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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20220307BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F8/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020571326
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2019017396
(87)【国際公開番号】W WO2020122559
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0158524
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0163106
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・イ
(72)【発明者】
【氏名】ギチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・ナム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジェ・ホ
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522880(JP,A)
【文献】特表2007-514833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/24
C08F 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体を水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤と混合して単量体組成物を製造する段階であって、前記水酸化カリウムを含む塩基性物質によって前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうちの少なくとも一部が中和する段階と;
前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する段階と;
前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階と;
表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階と、を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアおよび前記コアを囲み熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有し、膨張前の平均直径が5~30μmであり、空気中での最大膨張比が5~15倍であり、
前記塩基性物質は、50~100モル%の水酸化カリウムと0~50モル%の水酸化ナトリウムとを含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記塩基性物質は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体1モルに対して0.5~0.9モルで使用される、請求項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記単量体組成物はpHが5~6である、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記カプセル化された発泡剤は、空気中での最大膨張サイズが20~190μmである、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記カプセル化された発泡剤は、発泡開始温度(Tstart)が60℃~120℃であり、最大発泡温度(Tmax)が100℃~160℃である、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群から選択される1種以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂としては(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成された群から選択される1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~1.0重量部で使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
製造された高吸水性樹脂は、1分間吸水能(蒸留水)が170g/g以上であり、ボルテックス(Vortex)法による吸収速度が22秒以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月10日付の韓国特許出願第10-2018-0158524号および2019年12月19日付の韓国特許出願第10-2019-0163106号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。より具体的には、高吸水能と速い吸収速度を示す高吸水性樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、主におむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。このような衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に広がった状態で含まれることが一般的である。しかし、最近は、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環として、パルプの含有量が減少したり、さらにパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれ、このような高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避に多層含まれる。このように多層含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に小便などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能および吸水速度を有する必要がある。
【0006】
このため、無機発泡剤である炭酸塩系発泡剤を使用する方法などが報告されているが、これを使用すると見かけ密度が低くなり、高吸水性樹脂の製造過程で必須の粉砕段階で微粉が多量発生するという問題があり、向上した吸水能を有すると同時に吸収速度が速い高吸水性樹脂を製造するための技術開発が持続的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、水酸化カリウムを含む塩基性物質で酸性基のうちの一部が中和した単量体をカプセル化された発泡剤の存在下で重合して、1分間吸水能が向上し、速い吸収速度を示すことができる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、以下を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体を水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤と混合して単量体組成物を製造する段階であって、前記水酸化カリウムを含む塩基性物質によって前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうちの少なくとも一部が中和する段階と;
前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する段階と;
前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階と;
表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階と、を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアおよび前記コアを囲み熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有し、膨張前の平均直径が5~30μmであり、空気中での最大膨張比が5~15倍である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、水酸化カリウムを含む塩基性物質で酸性基のうちの一部が中和した単量体をカプセル化された発泡剤の存在下で重合することによって、高吸水性樹脂の初期吸水能および吸収速度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示し下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するためのことではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0011】
本明細書に使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法についてより詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体を水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤と混合して単量体組成物を製造する段階であって、前記水酸化カリウムを含む塩基性物質によって前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうちの少なくとも一部が中和する段階と;前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する段階と;前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階と;表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階と、を含み、前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアおよび前記コアを囲み熱可塑性樹脂で形成されるシェルを含む構造を有し、膨張前の平均直径が5~30μmであり、空気中での最大膨張比が5~15倍である、高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0014】
本明細書で使用される用語「重合体」または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、全ての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル状重合体と称することができる。
【0015】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈によって、前記重合体またはベース樹脂自体を意味するか、または前記重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものを包括するものとして使用される。
【0016】
最近、高吸水性樹脂重合時に無機系発泡剤である炭酸塩系発泡剤を使用して内部に気孔を導入することによって、その空間に水分などがより速く吸収されるようにして、高吸水性樹脂の吸収速度を向上させるための試みを行ってきた。しかし、吸収速度の向上のために過剰の炭酸塩系発泡剤を使用する場合、製造される高吸水性樹脂のかさ密度が減少するという問題があった。
【0017】
そこで、本発明者らはカリウムがナトリウムに比べてイオン化傾向が大きいことを利用して、従来に使用される水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウムで(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基(-COOH)のうちの一部を中和させ、カプセル化された発泡剤を使用する場合、少量の発泡剤を使用しても高吸水性樹脂内の陽イオン(K)および陰イオン(-COO)の比率が高くなり、高吸水性樹脂の吸水能および吸収速度が同時に向上する可能性があることを確認して、本発明を完成した。
【0018】
具体的には、高吸水性樹脂内の陽イオン(K)の比率が高くなる場合、樹脂内部の浸透圧が増加して初期吸水能が向上することがあり、陰イオン(-COO)の比率が高くなる場合、架橋構造の間の陰イオン間の反発力(repulsion)によって架橋構造が広くなる効果があり、吸収速度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明で発泡剤として使用されるカプセル化された発泡剤は、熱によって分解可能な炭化水素を含むコアおよび前記コア上に形成された熱可塑性樹脂からなるシェルを含むコア-シェル構造を有する。
【0020】
このようなカプセル化された発泡剤としては、アルカリ金属(ビ)カーボネート、またはアルカリ土類金属(ビ)カーボネートを使用するか、あるいはカーボネート発泡剤を熱可塑性樹脂で被覆したカプセル化された発泡剤を使用した場合に比べて発泡温度および発泡後に形成される気孔サイズを調節しやすいという長所がある。また、水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時に前記カプセル化された発泡剤と一緒に別途の界面活性剤を使用しなくてもコア-シェル構造のシェルがコア内部の気化した炭化水素を保持する役割を果たすので発泡される気泡を安定化させることができ、高吸水性樹脂内に均一な分布を有する気孔構造の導入が可能である。
【0021】
これにより、本発明の一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法により製造された高吸水性樹脂は、カーボネート系発泡剤、あるいはカーボネート発泡剤を熱可塑性樹脂で被覆したカプセル化された発泡剤を使用した場合に比べて、界面活性剤を使用せずとも速い吸収速度を有しかつ初期吸水能を向上し得るので、おむつおよび生理用ナプキンなどの衛生用品に好適に適用し得る。
【0022】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法について各段階別でより具体的に説明する。
【0023】
一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法において、まず、(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体を水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤と混合して単量体組成物を製造する段階を行う。
【0024】
前記段階は、水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基、具体的には(メタ)アクリル酸の酸性基であるカルボン酸基(-COOH)のうちの少なくとも一部が水酸化カリウムを含む塩基性物質によってカルボン酸陰イオン(-COO)の形態で中和する段階である。したがって、前記単量体組成物内の前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基のうちの少なくとも一部はカルボン酸陰イオン(-COO)とカリウム陽イオン(K)が結合した塩、すなわち、カルボン酸カリウム塩(-COO)の形態で存在する。
【0025】
また、前記段階は、(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体を水酸化カリウムを含む塩基性物質で処理して、前記単量体の酸性基のうちの少なくとも一部を中和する段階と;前記少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体をカプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤と混合して単量体組成物を製造する段階とに分けて行うこともできる。
【0026】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、例えば下記化学式1で表される化合物であり得る:
【0027】
[化学式1]
-COOM
【0028】
上記化学式1中、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0029】
好ましくは、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群から選択される1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。その他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、および(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを使用することができる。
【0030】
また、前記水酸化カリウムを含む塩基性物質は50~100モル%の水酸化カリウムと、0~50モル%の水酸化ナトリウムを含み得る。すなわち、前記水溶性エチレン系不飽和単量体を50モル%以上の水酸化カリウムを含む塩基性物質で中和させる場合、水酸化ナトリウムを50モル%を超えて含む塩基性物質で中和させる場合に比べて、ナトリウムに比べて大きいイオン化傾向を示すカリウムによって重合体内の陽イオンの比率を高めることができる。これにより、最終製造された高吸水性樹脂内部の浸透圧が増加して初期吸水能が向上し得る。また、前記塩基性物質内の水酸化カリウムと水酸化ナトリウムのモル比を調節して、重合体内の陽イオン濃度を調節することができ、これにより高吸水性樹脂の物性調節が可能である。
【0031】
このような水酸化カリウムを含む塩基性物質は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体1モルに対して0.5~0.9モルの範囲で用いる。すなわち、前記水酸化カリウムを含む塩基性物質は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して36~65重量部用いる。
【0032】
これによる前記水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基の中和度は65モル%~75モル%であり得、また、前記少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体組成物のpHは5~6の範囲を有する。
【0033】
前記塩基性物質の含有量が高すぎて単量体の中和度が高くなる場合、中和した単量体のうちの一部が析出して重合が円滑に行われにくくなり、しかも、表面架橋開始以降の追加の中和による効果が実質的になくなり、表面架橋層の架橋程度が最適化されず、高吸水性樹脂の通液性などが不十分になる。逆に、前記塩基性物質の含有量が少なすぎて単量体の中和度が低くなる場合、高分子の吸収力が非常に低下するだけでなく、取扱いが困難な弾性ゴムなどの性質を示すことができ、樹脂内の適正な濃度以上の陽イオンを確保できず、所望する水準に初期吸水能が向上しないことがある。
【0034】
したがって、上記の範囲の塩基性物質を使用して水溶性エチレン系不飽和単量体の酸性基の中和度および単量体組成物のpHを上記の範囲で調節することにより、所望の架橋程度を実現して、初期吸水能が向上した高吸水性樹脂の製造が可能となる。
【0035】
また、前記カプセル化された発泡剤は、コア-シェル構造を有する熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を意味し、上述したように炭化水素を含むコアおよび前記コア上に形成された熱可塑性樹脂からなるシェルを含むコア-シェル構造を有する。具体的には、前記コアを構成する炭化水素は低沸点を有する液体炭化水素であって、熱によって容易に気化する。したがって、前記カプセル化された発泡剤に熱が加わる場合、シェルをなす熱可塑性樹脂が軟化すると同時にコアの液体炭化水素が気化して、カプセル内部の圧力が増加することによって膨張するようになり、これにより、既存の大きさより増加した大きさの気泡が形成される。
【0036】
したがって、前記カプセル化された発泡剤は炭化水素ガスを発生させるものであり、高分子の生成に参加する単量体間の熱分解反応で窒素ガスを発生させる有機発泡剤および高分子の生成時に発生する熱を吸収して炭酸ガスを発泡させる無機発泡剤とは区別される。
【0037】
このようなカプセル化された発泡剤は、前記コアとシェルをなす成分と各成分の重量、直径に応じて膨張特性が異なり、これを調節することによって所望の大きさに膨張可能であり、これにより、前記高吸水性樹脂の多孔性を調節することができる。
【0038】
具体的には、前記カプセル化された発泡剤は、膨張前の平均直径(D)が5~30μmの粒子形態を有する。前記カプセル化された発泡剤が5μm未満の平均直径を有することは製造上の難しさがあり、前記カプセル化された発泡剤の平均直径が30μmを超える場合には気孔の大きさが大きすぎるため、効率的に表面積が増加しにくいこともある。したがって、前記カプセル化された発泡剤が、このような平均直径を有する場合、樹脂内の適切な程度の気孔構造を達成するのに適したと判断できる。
【0039】
例えば、前記カプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、または10μm以上であり、また30μm以下、25μm以下、20μm以下、17μm以下、16μm以下、または15μm以下であり得る。
【0040】
このようなカプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径(D)は、カプセル化された発泡剤の粒子それぞれの直径を光学顕微鏡を通して平均フェレ(Feret)径を測定した後、これらの平均値を求めて測定することができる。
【0041】
このとき、前記カプセル化された発泡剤カプセルの厚さは2~15μmであり得る。
【0042】
また、前記カプセル化された発泡剤は、空気中での最大膨張サイズが20~190μmである。ここで、前記「カプセル化された発泡剤の最大膨張サイズ」とは、カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子の上位10重量%の粒子の直径範囲を意味する。前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張サイズを20μmより小さくすることは製造上の難しさがあり、空気中での最大膨張サイズが190μmを超える場合には気孔の大きさが大きすぎるため、効率的に表面積が増加しにくいこともある。
【0043】
例えば、前記カプセル化された発泡剤は、空気中での最大膨張サイズが50~190μm、または70~190μm、75~190μm、または80~150μmであり得る。
【0044】
このようなカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張サイズは、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃に予熱されたホットプレート(Hot Plate)上に10分間放置した後、膨張したカプセル化された発泡剤を光学顕微鏡で観察して多く膨張した粒子の上位10重量%の直径を光学顕微鏡を通して平均フェレ(Feret)径を測定して求められる。
【0045】
そして、前記カプセル化された発泡剤は、空気中での最大膨張比が5~15倍である。ここで、前記「カプセル化された発泡剤の最大膨張比」とは、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D)に対する熱を加えた後、多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(D)の比率(D/D)を意味する。前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比が5倍未満の場合、高吸水性樹脂内に適切な気孔構造を形成できず、使用しても高吸水性樹脂の吸水能および吸収速度が同時に向上した高吸水性樹脂を製造できないという問題があり、前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比が15倍を超える場合、前記カプセル化された発泡剤の上述した膨張前の平均直径を考慮するときに製造されにくいという問題がある。したがって、上記の範囲の最大膨張比を有するカプセル化された発泡剤が、高吸水性樹脂に適切な気孔構造を形成するのに好適であると判断できる。
【0046】
例えば、前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比は5倍以上、7倍以上、または8倍以上であり、また15倍以下、13倍以下、11倍以下、または10倍以下であり得る。
【0047】
このとき、前記カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D)は、上述のようにして測定することができる。また、前記カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(D)は、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃に予熱されたホットプレート(Hot Plate)上に10分間放置した後、膨張したカプセル化された発泡剤を光学顕微鏡で観察して多く膨張した粒子の上位10重量%の粒子それぞれの直径を光学顕微鏡を通して平均フェレ(Feret)径を測定した後、これらの平均値を求めて測定することができる。
【0048】
前記カプセル化された発泡剤の膨張特性は、後述する実施例でより具体化され得る。
【0049】
前記カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張サイズおよび最大膨張比を測定する理由は、前記カプセル化された発泡剤を使用して製造される高吸水性樹脂内に所望の気孔サイズを形成するかどうかを把握するためである。具体的には、発泡剤が発泡された形態は高吸水性樹脂の製造条件により異なるので、一つの形態で定義しにくい。したがって、まずカプセル化された発泡剤を空気中で発泡させて膨張サイズおよび膨張比率を確認することによって、所望の気孔を形成するのに適するかどうかを確認することができる。
【0050】
そして、前記カプセル化された発泡剤のコアを構成する炭化水素はn-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群から選択される1種以上であり得る。その中でも、炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が上述した大きさの気孔を形成するのに好適であり、iso-ブタンが最も好適である。
【0051】
そして、前記カプセル化された発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成される群から選択される1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。その中でも、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が上述した大きさの気孔を形成するのに最も好適である。
【0052】
また、前記カプセル化された発泡剤の発泡開始温度(Tstart)は60℃~120℃、または65℃~120℃、または70℃~80℃であり得、最大発泡温度(Tmax)は100℃~160℃、または105℃~155℃、または110℃~120℃であり得る。上記の範囲を有する場合、後続の熱重合工程または乾燥工程で容易に発泡が起こり、重合体内の気孔構造を導入することができる。上記の発泡開始温度および最大発泡温度は、熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer)を用いて測定が可能である。
【0053】
そして、前記カプセル化された発泡剤は、全体カプセル化された発泡剤の重量に対して炭化水素からなるコアを10~30重量%で含み得る。上記の範囲内で高吸水性樹脂の気孔構造を形成することが最も好適である。
【0054】
前記カプセル化された発泡剤は製造して使用するか、または上述した条件を満たす商用の発泡剤を使用することができる。
【0055】
また、前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~1.0重量部で使用することができる。例えば、前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ1.0重量部以下、または0.8重量部以下、または0.5重量部以下で使用することができる。前記カプセル化された発泡剤の含有量が少なすぎると発泡が十分に行われず、樹脂内の気孔構造がうまく形成されないことがあり、非常に多く含まれると樹脂の多孔性が高すぎて高吸水性樹脂の強度が弱くなることがあるので、このような観点から上記の含有量の範囲が好ましい。
【0056】
そして、本発明の一実施形態による単量体組成物は上述したように、界面活性剤を含まないことがある。
【0057】
また、本明細書で使用される用語「内部架橋剤」は、後述するベース樹脂の表面を架橋させるための表面架橋剤と区分するために使用する用語であって、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合を架橋して重合させる役割を果たす。前記段階での架橋は表面または内部の区分なしに行われるが、後述するベース樹脂の表面架橋工程によって、最終製造された高吸水性樹脂の表面は表面架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は前記内部架橋剤によって架橋された構造からなる。
【0058】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時に架橋結合を導入することができるものであれば、いかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤を単独で使用または2以上併用することができ、これらに限定されるものではない。その中で、エチレングリコールジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
【0059】
このような内部架橋剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~5重量部で使用することができる。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01重量部以上、0.05重量部以上、または0.1重量部以上であり、5重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、または1重量部以下で使用することができる。前記内部架橋剤の含有量が少なすぎる場合架橋が十分に起こらず、適正水準以上の強度を実現しにくいことがあり、前記内部架橋剤の含有量が多すぎる場合内部の架橋密度が高くなり、所望の保水能を実現しにくいことがある。
【0060】
また、前記重合開始剤は重合方法により適切に選択することができ、熱重合方法を利用する場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を利用する場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光を全て使用する方法)を利用する場合には熱重合開始剤と光重合開始剤を全て使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行に応じてある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0061】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成することができる化合物であればその構成に限定なく使用することができる。
【0062】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群から選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalmの著書「UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115ページによく明示されており、上述した例に限定されない。
【0063】
前記光重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.0001~約2.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が低すぎる場合重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が高すぎる場合高吸水性樹脂の分子量が小さくなり物性が不均一になることがある。
【0064】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群から選択される一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤に対しては、Odianの著書「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」の203ページによく明示されており、上述した例に限定されない。
【0065】
前記熱重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001~約2.0重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が低すぎる場合追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微小であり、熱重合開始剤の濃度が高すぎる場合高吸水性樹脂の分子量が小さくなり物性が不均一になることがある。
【0066】
前記単量体組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0067】
また、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体は、水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤を溶媒と一緒に混合することができる。したがって、前記段階で製造された単量体組成物は、前記溶媒に溶解した形態で、前記単量体組成物での固形分の含有量は20~60重量%であり得る。
【0068】
このとき、使用できる溶媒としては、上述した成分を溶解することができるものであればその構成の限定なく使用することができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択される1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
一方、前記(メタ)アクリル酸を含む水溶性エチレン系不飽和単量体と水酸化カリウムを含む塩基性物質、カプセル化された発泡剤、内部架橋剤および重合開始剤の混合は、特に限定されず、当分野において通常用いられる方法、例えば攪拌により行うことができる。
【0070】
次に、前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する段階を行う。
【0071】
前記段階は、製造された単量体組成物を熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル状重合体を形成することができるものであれば、特に構成に限定なく行うことができる。
【0072】
具体的には、熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ得る。また、熱重合を行う場合約80℃以上、および約110℃未満の温度で行われ得る。上記の範囲の重合温度を達成するための手段は特に限定されず、前記反応器に熱媒体を供給するか、または熱源を直接供給して加熱することができる。使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。また、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0073】
一方、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われ得るが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0074】
一例として、上述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱媒体を供給したり反応器を加熱したりして熱重合を行う場合、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体を得ることができる。このように得られた含水ゲル状重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、数センチメートル~数ミリメートルの大きさで得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体の大きさは注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様に現れることができる。
【0075】
また、上述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。このとき、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて異なるが、通常、約0.5~約10cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが10cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均等に起こらないことがある。
【0076】
前記単量体組成物の重合時間は特に限定されず、約30秒~60分に調節することができる。
【0077】
このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、約30~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体で「含水率」は、含水ゲル状重合体の全体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値として定義する。このとき、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階の5分を含む40分に設定して、含水率を測定する。
【0078】
次に、前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階を行う。
【0079】
前記段階で乾燥のために加わる熱によって前記カプセル化された発泡剤が発泡されることによって、製造されるベース樹脂の内部は多数の気孔が形成された構造を有する。これにより、カプセル化された発泡剤を使用しない場合に比べて吸収速度が向上した高吸水性樹脂の製造が可能である。
【0080】
一方、前記ベース樹脂を形成する段階では、乾燥効率を高めるために含水ゲル状重合体を乾燥する前に粗粉砕する工程を含み得る。
【0081】
このとき、用いられる粉砕機は構成に限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、断片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群から選択されるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0082】
このような粗粉砕工程により、含水ゲル状重合体の粒径は約0.1~約10mmに調節することができる。粒径が0.1mm未満となるように粉砕するのは、含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0083】
前記のように粗粉砕工程を経るか、あるいは粗粉砕工程を経ない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。このとき、前記乾燥温度は約60℃~約250℃であり得る。このとき、乾燥温度が約60℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、前記カプセル化された発泡剤の熱可塑性樹脂シェルが軟化しにくくて発泡現象は起こらないことがあり、前記乾燥温度が約250℃を超える場合、過度に重合体表面だけが乾燥されて、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することがあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、約100℃~約240℃の温度で、より好ましくは約110℃~約220℃の温度で行われ得る。
【0084】
また、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20分~約12時間行われ得る。一例として、約10分~約100分、または約20分~約60分間乾燥し得る。
【0085】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なしに選択して使用することができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であり得る。
【0086】
以後、前記乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体は、粉砕機を使用して粉砕する。
【0087】
具体的には、前記粉末形態のベース樹脂が、粒径が約150μm~約850μmの粒子からなるように粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用し得るが、上述した例に限定されない。
【0088】
次に、表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面をさらに架橋して表面架橋層を形成する段階を行う。このとき、ベース樹脂の表面をさらに架橋するということは、前段階で製造された粉末形態のベース樹脂をなす樹脂粒子それぞれの表面をさらに架橋することを意味する。
【0089】
前記段階は、ベース樹脂の表面の架橋密度を高めるために表面架橋剤を使用して表面架橋層を形成させる段階であり、架橋せずに表面に残っている水溶性エチレン系不飽和単量体の不飽和結合が前記表面架橋剤によって架橋され、表面の架橋密度が高くなった高吸水性樹脂が形成される。このような熱処理工程で表面の架橋密度、すなわち、外部の架橋密度は増加することに反して、内部の架橋密度は変化がなくて、製造された表面架橋層が形成された高吸水性樹脂は、内部より外部の架橋密度が高い構造を有することになる。
【0090】
前記表面架橋剤としては、従来から高吸水性樹脂の製造に用いられている表面架橋剤を特に制限なく全て使用することができる。例えば、前記表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群から選択される1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などが挙げられる。好ましくは、上述した内部架橋剤と同様のものを使用することができ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルを使用することができる。
【0091】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して約0.001~約2重量部で使用することができる。例えば、前記表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.02重量部以上であり、0.5重量部以下、0.3重量部以下、または0.1重量部以下の含有量で使用することができる。表面架橋剤の含有量の範囲を上記の範囲に調節して、優れた諸般吸収物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0092】
そして、前記表面架橋剤としてシリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群から選択される1種以上の無機物質などをさらに含み表面架橋反応を行うことができる。前記無機物質は粉末形態または液状形態で使用することができ、特にアルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液として使用することができる。また、前記無機物質は、ベース樹脂100重量部に対して約0.001~約1重量部の含有量で使用され得る。
【0093】
また、前記表面架橋剤をベース樹脂と混合する方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤とベース樹脂を反応槽に入れて混合したり、ベース樹脂に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0094】
前記表面架橋剤とベース樹脂との混合時、追加的に水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂に均一に分散できる利点がある。このとき、追加される水およびメタノールの含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、ベース樹脂の凝集現象を防止すると同時に、架橋剤の表面浸透深さを最適化するために適切に調節することができる。
【0095】
前記表面架橋工程は約80℃~約250℃の温度で行われ得る。より具体的には、前記表面架橋工程は、約100℃~約220℃、または約120℃~約200℃の温度で、約20分~約2時間、または約40分~約80分間行われ得る。上述した表面架橋工程条件の充足時にベース樹脂の表面が十分に架橋されて加圧吸水能が増加し得る。
【0096】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給したりして加熱することができる。このとき、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを用いることができるが、これらに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されない。
【0097】
一方、前記段階は、前記表面架橋層が形成されたベース樹脂を分級する段階をさらに含み得る。
【0098】
前記表面架橋層が形成されたベース樹脂を粒径に応じて分級する段階を経て最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理することができる。このような粉砕および分級などの工程により、これから得られる高吸水性樹脂は、約150~850μmの粒径を有するように製造および提供されることが適切である。より具体的には、前記表面架橋層が形成されたベース樹脂の少なくとも約95重量%以上が約150~850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満になることができる。
【0099】
このように前記高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、最終製造される高吸水性樹脂が優れた諸般吸収物性を示すことができる。したがって、前記分級段階では、粒径が約150~約850μmの重合体を分級して、製品化することができる。
【0100】
前記一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、塩基性物質の種類および含有量、カプセル化された発泡剤の種類および含有量、重合後続工程(乾燥工程あるいは表面架橋反応工程)の温度および/または時間条件などを適切に調節して目的とする水準の吸収速度および初期吸水能を示す高吸水性樹脂を提供することができる。このような高吸水性樹脂は、水酸化カリウムを含まない塩基性物質で一部が中和した単量体により製造された高吸水性樹脂および/または発泡剤を使用しないか、あるいは本発明の範囲に属しない発泡剤を使用せずに製造された高吸水性樹脂に比べて、顕著に向上した1分間吸水能および吸収速度を示すことができる。
【0101】
一方、本発明の他の実施形態によれば、上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂で、1分間吸水能(蒸留水)が170g/g以上であり、ボルテックス(Vortex)法による吸収速度が22秒以下である高吸水性樹脂が提供される。
【0102】
前記1分間吸水能は、高吸水性樹脂を蒸留水に浸漬したとき、1分間で吸収できる蒸留水の総量として定義され、前記1分間吸水能の測定方法は、以下の実施例でより具体化する。具体的には、前記高吸水性樹脂の1分間吸水能は170g/g以上、175g/g以上、または180g/g以上であり、その値が大きいほど優れ、前記1分間吸水能の上限に制限はないが、一例として250g/g以下、230g/g以下、または210g/g以下である。
【0103】
また、前記ボルテックス(Vortex)法による吸収速度は、生理食塩水に高吸水性樹脂を加えて攪拌させたとき、速い吸収によって液体の渦(vortex)が消える時間を意味すると定義され、前記吸収速度の測定方法は以下の実施例でより具体化する。具体的には、前記吸収速度は22秒以下、または21秒以下であり、その値が小さいほど優れ、前記吸収速度の下限は理論上0秒であるが、一例として10秒以上、12秒以上、または13秒以上である。
【0104】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0105】
<実施例>
カプセル化された発泡剤の用意
実施例で使用されるカプセル化された発泡剤として、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体からなる、Matsumoto社で製造したF-36Dを用意した。このとき、F-36Dの発泡開始温度(Tstart)は70℃~80℃であり、最大発泡温度(Tmax)は110℃~120℃である。
【0106】
それぞれのカプセル化された発泡剤の直径は、光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径で測定された。そして、カプセル化された発泡剤の直径の平均値を求め、カプセル化された発泡剤の平均直径と規定した。
【0107】
また、前記カプセル化された発泡剤の膨張特性を確認するために、ガラスペトリ皿の上に前記用意されたカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃で予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した。カプセル化された発泡剤は熱によって徐々に膨張するが、これを光学顕微鏡で観察してカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比および最大膨張サイズを測定した。
【0108】
カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径を測定して最大膨張サイズと規定し、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(D)の比率(D/D)を求めて、最大膨張比と規定した。
【0109】
用意されたカプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は13μmであり、空気中の最大膨張率は約9倍であり、最大膨張サイズは約80~150μmであった。
【0110】
実施例1
ガラス反応器にアクリル酸100g(1.388mol)を、45%の水酸化カリウム(KOH)溶液121.2g(KOH 0.972mol)、前記用意されたカプセル化された発泡剤F-36D 0.33g、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.18g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.13g、光重合開始剤として(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.008gおよび水85.0gと混合して、全体固形分濃度が44.9重量%の単量体組成物を製造した。製造された単量体組成物で前記アクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0111】
前記単量体組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cmの強さを有する紫外線を照射して60秒間重合反応を進行した。
【0112】
そして、前記重合反応により得られた含水ゲル状重合体をミートチョッパー(meat chopper)を用いて直径が10mmのホールを通過させて粉(crump)で製造した。次いで、上下に風量転移が可能なオーブンを用いて185℃のホットエアー(hot air)を20分間下方から上方に流れるようにし、再び20分間上方から下方に流れるようにして前記粉(crump)を均一に乾燥させた。乾燥された粉を粉砕して、粉末形態のベース樹脂を製造した。
【0113】
上記で製造したベース樹脂100gに超純水5.5g、メタノール5.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.034g、シリカ(Aerosil 200、Evonik社製)0.04gを混合した溶液を投与し、これを攪拌して1分間混合した後、180℃で60分間表面架橋反応を行った。以降、これを分級して150~850μmの平均粒径を有する粒子からなる高吸水性樹脂を得た。
【0114】
実施例2
実施例1で45%の水酸化カリウム(KOH)溶液121.2gの代わりに、45%の水酸化カリウム(KOH)溶液97.0g(KOH 0.778mol)および31.5%の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液24.7g(NaOH 0.195mol)の混合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、実施例2で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0115】
実施例3
実施例1で45%の水酸化カリウム(KOH)溶液121.2gの代わりに、45%の水酸化カリウム(KOH)溶液60.6g(KOH 0.486mol)および31.5%の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液61.7g(NaOH 0.486mol)の混合物を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、実施例3で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0116】
実施例4
実施例3でカプセル化された発泡剤F-36Dの代わりにF-65(MATSUMOTO社製)を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、実施例4で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0117】
また、前記カプセル化された発泡剤F-65の膨張特性をF-36Dと同様の方法で確認した結果、平均直径は15μmであり、空気中での最大膨張比は約6倍であり、最大膨張サイズは約70~110μmであった。
【0118】
実施例5
実施例3でF-36D 0.4gを使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、実施例5で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0119】
比較例1
実施例1で45%の水酸化カリウム(KOH)溶液121.2gの代わりに、31.5%の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液123.5g(NaOH 0.972mol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、比較例1で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0120】
比較例2
実施例3でカプセル化された発泡剤F-36Dを使用しないことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、比較例2で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0121】
比較例3
実施例3でカプセル化された発泡剤F-36Dの代わりに重炭酸ナトリウム(NaHCO)発泡剤を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、比較例3で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0122】
比較例4
実施例3でカプセル化された発泡剤F-36Dの代わりに炭酸ナトリウムコア-ポリエチレングリコール(PEG)シェル構造の発泡剤を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、比較例4で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0123】
比較例5
実施例3でカプセル化された発泡剤F-36Dの代わりに炭化水素コア-熱可塑性樹脂シェル構造のEXPANCEL 930 DU 120(AkzoNobel社製)を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。このとき、比較例5で製造された単量体組成物でアクリル酸の中和度は70モル%であり、組成物のpHは5.6であった。
【0124】
また、EXPANCEL 930 DU 120(AkzoNobel社製)の膨張特性をF-36Dと同様の方法で確認した結果、平均直径は33μmであり、空気中の最大膨張率は約3倍であり、最大膨張サイズは約60~150μmであった。
【0125】
試験例
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対し、以下の方法で遠心分離保水能(CRC)、吸収速度および1分間吸水能を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0126】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をヨーロッパ不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)の規格EDANA WSP 241.3により測定した。
【0127】
具体的には、実施例および比較例を通してそれぞれ得られた樹脂で、#30-50の篩で分級した樹脂を得た。このような樹脂W(g)(約0.2g)を不織布制の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)で浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を抜いて、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を使用せず、同じ操作をした後、その時の質量W(g)を測定した。
【0128】
得られた各質量を用いて下記数式1によりCRC(g/g)を算出した。
【0129】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0130】
(2)ボルテックス(Vortex)法による吸収速度
前記実施例および比較例での高吸水性樹脂の吸収速度は、国際公開第1987/003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定した。
【0131】
具体的には、吸収速度(あるいはvortex time)は、23℃~24℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れて、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が無くなるまでの時間を秒単位で測定して算出した。
【0132】
(3)1分間吸水能
実施例および比較例での高吸水性樹脂1.0g(W)を不織布製の封筒(15cm×15cm)に入れて、24℃の蒸留水500mLに1分間浸水させた。1分後に封筒を蒸留水から取り出した後、吊り下げて1分間放置した。以降、封筒の質量(W)を測定した。また、高吸水性樹脂を使用せず同じ操作をした後、その時の質量W(g)を測定した。
【0133】
このようにして得られた各質量を用いて下記数式3により1分間吸水能を算出した。
【0134】
[数式3]
1分間吸水能(蒸留水)={[W(g)-W(g)-W(g)]/W(g)}
【0135】
【表1】
【0136】
上記表1を参照すると、実施例での高吸水性樹脂はNaOHだけで中和させた比較例1での高吸水性樹脂、発泡剤を使用しない比較例2での高吸水性樹脂、および本発明によるカプセル化された発泡剤を使用しない比較例3および4での高吸水性樹脂に比べて、顕著に向上した初期吸水能および速い吸収速度を示すことを確認することができた。
【0137】
また、空気中での最大膨張比が5倍~15倍のカプセル化された発泡剤を使用した実施例での高吸水性樹脂とは異なり、空気中での最大膨張比が3倍であるカプセル化された発泡剤を使用した比較例5での高吸水性樹脂は、発泡剤を使用しない比較例2での高吸水性樹脂に比べて初期吸水能および吸収速度が改善されないことが分かった。