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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】光硬化樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220307BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220307BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08F290/06
G02F1/1333
G09F9/00 342
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018531286
(86)(22)【出願日】2017-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 KR2017005618
(87)【国際公開番号】W WO2018021674
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2018-03-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2016-0095157
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】シ・ヨン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウ・ヤン
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】福井 悟
【審判官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-120745(JP,A)
【文献】特開2002-061659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン主鎖の末端にウレタン結合を介して一つ以上の(メタ)アクリル基を有する反応性シリコーンオリゴマー20重量部~70重量部、ポリシロキサン主鎖の末端に(メタ)アクリル基を有しない非反応性シリコーンオリゴマー20重量部~50重量部および第1モノマーとしてエチルエーテル系アクリレート0.5重量部~5重量部を含み、
下記数式1の条件を満たす光硬化樹脂組成物:
[数式1]
40%≦S60/S<80%
前記数式1で、Sは、前記光硬化樹脂組成物を離型処理されたフィルムの間に塗布した後、LEDランプを利用して395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して、硬化後の厚さが1mmとなるように硬化し、前記硬化物をカットして直径8mmおよび厚さ1mmの円形サンプルを製造した後、動的粘弾性測定装置を利用して、25℃で5%のせん断変形(shear strain)を加えたときの初期応力であり、S60は、60秒後の応力である。
【請求項2】
前記反応性シリコーンオリゴマーは、二つの(メタ)アクリル基を有するシリコーンオリゴマーを含む、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応性シリコーンオリゴマーは、一つまたは三つ以上の(メタ)アクリル基を有するシリコーンオリゴマーをさらに含む、請求項2に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項4】
前記反応性シリコーンオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000である、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項5】
前記非反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端ケイ素に連結された水素、アルキル基またはアルコキシ基を有する化合物である、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項6】
前記非反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端にウレタン結合を介して水素、アルキル基またはアルコキシ基を有する化合物である、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項7】
前記非反応性シリコーンオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~50,000である、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項8】
前記エチルエーテル系アクリレートは、下記化学式3または化学式4で表示される、請求項2に記載の光硬化樹脂組成物:
【化1】
【化2】
前記化学式3および4で、nは、1~6の整数であり、Rは、水素、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基であり、R~Rは、それぞれ独立して、水素である。
【請求項9】
前記光硬化樹脂組成物は、第2モノマーとしてエチルエーテル基を含まないアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルアクリレートをさらに含み、前記第1モノマーおよび第2モノマーの総合計の比率は、前記光硬化樹脂組成物100重量部に対して3重量部~30重量部である、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項10】
前記光硬化樹脂組成物は、光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項11】
前記光硬化樹脂組成物は、シランカップリング剤または酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項12】
前記光硬化樹脂組成物は、炭素数2~4のアルキレンオキシド反復単位を含む三官能以上の(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド反復単位を含まない三官能以上の(メタ)アクリレートおよび平均粒子のサイズが50nm~150nm範囲であるシリカナノ粒子の固形分を30重量%以上含む、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項13】
前記光硬化樹脂組成物は、395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して、硬化後に5%のせん断変形を加えたとき、1Hzおよび25℃で測定された弾性モジュラスが1,500Pa~10,000Paである、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項14】
前記光硬化樹脂組成物は、365nm波長の光を200mW/cmの強さおよび4000mJ/cmの光量で照射して、硬化後に5%のせん断変形を加えたとき、1Hzおよび25℃で測定された弾性モジュラスが10,000Pa~100,000Paである、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項15】
前記光硬化樹脂組成物は、1Hzおよび25℃で測定された粘度が1,000cp~10,000cpである、請求項1に記載の光硬化樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1に記載光硬化樹脂組成物の硬化物および前記硬化物を媒介として付着した少なくとも2個以上の光学部材を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光硬化樹脂組成物およびその用途に関する。
【0002】
本出願は、2016年07月27日付けの韓国特許出願第10-2016-0095157に基づく優先権の利益を主張し、当該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
ダイレクトボンディング(Direct Bonding)は、複数の光学部材、例えば、タッチパネルとディスプレイパネルなどが一つに結合されたディスプレイ装置を製造するための接合技術を意味する。ダイレクトボンディングは、オプティカルボンディング(Optical Bonding)、フルラミネーション(Full Lamination)またはスクリーンフィット(Screen Fit)等の用語で呼称され得る。
【0004】
ダイレクトボンディングに使用される接合剤に要求される特性としては、耐熱性、凝集力、接着力、透明性などがあり、最近、特に高耐熱性能に対する需要が増加している。
【0005】
高耐熱性能と接着力を同時に有する接合剤の開発が必要であり、低価であり、接着力に優れたアクリルと耐熱性に優れたシリコーン素材の長所を利用して性能に優れた接合剤を製造し得る。特許文献1(特開2014-001341号公報)は、シリコーンとアクリルを利用した硬化性樹脂組成物を開示している。
【0006】
しかし、先行文献には、ダイレクトボンディング工程に関連した物性についての言及は足りない。ダイレクトボンディングの代表的な工程として、ダムアンドフィル(Dam&Fill)工程がある。ダムアンドフィル工程は、光硬化樹脂組成物を利用してダムを仮硬化した後、活性領域に光硬化樹脂組成物を塗布して完全硬化することによって合着する工程である。
【0007】
しかし、ダムアンドフィル工程は、前記合着過程で多くの不良が発生する問題点がある。例えば、仮硬化時に弾性率があまりに高いと、合着後に復元力によってギャップの維持が困難であるため、ダムとフィルとの間に気泡が発生し得る。これに対し、弾性率があまりに低いと、フィル領域の光硬化組成物が合着時に溢れ出すおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-001341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適した光硬化樹脂組成物およびその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は、光硬化樹脂組成物に関する。前記光硬化樹脂組成物は、下記数式1を満たす。
【0011】
[数式1]
40%≦S60/S<80%
【0012】
前記数式1において、Sは、前記光硬化樹脂組成物に395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して硬化後に5%のせん断変形(shear strain)を加えたときの初期応力であり、S60は、60秒後の応力である。
【0013】
前記数式1で前記初期応力Sは、5%のせん断変形を加えた直後に測定された応力を意味する。前記数式1で前記60秒後の応力S60は、5%のせん断変形を加えて60秒後に測定された応力を意味する。本明細書で時間を秒単位で記載する場合、約±1秒以内の誤差を含むことができる。
【0014】
前記数式1を満たす光硬化樹脂組成物は、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適した物性、例えば、仮硬化後に適正範囲の弾性モジュラスを有し得るので、合着性能に優れている。
【0015】
前記初期応力Sおよび60秒後の応力S60は、本出願の目的を考慮して前記数式1を満たすように調節できる。初期応力Sは、例えば300Pa~1000Paであってもよい。前記60秒後の応力S60は、120Pa~800Paであってもよい。
【0016】
前記光硬化樹脂組成物に含まれる成分および比率は、前記数式1を満たすように調節できる。
【0017】
例えば、前記光硬化樹脂組成物は、反応性シリコーンオリゴマーを含むことができる。前記反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端にウレタン結合を介して一つ以上の反応性官能基を有する化合物であってもよい。本明細書で末端に反応性官能基をn個有するシリコーンオリゴマーをn官能シリコーンオリゴマーと呼称し得る。
【0018】
前記反応性官能基は、重合性基または架橋性基を意味し、例えば、(メタ)アクリル基が例示できる。以下、ポリシロキサン主鎖の末端にウレタン結合を介して一つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物をポリシロキサン変性ウレタン(メタ)アクリレートと呼称する。
【0019】
前記ポリシロキサンとしては、ポリオルガノシロキサンが例示でき、本出願の一実施例によると、ポリジメチルシロキサンが使用できる。
【0020】
前記ポリシロキサン変性ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有ポリシロキサン、多官能性イソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートのウレタン反応物であってもよい。本明細書で水酸基含有化合物は、末端に水酸基(-OH)を有する化合物を意味する。
【0021】
前記水酸基含有ポリシロキサンは、下記化学式1で表示される化合物であってもよい。
【0022】
【化1】
【0023】
前記化学式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、単結合、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基であり、R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基であり、aは、10以上の整数であり、b、cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、且つ、bおよびcの和は、1以上である。
【0024】
前記炭化水素基は、例えば、炭素数1~100、具体的に、炭素数1~25、より具体的に、炭素数1~5の炭化水素基であってもよく、2価または3価の炭化水素基であってもよい。2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン基が例示できる。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、特に好ましくは炭素数1~4であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などが例示できる。
【0025】
前記ヘテロ原子を含む有機基としては、例えばオキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、ポリカプロラクトン基、アミノ基などが例示できる。
【0026】
前記エーテル基を含む有機基としては、エチルエーテル基などが例示できる。
【0027】
前記一般式1で、Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、またはフェニル基であってもよい。前記アルキル基は、例えば炭素数1~15、具体的に、炭素数1~10、より具体的に、炭素数1~4のアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好ましく、特に好ましくはメチル基である。
【0028】
前記シクロアルキル基は、例えば、炭素数3~10、具体的に、炭素数5~8のシクロアルキル基であってもよく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基などが例示できる。
【0029】
前記アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基は、置換基を有してもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、スルファニル酸、ビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基などが例示できる。
【0030】
前記一般式1で、aは、10以上の整数であり、具体的に30~200、より具体的に40~120の整数であってもよい。b、cは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、且つ、bおよびcの和は、1以上であってもよく、例えば、bおよびcがそれぞれ1であってもよい。
【0031】
前記水酸基含有ポリシロキサンとしては、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどのポリシロキサンの末端に水酸基を有する化合物であって、例えば、末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサンが使用できる。末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサンとしては、例えば、片末端に水酸基を1個有するポリジメチルシロキサンモノオール(Monool)、片末端に水酸基を2個有するポリジメチルシロキサンジオール、両末端に水酸基を1個ずつ有するポリジメチルシロキサンジオールなどが例示できる。
【0032】
前記片末端に水酸基を1個有するポリジメチルシロキサンモノオールとしては、X-22-4015(信越化学工業社製)、Silaplane FM-0411、FM-0421、FM-0425(チッソ社製)、片末端に水酸基を2個有するポリジメチルシロキサンジオールとしては、Silaplane FM-DA11、FM-DA21、FM-DA26(チッソ社製)、両末端に水酸基を1個ずつ有するポリジメチルシロキサンジオールとしては、X-22-160AS、KF-6001、KF-6002、KF-6003(信越化学工業社製)、Silaplane FM-4411、FM-4421、FM-4425(チッソ社製)、マクロモノマー-HK-20(東亜合成社製)等が例示できる。
【0033】
前記多官能性イソシアネートとしては、少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物が使用できる。具体的に、多官能性イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート[HDI、hexamethylene diisocyanate]、イソホロンジイソシアネート[IPDI、isophorone diisocyante]、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)[H12MDI、methylene bis(4-cyclohexyl isocyanate)]、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート[TMHMDI、trimethylhexamethylene diisocyanate]、トリレンジイソシアネート[TDI、tolylene diisocyanate]、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート[MDI、44-diphenylmethane diisocyanate]、キシレンジイソシアネート[XDI、xylene diisocyanate]などのジイソシアネート等が例示できる。また、ジイソシアネートをトリメチロールプロパンで変性したアダクト体、ジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)、ジイソシアネートと水との反応によるビュレット体などを1種または2種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが使用できる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが例示でき、これらを1種または2種以上混合して使用できる。
【0035】
前記光硬化樹脂組成物は、前記反応性シリコーンオリゴマーを20重量部~70重量部の比率で含むことができる。前記反応性シリコーンオリゴマーの含量が前記範囲未満である場合、架橋度の低下により耐熱性が不足することがあり、前記範囲を超過する場合、弾性率が過度に高くなる問題点があり得る。
【0036】
前記反応性シリコーンオリゴマーとしては、例えば一官能シリコーンオリゴマー、二官能シリコーンオリゴマー、三官能以上のシリコーンオリゴマーが使用できる。前記光硬化樹脂組成物は、前記反応性オリゴマーのうち1種を含むこともでき、または2種以上の反応性シリコーンオリゴマーの混合を含むこともできる。
【0037】
一例として、前記光硬化樹脂組成物は、二官能シリコーンオリゴマーを含むことができる。前記光硬化樹脂組成物が二官能シリコーンオリゴマーを含む場合、一定水準以上の架橋構造を達成できるので、高耐熱性能を示すのに有利である。
【0038】
前記光硬化樹脂組成物は、一官能シリコーンオリゴマーまたは三官能以上のシリコーンオリゴマーをさらに含むことができる。前記光硬化樹脂組成物が一官能シリコーンオリゴマーおよび二官能シリコーンオリゴマーを含む場合、一官能シリコーンオリゴマーは、二官能シリコーンオリゴマー100重量部に対して20重量部~500重量部の比率で前記光硬化樹脂組成物内に含まれ得る。前記光硬化組成物が三官能以上のシリコーンオリゴマーおよび二官能シリコーンオリゴマーを含む場合、三官能シリコーンオリゴマーは、二官能シリコーンオリゴマー100重量部に対して2重量部~50重量部の比率で前記光硬化樹脂組成物内に含まれ得る。
【0039】
前記反応性シリコーンオリゴマーの重量平均分子量は、10,000~100,000、より具体的に、30,000~80,000であってもよい。前記反応性シリコーンオリゴマーの重量平均分子量が前記範囲を満たす場合、耐熱性、接着力および凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適した仮硬化後の弾性モジュラスを示す光硬化樹脂組成物を提供できる。本明細書で重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値を意味する。
【0040】
前記光硬化樹脂組成物は、非反応性シリコーンオリゴマーをさらに含むことができる。前記光硬化樹脂組成物が前記非反応性シリコーンオリゴマーをさらに含む場合、接着力、凝集力および耐熱性などの諸般の物性をさらに向上させることができる。
【0041】
前記非反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端に反応性官能基を有しない化合物であってもよい。一例として、前記非反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端ケイ素(Si)に連結された非反応性置換基を有する化合物であってもよい。前記非反応性置換基としては、水素、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基が例示でき、より具体的に、水素、アルキル基、またはアルコキシ基が例示できる。このような非反応性シリコーンオリゴマーは、例えば下記化学式2で表示される化合物であってもよい。
【0042】
【化2】
【0043】
前記化学式2で、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基であり、R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基であり、aは、10以上の整数である。
【0044】
前記非反応性シリコーンオリゴマーとしては、例えばFM-0411、FM-0421、FM-0425、FMDA11、FM-DA21、FM-DA26、FM-4411、FM-4421、FM-4425(チッソ社)、DMS-T00、DMS-T01、DMS-T02、DMS-T03、DMS-T05、DMS-T07、DMS-T11、DMS-T12、DMS-T15、DMS-T21、DMS-T22、23、DMS-T25、DMS-T31、DMS-T35、DMS-T41、DMS-T43、DMS-T46、DMS-T51、DMS-T53、DMS-T56、PDM-0421、PDM-0821、PDM-1922、PMM-1015、PMM-1025、PMM-1043、PMM-5021、PMM-0011、PMM-0021、PMM-0025(ゲレスト社)、X-22-4039、X-22-4015、KF-99、KF-9901、KF-6000、KF-6001、KF-6002.KF-6003、KF-6004、X-22-4952、X-22-4272、KF-6123、X-21-5841、KF-9701、X-22-170BX、X-22-170DX、X-22-176DX、X-22-176F、X-22-176GX-A、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(信越化学工業社)等のシリコーンオイルまたはシリコーンフルード製品が使用できる。
【0045】
他の一例として、前記非反応性シリコーンオリゴマーは、ポリシロキサン主鎖の末端にウレタン結合を介して非反応性置換基を有する化合物であってもよい。前記非反応性置換基としては、水素、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基が例示でき、より具体的に、水素、アルキル基、またはアルコキシ基が例示できる。以下、このような非反応性シリコーンオリゴマーをポリシロキサン変性ウレタンオリゴマーと呼称する。
【0046】
前記ポリシロキサンとしては、ポリオルガノシロキサンが例示でき、本出願の一実施例によると、ポリジメチルシロキサンが使用できる。
【0047】
前記ポリシロキサン変性ウレタンオリゴマーは、水酸基含有ポリシロキサン、多官能性イソシアネートおよび水酸基含有非反応性モノマーのウレタン反応物であってもよい。前記水酸基含有ポリシロキサンおよび多官能性イソシアネートについては、反応性シリコーンオリゴマーの項目にて記述した内容が同一に適用され得る。前記水酸基含有非反応性モノマーとしては、末端に水酸基および、前記非反応性置換基を有するモノマーが使用できる。前記非反応性置換基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基またはエトキシ基などが例示できる。
【0048】
前記非反応性シリコーンオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~50,000であってもよい。前記非反応性オリゴマーの重量平均分子量が前記範囲を満たす場合、耐熱性、接着力および凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適合した弾性率を示す光硬化樹脂組成物を提供し得る。
【0049】
前記光硬化樹脂組成物は、前記オリゴマーの他に、仮硬化時にモジュラスの調節、硬化速度の調節、反応性の調節、粘度の希釈などを目的としてモノマーを含むことができる。
【0050】
前記モノマーとしては、第1モノマーとしてエチルエーテル系アクリレートを含むことができる。前記エチルエーテル系アクリレートは、アクリル基を1個~2個有し得る。前記光硬化樹脂組成物が前記エチルエーテル系アクリレートを含む場合、仮硬化時にモジュラスの調節、硬化速度の調節に有利である。
【0051】
前記エチルエーテル系アクリレートは、下記化学式3または化学式4で表示される化合物であってもよい。
【0052】
【化3】
【0053】
【化4】
【0054】
前記化学式3および4で、nは、1~6の整数であり、Rは、水素、炭化水素基乃至ヘテロ原子またはエーテル基を含む有機基であり、R~Rは、それぞれ独立して、水素または炭素数1~4のアルキル基である。
【0055】
前記化学式3および4でnは、2または3であってもよい。前記化学式3および4でRおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であってもよい。前記化学式4で表示される化合物の具体的な例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートなどが例示できる。
【0056】
前記光硬化樹脂組成物は、前記エチルエーテル系アクリレートを0.5重量部~5重量部の比率で含むことができる。前記エチルエーテル系アクリレートの含量が前記範囲未満である場合、仮硬化時にモジュラスが過度に高くなって、合着時にバブルが発生する問題点があり、前記範囲を超過する場合、硬化速度が遅くなって、ダムがソフトとなる問題点があり得る。
【0057】
前記モノマーは、第2モノマーとしてエチルエーテル基を含まないアクリレートをさらに含むことができる。前記第2モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートや二官能、三官能、四官能、五官能、六官能などの多官能(メタ)アクリレートが例示できる。前記第2モノマーとしては、例えば単官能(メタ)アクリレートまたは二官能(メタ)アクリレートを選択して使用できる。
【0058】
前記第2モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートが使用できる。前記(メタ)アクリレートのアルキル基としては、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12または炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が例示できる。前記第2モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0059】
前記第2モノマーとしては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基またはグリシジル基などの官能基をさらに含むアルキルアクリレートが使用できる。前記第2モノマーの具体的な例としては、ヒドロキシアルキルアクリレートが例示できる。前記第2モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、または2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0060】
前記光硬化樹脂組成物が第1モノマーの他に第2モノマーをさらに含む場合、前記第1モノマーおよび第2モノマーの総合計の比率は、前記光硬化樹脂組成物100重量部に対して3重量部~30重量部であってもよい。前記モノマーの含量が前記範囲内である場合、光硬化樹脂組成物における粘度の希釈および反応性の調節に適している。
【0061】
前記光硬化樹脂組成物は、アルコキシ(すなわち、アルキレンオキシド)反復単位を含む三官能以上の(メタ)アクリレートを含むことができる(以下、第3モノマーと呼称する)。アルコキシ(すなわち、アルキレンオキシド)反復単位は、通常、化学式―[O-L]-を有し、ここで、Lは、線状または分岐状アルキレンである。前記アルキレンは、線状または分岐状の炭素数2~6のアルキレンであってもよい。前記第3モノマーは、下記化学式5で表示される化合物であってもよい。
【0062】
【化5】
【0063】
前記化学式5で、Rは、3価以上の有機残基であり、Rは、水素またはメチル基であり、それぞれのmに対して、Lは、独立して、直鎖状または分岐状の炭素数2~6のアルキレン基であり、それぞれのpに対して、mは、独立して、1~30の整数であり、より具体的に、mは、1~20、1~15または1~10の整数であってもよい。
【0064】
一例として、前記第3モノマーは、線状アルコキシ反復単位、例えばエチレンオキシド反復単位を含むことができる。このようなモノマーは、下記一般化学式で表現され得る。
【0065】
R((OC2nOC(O)C(R)=CH
【0066】
前記式中、Rは、pの原子価を有する有機残基であり、nは、アルコキシ反復単位の炭素原子の数であり、mは、アルコキシ反復単位の数であり、Rは、水素またはメチルであり、pは、3以上の整数である。それぞれのmに対して、nは、独立して、1~4の整数であってもよい。一例として、アルコキシ反復単位の数mは、6超過~20未満の整数であってもよい。一例として、pは、少なくとも4、5または6であってもよい。一例として、Rは、任意に一つ以上の酸素、硫黄または窒素原子をさらに含む炭化水素残基である。一例として、Rは、3個~12個の炭素原子を含むことができる。
【0067】
他の一例として、第3モノマーは、分岐状アルコキシ反復単位、例えばイソプロピレンオキシドおよび/またはイソブチレンオキシド反復単位を含むことができる。このようなモノマーは、下記一般化学式で表現され得る。
【0068】
R((OC(CH2n-qOC(O)-C(R)=CH
【0069】
前記式中、Rおよびpは、前記に記載されたものと同一である。分岐状イソプロピレンオキシド反復単位の場合、nは、2であり、qは、1である。分岐状イソブチレンオキシド反復単位の場合、nは、2であり、qは、2である。
【0070】
前記第3モノマーは、線状および/または分岐状の炭素数2~4のアルコキシ反復単位の任意の組合せを含むことができる。したがって、第3モノマーは、エチレンオキシド反復単位のみを含むことができ、プロピレンオキシド反復単位のみを含むことができ、ブチレンオキシド反復単位のみを含むことができ、これらだけでなく、これらの組合せを含むことができる。一例として、第3モノマーは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド反復単位両方の組合せを含むことができる。
【0071】
硬化した光硬化樹脂組成物中の前記第3モノマーの総量の固形分の濃度は、5重量%以上、10重量%~40重量%、35重量%以下、30重量%以下または25重量%以下であってもよい。
【0072】
前記光硬化樹脂組成物は、アルコキシ反復単位を含まない三官能以上の(メタ)アクリレートを含むことができる(以下、架橋結合モノマーと呼称する)。前記架橋結合モノマーは、3個、4個、5個または6個以上の(メタ)アクリル基を有し得る。
【0073】
購買可能な架橋結合モノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(サートマーカンパニー(米国ペンシルベニア州エクストン所在)から商標名「SR351」で購買可能)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマーカンパニー(米国ペンシルベニア州エクストン所在)から商標名「SR454」で購買可能)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(サートマーカンパニーから商標名「SR444」で購買可能)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマーカンパニーから商標名「SR399」で購買可能)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(サートマーカンパニーから商標名「SR494」で購買可能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(サートマーカンパニーから商標名「SR368」で購買可能)等が例示できる。
【0074】
硬化した光硬化樹脂組成物のうち前記架橋結合モノマーの総量の固形分の濃度は、10重量%以上、15重量%以上、20重量%~50重量%、45重量%以下または40重量%以下であってもよい。
【0075】
前記光硬化樹脂組成物は、無機酸化物ナノ粒子をさらに含むことができる。前記光硬化樹脂組成物が無機酸化物ナノ粒子をさらに含む場合、機械的強度および耐久性を改善させることができる。
【0076】
前記無機酸化物ナノ粒子は、例えば球形の形状を有し得る。前記無機酸化物ナノ粒子のサイズは、光散乱を防止するという側面から選択され得る。例えば、前記無機酸化物粒子の平均サイズは、1nm~1000nmまたは30nm~150nmであってもよい。無機酸化物ナノ粒子の総固形分の濃度は、30重量%以上、35重量%以上、40重量%~70重量%、65重量%以下または60重量%以下であってもよい。前記光硬化樹脂組成物は、固形分の濃度が約10重量%以下のさらに小さいナノ粒子を含むことができる。このような無機酸化物ナノ粒子の平均サイズは、1nm以上、5nm~50nm、40nm以下または30nm以下であってもよい。前記無機酸化物ナノ粒子としては、シリカが使用できる。
【0077】
前記光硬化樹脂組成物は、高屈折の無機ナノ粒子をさらに含むことができる。前記高屈折の無機ナノ粒子は、少なくとも1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00またはそれ以上の屈折率を有し得る。前記高屈折無機ナノ粒子は、例えば、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズを単独でまたはこれらを組み合わせて含む。また、前記高屈折の無機ナノ粒子と混合した酸化金属が利用できる。
【0078】
前記高屈折の無機ナノ粒子は、表面処理剤で処理され得る。このような表面処理は、光硬化樹脂組成物内に分散安定性を確保し得る。前記表面処理剤としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シランおよびチタネートが例示できる。表面処理剤の好適な類型は、前記無機ナノ粒子の表面の化学的性質によって決定される。シランは、シリカに好適であり、他のものは、ケイ酸質充填剤に好適である。シランおよびカルボン酸は、ジルコニアのような金属酸化物に好適である。
【0079】
一例として、前記無機ナノ粒子は、少なくとも1種の共重合性シラン表面処理剤を含む。好適な(メタ)アクリル有機シランには、例えば、(メタ)アクリロイルアルコキシシラン、例えば3-(メタクロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタクロイルオキシ)プロピルメチルダイメトキシシラン、3-(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(メタクロイルオキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、および3-(アクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシランが含まれる。一部の実施様態において、(メタ)アクリル有機シランがアクリルシランより好ましく使用され得る。好適なビニルシランには、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ-t-ブトキシシラン、ビニルトリス-イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロフェノキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シランが含まれる。好適なアミノ有機シランは、例えば、本明細書に参考として含まれたUS2006/0147177に記載されている。
【0080】
一つの具体的な例として、前記光硬化樹脂組成物は、炭素数2~4のアルコキシ反復単位を含む三官能以上の(メタ)アクリレート、アルコキシ反復単位を含まない三官能以上の(メタ)アクリレートおよび平均粒子のサイズが50~150nmの範囲であるシリカナノ粒子の固形分を30重量%以上で含むことができる。
【0081】
前記光硬化樹脂組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤としては、紫外線開始剤または可視光線開始剤などが例示できる。前記紫外線開始剤として、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系などが例示できる。前記可視光線開始剤としては、アシルホスフィンオキシド系、チオキサントン系、メタロセン系、キノン系、α-アミノアルキルフェノン系などが例示できる。光開始剤は、光硬化樹脂組成物100重量部に対して1重量部~10重量部の比率で含まれ得るが、これは、必要に応じて適宜調節できる。
【0082】
前記光硬化樹脂組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。シランカップリング剤は、密着性および接着安定性を向上させて、耐熱性および耐湿性を改善し、また、苛酷な条件で長期間放置された場合にも接着信頼性を向上させる作用をすることができる。シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランまたはγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが例示でき、前述したカップリング剤のうち一種または二種以上の混合が使用できる。前記シランカップリング剤は、前記光硬化樹脂組成物100重量部に対して1重量部~10重量部の比率で含まれ得るが、これは、必要に応じて適宜調節できる。
【0083】
前記光硬化樹脂組成物は、酸化防止剤をさらに含むことができる。酸化防止剤は、前記光硬化組成物100重量部に対して0.01重量部~5重量部の比率で含まれ得、より具体的に、0.01重量部~3重量部の比率で含まれ得るが、これは、必要に応じて適宜調節できる。
【0084】
前記光硬化樹脂組成物は、前記添加剤の他に、目的とする用途に応じてエラストマー、硬化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、紫外線安定剤、調色剤、補強剤、消泡剤、界面活性剤または防錆剤などの添加剤を必要に応じてさらに含むことができる。
【0085】
前記光硬化樹脂組成物は、本硬化後に5%のせん断変形を加えたとき、1Hzおよび25℃で測定された弾性モジュラスが10,000Pa~100,000Paであってもよい。より具体的に、前記弾性モジュラスは、10,000Pa~50,000Paまたは10,000Pa~30,000Paであってもよい。前記弾性モジュラスは、後述する「測定例1.本硬化後に弾性モジュラスの測定」により測定された値であってもよい。具体的に、前記弾性モジュラスは、365nm波長の光を200mW/cmの強さおよび4000mJ/cmの光量で照射して、硬化後に測定された弾性モジュラス値であってもよい。前記本硬化後に弾性モジュラスが前記範囲である場合、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性だけでなく、ダムアンドフィル工程に適した物性を有し得る。
【0086】
前記光硬化樹脂組成物は、仮硬化後に5%のせん断変形を加えたとき、1Hzおよび25℃で測定された弾性モジュラスが1,500Pa~10,000Paであってもよい。より具体的に、前記弾性モジュラスは、2,000Pa~9,000Paまたは3,000Pa~8,000Paであってもよい。前記弾性モジュラスは、後述する「測定例2.仮硬化後に弾性モジュラスの測定」により測定された値であってもよい。具体的に、前記弾性モジュラスは、395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して、硬化後に測定された弾性モジュラス値であってもよい。前記仮硬化後に弾性モジュラスが前記範囲である場合、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性だけでなく、ダムアンドフィル工程に適した物性を有し得る。
【0087】
前記光硬化樹脂組成物の1Hzおよび25℃における粘度は、1,000cp~10,000cp、より具体的に3,000cp~6,000cpであってもよい。前記粘度は、後述する「測定例3.粘度の測定」により測定され得る。前記光硬化樹脂組成物の粘度が前記範囲である場合、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性だけでなく、ダムアンドフィル工程に適した物性を有し得る。
【0088】
また、本出願は、前記光硬化樹脂組成物の用途に関する。前記光硬化樹脂組成物は、接着力、耐熱性、凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適した仮硬化後の弾性モジュラスを示すので、光学部材のダイレクトボンディングに使用できる。
【0089】
前記光硬化樹脂組成物を利用したダムアンドフィル工程は、所定基板の外周に前記組成物を塗布してダムを形成した後に仮硬化し、前記仮硬化したダムの内側に前記組成物を塗布した後、他の基板をラミネーションして、本硬化することによって行われ得る。
【0090】
本明細書で硬化は、光硬化樹脂組成物に含まれている成分の物理的または化学的作用ないしは反応を通じて前記組成物が接着性または粘着性を発現する過程を意味する。前記光硬化樹脂組成物の仮硬化および本硬化は、硬化性物質の硬化が進行し得るように適正温度で組成物を維持する工程や適切な活性エネルギー線を照射する工程により行われ得る。適正温度における維持および活性エネルギー線の照射が同時に要求される場合、前記工程は、順次にまたは同時に進行し得る。
【0091】
前記で活性エネルギー線の照射は、例えば、メタルハライドUVランプ、LEDランプ高圧水銀ランプ、無電極ランプまたはキセノンランプ等を使用して行うことができる。照射される活性エネルギー線の波長や光量などの条件は、硬化性物質の硬化が適切に行われ得る範囲で選択され得る。一例として、前記仮硬化は、365nm~395nm波長の光を100mW/cm~1000mW/cmの強さおよび100mJ/cm~1000mJ/cmの光量で照射して行われ得る。前記本硬化は、365nm~395nm波長の光を100mW/cm~1000mW/cmの強さおよび1000mJ/cm~4000mJ/cmの光量で照射して行われ得る。
【0092】
本出願は、前記光硬化樹脂組成物の硬化物および前記硬化物を媒介として付着した少なくとも2個以上の光学部材を含むディスプレイ装置に関する。本明細書で硬化物は、硬化した状態の物質を意味する。前記硬化物の厚さは、10μm~10mmであってもよいが、これは、必要に応じて適宜調節できる。
【0093】
一例として、前記ディスプレイ装置は、図1に示されるように、第1光学部材10および第2光学部材20がエアーギャップなしに前記硬化物30により密着した構造を有し得る。
【0094】
他の例として、前記ディスプレイ装置は、図2に示されるように、スペーサー40により離隔している第1光学部材10と第2光学部材20との間の空間、いわゆるエアーギャップを、前記硬化物30が充填する構造を有し得る。前記エアーギャップの構造が図2に限定されるものではなく、ディスプレイ装置を構成する光学部材の構造に応じて変更され得る。
【0095】
前記第1光学部材および第2光学部材は、ディスプレイ装置を構成する任意の光学部材を意味し、例えば、タッチパネルおよび表示パネルを意味するが、これに限らない。
【0096】
前記光硬化樹脂組成物の硬化物は、ディスプレイ装置を構成する光学部材間の接合だけでなく、ディスプレイ装置とその他の光学部材間の接合にも使用され得る。前記光学部材としては、視認性の向上や外部衝撃から表示装置の破損防止を目的とするアクリル板(例えば、一側面または両面にハードコーティング処理や反射防止コーティングを処理してもよい)、PC(Polycarbonate)板、PET(Polyethylene terephthalate)板、PEN(Polyethylene naphthalate)板などの透明プラスチック板、強化ガラス(例えば、飛散防止フィルムが付着していてもよい)またはタッチパネル入力センサーなどが例示できる。
【0097】
前記ディスプレイ装置としては、液晶表示装置、有機電子発光装置、プラズマディスプレイなどが例示されるが、これに限らない。前記ディスプレイ装置に前記硬化物が適用される場合、前記ディスプレイ装置を構成する他の部品やその装置の構成方法は、特に限定されず、前記硬化物が使用される限り、当該分野において公知となっている任意の材料や方式がすべて採用され得る。
【発明の効果】
【0098】
本出願は、耐熱性、接着力、凝集力などの諸般の物性に優れていると共に、ダムアンドフィル工程に適した仮硬化後の弾性モジュラスを有する光硬化樹脂組成物を提供し得る。前記光硬化樹脂組成物は、光学部材間のダイレクトボンディング(Direct bonding)およびエアーギャップの充填剤として有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1図1は、本出願のディスプレイ装置を例示的に示す。
図2図2は、本出願のディスプレイ装置を例示的に示す。
図3図3は、実施例1および実施例3の応力緩和(Stress Relaxation)グラフである。
図4図4は、比較例1の応力緩和(Stress Relaxation)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、実施例および比較例を通じて本出願をより具体的に説明するが、本出願の範囲が下記提示された実施例に限定されるものではない。
【0101】
実施例および比較例の物性および特性は、次のように測定する。
【0102】
測定例1.本硬化後の弾性モジュラスの測定
実施例および比較例の光硬化樹脂組成物を離型処理されたフィルムの間に塗布した後、メタルハライドUVランプ(D-bulb)を利用して365nm波長の紫外線を200mW/cmの強さおよび4000mJ/cmの光量で照射して、硬化後の厚さが1mmとなるように硬化した。前記硬化物をカットして直径8mmおよび厚さ1mmの円形サンプルを製造した後、TA instruments社のARES-G2 Rheometerを利用して弾性モジュラス(G’)を測定した。
【0103】
-測定周波数:1Hz
-測定温度:25℃
-測定変形(strain):5%
-測定モード:周波数掃引モード(frequency sweep mode)
【0104】
測定例2.仮硬化後の弾性モジュラスの測定
実施例および比較例の光硬化樹脂組成物を離型処理されたフィルムの間に塗布した後、LEDランプを利用して395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して、硬化後の厚さが1mmとなるように硬化した。前記硬化物をカットして直径8mmおよび厚さ1mmの円形サンプルを製造した後、TA instruments社のARES-G2 Rheometerを利用して弾性モジュラス(G’)を測定した。
【0105】
-測定周波数:1Hz
-測定温度:25℃
-測定変形(strain):5%
-測定モード:周波数掃引モード
【0106】
測定例3.粘度の測定
実施例および比較例の光硬化樹脂組成物に対してTA instruments社のARES-G2 Rheometerを利用して粘度を測定した。
【0107】
-測定周波数:1Hz
-測定温度:25℃
-測定変形(strain):10%
-測定モード:周波数掃引モード
-測定セルの直径:8mm
【0108】
測定例4.応力緩和テスト(Stress Relaxation Test)
実施例および比較例の光硬化樹脂組成物を離型処理されたフィルムの間に塗布した後、LEDランプを利用して395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して、硬化後の厚さが1mmとなるように硬化した。前記硬化物をカットして直径8mmおよび厚さ1mmの円形サンプルを製造した後、TA instruments社のARES-G2 Rheometerを利用して、25℃で5%せん断変形を加えながら60秒間応力を測定した。応力緩和(=Elastic Portion、%)は、初期応力Sと比べて60秒後の応力S60の比率S60/S(%)で計算される。
【0109】
評価例1.合着性能の評価
ソダライムガラス(1T、150mm×150mm)基板にディスペンサーを利用して実施例および比較例の光硬化樹脂組成物を塗布して幅2mmのダムを塗布した。LEDランプを利用して395nm波長の光を100mW/cmの強さおよび200mJ/cmの光量で照射して仮硬化した。仮硬化したダムの内側にダムと同じ光硬化樹脂組成物2gを塗布した後、ソダライムガラス(1T、150mm×150mm)基板を10Kgの圧力で合着した。合着性能の評価基準は、下記の通りである。
-○:ダムとフィルの境界面にバブルが発生せず、ダム形状および面積が維持される
-△:ダムとフィルの境界面にバブルが発生せず、ダム形状および面積の維持が十分でない
-×:合着時にダムの復元力によってダムとフィルの境界面にバブルが発生する
【0110】
製造例1.一官能シリコーンオリゴマー(A1)の製造
機器
温度計、撹拌器、水冷コンデンサ、窒素ガス
【0111】
製造方法
フラスコに化学式Aのポリジメチルシロキサンジオール(Silaplane FM-4411、チッソ社)350g、イソホロンジイソシアネート112g(イソシアネート基含有量37.8%)、ジブチルスズジラウレート1gを60℃で5時間反応させた。次に、ヒドロキシエチルアクリレート9.8gおよびラウリルアルコール15.6gを滴下し、そのまま反応を継続して、イソシアネート基が失われた時点で反応を終了した。
【0112】
【化6】
【0113】
製造例2.二官能シリコーンオリゴマー(A2)の製造
機器
温度計、撹拌器、水冷コンデンサ、窒素ガス
【0114】
製造方法
フラスコに化学式Aのポリジメチルシロキサンジオール(Silaplane FM-4411、チッソ社)350g、イソホロンジイソシアネート102.7g(イソシアネート基含有量37.8%)、ジブチルスズジラウレート1gを60℃で5時間反応させた。次に、ヒドロキシエチルアクリレート4.9g、ヒドロキシブチルアクリレート6.1gおよびラウリルアルコール7.4gを滴下し、そのまま反応を継続して、イソシアネート基が失われた時点で反応を終了した。
【0115】
製造例3.非反応性シリコーンオリゴマー(B1)
非反応性シリコーンオリゴマー(B1)として下記化学式Bのモノヒドロキシルポリシロキサン(FM-0411、チッソ社)を準備した。
【0116】
【化7】
【0117】
製造例4.非反応性PDMS変性アクリレートオリゴマー(B2)
機器
温度計、撹拌器、水冷コンデンサ、窒素ガス
【0118】
製造方法
フラスコに化学式Aのポリジメチルシロキサンジオール(Silaplane FM-4411、チッソ社)350g、イソホロンジイソシアネート124.4g(イソシアネート基含有量37.8%)、ジブチルスズジラウレート1gを60℃で5時間反応させた。次に、ラウリルアルコール52.2gを滴下し、そのまま反応を継続して、イソシアネート基が失われた時点で反応を終了した。
【0119】
実施例1~4および比較例1~3
光硬化樹脂組成物の製造
反応性シリコーンオリゴマー(A)、非反応性シリコーンオリゴマー(B)、モノマー(C)およびその他添加剤(D)を下記表1の比率で配合して光硬化樹脂組成物を製造した。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例および比較例に対する物性評価結果は、下記表2に記載した。図3は、実施例1および実施例3の応力緩和グラフであり、図4は、比較例1の応力緩和グラフである。図3で、せん断変形は、ランタイム(s)を基準として約70秒に印加され、図4で、せん断変形は、ランタイム(s)を基準として約84秒に印加された。すなわち、図3で、Sは、ランニングタイムを基準として約70秒に測定された応力であり、S60は、それから約60秒後に測定された応力であり、図4で、Sは、ランニングタイムを基準として約84秒に測定された応力であり、S60は、それから約60秒後に測定された応力である。
【0122】
【表2】
【符号の説明】
【0123】
10 第1光学部材
20 第2光学部材
30 硬化物
40 スペーサー
図1
図2
図3
図4