(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-04
(45)【発行日】2022-03-14
(54)【発明の名称】複数のポンプからなるポンプ群、およびポンプ選定装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/14 20060101AFI20220307BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20220307BHJP
F04D 29/28 20060101ALI20220307BHJP
【FI】
F04D13/14
F04D15/00 D
F04D15/00 101D
F04D29/28 J
(21)【出願番号】P 2018196732
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 賢
(72)【発明者】
【氏名】川畑 潤也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 晶規
(72)【発明者】
【氏名】金 會川
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129108(JP,A)
【文献】米国特許第3169486(US,A)
【文献】米国特許第3395649(US,A)
【文献】特表2017-531757(JP,A)
【文献】特開2009-167990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0183137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/14
F04D 29/28
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比速度が互いに異なる3つのポンプを含むポンプ群であって、
3つの異なるタイプの羽根車と、
前記3つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された3つの回転軸と、
前記3つの回転軸をそれぞれ支持する3組の軸受と、
前記3つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された3つのポンプケーシングを備え、
前記3つの異なるタイプの羽根車は、円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車であり、
前記円形羽根車は、複数の第1翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する円形の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、
前記一重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さく、
前記二重星型羽根車は、複数の第3翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された星型の第3主板と、流体入口を有する星型の第3側板を備え、前記第3主板の外径は、前記第3側板の外径よりも小さい、ポンプ群。
【請求項2】
前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、
前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きく、
前記第3側板の外面の面積は、前記第3主板の外面の面積よりも大きい、請求項1に記載のポンプ群。
【請求項3】
前記一重星型羽根車の前記第2側板は、前記第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している、請求項1または2に記載のポンプ群。
【請求項4】
前記二重星型羽根車の前記第3側板は、前記複数の第3翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記二重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有しており、
前記二重星型羽根車の前記第3主板は、前記複数の第3翼にそれぞれ接する複数の突出部を備えており、前記突出部は、前記二重星型羽根車の半径方向において外側に突出した形状を有している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項5】
前記3組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項6】
前記円形羽根車、前記一重星型羽根車、および前記二重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項7】
比速度が互いに異なる2つのポンプを含むポンプ群であって、
2つの異なるタイプの羽根車と、
前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された2つの回転軸と、
前記2つの回転軸をそれぞれ支持する2組の軸受と、
前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された2つのポンプケーシングを備え、
前記2つの異なるタイプの羽根車は、円形羽根車および一重星型羽根車であり、
前記円形羽根車は、複数の第1翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する円形の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、
前記一重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さい、ポンプ群。
【請求項8】
前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、
前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きい、請求項7に記載のポンプ群。
【請求項9】
前記一重星型羽根車の前記第2側板は、前記第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している、請求項7または8に記載のポンプ群。
【請求項10】
前記2組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項11】
前記円形羽根車および前記一重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である、請求項7乃至10のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項12】
比速度が互いに異なる2つのポンプを含むポンプ群であって、
2つの異なるタイプの羽根車と、
前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された2つの回転軸と、
前記2つの回転軸をそれぞれ支持する2組の軸受と、
前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された2つのポンプケーシングを備え、
前記2つの異なるタイプの羽根車は、一重星型羽根車および二重星型羽根車であり、
前記一重星型羽根車は、複数の第1翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する星型の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、
前記二重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された星型の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さい、ポンプ群。
【請求項13】
前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、
前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きい、請求項12に記載のポンプ群。
【請求項14】
前記一重星型羽根車の前記第1側板は、前記第1翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している、請求項12または13に記載のポンプ群。
【請求項15】
前記二重星型羽根車の前記第2側板は、前記複数の第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記二重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有しており、
前記二重星型羽根車の前記第2主板は、前記複数の第2翼にそれぞれ接する複数の突出部を備えており、前記突出部は、前記二重星型羽根車の半径方向において外側に突出した形状を有している、請求項12乃至14のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項16】
前記2組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている、請求項12乃至15のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項17】
前記一重星型羽根車および前記二重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である、請求項12乃至16のいずれか一項に記載のポンプ群。
【請求項18】
比速度が互いに異なる複数のポンプを含むポンプ群から1つのポンプを選択するポンプ選定装置であって、
揚程および吐出し流量を入力するための入力装置と、
ポンプの運転時に軸受に作用するスラスト力を該軸受の許容荷重限度未満とすることができる複数の比速度範囲を格納した記憶装置と、
揚程および吐出し流量のうち、入力された少なくとも1つに対応する運転点を持つポンプをポンプ群から選択する処理装置を備え、
前記運転点は前記複数の比速度範囲のうちの少なくとも1つの中にあり、
前記ポンプ群に含まれる複数のポンプにそれぞれ対応する複数の運転点は、前記複数の比速度範囲内にあり、
前記ポンプ群は、請求項1乃至17のいずれか一項に記載のポンプ群である、ポンプ選定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を移送するための複数のポンプからなるポンプ群に関し、特に複数の異なるタイプの羽根車をそれぞれ備えた複数のポンプに関する。また、本発明は、そのようなポンプ群から1つのポンプを選択するポンプ選定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポンプに使用される羽根車は、側板(表側シュラウドともいう)を持たないセミオープン形の羽根車か、または側板を持たず、主板(裏側シュラウドともいう)を小さくしたフルオープン形の羽根車である。しかし、これらのタイプの羽根車は組立性が悪く、ポンプ性能も低い。そこで、ポンプ性能が比較的良いリバースオープン形の羽根車がポンプに使用されることがある。リバースオープン形の羽根車は、主板を持たず、翼が側板に固定された羽根車である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このタイプの羽根車には、モータに向かう大きなスラスト力が作用するため、ポンプは、ラジアル力のみならずスラスト力を受けることができる許容荷重が大きい軸受を備える必要がある。例えばアンギュラ玉軸受の場合は、一般に高価であり、しかも、両方向のスラスト力を受けるために少なくとも2つのアンギュラ玉軸受を互いに逆向きに配置する必要がある。このため、ポンプ全体のコストが上昇するのみならず、堅牢な軸受システムを構築するためにポンプ自体が大きくなる。さらに、軸受を冷却するための装置が必要となり、ポンプのコストが上昇する。
【0005】
そこで、本発明は、スラスト力を低減させることができる羽根車を備えた複数のポンプからなるポンプ群を提供する。また、本発明は、そのようなポンプ群から1つのポンプを選択するポンプ選定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、比速度が互いに異なる3つのポンプを含むポンプ群であって、3つの異なるタイプの羽根車と、前記3つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された3つの回転軸と、前記3つの回転軸をそれぞれ支持する3組の軸受と、前記3つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された3つのポンプケーシングを備え、前記3つの異なるタイプの羽根車は、円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車であり、前記円形羽根車は、複数の第1翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する円形の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、前記一重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さく、前記二重星型羽根車は、複数の第3翼と、前記3つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された星型の第3主板と、流体入口を有する星型の第3側板を備え、前記第3主板の外径は、前記第3側板の外径よりも小さい、ポンプ群が提供される。
【0007】
一態様では、前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きく、前記第3側板の外面の面積は、前記第3主板の外面の面積よりも大きい。
一態様では、前記一重星型羽根車の前記第2側板は、前記第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している。
一態様では、前記二重星型羽根車の前記第3側板は、前記複数の第3翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記二重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有しており、前記二重星型羽根車の前記第3主板は、前記複数の第3翼にそれぞれ接する複数の突出部を備えており、前記突出部は、前記二重星型羽根車の半径方向において外側に突出した形状を有している。
一態様では、前記3組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている。
一態様では、前記円形羽根車、前記一重星型羽根車、および前記二重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である。
【0008】
一態様では、比速度が互いに異なる2つのポンプを含むポンプ群であって、2つの異なるタイプの羽根車と、前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された2つの回転軸と、前記2つの回転軸をそれぞれ支持する2組の軸受と、前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された2つのポンプケーシングを備え、前記2つの異なるタイプの羽根車は、円形羽根車および一重星型羽根車であり、前記円形羽根車は、複数の第1翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する円形の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、前記一重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さい、ポンプ群が提供される。
【0009】
一態様では、前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きい。
一態様では、前記一重星型羽根車の前記第2側板は、前記第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している。
一態様では、前記2組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている。
一態様では、前記円形羽根車および前記一重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である。
【0010】
一態様では、比速度が互いに異なる2つのポンプを含むポンプ群であって、2つの異なるタイプの羽根車と、前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ固定された2つの回転軸と、前記2つの回転軸をそれぞれ支持する2組の軸受と、前記2つの異なるタイプの羽根車がそれぞれ収容された2つのポンプケーシングを備え、前記2つの異なるタイプの羽根車は、一重星型羽根車および二重星型羽根車であり、前記一重星型羽根車は、複数の第1翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された円形の第1主板と、流体入口を有する星型の第1側板を備え、前記第1主板の外径は、前記第1側板の外径よりも小さく、前記二重星型羽根車は、複数の第2翼と、前記2つの回転軸のうちの1つが嵌合する孔が形成された星型の第2主板と、流体入口を有する星型の第2側板を備え、前記第2主板の外径は、前記第2側板の外径よりも小さい、ポンプ群が提供される。
【0011】
一態様では、前記第1側板の外面の面積は、前記第1主板の外面の面積よりも大きく、前記第2側板の外面の面積は、前記第2主板の外面の面積よりも大きい。
一態様では、前記一重星型羽根車の前記第1側板は、前記第1翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記一重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有している。
一態様では、前記二重星型羽根車の前記第2側板は、前記複数の第2翼の間に位置する複数の窪み部を有しており、前記窪み部は、前記二重星型羽根車の半径方向において内側に窪んだ形状を有しており、前記二重星型羽根車の前記第2主板は、前記複数の第2翼にそれぞれ接する複数の突出部を備えており、前記突出部は、前記二重星型羽根車の半径方向において外側に突出した形状を有している。
一態様では、前記2組の軸受の各組は、互いに離間する2つの玉軸受から構成されている。
一態様では、前記一重星型羽根車および前記二重星型羽根車は、いずれもバランスホールを持たない遠心羽根車である。
【0012】
一態様では、比速度が互いに異なる複数のポンプを含む上記ポンプ群から1つのポンプを選択するポンプ選定装置であって、揚程および吐出し流量を入力するための入力装置と、ポンプの運転時に軸受に作用するスラスト力を該軸受の許容荷重限度未満とすることができる複数の比速度範囲を格納した記憶装置と、揚程および吐出し流量のうち、入力された少なくとも1つに対応する運転点を持つポンプをポンプ群から選択する処理装置を備え、前記運転点は前記複数の比速度範囲のうちの少なくとも1つの中にあり、前記ポンプ群に含まれる複数のポンプにそれぞれ対応する複数の運転点は、前記複数の比速度範囲内にある、ポンプ選定装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主板の直径が側板の直径よりも小さいので、液体が側板を主板に向かって押す力と、液体が主板を側板に向かって押す力の差が小さくなる。結果として、羽根車から軸受に伝わるスラスト力を低減することができる。また、本発明によれば、バランスホールを羽根車に設けることが不要であり、ポンプ効率の低下を防止することができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、要求される比速度に応じて、3つの異なるタイプの羽根車を備えた3つのポンプから選択された最適な1台をユーザーに提供することができる。3つの異なるタイプの羽根車、すなわち、円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車は、それぞれ異なる形状を有する。形状の異なる3つの羽根車は、軸受に伝わるスラスト力を所定の許容荷重限度未満にしつつ、異なる比速度を実現することができる。具体的には、円形羽根車を備えたポンプの比速度は、一重星型羽根車を備えたポンプの比速度よりも高く、一重星型羽根車を備えたポンプの比速度は、二重星型羽根車を備えたポンプの比速度よりも高い。同時に、円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車から軸受に伝わるスラスト力は、軸受の許容荷重限度よりも低い。よって、ポンプは、より安価な軸受を用いることができる。
【0015】
このように、本発明によれば、ユーザーが要求する比速度を達成しつつ、安価かつ高性能なポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】3つのポンプを含むポンプ群の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】円形羽根車を有するポンプを示す断面図である。
【
図3】
図2に示す円形羽根車を吸込み側から見た図である。
【
図4】
図2に示す円形羽根車を吐出し側から見た図である。
【
図5】一重星型羽根車を有するポンプを示す断面図である。
【
図6】
図5に示す一重星型羽根車を吸込み側から見た図である。
【
図7】
図5に示す一重星型羽根車を吐出し側から見た図である。
【
図8】二重星型羽根車を有するポンプを示す断面図である。
【
図9】
図8に示す二重星型羽根車を吸込み側から見た図である。
【
図10】
図8に示す二重星型羽根車を吐出し側から見た図である。
【
図11】吐出し流量が同じ条件下で比較した、円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車の模式図である。
【
図12】円形羽根車、一重星型羽根車、および二重星型羽根車をそれぞれ有する3つのポンプの比速度と、各ポンプの軸受に加わるスラスト力との関係を説明するグラフである。
【
図13】
図12に示す第1比速度範囲、第2比速度範囲、および第3比速度範囲を、ポンプの揚程および吐出し流量で表したポンプ選定グラフである。
【
図14】ポンプ群から1つのポンプを選定して表示するポンプ選定装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ1、ポンプ2、およびポンプ3を含むポンプ群100の一実施形態を示す模式図である。これら3つのポンプ1,2,3は、3つの異なるタイプの羽根車をそれぞれ備え、異なる比速度を有する。より具体的には、ポンプ1の比速度は、ポンプ2の比速度よりも高く、ポンプ2の比速度は、ポンプ3の比速度よりも高い。
【0018】
ポンプ群100に含まれる各ポンプ1,2,3は、液体を移送する用途に使用される。ユーザーは、必要とする比速度に基づいて、3つのポンプ1,2,3から最適な1台を選択することができる。本実施形態では、ポンプ群100は、比速度が互いに異なる3つのポンプ1,2,3を含むが、ポンプ群100は、これら3つのポンプ1,2,3のうちのいずれか2つのみを含んでもよいし、または上記3つのポンプ1,2,3に加えて、比速度が異なる1つ以上のポンプをさらに含んでもよい。
【0019】
図2は、ポンプ1を示す断面図である。本実施形態のポンプ1は、単段の渦巻きポンプである。このポンプ1は、円形羽根車10と、円形羽根車10が収容されたポンプケーシング11と、円形羽根車10が固定された回転軸12と、回転軸12を支持する2つの軸受15を備えている。2つの軸受15は、ポンプケーシング11に固定された軸受ハウジング16に保持されている。2つの軸受15は、回転軸12に沿って互いに離れて配置されている。各軸受15は、玉軸受から構成されている。円形羽根車10の裏側には、軸封装置としてのメカニカルシール17が配置されている。このメカニカルシール17は、回転軸12の自由な回転を許容しつつ、回転軸12とポンプケーシング11との間の隙間を封止する機能を有する。
【0020】
ポンプケーシング11は、円形羽根車10に連通する吸込み口11Aと、円形羽根車10を囲むボリュート室11Cと、ボリュート室11Cに接続された吐出し口11Bを有している。回転軸12の一端は円形羽根車10に固定されており、円形羽根車10と回転軸12は一体に回転可能となっている。回転軸12の他端は、図示しない原動機(例えば電動機)に連結されている。原動機によって円形羽根車10および回転軸12が回転されると、液体は吸込み口11Aを通じて円形羽根車10に吸い込まれる。液体には、回転する円形羽根車10によって速度エネルギーが与えられ、液体がボリュート室11Cを流れるときに速度エネルギーは圧力に変換される。昇圧された液体は吐出し口11Bから吐出される。
【0021】
図3は、
図2に示す円形羽根車10を吸込み側から見た図であり、
図4は、
図2に示す円形羽根車10を吐出し側から見た図である。円形羽根車10は、複数の翼21と、回転軸12が嵌合する孔22が形成された円形の主板24と、流体入口25を有する円形の側板27を備えている。複数の翼21は、孔22の周囲(すなわち、回転軸12の周囲)に等間隔で配列されている。複数の翼21は、側板27と主板24との間に配置されており、かつ側板27と主板24の両方に固定されている。
【0022】
図2および
図3から分かるように、円形羽根車10は、バランスホールを持たない遠心羽根車である。よって、円形羽根車10は、ポンプ効率を向上させることができる。さらに、円形羽根車10は、バランスホールを持たないので、粒子を含むスラリーの移送に適している。もし、円形羽根車10がバランスホールを有していると、スラリーがバランスホールを通過するときにバランスホールが摩耗して、バランスホールが徐々に拡大し、ポンプ効率が低下してしまう。また、スラリーは、バランスホールを閉塞することもあり、この場合は、スラスト力が増加し、軸受15がダメージを受けてしまう。円形羽根車10は、バランスホールを持たないので、このような問題が生じない。よって、バランスホールを持たない円形羽根車10を備えたポンプ1は、スラリーポンプとして好適に使用することができる。
【0023】
主板24の外径は、側板27の外径よりも小さく、主板24の外面24aの面積は、側板27の外面27aの面積よりも小さい。複数の翼21の最外端21aは、側板27の外周縁27b上にある。主板24の外周縁24bは、側板27の外周縁27bおよび複数の翼21の最外端21aよりも半径方向において内側に位置している。すなわち、
図4に示すように、翼21は、主板24の外周縁24bから半径方向外側に突出している。
【0024】
円形羽根車10を備えたポンプ1が液体を移送しているとき、円形羽根車10の側板27の外面27aおよび主板24の外面24aには、液体の圧力が加わる。主板24の外面24aの面積は、側板27の外面27aの面積よりも小さいので、円形羽根車10の全体を、側板27から主板24に向かう方向に押すスラスト力が発生する。このスラスト力は、
図2に示す回転軸12を伝って軸受15によって受けられる。
【0025】
円形羽根車10から軸受15に伝わるスラスト力は、側板27の外面27aの面積と、主板24の外面24aの面積との比に依存して変わりうる。上記スラスト力が軸受15の許容荷重限度未満となるように、側板27の外面27aの面積と、主板24の外面24aの面積との比が予め定められている。言い換えれば、側板27の外面27aの面積と、主板24の外面24aの面積との比は、円形羽根車10から軸受15に伝わるスラスト力が、軸受15の許容荷重限度未満となる比である。このような形状を持つ円形羽根車10は、軸受15に加わるスラスト力を低減させ、ポンプ1での許容荷重の大きい軸受の使用を不要とすることができる。
【0026】
図5は、ポンプ2を示す断面図である。本実施形態のポンプ2は、単段の渦巻きポンプである。このポンプ2は、一重星型羽根車30と、一重星型羽根車30が収容されたポンプケーシング31と、一重星型羽根車30が固定された回転軸32と、回転軸32を支持する2つの軸受35を備えている。2つの軸受35は、ポンプケーシング31に固定された軸受ハウジング36に保持されている。2つの軸受35は、回転軸32に沿って互いに離れて配置されている。各軸受35は、玉軸受から構成されている。一重星型羽根車30の裏側には、軸封装置としてのメカニカルシール37が配置されている。このメカニカルシール37は、回転軸32の自由な回転を許容しつつ、回転軸32とポンプケーシング31との間の隙間を封止する機能を有する。
【0027】
ポンプケーシング31は、一重星型羽根車30に連通する吸込み口31Aと、一重星型羽根車30を囲むボリュート室31Cと、ボリュート室31Cに接続された吐出し口31Bを有している。回転軸32の一端は一重星型羽根車30に固定されており、一重星型羽根車30と回転軸32は一体に回転可能となっている。回転軸32の他端は、図示しない原動機(例えば電動機)に連結されている。原動機によって一重星型羽根車30および回転軸32が回転されると、液体は吸込み口31Aを通じて一重星型羽根車30に吸い込まれる。液体には、回転する一重星型羽根車30によって速度エネルギーが与えられ、液体がボリュート室31Cを流れるときに速度エネルギーは圧力に変換される。昇圧された液体は吐出し口31Bから吐出される。
【0028】
図6は、
図5に示す一重星型羽根車30を吸込み側から見た図であり、
図7は、
図5に示す一重星型羽根車30を吐出し側から見た図である。一重星型羽根車30は、複数の翼41と、回転軸32が嵌合する孔42が形成された円形の主板44と、流体入口45を有する星型の側板47を備えている。複数の翼41は、孔42の周囲(すなわち、回転軸32の周囲)に等間隔で配列されている。複数の翼41は、側板47と主板44との間に配置されており、かつ側板47と主板44の両方に固定されている。
図6および
図7から分かるように、一重星型羽根車30は、バランスホールを持たない遠心羽根車である。よって、一重星型羽根車30は、スラリーの移送に適しているのみならず、ポンプ効率を向上させることができる。一重星型羽根車30を備えたポンプ2は、スラリーポンプとして好適に使用することができる。
【0029】
主板44の外径は、側板47の外径よりも小さく、主板44の外面44aの面積は、側板47の外面47aの面積よりも小さい。複数の翼41の最外端41aは、側板47の外周縁47b上にある。主板44の外周縁44bは、側板47の外周縁47bおよび複数の翼41の最外端41aよりも半径方向において内側に位置している。すなわち、
図7に示すように、翼41は、主板44の外周縁44bから半径方向外側に突出している。
【0030】
一重星型羽根車30を備えたポンプ2が液体を移送しているとき、一重星型羽根車30の側板47の外面47aおよび主板44の外面44aには、液体の圧力が加わる。主板44の外面44aの面積は、側板47の外面47aの面積よりも小さいので、一重星型羽根車30の全体を、側板47から主板44に向かう方向に押すスラスト力が発生する。このスラスト力は、
図5に示す回転軸32を伝って軸受35によって受けられる。
【0031】
一重星型羽根車30を備えたポンプ2は、円形羽根車10を備えたポンプ1よりも低い比速度を有する。一般に、吐出し流量が同じ条件下では、比速度が低くなるに従って、羽根車の外径は大きくなる。結果として、羽根車から軸受に伝わるスラスト力は大きくなる。このスラスト力が軸受の許容荷重限度を超えると、軸受が破損してしまう。そこで、一重星型羽根車30は、スラスト力を低減するために、星型の側板47を有している。
【0032】
図6および
図7に示すように、星型の側板47は、複数の翼41の間に位置した複数の窪み部49を有する。各窪み部49は、隣り合う2つの翼41の間に位置しており、一重星型羽根車30の半径方向において内側に窪んだ形状を有している。これらの窪み部49は、側板47の外面47aの面積を小さくするのに寄与する。上述したように、吐出し流量が同じ条件下では、比速度が低くなるに従って、羽根車の外径は大きくなる。よって、本実施形態では、一重星型羽根車30の外径は、円形羽根車10の外径よりも大きいが、側板47の外周縁47bには複数の窪み部49が形成されているので、側板47の外面47aの受圧面積が減り、結果として、一重星型羽根車30から軸受35に伝わるスラスト力を、軸受35の許容荷重限度未満にすることが可能となる。
【0033】
一重星型羽根車30から軸受35に伝わるスラスト力は、側板47の外面47aの面積と、主板44の外面44aの面積との比に依存して変わりうる。上記スラスト力が軸受35の許容荷重限度未満となるように、側板47の外面47aの面積と、主板44の外面44aの面積との比が予め定められている。言い換えれば、側板47の外面47aの面積と、主板44の外面44aの面積との比は、一重星型羽根車30から軸受35に伝わるスラスト力が、軸受35の許容荷重限度未満となる比である。星型の側板47を持つ一重星型羽根車30は、低い比速度を達成しつつ、軸受35に加わるスラスト力を低減させることができる。
【0034】
図8は、ポンプ3を示す断面図である。本実施形態のポンプ3は、単段の渦巻きポンプである。このポンプ3は、二重星型羽根車50と、二重星型羽根車50が収容されたポンプケーシング51と、二重星型羽根車50が固定された回転軸52と、回転軸52を支持する2つの軸受55を備えている。2つの軸受55は、ポンプケーシング51に固定された軸受ハウジング56に保持されている。2つの軸受55は、回転軸52に沿って互いに離れて配置されている。各軸受55は、玉軸受から構成されている。二重星型羽根車50の裏側には、軸封装置としてのメカニカルシール57が配置されている。このメカニカルシール57は、回転軸52の自由な回転を許容しつつ、回転軸52とポンプケーシング51との間の隙間を封止する機能を有する。
【0035】
ポンプケーシング51は、二重星型羽根車50に連通する吸込み口51Aと、二重星型羽根車50を囲むボリュート室51Cと、ボリュート室51Cに接続された吐出し口51Bを有している。回転軸52の一端は二重星型羽根車50に固定されており、二重星型羽根車50と回転軸52は一体に回転可能となっている。回転軸52の他端は、図示しない原動機(例えば電動機)に連結されている。原動機によって二重星型羽根車50および回転軸52が回転されると、液体は吸込み口51Aを通じて二重星型羽根車50に吸い込まれる。液体には、回転する二重星型羽根車50によって速度エネルギーが与えられ、液体がボリュート室51Cを流れるときに速度エネルギーは圧力に変換される。昇圧された液体は吐出し口51Bから吐出される。
【0036】
図9は、
図8に示す二重星型羽根車50を吸込み側から見た図であり、
図10は、
図8に示す二重星型羽根車50を吐出し側から見た図である。二重星型羽根車50は、複数の翼61と、回転軸52が嵌合する孔62が形成された星型の主板64と、流体入口65を有する星型の側板67を備えている。複数の翼61は、孔62の周囲(すなわち、回転軸52の周囲)に等間隔で配列されている。複数の翼61は、側板67と主板64との間に配置されており、かつ側板67と主板64の両方に固定されている。
図9および
図10から分かるように、二重星型羽根車50は、バランスホールを持たない遠心羽根車である。よって、二重星型羽根車50は、スラリーの移送に適しているのみならず、ポンプ効率を向上させることができる。二重星型羽根車50を備えたポンプ3は、スラリーポンプとして好適に使用することができる。
【0037】
主板64の外径は、側板67の外径よりも小さく、主板64の外面64aの面積は、側板67の外面67aの面積よりも小さい。複数の翼61の最外端61aは、側板67の外周縁67b上にある。主板64の外周縁64bは、側板67の外周縁67bおよび複数の翼61の最外端61aよりも半径方向において内側に位置している。すなわち、
図10に示すように、翼61は、主板64の外周縁64bから半径方向外側に突出している。
【0038】
二重星型羽根車50を備えたポンプ3が液体を移送しているとき、二重星型羽根車50の側板67の外面67aおよび主板64の外面64aには、液体の圧力が加わる。主板64の外面64aの面積は、側板67の外面67aの面積よりも小さいので、二重星型羽根車50の全体を、側板67から主板64に向かう方向に押すスラスト力が発生する。このスラスト力は、
図8に示す回転軸52を伝って軸受55によって受けられる。
【0039】
二重星型羽根車50を備えたポンプ3は、一重星型羽根車30を備えたポンプ2よりも低い比速度を有する。上述したように、一般に、吐出し流量が同じ条件下では、比速度が低くなるに従って、羽根車の外径は大きくなる。結果として、羽根車から軸受に伝わるスラスト力は大きくなる。そこで、二重星型羽根車50は、スラスト力を低減するために、星型の側板67と、星型の主板64を有する。
【0040】
図9および
図10に示すように、星型の側板67は、複数の翼61の間に位置した複数の窪み部69を有する。各窪み部69は、隣り合う2つの翼61の間に位置しており、二重星型羽根車50の半径方向において内側に窪んだ形状を有している。これらの窪み部69は、側板67の外面67aの面積を小さくするのに寄与する。つまり、側板67の外周縁67bには複数の窪み部69が形成されているので、側板67の外面67aの受圧面積が減り、結果として、二重星型羽根車50から軸受55に伝わるスラスト力が低下する。しかしながら、側板67の外径自体が大きいために、窪み部69を形成することのみでは、スラスト力を軸受55の許容荷重限度未満にすることは難しい。
【0041】
そこで、液体が主板64の外面64aを押す力を増加させるために、主板64も、星型を有している。より具体的には、星型の主板64は、複数の翼61にそれぞれ接する複数の突出部71を有する。各突出部71は、二重星型羽根車50の半径方向において外側に突出している。これらの突出部71は、側板67に形成された窪み部69とは異なり、主板64の外面64aの面積を大きくするのに寄与する。つまり、比較的大きな受圧面積を持つ側板67に加わる液体の力の大部分をキャンセルするために、主板64に突出部71を設けて主板64の受圧面積を増加させる。液体が側板67の外面67aを押す力の大部分は、液体が主板64を押す力によってキャンセルされる。結果として、二重星型羽根車50から軸受55に加わるスラスト力を、軸受55の許容荷重限度未満とすることができる。
【0042】
二重星型羽根車50から軸受55に伝わるスラスト力は、側板67の外面67aの面積と、主板64の外面64aの面積との比に依存して変わりうる。上記スラスト力が軸受55の許容荷重限度未満となるように、側板67の外面67aの面積と、主板64の外面64aの面積との比が予め定められている。言い換えれば、側板67の外面67aの面積と、主板64の外面64aの面積との比は、二重星型羽根車50から軸受55に伝わるスラスト力が、軸受55の許容荷重限度未満となる比である。星型の側板67および星型の主板64を持つ二重星型羽根車50は、低い比速度を達成しつつ、軸受55に加わるスラスト力を低減させることができる。
【0043】
円形羽根車10を持つポンプ1、一重星型羽根車30を持つポンプ2、および二重星型羽根車50を持つポンプ3を少なくとも備えたポンプ群100は、スラスト力を軸受15,35,55の許容荷重限度未満に収めつつ、広い比速度をカバーすることができる。
【0044】
図11は、吐出し流量が同じ条件下で比較した、円形羽根車10、一重星型羽根車30、および二重星型羽根車50の模式図である。円形羽根車10を持つポンプ1の比速度は、一重星型羽根車30を持つポンプ2の比速度よりも高く、一重星型羽根車30を持つポンプ2の比速度は、二重星型羽根車50を持つポンプ3比速度よりも高い。
図11から分かるように、吐出し流量が同じ条件下では、比速度が低くなるに従って羽根車の外径は大きくなっている。
【0045】
円形羽根車10の側板27および主板24には液体から力F1および力F2がそれぞれ加わる(F1>F2)。力F1と力F2の差Δ1は、円形羽根車10を軸方向に押すスラスト力に相当する。一重星型羽根車30の側板47および主板44には液体から力F3および力F4がそれぞれ加わる(F3>F4)。力F3と力F4の差Δ2は、一重星型羽根車30を軸方向に押すスラスト力に相当する。二重星型羽根車50の側板67および主板64には液体から力F5および力F6がそれぞれ加わる(F5>F6)。力F5と力F6の差Δ3は、二重星型羽根車50を軸方向に押すスラスト力に相当する。
【0046】
スラスト力Δ1,Δ2,Δ3は、軸受15,35,55によってそれぞれ受けられる。スラスト力Δ1,Δ2,Δ3のいずれも、軸受15,35,55の許容荷重限度未満である。言い換えれば、スラスト力Δ1,Δ2,Δ3が軸受15,35,55の許容荷重限度未満となるように、円形羽根車10の側板27および主板24、一重星型羽根車30の側板47および主板44、二重星型羽根車50の側板67および主板64の形状および大きさが決定される。
【0047】
図12は、円形羽根車10、一重星型羽根車30、および二重星型羽根車50をそれぞれ有する3つのポンプ1,2,3の比速度と、各ポンプ1,2,3の軸受15,35,55に加わるスラスト力との関係を説明するグラフである。円形羽根車10を持つポンプ1の比速度は、第1比速度範囲R1内にあり、一重星型羽根車30を持つポンプ2の比速度は、第1比速度範囲R1よりも低い第2比速度範囲R2内にあり、二重星型羽根車50を持つポンプ3の比速度は、第2比速度範囲R2よりも低い第3比速度範囲R3内にある。
【0048】
第1比速度範囲R1内では、円形羽根車10を備えたポンプ1が使用される。円形羽根車10は、
図3および
図4を参照して説明したように、側板27および主板24のいずれもが円形である。円形の側板27および円形の主板24は、ポンプ1が第1比速度範囲R1内の比速度を実現できる大きさを有している。しかしながら、
図12のグラフに示すように、比速度が低くなるに従って、スラスト力が増加し、軸受15(
図2参照)の許容荷重限度Lを超えてしまう。
【0049】
そこで、スラスト力が軸受15の許容荷重限度Lを超える前に、円形羽根車10を備えたポンプ1から、一重星型羽根車30を備えたポンプ2に切替えられる。一重星型羽根車30は、
図6および
図7を参照して説明したように、側板47が星型であり、主板44は円形である。星型の側板47および円形の主板44は、ポンプ2が第2比速度範囲R2内の比速度を実現できる大きさおよび形状を有している。しかしながら、
図12のグラフに示すように、比速度が低くなるに従って、スラスト力が増加し、軸受35(
図3参照)の許容荷重限度Lを超えてしまう。
【0050】
そこで、スラスト力が軸受35の許容荷重限度Lを超える前に、一重星型羽根車30を備えたポンプ2から、二重星型羽根車50を備えたポンプ3に切替えられる。二重星型羽根車50は、
図9および
図10を参照して説明したように、側板67および主板64のいずれもが星型である。星型の側板67および主板64は、ポンプ3が第3比速度範囲R3内の比速度を実現できる大きさおよび形状を有している。
【0051】
このように、3つの異なるタイプの羽根車10,30,50を備えたポンプ1,2,3は、スラスト力を所定の許容荷重限度L未満に抑えつつ、第1比速度範囲R1、第2比速度範囲R2、および第3比速度範囲R3の全体をカバーする比速度を実現することができる。ユーザーは、必要とする比速度に基づいて、3つの異なるタイプの羽根車10,30,50を備えた3つのポンプ1,2,3の中から最適な1つを選択することができる。
【0052】
図13は、第1比速度範囲R1、第2比速度範囲R2、および第3比速度範囲R3を、ポンプ1,2,3の揚程および吐出し流量で表したポンプ選定グラフである。
図13に示す、点a、b、cは、同じ吐出し流量を持つ3つのポンプ1,2,3の運転点を示しており、
図11に示す円形羽根車10、一重星型羽根車30、二重星型羽根車50にそれぞれ対応する。
【0053】
同じ吐出し流量を持つ上述した3つのポンプ1,2,3は、一例であり、揚程および吐出し流量が
図13に示す第1比速度範囲R1、第2比速度範囲R2、および第3比速度範囲R3内にある限り、3つの異なるタイプの羽根車10,30,50を備えた3つのポンプは異なる吐出し流量を有してもよい。すなわち、円形羽根車を持つポンプは第1比速度範囲R1内に運転点を持つポンプであり、一重星型羽根車を持つポンプは第2比速度範囲R2内に運転点を持つポンプであり、二重星型羽根車を持つポンプは第3比速度範囲R3内に運転点を持つポンプである。
【0054】
ユーザーは、必要とする揚程および吐出し流量に基づいて、3つのポンプ1,2,3の中から最適な1つを選択することができる。要求される比速度、すなわち要求される吐出し流量および揚程が、第1比速度範囲R1、第2比速度範囲R2、および第3比速度範囲R3内であれば、スラスト力は軸受15,35,55の許容荷重限度L未満である。よって、安価なポンプをユーザーに提供することができる。
【0055】
ユーザーが必要とする比速度は、第1比速度範囲R1および第2比速度範囲R2のみ、または第2比速度範囲R2および第3比速度範囲R3のみでカバーできる場合もありうる。そこで、一実施形態では、ポンプ群100は、円形羽根車10を備えたポンプ1と、一重星型羽根車30を備えたポンプ2のみから構成されてもよい。あるいは、他の実施形態では、ポンプ群100は、一重星型羽根車30を備えたポンプ2と、二重星型羽根車50を備えたポンプ3のみから構成されてもよい。
【0056】
図14は、上述したポンプ群100から1つのポンプを選定して表示するポンプ選定装置81を示す模式図である。このポンプ選定装置81は、入力装置82、処理装置83、記憶装置84、画面表示器85、および印刷機86を備えている。ポンプ選定装置81は、専用のコンピュータ、汎用のコンピュータ、またはタブレット形コンピュータなどから構成される。
【0057】
入力装置82は、キーボードおよびマウスなどを含む。ユーザーは、入力装置82を用いて、必要とする揚程および/または吐出し流量をポンプ選定装置81に入力する。入力された揚程および/または吐出し流量は、記憶装置84に記憶される。処理装置83は、記憶装置84に格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置84は、処理装置83がアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0058】
記憶装置84は、その内部に、
図13に示すポンプ選定グラフと、
図12に示す比速度とスラスト荷重との関係を示すグラフを予め格納している。処理装置83は、ユーザーによって入力された揚程および/または吐出し流量に対応するポンプを選択する。選択されるポンプは、
図13に示す第1比速度範囲R1、第2比速度範囲R2、および第3比速度範囲R3のうちの少なくとも1つの中に運転点を持つポンプである。例えば、ユーザーが必要とする揚程および吐出し流量が第1比速度範囲R1にあれば、処理装置83は円形羽根車を備えたポンプを選択する。ユーザーによって入力された情報が揚程のみであった場合は、処理装置83はその揚程に対応する複数のポンプを選択する。
【0059】
処理装置83によって選択されたポンプは、画面表示器85上に表示される。ポンプ選定装置81は、
図12に示すグラフ、および
図13に示すポンプ選定グラフも画面表示器85上に表示することができる。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3 ポンプ
10 円形羽根車
11 ポンプケーシング
12 回転軸
15 軸受
16 軸受ハウジング
17 メカニカルシール
21 翼
22 孔
24 円形の主板
25 流体入口
27 円形の側板
30 一重星型羽根車
31 ポンプケーシング
32 回転軸
35 軸受
36 軸受ハウジング
37 メカニカルシール
41 翼
42 孔
44 円形の主板
45 流体入口
47 星型の側板
49 窪み部
50 二重星型羽根車
51 ポンプケーシング
52 回転軸
55 軸受
57 メカニカルシール
61 翼
62 孔
64 星型の主板
65 流体入口
67 星型の側板
69 窪み部
71 突出部
81 ポンプ選定装置
82 入力装置
83 処理装置
84 記憶装置
85 画面表示器
86 印刷機
100 ポンプ群