(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】複合材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220307BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220307BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220307BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
C08K7/00
C08J5/18
(21)【出願番号】P 2020519091
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2018012781
(87)【国際公開番号】W WO2019083311
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0141254
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】セ・ボム・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジン・キュ・イ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-121404(JP,A)
【文献】特表2012-522884(JP,A)
【文献】特開2004-315761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0299732(US,A1)
【文献】特開2015-030735(JP,A)
【文献】特開2012-169599(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0055173(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
H01L 23/34-23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスおよび熱伝導体を含む複合材であって、
前記熱伝導体は、磁性体と複合化された第1異方性熱伝導性フィラーと、磁性体と複合化されない第2異方性熱伝導性フィラーとを含み、
前記複合材内の前記熱伝導体の体積比率は、60体積%以下であり、
前記第1異方性熱伝導性フィラーの体積比率V1と前記第2異方性熱伝導性フィラーの体積比率V2との比V1/V2が、3以下であり、
前記異方性熱伝導性フィラーは、縦横比が5以上であ
り、
前記第1異方性熱伝導性フィラーが配向されて熱伝達経路を形成しており、第2異方性熱伝導性フィラーが前記熱伝達経路を連結している、複合材。
【請求項2】
複合材は、フィルム形態であり、第1異方性熱伝導性フィラーが前記フィルム形態の厚さ方向に配向されて熱伝達経路を形成している、請求項
1に記載の複合材。
【請求項3】
複合材は、フィルム形態であり、前記フィルム形態の厚さ方向に沿って測定された熱伝導度が0.3W/mK以上である、請求項1
または2に記載の複合材。
【請求項4】
フィルム形態の厚さが10μm以上である、請求項
2または
3に記載の複合材。
【請求項5】
高分子マトリックスは、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル、オレフィン樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選ばれる一つ以上を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項6】
異方性熱伝導性フィラーは、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC、BeO、カーボンブラック、グラフェン、グラフェン酸化物、カーボンナノチューブまたはグラファイトである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項7】
繊維形態の異方性熱伝導性フィラーにおいてその長さ方向に垂直な方向への断面の平均粒径が、1μm~100μmの範囲内である、請求項
6に記載の複合材。
【請求項8】
磁性体は、酸化鉄、フェライトまたは合金ナノ粒子である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項9】
磁性体は、平均粒径が10nm~1,000μmの範囲内である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項10】
高分子マトリックスの硬化性前駆体と、磁性体と複合化された第1異方性熱伝導性フィラーと、磁性体と複合化されていない第2異方性熱伝導性フィラーとを含む混合物に磁場を印加して、前記磁性体と複合化された第1異方性熱伝導性フィラーを配向させた状態で、前記硬化性前駆体を硬化させて、高分子マトリックスを形成する段階を含む請求項1に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年10月27日付けで提出された韓国特許出願第10-2017-0141254号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
放熱素材は、多様な用途に用いられる。例えば、バッテリーや各種電子機器は、作動過程で熱が発生するため、このような熱を効果的に制御できる素材が要求される。
【0004】
放熱特性の良い素材としては、熱伝導度の良いセラミック素材等が知られているが、このような素材は、加工性に劣るので、高分子マトリックス内に前記セラミックフィラー等を配合して製造した複合素材を使用することができる。
【0005】
しかしながら、前記方式による場合、高い熱伝導度を確保するために、多量のフィラー成分が適用されなければならないので、多様な問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、複合材に関し、一例として、熱伝導特性に優れていながらも、耐衝撃性や加工性など他の物性も優秀に確保される複合材またはその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、複合材に関する。本出願で用語「複合材」は、高分子成分(高分子マトリックス)および熱伝導体を少なくとも含む材料を意味する。一例として、前記複合材は、フィルム形態であってもよい。
【0008】
本出願では、特に前記フィルム形態の複合材においてそのフィルム形態の厚さ方向を含んで所望の方向に自由に高い熱伝導度を確保することができる。
【0009】
従来に公知となった熱伝導性複合材においては、全体的に高い熱伝導度を確保することが可能であるとしても、特定の目的とする方向に高い熱伝導度を確保することは困難であった。
【0010】
例えば、フィルム形態の複合材は、多様に知られているが、そのフィルム形態の厚さ方向に所望の熱伝導度を最小限の熱伝導体の比率下で得ることは不可能であった。しかしながら、前記複合材は、少量の熱伝導体を適用する場合にも、厚さ方向など所望の方向に高い熱伝導度が確保され得る。
【0011】
フィルム形態である場合、その厚さ等は、目的とする熱伝導度や用途等を考慮して調節することができる。前記フィルムの厚さは、例えば、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、約50μm以上、約60μm以上、約70μm以上、約80μm以上、約90μm以上、約100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、160μm以上、170μm以上、180μm以上、190μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、900μm以上または950μm以上であってもよい。前記フィルムの厚さの上限は、目的に応じて制御されるものであって、特に制限されるものではないが、例えば、約10,000μm以下、約9,000μm以下、約8,000μm以下、約7,000μm以下、約6,000μm以下、約5,000μm以下、約4,000μm以下、約3,000μm以下、約2,000μm以下または約1,500μm以下程度であってもよい。
【0012】
本明細書で厚さは、当該対象の厚さが一定でない場合には、その対象の最小厚さ、最大厚または平均厚さであってもよい。
【0013】
本出願では、特定の方式で高分子マトリックス内で熱伝導体を配向させて、熱伝導経路を形成する。これにより、本出願の複合材は、熱伝導体の比率を最小化しながらも、優れた熱伝導特性を確保することができる。したがって、耐衝撃性や加工性など他の必要物性を損傷することなく、目的とする熱伝導度の確保が可能である。また、前記配向時に配向方向の制御を通じて熱伝導経路を制御することができ、これにより、目的とする方向に高い熱伝導度の具現が可能である。
【0014】
本出願で適用される高分子マトリックスの種類は、特に制限されない。例えば、バインダーとして従来セラミックフィラー等と配合されて、放熱フィルム等を形成した材料を同一に使用することができる。
【0015】
このような材料としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル、オレフィン樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選ばれる一つ以上を例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0016】
一方、前記高分子マトリックス内に維持された状態で熱伝達経路を形成している前記熱伝導体は、磁性体と複合化された異方性熱伝導性フィラー(以下、磁性体複合フィラー、第1異方性熱伝導性フィラーまたは第1フィラーと呼ぶことができる)および磁性体と複合化されない異方性熱伝導性フィラー(以下、第2異方性熱伝導性フィラーまたは第2フィラーと呼ぶことができる)を同時に含む。
【0017】
このような2種のフィラーを使用することによって、高分子マトリックス内で緊密な熱伝導経路を効果的に形成することができる。
【0018】
例えば、前記高分子マトリックス内で前記磁性体複合フィラーは、所定の方向に配向された状態で熱伝達経路を形成していてもよい。すなわち、本出願の複合材は、後述する方式、すなわち前駆体に一定の方向に磁場を印加した状態で高分子マトリックスの前駆体を硬化させて形成することができるが、前記磁性体複合フィラーは、磁性を有し、異方性を有しているので、前記印加された磁場の方向に沿って配向されて、熱伝達経路を形成した状態で高分子マトリックス内に固定され得る。また、前記熱伝導体は、磁性体と複合化されないフィラー、すなわち磁性のないフィラーをも含むので、このようなフィラーは、印加された磁場の影響を受けず、したがって、前記磁性体複合フィラーにより形成された熱伝達経路間をまた連結して、最終的に互いに緊密に連結された熱伝達経路が形成され得る。このような構造の例示は、
図2に示されている。
【0019】
図2の構造では、複合材はフィルム形態であり、第1フィラーが略垂直方向(Z軸方向)、すなわち前記フィルム形態の厚さ方向に沿って配向されて、熱伝達経路を形成している形態である。
図2に例示的に示されているように、第2フィラーは、前記第1フィラーにより形成された厚さ方向に沿った熱伝達経路間を連結して、ネットワーク形態を形成する。前記で第2フィラーは、略厚さ方向に垂直な方向、すなわち水平方向に存在しつつ、前記第1フィラーによる熱伝達経路を連結している。
【0020】
このような熱伝達経路の形成を通じて、厚さ方向にも高い熱伝導度が確保されるフィルム形態の複合材の製造が可能になり得る。
【0021】
このような特有の構造によって、前記複合材は、全方向で優れた熱伝導度を示すことができる。例えば、前記複合材は、熱伝導度が約0.3W/mK以上、約0.4W/mK以上、0.45W/mK以上、0.5W/mK以上、0.55W/mK以上、0.6W/mK以上、0.65W/mK以上、0.7W/mK以上、0.75W/mK以上、0.8W/mK以上、0.85W/mK以上、0.9W/mK以上、0.95W/mK以上、1W/mK以上、1.5W/mK以上、2W/mK以上、2.5W/mK以上、3W/mK以上、3.5W/mK以上、4W/mK以上、4.5W/mK以上または5W/mK以上であってもよい。前記複合材の熱伝導度は、高いほど、複合材が優れた熱制御機能を有することができるものであるので、特に制限されず、一例として、約100W/mK以下、90W/mK以下、80W/mK以下、70W/mK以下、60W/mK以下、50W/mK以下、40W/mK以下、30W/mK以下、20W/mK以下または10W/mK以下であってもよい。前記熱伝導度は、後述する実施例に記載された方式で測定することができる。
【0022】
一方、前記熱伝導度は、複合材の形態によって当該複合材において最も高い熱伝導度を示す方向での熱伝導度、当該複合材において最も低い熱伝導度を示す方向での熱伝導度または前記最も高い熱伝導度と最も低い熱伝導度の平均値(算術平均)であってもよい。
【0023】
また、一例として、複合材が前述したフィルム形態である場合、前記熱伝導度は、垂直方向(Z軸方向=厚さ方向)での熱伝導度であってもよい。
【0024】
本明細書で言及する物性のうち測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、その物性は、常温で測定したものである。用語「常温」は、加温または減温されない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。
【0025】
また、本明細書で言及する物性のうち測定圧力が当該物性に影響を及ぼす場合には、特に別途規定しない限り、その物性は、常圧、すなわち大気圧(約1気圧程度)で測定したものである。
【0026】
本出願では、上記のように異方性熱伝導性フィラーを使用して熱伝達ネットワークを緊密に形成することによって、非常に少ない量のフィラーを使用しながらも、優れた熱伝導特性が確保され得る。
【0027】
例えば、前記複合材内に含まれる熱伝導体の体積比率は、60体積%以下であってもよい。本出願の複合材では、前記のような比率下でも目的とする方向に適切な熱伝導度を効果的に確保することができる。前記体積比率は、適用された複合材の材料、例えば、前記高分子マトリックス、第1および第2フィラー等の密度と適用重量を通じて換算した数値である。前記体積比率は、他の例として、約59体積%以下、58体積%以下、57体積%以下、56体積%以下、55体積%以下、54体積%以下、53体積%以下、52体積%以下、51体積%以下または50体積%以下であってもよく、また、約10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、41体積%以上、42体積%以上、43体積%以上、44体積%以上、45体積%以上、46体積%以上、47体積%以上、48体積%以上、49体積%以上または50体積%以上であってもよい。前記体積比率を超過して熱伝導体が適用される場合に、クラック(crack)等のような不適切な欠陥(defect)が発生し得る。また、前記熱伝導体の全体内における前記第1および第2フィラーの合計体積の比率は、一例として、約80体積%以上、約85体積%以上、約90体積%以上または約95体積%以上であるか、約100体積%であってもよい。すなわち、本出願の複合材内の熱伝導体は、いずれも、前記第1および第2フィラーであるか、あるいは、前記第1および第2フィラーの他に他のフィラーが含まれていてもよい。また、目的とする熱伝導度や方向等を考慮して前記比率は調節することができる。
【0028】
前記のような比率下で第1フィラーの体積比率V1と第2フィラーの体積比率V2との比V1/V2は、約3以下であってもよい。前記比率は、他の例として、約2.5以下、約2以下、約1.5以下、約1以下、約0.5以下または約0.3以下であってもよく、また、約0.01以上、約0.05以上、約0.1以上、約0.15以上または約0.2以上であってもよい。このような比率下で目的とする方向に所望の熱伝導度を確保できる熱伝達経路を形成しつつ、表面クラック等の欠点がない複合材を形成することができる。
【0029】
本出願で適用される異方性熱伝導性フィラーは、優れた熱伝導度と適正な異方性を有するフィラーを意味する。
【0030】
前記フィラーは、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上または約15W/mK以上であってもよい。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下または約300W/mK以下であってもよい。熱伝導性フィラーの種類は、特に制限されず、例えば、セラミックフィラーまたは炭素系フィラー等を適用することができる。このようなフィラーとしては、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiCまたはBeO等や、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(graphene)、グラフェン酸化物(graphene oxide)やグラファイト等のようなフィラーを例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0031】
前記フィラーは、異方性を有する。すなわち、前記フィラーは、繊維形態のように高い縦横比を有することができる。例えば、前記フィラーは、縦横比が約5以上、10、15、20、約25、約30または約35以上であってもよい。前記縦横比は、繊維形態のフィラーにおいてその長さLの断面(前記長さ方向に垂直な方向への断面)の直径Dに対する比率L/Dである。前記縦横比L/Dは、他の例として、約100以下、約95以下、約90以下、約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下または約50以下であってもよい。このような縦横比の下で適切な熱伝達ネットワークの形成が期待され得る。
【0032】
一つの例において前記異方性熱伝導性フィラーは、断面の長さ、すなわち前記長さ方向に垂直な方向への断面の平均直径Dが約1μm~100μmの範囲内にあり得、このような範囲の下で優れた熱伝達経路が形成され得る。前記断面の長さは、他の例として、約2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上であるか、約95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下または15μm以下であってもよい。
【0033】
磁性体複合フィラーにおいて前記のような異方性熱伝導性フィラーと複合化される磁性体の種類は、特に制限されない。例えば、磁性体としては、Fe2O3やFe3O4のような酸化鉄、フェライト(MO・Fe2O4、Mは、Mn、Zn、Mg、Fe、Cu、Coなど)またはFePt、CoPt、Ni-Zn、Mn-Zn等のような合金ナノ粒子等を例示することができる。
【0034】
前記のような磁性体のサイズは、目的に応じて調節するものであって、特に制限されない。一例として、前記磁性体としては、粒子形態の磁性体を適用することができ、その平均粒径は、約10nm~1,000μmの範囲内であってもよい。前記平均粒径は、他の例として、約20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上または100nm以上であってもよく、また、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、1μm以下または0.5μm以下程度であってもよい。
【0035】
本出願で前記のような異方性熱伝導性フィラーと磁性体を複合化して磁性体複合フィラーを形成する方式は、特に制限されない。この分野では、フィラーと磁性体の材質を考慮して両者を複合化する多様な方式が知られており、このような方式は、いずれも、本出願で適用され得る。例えば、前記フィラーに塩酸等のような酸処理を適用して表面官能基を活性化させた状態で、磁性体と混合して複合化処理する方式等が使用され得る。
【0036】
このような方式で複合化された磁性体複合フィラー、すなわち第1フィラー内では、異方性熱伝導性フィラー100重量部に対して10~200重量部の磁性体が含まれていてもよい。前記比率は、他の例として、約20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上または50重量部以上であるか、約190重量部以下、約180重量部以下、約170重量部以下、約160重量部以下、約150重量部以下、約140重量部以下、約130重量部以下、約120重量部以下、約110重量部以下、約100重量部以下、約90重量部以下、約80重量部以下または約70重量部以下であってもよい。しかしながら、この比率は、磁性体の種類や後述する製造方法における印加される磁場の強度等を考慮して適切に選択することができる。
【0037】
また、本出願は、複合材、例えば、前記のような複合材の製造方法に関する。
【0038】
前記製造方法は、前記言及した高分子マトリックスの硬化性前駆体と、磁性体複合フィラーおよび磁性体と複合化されない異方性熱伝導性フィラーを含む混合物を使用して行われ得る。
【0039】
前記混合物内に適用される高分子マトリックスの硬化性前駆体の種類は、特に制限されず、硬化工程等を経て前述した高分子マトリックスを形成できるものと知られている公知の材料を制限なく使用することができる。このような材料は、多様に知られている。
【0040】
また、前記混合物に適用されるフィラー等の種類および材質も、前述した通りであり、それらの間の比率も、前述した比率が確保されるように調節することができる。
【0041】
本出願の製造方法では、必要な場合に前記のような混合物を目的とする形態で成形した状態で、磁場を印加しながら前記前駆体を硬化させて、高分子マトリックスを形成する。すなわち、前記磁場の印加によって前記磁性体と複合化された異方性熱伝導性フィラーが前記磁場の方向に沿って配向され、それによって、熱伝達経路が形成された状態で高分子マトリックスにより固定される。この際、印加される磁場の強度は、特に制限されず、目的とする配向の程度や磁性体の種類等を考慮して選択することができる。
【0042】
前記過程で硬化性前駆体を硬化させる方式もやはり、特に制限されず、前駆体の種類による公知の方式、例えば、適切な熱の印加や電磁場の照射方式を適用すればよい。
【発明の効果】
【0043】
本出願では、内部に異方性熱伝導性フィラーによる緊密な熱伝達ネットワークが形成されるので、優れた熱伝導特性を有すると共に、耐衝撃性や加工性など他の必要物性にも優れた複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】製造例1で製造した磁性体複合フィラーの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施例により本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例に制限されるものではない。
【0046】
製造例1.磁性体複合フィラーAの製造
異方性熱伝導性フィラーとしては、繊維形態であり、縦横比が約40程度であり、長さ方向に垂直な方向への断面の平均粒径が約10μm程度である窒化ホウ素を使用し、磁性体としては、平均粒径が約100nm~200nmの水準である酸化鉄(Fe
2O
3)粒子を使用して複合フィラーを形成した。前記酸化鉄粒子を常温で塩酸溶液に浸漬させて表面の反応基を活性化させた。次に、前記表面反応基が活性化した酸化鉄粒子と前記窒化ホウ素を10:6の重量比(窒化ホウ素:酸化鉄)で水溶液に分散させ、120Wの超音波で約1時間の間処理した後、洗浄および乾燥して、複合フィラーを製造した。
図1は、前記製造された複合フィラーの写真である。
【0047】
実施例1
高分子マトリックスの硬化性前駆体としては、熱硬化性シリコン組成物(ダウコーニング社、Sylgard184)を使用した。前記硬化性前駆体と、前記製造例1で製造した複合フィラー(第1フィラー)および異方性熱伝導性フィラー(第2フィラー)として、繊維形態であり、縦横比が約40程度であり、長さ方向に垂直な方向への断面の平均粒径が約10μm程度である窒化ホウ素を混合して、混合物を製造した。前記混合物に適用された硬化性前駆体、第1および第2フィラーの密度と適用重量で計算した体積比率は、約50:10:40(=硬化性前駆体:第1フィラー:第2フィラー)程度であった。製造された混合物をフィルム形状のテフロン(登録商標)モールド(厚さ:約1mm)に注いで、フィルム形態の上部および下部方向にネオジウム磁石で磁場を約700~800Gaussの強度で印加しながら、約120℃の温度で30分間程度硬化させて、フィルム形態の複合材を形成した。
図2は、上記のように形成された複合材の断面写真である。図面に示されたように、複合フィラーが垂直方向(磁場方向、厚さ方向)に配向して熱伝達経路を形成しながら、略水平方向に配向された窒化ホウ素フィラーが前記熱伝達経路を連結するネットワークが形成されている。このような複合材のZ軸方向(厚さ方向)の熱伝導度は、約5.8W/mK程度であった。
【0048】
前記熱伝導度は、複合材の熱拡散度A、比熱Bおよび密度Cを求めて、熱伝導度=A×B×Cの数式で求め、前記熱拡散度Aは、レーザーフラッシュ法(LFA装置、モデル名:LFA467)を用いて測定し、比熱は、示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて測定し、密度は、アルキメデス法を用いて測定した。
【0049】
一方、
図3は、前記製作された複合材の表面写真であり、比較例2の場合と比較して、表面での欠陥がほとんど現れないことを確認することができる。
【0050】
比較例1
第2フィラー、すなわち磁性体と複合化されないフィラーを適用せず、硬化性前駆体と製造例1の第1フィラーの体積比率が1:1になるようにして混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に複合材を製造した。このように製造された複合材のZ軸方向(厚さ方向)の熱伝導度は、約2.5W/mK程度であった。
【0051】
比較例2
硬化性前駆体、第1および第2フィラーの密度と適用重量で計算した体積比率が約50:40:10(=硬化性前駆体:第1フィラー:第2フィラー)程度になるように混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に複合材を製造した。
図4は、前記製作された複合材の表面写真であり、図面に示されたように、大きい欠陥が確認された。
【0052】
比較例3
第1フィラー、すなわち磁性体と複合化されたフィラーを適用せず、硬化性前駆体と第2フィラーの体積比率が3:7程度になるように混合物を製造したことを除いて、実施例1と同一に複合材を製造した。このように製造された複合材のZ軸方向(厚さ方向)の熱伝導度は、約2.4W/mK程度であった。