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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220307BHJP
   C08F 120/06 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
C08J3/12 A CER
C08F120/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020571327
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2019017618
(87)【国際公開番号】W WO2020145533
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0004155
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チンウク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】イェソル・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】サンファ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ギチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スル・ア・イ
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-522880(JP,A)
【文献】特表2007-514833(JP,A)
【文献】特表2008-522003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08F 120/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤、カプセル化された発泡剤および重合開始剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階;および
前記ベース樹脂を熱処理する段階を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.4重量部で使用され
前記熱処理は100℃~200℃の温度で5分~90分間行われる、高吸水性樹脂の製造方法:
【化1】
上記化学式1中、Rは炭素数1~10のアルカン由来の2価の有機基であり、Rは水素またはメチル基である。
【請求項2】
前記内部架橋剤は、上記化学式1中のRが、メタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、n-ブタン-1,4-ジイル、n-ブタン-1,3-ジイル、n-ブタン-1,2-ジイル、n-ブタン-1,1-ジイル、2-メチルプロパン-1,3-ジイル、2-メチルプロパン-1,2-ジイル、2-メチルプロパン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-1,4-ジイル、2-メチルブタン-2,4-ジイル、2-メチルブタン-3,4-ジイル、2-メチルブタン-4,4-ジイル、2-メチルブタン-1,3-ジイル、2-メチルブタン-1,2-ジイル、2-メチルブタン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-2,3-ジイル、3-メチルブタン-1,2-ジイル、または3-メチルブタン-1,3-ジイルである化合物を含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記内部架橋剤は、内部架橋剤の総重量に対して上記化学式1で表される化合物を1~100重量%で含む、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記内部架橋剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.6重量部で使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記カプセル化された発泡剤は、膨張前の平均直径が5~50μmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記カプセル化された発泡剤は、炭化水素を含むコアと前記コア上に形成された熱可塑性樹脂からなるシェルを含むコア-シェル構造を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群から選択される1種以上である、請求項6に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成された群から選択される1種以上のモノマーから形成されるポリマーである、請求項6または7に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ベース樹脂の形成後熱処理段階前に、
表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
製造された高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)が40~55g/gであり、ボルテックス(Vortex)法による吸水速度が48秒以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年1月11日付の韓国特許出願第10-2019-0004155号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。より詳しくは、吸水速度が速く、保水能が向上した高吸水性樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などのそれぞれ異なる名前で名付けられている。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化され始め、現在は、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、主におむつや生理用ナプキンなどの衛生材分野で幅広く使用されている。このような衛生材内で、前記高吸水性樹脂はパルプ内に広がった状態で含まれることが一般的である。しかし、最近は、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環として、パルプの含有量が減少したり、さらにパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
このように、パルプの含有量が減少したり、パルプが使用されない衛生材の場合、相対的に高吸水性樹脂が高い比率で含まれ、このような高吸水性樹脂粒子が衛生材内に不可避に多層含まれる。このように多層含まれる全体的な高吸水性樹脂粒子がより効率的に小便などの液体を吸収するためには、前記高吸水性樹脂が基本的に高い吸水性能および吸水速度を有する必要がある。
【0006】
このために、従来の高吸水性樹脂は、内部架橋度を低くし、表面架橋度を高める方法を使用している。しかし、前記方法は、吸水速度が増加する側面があり、向上した吸水能を有すると同時に吸水速度が速い高吸水性樹脂を製造するための技術開発が持続的に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、表面架橋層の形成以降に追加の熱処理工程による内部架橋密度の調整によって保水能は向上させながら、加圧吸水能の減少率は最小化することができる高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記製造方法で製造されたより優れた諸般物性を示す高吸水性樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、以下を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
下記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤、カプセル化された発泡剤および重合開始剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階と;
前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階と;
前記ベース樹脂を熱処理する段階と、を含み、
前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.4重量部で使用される:
【0010】
【化1】
【0011】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~10のアルカン由来の2価の有機基であり、Rは、水素またはメチル基である。
【0012】
また、本発明は、上述した製造方法により製造された、EDANA法WSP 241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)が40~55g/gであり、ボルテックス(Vortex)法による吸水速度が48秒以下である高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、重合時に熱分解性内部架橋剤とカプセル化された発泡剤を一緒に使用しながら、追加的な熱処理を通じて、吸水速度が速く、保水能が向上した高吸水性樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示し下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態について限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物~代替物を含むことが理解されなければならない。
【0015】
本明細書に使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂の製造方法についてより詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態よれば、下記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤、カプセル化された発泡剤および重合開始剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階と;前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階と;前記ベース樹脂を熱処理する段階と、を含み、前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.4重量部で使用される、高吸水性樹脂の製造方法が提供される:
【0018】
【化2】
【0019】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~10のアルカン由来の2価の有機基であり、Rは、水素またはメチル基である。
【0020】
本明細書で使用される用語「重合体」または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態のものを意味し、全ての水分含有量の範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル状重合体と称することができる。
【0021】
また、「高吸水性樹脂」は、文脈によって、前記重合体またはベース樹脂自体を意味するか、または前記重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものを包括するものとして使用される。
【0022】
従来の吸水特性を向上させるために、高吸水性樹脂の重合時に発泡剤を使用して内部に気孔を導入する方法が知られている。しかし、このような方法の場合、発泡剤によって導入される気孔が高吸水性樹脂全体に均一に分布していないため、高吸水性樹脂の吸水特性を改善するのに限界があった。
【0023】
そこで、本発明者らは、高吸水性樹脂の重合時に熱分解性のカプセル化された発泡剤と熱分解性内部架橋剤を併用する場合、高吸水性樹脂に気孔構造が導入され、かつ追加の熱処理を通じた熱分解性内部架橋剤に由来する架橋構造のうちの一部が破壊されて、カプセル化された発泡剤を使用しないかあるいはカプセル化された発泡剤を他の内部架橋剤と使用した場合に比べて、高吸水性樹脂の保水能と吸水速度が顕著に向上できることを確認して、本発明を完成した。
【0024】
具体的には、本発明で使用される上記化学式1で表される化合物は、熱によって分解される熱分解性内部架橋剤である。すなわち、熱分解性のカプセル化された発泡剤と熱分解性内部架橋剤の存在下で水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させる場合、導入された気孔構造により増加した表面積を有し、架橋された重合体中の上記化学式1の化合物由来の架橋構造のうちの少なくとも一部が分解されて、内部に比べて外部の架橋密度が高い高吸水性樹脂が製造され得る。
【0025】
併せて、追加の熱処理工程の時間および温度条件を異にして、内部と外部との架橋密度の差を容易に調整することができるので、所望の保水能と吸水能を有する高吸水性樹脂の製造が効率的に行われ得る。
【0026】
したがって、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法により製造された高吸水性樹脂は、おむつおよび生理用ナプキンなどの衛生用品に好ましく適用され得る。
【0027】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法について各段階別により具体的に説明する。
【0028】
一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、まず、下記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤、カプセル化された発泡剤および重合開始剤の存在下で少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階を行う。
【0029】
前記段階は、複数個の水溶性エチレン系不飽和単量体を上記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤で重合させ、かつカプセル化された発泡剤を併用して含水ゲル状重合体を形成する段階であって、前記含水ゲル状重合体は、上記化学式1で表される化合物の架橋反応基であるビニル基によって架橋された構造、具体的には熱によって分解される内部架橋構造および発泡剤による気孔構造を有する。
【0030】
また、前記段階は、前記下記化学式1で表される化合物を含む内部架橋剤、カプセル化された発泡剤、重合開始剤および少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体組成物を製造する段階;および前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する段階により行うことができる。
【0031】
本明細書で使用される用語「少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」は、水溶性エチレン系不飽和単量体に酸性基を有する単量体が含まれており、前記酸性基を有する単量体の酸性基のうちの少なくとも一部が中和していることを意味する。
【0032】
特に、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、少なくとも一部が前記陰イオン性単量体に含まれている酸性基を中和させた単量体(陰イオン性単量体の塩)で構成される。
【0033】
このような水溶性エチレン系不飽和単量体としてはアクリル酸系単量体を使用することができ、より具体的には前記アクリル酸系単量体は、下記化学式2で表される化合物であり得る:
【0034】
[化学式2]
R-COOM
【0035】
上記化学式2中、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価の金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0036】
好ましくは、前記アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価の金属塩、2価の金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群から選択される1種以上を含む。
【0037】
ここで、前記アクリル酸系単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基性物質で部分的に中和させたものを使用することができる。このとき、前記アクリル酸系単量体の中和度は、70モル%未満、あるいは40~69モル%、あるいは50~65モル%に調整することができる。
【0038】
しかし、前記中和度が高すぎると、中和された単量体が析出して重合が円滑に進行しにくいことがあり、しかも、表面架橋開始以降の追加の中和による効果が実質的になくなり、表面架橋層の架橋の程度が最適化されず、高吸水性樹脂の通液性などが不十分である。逆に、中和度が低すぎると、高分子の吸収力が大きく低下するだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことができる。
【0039】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体組成物中で、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、後述する各原料物質、重合開始剤、溶媒、または選択的に苛性ソーダなどの中和剤などを含む単量体組成物全体に対して約20~約60重量%、あるいは約25~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度にすることができる。ただし、前記単量体の濃度が低すぎると、高吸水性樹脂の収率が低くなり、経済性に問題が生じることがあり、逆に、濃度が高すぎると、単量体の一部が析出されるかまたは重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に粉砕効率が低くなるなど工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0040】
また、本明細書で使用される用語「内部架橋剤」は、後述するベース樹脂の表面だけを架橋させる表面架橋剤と区分するために使用される用語で、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体に熱によって分解される内部架橋構造を導入するための架橋剤である。
【0041】
上記化学式1中のRは、上記定義の通り、炭素数1~10のアルカン(alkane)由来の2価の有機基であり、Rは水素またはメチル基である。このとき、前記アルカンは、直鎖状、分枝鎖状または環状アルカンであり得、このようなアルカン由来の2価の有機基は、一つの炭素で2個の水素が除去された2価の有機基であるか、または互いに異なる炭素でそれぞれ1個の水素が除去された2価の有機基であり得る。具体的には、前記Rは、メタン-1,1-ジイル、エタン-1,2-ジイル、エタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、n-ブタン-1,4-ジイル、n-ブタン-1,3-ジイル、n-ブタン-1,2-ジイル、n-ブタン-1,1-ジイル、2-メチルプロパン-1,3-ジイル、2-メチルプロパン-1,2-ジイル、2-メチルプロパン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-1,4-ジイル、2-メチルブタン-2,4-ジイル、2-メチルブタン-3,4-ジイル、2-メチルブタン-4,4-ジイル、2-メチルブタン-1,3-ジイル、2-メチルブタン-1,2-ジイル、2-メチルブタン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-2,3-ジイル、3-メチルブタン-1,1-ジイル、3-メチルブタン-1,2-ジイル、3-メチルブタン-1,3-ジイル、または3-メチルブタン-2,3-ジイルであり得る。
【0042】
この中でも上記化学式1中のRは、メタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、n-ブタン-1,4-ジイル、n-ブタン-1,3-ジイル、n-ブタン-1,2-ジイル、n-ブタン-1,1-ジイル、2-メチルプロパン-1,3-ジイル、2-メチルプロパン-1,2-ジイル、2-メチルプロパン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-1,4-ジイル、2-メチルブタン-2,4-ジイル、2-メチルブタン-3,4-ジイル、2-メチルブタン-4,4-ジイル、2-メチルブタン-1,3-ジイル、2-メチルブタン-1,2-ジイル、2-メチルブタン-1,1-ジイル、2-メチルブタン-2,3-ジイル、3-メチルブタン-1,2-ジイル、または3-メチルブタン-1,3-ジイルであり得る。
【0043】
具体的には、上記化学式1中のRは、メタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、または3-メチルブタン-1,3-ジイルであり得る。より具体的には、上記化学式1中のRは3-メチルブタン-1,3-ジイルであり得る。
【0044】
上記化学式1中のRが前記羅列された2価の有機基である化合物は、熱エネルギーによる分解能調整が容易な内部架橋構造を提供することができ、分解後に高吸水性樹脂の諸般物性を変化させる副生成物または水可溶成分を生成しないことがある。
【0045】
前記内部架橋剤は、上記化学式1で表される化合物以外に、当該技術分野において既知の内部架橋剤をさらに含むことができる。このような既存の内部架橋剤としては、分子内に2つ以上の架橋性官能基を含む化合物を使用することができる。前記既存の内部架橋剤は、上述した水溶性エチレン系不飽和単量体の円滑な架橋重合反応のために架橋性官能基で、炭素間の二重結合を含むことができる。具体的には、既存の内部架橋剤としては、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、非改質またはエトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ヘキサンジオールジアクリレート、アリル(メタ)アクリレートおよびトリエチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0046】
前記内部架橋剤は、高吸水性樹脂が目的とする水準の架橋密度勾配を有するように、内部架橋剤の総重量に対して1~100重量%あるいは50~100重量%で上記化学式1で表される化合物を含み、残りの含有量は既存の内部架橋剤を含むことができる。ただし、保水能および加圧吸水能が同時に向上した高吸水性樹脂を提供するという側面から、前記内部架橋剤として上記化学式1で表される化合物を使用することができる。すなわち、前記内部架橋剤は、総重量に対して上記化学式1で表される化合物を100重量%で含むことができる。
【0047】
そして、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.6重量部で使用される。例えば、前記内部架橋剤は、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1重量部以上、または0.15重量部以上であり、0.6重量部以下、0.5重量部以下、または0.4重量部以下で使用され得る。上部内部架橋剤が過度に少なく使用される場合内部架橋構造の破壊が十分に起こらず、所望する吸水能が実現しにくく、前記内部架橋剤が過度に多く使用される場合価格的な側面から好ましくない。
【0048】
このとき、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の含有量は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体に含まれている酸性基を有する単量体の酸性基が中和する前の水溶性エチレン系不飽和単量体の重量を基準にする。例えば、水溶性エチレン系不飽和単量体がアクリル酸を含む場合、アクリル酸を中和させる前の単量体の重量を基準にして内部架橋剤の含有量を調整することができる。
【0049】
また、前記カプセル化された発泡剤は、コア-シェル構造を有する熱膨張性マイクロカプセル発泡剤を意味するもので、具体的には、炭化水素を含むコアと前記コア上に形成された熱可塑性樹脂からなるシェルを含むコア-シェル構造を有することができる。より具体的には、前記コアを構成する炭化水素は、低い沸点を有する液体炭化水素で、熱によって容易に気化する特徴を有する。したがって、前記カプセル化された発泡剤に熱が加わる場合、またはその熱に相応するエネルギー(例えば、UVなどの光エネルギー)が加わる場合、シェルをなす熱可塑性樹脂が軟化すると同時にコアの液体炭化水素が気化して、カプセル内部の圧力が増加することで膨張することになり、これにより、既存の大きさより増加した大きさの気泡が形成される。
【0050】
したがって、前記カプセル化された発泡剤は、コアの炭化水素ガスを発生させるものであるため、高分子の生成に参加する単量体間の発熱分解反応で窒素ガスを発生させる有機発泡剤や高分子の生成時に発生する熱を吸収して二酸化炭酸ガスを発泡させる無機発泡剤とは区別される。
【0051】
このようなカプセル化された発泡剤は、前記コアとシェルをなす成分と各成分の重量、直径に応じて膨張特性が異なり、これを調節することによって所望の大きさに膨張可能であり、これにより、前記高吸水性樹脂の多孔性を調節することができる。
【0052】
また、前記カプセル化された発泡剤を使用して所望の大きさの気孔を形成できるか否かを把握するためには、まずカプセル化された発泡剤の膨張特性を把握する必要がある。しかし、高吸水性樹脂内でカプセル化された発泡剤が発泡された形態は、高吸水性樹脂の製造条件によって異なるので、一つの形態で定義することは難しい。したがって、まずカプセル化された発泡剤を空気中で発泡させて膨張比率および大きさを確認することによって、所望の気孔を形成するのに適するか否かを確認できる。
【0053】
具体的には、ガラスペトリ皿の上にカプセル化された発泡剤を塗布した後、空気中で150℃の熱を10分間加えて、カプセル化された発泡剤を膨張させる。このとき、カプセル化された発泡剤が3~15倍、5~15倍あるいは8.5~10倍の空気中での最大膨張比を有するとき、高吸水性樹脂に適切な気孔構造を形成するのに好適であると判断できる。
【0054】
また、前記カプセル化された発泡剤は、空気中で20~190μm、または50~190μm、または70~190μm、または75~190μmの最大膨張サイズを有し得る。上述した範囲で、製造される高吸水性樹脂が速い吸水速度および改善された保水能を示すことができる適合した気孔構造を付与することができる。
【0055】
カプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比および最大膨張直径は、後述する製造例でより詳しく説明する。
【0056】
そして、前記カプセル化された発泡剤は、膨張前の平均直径が5~50μmの粒子であり得る。例えば、前記カプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は5~30μm、または5~20μm、または7~17μm、または10~16μmであり得、前記カプセル化された発泡剤のカプセル厚さは2~15μmであり得る。前記カプセル化された発泡剤が、上記のような膨張前の平均直径を有するときに樹脂内で適切な程度の気孔構造を達成するのに好適であると判断できる。前記平均直径は、カプセル化された発泡剤粒子それぞれの直径を平均フェレ(Feret)径で測定した後、これらの平均値を求めて測定することができる。
【0057】
前記カプセル化された発泡剤のコアを構成する炭化水素は、n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、iso-ヘプタン、シクロヘプタン、n-オクタン、iso-オクタンおよびシクロオクタンで構成された群から選択される1種以上であり得る。その中でも、炭素数3~5の炭化水素(n-プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、シクロペンタン)が上述した大きさの気孔を形成するのに好適であり、iso-ブタンが最も好適である。
【0058】
そして、前記カプセル化された発泡剤のシェルを構成する熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンで構成される群から選択される1種以上のモノマーから形成されるポリマーであり得る。その中でも、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリロニトリルの共重合体が上述した大きさの気孔を形成するのに最も好適である。
【0059】
また、前記カプセル化された発泡剤の発泡開始温度(Tstart)は60℃~120℃、または65℃~120℃、または70℃~80℃であり得、最大発泡温度(Tmax)は100℃~150℃、または105℃~135℃、または110℃~120℃であり得る。上記の範囲を有する場合、後続の熱重合工程または乾燥工程で容易に発泡が起こり、重合体内の気孔構造を導入することができる。このような発泡開始温度および最大発泡温度は、熱機械分析装置(Thermomechanical Analyzer)を用いて測定することができる。
【0060】
前記カプセル化された発泡剤は、全体カプセル化された発泡剤の重量に対して炭化水素からなるコアを10~30重量%で含み得る。上記の範囲内で高吸水性樹脂の気孔構造を形成することが最も好適である。
【0061】
前記カプセル化された発泡剤は製造して使用するか、または上述した条件を満たす商用の発泡剤を使用することができる。
【0062】
また、前記カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.1~0.4重量部で使用される。前記カプセル化された発泡剤の含有量が少なすぎると、発泡が十分に行われず、樹脂内気孔構造がうまく形成されないので吸水速度の増加に役に立たず、過度に多く含まれる場合には、樹脂の多孔性が高すぎて高吸水性樹脂の強度が弱くなるか、または工程中に過剰の微粉が発生することがある。このような観点から上記の含有量の範囲が好ましい。例えば、カプセル化された発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.3~0.4重量部で使用され得る。
【0063】
このとき、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の含有量は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体に含まれている酸性基を有する単量体の酸性基が中和する前の水溶性エチレン系不飽和単量体の重量を基準にする。例えば、水溶性エチレン系不飽和単量体がアクリル酸を含む場合、アクリル酸を中和させる前の単量体の重量を基準にして内部架橋剤の含有量を調整することができる。
【0064】
また、前記エチレン系不飽和単量体の重合に使用される重合開始剤は、重合方法により適切に選択することができ、熱重合方法を利用する場合には熱重合開始剤を使用し、光重合方法を利用する場合には光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光を全て使用する方法)を利用する場合には熱重合開始剤と光重合開始剤を全て使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行に応じてある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0065】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成することができる化合物であればその構成に限定なく使用することができる。
【0066】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群から選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalmの著書「UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115ページによく明示されており、上述した例に限定されない。
【0067】
前記光重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.0001~約2.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が低すぎる場合重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が高すぎる場合高吸水性樹脂の分子量が小さくなり物性が不均一になることがある。
【0068】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群から選択される一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」の203ページによく明示されており、上述した例に限定されない。
【0069】
前記熱重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001~約2.0重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が低すぎる場合追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微小であり、熱重合開始剤の濃度が高すぎる場合高吸水性樹脂の分子量が小さくなり物性が不均一になることがある。
【0070】
前記単量体組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0071】
上述した水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、カプセル化された発泡剤、重合開始剤および添加剤などの原料物質は溶媒に溶解した形態で準備され得る。
【0072】
このとき、使用できる溶媒としては、上述した成分を溶解することができるものであればその構成の限定なく使用することができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択される1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
前記溶媒は、単量体組成物の総含有量に対して上述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0074】
このような単量体組成物の製造は、一般に公知の混合方法を使用して上述した水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、カプセル化された発泡剤、重合開始剤および添加剤などの原料物質を溶媒に溶解して製造することができる。
【0075】
一方、このような単量体組成物を熱重合、光重合または混成重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0076】
具体的には、重合方法は、重合エネルギー源により大きく熱重合および光重合に分けられる。通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ得る。また、熱重合を行う場合約80℃以上、および約110℃未満の温度で行われ得る。上記の範囲の重合温度を達成するための手段は特に限定されず、前記反応器に熱媒体を供給するか、または熱源を直接供給して加熱することができる。使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用することができるが、これらに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。また、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されるものではない。
【0077】
一方、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われ得るが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0078】
一例として、上述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱媒体を供給したり反応器を加熱したりして熱重合を行う場合、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体を得ることができる。このように得られた含水ゲル状重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、数センチメートル~数ミリメートルの大きさで得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体の大きさは注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様に現れることができる。
【0079】
また、上述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。このとき、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて異なるが、通常、約0.5~約10cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが10cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均等に起こらないことがある。
【0080】
前記単量体組成物の重合時間は特に限定されず、約30秒~60分に調節することができる。
【0081】
このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、約30~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体で「含水率」は、含水ゲル状重合体の全体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。このとき、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃に維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階の5分を含む40分に設定して、含水率を測定する。
【0082】
次に、前記含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階を行う。
【0083】
前記段階で製造されたベース樹脂は、乾燥工程で加わる熱によって、上記化学式1で表される化合物によって架橋された内部架橋構造のうちの少なくとも一部が分解されるようになり、発泡されずに残っていた一部の発泡剤によって追加的な気孔構造が形成され得る。このように内部架橋密度が減少し気孔構造によって表面積が増加したベース樹脂は、内部架橋密度が減少しないかまたは気孔構造を有さないベース樹脂に比べて顕著に保水能が向上し、吸水速度が改善される。
【0084】
一方、前記ベース樹脂を形成する段階では、乾燥効率を高めるために含水ゲル状重合体を乾燥する前に粗粉砕する工程を含み得る。
【0085】
このとき、用いられる粉砕機は構成に限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、断片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群から選択されるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0086】
このような粗粉砕工程により、含水ゲル状重合体の粒径は約0.1~約10mmに調節することができる。粒径が0.1mm未満となるように粉砕することは、含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0087】
前記のように粗粉砕工程を経るか、あるいは粗粉砕工程を経ない重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。このとき、前記乾燥温度は約20℃~約250℃であり得る。乾燥温度が低すぎる場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が高すぎる場合、過度に重合体表面だけが乾燥されて、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することがあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、約40℃~約240℃の温度で、より好ましくは約110℃~約220℃の温度で行われ得る。
【0088】
また、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20分~約12時間行われ得る。一例として、約10分~約100分、または約20分~約40分間乾燥し得る。
【0089】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常使用されるものであれば、その構成の限定なしに選択して使用することができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であり得る。
【0090】
以後、前記乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体は、粉砕機を使用して粉砕する。
【0091】
具体的には、前記粉末形態のベース樹脂は、粒径が約150μm~約850μmの粒子からなるように分級され得、このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などが挙げられるが、上述した例に限定されない。
【0092】
また、前記粉砕段階の以降に製造されたベース樹脂を分級する段階をさらに含み得る。
【0093】
前記粉末形態のベース樹脂を粒径に応じて分級する段階を経て最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理することができる。このような粉砕および分級などの工程によって得られる高吸水性樹脂は、約150~850μmの粒径を有するように製造および提供することが好ましい。より好ましくは、前記ベース樹脂の少なくとも約90重量%以上、好ましくは約95重量%以上が約150~850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満である。
【0094】
このように前記高吸水性樹脂の粒径分布を好ましい範囲に調節することによって、最終製造された高吸水性樹脂は優れた吸収諸般物性を有することができる。したがって、前記分級段階では、粒径が約150~約850μmの重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末だけに対して追加の熱処理段階を経て製品化することができる。
【0095】
一方、選択的に、前記ベース樹脂の形成後熱処理段階前に、表面架橋剤の存在下で前記形成されたベース樹脂表面をさらに架橋して表面架橋層を形成する段階をさらに含み得る。
【0096】
前記段階は、ベース樹脂の表面架橋密度を高めるために表面架橋剤を使用して表面架橋層の形成されたベース樹脂を製造する段階であって、前記表面架橋剤によって架橋されずに表面に残っていた水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋させて、表面架橋密度が高くなったベース樹脂が形成される。このような熱処理工程で表面架橋密度、すなわち、外部架橋密度は増加する反面、上記化学式1で表される化合物によって架橋された部分のうちの少なくとも一部は分解されて、内部架橋密度はさらに低下する。したがって、製造された表面架橋層が形成されたベース樹脂は、内部から外部に行くほど架橋密度が増加する構造を有する。
【0097】
前記表面架橋剤としては、従来から高吸水性樹脂の製造に用いられている表面架橋剤を特に制限なく全て使用することができる。例えば、前記表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される1種以上のポリオル;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群から選択される1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などが挙げられる。
【0098】
このような表面架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して約0.01~3重量部、0.05~2重量部、または0.5~1重量部の含有量で使用され得る。表面架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節して、優れた諸般吸収物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0099】
そして、前記表面架橋剤として、シリカ(silica)、クレー(clay)、アルミナ、シリカ-アルミナ複合材、チタニア、亜鉛酸化物およびアルミニウムスルフェートからなる群から選択される1種以上の無機物質などをさらに含み表面架橋反応を行うことができる。前記無機物質は粉末形態または液状形態で使用することができ、特にアルミナ粉末、シリカ-アルミナ粉末、チタニア粉末、またはナノシリカ溶液に使用することができる。また、前記無機物質は、ベース樹脂100重量部に対して約0.001~約2重量部の含有量で使用され得る。
【0100】
また、前記表面架橋剤をベース樹脂と混合する方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤とベース樹脂を反応槽に入れて混合したり、ベース樹脂に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0101】
前記表面架橋剤とベース樹脂との混合時、追加的に水およびメタノールを一緒に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂に均一に分散できる利点がある。このとき、追加される水およびメタノールの含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、ベース樹脂の凝集現象を防止すると同時に、架橋剤の表面浸透深さを最適化するために適切に調節することができる。
【0102】
前記表面架橋工程は約80℃~約200℃の温度で行われ得る。より具体的には、前記表面架橋工程は、約100℃~約180℃、または約120℃~約160℃の温度で、約20分~約2時間、または約40分~約80分間行われ得る。上述した表面架橋工程条件の充足時、ベース樹脂の表面が十分に架橋されて加圧吸水能を高め、かつ内部構造が適切に分解されて保水能が増加する。
【0103】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給したりして加熱することができる。このとき、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを用いることができるが、これらに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に限定されない。
【0104】
次に、前記ベース樹脂、または表面架橋層が形成されたベース樹脂を熱処理する段階を行う。
【0105】
前記段階は、前記ベース樹脂をさらに熱処理して上記化学式1で表される化合物によって架橋された部分をさらに分解させることによって、内部と外部の架橋密度の差がもっと大きい高吸水性樹脂を製造する段階である。これにより、最終製造された高吸水性樹脂は、追加の熱処理を実施しない高吸水性樹脂に比べて保水能は大きく向上する反面、加圧吸水能の減少幅は小さくて、増加した保水能を示すことができる。さらに、追加の熱処理工程条件を調整して、所望の吸水性能を示す高吸水性樹脂の製造が容易に行われ得る。
【0106】
前記熱処理は、約100℃~200℃の温度で約5分~約90分間行われる。具体的には、前記熱処理温度は、約120℃以上、約140℃以上、または約150℃以上であり、約200℃以下、または約190℃以下であり、前記熱処理時間は、約10分以上、約15分以上、または約20分以上であるか、または約90分以下、約80分以下、または約60分以下である。前記熱処理温度が低すぎるかまたは熱処理時間が短すぎる場合追加の熱処理による内部架橋構造の分解が十分に起こらず、前記熱処理温度が高すぎるかまたは熱処理時間が長過ぎる場合、高吸水性樹脂中の水可溶性成分が増加して問題となることがある。
【0107】
前記熱処理方法は特に限定されないが、例えば、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で行うことができ、好ましくは、上下に風量転移が可能なコンベクションオーブンを用いて行うことができる。
【0108】
前記一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、内部架橋剤の種類および含有量、重合後続工程(乾燥工程あるいは表面架橋反応工程)の温度および/または時間条件、および追加の熱処理工程の温度および/または時間条件などを適切に調整して目的とする水準の内部および外部架橋密度の差を示す高吸水性樹脂を提供することができる。このような高吸水性樹脂は、追加の熱処理を実施しない高吸水性樹脂に比べて内部から外部に行くほど架橋密度が顕著に増加する架橋密度勾配を有して、遠心分離保水能(CRC)と加圧吸水能(AUL)の和が向上する。また、このような架橋密度勾配は、高吸水性樹脂の製造後に熱処理工程で容易に調整可能であるため、所望の吸水特性を有する高吸水性樹脂の製造が容易に行われ得る。
【0109】
一方、上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が上述した化学式1で表される化合物を媒介として架橋された多孔性架橋重合体を含み、前記高吸水性樹脂は、粉末形態で約90重量%以上が150~850μmの粒径を有することができる。
【0110】
また、表面架橋工程が追加された場合、製造された高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が上述した化学式1で表される化合物を媒介として架橋された多孔性架橋重合体を含むベース樹脂;および前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された表面架橋層を含み、前記高吸水性樹脂は、粉末形態で約90重量%以上が150~850μmの粒径を有することができる。
【0111】
また、上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)が40~55g/gであり、ボルテックス(Vortex)法による吸水速度が48秒以下であり得る。より具体的には、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3により測定した遠心分離保水能(CRC)が41g/g以上、43g/g以上、または44g/g以上であり、かつ54g/g以下、53g/g以下、または52g/g以下であり得る。そして、前記高吸水性樹脂は、ボルテックス(Vortex)法による吸水速度が48秒以下、45秒以下、または40秒以下であり、かつ吸水速度の下限は低いほど有利で、その数値に制限はないが、一例として10秒以上、15秒以上、または20秒以上であり得る。
【0112】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0113】
<実施例>
カプセル化された発泡剤の用意
実施例で使用されるカプセル化された発泡剤として、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体からなる、Matsumoto社で製造したF-36Dを用意した。このとき、全体カプセル化された発泡剤の重量に対してコアは25重量%で含まれ、F-36Dの発泡開始温度(Tstart)は70℃~80℃であり、最大発泡温度(Tmax)は110℃~120℃である。
【0114】
それぞれのカプセル化された発泡剤の直径は、光学顕微鏡により平均フェレ(Feret)径で測定された。そして、カプセル化された発泡剤の直径の平均値を求め、カプセル化された発泡剤の平均直径と規定した。
【0115】
また、前記カプセル化された発泡剤の膨張特性を確認するために、ガラスペトリ皿の上に前記用意されたカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150℃で予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した。カプセル化された発泡剤は熱によって徐々に膨張するが、これを光学顕微鏡で観察してカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比および最大膨張サイズを測定した。カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径を測定して最大膨張サイズと規定し、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D0)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(DM)の比率(DM/D0)を求めて、最大膨張比と規定した。
【0116】
用意されたカプセル化された発泡剤の膨張前の平均直径は13μmであり、空気中の最大膨張率は約9倍であり、最大膨張サイズは約80~150μmであった。
【0117】
実施例1
ガラス反応器にアクリル酸100g、32重量%苛性ソーダ(NaOH)溶液123.5g、内部架橋剤として3-メチルブタン-1,3-ジイルジアクリレート(MBDA)0.2g、前記用意されたカプセル化された発泡剤F-36D 0.33g、熱重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.2g、光重合開始剤として(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.008gを水に投入した後、メカニカルミキサー(mechanical mixer)を用いて500rpmの速度で約10分間混合して、全体固形分濃度が45.0重量%の単量体組成物を製造した。
【0118】
前記単量体組成物を幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に500~2000mL/minの速度で供給した。そして、前記単量体組成物の供給と同時に10mW/cmの強さを有する紫外線を照射して60秒間重合反応を進行した。
【0119】
そして、前記重合反応により得られた含水ゲル状重合体をミートチョッパー(meat chopper)を用いて直径が10mmのホールを通過させて粉(crump)で製造した。次いで、上下に風量転移が可能なコンベクションオーブンを用いて、195℃のホットエアー(hot air)を10分間下方から上方に流れるようにし、再び20分間上方から下方に流れるようにして前記粉(crump)を均一に乾燥させて、粉末形態のベース樹脂を製造した。以降、これを分級して150~850μmのベース樹脂を得た。
【0120】
前記ベース樹脂を上下に風量転移が可能なコンベクションオーブンを用いて、185℃の温度で30分間熱処理して高吸水性樹脂を得た。
【0121】
実施例2~8および比較例1~8
実施例1での内部架橋剤、カプセル化された発泡剤の含有量および熱処理条件を下記表1のとおり変更したことを除いては実施例1と同様の方法で、高吸水性樹脂を製造した。
【0122】
試験例
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対し、以下の方法で遠心分離保水能(CRC)、吸収速度および微粉発生量に対して下記の方法で測定し、その結果を下記表1に示す。
【0123】
(1)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をヨーロッパ不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)の規格EDANA WSP 241.3により測定した。
【0124】
具体的には、実施例および比較例によってそれぞれ得られた樹脂で、#30-50の篩で分級した樹脂を得た。このような樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)で浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を抜いて、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を使用せず、同じ操作をした後、その時の質量W(g)を測定した。
【0125】
得られた各質量を用いて下記数式1によりCRC(g/g)を算出した。
【0126】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0127】
上記数式1中、
(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、W(g)は、高吸水性樹脂を使用せず、生理食塩水に30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量であり、W(g)は、常温で生理食塩水に高吸水性樹脂を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、高吸水性樹脂を含んで測定した装置重量である。
【0128】
(2)ボルテックス(Vortex)法による吸水速度
前記実施例および比較例での高吸水性樹脂の吸水速度は、国際公開第1987/003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定した。
【0129】
具体的には、吸水速度(あるいはvortex time)は、23℃~24℃、50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れて、マグネットバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消えるまでの時間を秒単位で測定して算出した。
【0130】
(3)微粉発生量
前記実施例および比較例での高吸水性樹脂の微粉発生量は、粉砕された粉末形態のベース樹脂の分級時に分級機に最初投入したベース樹脂の質量に対して100μm未満の粒径を有する樹脂の質量比で計算した。
【0131】
【表1】
【0132】
上記表1で内部架橋剤およびカプセル化された発泡剤の含有量はアクリル酸100重量部に対する重量部を意味し、「-」で示した部分は測定を実施しないことを意味する。
【0133】
上記表1を参照すると、実施例での高吸水性樹脂は、カプセル化された発泡剤を使用しても、上記化学式1で表される内部架橋剤を使用しない比較例3および4に比べて顕著に向上した保水能と吸水速度を示すことが分かった。また、実施例での高吸水性樹脂は、追加の熱処理を実施しない比較例1での高吸水性樹脂に比べて優れた保水能を有することが分かった。
【0134】
これに対し、実施例での高吸水性樹脂とは異なり、熱分解性内部架橋剤を使用しない比較例3および4での高吸水性樹脂の場合、追加の熱処理を実施しても保水能が改善されないことを確認することができた。
【0135】
また、実施例での高吸水性樹脂とは異なり、比較例7および比較例8のようにカプセル化された発泡剤を使用しないか、または比較例5のようにカプセル化された発泡剤の使用量が少なすぎると高吸水性樹脂の吸水速度が遅くなり、比較例6のようにカプセル化された発泡剤の使用量が多すぎると微粉発生量が大きく増加して、生産量および工程安定性が低下することが確認された。
【0136】
したがって、重合時に熱分解性内部架橋剤と特定含有量のカプセル化された発泡剤を併用しながら追加的な熱処理を実施する場合、吸水速度が速く、保水能が向上した高吸水性樹脂の製造が可能であることが分かった。