(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-03
(45)【発行日】2022-03-11
(54)【発明の名称】基板温度センサ、温度制御システム、基板処理装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220304BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20220304BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/46
(21)【出願番号】P 2020548523
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2019036426
(87)【国際公開番号】W WO2020059722
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2018173328
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 徳信
(72)【発明者】
【氏名】村田 等
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭典
(72)【発明者】
【氏名】上野 正昭
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-302213(JP,A)
【文献】特開2005-147976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0229331(US,A1)
【文献】特開2006-173157(JP,A)
【文献】特開2009-200131(JP,A)
【文献】特開2004-006737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持具が回転する際に基板と同様に回転すると共に基板の温度を測定する基板温度センサ
と、該基板温度センサと処理室の外側で接続され、基板と同様に回転するように構成される送信機と、該送信機から出力される信号を受信する受信機と、を有する温度制御システムにおける基板温度センサであって、
前記基板が載置された状態で処理室に挿入される基板保持具の少なくとも底板に設けられる切り欠きに設置される保護管内に設けられる基板温度センサ。
【請求項2】
更に、前記基板保持具の支柱に沿わせるように設けられているケーブルを有する請求項1記載の基板温度センサ。
【請求項3】
更に、前記基板保持具の支柱内に這わせるように設けられているケーブルを有する請求項1記載の基板温度センサ。
【請求項4】
基板保持具が回転する際に基板と同様に回転すると共に基板の温度を測定する基板温度センサ
と、
前記基板温度センサと処理室の外側で接続され、基板と同様に回転するように構成される送信機と、
前記送信機から出力される信号を受信する受信機と、
前記基板が載置された状態で
前記処理室に挿入さ
れ、少なくとも底板に設けられる切り欠きに、前
記基板温度センサを格納可能に構成される保護管を設ける基板保持具
と、
を有するよう構成されている温度制御システム。
【請求項5】
前記基板温度センサは、基板の温度を測定する測温部と、該測温部を構成する素線を包含するケーブルを少なくとも有する請求項
4記載の
温度制御システム。
【請求項6】
前記保護管は、
前記基板保持具の支柱の近傍に設けられる請求項
4記載の
温度制御システム。
【請求項7】
前記保護管は、クランク状に形成される請求項
4記載の
温度制御システム。
【請求項8】
更に、
前記基板保持具は、基板を保持する基板処理領域を有する基板ホルダ部と、断熱板を保持する断熱領域を有する断熱板ホルダ部と、下端部に切欠きを有するベース部と、を有
するように構成される請求項
4記載の
温度制御システム。
【請求項9】
前記ベース部の厚みは、前記保護管の外径より大きく構成される請求項
8記載の
温度制御システム。
【請求項10】
前記保護管は、前記切欠きをガイドにして横方向に伸び、前記断熱板ホルダ部の外周で上方向に立ち上がるように構成される請求項8記載の温度制御システム。
【請求項11】
更に、前記基板保持具を回転させる回転機構を有し、
前記回転機構により、前記基板保持具が回転すると同様に前記基板温度センサが回転するように構成される請求項
4記載の
温度制御システム。
【請求項12】
更に、
前記送信機は、前記回転機構の下部に設けら
れる請求項11記載の
温度制御システム。
【請求項13】
基板が載置された状態で処理室と、
前記基板の温度を測定する基板温度センサと、
前記基板温度センサを格納可能に構成される保護管と、
少なくとも底板に設けられる切り欠きに前記保護管が設けられる基板保持具と、
前記基板保持具を回転させる回転機構と、
前記基板温度センサと処理室の外側で接続され、前記基板と同様に回転するように構成される送信機と、
前記送信機から出力される信号を受信する受信機と
、
を有するよう構成されてい
る基板処理装置。
【請求項14】
更に、前記受信機に接続されるコントローラを有し、
前記受信機は、前記送信機が出力したデジタル信号を受信し、受信した前記デジタル信号をアナログ信号に変換し前記コントローラに出力するよう構成されている請求項
13記載の基板処理装置。
【請求項15】
更に、前記処理室と隣接する搬送室が設けられ、
前記受信機は、前記処理室と前記搬送室との境界に設けられる前記送信機から離れた前記搬送室の内壁に設けられる請求項
13記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記送信機は、前記回転機構の下部に設けられる請求項13記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記送信機は、入力された信号をデジタル変換し、無線で前記受信機に送信するよう構成されている請求項13記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板温度センサは、基板の温度を測定する測温部と、該測温部を構成する素線を包含するケーブルを少なくとも有する請求項13記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記保護管は、前記基板保持具の支柱の近傍に設けられる請求項13記載の基板処理装置。
【請求項20】
請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の前記基板温度センサ
により前記基板の温度を測定しつつ、前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、温度制御システム及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱電対付き基板101を用いた基板温度測定時のケーブル101cの引き回し例を
図5に示す。熱電対付き基板101を使用した場合、熱電対付き基板101から出たケーブル101cを基板保持具(以後、ボートともいう)31の柱に沿わせるなどして引き回し、該ボートを支持しつつ閉塞する蓋体としてのシールキャップ(以後、CAPという)25の外までケーブル101cを引き出す。CAP25の外まで引き出されたケーブル101cをさらに延長し、温度コントローラ64まで配線しなければならない。
【0003】
しかしながら、この状態でボート31を回転すると、ケーブル101cが断線してしまうことがある。このため、ボート31および基板1を回転することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、温度センサを基板近傍に設けると共に、回転する基板の基板温度を測定することができる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板が載置された状態で処理室に挿入される基板保持具と、基板保持具を回転させる回転機構と、基板保持具が回転する際に基板と同様に回転すると共に基板の温度を測定する基板温度センサと、基板温度センサと処理室の外側で接続され、基板と同様に回転するように構成される送信機と、送信機から出力される信号を受信する受信機と、該受信機に接続されるコントローラと、を備えた構成が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、温度センサを基板近傍に設けると共に、回転する基板の基板温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の正面断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る基板処理装置を示す一部切断正面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る基板処理装置におけるコントローラのハードウェア構成を示す図である。
【
図5】熱電対付き基板を用いた基板温度測定時のケーブル引き回し例を説明する図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略図を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る基板処理装置のボートロード時の遷移を示す概略図であり、
図7(a)は基板の移載中の状態を示す図であり、
図7(b)はボートが上昇中の状態を示す図であり、
図7(c)はボートロードが完了した状態を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフローチャートである。
【
図9】
図9(a)は本開示の一実施形態に係るボートの変形例の分解斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0010】
図1に示された基板処理装置10は、支持された縦形の反応管としてのプロセスチューブ11を備えており、プロセスチューブ11は互いに同心円に配置された外管としてのアウタチューブ12と内管としてのインナチューブ13とから構成されている。アウタチューブ12は石英(SiO
2)が使用されて、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に一体成形されている。インナチューブ13は上下両端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ13の筒中空部はボート31が搬入される処理室14を形成しており、インナチューブ13の下端側(開口空間)はボート31を出し入れするための炉口部(炉口空間)15を構成している。後述するように、ボート31は複数枚の基板(以後、ウエハともいう。)1を長く整列した状態で保持するように構成されている。したがって、インナチューブ13の内径は取り扱う基板1の最大外径(例えば、直径300mm)よりも大きくなるように設定されている。
【0011】
アウタチューブ12とインナチューブ13との間の下端部は、略円筒形状に構築された炉口フランジ部としてのマニホールド16によって気密封止されている。アウタチューブ12およびインナチューブ13の交換等のために、マニホールド16はアウタチューブ12およびインナチューブ13にそれぞれ着脱自在に取り付けられている。マニホールド16が基板処理装置10の筐体2に支持されることによって、プロセスチューブ11は垂直に据え付けられた状態になっている。以後、図ではプロセスチューブ11としてインナチューブ13を省略する場合もある。
【0012】
アウタチューブ12とインナチューブ13との隙間によって排気路17が、横断面形状が一定幅の円形リング形状に構成されている。
図1に示されているように、マニホールド16の側壁の上部には排気管18の一端が接続されており、排気管18は排気路17の最下端部に通じた状態になっている。排気管18の他端には圧力コントローラ21によって制御される排気装置19が接続されており、排気管18の途中には圧力センサ20が接続されている。圧力コントローラ21は圧力センサ20からの測定結果に基づいて排気装置19をフィードバック制御するように構成されている。
【0013】
マニホールド16の下方にはガス導入管22がインナチューブ13の炉口部15に通じるように配設されており、ガス導入管22には原料ガス供給装置、反応ガス供給装置および不活性ガス供給装置(以下、ガス供給装置という。)23が接続されている。ガス供給装置23はガス流量コントローラ24によって制御されるように構成されている。ガス導入管22から炉口部15に導入されたガスは、インナチューブ13の処理室14内を流通して排気路17を通って排気管18によって排気される。
【0014】
マニホールド16には下端開口を閉塞するCAP25が垂直方向下側から接するようになっている。CAP25はマニホールド16の外径と略等しい円盤形状に構築されており、筐体2の移載室3に設備されたボートカバー37に保護されたボートエレベータ26によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ26はモータ駆動の送りねじ軸装置およびベローズ等によって構成されており、ボートエレベータ26のモータ27は駆動コントローラ28によって制御されるように構成されている。CAP25の中心線上には回転軸30が配置されて回転自在に支持されており、回転軸30は駆動コントローラ28によって制御されるモータ29により回転駆動されるように構成されている。回転軸30の上端にはボート31が垂直に支持されている。本実施形態では、回転軸30とモータ29により回転機構を構成する。
【0015】
ボート31は上下で一対の端板32,33と、これらの間に垂直に架設された三本の保持部材としての支柱(柱)34とを備えており、三本の支柱34には多数の保持溝35が長手方向に等間隔に刻まれている。三本の支柱34において同一の段に刻まれた保持溝35同士は、互いに対向して開口するようになっている。ボート31は三本の支柱34の同一段の保持溝35間に基板1を挿入されることにより、複数枚の基板1を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。また、三本の支柱34の同一段の保持溝39間に断熱板120を挿入されることにより、複数枚の断熱板120を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。
【0016】
つまり、ボート31は、複数枚の基板1が保持される端板32から端板38間の基板処理領域と、複数枚の断熱板120が保持される端板38から端板33間の断熱板領域とを区別するように構成され、基板処理領域の下方に断熱板領域が配置されるよう構成されている。端板38と端板33の間に保持される断熱板120により断熱部36が構成される。
【0017】
回転軸30はボート31をCAP25の上面から持ち上げた状態に支持するように構成されている。断熱部36は、炉口部15に設けられ、炉口部15を断熱するよう構成されている。また、CAP25の下にはボート31を回転するモータ29があり、そのモータ29は中空モータ構造となっており、回転軸30がモータ29を貫通している。
【0018】
図2に示すように、プロセスチューブ11の外側には、加熱部としてのヒータユニット40が同心円に配置されて、筐体2に支持された状態で設置されている。これにより、ヒータユニット40は、ボート31に保持される基板処理領域内の基板1を加熱するよう構成される。ヒータユニット40はケース41を備えている。ケース41はステンレス鋼(SUS)が使用されて上端閉塞で下端開口の筒形状、好ましくは円筒形状に形成されている。ケース41の内径および全長はアウタチューブ12の外径および全長よりも大きく設定されている。
【0019】
図2に示すように、ケース41内には断熱構造体42が設置されている。断熱構造体42は、外側に配置された側壁外層(以後、外層ともいう。)45と、内側に配置された側壁内層(以後、内層ともいう。)44とを備え、筒形状好ましくは円筒形状に形成されており、その円筒体の側壁部43が複数層構造に形成されている。
【0020】
また、
図2に示すように、ケース41には、各ゾーンに逆拡散防止体104aを備えたチェックダンパ104が設けられている。この逆拡散防止体104aの開閉により冷却エア90がガス導入路107を介してバッファ部106に供給されるように構成されている。
【0021】
そして、バッファ部106に供給された冷却エア90は、内層44内に設けられたガス供給流路108を流れ、該ガス供給流路108を含む供給経路の一部としての開口部としての開口穴110から冷却エア90を空間75に供給するように構成されている。
【0022】
図1および
図2に示されているように、断熱構造体42の側壁部43の上端側には天井部としての天井壁部80が空間75を閉じるように被せられている。天井壁部80には空間75の雰囲気を排気する排気経路の一部としての排気孔81が環状に形成されており、排気孔81の上流側端である下端は内側空間75に通じている。排気孔81の下流側端は排気ダクト82に接続されている。そして、開口穴110から空間75に吹き出した冷却エア90は排気孔81および排気ダクト82によって排気されるように構成されている。尚、
図2では、ガス供給系及び排気系が省略されている。
【0023】
図3に示すように、制御部としての制御用コンピュータであるコントローラ200は、CPU(Central Precessing Unit)201およびメモリ202などを含むコンピュータ本体203と、通信部としての通信IF(Inter face)204と、記憶部としての記憶装置205と、操作部としての表示・入力装置206とを有する。つまり、コントローラ200は一般的なコンピュータとしての構成部分を含んでいる。
【0024】
CPU201は、操作部の中枢を構成し、記憶装置205に記憶された制御プログラムを実行し、表示・入力装置206からの指示に従って、記憶装置205に記録されているレシピ(例えば、プロセス用レシピ)を実行する。尚、プロセス用レシピは、
図8に示す後述するステップS1からステップS9までの温度制御を含むのは言うまでもない。
【0025】
また、一時記憶部としてのメモリ202は、CPU201のワークエリアとして機能する。
【0026】
通信部204は、圧力コントローラ21、ガス流量コントローラ24、駆動コントローラ28、温度コントローラ64(これらをまとめてサブコントローラということもある。)と電気的に接続されている。コントローラ200は、この通信部204を介してサブコントローラと各部品の動作に関するデータをやり取りすることができる。
【0027】
図6は本開示の一実施形態の基板処理装置の概略図である。
図6では処理基板は「
1」と表記し省略している。
【0028】
ヒータユニット40の構造を説明する。ヒータユニット40は縦方向に複数ゾーンに分割制御可能(
図6では5ゾーン分割)なように、ゾーン毎にヒータが設けられているため、複数のヒータが積み重なって構成されている。そして、それぞれのゾーン毎にヒータの温度を測定するヒータ熱電対(第1温度センサ)65が設置されている。
【0029】
アウタチューブ12の内側には、チューブ内部の温度を測定するカスケード熱電対(第2温度センサ)66が設置されている。このカスケード熱電対66は1つの石英管の中にゾーン数に応じた数の熱電対が収められている構造となっている。そしてその測温点はゾーンに対向した位置に設けられている。
【0030】
基板温度センサとしての基板温度測定部(第3温度センサ)211は、ボート31が回転し基板1が回転する時に、基板1と共に回転するように構成されている。基板温度測定部211は、基板温度を測定する測温部211bと、測温部を構成する素線を包含するケーブル211cを含む構成となっている。なお、測温部211bと基板1は必ずしも接触させる必要はない。但し、測温部211bが処理室14に配置される構成であるため、測温部211bを覆う保護部(図示せず)を設けるのが好ましい。また、ケーブル211cは、ボート31の支柱34に沿わせボート31の下部まで引き出されている。ボート31の下部まで引き出されたケーブル211cは、シールキャップ25に空いた孔に設けられた回転軸30の孔を通して、シールキャップ25の下の送信機221まで引き回し接続する。
【0031】
この送信機221は回転軸30に固定されており、回転軸30と共に動く構造になっている。回転軸30にはケーブル211cを通す孔が貫通しており、ハーメチックシールなどを使って真空シールをしつつ、ケーブル211cを処理室14の外側(例えば、回転軸30の下部)の送信機221まで引き出せる構造となっている。
【0032】
基板温度測定部211は、例えば、
図4に示すように、熱電対付き基板101であってもよい。この基板温度測定部211(
図4では101)をボート31に載せ、ケーブル211c(
図4では101c)をボート31の支柱34に沿わせボート31の下部まで引き出すことで、基板温度を測温部101bで測定することができる。
【0033】
なお、基板温度測定部211は、温度を電気信号として測定できるものであれば良く、熱電対に限らず、測温抵抗体などの他のセンサでも良い。また、ケーブル211cは、ボート31の支柱34内を這わせて、ボート31の下部まで引き出されるように構成してもよい。このように構成すれば、送信機221までケーブル211cが処理室14に配置されることはないので、基板1及びボート31の回転によるケーブル211c断線がない。
【0034】
そして、送信機221はケーブル211cを介して入力された熱電対等の基板温度測定部211からの電気信号(電圧)をデジタル変換し、電波に乗せて無線伝送で送信する。
【0035】
CAP25の下のエリアに固定された受信機222があり、送信機221が出した信号を受信し、受信したデジタル信号をシリアル通信出力する端子(出力端子)222a、または受信したデジタル信号を例えば4-20mAなどのアナログ信号に変換し出力する端子(出力端子)222bがある。このデジタル信号またはアナログ信号の出力信号端子と温度表示器(不図示)または温度コントローラ64との間をケーブル223で接続し、温度データを温度コントローラ64に入力する。
【0036】
本実施形態では、基板温度測定部211、送信機221、受信機222、温度コントローラ64により温度制御システムを構成する。この構成にすることで、基板温度測定部211、ボート31、回転軸30および送信機221からなる回転部と、装置に固定された受信機222との間はワイヤレス伝送となり、温度データ伝送経路は維持したまま、機械的には切り離される。また、基板温度測定部211、ボート31、回転軸30および送信機221からなる回転部は一体となって回転するため、ケーブル211cがボート31に巻き付くことはない。
【0037】
受信機222の出力端子222aまたは出力端子222bから出た信号を温度コントローラ64に入力し、温度コントローラ64で温度データとして表示する。また、この温度コントローラ64に入力された温度データをもとにヒータユニット40の温度制御を行うことで、アウタチューブ12とインナチューブ13との間に設けられた従来のカスケード熱電対での温度制御に比べ、より基板温度を精度よく制御することができる。
【0038】
次に、ボートロード時の動作の遷移図を
図7に示す。
図7はボート31に基板1を複数枚搭載し、基板温度測定部211を設置した状態での基板上昇動作の遷移図を示している。処理基板は「
1」と表記し省略している。
【0039】
図7(a)に示すように、移載装置125によりボート31に基板1を搭載する場合、ボート31の全体は移載室3内に位置し、送信機221は移載室3の床付近に位置する。なお、受信機222は移載室3の床付近の壁に固定されている。その後、ボート31への基板1の搭載が終了し、
図7(b)に示すように、ボート31および送信機221がボートエレベータ26(
図1参照)によって上昇する。送信機221は移載室3の下部から天井に向けて上昇し受信機222から遠ざかる。その後、CAP25がマニホールド16に接して固定され、ボート31は処理室14に格納される。
【0040】
送信機221は入力された電気信号(電圧)をデジタル変換し、電波に乗せて、移載室3の各部の固定された受信機222に無線伝送で送信する。受信機222は移載室3の外に設けられた温度コントローラ64とケーブル223で接続されている。
【0041】
この構成にすることで、CAP25の下のエリアである移載室3でケーブルを引き回す必要が無くなる。ケーブルが無くなることで、ボート31の昇降軸が動作してもケーブル長が足りない、ケーブルがどこかに引っかかって断線するというリスクは無くなる。
【0042】
実施形態によれば、温度データ伝達経路に無線伝送技術を用いることにより、基板1と共に回転する基板温度測定部211、ボート31(回転軸30)、送信機221を含む回転部と、測定した温度を温度コントローラ64に入力する受信機222等の固定部と、を機械的に分離しつつ、温度データ伝達経路としてはつながった状態にできるため、基板温度センサ211を基板1近傍に設けつつ、基板1を回転しながら基板温度を測定することが可能となる。また、温度データ伝達経路に無線伝送技術を用いることにより、ボート31の昇降軸が動作時のケーブルの断線リスクを無くし、基板温度測定の作業性が向上することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、基板1近傍に温度センサを設けることができるので、基板温度を基板1に近い場所で検出できる。これにより、例えば、従来の温度制御に比べ、格段に温度制御性が向上させることができる。
【0044】
実施形態の変形例のボートについて
図9を用いて説明する。変形例における基板保持具としてのボート31は基板処理領域となる基板ホルダ71と、基板ホルダ71の下方に配置され、断熱領域となる断熱板ホルダ72と、筒部としての石英ベース73と、で構成される。基板ホルダ71は上下で一対の端板32,38aと、これらの間に垂直に架設された三本の支柱34aとを備えており、三本の支柱34aには多数の保持ピン35aが長手方向に等間隔に設けられている。三本の支柱34aにおいて同一の段に設けられた保持ピン35a同士は、互いに対向して突出するようになっている。基板ホルダ71は三本の支柱34aの同一段の保持ピン35a間に基板1が挿入されることにより、複数枚の基板1を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。
【0045】
また、断熱板ホルダ72は端板38b,33とこれらの間に垂直に架設された三本の支柱4bとを備えており、三本の支柱34bの同一段の保持溝39b間に断熱板120を挿入されることにより、複数枚の断熱板120を水平にかつ互いに中心を揃えた状態に整列させて保持するようになっている。つまり、断熱板ホルダ72と断熱板ホルダ72に保持される断熱板120により断熱部36が構成される。
【0046】
基板温度センサとしての基板温度測定部211は、基板温度を測定する測温部211bと、測温部を構成する素線を包含するケーブル211cをクランク状の形状をした石英で形成される保護管76の内部に格納される。
【0047】
CAP25は基板1を熱処理するときにマニホールド16とOリング(不図示)を介してインナチューブ13に接触することで、炉内をシールする。図示しないがCAP25は昇降動作可能なE軸に取り付けられており昇降動作が可能である。CAP25の中心には孔が空いており、当該孔の中をボート受け74が貫通している。ボート受け74は磁気シールユニット78でシールされており、炉内の真空を保ちつつR軸のモータ29で回転動作を行うことができる。
【0048】
基板温度測定部211を内包する保護管76は、ボート受け74の中心に開いている孔を通ってCAP25の下に出てくる構造となっている。CAP25の下に出てきた保護管76は、真空シール可能な固定方法(例えば、Ultra-Torr(登録商標))によってボート受け74に固定される。
【0049】
ボート受け74の上にボート31の下端部である石英ベース73を設置する。この石英ベース73にはU字型に切欠きがあり、当該切欠きをガイドにしてボート受け74の中心から炉内に出た保護管76が横方向に伸び、断熱板ホルダ72の外周で再び保護管76が上方向に立ち上がる構造となっている。石英ベース73の上に断熱板120を複数枚収納できる断熱板ホルダ72が設置されるが、石英ベース73の厚みは保護管76の外径より大きくなっており、保護管76に荷重がかからないようになっている。
【0050】
断熱板ホルダ72の天板である端板38bおよび底板である端板33には、立ち上がった保護管76が通るための切欠きが設けられている。基板1の近傍に保護管76を設置するため、ボート31の基板ホルダ71の天板である端板32および底板である端板38aにも切欠きが設けられている。これにより基板1の近傍に基板温度測定部211の測温点である測温部211bを配置することができ、従来の反応管壁近傍に設置されたカスケードTCより、さらに基板1に近い温度を測定することができる。なお、保護管76は支柱34a,34bの近傍に設けられている。
【0051】
基板ホルダ71、断熱板ホルダ72および石英ベース73で構成されるボート31および基板温度測定部211、は、ボート受け74の上に載っている構造となり、R軸のモータ29が駆動ベルト77を介してボート受け74を回転することで、ボート31および基板温度測定部211が一緒に回転することになる。なお、CAP25および磁気シールユニット78は回転しない。
【0052】
CAP25の下まで引き出されたケーブル211cを、ボート受け74と共に回転する送信機221に接続することで、基板1を回転させながら基板温度を測定することが可能である。
【0053】
なお、変形例では、基板温度測定部211を保護管76内に設ける例を説明したが、これに限定されるものではなく、支柱34a,34b内に設ける構成にしてもよい。また、保護管を設けず、支柱34a,34bに熱電対の素線を這わせてもよい。
【0054】
次に、上述の基板処理装置10を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理(以下、成膜処理ともいう。)のシーケンス例について
図8を用いて説明する。
【0055】
以下、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガスを用い、反応ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを用い、基板1上にシリコン窒化膜(Si3N4膜、以下、SiN膜ともいう)を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ200及びサブコントローラにより制御される。
【0056】
本実施形態における成膜処理では、処理室14の基板1に対してHCDSガスを供給する工程と、処理室14からHCDSガス(残留ガス)を除去する工程と、処理室14の基板1に対してNH3ガスを供給する工程と、処理室14からNH3ガス(残留ガス)を除去する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことで、基板1上にSiN膜を形成する。
【0057】
(基板搬入:ステップS1)
駆動コントローラ28により移載装置125及び移載装置エレベータを動作させて、ボート31の基板処理領域に複数枚の基板1が保持されて装填(ウエハチャージ)される。尚、ボート31の断熱板領域には、既に、複数枚の断熱板120が保持されて装填されている。
【0058】
そして、基板1と断熱板120が保持されたボート31は、駆動コントローラ28によりボートエレベータ26を動作させてプロセスチューブ11内に装入され、処理室14に搬入(ボートロード)される。このとき、CAP25は、不図示のOリングを介してインナチューブ13の下端を気密に閉塞(シール)した状態となる。
【0059】
(圧力調整および温度調整:ステップS2)
処理室14が所定の圧力(真空度)となるように、圧力コントローラ21によって排気装置19が制御される。この際、処理室14の圧力は、圧力センサ20で測定され、この測定された圧力情報に基づき排気装置19が、フィードバック制御される。排気装置19は、少なくとも基板1に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0060】
また、処理室14の基板1が所定の温度となるように、ヒータユニット40によって加熱される。この際、温度コントローラ64により処理室14が所定の温度分布となるように、少なくとも基板温度測定部211が検出した温度情報に基づきヒータユニット40への通電具合がフィードバック制御される。ヒータユニット40による処理室14の加熱は、少なくとも基板1に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。なお、更に、ヒータ熱電対65、カスケード熱電対66が検出した温度情報を用いてもよいのは言うまでもない。
【0061】
また、モータ29によるボート31および基板1の回転を開始する。具体的には、駆動コントローラ28によりモータ29を回転させると、ボート31及び送信機221が回転されるに伴い、基板1が回転される。このモータ29の回転によるボート31、送信機221および基板1の回転は、少なくとも、基板1に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0062】
<成膜処理>
処理室14内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、次の4つのステップ、すなわち、ステップS3~S6を順次実行する。
【0063】
(原料ガス供給:ステップS3)
このステップでは、処理室14の基板1に対し、HCDSガスを供給する。
【0064】
このステップでは、ガス導入管22から処理室14に導入されたHCDSガスが、ガス流量コントローラ24によって流量制御され、インナチューブ13の処理室14を流通して排気路17を通って排気管18から排気される。このとき、同時に、ガス導入管22内へN2ガスを流す。N2ガスは、ガス流量コントローラ24により流量調整され、HCDSガスと一緒に処理室14へ供給され、排気管18から排気される。基板1に対してHCDSガスを供給することにより、基板1の最表面上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層の厚さのシリコン(Si)含有層が形成される。
【0065】
(パージガス供給:ステップS4)
第1の層が形成された後、HCDSガスの供給を停止する。このとき、排気装置19により処理室14を真空排気し、処理室14に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室14から排出する。このとき、N2ガスの処理室14への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室14に残留するガスを処理室14から排出する効果を高めることができる。
【0066】
(反応ガス供給:ステップS5)
ステップS4が終了した後、処理室14の基板1、すなわち、基板1上に形成された第1の層に対してNH3ガスを供給する。NH3ガスは熱で活性化されて基板1に対して供給されることとなる。
【0067】
このステップでは、ガス導入管22から処理室14に導入されたNH3ガスが、ガス流量コントローラ24によって流量制御され、インナチューブ13の処理室14を流通して排気路17を通って排気管18から排気される。このとき、同時に、ガス導入管22内へN2ガスを流す。N2ガスは、ガス流量コントローラ24により流量調整され、NH3ガスと一緒に処理室14へ供給され、排気管18から排気される。このとき、基板1に対してNH3ガスが供給されることとなる。基板1に対して供給されたNH3ガスは、ステップS3で基板1上に形成された第1の層、すなわちSi含有層の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は、ノンプラズマで熱的に窒化され、第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと変化させられる(改質される)。
【0068】
(パージガス供給:ステップS6)
第2の層が形成された後、NH3ガスの供給を停止する。そして、ステップS4と同様の処理手順により、処理室14に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室14から排出する。このとき、処理室14に残留するガス等を完全に排出しなくてもよい点は、ステップS4と同様である。
【0069】
(所定回数実施:ステップS7)
上述した4つのステップを非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回)行うことにより、基板1上に、所定膜厚のSiN膜を形成することができる。なお、上述のサイクルを1回行う際に形成される第2の層(SiN層)の厚さを所定の膜厚よりも小さくし、第2の層(SiN層)を積層することで形成されるSiN膜の膜厚が所定の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0070】
(パージおよび大気圧復帰:ステップS8)
成膜処理が完了した後、ガス導入管22からN2ガスを処理室14へ供給し、排気管18から排気する。N2ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室14がパージされ、残留するガスや反応副生成物が処理室14から除去される(パージ)。同時に、処理室14の温度を処理温度から効率よく低下させるために、冷却ガスとしての冷却エア90がチェックダンパ104を介してガス導入路107に供給される。供給された冷却エア90はバッファ部106内で一時的に溜められ、複数個の開口穴110からガス供給流路108を介して空間75に吹出され、プロセスチューブ11を冷却するように構成される。このとき、基板温度測定部211により検出される温度によって、冷却エアによる処理室14の冷却を温度コントローラ64に制御させるようにしてもよいし、冷却を停止させるか温度コントローラ64に判定させるようにしてもよい。その後、処理室14の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室14の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。ここで、基板温度測定部211により検出される温度に基づき、次のボートアンロードに移行するか温度コントローラ64に判定させるようにしてもよい。
【0071】
(基板搬出:ステップS9)
駆動コントローラ28によりボートエレベータ26を下降させることによりCAP25が下降され、プロセスチューブ11の下端が開口される。そして、処理済の基板1が、ボート31に支持された状態で、プロセスチューブ11の下端からプロセスチューブ11の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済の基板1は、ボート31より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0072】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0073】
また、上述の実施形態では、SiN膜を形成する例について説明したが、膜種は特に限定されない。例えば、シリコン酸化膜(SiO膜)、金属酸化膜等の酸化膜等の種々の膜種に適用することができる。
【0074】
また、上述の実施形態では、基板処理装置について説明したが、半導体製造装置全般に適用することができる。また、半導体製造装置に限らずLCD(Liquid Crystal Display)装置のようなガラス基板を処理する装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 基板(ウエハ)
10 基板処理装置
14 処理室
30 回転軸
31 ボート(基板保持具)
40 ヒータユニット(加熱部)
64 温度コントローラ
211 基板温度測定部(基板温度センサ)
221 送信機
222 受信機