(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】重合体、これを含むコーティング組成物およびこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C08F 226/06 20060101AFI20220307BHJP
C08L 39/04 20060101ALI20220307BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220307BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08F226/06
C08L39/04
H01L29/28 100A
H01L29/28 250G
(21)【出願番号】P 2020517984
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2019002410
(87)【国際公開番号】W WO2019168365
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0024565
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】エスダー・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンセク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ファキョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クァンヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョンジェ・キム
【審査官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/031622(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/000176(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/000177(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/000179(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/005318(WO,A1)
【文献】Joong Hyun Cho et al.,Diversification of Carbazoles by LiCl-mediated Catalytic CuI Reaction,Bull. Korean Chem. Soc.,2011年,Vol.32, No.7,2461-2464
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00 - 226/12
C08L 23/00 - 39/08
H01L 27/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式103で表される第1単位;および
下記化学式2で表される第2単位
のみからなる重合体:
【化1】
【化2】
前記化学式103および2において、
L2~L6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
前記化学式103において、
L101は、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
b101は、1~9の整数であり、
前記b101が2以上の時、2以上のL101は、それぞれ互いに同一または異なる;
b2は、それぞれ1~10の整数であり、
前記b2が2以上の時、2以上のL6は、それぞれ互いに同一または異なり、
Ar1~Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ヒドロキシ基;ニトリル基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
r4およびr5は、それぞれ1~3の整数であり、
前記r4およびr5がそれぞれ2以上の時、2以上のR4およびR5は、それぞれ互いに同一または異なり、
m1は、モル分率であって、
0.5<m1<0.99であり、
m2は、モル分率であって、
0.01<m2<0.5であり、
m1+m2=1であり、
Xは、下記の構造の中から選択されるいずれか1つであり、
【化3】
前記構造において、
L11は、置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R10~R13は、互いに同一であるか、異なり、それぞれ独立に、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
Xが
【化4】
の場合、b2は、1~3の整数である。
【請求項2】
Ar1は、アルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アリール基;およびヘテロ環基から構成された群より選択された1個以上の置換基または前記群より選択された2個以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のターフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、または置換もしくは非置換のフルオレニル基である、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
R1~R8は、それぞれ水素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項5】
前記化学式103で表される第1単位は、下記の構造のうちのいずれか1つで表されるものである、請求項1に記載の重合体:
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
前記構造において、
m1は、モル分率であって、
0.5<m1<0.99である。
【請求項6】
前記化学式2で表される第2単位は、下記の構造のうちのいずれか1つで表されるものである、請求項1に記載の重合体:
【化10】
前記構造において、
m2は、モル分率であって、
0.01<m2<0.5である。
【請求項7】
前記化学式103で表される第1単位および前記化学式2で表される第2単位
からなる重合体は、下記の構造の中から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の重合体:
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
前記構造において、
m1は、モル分率であって、
0.5<m1<0.99であり、
m2は、モル分率であって、
0.01<m2<0.5であり、
m1+m2=1であり、
nは、単位の繰り返し数であって、1~10,000の整数である。
【請求項8】
前記重合体の数平均分子量は、5,000g/mol~1,000,000g/molである、請求項1~7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の重合体を含むコーティング組成物。
【請求項10】
前記コーティング組成物は、pドーピング物質をさらに含むものである、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
第1電極と、
前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含み、
前記有機物層のうちの1層以上は、請求項9又は10に記載のコーティング組成物の硬化物を含むものである有機発光素子。
【請求項12】
前記コーティング組成物の硬化物は、前記コーティング組成物が熱処理または光処理によって硬化された状態である、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層である、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層を含み、前記発光層は、前記コーティング組成物の硬化物を含むものである、請求項11に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年2月28日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0024565号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、重合体、これを含むコーティング組成物およびこれを用いて形成された有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は、特定の有機分子の内部プロセスによって電流が可視光に変換される例の一つである。有機発光現象の原理は、次の通りである。アノードとカソードとの間に有機物層を位置させた時、2つの電極の間に電流をかけると、カソードとアノードからそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、このエキシトンが再び基底状態に落ちながら光を発する。このような原理を利用する有機電界発光素子は、一般的に、カソードおよびアノードと、その間に位置した有機物層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含む有機物層とから構成される。
【0004】
有機発光素子で使用される物質としては、純粋有機物質または有機物質と金属とが錯体をなす錯化合物が大部分を占めており、用途によって、正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分される。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、酸化されやすく、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、還元されやすく、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に使用されている。発光物質としては、p-タイプの性質とn-タイプの性質を同時に有する物質、すなわち酸化および還元状態ですべて安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された時、これを光に変換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0005】
上述のほか、有機発光素子で使用される物質は、次の性質を追加的に有することが好ましい。
第一に、有機発光素子で使用される物質は、熱的安定性に優れていることが好ましい。有機発光素子内では、電荷の移動によるジュール熱(joule heating)が発生するからである。現在、正孔輸送層物質として主に使用されるNPB(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)は、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するので、高い電流を必要とする有機発光素子には使用しにくい問題がある。
【0006】
第二に、低電圧駆動可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されると同時に、注入された正孔と電子が発光層の外部に抜け出ないようにしなければならない。このために、有機発光素子に使用される物質は、適切なバンドギャップ(band gap)とHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)またはLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法によって製造される有機発光素子において正孔輸送物質として使用されるPEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)doped:poly(styrenesulfonic acid))の場合、発光層物質として使用される有機物のLUMOエネルギー準位に比べて、LUMOエネルギー準位が低いため、高効率、長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0007】
その他にも、有機発光素子に使用される物質は、化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などに優れていなければならない。すなわち、有機発光素子に使用される物質は、水分や酸素による物質の変形が少なくなければならない。また、適切な正孔または電子移動度を有することにより、有機発光素子の発光層で正孔と電子の密度がバランスをとるようにしてエキシトンの形成を極大化できなければならない。そして、素子の安定性のために、金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くしなければならない。
【0008】
上述のほか、溶液工程用有機発光素子で使用される物質は、次の性質を追加的に有しなければならない。
第一に、保存可能な均質な溶液を形成しなければならない。商用化された蒸着工程用物質の場合、結晶性が良くて溶液に溶けにくかったり、溶液を形成しても結晶がとれやすいことから、保存期間によって溶液の濃度勾配が異なったり、不良素子を形成する可能性が高い。
【0009】
第二に、溶液工程が行われる層は、他の層に対して溶媒および物質耐性がなければならない。このために、VNPB(N4,N4’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4’-ビス(4-ビニルフェニル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)のように、硬化基を導入して溶液塗布後、熱処理あるいはUV(ultraviolet)照射により基板上で自ら架橋結合した高分子を形成または次の工程に十分な耐性を有する高分子を形成可能な物質が好ましく、HATCN(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル:Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)のように、自ら溶媒耐性を有し得る物質も好ましい。一般的に、OLED(ORGANIC LIGHT EMITTING DEVICE)素子で使用されるアリールアミン系単分子の場合、自ら次の工程の溶媒に耐性を有する場合がないので、溶液工程用OLED素子に使用可能なアリールアミン系単分子化合物は硬化基が導入されなければならない。
【0010】
したがって、当技術分野では、上記の要件を備えた有機物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書は、重合体、これを含むコーティング組成物およびこれを用いて形成された有機発光素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書は、下記化学式1で表される第1単位;および下記化学式2で表される第2単位を含む重合体を提供する。
【化1】
【化2】
【0013】
前記化学式1および2において、
L1~L6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
b1およびb2は、それぞれ1~10の整数であり、
前記b1およびb2がそれぞれ2以上の時、2以上のL1およびL6は、それぞれ互いに同一または異なり、
Ar1~Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ヒドロキシ基;ニトリル基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
r4およびr5は、それぞれ1~3の整数であり、
前記r4およびr5がそれぞれ2以上の時、2以上のR4およびR5は、それぞれ互いに同一または異なり、
m1は、モル分率であって、0<m1<1であり、
m2は、モル分率であって、0<m2<1であり、
m1+m2≦1であり、
Xは、下記の構造の中から選択されるいずれか1つであり、
【化3】
前記構造において、
L11は、置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R10~R13は、互いに同一であるか、異なり、それぞれ独立に、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基であり、
Xが
【化4】
の場合、b2は、1~3の整数である。
【0014】
また、本明細書は、前記重合体を含むコーティング組成物を提供する。
【0015】
さらに、本明細書は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記コーティング組成物の硬化物を含むものである有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施態様に係る重合体を用いて形成された有機物層は、熱および光による硬化後、熱的および光的安定性に優れ、他の溶媒に対する溶解性を有さず、前記成膜上にさらに他の溶液工程により積層成膜工程を行うことができる。
【0017】
また、本発明の一実施態様に係る重合体は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、有機発光素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0018】
さらに、本発明の一実施態様に係る重合体は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、光効率を向上させることができる。
【0019】
なお、本発明の一実施態様に係る重合体は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、素子の寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施態様に係る有機発光素子の例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0022】
本明細書は、前記化学式1で表される第1単位;および前記化学式2で表される第2単位を含む重合体を提供する。
【0023】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位を含む重合体は、ランダム重合体またはブロック重合体である。
【0024】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される第2単位を含む重合体は、ランダム重合体またはブロック重合体である。
【0025】
本発明の一つの実施態様において、前記化学式1で表される第1単位と前記化学式2で表される第2単位は、ランダム重合体を構成することができる。
【0026】
本明細書において、「単位」とは、単量体が重合体に含まれて繰り返される構造であって、単量体が重合によって重合体内に結合した構造を意味する。
【0027】
本明細書において、「単位を含む」の意味は、重合体内の主鎖に含まれるという意味である。
【0028】
本明細書において、「単量体」は、前記重合体を構成する単位となるモノマーまたは単位体を意味する。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位は、有機溶媒に対して溶解度に優れている。したがって、前記化学式1で表される第1単位を含む重合体を有機発光素子における正孔輸送層または正孔注入層に用いる場合、溶液工程を適用しやすく、製造された正孔輸送層または正孔注入層の均一性と表面特性などにも優れているので、素子の性能および寿命特性を向上させることができる。
【0030】
本明細書の一実施態様において、前記化学式2で表される第2単位は、硬化基とビニル基とを有する化合物に由来するものである。追加的な硬化基が含まれていない重合体の場合、十分な溶媒耐性を示すことができないという欠点がある。しかし、本明細書の前記化学式2で表される第2単位の場合、追加的な硬化基によって熱処理により架橋結合を形成することができ、十分な溶媒耐性を示す効果がある。
【0031】
本明細書において、「硬化基」とは、熱および/または光に露出させることにより、化合物の間に架橋をさせる反応性置換基を意味することができる。架橋は、熱処理または光照射によって炭素-炭素多重結合、環状構造の分解とともに生成されたラジカルが連結されながら生成される。
【0032】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0033】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0034】
本明細書において、置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0035】
本明細書において、
【化5】
は、連結される部位を意味する。
【0036】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一または異なっていてもよい。
【0037】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;アルキル基;シクロアルキル基;アミン基;シリル基;ホスフィンオキシド基;アリール基;およびN、O、S、Se、およびSi原子のうちの1個以上を含むヘテロアリール基からなる群より選択された1または2以上の置換基で置換されているか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、もしくはいずれの置換基も有しないことを意味する。
【0038】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0039】
本明細書において、エーテル基は、エーテル基の酸素が炭素数1~30の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~30のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物になってもよいが、これに限定されるものではない。
【化6】
【0040】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖もしくは環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20のものが好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシ、ベンジルオキシ、p-メチルベンジルオキシなどになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本明細書において、アリールオキシ基は、フェノキシ基、p-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、3,5-ジメチル-フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、p-tert-ブチルフェノキシ基、3-ビフェニルオキシ基、4-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メチル-1-ナフチルオキシ基、5-メチル-2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、2-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書において、アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~50のものが好ましく、1~30がさらに好ましい。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60のものが好ましく、3~30がさらに好ましい。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書において、アリール基が単環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6~50のものが好ましく、6~30がさらに好ましい。具体的には、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記アリール基が多環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数10~50のものが好ましく、10~30がさらに好ましい。具体的には、多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本明細書において、前記フルオレニル基は置換されていてもよいし、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0047】
前記フルオレニル基が置換される場合、
【化7】
などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子としてN、O、S、Si、およびSeのうちの1個以上を含むものであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60のものが好ましく、2~30のものがさらに好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジン基、ビピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、アクリジン基、ピリダジン基、ピラジン基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、フタラジン基(phthalazine)、プテリジン基(pteridine)、ピリドピリミジン基(pyrido pyrimidine)、ピリドピラジン基(pyrido pyrazine)、ピラジノピラジン基(pyrazino pyrazine)、イソキノリン基、インドール基、ピリドインドール基(pyrido indole)、インデノピリミジン(5H-indeno pyrimidine)、カルバゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾフラン基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、およびチアジアゾリル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0049】
本明細書において、ヘテロアリール基は、芳香族であることを除けば、前記ヘテロ環基の例示の中から選択されてもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0050】
本明細書において、アルキレン基は、アルキル基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアルキル基の説明が適用可能である。
【0051】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。
【0052】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリール基の説明が適用可能である。
【0053】
本明細書の一実施態様において、L1~L6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基である。
【0054】
本明細書の一実施態様において、L1~L6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0055】
本明細書の一実施態様において、L1~L6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、置換もしくは非置換のナフチレン基、または置換もしくは非置換のフルオレニレン基である。
【0056】
本明細書の一実施態様において、L1は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0057】
本明細書の一実施態様において、L1は、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、置換もしくは非置換のナフチレン基、または置換もしくは非置換のフルオレニレン基である。
【0058】
本明細書の一実施態様において、L1は、フェニレン基またはビフェニレン基である。
【0059】
本明細書の一実施態様において、L1は、フェニレン基である。
【0060】
本明細書の一実施態様において、L2は、直接結合である。
【0061】
本明細書の一実施態様において、L2は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0062】
本明細書の一実施態様において、L2は、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、置換もしくは非置換のナフチレン基、または置換もしくは非置換のフルオレニレン基である。
【0063】
本明細書の一実施態様において、L2は、フェニレン基またはビフェニレン基である。
【0064】
本明細書の一実施態様において、L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0065】
本明細書の一実施態様において、L3およびL4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、置換もしくは非置換のナフチレン基、または置換もしくは非置換のフルオレニレン基である。
【0066】
本明細書の一実施態様において、L3は、直接結合である。
【0067】
本明細書の一実施態様において、L3は、フェニレン基である。
【0068】
本明細書の一実施態様において、L4は、直接結合である。
【0069】
本明細書の一実施態様において、L4は、フェニレン基である。
【0070】
本明細書の一実施態様において、L5は、直接結合である。
【0071】
本明細書の一実施態様において、L5は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0072】
本明細書の一実施態様において、L5は、フェニレン基である。
【0073】
本明細書の一実施態様において、L6は、直接結合である。
【0074】
本明細書の一実施態様において、L6は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0075】
本明細書の一実施態様において、L6は、フェニレン基である。
【0076】
本明細書の一実施態様において、L6は、ビフェニレン基である。
【0077】
本明細書の一実施態様において、L6は、置換もしくは非置換の2価のアミン基である。
【0078】
本明細書の一実施態様において、L6は、アリール基で置換もしくは非置換の2価のアミン基である。
【0079】
本明細書の一実施態様において、L6は、フェニル基で置換もしくは非置換の2価のアミン基である。
【0080】
本明細書の一実施態様において、L6は、-O-である。
【0081】
本明細書の一実施態様において、L6は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基である。
【0082】
本明細書の一実施態様において、L6は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基である。
【0083】
本明細書の一実施態様において、L6は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、またはヘキシレン基である。
【0084】
本明細書の一実施態様において、L6は、メチレン基である。
【0085】
本明細書の一実施態様において、(L6)b2は、直接結合;メチレン基;エチレン基;フェニレン-O-ヘキシレン基;フェニレン-メチレン基;フェニレン-フェニル基で置換された2価のアミン基;フェニル基で置換された2価のアミン基;フェニレン基;またはビフェニレン基である。
【0086】
前記フェニレン-メチレン基は、フェニレン基とメチレン基とが連結されたものである。フェニレン-O-ヘキシレン基は、フェニレン基、-O-およびヘキシレン基が連続して連結されたものである。フェニレン-フェニル基で置換された2価のアミン基は、フェニレン基とフェニル基で置換された2価のアミン基とが連結されたものである。
【0087】
本明細書の一実施態様において、b1およびb2は、それぞれ1~10の整数であり、前記b1およびb2がそれぞれ2以上の時、2以上のL1およびL6は、それぞれ互いに同一または異なる。
【0088】
本明細書の一実施態様において、b2は、1~5の整数である。
【0089】
本明細書の一実施態様において、b2は、1~3の整数である。
【0090】
本明細書の一実施態様において、b2は、1または2である。
【0091】
本明細書の一実施態様において、Ar1~Ar3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアリールオキシ基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基である。
【0092】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、アルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アリール基;およびヘテロ環基から構成された群より選択された1個以上の置換基または前記群より選択された2個以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0093】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数1~10のアルコキシ基;炭素数6~30のアリールオキシ基;炭素数6~30のアリール基;および炭素数2~30のヘテロ環基から構成された群より選択された1個以上の置換基または前記群より選択された2個以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0094】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基である。
【0095】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、またはtert-ブチル基である。
【0096】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルコキシ基である。
【0097】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、メトキシ基である。
【0098】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、エトキシ基である。
【0099】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、イソプロポキシ基である。
【0100】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、tert-ブトキシ基である。
【0101】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0102】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、または置換もしくは非置換のフルオレニル基である。
【0103】
本明細書の一実施態様において、Ar1は、フェニル基である。
【0104】
本明細書の一実施態様において、Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0105】
本明細書の一実施態様において、Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のターフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、または置換もしくは非置換のフルオレニル基である。
【0106】
本明細書の一実施態様において、Ar2は、フェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基である。
【0107】
本明細書の一実施態様において、Ar2は、アルキル基で置換されたフルオレニル基である。
【0108】
本明細書の一実施態様において、Ar2は、メチル基で置換されたフルオレニル基である。
【0109】
本明細書の一実施態様において、Ar3は、フェニル基、ビフェニル基、またはナフチル基である。
【0110】
本明細書の一実施態様において、Ar3は、アルキル基で置換されたフルオレニル基である。
【0111】
本明細書の一実施態様において、Ar3は、メチル基で置換されたフルオレニル基である。
【0112】
本明細書の一実施態様において、R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ヒドロキシ基;ニトリル基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基である。
【0113】
本明細書の一実施態様において、R1~R8は、それぞれ水素である。
【0114】
本明細書の一実施態様において、r4およびr5は、それぞれ1~3の整数であり、前記r4およびr5がそれぞれ2以上の時、2以上のR4およびR5は、それぞれ互いに同一または異なる。
【0115】
本明細書の一実施態様において、m1は、モル分率であって、0<m1<1であり、m2は、モル分率であって、0<m2<1であり、m1+m2≦1である。
【0116】
本明細書の一実施態様において、前記m1は、0.01<m1<0.99であり、m2は、0.01<m2<0.59である。
【0117】
本明細書の一実施態様において、前記m1は、0.5<m1<0.99であり、m2は、0.01<m2<0.5である。
【0118】
本明細書の一実施態様において、m1>m2である。
【0119】
本明細書の一実施態様において、m1+m2は、1である。
【0120】
本明細書の一実施態様において、Xは、下記の構造の中から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0121】
【0122】
前記構造において、
L11は、置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R10~R13は、互いに同一であるか、異なり、それぞれ独立に、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基である。
【0123】
本明細書の一実施態様において、Xが
【化9】
の場合、b2は、1~3の整数である。
【0124】
本明細書の一実施態様において、Xは、下記の構造から選択される。
【0125】
【0126】
本明細書の一実施態様において、Xは、
【化11】
である。
【0127】
本明細書の一実施態様において、Xは、シクロブタベンゼンまたはオキセタンである。
【0128】
前記Xがシクロブタベンゼンまたはオキセタンの場合、ビニル重合の過程(AIBN:アゾビスイソブチロニトリルを用いたラジカル開始反応)で構造が損傷せず、後で熱を加えると、硬化が始まって架橋された高分子を形成できるという利点があり、前記高分子は高い耐性を示して溶液工程に容易である。
【0129】
本明細書の一実施態様において、L11は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基;または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0130】
本明細書の一実施態様において、L11は、メチレン基;エチレン基;プロピレン基;ブチレン基;フェニレン基;またはビフェニレン基である。
【0131】
本明細書の一実施態様において、R10~R13は、互いに同一であるか、異なり、それぞれ独立に、水素;メチル基;エチル基;プロピル基;イソプロピル基;ブチル基;またはt-ブチル基である。
【0132】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1は、下記化学式101で表される。
【化12】
【0133】
前記化学式101において、
L2~L5、Ar1~Ar3、R1~R5、r4、r5およびm1の定義は、化学式1で定義した通りであり、
【0134】
L101は、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
b101は、1~9の整数であり、
b101が2以上の場合、2以上のL101は、互いに同一または異なる。
【0135】
本明細書の一実施態様において、前記化学式101のL101は、前記化学式1のL1の定義と同一である。
【0136】
本明細書の一実施態様において、前記化学式101のb101は、1または2である。
【0137】
本明細書の一実施態様において、前記化学式101のL101は、直接結合である。
【0138】
本明細書の一実施態様において、前記化学式101は、下記化学式102で表される。
【化13】
【0139】
前記化学式102において、
L101、b101、L2~L5、Ar1~Ar3、R1~R5、r4、r5およびm1の定義は、化学式101で定義した通りである。
【0140】
本明細書の一実施態様において、前記化学式101は、下記化学式103で表される。
【化14】
【0141】
前記化学式103において、
L101、b101、L2~L5、Ar1~Ar3、R1~R5、r4、r5およびm1の定義は、化学式101で定義した通りである。
【0142】
本明細書の一実施態様において、前記化学式103のL101は、直接結合である。
【0143】
本明細書の一実施態様において、前記化学式2は、下記化学式201または化学式202で表される。
【化15】
【化16】
【0144】
前記化学式201および202において、
R6~R8、m2およびXの定義は、化学式1で定義した通りであり、
L106は、直接結合;-O-;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;置換もしくは非置換の2価のアミン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であり、
b102は、1~9の整数であり、
R20およびR21は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素;ハロゲン基;ニトリル基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基である。
【0145】
本明細書の一実施態様において、前記化学式201および202のL106は、前記化学式2のL6の定義と同一である。
【0146】
本明細書の一実施態様において、前記化学式201および202のb102は、1または2である。
【0147】
本明細書の一実施態様において、前記化学式201および202のL106は、直接結合である。
【0148】
本明細書の一実施態様において、前記化学式201および202のR20およびR21は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素またはアルキル基である。
【0149】
本明細書の一実施態様において、前記化学式201および202のR20およびR21は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;重水素またはメチル基である。
【0150】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位は、下記の構造のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【化21】
前記構造において、m1は、モル分率であって、0<m1<1である。
【0156】
本明細書の一実施態様において、前記化学式2で表される第2単位は、下記の構造のうちのいずれか1つで表されてもよい。
【化22】
【0157】
前記構造において、m2は、モル分率であって、0<m2<1である。
【0158】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位および前記化学式2で表される第2単位を含む重合体は、下記化学式11または12で表されてもよい。
【化23】
【化24】
【0159】
前記化学式11および12において、
X、L1~L6、b1、b2、Ar1~Ar3、R1~R8、r4、r5、m1およびm2に対する定義は、前記化学式1および2で定義したものと同一であり、
nは、単位の繰り返し数であって、1~10,000の整数である。
【0160】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位および前記化学式2で表される第2単位を含む重合体は、下記の構造の中から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
前記構造において、
m1は、モル分率であって、0<m1<1であり、
m2は、モル分率であって、0<m2<1であり、
m1+m2≦1であり、
nは、単位の繰り返し数であって、1~10,000の整数である。
【0167】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される第1単位および前記化学式2で表される第2単位を含む重合体は、下記の構造の中から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
本明細書の一実施態様において、前記重合体の数平均分子量は、5,000g/mol~1,000,000g/molであってもよい。具体的には、5,000g/mol~300,000g/molであってもよい。
【0174】
本明細書において、分子量の分析はGPC装置により分析した。カラムはPL mixed Bx2を用い、溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)(0.45mで濾過して使用)を使用した。1.0mL/minの流速と1mg/mLの試料濃度で測定した。試料は100L注入し、カラム温度は40℃に設定した。検出器(Detector)としてはAgilent RI detectorを用い、PS(ポリスチレン)で基準を設定した。ChemStationプログラムによりデータプロセッシング(Data processing)を行った。
【0175】
本明細書の一実施態様に係る重合体は、後述する製造方法で製造できる。後述する製造例では、代表的な例示を記載するが、必要に応じて、置換基を追加または除外することができ、置換基の位置を変更することができる。また、当技術分野で知られている技術に基づいて、出発物質、反応物質、反応条件などを変更することができる。
【0176】
例えば、前記化学式1で表される第1単位および前記化学式2で表される第2単位を含む重合体は、下記反応式1のように製造できる。
【0177】
【0178】
X、L1~L6、b1、b2、Ar1~Ar3、R1~R8、r4、r5、m1およびm2に対する定義は、前記化学式1および2で定義したものと同一である。
【0179】
本明細書は、前記重合体を含むコーティング組成物を提供する。
【0180】
本明細書の一実施態様によれば、前記コーティング組成物の製造時にアゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutyronitrile;AIBN)を使用する。
【0181】
本明細書の一実施態様によれば、前記コーティング組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0182】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物は、液状であってもよい。前記「液状」は、常温および常圧で液体状態であることを意味する。
【0183】
本明細書の一実施態様において、前記溶媒は、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;メチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、3-フェノキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリンなどの溶媒が例示されるが、本明細書の一実施態様に係る化合物を溶解または分散させる溶媒であれば可能であり、これらに限定されるものではない。
【0184】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物は、トルエン溶媒を含む。
【0185】
もう一つの実施態様において、前記溶媒は、1種単独で使用するか、または2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0186】
もう一つの実施態様において、前記溶媒の沸点は、好ましくは40℃~250℃、さらに好ましくは60℃~230℃であるが、これに限定されるものではない。
【0187】
もう一つの実施態様において、前記単独あるいは混合溶媒の粘度は、好ましくは1CP~10CP、さらに好ましくは3CP~8CPであるが、これに限定されるものではない。
【0188】
もう一つの実施態様において、前記コーティング組成物の濃度は、好ましくは0.1wt/v%~20wt/v%、さらに好ましくは0.5wt/v%~5wt/v%であるが、これに限定されるものではない。
【0189】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物は、熱重合開始剤および光重合開始剤からなる群より選択される1種または2種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0190】
前記熱重合開始剤は、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルオキシ)-ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミル(cumyl)パーオキサイド、ジ-tブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-(ジt-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1-ジt-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジt-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、4,4-ジ-t-ブチルパーオキシバレリックアシッドn-ブチルエステル、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-ブチルパーオキシトリメチルアジペートなどの過酸化物、あるいはアゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリルなどのアゾ系があるが、これに限定されるものではない。
【0191】
前記光重合開始剤は、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4-ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤があり、その他光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10-フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0192】
また、光重合促進効果を有するものを単独または前記光重合開始剤と併用して用いてもよい。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0193】
本明細書の一実施態様によれば、前記コーティング組成物は、ニトロキシド媒介重合(NMP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)のようなフリーラジカル重合反応により硬化される。
【0194】
本明細書はさらに、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子を提供する。
【0195】
本明細書の一実施態様において、前記有機発光素子は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含み、前記有機物層のうちの1層以上は、前記コーティング組成物の硬化物を含む。
【0196】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極は、カソードであり、前記第2電極は、アノードである。
【0197】
もう一つの実施態様において、前記第1電極は、アノードであり、前記第2電極は、カソードである。
【0198】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物は、前記コーティング組成物が熱処理または光処理によって硬化された状態である。
【0199】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層である。
【0200】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物の硬化物を含む有機物層は、発光層を含み、前記発光層は、前記コーティング組成物の硬化物を含む。
【0201】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物は、pドーピング物質(pドーパント)をさらに含んでもよい。
【0202】
本明細書の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含む。
【0203】
本明細書の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含み、前記ホウ素陰イオンは、ハロゲン基を含む。
【0204】
本明細書の一実施態様において、前記pドーピング物質は、F4TCNQ;またはホウ素陰イオンを含み、前記ホウ素陰イオンは、Fを含む。
【0205】
本明細書の一実施態様において、前記pドーピング物質は、下記構造式の中から選択される。
【0206】
【0207】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物の総重量100%基準で、前記pドーピング物質の含有量は、0.001重量%~50重量%;0.01重量%~30重量%;または1重量%~25重量%である。
【0208】
本明細書の一実施態様において、前記有機発光素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、および正孔阻止層からなる群より選択される1層または2層以上をさらに含んでもよい。
【0209】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、アノード、1層以上の有機物層、およびカソードが順次に積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0210】
もう一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、カソード、1層以上の有機物層、およびアノードが順次に積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0211】
本明細書の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本明細書の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機層を含んでもよい。
【0212】
例えば、本明細書の一実施態様に係る有機発光素子の構造は、
図1に例示されている。
【0213】
前記
図1には、基板101上に、アノード201、正孔注入層301、正孔輸送層401、発光層501、電子注入および輸送を同時に行う層601、並びにカソード701が順次に積層された有機発光素子の構造が例示されている。
【0214】
本明細書の一実施態様において、前記
図1の正孔注入層301、正孔輸送層401、または発光層501は、前記化学式1で表される第1単位;および下記化学式2で表される第2単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0215】
本明細書の一実施態様において、前記
図1の正孔注入層301は、前記化学式1で表される第1単位;および下記化学式2で表される第2単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0216】
本明細書の一実施態様において、前記
図1の正孔輸送層401は、前記化学式1で表される第1単位;および下記化学式2で表される第2単位を含む重合体を含むコーティング組成物を用いて形成される。
【0217】
前記
図1は、有機発光素子を例示したものであり、これに限定されない。
【0218】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成される。
【0219】
本明細書の有機発光素子は、有機物層のうちの1層以上がコーティング組成物を用いて形成されることを除けば、当技術分野で知られている材料および方法で製造できる。
【0220】
例えば、本明細書の有機発光素子は、基板上にアノード、有機物層、およびカソードを順次に積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)方法を利用して、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させてアノードを形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上にカソードとして使用可能な物質を蒸着させて製造できる。このような方法以外にも、基板上にカソード物質から有機物層およびアノード物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる。
【0221】
本明細書はさらに、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子の製造方法を提供する。
【0222】
具体的には、本明細書の一実施態様において、基板を用意するステップと、前記基板上にカソードまたはアノードを形成するステップと、前記カソードまたはアノード上に1層以上の有機物層を形成するステップと、前記有機物層上にアノードまたはカソードを形成するステップとを含み、前記有機物層を形成するステップは、前記コーティング組成物を用いて1層以上の有機物層を形成するステップを含むものである有機発光素子の製造方法を提供する。
【0223】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、スピンコーティングまたはインクジェッティングを用いて形成される。
【0224】
他の実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、印刷法によって形成される。
【0225】
本明細書の態様において、前記印刷法は、例えば、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティング、オフセットプリンティング、転写プリンティング、またはスクリーンプリンティングなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0226】
本明細書の一実施態様に係るコーティング組成物は、構造的な特性から溶液工程が好適で印刷法によって形成できるので、素子の製造時に時間および費用的に経済的な効果がある。
【0227】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を形成するステップは、前記カソードまたはアノード上に前記コーティング組成物をコーティングするステップと、前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理するステップとを含む。
【0228】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を熱処理する時間は、好ましくは1時間以内、さらに好ましくは30分以内である。
【0229】
本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を熱処理する雰囲気は、好ましくは、アルゴン、窒素などの不活性気体である。
【0230】
前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を形成するステップにおいて、前記熱処理または光処理ステップを含む場合には、コーティング組成物に含まれた複数のフルオレン基が架橋を形成して薄膜化された構造が含まれた有機物層を提供することができる。この場合、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層の表面上に蒸着された溶媒によって溶解するか、形態学的に影響を受けたり分解されるのを防止することができる。
【0231】
したがって、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層が熱処理または光処理ステップを含んで形成された場合には、溶媒に対する抵抗性が増加して溶液蒸着および架橋方法を繰り返し行って多層を形成することができ、安定性が増加して素子の寿命特性を増加させることができる。
【0232】
本明細書の一実施態様において、前記重合体を含むコーティング組成物は、高分子結合剤に混合して分散させたコーティング組成物を用いることができる。
【0233】
本明細書の一実施態様において、高分子結合剤としては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。高分子結合剤としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどが例示される。
【0234】
また、本明細書の一実施態様に係る重合体は、有機物層に化合物単独で含んでもよく、他のモノマーと混合したコーティング組成物を用いて共重合体として含ませることができる。さらに、他の高分子と混合したコーティング組成物を用いて共重合体、または混合物を含むことができる。
【0235】
前記アノード物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本明細書で使用可能なアノード物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0236】
前記カソード物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。カソード物質の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0237】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、アノードからの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)がアノード物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0238】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、アノードや正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0239】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子がそれぞれ輸送されて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン;またはルブレンなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0240】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0241】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換もしくは非置換のアリールアミン基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミン基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換もしくは非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミン基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換もしくは非置換である。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0242】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層で、電子輸送物質としては、カソードから電子がよく注入されて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;またはヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望のカソード物質とともに使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0243】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層で、電子を輸送する能力を有し、カソードからの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0244】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0245】
前記正孔阻止層は、正孔のカソード到達を阻止する層で、一般的に、電子注入層と同一の条件で形成される。具体的には、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、アルミニウム錯体(aluminum complex)などがあるが、これらに限定されない。
【0246】
本明細書に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【0247】
本明細書の一実施態様において、前記化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスタに含まれる。
【実施例】
【0248】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0249】
<製造例1.中間体の製造>
(1)中間体5の製造
【化37】
【0250】
3-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール(9g、27.9mmol)および4-ホルミルベンゼンボロン酸(4.18g、27.9mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF、100mL)に溶かした後、Pd(PPh3)4(0.32g、0.28mmol)と2M炭酸カリウム(K2CO3/H2O)水溶液70mlを入れて6時間還流させた。反応溶液を常温に冷やした後、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エチルアルコール(EtOH)で再結晶して、中間体3(8.9g、収率92%)を得た。MS:[M+H]+=348
【0251】
前記中間体3(8.2g、23.6mmol)をジメチルホルムアミド(200mL)に溶かし、そこへN-ブロモスクシンイミド(4.15g、23.6mmol)を添加した後、5時間室温で撹拌した。反応溶液に蒸留水を入れて反応を終了させた後、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エチルアルコール(EtOH)で再結晶して、中間体4(8.25g、収率82%)を得た。MS:[M+H]+=427
【0252】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド塩(13.41g、37.532mmol)およびカリウムt-ブトキシド(4.21g、37.532mmol)を無水テトラヒドロフラン(300ml)に入れて先に撹拌した。この後、無水テトラヒドロフラン(60ml)に溶かした中間体4(8g、18.766mmol)をゆっくり滴加した後、5時間反応させた。炭酸ナトリウム水溶液で反応を終了させた後、メチレンクロライドと水を用いて有機層として抽出し、残留水分をMgSO4を用いて除去した。反応液を濃縮させた後、メチレンクロライドとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、中間体5(7.8g、98%)を得た。MS:[M+H]+=425
【0253】
【0254】
前記中間体5(2g、4.713mmol)および(4-クロロフェニル)ボロン酸(1.1g、7.069mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF、20ml)に溶かした後、Pd(PPh3)4(0.32g、0.28mmol)と2M炭酸カリウム(K2CO3/H2O)水溶液15mlを入れて6時間還流させた。反応溶液を常温に冷やした後、有機層を抽出した。反応液を濃縮させ、エチルアルコール(EtOH)で再結晶して、中間体6(2g、収率93%)を得た。MS:[M+H]+=457
【0255】
<製造例2.化合物A1~A9の製造>
(1)化合物A1の製造
【化39】
【0256】
中間体5(3.65g、8.615mmol)、4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸(2.99g、10.338mmol)、Pd(PPh3)4(498mg、0.431mmol)、およびK2CO3(3.57g、25.845mmol)を無水テトラヒドロフラン(200ml)および蒸留水(100ml)に溶かした後、70℃で15時間撹拌した。エチルアセテートと水を用いて有機層を抽出した。これをMgSO4を用いて水分を除去した後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質をエチルアセテートとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、化合物A1を分離および精製した。MS:[M+H]+=589
【0257】
【0258】
4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸の代わりに、4-(ジビフェニル-4-イルアミノ)フェニルボロン酸を用いたことを除き、前記化合物A1を製造した方法と同様の方法で化合物A2を製造した。MS:[M+H]+=741
【0259】
【0260】
4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸の代わりに、4-(ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ)フェニルボロン酸を用いたことを除き、前記化合物A1を製造した方法と同様の方法で化合物A3を製造した。MS:[M+H]+=782
【0261】
【0262】
中間体5(3.65g、8.615mmol)、ジフェニルアミン(1.74g、10.338mmol)、Pd(tBu3P)2(220mg、0.431mmol)、およびナトリウムt-ブトキシド(2.48g、25.845mmol)をトルエン(26ml)に溶かした後、100℃で15時間撹拌した。エチルアセテートと水を用いて有機層を抽出した。これをMgSO4を用いて水分を除去した後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質をエチルアセテートとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、化合物A4を分離および精製した。[M+H]+=513
【0263】
【0264】
ジフェニルアミンの代わりに、ジ(ビフェニル-4-イル)アミンを用いたことを除き、前記化合物A4を製造した方法と同様の方法で化合物A5を製造した。MS:[M+H]+=665
【0265】
【0266】
ジフェニルアミンの代わりに、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミンを用いたことを除き、前記化合物A4を製造した方法と同様の方法で化合物A6を製造した。MS:[M+H]+=705
【0267】
【0268】
中間体5の代わりに、中間体6を用いたことを除き、前記化合物A1を製造した方法と同様の方法でA7を製造した。MS:[M+H]+=665
【0269】
【0270】
中間体5の代わりに、中間体6を用いたことを除き、前記化合物A2を製造した方法と同様の方法でA8を製造した。MS:[M+H]+=817
【0271】
【0272】
中間体5の代わりに、中間体6を用いたことを除き、前記化合物A3を製造した方法と同様の方法でA9を製造した。MS:[M+H]+=857
【0273】
<製造例3.化合物B2~B4の製造>
(1)化合物B2の製造
【化48】
【0274】
(4-ホルミルフェニル)ボロン酸(4.91g、32.778mmol)および3-ブロモビシクロ[4.2.0]オクタ-1(6),2,4-トリエン(5g、27.315mmol)をPd(PPh3)4(1.58g、1.366mmol)、K2CO3(11.32g、81.945mmol)を無水テトラヒドロフラン(200ml)および蒸留水(100ml)に溶かした後、70℃で15時間撹拌した。エチルアセテートと水を用いて有機層を抽出した。これをMgSO4を用いて水分を除去した後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質をエチルアセテートとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、中間体7を分離および精製した。MS:[M+H]+=209
【0275】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド塩(13.41g、37.532mmol)およびカリウムt-ブトキシド(4.21g、37.532mmol)を無水テトラヒドロフラン(30ml)に入れて撹拌した。この後、無水テトラヒドロフラン(10ml)に溶かした中間体7(3.90g、18.766mmol)をゆっくり滴加した後、4時間反応させた。炭酸ナトリウム水溶液で反応を終了させた後、メチレンクロライドと水を用いて有機層として抽出し、残留水分をMgSO4を用いて除去した。反応液を濃縮させた後、メチレンクロライドとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、化合物B2(3.2g、84%)を製造した。MS:[M+H]+=207
【0276】
【0277】
N-フェニル-4-ビニルアニリン(8g、40.969mmol)、3-ブロモビシクロ[4.2.0]オクタ-1(6),2,4-トリエン(7.61g、45.588mmol)、Pd(tBu3P)2(635mg、1.243mmol)、およびナトリウムt-ブトキシド(9.95g、103.61mmol)をトルエン(26ml)に溶かした後、100℃で15時間撹拌した。エチルアセテートと水を用いて有機層を抽出した。これをMgSO4を用いて水分を除去した後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質をエチルアセテートとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、化合物B3を分離および精製した。MS:[M+H]+=298
【0278】
【0279】
4-ビニルフェノール(3g、24.968mmol)、3-ブロモビシクロ[4.2.0]オクタ-1(6),2,4-トリエン(5.03g、27.464mmol)に炭酸カリウム(6.9g、49.936mmol)をDMF28mlに入れて、140℃で20時間撹拌した。エチルアセテートと水を用いて有機層を抽出した。これをMgSO4を用いて水分を除去した後、減圧して溶媒を除去した。得られた物質をエチルアセテートとヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにより、化合物B4(2.1g)を分離および精製した。MS:[M+H]+=222
【0280】
<製造例4.重合体C1~C4の製造>
(1)重合体C1の製造
【化51】
【0281】
化合物A1(500mg)、化合物B2(94mg)、およびAIBN(1.2mg)をトルエンに入れて、窒素置換下、100℃で14時間反応させた。エチルアセテートに沈殿して製造された重合体C1を製造した。Mn=18,900、Mw=30,600
【0282】
【0283】
化合物A1および化合物B2の代わりに、化合物A3および4-ビニル-1,2-ジヒドロブタベンゼンを用いたことを除き、前記重合体C1を製造した方法と同様の方法で重合体C2を製造した。Mn=25,700、Mw=47,900
【0284】
【0285】
化合物A1および化合物B2の代わりに、化合物A6および4-ビニル-1,2-ジヒドロブタベンゼンを用いたことを除き、前記重合体C1を製造した方法と同様の方法で重合体C3を製造した。Mn=116,000、Mw=247,900
【0286】
【0287】
化合物A1の代わりに、化合物A9を用いたことを除き、前記重合体C1を製造した方法と同様の方法で重合体C4を製造した。Mn=15,900、Mw=25,900
【0288】
<実施例>
[ITO基板の用意]
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を用い、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行させた。
【0289】
蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルおよびアセトンの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送させた。
【0290】
[素子例1]
ITO透明電極上に、前記重合体C1:下記のpドーパント(下記化学式M)(8:2の重量比)の2wt%トルエンインクをITO表面上にスピンコーティング(4000rpm)し、200℃で30分間熱処理(硬化)して40nmの厚さに正孔注入層を形成した。この後、真空蒸着機に搬送した後、前記正孔注入層上に、下記の化合物Gを真空蒸着して20nmの厚さの正孔輸送層を形成した。
【0291】
次に、前記正孔輸送層上に、下記の化合物Hと化合物I(9:1の重量比)を20nmの厚さに真空蒸着して発光層を形成した。前記発光層上に、化合物Jを35nmの厚さに真空蒸着して電子注入および輸送を同時に行う層を形成した。前記電子注入および輸送を同時に行う層上に、順次に、1nmの厚さにLiFと100nmの厚さにアルミニウムを蒸着してカソードを形成した。
【0292】
上記の過程において、有機物の蒸着速度は0.4~0.7Å/secを維持し、カソードのリチウムフルオライドは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持して、有機発光素子を作製した。
【0293】
【0294】
【0295】
[素子例2]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、重合体C1:pドーパント(8:2重量比)2wt%トルエンインクの代わりに、前記重合体C2:pドーパント(8:2重量比)の2wt%トルエンインクを用いたことを除けば、素子例1の過程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0296】
[素子例3]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、重合体C1:pドーパント(8:2重量比)2wt%トルエンインクの代わりに、前記重合体C3:pドーパント(8:2重量比)の2wt%トルエンインクを用いたことを除けば、素子例1の過程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0297】
[素子例4]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、重合体C1:pドーパント(8:2重量比)2wt%トルエンインクの代わりに、前記重合体C4:pドーパント(8:2重量比)の2wt%トルエンインクを用いたことを除けば、素子例1の過程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0298】
[比較素子例1]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、重合体C1:pドーパント(8:2重量比)2wt%トルエンインクの代わりに、下記重合体F:pドーパント(8:2重量比)の2wt%トルエンインクを用いたことを除けば、素子例1の過程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0299】
【0300】
[比較素子例2]
前記素子例1の作製過程において、正孔注入層の成膜時、重合体C1:pドーパント(8:2重量比)2wt%トルエンインクの代わりに、下記重合体Z:pドーパント(8:2重量比)の2wt%トルエンインクを用いたことを除けば、素子例1の過程と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0301】
【0302】
前記素子例1~素子例4および比較素子例1および2で製造された有機発光素子に電流を流した時、電圧、効率および寿命を測定し、その結果を下記表1に示した。T95は、光密度20mA/cm2での初期輝度を100%にした時、輝度が95%に減少するのにかかる時間を意味する。また、EQEは、電流密度が10mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-1000(コニカミノルタ社製造)で計測した値で、得られた前記分光放射輝度スペクトルから外部量子効率を算出した。
【0303】
【0304】
前記表1から明らかなように、本発明の化学式1で表される第1単位および化学式2で表される第2単位を含む重合体を用いたコーティング組成物を正孔注入層物質として用いた場合、比較素子例1および2に比べて、同時に効率と寿命に優れた効果を示すことが分かる。
【0305】
したがって、本発明の化学式1で表される第1単位および化学式2で表される第2単位を含む重合体を用いたコーティング組成物は、コーティング層の均一性および膜の安定性に優れているので、前記コーティング組成物を用いて有機発光素子の性能を向上させることが分かる。
【0306】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0307】
101:基板
201:アノード
301:正孔注入層
401:正孔輸送層
501:発光層
601:電子注入および輸送を同時に行う層
701:カソード