは0~5の整数を表し、nが3の場合、mは0~7の整数を表し、mが2以上の整数の場合、m個のR6はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
【0021】
1が表すアルキル基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tで説明した基や、重合性基が挙げられる。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。
【0022】
1が表すアルコキシ基の炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~5が更に好ましい。アルコキシ基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述の置換基Tで説明した基や、重合性基が挙げられる。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。
【0023】
式(1)において、R1は、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であることが好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素数1~15のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であることが最も好ましい。
【0024】
式(1)および式(2)において、R2~R5はそれぞれ独立してアルキル基を表す。R2~R5は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、炭素数1または2のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0025】
式(1)および式(2)において、R6は置換基を表す。置換基としては、後述の置換基Tで説明した基や、重合性基が挙げられる。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。mが1以上の場合、m個のR6のうち1個以上のR6が重合性基であることが好ましい。また、重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が更に好ましい。この態様によれば、樹脂組成物の経時安定性を向上でき、更には得られる膜の熱信頼性をより向上できる。このような効果が得られる理由としては、製膜時の加熱による酸化防止剤の膜中からの離脱を効果的に抑制できるためであると推測される。
【0026】
式(1)および式(2)において、nは1~3の整数を表し、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0027】
ヒンダードアミン化合物は、式(1a)で示される部分構造または式(2a)で示される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
【化4】
【0028】
式中、波線は連結手を表し、R1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表し、R6は置換基を表し、m1は0~5の整数を表し、m1が2以上の整数の場合、m1個のR6はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
【0029】
式(1a)のR1は、式(1)のR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。式(1a)および式(2a)のR6は、式(1)および式(2)のR6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0030】
ヒンダードアミン化合物としては、式(3)で表される化合物が好ましい化合物として挙げられる。
式(3)
【化5】
【0031】
1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基または酸素ラジカルを表す。R6は置換基を表す。m1は0~5の整数を表し、m1が2以上の整数の場合、m1個のR6はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。nは1以上の整数を表し、nが1の場合は、L1は水素原子または置換基を表し、nが2以上の場合は、L1はn価の連結基を表す。
【0032】
式(3)のR1およびR6は、式(1)のR1およびR6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0033】
式(3)において、nは1以上の整数を表し、2以上の整数であることが好ましく、3以上の整数であることがより好ましく、4以上の整数であることが更に好ましい。上限は、例えば、8以下とすることができる。また、式(3)において、nが1の場合は、m1は1以上の整数を表し、かつ、m1個のR6のうち1個以上のR6が重合性基であることが好ましい。
【0034】
式(3)において、nが1の場合は、L1は水素原子または置換基を表す。L1が表わす置換基としては、後述の置換基Tで説明した基や、重合性基が挙げられる。
式(3)において、nが2以上の場合は、L1はn価の連結基を表す。L1が表すn価の基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、環状であってもよく、非環状であってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。また、環状の脂肪族炭化水素基、および、芳香族炭化水素基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。複素環基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。
n価の基の具体例としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。以下において、*は連結手を表す。
【0035】
【化6】
【0036】
式(3)で表される化合物の分子量は、100~5000が好ましい。上限は、4000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。下限は、150以上が好ましく、200以上がより好ましい。
【0037】
ヒンダードアミン化合物は、樹脂組成物の保存安定性や得られる膜の熱信頼性の観点から、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を1分子中に2個以上有する化合物であることが好ましく、前述の部分構造を3個以上有する化合物であることがより好ましく、前述の部分構造を4個以上有する化合物であることが更に好ましい。このような化合物としては上述した式(3)で表される化合物のうちnが2以上の整数である化合物が挙げられる。
【0038】
ヒンダードアミン化合物は、式(1)で示される部分構造または式(2)で示される部分構造を有するポリマー(以下、ポリマー型ヒンダードアミン化合物ともいう)であることも好ましい。ポリマー型ヒンダードアミン化合物としては、ポリマー主鎖に式(2)で示される部分構造を有するポリマーや、ポリマー側鎖に式(1)で示される部分構造を有するポリマーが挙げられる。ポリマー主鎖に式(2)で示される部分構造を有するポリマーとしては、下記構造のポリマーが挙げられる。市販品としては、TINUVIN 622 SF(BASF製)などが挙げられる。
【化7】

ポリマー側鎖に式(1)で示される部分構造を有するポリマーとしては、下記構造のポリマーが挙げられる。市販品としては、CHIMASSORB 2020 FDL、CHIMASSORB 944 FDL(BASF製)、アデカスタブLA-63P、LA-68((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【化8】

【化9】
【0039】
ポリマー型ヒンダードアミン化合物の重量平均分子量は、1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることが更に好ましい。上限は100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましく、25000以下であることがより一層好ましく、20000以下であることが更に一層好ましく、10000以下であることが特に好ましく、5000以下であることが最も好ましい。ポリマー型ヒンダードアミン化合物の重量平均分子量が上記範囲であれば、製膜時の加熱による酸化防止剤の膜中からの離脱を効果的に抑制できる。更には、樹脂組成物に用いられる酸化防止剤以外の樹脂等との相溶性が良好である。
【0040】
式(1a)で示される部分構造または式(2a)で示される部分構造を有するヒンダードアミン化合物は、市販品を用いることもできる。市販品として入手できる代表例としては、上述した製品のほか、アデカスタブLA-52、LA-57、LA-72、LA-77Y、LA-77G、LA-81、LA-82、LA-87、LA-402AF、LA-502XP((株)ADEKA製)、TINUVIN 765、TINUVIN 770 DF、TINUVIN XT 55 FB、TINUVIN 111 FDL、TINUVIN 783 FDL、TINUVIN 791 FB(BASF製)などが挙げられ、これらを好ましく用いることができる。
【0041】
本発明で用いられるヒンダードアミン化合物は、式(1a)で示される部分構造または式(2a)で示される部分構造の他に、一分子中に炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造をさらに有していてもよい。このフェノール構造としては、後述の式(A-1)で表される構造が挙げられる。この態様によれば、少量の配合量で優れた熱信頼性が得られ、コスト抑制が期待できる。このような化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。市販品としては、TINUVIN PA144(BASF社製)などが挙げられる。
【化10】
【0042】
本発明の樹脂組成物に用いられる酸化防止剤は、上述したヒンダードアミン化合物以外の酸化防止剤(他の酸化防止剤ともいう)を更に用いることができる。他の酸化防止剤としては、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物、N-オキシド化合物、ピペリジン1-オキシルフリーラジカル化合物、ピロリジン1-オキシルフリーラジカル化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン化合物、ジアゾニウム化合物、リン系化合物、硫黄系化合物などが挙げられる。これらの化合物の具体例としては、特開2014-32380号公報の段落番号0034~0041に記載された化合物があげられ、この内容は本明細書に組み込まれる。リン系化合物としては、市販品として入手できる代表例には、アデカスタブ2112、PEP-8、PEP-24G、PEP-36、PEP-45、HP-10((株)ADEKA製)、Irgafos38、168、P-EPQ(BASF社製)などが挙げられる。硫黄系化合物としては、市販品として入手できる代表例には、Sumilizer MB(住友化学(株)製)、アデカスタブAO-412S((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0043】
本発明においては、他の酸化防止剤として、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を含む化合物(以下、フェノール系酸化防止剤ともいう)を用いることが好ましい。この態様によれば、得られる膜の熱信頼性がより向上する傾向にある。また、製膜後の膜を加熱処理などを行わない状態で長期間保存した場合であっても、異物の発生を効果的に抑制できる。更には、膜をダイシングした際において、欠けの発生などを効果的に抑制できる。ここで、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造とは、ベンゼン環に、ヒドロキシ基と炭素数1以上の炭化水素基とがそれぞれ結合した構造のことである。
【0044】
フェノール系酸化防止剤が有する炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造としては、1個のベンゼン環に対して2個以上のヒドロキシ基が結合していてもよいが、1個のベンゼン環に対して1個のヒドロキシ基が結合している構造が好ましい。また、炭素数1以上の炭化水素基は、1個のベンゼン環に対して1~4個結合していることが好ましく、1~3個結合していることがより好ましく、2~3個結合していることが更に好ましい。また、炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造において、ヒドロキシ基と炭素数1以上の炭化水素基とが隣接してベンゼン環に結合していることが好ましい。
【0045】
上記炭化水素基の炭素数は、1以上であり、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~5であることが特に好ましい。
上記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状の脂肪族炭化水素基のいずれであってもよいが、分岐の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。具体的には、炭化水素基は、直鎖、分岐または環状のアルキル基であることが好ましく、分岐のアルキル基であることがより好ましい。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。炭化水素基は、置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。置換基としては、後述の置換基Tが挙げられる。
【0046】
本発明において、フェノール系酸化防止剤は、一分子中に炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を1個のみ有する化合物であってもよいが、近赤外線吸収色素への接近能力が高いという理由から、一分子中に炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造を2個以上有する化合物であることが好ましい。一分子中における炭素数1以上の炭化水素基を有するフェノール構造の数の上限は、8個以下であることが好ましく、6個以下であることがより好ましい。
【0047】
フェノール系酸化防止剤の分子量は、100~2500であることが好ましく、300~2000であることがより好ましく、500~1500であることが更に好ましい。この態様によれば、フェノール系酸化防止剤自体の昇華性(製膜時の残存率)が良好であり、更には、膜中におけるフェノール系酸化防止剤の移動能が良好である。
【0048】
フェノール系酸化防止剤は、下記式(A-1)で表される構造を含む化合物であることが好ましく、式(A-1)で表される構造を一分子中に2個以上含む化合物であることがより好ましい。一分子中における式(A-1)で表される構造の数の上限は、8個以下であることが好ましく、6個以下であることがより好ましい。
【化11】

式中RA1~RA4は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、RA1~RA4の少なくとも一つは、炭素数1以上の炭化水素基を表し、波線は結合手を表す。
【0049】
A1~RA4が表す置換基としては、後述の置換基Tが挙げられる。式(A-1)において、RA1~RA4の少なくとも一つは、炭素数1以上の炭化水素基を表す。炭化水素基の好ましい範囲は上述した範囲と同様である。式(A-1)において、RA2およびRA3の少なくとも一方が、炭素数1以上の炭化水素基であることが好ましく、RA2およびRA3が炭素数1以上の炭化水素基であることがより好ましく、RA2およびRA3が炭素数1以上の炭化水素基であり、かつ、RA2およびRA3の少なくとも一方が分岐アルキル基であることが更に好ましく、RA2およびRA3の一方が分岐アルキル基で、他方が直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることがより一層好ましく、RA2およびRA3の一方が分岐アルキル基で、他方が直鎖アルキル基であることが特に好ましく、RA2およびRA3の一方がtert-ブチル基で、他方がメチル基であることが最も好ましい。RA2およびRA3の一方が分岐アルキル基で、他方が直鎖アルキル基または分岐アルキル基であることにより、膜の熱安定性が向上したり、近赤外線吸収色素の会合を抑制し易いという効果が期待できる。
【0050】
本発明において、フェノール系酸化防止剤は、式(A-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化12】

式中RA1~RA4は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、RA1~RA4の少なくとも一つは、炭素数1以上の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表し、nが1の場合は、LA1は水素原子または置換基を表し、nが2以上の場合は、LA1はn価の連結基を表す。
【0051】
式(A-2)のRA1~RA4は、式(A-1)のRA1~RA4と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0052】
式(A-2)において、nが1の場合は、LA1は水素原子または置換基を表す。LA1が表わす置換基としては、後述の置換基Tで説明した基が挙げられる。
式(A-2)において、nが2以上の場合は、LA1はn価の連結基を表す。LA1は表すn価の基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。LA1が表わすn価の基の具体例としては、式(3)のL1が表わすn価の基にて説明したものが挙げられる。
【0053】
式(A-2)において、nは1以上の整数を表し、1~8の整数であることが好ましく、2~6の整数であることがより好ましく、2~4の整数であることが更に好ましい。
【0054】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、下記化合物が挙げられる。また、フェノール系酸化防止剤は、市販品を用いることもできる。市販品として入手できる代表例としては、アデカスタブAO-20、30、40、50、60、70、80(以上(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【化13】

【化14】
【0055】
本発明の樹脂組成物において、酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましい。上限は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。下限は、0.1質量%以上であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物において、ヒンダードアミン化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましい。上限は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。下限は、0.1質量%以上であることが好ましい。
また、ヒンダードアミン化合物の全質量中における、ポリマー型ヒンダードアミン化合物、または重合性基を有するヒンダードアミン化合物の含有量は、10~100質量%が好ましい。下限は、50質量%以上であることが好ましい。ポリマー型ヒンダードアミン化合物、または重合性基を有するヒンダードアミン化合物の含有量が上記範囲であれば、より熱信頼性に優れた膜を形成しやすい。
また、ポリマー型ヒンダードアミン化合物と重合性基を有するヒンダードアミン化合物とを併用する場合、ヒンダードアミン化合物の全質量中における、ポリマー型ヒンダードアミン化合物と重合性基を有するヒンダードアミン化合物との合計の含有量は、10~100質量%が好ましい。下限は、50質量%以上であることが好ましい。
また、ヒンダードアミン化合物の含有量は、近赤外線吸収色素の100質量部に対して、0.03~100質量部であることが好ましい。上限は、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。下限は、0.1質量部以上であることが好ましい。ヒンダードアミン化合物と近赤外線吸収色素との割合が上記範囲であれば、樹脂組成物の保存安定性と、得られる膜の熱信頼性を高い水準で両立できる。
また、本発明の樹脂組成物において、酸化防止剤の全量中におけるヒンダードアミン化合物の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
また、本発明の樹脂組成物が、酸化防止剤として更にフェノール系酸化防止剤を含有する場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、ヒンダードアミン化合物の100質量部に対して10~90質量部であることが好ましい。上限は、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましい。下限は、30質量部以上であることが好ましい。ヒンダードアミン化合物とフェノール系酸化防止剤との割合が上記範囲であれば、得られる膜の熱信頼性をより向上できる。
【0056】
<<近赤外線吸収色素>>
本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素を含有する。近赤外線吸収色素は、顔料(近赤外線吸収顔料ともいう)であってもよく、染料(近赤外線吸収染料ともいう)であってもよい。また、近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料とを併用することも好ましい。近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料とを併用する場合、近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料との質量比は、近赤外線吸収染料:近赤外線吸収顔料=99.9:0.1~0.1:99.9であることが好ましく、99.9:0.1~10:90であることがより好ましく、99.9:0.1~20:80であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明において、近赤外線吸収染料は、23℃のシクロペンタノン、シクロヘキサノン、および、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤100gに対する溶解度が、1g以上であることが好ましく、2g以上であることがより好ましく、5g以上であることがさらに好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、23℃のシクロペンタノン、シクロヘキサノン、および、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのそれぞれの溶剤100gに対する溶解度が、1g未満であることが好ましく、0.1g以下であることがより好ましく、0.01g以下であることがさらに好ましい。
【0058】
近赤外線吸収色素は、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する化合物であることが好ましい。近赤外線吸収色素のπ共役平面における芳香族環同士の相互作用により、膜の製造時に近赤外線吸収色素のJ会合体が形成されやすく、近赤外領域の分光特性に優れた膜を製造できる。
【0059】
近赤外線吸収色素が有するπ共役平面を構成する水素以外の原子数は、14個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましく、25個以上であることが更に好ましく、30個以上であることが特に好ましい。上限は、例えば、80個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。
【0060】
近赤外線吸収色素が有するπ共役平面は、単環または縮合環の芳香族環を2個以上含むことが好ましく、前述の芳香族環を3個以上含むことがより好ましく、前述の芳香族環を4個以上含むことが更に好ましく、前述の芳香族環を5個以上含むことが特に好ましい。上限は、100個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、30個以下が更に好ましい。前述の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、および、これらの環を有する縮合環が挙げられる。
【0061】
近赤外線吸収色素は、酸基および塩基性基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物であることが好ましく、酸基を有する化合物であることがより好ましい。近赤外線吸収色素として、酸基や塩基性基を有する化合物を用いた場合においては、耐溶剤性に優れた膜を製造し易い。
【0062】
酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられ、耐溶剤性に優れた膜を形成し易いという理由からカルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基が好ましく、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基がより好ましい。カルボン酸アミド基としては、-NHCORa1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、-NHSO2a2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、-SO2NHSO2a3、-CONHSO2a4、-CONHCORa5または-SO2NHCORa6で表される基が好ましい。Ra1~Ra6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などが挙げられる。Ra1~Ra6が表す、炭化水素基および複素環基は、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、後述する置換基Tで説明する基が挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。なかでも、カルボン酸アミド基としては、フルオロアルキルカルボン酸アミド基(上記の式において、RA1がフルオロアルキル基(水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたアルキル基)である構造の基)であることが好ましく、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド基(上記の式において、Ra1がパーフルオロアルキル基(水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基)である構造の基)であることがより好ましい。また、スルホン酸アミド基としては、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド基(上記の式において、Ra2がフルオロアルキル基(水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたアルキル基)である構造の基)であることが好ましく、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド基(上記の式において、Ra2がパーフルオロアルキル基(水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基)である構造の基)であることがより好ましい。
塩基性基としては、3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基、アンモニウム基などが挙げられる。
【0063】
近赤外線吸収色素は、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有し、かつ、極大吸収波長における吸光度Amaxと、波長550nmにおける吸光度A550との比であるAmax/A550が50~500である化合物であることが好ましい。近赤外線吸収色素におけるAmax/A550は、70~450であることが好ましく、100~400であることがより好ましい。この態様によれば、可視透明性と近赤外線遮蔽性に優れた膜を製造しやすい。なお、波長550nmにおける吸光度A550、および、極大吸収波長における吸光度Amaxは、近赤外線吸収色素の溶液中での吸収スペクトルから求めた値である。
【0064】
本発明において、近赤外線吸収色素としては、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の化合物を用いることも好ましい。この態様によれば、膜の吸収スペクトルの波形が、1種類の近赤外線吸収色素を使用した場合に比べて広がり、幅広い波長範囲の近赤外線を遮蔽することができる。極大吸収波長の異なる少なくとも2種の化合物を用いる場合、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の近赤外線吸収色素と、第1の近赤外線吸収色素の極大吸収波長よりも短波長側であって、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有する第2の近赤外線吸収色素とを少なくとも含み、第1の近赤外線吸収色素の極大吸収波長と、第2の近赤外線吸収色素の極大吸収波長との差が1~150nmであることが好ましい。
【0065】
本発明において、近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、イミニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物及びジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物およびイミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が特に好ましく、ピロロピロール化合物が最も好ましい。イミニウム化合物としては、特表2008-528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。例えば、N,N,N’,N’,-テトラキス(p-ジ(n-ブチル)アミノフェニル)-p-フェニレンジイモニウムのビス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素塩、N,N,N’,N’,-テトラキス(p-ジ(n-ブチル)アミノフェニル)-p-フェニレンジイモニウムの6フッ化アンチモン酸塩などが挙げられる。フタロシアニン化合物としては、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イミニウム化合物およびスクアリリウム化合物は、特開2010-111750号公報の段落番号0010~0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物については、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収色素としては、特開2016-146619号公報に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収色素は、下記構造の化合物を用いることも好ましい。
【化15】
【0066】
ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
【化16】

式中、R1aおよびR1bは、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4A4B、または金属原子を表し、R4は、R1a、R1bおよびR3から選ばれる少なくとも一つと共有結合もしくは配位結合していてもよく、R4AおよびR4Bは、各々独立に置換基を表す。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。式(PP)の詳細については、特開2009-263614号公報の段落番号0017~0047、特開2011-68731号公報の段落番号0011~0036、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010~0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0067】
式(PP)において、R1aおよびR1bは、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、特開2009-263614号公報の段落番号0020~0022に記載された置換基や、以下の置換基Tが挙げられる。
【0068】
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0~30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1~30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1~30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0069】
1a、R1bで表される基の具体例としては、アルコキシ基を置換基として有するアリール基、ヒドロキシ基を置換基として有するアリール基、アシルオキシ基を置換基として有するアリール基などが挙げられる。
【0070】
式(PP)において、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。R2およびR3の少なくとも一方は電子求引性基が好ましい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.2以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは0.80以下である。電子求引性基の具体例としては、シアノ基(σp値=0.66)、カルボキシル基(-COOH:σp値=0.45)、アルコキシカルボニル基(例えば、-COOMe:σp値=0.45)、アリールオキシカルボニル基(例えば、-COOPh:σp値=0.44)、カルバモイル基(例えば、-CONH2:σp値=0.36)、アルキルカルボニル基(例えば、-COMe:σp値=0.50)、アリールカルボニル基(例えば、-COPh:σp値=0.43)、アルキルスルホニル基(例えば、-SO2Me:σp値=0.72)、アリールスルホニル基(例えば、-SO2Ph:σp値=0.68)などが挙げられ、シアノ基が好ましい。ここで、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、ハメットの置換基定数σ値については、例えば、特開2011-68731号公報の段落番号0017~0018を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0071】
式(PP)において、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。式(PP)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(PP)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
式(PP)において、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基または-BR4A4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または-BR4A4Bで表される基であることがより好ましく、-BR4A4Bで表される基であることが更に好ましい。R4AおよびR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0073】
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-68731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【化17】
【0074】
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。
【化18】

式(SQ)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基または式(A-1)で表される基を表す;
【化19】

式(A-1)中、Z1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R2は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011-208101号公報の段落番号0020~0049、特許第6065169号公報の段落番号0043~0062、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0024~0040の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0075】
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【化20】
【0076】
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ-1)で表される化合物が好ましい。
【化21】

環Aおよび環Bは、それぞれ独立に芳香族環を表し、
AおよびXBはそれぞれ独立に置換基を表し、
AおよびGBはそれぞれ独立に置換基を表し、
kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表し、
AおよびnBはそれぞれ環Aまたは環Bに置換可能な最大の整数を表し、
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環構造を形成していても良い。
【0077】
AおよびGBが表す置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
【0078】
AおよびXBが表す置換基としては、活性水素を有する基が好ましく、-OH、-SH、-COOH、-SO3H、-NRX1X2、-NHCORX1、-CONRX1X2、-NHCONRX1X2、-NHCOORX1、-NHSO2X1、-B(OH)2および-PO(OH)2がより好ましく、-OH、-SHおよび-NRX1X2が更に好ましい。RX1およびRX2は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。XAおよびXBが表す置換基としてはアルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0079】
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、芳香族環を表す。芳香族環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられ、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。芳香族環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
【0080】
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環を形成していても良い。環としては、5員環または6員環が好ましい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。XAとGA、XBとGB、XAとXB、GA同士またはGB同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、-CO-、-O-、-NH-、-BR-およびそれらの組み合わせからなる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、アルキル基またはアリール基が好ましい。
【0081】
kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表し、nAは、環Aに置換可能な最大の整数を表し、nBは、環Bに置換可能な最大の整数を表す。kAおよびkBは、それぞれ独立に0~4が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が特に好ましい。
【0082】
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ-10)、式(SQ-11)または式(SQ-12)で表される化合物であることも好ましい。
式(SQ-10)
【化22】

式(SQ-11)
【化23】

式(SQ-12)
【化24】
【0083】
式(SQ-10)~(SQ-12)中、Xは、独立して、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
-(CH2n1- ・・・(1)
式(1)中、n1は2または3である。
-(CH2n2-O-(CH2n3- ・・・(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0~2の整数であり、n2+n3は1または2である。
1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表す。アルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
3~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。
nは2または3である。
【0084】
スクアリリウム化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。以下構造式中、EHは、エチルヘキシル基を表す。また、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、国際公開WO2013/133099号公報に記載の化合物、国際公開WO2014/088063号公報に記載の化合物、特開2014-126642号公報に記載の化合物、特開2016-146619号公報に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、特開2017-25311号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/154782号公報に記載の化合物、特許5884953号公報に記載の化合物、特許6036689号公報に記載の化合物、特許5810604号公報に記載の化合物、特開2017-068120号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【化25】
【0085】
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C)
【化26】

式中、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、
101およびR102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基またはアリール基を表し、
1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1であり、
aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、
式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
【0086】
シアニン化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
また、シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-88426号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【化27】
【0087】
本発明において、近赤外線吸収色素としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO-C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR-14、イーエクスカラーIR-10A、イーエクスカラーTX-EX-801B、イーエクスカラーTX-EX-805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA-8041、ShigenoxNIA-8042、ShigenoxNIA-814、ShigenoxNIA-820、ShigenoxNIA-839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV-63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO-JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK-3027、NK-5060((株)林原製)、YKR-3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0088】
本発明の樹脂組成物において、近赤外線吸収色素の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。近赤外線吸収色素の含有量が5質量%以上であれば、薄膜で、近赤外線遮蔽性に優れた膜を形成し易い。また、樹脂組成物の全固形分中における近赤外線吸収色素の含有量が多くなるに伴い、樹脂組成物の経時安定性が低下し易い傾向にあるが、本発明の樹脂組成物は、近赤外線吸収色素の含有量が多くても経時安定性に優れているため、近赤外線吸収色素の含有量が多い場合において特に顕著な効果が得られる。近赤外線吸収色素の含有量の上限は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。本発明において、近赤外線吸収色素は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0089】
<<他の近赤外線吸収剤>>
本発明の樹脂組成物は、上述した近赤外線吸収色素以外の近赤外線吸収剤(他の近赤外線吸収剤ともいう)を更に含んでもよい。他の近赤外線吸収剤としては、無機顔料(無機粒子)が挙げられる。無機顔料の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。無機顔料としては、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子などが挙げられる。また、無機顔料としては酸化タングステン系化合物を用いることもできる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016-006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
本発明の樹脂組成物が他の近赤外線吸収剤を含有する場合、他の近赤外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して0.01~50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
また、上述した近赤外線吸収色素と他の近赤外線吸収剤との合計質量中における他の近赤外線吸収剤の含有量は、1~99質量%が好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないことも好ましい。他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないとは、上述した近赤外線吸収色素と他の近赤外線吸収剤との合計質量中における他の近赤外線吸収剤の含有量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、他の近赤外線吸収剤を含有しないことが更に好ましい。
【0091】
<<樹脂>>
本発明の樹脂組成物は樹脂を含有する。樹脂は、例えば顔料などを組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0092】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~100000が好ましい。上限は、80000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、40000以下が更に好ましい。下限は、3000以上が好ましく、4000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。樹脂の重量平均分子量は他素材との相溶性と揮発性の観点から5000~40000であることが特に好ましい。
【0093】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載された樹脂、特開2017-57265号公報に記載された樹脂、特開2017-32685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-066240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基またはベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化28】
【0094】
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0095】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0096】
酸基を有する樹脂は、更に重合性基を有していてもよい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。市販品としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(カルボキシル基含有ポリウレタンアクリレートオリゴマー、Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR-264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーシリーズ(例えば、ACA230AA、ACA250など)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、アクリキュアーRD-F8((株)日本触媒製)などが挙げられる。
【0097】
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0098】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
【0099】
【化29】
【0100】
式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化30】

式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。。
【0101】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落番号0317に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0102】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化31】

式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0103】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
【0104】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0105】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化32】
【0106】
本発明の樹脂組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0107】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0108】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、下記の樹脂が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体としては特開2012-255128号公報の段落番号0072~0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化33】
【0109】
また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤としては、下記構造の樹脂や、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることができる。
【化34】
【0110】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk-111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0111】
樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下がより一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。また、酸基を有する樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下がより一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。樹脂組成物は、樹脂を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0112】
また、樹脂として分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、75質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
【0113】
<<硬化性化合物>>
樹脂組成物は硬化性化合物を含有することが好ましい。硬化性化合物としては、ラジカル、酸、熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。例えば、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、環状エーテル基を有する化合物等が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。本発明において、硬化性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を用いた場合、酸化防止剤として用いるヒンダードアミン化合物が、カチオン重合性化合物の硬化反応によって消費されてしまうことがあり、本発明の目的とする効果が十分に得られないことがあるが、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合においては、ヒンダードアミン化合物の配合量が少量であっても、優れた効果が得られる。
【0114】
硬化性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。硬化性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0115】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物としては、ラジカルの作用により重合可能な化合物であればよく、特に限定はない。ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を1個以上有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物がより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を3個以上有する化合物が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。ラジカル重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0116】
ラジカル重合性化合物は、モノマーであることが好ましい。モノマータイプのラジカル重合性化合物の分子量は、200~3000であることが好ましい。分子量の上限は、2500以下が好ましく、2000以下が更に好ましい。分子量の下限は、250以上が好ましく、300以上が更に好ましい。
【0117】
ラジカル重合性化合物の例としては、特開2013-253224号公報の段落番号0033~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。重合性化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM-35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基および/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012-208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP-1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。また、ラジカル重合性化合物として、アロニックス M-350、TO-2349(東亞合成製)を使用することもできる。
【0118】
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基と、酸基およびヒドロキシ基から選ばれる少なくとも1種の基とを有する化合物(ラジカル重合性化合物Aともいう)であることも好ましい。この態様によれば、保存安定性に優れた樹脂組成物が得られやすい。なかでも、ラジカル重合性化合物Aとして、エチレン性不飽和結合を有する基と、酸基とを有する化合物を用いた場合においては、樹脂組成物の保存安定性をより向上させやすい。更には、得られる膜の耐溶剤性をより向上させやすい。
【0119】
ラジカル重合性化合物Aの酸価は、1.0mmol/g以上であることが好ましく、1.5mmol/g以上であることがより好ましく、2.0mmol/g以上であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物Aの酸価が上記範囲であれば、樹脂組成物の保存安定性、得られる膜の耐光性および耐溶剤性が特に優れる。また、ラジカル重合性化合物Aのヒドロキシ基価は、1.5mmol/g以上であることが好ましく、2.0mmol/g以上であることがより好ましく、2.5mmol/g以上であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物Aのヒドロキシ基価が上記範囲であれば、膜の親水化により酸素の侵入が抑制され、耐光性に優れた膜が得られやすい。
【0120】
ラジカル重合性化合物Aは、下記式(M-1)で表される化合物が好ましい。
式(M-1)
(A1n1-L1-(Ac1n2
(式(M-1)中、A1はヒドロキシ基または酸基を表し、L1は、(n1+n2)価の基を表し、Ac1はエチレン性不飽和結合を有する基を表す。n1は1以上の整数を表し、n2は1以上の整数を表す。)
【0121】
1が表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
1が表す(n1+n2)価の基としては、炭化水素基、複素環基、-O-、-S-、-NR-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、水素原子が好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、環状であってもよく、非環状であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。また、環状の脂肪族炭化水素基、および、芳香族炭化水素基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。複素環基としては、5員環または6員環が好ましい。複素環基は、脂肪族複素環基であっても、芳香族複素環基であってもよい。また、複素環基を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。L1は、炭化水素基を少なくとも含む基が好ましい。L1を構成する炭素原子の数は、3~100であることが好ましく、6~50であることがより好ましい。
Ac1が表すエチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
n1は、1または2が好ましく、1がより好ましい。n2は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。n2の上限は、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下が特に好ましい。
【0122】
ラジカル重合性化合物Aの具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、ラジカル重合性化合物Aの市販品としては、東亞合成(株)のアロニックスシリーズ(例えば、M-305、M-510、M-520など)が挙げられる。
【化35】
【0123】
ラジカル重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物であることも好ましい態様である。カプロラクトン構造を有するラジカル重合性化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε-カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε-カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。カプロラクトン構造を有する重合性化合物としては、特開2013-253224号公報の段落番号0042~0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。カプロラクトン構造を有する化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0124】
ラジカル重合性化合物として、エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基と、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基とを有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基とエチレンオキシ基とを有する化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0125】
ラジカル重合性化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載されている分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。市販品としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学(株))製などが挙げられる。
また、ラジカル重合性化合物としては、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
また、ラジカル重合性化合物としては、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0126】
本発明の樹脂組成物がラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。また、ラジカル重合性化合物と、樹脂との質量比は、ラジカル重合性化合物/樹脂=0.4~1.4であることが好ましい。上記質量比の下限は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。上記質量比の上限は1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。上記質量比が、上記範囲であれば、より矩形性に優れたパターンを形成することができる。ラジカル重合性化合物は1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性化合物を2種以上併用する場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0127】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物としては、カチオン重合性基を有する化合物が挙げられる。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基などの環状エーテル基などが挙げられる。カチオン重合性化合物は、環状エーテル基を有する化合物であることが好ましく、エポキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
【0128】
エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基を有する化合物はエポキシ基を1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の数の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。
【0129】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0130】
エポキシ基を有する化合物が低分子化合物の場合、例えば、下記式(EP1)で表される化合物が挙げられる。
【0131】
【化36】
【0132】
式(EP1)中、REP1~REP3は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基を表し、アルキル基は、環状構造を有するものであってもよく、また、置換基を有していてもよい。またREP1とREP2、REP2とREP3は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。QEPは単結合若しくはnEP価の有機基を表す。REP1~REP3は、QEPとも結合して環構造を形成していても良い。nEPは2以上の整数を表し、好ましくは2~10、更に好ましくは2~6である。但しQEPが単結合の場合、nEPは2である。
EP1~REP3、QEPの詳細について、特開2014-089408号公報の段落番号0087~0088の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。式(EP1)で表される化合物の具体例としては、特開2014-089408号公報の段落0090に記載の化合物、特開2010-054632号公報の段落番号0151に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0133】
低分子化合物としては、市販品を用いることもできる。例えば、(株)ADEKA製のアデカグリシロールシリーズ(例えば、アデカグリシロールED-505など)、(株)ダイセル製のエポリードシリーズ(例えば、エポリードGT401など)などが挙げられる。
【0134】
エポキシ基を有する化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3300g/eqであることが好ましく、310~1700g/eqであることがより好ましく、310~1000g/eqであることが更に好ましい。エポキシ樹脂は、市販品を用いることもできる。例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0135】
本発明において、エポキシ基を有する化合物は、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0136】
本発明の樹脂組成物がカチオン重合性化合物を含有する場合、カチオン重合性化合物の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。カチオン重合性化合物は1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。カチオン重合性化合物を2種以上併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、樹脂組成物が、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを含む場合、両者の質量比は、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物=100:1~100:400が好ましく、100:1~100:100がより好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、カチオン重合性化合物を実質的に含まないことも好ましい。本発明の樹脂組成物が、カチオン重合性化合物を実質的に含まない場合、樹脂組成物の全固形分に対して、カチオン重合性化合物の含有量が0.05質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0137】
<<光重合開始剤>>
本発明の樹脂組成物は光重合開始剤を含有することができる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤などが挙げられる。硬化性化合物の種類に応じて選択して用いることが好ましい。硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合においては、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。また、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を用いた場合においては、光重合開始剤として光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。
【0138】
光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。樹脂組成物は、光重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0139】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0140】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0141】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられるまた、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0142】
本発明において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0144】
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0145】
本発明において、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0146】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
【化37】

【化38】
【0148】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0149】
本発明は、光ラジカル重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016-532675号公報の段落番号0417~0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1~7などが挙げられる。
【0150】
光ラジカル重合開始剤は、オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α-アミノケトン化合物が50~600質量部が好ましく、150~400質量部がより好ましい。
【0151】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0152】
(光カチオン重合開始剤)
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。光カチオン重合開始剤の詳細については特開2009-258603号公報の段落番号0139~0214の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0153】
光カチオン重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。樹脂組成物は、光カチオン重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光カチオン重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0154】
<<有彩色着色剤>>
本発明の樹脂組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
【0155】
有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、有機顔料であることが好ましい。有機顔料としては、以下が挙げることができる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
【0156】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015-028144号公報、特開2015-34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0157】
本発明の樹脂組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して1~50質量%が好ましい。本発明の樹脂組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。本発明の樹脂組成物が有彩色着色剤を実質的に含有しない場合とは、有彩色着色剤の含有量が樹脂組成物の全固形分に対して0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが更に好ましい。
【0158】
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の樹脂組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450~650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900~1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
【0159】
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報、国際公開WO2014/208348号公報、特表2015-525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1-170601号公報、特開平2-34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0160】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
【0161】
本発明の樹脂組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の樹脂組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、樹脂組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
【0162】
<<顔料誘導体>>
本発明の樹脂組成物は、更に顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、色素骨格に、酸基および塩基性基から選ばれる少なくとも1種の基が結合した化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
【0163】
【化39】

式(B1)中、Pは色素骨格を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基または塩基性基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
【0164】
Pが表す色素骨格としては、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格およびベンゾイミダゾロン色素骨格から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素骨格が特に好ましい。
【0165】
Lが表す連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が好ましく、無置換でもよく、置換基を更に有していてもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
【0166】
Xが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、-NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、-NHSO2X2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、-SO2NHSO2X3、-CONHSO2X4、-CONHCORX5または-SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1~RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。RX1~RX6が表す、炭化水素基および複素環基は、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
Xが表す塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。
【0167】
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平1-217077号公報、特開平3-9961号公報、特開平3-26767号公報、特開平3-153780号公報、特開平3-45662号公報、特開平4-285669号公報、特開平6-145546号公報、特開平6-212088号公報、特開平6-240158号公報、特開平10-30063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086~0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063~0094等に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化40】
【0168】
本発明の樹脂組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0169】
<<溶剤>>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0170】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0171】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0172】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0173】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0174】
溶剤の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、10~90質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。また、環境面等の理由により、樹脂組成物は、溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)を含有しないことが好ましい場合もある。
【0175】
<<界面活性剤>>
本発明の樹脂組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。樹脂組成物に界面活性剤を含有させることにより、膜表面に界面活性剤を偏在させつつ、膜中においては、近赤外線吸収色素の近傍に酸化防止剤を存在させやすい。このため、膜表面に偏在した界面活性剤によって近赤外線吸収色素の空気界面への露出を抑制できるとともに、近赤外線吸収色素近傍に存在する酸化防止剤によって、熱励起した酸素ラジカルなどの近赤外線吸収色素への攻撃を効果的に抑制できると推測される。このため、より優れた熱信頼性を有する膜を形成することができる。
【0176】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用でき、フッ素系界面活性剤が好ましい。本発明の樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、膜表面への近赤外線吸収色素の浮き上がりを効果的に抑止でき、より優れた熱信頼性を有する膜を形成し易い。
【0177】
界面活性剤は、分子量が1000未満の化合物であってもよく、分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)が1000以上の化合物であってもよい。なかでも、本発明の効果がより顕著に得られるという理由から、界面活性剤は、重量平均分子量が1000以上のポリマーであることが好ましい。界面活性剤の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の重量平均分子量の上限は、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、30000以下であることが更に好ましい。
【0178】
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014-41318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェントFTX-218D(ネオス社製)等が挙げられる。
【0179】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0180】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化41】

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0181】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0182】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレートおよびプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0183】
カチオン系界面活性剤としては、KP-341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0184】
アニオン系界面活性剤としては、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0185】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0186】
界面活性剤の含有量は、樹脂組成物に対して0.01~1質量%が好ましい。上限は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。下限は、0.015質量%以上であることが好ましい。
また、フッ素系界面活性剤の含有量は、樹脂組成物に対して0.01~1質量%が好ましい。上限は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましい。下限は、0.015質量%以上であることが好ましい。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0187】
<<重合禁止剤>>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%が好ましい。
【0188】
<<シランカップリング剤>>
本発明の樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤を含有することで、支持体との密着性に優れた膜を形成し易い。特に、支持体としてガラスを用いた場合において効果的である。
【0189】
本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、スチレン基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0190】
シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0191】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、アゾメチン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-68814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。共役ジエン化合物の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。インドール化合物としては下記構造の化合物が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
【化42】
【0192】
本発明においては、紫外線吸収剤として、式(UV-1)~式(UV-3)で表される化合物を好ましく用いることもできる。
【化43】
【0193】
式(UV-1)において、R101及びR102は、各々独立に、置換基を表し、m1およびm2は、それぞれ独立して0~4を表す。式(UV-2)において、R201及びR202は、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R203及びR204は、各々独立に、置換基を表す。式(UV-3)において、R301~R303は、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、R304及びR305は、各々独立に、置換基を表す。
【0194】
式(UV-1)~式(UV-3)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化44】
【0195】
本発明の樹脂組成物において、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0196】
<<その他成分>>
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分は、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0197】
本発明の樹脂組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~3000mPa・sの範囲にあることが好ましい。下限は、3mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましい。上限は、2000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましい。
【0198】
本発明の樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0199】
本発明の樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。また、本発明の樹脂組成物において、更に、可視光を遮光する色材を含有させることで、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。
【0200】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。樹脂組成物の調製に際しては、例えば、全成分を同時に有機溶剤に溶解または分散して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して樹脂組成物として調製してもよい。
【0201】
また、本発明の樹脂組成物は、顔料などの粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0202】
樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。フィルタの孔径は、0.01~7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01~3.0μm程度であり、更に好ましくは0.05~0.5μm程度である。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
【0203】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材等で形成されたものを使用することができる。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0204】
<膜>
本発明の膜は、上述した本発明の樹脂組成物から得られる膜である。本発明の膜は、近赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタや赤外線透過フィルタとして用いることもできる。本発明の膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
【0205】
本発明の膜は、支持体上に積層して用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコン基板などの半導体基材や、透明基材が挙げられる。
【0206】
支持体として用いられる半導体基材には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、半導体基材には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていてもよい。また、半導体基材には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0207】
支持体として用いられる透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅を含有するガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスとしては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスにおける銅の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.3~17質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましい。銅を含有するガラスは、波長700~1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。下限は800nm以上であることが好ましく、900nm以上であることがより好ましい。上限は1050nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましい。銅を含有するガラスは、市販品を用いることもできる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF-50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。
【0208】
本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。膜の厚さは20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜の厚さの下限は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。
【0209】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましく、波長720~980nmの範囲に極大吸収波長を有することがさらに好ましく、波長740~960nmの範囲に極大吸収波長を有することが特に好ましい。また、極大吸収波長における吸光度Amaxと、波長550nmにおける吸光度A550との比であるAmax/A550は50~500であることが好ましく、70~450であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
【0210】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の膜は以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、(1)~(4)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
(1)波長400nmの光の透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。
(2)波長500nmの光の透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長600nmの光の透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長650nmの光の透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0211】
本発明の膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の樹脂組成物に含んでもよいものとして挙げた有彩色着色剤が挙げられる。また、本発明の膜に有彩色着色剤を含有させて、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとしての機能を備えたフィルタとしてもよい。
【0212】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の膜とカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
【0213】
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過させるものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0214】
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0215】
<膜の製造方法>
本発明の膜は、本発明の樹脂組成物を支持体上に適用する工程を経て製造できる。
【0216】
支持体としては、上述したものが挙げられる。樹脂組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。
【0217】
樹脂組成物を適用して形成した樹脂組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク温度を150℃以下で行うことにより、例えば、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、これらの特性をより効果的に維持することができる。
プリベーク時間は、10秒~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0218】
本発明の膜の製造方法においては、更にパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。なお、本発明の膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
【0219】
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の樹脂組成物を適用して形成した樹脂組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の樹脂組成物層を除去することにより現像してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0220】
<<露光工程>>
露光工程では樹脂組成物層をパターン状に露光する。例えば、樹脂組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、樹脂組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましく、0.08~0.5J/cm2が最も好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0221】
<<現像工程>>
次に、露光後の樹脂組成物層における未露光部の樹脂組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の樹脂組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の樹脂組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0222】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を添加して用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述の界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0223】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークを行う場合、ポストベーク温度は、例えば100~240℃が好ましい。膜硬化の観点から、200~230℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、ポストベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜に対して、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。また、低温プロセスによりパターンを形成する場合は、ポストベークは行わなくてもよい。
【0224】
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、本発明の樹脂組成物を支持体上などに適用して形成した樹脂組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。レジスト層の形成においては、更にプリベーク処理を施すことが好ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0225】
<光学フィルタ>
次に、本発明の光学フィルタについて説明する。本発明の光学フィルタは、上述した本発明の膜を有する。光学フィルタとしては、近赤外線カットフィルタや赤外線透過フィルタなどが挙げられる。赤外線透過フィルタとしては、例えば、可視光を遮光し、波長900nm以上の波長の光を透過するフィルタなどが挙げられる。
【0226】
光学フィルタにおける、本発明の膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。厚さは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
【0227】
本発明の光学フィルタを近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜の他に、更に、銅を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。近赤外線カットフィルタが、更に、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られ易い。また、近赤外線カットフィルタが、更に、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040~0070、0119~0145の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014-41318号公報の段落番号0255~0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。銅を含有する層としては、銅を含有するガラスで構成されたガラス基板(銅含有ガラス基板)や、銅錯体を含む層(銅錯体含有層)を用いることもできる。銅を含有するガラスとしては、上述したものが挙げられる。銅錯体としては、特開2016-006476号公報、特開2016-006151号公報、特開2015-158662号公報に記載された銅錯体が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0228】
本発明の光学フィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0229】
また、本発明の光学フィルタは、本発明の膜の画素と、赤、緑、青、マゼンタ、黄、シアン、黒および無色から選ばれる画素とを有する態様も好ましい。
【0230】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0231】
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明における膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明における膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明における膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0232】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
【0233】
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0234】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0235】
近赤外線カットフィルタ111は本発明の樹脂組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。
【0236】
例えば、赤外LEDの発光波長が850nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長400~650nmの範囲における最大値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。この透過率は、波長400~650nmの範囲の全域で上記の条件を満たすことが好ましい。また、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光透過率の、波長800nm以上(好ましくは800~1300nm)の範囲における最小値が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。上記の透過率は、波長800nm以上の範囲の一部で上記の条件を満たすことが好ましく、赤外LEDの発光波長に対応する波長で上記の条件を満たすことが好ましい。
【0237】
また、例えば、赤外LEDの発光波長が940nmである場合、赤外線透過フィルタ114は、膜の厚み方向における光の透過率の、波長450~650nmの範囲における最大値が30%以下であり、膜の厚み方向における、波長835nmの光の透過率が30%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率の、波長1000~1300nmの範囲における最小値が70%以上であることが好ましい。
【0238】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
【実施例
【0239】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0240】
[試験例1]
<樹脂組成物の調製>
下記の表に記載の原料を混合して、樹脂組成物を調製した。なお、原料として分散液を用いた樹脂組成物においては、以下のように調製した分散液を用いた。
下記表の分散液の欄に記載の種類の近赤外線吸収色素、顔料誘導体、分散剤および溶剤を、それぞれ下記の表の分散液の欄に記載の質量部で混合し、更に直径0.3mmのジルコニアビーズ230質量部を加えて、ペイントシェーカーを用いて5時間分散処理を行い、ビーズをろ過で分離して分散液を製造した。
【0241】
【表1】
【0242】
【表2】
【0243】
【表3】
【0244】
【表4】
【0245】
【表5】
【0246】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
(近赤外線吸収色素)
A1~A7:下記構造の化合物。以下の式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、EHはエチルヘキシル基を表す。
【化45】

A8:特開2008-88426号公報の段落番号0051に記載の化合物31
A9:特開2008-88426号公報の段落番号0049に記載の化合物16
A10:特開2016-146619号公報の段落番号0173に記載の化合物a-1
A11:特開2016-146619号公報の段落番号0173に記載の化合物a-2
A12:特開2016-146619号公報の段落番号0173に記載の化合物a-3
A13:NK-5060((株)林原製、シアニン化合物)
A14~A16:下記構造の化合物。
【化46】
【0247】
(顔料誘導体)
B1~B7:下記構造の化合物。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化47】
【0248】
(分散剤)
C1:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000、酸価=105mgKOH/g)
C2:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=20,000、酸価=30mgKOH/g)
【化48】
【0249】
(樹脂)
D1:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=40000)
【化49】

D2:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=20000)
【化50】

D3:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=10000)
【化51】

D4:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=3000)
【化52】

D5:下記構造の樹脂。(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw=60000)
【化53】
【0250】
(重合性モノマー)
M1:下記構造の化合物(ラジカル重合性化合物)
M2:下記構造の化合物(ラジカル重合性化合物)
M3:下記構造の化合物(ラジカル重合性化合物)
【化54】
【0251】
(光重合開始剤)
F1:IRGACURE OXE01 (BASF製、光ラジカル重合開始剤)
F2:IRGACURE 369 (BASF製、光ラジカル重合開始剤)
F3:下記構造の化合物(光ラジカル重合開始剤)
【化55】
【0252】
(紫外線吸収剤)
UV1~UV3:下記構造の化合物
【化56】
【0253】
(界面活性剤)
W1:下記混合物(Mw=14000、フッ素系界面活性剤)。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【化57】
【0254】
(重合禁止剤)
H1:p-メトキシフェノール
【0255】
(酸化防止剤1)ヒンダードアミン化合物
I1:アデカスタブ LA-82((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I2:アデカスタブ LA-87((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I3:アデカスタブ LA-72((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I4:アデカスタブ LA-77((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I5:アデカスタブ LA-52((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I6:アデカスタブ LA-57((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I7:アデカスタブ LA-81((株)ADEKA製、下記構造の化合物)
I8:CHIMASSORB 2020FDL(BSAF社製、下記構造の化合物、Mw=2600~3400)
I9:TINUVIN 622 SF(BSAF社製、下記構造の化合物、Mw=3100~4000)
I10:TINUVIN PA144L(BSAF社製、下記構造の化合物)
【化58】
【0256】
(酸化防止剤2)ヒンダードアミン化合物以外の酸化防止剤
I21:アデカスタブ AO-80((株)ADEKA製、ヒンダードフェノール化合物、下記構造の化合物、以下の構造式中tBuはtert-ブチル基を表す)
I22:アデカスタブ AO-60((株)ADEKA製、ヒンダードフェノール化合物、下記構造の化合物、以下の構造式中tBuはtert-ブチル基を表す)
I23:アデカスタブ PEP-36((株)ADEKA製、リン系化合物、下記構造の化合物)
I24、I25:下記構造の化合物
【化59】
【0257】
(溶剤)
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S2:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
S3:3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
【0258】
<評価>
[保存安定性]
製造直後の樹脂組成物の粘度を測定した。粘度を測定した樹脂組成物を45℃の恒温槽で72時間保管したのち、再び粘度を測定した。なお、粘度は、樹脂組成物の温度を23℃に調整して測定した。以下の計算式から増粘率を算出し、保存安定性を評価した。
増粘率(%)=((45℃の恒温槽で72時間保管後の樹脂組成物の粘度/製造直後の樹脂組成物の粘度)-1)×100
5:樹脂組成物の増粘率が5%以下。
4:樹脂組成物の増粘率が5%を超えて、7.5%以下。
3:樹脂組成物の増粘率が7.5%を超えて、10%以下。
2:樹脂組成物の増粘率が10%を超えて、15%以下。
1:樹脂組成物の増粘率が15%を超えて、25%以下。
0:樹脂組成物の増粘率が25%を超えている。
【0259】
[熱信頼性]
各樹脂組成物をプリベーク後の膜厚が0.8μmとなるようにスピンコーター(ミカサ(株)製)を用いてガラス基板上に塗布して塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃、120秒間の加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用いて1000mJ/cm2の露光量で全面露光を行った後、再度ホットプレートを用いて200℃、300秒間の加熱(ポストベーク)を行い、膜を得た。得られた膜について、波長400~1300nmの光の吸光度を測定した。次に、得られた膜について、150℃のオーブンで6ヶ月加熱した後、波長400~1300nmの光の吸光度を測定した。オーブンで150℃の加熱を行う前後の最大吸光度の変化率を求め、以下の基準にて熱信頼性を評価した。なお、最大吸光度の変化率とは、加熱前後の膜について、波長400~1300nmの範囲における吸光度が最も大きい波長における吸光度の変化率のことである。また、吸光度の変化率は以下の式から求めた値である。
吸光度の変化率(%)=(|加熱前の吸光度-加熱後の吸光度|/加熱前の吸光度)×100
5:最大吸光度の変化率が5%以下。
4:最大吸光度の変化率が5%を超えて、7.5%以下。
3:最大吸光度の変化率が7.5%を超えて、10%以下。
2:最大吸光度の変化率が10%を超えて、15%以下。
1:最大吸光度の変化率が15%を超えて、25%以下。
0:最大吸光度の変化率が25%を超えている。
【0260】
[分光性能]
各樹脂組成物をプリベーク後の膜厚が0.8μmとなるようにスピンコーター(ミカサ(株)製)を用いてガラス基板上に塗布して塗膜を形成した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃、120秒間の加熱(プリベーク)を行った後、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用いて1000mJ/cm2の露光量で全面露光を行った後、再度ホットプレートを用いて200℃、300秒間の加熱(ポストベーク)を行い、膜を得た。得られた膜について、波長400~1300nmの光の吸光度を測定し、波長700~1300nmの範囲における極大吸収波長での吸光度Aを算出し、以下の基準で分光性能を評価した。
A:吸光度Aが0.3以上
B:吸光度Aが0.3未満
【0261】
【表6】
【0262】
各実施例の樹脂組成物は、波長700~1300nmの範囲に極大吸収波長を有し、前述の極大吸収波長における吸光度が高かった。そして各実施例の樹脂組成物を用いて得られた膜は可視透明性および近赤外線遮蔽性に優れていた。また、上記表に示す通り、実施例の樹脂組成物は保存安定性に優れ、この樹脂組成物を用いて得られた膜は熱信頼性に優れていた。
【0263】
[試験例2]
各実施例の樹脂組成物を、製膜後の膜厚が1.0μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のベイヤーパターンを有するマスクを介して露光した。
次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて純水でリンスを行った。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで2μm四方のベイヤーパターン(近赤外線カットフィルタ)を形成した。
次に、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上に、Red組成物を製膜後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用い、100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて純水でリンスを行った。次いで、ホットプレートを用い、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターン上にRed組成物をパターニングした。同様にGreen組成物、Blue組成物を順次パターニングし、赤、緑および青の着色パターンを形成した。
次に、上記パターン形成した膜上に、赤外線透過フィルタ形成用組成物を、製膜後の膜厚が2.0μmになるようにスピンコート法で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1000mJ/cm2の露光量にて、2μm四方のパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにて純水でリンスを行った。次いで、ホットプレートを用いて、200℃で5分間加熱することで、近赤外線カットフィルタのベイヤーパターンの抜け部分に、赤外線透過フィルタのパターニングを行った。これを公知の方法に従い固体撮像素子に組み込んだ。
得られた固体撮像素子について、低照度の環境下(0.001Lux)で赤外発光ダイオード(赤外LED)光源から光を照射し、画像の取り込みを行い、画像性能を評価した。画像上で被写体をはっきりと認識できた。また、入射角依存性が良好であった。
【0264】
試験例2で使用したRed組成物、Green組成物、Blue組成物および赤外線透過フィルタ形成用組成物は以下の通りである。
【0265】
(Red組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Red組成物を調製した。
Red顔料分散液 ・・51.7質量部
上述した樹脂D3 ・・・0.6質量部
重合性モノマー4 ・・・0.6質量部
光重合開始剤1 ・・・0.4質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製)・・・0.3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) ・・・42.6質量部
【0266】
(Green組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Green組成物を調製した。
Green顔料分散液 ・・・73.7質量部
上述した樹脂D3 ・・・0.3質量部
重合性モノマー1 ・・・1.2質量部
光重合開始剤1 ・・・0.6質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製)・・・0.5質量部
PGMEA ・・・19.5質量部
【0267】
(Blue組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、Blue組成物を調製した。
Blue顔料分散液 44.9質量部
上述した樹脂D3 ・・・2.1質量部
重合性モノマー1 ・・・1.5質量部
重合性モノマー4 ・・・0.7質量部
光重合開始剤1 ・・・0.8質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製)・・・0.3質量部
PGMEA ・・・45.8質量部
【0268】
(赤外線透過フィルタ形成用組成物)
下記成分を混合し、撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して、赤外線透過フィルタ形成用組成物を調製した。
顔料分散液1-1 ・・・46.5質量部
顔料分散液1-2 ・・・37.1質量部
重合性モノマー5 ・・・1.8質量部
上述した樹脂D3 ・・・1.1質量部
光重合開始剤2 ・・・0.9質量部
界面活性剤1 ・・・4.2質量部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール)・・・0.001質量部
シランカップリング剤 ・・・0.6質量部
PGMEA ・・・7.8質量部
【0269】
Red組成物、Green組成物、Blue組成物および赤外線透過フィルタ形成用組成物に使用した原料は以下の通りである。
【0270】
・Red顔料分散液
C.I.Pigment Red 254を9.6質量部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8質量部、PGMEAを79.3質量部とからなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Red顔料分散液を得た。
【0271】
・Green顔料分散液
C.I.Pigment Green 36を6.4質量部、C.I.Pigment Yellow 150を5.3質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.2質量部、PGMEAを83.1質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Green顔料分散液を得た。
【0272】
・Blue顔料分散液
C.I.Pigment Blue 15:6を9.7質量部、C.I.Pigment Violet 23を2.4質量部、分散剤(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を5.5質量部、PGMEAを82.4質量部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、Blue顔料分散液を得た。
【0273】
・顔料分散液1-1
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-1を調製した。
・赤色顔料(C.I.Pigment Red 254)及び黄色顔料(C.I.Pigment Yellow 139)からなる混合顔料・・・11.8質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製)・・・9.1質量部
・PGMEA ・・・79.1質量部
【0274】
・顔料分散液1-2
下記組成の混合液を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、顔料分散液1-2を調製した。
・青色顔料(C.I.Pigment Blue 15:6)及び紫色顔料(C.I.Pigment Violet 23)からなる混合顔料・・・12.6質量部
・樹脂(Disperbyk-111、BYKChemie社製)・・・2.0質量部
・上述した樹脂D2 ・・・3.3質量部
・シクロヘキサノン ・・・31.2質量部
・PGMEA ・・・50.9質量部
【0275】
・重合性モノマー1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
・重合性モノマー4:下記構造の化合物
【化60】

・重合性モノマー5:下記構造の化合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
【化61】
【0276】
・光重合開始剤1:IRGACURE-OXE01(BASF社製)
・光重合開始剤2:下記構造の化合物
【化62】
【0277】
・界面活性剤1:下記混合物(Mw=14000)の1質量%PGMEA溶液。下記の式中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【化63】
【0278】
・シランカップリング剤:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【化64】
【符号の説明】
【0279】
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層
図1